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明細書 :薄膜形成装置並びに薄膜形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4604233号 (P4604233)
公開番号 特開2002-285326 (P2002-285326A)
登録日 平成22年10月15日(2010.10.15)
発行日 平成23年1月5日(2011.1.5)
公開日 平成14年10月3日(2002.10.3)
発明の名称または考案の名称 薄膜形成装置並びに薄膜形成方法
国際特許分類 C23C  14/28        (2006.01)
C23C  14/06        (2006.01)
FI C23C 14/28
C23C 14/06 F
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2001-083161 (P2001-083161)
出願日 平成13年3月22日(2001.3.22)
審査請求日 平成20年3月12日(2008.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000080
【氏名又は名称】タマティーエルオー株式会社
発明者または考案者 【氏名】吉田 善一
個別代理人の代理人 【識別番号】100076439、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 敏三
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開平01-208399(JP,A)
特開平03-177575(JP,A)
調査した分野 C23C 14/00-14/58
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
レーザ光入射窓と、レーザ光入射窓を介して基板の上方で基板面の近傍位置に焦点を結ぶようにレーザ光を照射するレーザ発振器及び集光レンズと、前記のレーザ光が焦点を結ぶ基板面の近傍位置に高密度ガスを供給する手段と、レーザ光入射窓に対向する位置に設けた基板を配置するステージ及び該ステージに配置された基板を設けた高気圧に昇圧可能の真空チャンバーを具備し、前記高密度ガスを供給する手段はポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭素源を入れたルツボを前記真空チャンバー内でヒーターで加熱して気化させるものであることを特徴とするDLC薄膜形成装置。
【請求項2】
レーザ光がパルス発振である請求項1記載のDLC薄膜形成装置。
【請求項3】
レーザ光の波長が紫外領域である請求項1記載のDLC薄膜形成装置。
【請求項4】
基板周辺に内圧が0.1~1MPaとなるようポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭素源を気化させてなるターゲットガスを封入し、基板上方から基板上面近傍のターゲットガスに対してレーザ光を照射し、基板上に薄膜を形成するDLC薄膜形成方法。
【請求項5】
レーザ光がパルス発振である請求項記載のDLC薄膜形成方法。
【請求項6】
レーザ光の波長が紫外領域である請求項記載のDLC薄膜形成方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜形成装置並びに薄膜形成方法に関し、特に、高密度ガスをターゲットとするレーザ・アブレーションを利用した薄膜形成装置並びに薄膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド薄膜やDLC(Diamond Like Carbon)などの薄膜を形成する方法としては、プラズマCVD法やイオンプレーティング法、イオン蒸着法などが広く知られている。これに対して近年、誘電体、圧電体、半導体および高温超電導体の薄膜を形成する方法の一つとして、レーザ・アブレーション法による薄膜形成が注目されている。レーザ・アブレーション法とは、レーザ光を固体のターゲットに照射し、放出された原子、イオン、分子、クラスターを基板上に堆積させて薄膜を形成する方法であり、特開平08-296035号、特開平07-335551号、特開平07-074101号、特開平5-279844、特開平5-331632などに開示されている。
【0003】
このレーザ・アブレーション法によるダイヤモンド薄膜の形成は、光源としてエキシマレーザを用い、カーボンをターゲットとしてスパッタし、炭化水素中で基板に供給することで行われる。薄膜形成装置は、基本的に、光源としてのレーザおよび光学系、ターゲットとしてのバルク材料、ターゲットと対向した基板から構成され、ターゲットと基板は真空チャンバー内に設置される。
【0004】
レーザ・アブレーション法が注目されているのは、主に以下の理由による。
(1)レーザ光の吸収のない限り自由に雰囲気を選ぶことができ、不純物の混入の恐れがなく、超高真空から低真空まで同一の装置が使える。
(2)蒸気圧の異なる多元素の材料を同時に蒸発させることができ、本質的に組成ずれが少ない成膜が可能で、多元素の化合物の薄膜化には有効である。
(3)高パワー密度、かつ、大きな光子エネルギを持ったレーザ光による蒸発種は、種々の活性種を含むため、膜質などの改善ができる可能性もある。
