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明細書 :歩行リハビリ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5493121号 (P5493121)
公開番号 特開2011-050451 (P2011-050451A)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月14日(2014.5.14)
公開日 平成23年3月17日(2011.3.17)
発明の名称または考案の名称 歩行リハビリ装置
国際特許分類 A61H   1/02        (2006.01)
A61B   5/11        (2006.01)
A63B  22/02        (2006.01)
A63B  22/06        (2006.01)
A63B  24/00        (2006.01)
A63B  69/00        (2006.01)
FI A61H 1/02 R
A61B 5/10 310A
A63B 22/02
A63B 22/06 M
A63B 24/00
A63B 69/00 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2009-200101 (P2009-200101)
出願日 平成21年8月31日(2009.8.31)
審査請求日 平成24年6月28日(2012.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】藤江 正克
【氏名】安藤 健
【氏名】大木 英一
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査官 【審査官】安田 昌司
参考文献・文献 特開2002-345994(JP,A)
特開2007-203754(JP,A)
調査した分野 A61H 1/02
A61B 5/11
A63B 22/02
A63B 22/06
A63B 24/00
A63B 69/00
特許請求の範囲 【請求項1】
設置場所での使用者の歩行を可能に動作するトレッドミルと、当該トレッドミルの動作制御を行うとともに、前記トレッドミルの動作状態から前記使用者の歩行状態に関する歩行データを測定し、当該歩行データに基づき所定の情報処理を行う制御測定処理装置とを備え、
前記トレッドミルは、前記使用者の脚が片方ずつそれぞれ載り、後方に向かって動作可能な左右一対の歩行面と、当該各歩行面をそれぞれ独立して動作させる左右両側の駆動装置とを備え、
前記制御測定処理装置は、前記トレッドミルの動作状態を検出する検出手段と、当該検出手段による検出に基づき、前記トレッドミルを使って歩行する前記使用者の歩行状態を表す前記歩行データを測定する歩行データ測定手段と、前記検出手段からの検出値に基づいて前記各駆動装置の駆動を制御する駆動制御手段と、前記歩行データ測定手段で測定した左右それぞれの前記歩行データの対比に基づき、前記各歩行面に速度差が生じるように前記駆動制御手段に指令する速度調整指令手段とを備え、
前記検出手段は、前記各駆動装置それぞれについて、当該各駆動装置の駆動状態を表し、前記各駆動装置に作用する負荷の大きさに応じて変化する駆動データを所定時間毎に検出可能に設けられ、
前記歩行データ測定手段では、前記駆動データの検出毎に、当該駆動データから立脚状態か遊脚状態かを判定することで、前記歩行者の立脚期及び遊脚期の経時的な変化を表す歩行データを測定することを特徴とする歩行リハビリ装置。
【請求項2】
前記歩行データ測定手段で立脚状態か遊脚状態かを判定するための前記駆動データの閾値を算出する閾値算出手段を更に備え、
前記閾値算出手段では、前記使用者の脚が前記歩行面に載らない無負荷状態のときに、当該歩行面を複数の速度で動作させた際、各速度それぞれについて前記検出手段で得られた複数の前記駆動データから、前記歩行面の速度に対する前記閾値の関数を導出し、当該関数から使用時における前記歩行面の速度に対応する閾値を決定することを特徴とする請求項1記載の歩行リハビリ装置。
【請求項3】
設置場所での使用者の歩行を可能に動作するトレッドミルと、当該トレッドミルの動作状態を検出する検出手段と、当該検出手段による検出に基づき、前記トレッドミルを使って歩行する前記使用者の歩行状態を表す歩行データを測定する歩行データ測定手段と、当該歩行データ測定手段で立脚状態か遊脚状態かを判定するための閾値を算出する閾値算出手段とを備え、
前記トレッドミルは、前記使用者の脚が片方ずつそれぞれ載り、後方に向かって動作可能な左右一対の歩行面と、当該各歩行面をそれぞれ独立して動作させる左右両側の駆動装置とを備え、
前記検出手段は、前記各駆動装置それぞれについて、当該各駆動装置の駆動状態を表し、前記各駆動装置に作用する負荷の大きさに応じて変化する駆動データを所定時間毎に検出可能に設けられ、
前記歩行データ測定手段では、前記駆動データの検出毎に、当該駆動データから立脚状態か遊脚状態かを判定することで、前記歩行者の立脚期及び遊脚期の経時的な変化を表す歩行データを測定し、
前記閾値算出手段では、前記使用者の脚が前記歩行面に載らない無負荷状態のときに、当該歩行面を複数の速度で動作させた際、各速度それぞれについて前記検出手段で得られた複数の前記駆動データから、前記歩行面の速度に対する前記閾値の関数を導出し、当該関数から使用時における前記歩行面の速度に対応する前記駆動データの閾値を決定することを特徴とする歩行リハビリ装置。
【請求項4】
前記速度調整指令手段では、左右の前記各歩行データの相違に応じて、歩行機能障害が生じている左右何れか一方の患側の脚が載る前記歩行面の減速量を決定し、当該減速量を前記駆動制御手段に指令することを特徴とする請求項1又は2記載の歩行リハビリ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行リハビリ装置に係り、更に詳しくは、片麻痺患者等を対象に、左右非対称な歩行状態を改善するリハビリテーションを効果的に行うための歩行リハビリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行機能の維持又は回復を目的として訓練者が利用する歩行訓練装置が知られている(特許文献1参照)。この歩行訓練装置は、左右一方の脚に歩行機能障害がある片麻痺患者等にも利用可能になっており、モータによって回転可能な左右2つのベルトと、複数の動作モードに基づき、各ベルトの動作を独立に制御する制御装置とを備えている。前記動作モードは、左右の各ベルトそれぞれについて任意に選択可能となっており、訓練者の症状に合わせた歩行訓練が可能になっている。