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明細書 :生体関連物質の銀染色方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4452890号 (P4452890)
登録日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発行日 平成22年4月21日(2010.4.21)
発明の名称または考案の名称 生体関連物質の銀染色方法
国際特許分類 G01N  27/447       (2006.01)
G01N   1/30        (2006.01)
G01N   1/10        (2006.01)
FI G01N 27/26 315G
G01N 27/26 315F
G01N 27/26 301A
G01N 1/30
G01N 1/10 G
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2006-537758 (P2006-537758)
出願日 平成17年9月27日(2005.9.27)
国際出願番号 PCT/JP2005/017769
国際公開番号 WO2006/035781
国際公開日 平成18年4月6日(2006.4.6)
優先権出願番号 2004282227
優先日 平成16年9月28日(2004.9.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年7月27日(2007.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】大川 麻子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 特開平2-80958(JP,A)
米国特許第5492810(US,A)
SWAIN M, ROSS N W,A silver stain protocol for proteins yielding high resolution and transparent background in sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gels. ,Electrophoresis,1995年,Vol.16 No.6,Page.948-951
BLUM H, BEIER H, GROSS H J ,Improved silver staining of plant proteins, RNA and DNA in polyacrylamide gels. ,Electrophoresis,1987年,Vol.8 No.2 ,Page.93-99
GUILLEMETTE J G, LEWIS P N,Detection of subnanogram quantities of DNA and RNA on native and denaturing polyacrylamide and agarose gels by silver staining. ,Electrophoresis,1983年,Vol.4 No.1,Page.92-94
調査した分野 G01N 27/447
G01N 1/10
G01N 1/30
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
生体関連物質を電気泳動により分離したゲルを銀染色する方法であって、少なくとも下記の工程:
(a)電気泳動後の未処理のゲルをチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬する工程;
(b)上記工程(a)で得られたゲルをエタノール及び酢酸ナトリウム水溶液の混合物に浸漬する工程;
(c)上記工程(b)で得られたゲルをエタノール及び硝酸銀水溶液の混合物に浸漬する工程
を含む方法。
【請求項2】
上記工程(c)において、上記工程(b)で得られたゲルを水洗することなくエタノール及び硝酸銀水溶液の混合物に浸漬する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体関連物質を電気泳動により分離したゲルを銀染色する方法であって、少なくとも下記の工程:
(a)電気泳動後の未処理のゲルをチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬する工程;
(a-2)上記工程(a)で得られたゲルをエタノール及び酢酸水溶液の混合物に浸漬する工程;
(b')上記工程(a-2)で得られたゲルをエタノール及び酢酸ナトリウム水溶液の混合物に浸漬する工程;
(c')上記工程(b')で得られたゲルを水洗することなくエタノール及び硝酸銀水溶液の混合物に浸漬する工程
を含む方法。
【請求項4】
さらに下記の工程:
(d)上記染色工程(c)又は(c')で得られたゲルを水で洗浄する工程;
(e)上記工程(d)で得られたゲルを炭酸ナトリウム及びホルマリンの混合物を含む水溶液に浸漬する工程;及び
(f)上記工程(e)で得られたゲルを酸性水溶液に浸漬する工程
を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ゲルがポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲルである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
生体関連物質が核酸又はタンパク質である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質又は核酸などの生体関連物質を対象とした銀染色方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の開発以来、タンパク質や核酸などの生体試料の生化学的解析においてPAGEは欠かすことのできない手段となっている。電気泳動後のポリアクリルアミドゲル上のタンパク質を検出する手段としては、例えばCBB染色法、銀染色法、蛍光染色法などを利用することができる。生体組織や細胞内のタンパク質の全体像(プロテオーム)を解析して医薬開発に役立てようとする総合的研究(プロテオミクス)においては、とりわけ検出感度の高い手段が求められているが、これらの手段のうち、銀染色法は特別な検出装置を必要とせずに最も高い検出感度を得られる方法として当業界で汎用されている。現在提供されている市販の銀染色キット等を用いて銀染色を行なった場合、タンパク質量が数100pg以上での検出が可能である。
【0003】
しかしながら、従来の銀染色法を用いても、1細胞あたりの発現量の低いタンパク質を検出するためには108~109個以上の細胞が必要であり、タンパク質の回収効率を考慮するとさらに多くの細胞数が必要となり、現実的な解析は困難であるという問題がある。このような事情から、少ないタンパク質量、たとえば数10pg程度のタンパク質量を用いてPAGEを行なった場合にもゲル上のタンパク質を鮮明に可視化できる方法の開発が切望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、電気泳動後のポリアクリルアミドゲルなどのゲル上の生体関連物質を高感度に検出する方法を提供することにある。より具体的には、電気泳動後のポリアクリルアミドゲルなどのゲル上の生体関連物質を銀染色により極めて高感度に検出する方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、下記の工程に従って銀染色を行なうことにより、極めて高感度に生体関連物質を検出できることを見出した。