(4)成膜速度が速い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、レーザアブレーション法には、大面積に対応できにくいこと、粒塊が混入すること、基板面に対して生成した膜の均一性並びに密着性が悪いことなどの欠点がある。かかる欠点は、固体のターゲットを用いていることに起因するものであった。
【0006】
本発明は、高密度ガスをターゲットとするレーザ・アブレーションを利用した新しい薄膜形成装置並びに薄膜形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
パルスレーザ光を空気中に集束させると、焦点の近傍の空気に瞬間的に光エネルギーが吸収されて、空気を構成する気体分子はプラズマになり、このプラズマは超音速で膨張する球状ピストンとなって、球状衝撃波が駆動できることはよく知られている(高山和喜著「ショックウェーブ」オーム社 73~76頁など)。発明者らは、この衝撃波が高密度ガス領域においては、レーザ・アブレーション法における高品質膜形成に寄与することを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち、この衝撃波を利用することによりターゲットを固体とせずにアブレーションを行うことが可能となる。これにより基板上に緻密で高純度の薄膜を形成することができ、また、従来なしえなかった大面積薄膜を高速に形成することが可能となる。
【0008】
本発明の目的は次の手段によって達成された。
(1) レーザ光入射窓と、レーザ光入射窓を介して基板の上方で基板面の近傍位置に焦点を結ぶようにレーザ光を照射するレーザ発振器及び集光レンズと、前記のレーザ光が焦点を結ぶ基板面の近傍位置に高密度ガスを供給する手段と、レーザ光入射窓に対向する位置に設けた基板を配置するステージ及び該ステージに配置された基板を設けた高気圧に昇圧可能の真空チャンバーを具備し、前記高密度ガスを供給する手段はポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭素源を入れたルツボを前記真空チャンバー内でヒーターで加熱して気化させるものであることを特徴とするDLC薄膜形成装置。
) レーザ光がパルス発振である(1)項に記載のDLC薄膜形成装置。
) レーザ光の波長が紫外領域である(1)項に記載のDLC薄膜形成装置。
) 基板周辺に内圧が0.1~1MPaとなるようポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭素源を気化させてなるターゲットガスを封入し、基板上方から基板上面近傍のターゲットガスに対してレーザ光を照射し、基板上に薄膜を形成するDLC薄膜形成方法。
) レーザ光がパルス発振である()項に記載のDLC薄膜形成方法。
) レーザ光の波長が紫外領域である()項に記載のDLC薄膜形成方法。
【0009】
本発明においてレーザ光が焦点を結ぶ位置とは基板上ではなく、それが最も近くても基板面より離れた位置であることが必要である。これは、この領域において高密度ガスが作用して前記の衝撃波が発生することが薄膜の形成上、必要であると考えられるからである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のレーザ・アブレーション薄膜形成装置の好ましい実施態様を、図面に従って説明する。なお、以下の各図において同符号は同じものを示す。
図1において、チャンバー15にはレーザ光入射窓14が設けられており、レーザ光入射窓14の外部近傍には、例えばエキシマレーザ等のレーザ発振器11及び集光レンズ13が設けられている。レーザ発振器11から発振されたアブレーション用レーザ光12は、レーザ光入射窓14からチャンバー15に入射し、集光レンズ13により所定の位置12aに集光される。チャンバー15には真空ポンプ16が設けられており、チャンバー15内を真空にすることができる。チャンバー15の内部には、レーザ光入射窓14に対向する位置にステージ20が設けられ、ステージ20には基板21が設置されている。レーザ光12が照射される所定の位置12aは、基板の上空にある。さらに、チャンバー15にはガス導入口22が設けられている。また、チャンバー15内にはヒーター17が設けられており、ヒーター17に設置したルツボ18を加熱してルツボ18内に装荷した樹脂をターゲットガスに気化することができる。
【0011】
次に、上記構成を有するレーザ・アブレーション薄膜形成装置を用いて、DLC薄膜を形成する手順を説明する。
本発明で用いるターゲットガスは、目的とする薄膜に必要な元素を含む化合物である。例えば、ダイヤモンド膜やDLCを形成する場合には、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる炭素源をターゲットガスとして用いることができる。
【0012】
基板面の近傍位置に高密度ターゲットガスを供給する手段としては、ターゲットガス源が気体の場合にはガス導入口22から導入することができるが本発明においては液体または固体の場合でありチャンバー15内においてヒーター17で気化することにより反応域(衝撃波発生域)に供給することができる。また、チャンバー内壁面及び基板も気化物が直接堆積しないように加熱した。
【0013】
まず、真空ポンプ16を用いてチャンバー15内を真空にした後に、ターゲットガスをチャンバー15内に封入する。ターゲットガスを封入することによりチャンバー15内は高気圧とする。ここで高気圧とは大気圧以上の圧力の状態をいい、好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは0.3~1MPaである。ターゲットガスは要求される内圧となるまで供給する。