ここで、前記動作モードとしては、入力手段から入力された速度目標でベルトを動作させる速度制御モードがあり、特許文献1には、左右両方のベルトについて前記速度制御モードを選択し、歩行機能障害のない健側の脚が載るベルトの速度よりも、歩行機能障害のある患側の脚が載るベルトの速度を遅くする使用態様が例示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平10-243979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記歩行訓練装置にあっては、訓練者が動くベルトの上を歩行することにより脚力を回復させることが狙いであって、前記片麻痺患者等が使用した際、歩行の左右非対称性の改善に有用となる訓練時の歩行状態に関するデータを測定することはできない。つまり、片麻痺患者は、歩行時において、患側の脚の方が健側の脚よりも接地時間が短いため、患側の脚が健側に比べて接地時間がどの程度短いかを正確に把握し、患側の脚の接地時間が健側と同一になるように意識しながら訓練することが重要である。従って、前記歩行訓練装置を使って片麻痺患者等のリハビリテーションを効果的に行うには、訓練者の左右両側の歩行状態を表すデータ、すなわち、脚が接地した状態を表す立脚相及び脚が離地した状態を表す遊脚相の経時的な変化に関するデータを測定し、これら各脚の歩行状態を対比する必要がある。そこで、訓練者が前記歩行訓練装置を使って歩行訓練を行う際に、訓練者の足元に装着されたスイッチや床反力計等の測定機器を併用することにより、歩行訓練中の訓練者の前記歩行データを測定することも可能である。ところが、この場合、訓練者は、測定機器を装着しなければならず、装着に手間が掛かる他、訓練者は自然の歩行と異なる歩行になる可能性があり、また、訓練者は、測定機器の操作方法の習得が必要となり、更に、歩行者を指導する付添者は、測定結果の解析に手間がかかるという問題がある。また、前記歩行訓練装置にあっては、歩行の左右非対称性を改善する目的で、自動的に左右各ベルトの速度を自動調整する機能を備えていない。
【0005】
本発明は、以上のような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、使用者の脚力を向上させながら、使用者が特別な測定機器を装着しなくても、使用者の歩行訓練時の歩行状態に関する歩行データを測定することができ、歩行の左右非対称性の改善に有用となる歩行リハビリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、設置場所での使用者の歩行を可能に動作するトレッドミルと、当該トレッドミルの動作状態を検出する検出手段と、当該検出手段による検出に基づき、前記トレッドミルを使って歩行する前記使用者の歩行状態を表す歩行データを測定する歩行データ測定手段とを備え、
前記トレッドミルは、前記使用者の脚が片方ずつそれぞれ載り、後方に向かって動作可能な左右一対の歩行面と、当該各歩行面をそれぞれ独立して動作させる左右両側の駆動装置とを備え、
前記検出手段は、前記各駆動装置それぞれについて、当該各駆動装置の駆動状態を表し、前記各駆動装置に作用する負荷の大きさに応じて変化する駆動データを所定時間毎に検出可能に設けられ、
前記歩行データ測定手段では、前記駆動データの検出毎に、当該駆動データから立脚状態か遊脚状態かを判定することで、前記歩行者の立脚期及び遊脚期の経時的な変化を表す歩行データを測定する、という構成を採っている。
【0007】
(2)また、前記歩行データ測定手段で立脚状態か遊脚状態かを判定するための前記駆動データの閾値を算出する閾値算出手段を更に備え、
前記閾値算出手段では、前記使用者の脚が前記歩行面に載らない無負荷状態のときに、当該歩行面を複数の速度で動作させた際、各速度それぞれについて前記検出手段で得られた複数の前記駆動データから、前記歩行面の速度に対する前記閾値の関数を導出し、当該関数から使用時における前記歩行面の速度に対応する閾値を決定する、という構成を併せて採用することができる。
【0008】
(3)更に、前記検出手段からの検出値に基づいて前記各駆動装置の駆動を制御する駆動制御手段と、前記歩行データ測定手段で測定した左右それぞれの前記歩行データの対比に基づき、前記各歩行面に速度差が生じるように前記駆動制御手段に指令する速度調整指令手段とを備える、という構成を採ることが好ましい。
【0009】
(4)ここで、前記速度調整指令手段では、左右の前記各歩行データの相違に応じて、歩行機能障害が生じている左右何れか一方の患側の脚が載る前記歩行面の減速量を決定し、当該減速量を前記駆動制御手段に指令する、という構成にすると良い。
【発明の効果】
【0010】
前記(1)の構成によれば、使用者が特別な測定機器を装着しなくても、歩行訓練を行いながら、使用者の歩行訓練時の歩行状態を表す歩行データを手間無く測定することができる。
【0011】
前記(2)のように構成することで、温度等の環境変化や経時的な劣化等によって、トレッドミルの機械要素や構成部材の状態が変化した場合でも、毎回の使用前、或いは、定期的に閾値算出手段で歩行面の速度と閾値との関係を求めることにより、トレッドミルの前記状態の変化に拘らず、立脚状態か遊脚状態かを正確に判定することができる。
【0012】
前記(3)、(4)の構成によれば、使用者の症状に合わせて、左右の歩行面に適切な速度差を設けることができ、より効果的な使用者のリハビリテーションが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る歩行リハビリ装置の概略斜視図。
【図2】図1のA-A線に沿う概略断面図。
【図3】前記歩行リハビリ装置の構成を概略的に示したブロック図。
【図4】測定される歩行状態を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0015】
図1には、本実施形態に係る歩行リハビリ装置の概略斜視図が示されており、図2には、図1のA-A線に沿う概略断面図が示されている。これらの図において、歩行リハビリ装置10は、片麻痺患者等の使用者Pが載ってその場で歩行可能に動作するトレッドミル11と、医師や理学療法士等の付添者Sが各種の条件や指令を入力するための入力手段13と、トレッドミル11の動作制御を行うとともに、トレッドミル11の動作状態から使用者の歩行状態に関する歩行データを測定し、当該歩行データに基づき所定の情報処理を行う制御測定処理装置14と、使用者Pの前方に配置されるとともに、制御測定処理装置14で作成された歩行状態に関する各種情報を表示するモニタ16とを備えて構成されている。

【0016】
前記トレッドミル11は、前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム18,19と、これらサイドフレーム18,19の間で前後方向に延びるセンターフレーム20と、左側のサイドフレーム18とセンターフレーム20の前後両側で回転可能に支持される丸棒状の左側シャフト22,23と、右側のサイドフレーム19とセンターフレーム20の前後両側で回転可能に支持される丸棒状の右側シャフト25,26と、左側のシャフト22,23に掛け回される左側の平ベルト30と、右側のシャフト25,26に掛け回される右側の平ベルト31と、各平ベルト30,31の内側に配置されて当該平ベルト30,31を支持するプレート32(図2参照)と、前側に位置する左右それぞれのシャフト22,25に連なって、当該各シャフト22,25を回転させる左右両側の駆動装置としてのモータ33,34とを備えている。なお、トレッドミル11の周囲には、使用者Pが歩行する際に使用者Pが把持可能な平行棒Hが配置されている。

【0017】
前記左側の平ベルト30は、その上面が使用者Pの左脚が載る歩行面Fとなっている一方、右側の平ベルト31は、その上面が使用者Pの右脚が載る歩行面Fとなっている。また、各平ベルト30,31は、特に限定されるものではないが、大人の一般的な歩幅よりも広い長さに設定され、当該大人の片足幅よりも広い幅に設定されている。また、各平ベルト30,31は、各モータ33,34が駆動すると回転し、これによって、各歩行面F,Fは、後方に向かってスライド動作する。