【0014】
本発明においては、樹脂によりガス・アブレーションを行う樹脂を細かくして入れたルツボ18をチャンバー15内にあるヒーター17に取り付けた後、真空ポンプ16を使いチャンバー15内を真空にし、ヒーター17の電源装置を操作し、ルツボ18の中に入っている樹脂を気化させることにより、ターゲットガスをチャンバー15内に充填する。
【0015】
チャンバー15に設けられたレーザ光入射窓14を介してレーザ光12を基板21上面に向けて照射する。この際、レーザの焦点の位置12aは基板21表面ではなく、基板21から1~20mm、好ましくは5~10mm上空の位置に焦点が合うようにするのが好ましい。これは、この領域において高密度ガスが作用して衝撃波が発生することが薄膜形成上必要であると考えられるからである。
【0016】
レーザ発振器11として、例えば、波長248nm、パルス幅12~16ns、出力310mJ、エネルギー密度577.78mJ/cm、繰り返し周波数10Hzのレーザ光12を出力するエキシマレーザを用いる。レーザの波長や強度は、原料ガスがレーザ光を効率的に吸収するように選び、レーザを照射すればよい。レーザ光12は高出力が可能であることからパルス発振であることが望ましい。また、その波長は紫外領域であることが望ましく、好ましくは150~300nmである。
【0017】
基板21上をレーザ光12で走査して薄膜を形成する。その機構は図2に示すように、高密度ターゲットガスにレーザ光12を照射すると、ターゲットガス分子23の解離や励起が起こると同時に衝撃波24が駆動し、その影響により高速粒子が基板に飛来し、これにより緻密で高純度の薄膜25を作成することができると考えられる。
【0018】
本発明のレーザ・アブレーション薄膜形成装置の第2の実施態様を、図3を参照しながら説明する。図3において、第1の実施態様と異なる点は、チャンバー15の形状を変形させたことである。レーザ光入射窓14と基板21の距離を数mmに狭めることにより、基板近傍を高気圧としやすくなるよう設計されている。レーザ光12を矢印Aの方向に移動させながら基板21上空を走査することにより薄膜を形成する。
【0019】
本発明のレーザ・アブレーション薄膜形成方法について説明する。
まず、真空ポンプを用いてチャンバー内を真空にした後に、ターゲットガスを供給する。ターゲットガスを封入することにより基板周辺を高気圧とする。好ましくは0.1~1MPa、より好ましくは0.3~1MPaである。ターゲットガスは要求される内圧となるまで供給する。
次いで、レーザ光を基板上面近傍のターゲットガスに向けて照射し、基板上をレーザ光で走査する。レーザの波長や強度は、原料ガスがレーザ光を効率的に吸収するように選び、レーザを照射すればよい。レーザ光は高出力が可能であることからパルス発振であることが望ましい。また、その波長は紫外領域であることが望ましく、好ましくは150~300nmである。
高密度ターゲットガスにレーザ光を照射すると、解離や励起が起こると同時に衝撃波駆動の高速粒子が基板に飛来すると考えられ、これにより緻密で高純度の薄膜を作成することができる。
【0020】
【実施例】
本発明の薄膜形成装置を用いて薄膜形成を試みた。レーザ発振器としては、波長248nm、パルス幅12~16ns、出力310mJ、エネルギー密度577.78mJ/cm、繰り返し周波数10Hzのレーザ光12を出力するKrFエキシマレーザ発振器(商品名:INDEX848、住友重機械工業製)を用いた。また、ターゲットガス源としてポリイミド樹脂(商品名:カプトンHタイプ、デュポン社製、50μm厚ポリイミドフィルム)を用いた。
まず、ポリイミド樹脂1gを細かくして入れたルツボをチャンバー内にあるヒーターに取り付けた後、真空ポンプを使いチャンバー内を真空にし、ヒーターの電源装置を操作し、ルツボの中に入っている樹脂を気化させることにより、ターゲットガスをチャンバー内に高密度に充填した。このときのチャンバー内の圧力は0.1MPaとした。
次いで、チャンバーに設けられたレーザ光入射窓を介してレーザ光を基板上面に向けて照射した。この際、レーザの焦点の位置は基板から10mm上空の位置に焦点が合うようにした。
基板上をレーザ光で5分間走査したところ、基板上のレーザを照射した部分に膜厚が約1μmの薄膜が形成された。その薄膜の硬度を測定したところ、ビッカース硬度がダイヤモンドの10に対して9以上であることがわかった。
【0021】
比較例
レーザの焦点の位置を基板表面としたこと以外は実施例と全く同様にして、薄膜形成を試みたが、薄膜は形成されなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、ターゲットを固体とせずにアブレーション成膜を行うことが可能となる。従って、これにより基板上に緻密で高純度の薄膜を経済的に形成することができ、また、従来なしえなかった大面積薄膜を高速に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザ・アブレーション薄膜形成装置の第1の実施態様を示す構成図
【図2】本発明の薄膜形成の概念図
【図3】本発明のレーザ・アブレーション薄膜形成装置の第2の実施態様を示す断面図
【符号の説明】
11:レーザ発振器
12:レーザ光
13:集光レンズ
14:レーザ光入射窓
15:チャンバー
16:真空ポンプ
17:ヒーター
18:ルツボ
20:ステージ
21:基板
22:ガス導入口
23:ターゲットガス分子
24:衝撃波
25:薄膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2