【0018】
前記各モータ33,34は、付添者Sによる入力手段13の入力による速度指令等に基づき、制御測定処理装置14で駆動制御される。また、各モータ33,34には、それらの回転数に応じて電気信号を発するタコジェネレータ(図示省略)が付設されている。当該タコジェネレータからの電気信号、及びモータ33,34の回転時に流れる電流は、制御測定処理装置14に伝送されるようになっている。なお、シャフト22,25を前述のように回転できる限りにおいて、駆動装置として他のアクチュエータを採用することもできる。

【0019】
前記入力手段13は、特に限定されるものではないが、キーボードやスイッチ類等によって構成されており、付添者Sの手入力により、制御測定処理装置14に対して後述する各種の指令を行えるようになっている。

【0020】
前記制御測定処理装置14は、ハードウェア及びソフトウェアによって構成されており、CPU等の演算処理装置、メモリやハードディスク等の記憶装置、及びこれら各装置を以下の各手段として機能させるプログラムモジュール等から成り立っている。

【0021】
具体的に、前記制御測定処理装置14は、図3に示されるように、トレッドミル11の動作状態を検出する検出手段36と、各モータ33,34の駆動を制御する駆動制御手段37と、検出手段36からの検出値に基づいて使用者Pの両脚の歩行状態に関するデータを測定する歩行データ測定手段41と、歩行データ測定手段41で立脚状態か遊脚状態かを判定するための閾値を算出する閾値算出手段42と、歩行データ測定手段41で測定した歩行データから、モニタ16に提示する情報を作成する提示情報作成手段43と、歩行データ測定手段41で測定した歩行データに基づき、歩行面Fの速度調整を行うように駆動制御手段37に指令する速度調整指令手段45とを備えている。

【0022】
前記検出手段36は、左右両側のモータ33,34の駆動状態を検出するようになっており、具体的に、各モータ33,34に設けられた前記タコジェネレータ(図示省略)からの電気信号により各モータ33,34の回転数を測定する回転数測定部50と、各モータ33,34を流れる電流値を測定する電流測定部51とにより構成される。この検出手段36では、所定の時間毎(例えば、0.01秒毎)に、各モータ33,34の回転数と電流値がそれぞれ測定されるようになっている。また、回転数測定部50では、各モータ33,34の回転数を測定することで、当該回転数から左右の各歩行面F,Fの速度が特定されることになる。また、電流測定部51で測定される電流値は、後述するように、駆動装置に作用する負荷の大きさに応じて変化する駆動データとなる。この駆動データは、採用するアクチュエータによって異なる。

【0023】
前記駆動制御手段37では、入力手段13での速度入力と前記速度調整指令手段45からの指令に基づいて、以下のように各モータ33,34の駆動が制御されるようになっている。先ず、付添者Sから、左右両側の歩行面F,Fの目標速度が入力手段13で入力されると、その目標速度で歩行面F,Fが動作するように、各モータ33,34に電圧が印加される。この際、逐次、各モータ33,34の回転数が前記回転数測定部50で測定されており、当該回転数がフィードバックされながら、電圧の印加が適正に行われる。換言すれば、前記目標速度を維持するために、各モータ33,34の回転数が目標速度に対応する一定値に維持される。具体的には、歩行面Fに作用する外力の大きさが変わり、モータ33,34にかかる負荷の大きさが変化したときに、モータ33,34に印加される電圧の大きさがそのままであると、各モータ33,34の回転数が変化してしまい、目標速度を維持できなくなる。そのため、駆動制御手段37では、回転数測定部50で測定された実際の回転数に基づき、モータ33,34に印加する電圧を増減し、目標速度に対応する回転数に維持するようになっている。

【0024】
また、前記駆動制御手段37では、後述するように速度調整指令手段45からの指令を受けると、当該指令に基づいて目標速度を補正し、前述のフィードバック制御によってモータ33,34への印加電圧を増減させ、補正された目標速度で歩行面Fを動作させるようにモータ33,34の駆動を制御する。

【0025】
前記歩行データ測定手段41では、入力手段13から入力された目標速度で動作する歩行面F,F上を使用者Pが歩行しているときに、使用者Pの左右両脚それぞれについて、所定時間毎に立脚状態か遊脚状態かが判定され、図4中太実線で示される歩行データ、すなわち、歩行面Fに脚が接地した状態を表す立脚相、及び歩行面Fから脚が離れた状態を表す遊脚相と経過時間との関係を表す歩行相が測定される。なお、図4は、何れか一方の脚のみについてのグラフである。

【0026】
具体的に、使用者Pが歩行面F,Fの歩行を開始した後、各モータ33,34それぞれについて、以下の処理が行われる。先ず、図4中細実線で示されるように、電流測定部51で所定の時間毎に電流値が測定され、当該各電流値は、測定開始時からの経過時間に対応して記憶される。そして、記憶された各電流値について、使用者Pの脚が歩行面Fに載っていない無負荷時の電流値となる閾値(図4中一点鎖線)を超えているか否かが判定される。このとき、電流値が閾値を超えている場合には、使用者の脚が歩行面Fに載っていてモータ33,34に負荷がかかり、歩行面Fの速度を目標速度に維持するために、前記無負荷時よりも大きな電流がモータ33,34に流れているとして、立脚状態と判定される。一方、電流値が閾値以下である場合には、使用者Pの脚が歩行面F上に載っていない無負荷時に相当するとして、遊脚状態と判断される。なお、図4に示されるように、電流値が閾値を僅かに下回る場合があるが、これは、測定誤差等の影響を考慮して閾値が高めに設定されていることによる。以上により、左右両側の脚それぞれについて、図4中太実線で示されるパルス状の歩行相が測定される。なお、当該歩行相における谷の部分は、歩行面Fに脚が接地している期間である立脚期を表す一方、同山の部分は、歩行面Fから脚が離れている期間である遊脚期を表している。

【0027】
前記閾値は、前述した通り、使用者Pの脚が歩行面Fに載っていない無負荷時にモータ33,34に流れる電流値であり、歩行面Fの速度に応じて変化する。従って、歩行データ測定手段41では、次で説明するように、入力手段13で入力された目標速度に基づいて閾値算出手段42で特定される閾値が用いられる。

【0028】
前記閾値算出手段42では、使用者Pの脚が歩行面Fに載っていない無負荷状態で歩行面F,Fが空回転しているときに、入力手段13での入力に基づく指令によって、歩行面Fの速度に対する閾値の関係が、左右各歩行面F,Fそれぞれについて以下のように求められる。すなわち、入力手段13で閾値算出するための閾値算出モードが選択されると、左右の各歩行面F,Fが、ある速度範囲内(例えば、0km/h~3km/h)において、一定時間毎に、一定間隔(例えば、0.25km/h)で増速するように、前記駆動制御手段37に指令され、モータ33,34の駆動が制御される。このとき、閾値算出手段42では、電流測定部51で測定されたモータ33,34の電流値が各歩行面F,Fの速度毎に集計される。ここでの集計は、同一速度のときに測定された複数の電流値から、平均μと標準偏差σが求められ、μ+3σで求められる値が当該速度における電流値として一つ特定される。その後、各歩行面F,Fの速度毎に一つずつ特定された電流値から、二次式の最小二乗法による近似手法を用い、歩行面Fの速度と前記無負荷時の電流値となる閾値との関係を表す関数が導出される。なお、ここでの近似手法は、二次式の最小二乗法に限らず、速度と電流値の関係を直線或いは曲線で近似できる限り、種々の手法を採用することができる。このように、閾値算出手段42では、左右両側の各歩行面F,Fでそれぞれ導出された前記関数が記憶される。そして、歩行データ測定手段41で歩行データを測定する際に、使用者Pが歩行訓練する際に予め指定される前記目標速度が、左右両側の前記各関数に代入されることで、前記閾値が左右それぞれ特定され、当該閾値が歩行データ測定手段41での立脚遊脚判定に用いられる。

【0029】
前記提示情報作成手段43では、歩行データ測定手段41で測定された使用者Pの左右両脚の各歩行データに基づき、使用者Pの歩行状態を表す各種情報が作成され、当該各種情報がグラフ、アイコン、文字等を使ってモニタ16に提示されるようになっている。ここで、前記各種情報は、特に限定されるものではないが、入力手段13による付添者Sの選択指令によって、モニタ16で選択的に表示される。すなわち、図4の太実線で示されるような歩行相のグラフが左右両脚それぞれ作成され、モニタ16に並列的に表示される。また、1歩行周期中の立脚期の時間や1歩行周期中の遊脚期の時間が左右両脚それぞれについて経時的に積算され、モニタ16に提示される。更に、左右各脚の歩行データを対比することにより、片脚のみが立脚期となっている単脚支持期の時間が左右両脚それぞれについて集計され、モニタ16に提示される。また、左右各脚の歩行データを対比することにより、両脚共に立脚期となっている両脚支持期の時間が集計され、モニタ16に提示される。更に、左右各脚の歩行データから左右対称性の評価指標が求められ、モニタ16に提示される。この評価指標としては、例えば、左右各脚の立脚期の時間比、着地タイミング指標、離地タイミング指標がある。

【0030】
前記着地タイミング指標は、脚の接地タイミングが左右対称である場合を0%とし、着地タイミングのずれをパーセンテージで表す指標である。この指標Aは、
A=((tLk-tRk)/P)-0.5)×100 (1)
で求められる。
ここで、tLk、tRkは、それぞれ左右各脚の第kサイクル目における着地の際の時間(例えば、図4中、時間t、t、t等)である。また、Pは、歩行機能障害を有する左右何れか一方の患側の脚の第kサイクルと第k-1サイクル目の接地時間差であり、図4で説明すると、時間tからtまでを第kサイクルとしたときに、時間tからtまでの経過時間である。なお、使用者Pの左右のどちらの脚が患側であるかは、付添者S等によって予め入力手段13に入力されるが、歩行データ測定手段41で求めた左右各脚の歩行データを対比し、全体的に立脚期の時間の短い方を自動的に患側と判定することも可能である。

【0031】
前記離地タイミング指標は、前記(1)式において、tLk、tRkを、それぞれ左右の脚の第kサイクル目における離地の際の時間(例えば、図4中、時間t、t、t等)として求められ、離地タイミングのずれをパーセンテージで表す指標である。

【0032】
前記速度調整指令手段45では、歩行機能障害のある左右何れか一方の患側の脚と、歩行機能障害のない左右何れか他方の健側の脚との間での立脚期の時間差が所定のタイミングで算出され、当該時間差に応じて予め設定されたゲインを乗じることで、患側の脚が載る歩行面Fの減速量が求められ、当該減速量で歩行面Fが減速するように前記駆動制御手段37に指令される。前記ゲインは、各時間差と歩行面Fの速度とをパラメータとした関数になっている。なお、減速量を求める上での患側と健側の時間差としては、その他、遊脚期の時間差や前記単脚支持期の時間差としても良く、また、これら各時間差を入力手段13で任意に選択できるようにしても良い。

【0033】
また、前記速度調整指令手段45では、前記減速量を次のようにして求めることも可能である。すなわち、この場合は、立脚期における患側と健側の時間差と、遊脚期における患側と健側の時間差と、前記単脚支持期における患側と健側の時間差とがそれぞれ算出され、各時間差に対し、重み付けをしたゲインを乗じた上で、それぞれ加算して総合指標が求められ、当該総合指標の大きさから予め記憶された減速量が抽出され、若しくは、前記総合指標に所定のゲインを乗じることで減速量が求められる。

【0034】
更に、前記速度調整指令手段45では、使用者Pが歩行訓練する過程で、前述した各時間差が生じる限り、患側の歩行面Fの速度が徐々に減速するように、減速量を経時的に変化させる指令を駆動制御手段37に対して行っても良い。

【0035】
また、前記速度指令調整手段45では、所定の情報を予めデータベース化し、当該データベースに基づいて、患側と健側との歩行面F,Fの所望の速度差が決定され、当該速度差から前記減速量を求めることもできる。例えば、前記データベースとして、左右両脚の各歩行データの相違を患者の状態に対応させたデータと、患者の状態毎に特定される左右の歩行面F,Fの所望速度差とが予め記憶されているとする。そして、前記データベースにより、歩行データ測定手段41で求めた使用者Pの左右両脚の各歩行データから患者の状態が特定された上で、当該状態に対応する速度差が決定され、健側の歩行面Fの速度を変えずに、患側の歩行面Fの減速量が求められる。

【0036】
次に、本実施形態の歩行リハビリ装置10の使用手順及び作用につき説明する。

【0037】
使用者Pの使用前に、付添者S等が前記閾値算出モードを選択すると、前記閾値算出手段42で、歩行面Fの速度と無負荷時の電流値となる閾値との関係を表す関数が左右各歩行面F,Fそれぞれについて求められ、装置内に記憶される。なお、閾値算出手段42での関数の算出は、必ずしも使用者Pの使用前に行う必要はなく、一定期間毎に定期的に行っても良い。

【0038】
その後、前記関数が求められた状態で、使用者Pが歩行面F,Fに載り、付添者Sが訓練モードを選択して任意の目標速度を入力手段13から入力すると、当該目標速度で左右両側の歩行面F,Fが動作し、使用者Pが歩行を開始する。すると、電流測定部51により、左右両側の各モータ33,34を流れる電流値が所定時間毎にそれぞれ測定され、歩行データ測定手段41では、電流値が測定される度に、測定された電流値と前記閾値が対比され、立脚状態か遊脚状態かが判定される。その結果、立脚相及び遊脚相の経時的な変化を表す歩行データが測定される。そして、提示情報作成手段43では、歩行データ測定手段41で測定された歩行データに基づき、使用者Pの歩行状態に関する各種情報が作成され、歩行の左右非対称性を把握できるようにモニタ16に表示される。同時に、速度調整指令手段45では、前記歩行データに基づき、患側の歩行面Fの減速量が求められ、駆動制御手段37では、当該減速量で減速した速度で患側の歩行面Fが動作するように、モータ33,34の駆動が制御される。

【0039】
従って、このような実施形態によれば、自己の歩行データに基づき、患側の歩行面Fが健側よりも遅くなるように自動設定することができ、簡単な操作で、使用者Pは、左右の各歩行面F,Fに速度差のある状態で歩行訓練を行うことができるという効果を得る。

【0040】
なお、前記実施形態では、閾値算出手段42で歩行面Fの速度と閾値の関係を任意のタイミングで求めることが可能になっているが、閾値算出手段42を設けずに、前記速度と閾値の関係を一定として予め記憶しておくことも可能である。但し、例えば、平ベルト30,31の張力の経時的な変化、装置周囲の温度変化、或いは、平ベルト30,31とその接触部分との摩擦係数の経時的な変化等、トレッドミル11の動作性能を変化させるような要因が発生する場合がある。このような場合に、前記実施形態のように閾値算出手段42を設けると、その都度、使用者Pが歩行面Fに載っていない無負荷時の電流値である閾値を正確に求めることができ、歩行データを測定する際の立脚遊脚判定をより正確に行うことができる。

【0041】
また、前記速度調整指令手段45を省略することもできる。この場合は、付添者Sがモニタ16で使用者Pの左右の歩行状態の差を確認し、入力手段13で患側の歩行面Fの速度を任意の速度に減速するように指令することもできる。このように付添者Sが手入力で左右速度差指令を行うマニュアルモードと、速度調整指令手段45により自動で左右速度差指令を行うオートモードとを任意に選択できるようにしても良い。

【0042】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 歩行リハビリ装置
11 トレッドミル
33 モータ(駆動装置)
34 モータ(駆動装置)
36 検出手段
37 駆動制御手段
41 歩行データ測定手段
42 閾値算出手段
45 速度調整指令手段
F 歩行面
P 使用者
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3