すなわち、本発明により、生体関連物質を電気泳動により分離したゲルを銀染色する方法であって、少なくとも下記の工程:
(a)電気泳動後の未処理のゲルをチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬する工程;
(b)上記工程(a)で得られたゲルをエタノール及び酢酸ナトリウム水溶液の混合物に浸漬する工程;
(c)上記工程(b)で得られたゲルをエタノール及び硝酸銀水溶液の混合物に浸漬する工程
を含む方法が提供される。
【0006】
上記発明の好ましい態様によれば、上記工程(c)において、上記工程(b)で得られたゲルを水洗することなくエタノール及び硝酸銀水溶液の混合物に浸漬する上記の方法が提供される。
さらに好ましい態様によれば、生体関連物質を電気泳動により分離したゲルを銀染色する方法であって、少なくとも下記の工程:
(a)電気泳動後の未処理のゲルをチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬する工程;
(a-2)上記工程(a)で得られたゲルをエタノール及び酢酸水溶液の混合物に浸漬する工程;
(b')上記工程(a-2)で得られたゲルをエタノール及び酢酸ナトリウム水溶液の混合物に浸漬する工程;
(c')上記工程(b')で得られたゲルを水洗することなくエタノール及び硝酸銀水溶液の混合物に浸漬する工程
を含む方法が提供される。
上記方法において、ゲルとしては、例えばポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲルを用いることができ、好ましくはポリアクリルアミドゲルを用いることができる。
【0007】
別の観点からは、本発明により、上記の方法を行なうためのキットが提供される。上記のキットは上記方法の各工程において用いられる試薬の組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法に従って銀染色を行なうことにより、ゲル電気泳動で分離された生体関連物質を極めて高感度に検出することができる。本発明の方法では、銀染色工程においてホルマリンの使用を極力抑えることが可能であり、染色後のゲルに含まれる生体関連試料が化学修飾を受ける可能性が低いことから、染色後の生体関連試料を質量分析計により正確に分析できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例1により銀染色を行なったポリアクリルアミドの写真である。BSAはアルブミン、CAはカーボニックアンヒドレーゼ、LAはα-ラクトアルブミンを示し、図中の数字は各タンパク質の検出された最低量である。
【図2】例2により銀染色を行なったポリアクリルアミドゲルの写真である。図中、(A)の矢印はカーボニックアンヒドレーゼのバンドを示す。(B)は(A)中に矢印で示したバンドの質量分析スペクトルを示した図である。
【図3】例3により銀染色を行ったポリアクリルアミドゲルの写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法は、生体関連物質を電気泳動により分離したゲルを銀染色する方法であって、少なくとも上記工程(a)、(b)、及び(c)を含むことを特徴としており、好ましい態様によれば、上記工程(a)、(a-2)、(b')、及び(c')を含むことを特徴としている。本明細書において、「生体関連物質」とは生体を構成する高分子物質のことを意味しており、より具体的には、例えば、ゲル電気泳動により分離及び検出が可能な核酸(DNA及びRNAを含む)又はタンパク質など例示することができるが、これらに限定されることはない。また、生体関連物質は天然由来のものに限定されず、非天然型の核酸や遺伝子工学の手法により新たに創製されたタンパク質などを含めて最も広義に解釈しなければならない。生体関連物質をポリアクリルアミドゲル電気泳動やアガロースゲル電気泳動などにより分離する方法は当業界で汎用されているが、本発明の方法は、任意の種類のゲルを用いることが可能である。ゲルとしては、例えばアガロースゲル又はポリアクリルアミドゲルなどを挙げることができ、ポロアクリルアミドゲルを用いることが好ましい。アガロースゲル又はポリアクリルアミドゲルは、生体関連物質の種類に応じて種々の濃度のものを選択して使用できる。また、本発明の方法において、電気泳動の方法も特に限定されることはない。
【0011】
工程(a)は、電気泳動後の未処理のゲルをチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬する工程である(増感1工程)。この工程は、ゲル上に染色されるタンパク質のバンドの白濁化を防ぎ、明瞭なバンドを示すために行なわれる。従来、この工程は、市販の銀染色キット等で採用されている標準に従って硝酸銀水溶液等への浸漬を行う染色工程直前に行なわれていたが、本発明者らの研究によれば、この従来の工程を採用すると、チオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬した後に水等による十分な洗浄を行わないと背景が染色され、染色による十分なタンパク質の検出感度が得られなくなるという問題が生じることが判明した。
【0012】
本発明の方法では、電気泳動を行なった直後に得られる未処理のゲルをチオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬する工程を採用することにより、その後の工程(a-2)(固定工程)及び(b)又は(b')(増感2工程)を経ることで背景の染色を抑え、かつ、チオ硫酸ナトリウム水溶液への浸漬により得られる増感効果を十分に発揮することができる。 工程(a)において、チオ硫酸ナトリウム水溶液のチオ硫酸ナトリウム濃度は特に限定されないが、例えば0.02%程度が好ましい。浸漬時間も特に限定されないが、通常は2分程度が好ましい。チオ硫酸ナトリウム濃度を高くし浸漬時間を長くすると、背景が染色されてしまう場合がある。
【0013】
上記工程(a)に続き、工程(a)で得られたゲルをエタノール及び酢酸ナトリウム水溶液の混合物に浸漬する工程を行なうことができる(工程(b):増感2工程)。この工程(b)に先立って、工程(a)で得られたゲルをエタノール及び酢酸水溶液の混合物に浸漬する工程(工程(a-2):固定工程)を付加してもよく、一般的には、この固定工程を採用することが望ましい。その場合、工程(a-2)に続いて、工程(a-2)で得られたゲルをエタノール及び酢酸ナトリウム水溶液の混合物に浸漬することができる(工程(b'))。
【0014】
エタノール及び酢酸水溶液の混合物にゲルを浸漬する固定工程において、混合物中のエタノールの濃度は特に限定されないが、例えば混合物全重量に対して40重量%程度であることが好ましい。また、同混合物中の酢酸の濃度は特に限定されないが、例えば10重量%程度であることが好ましい。十分なタンパク質の固定化を達成するために、固定工程における浸漬時間は30分以上とすることが好ましく、エタノール及び酢酸水溶液の混合物を適宜交換して複数回の浸漬を行うことが好ましい。特に浸漬時間30分で2回の浸漬を行うことが好ましい。固定工程の浸漬時間は長時間(例えば一晩)とすることも可能であるが、不必要に長時間の浸漬を行なうと低分子量のタンパク質の検出感度低下を生じることがある。
【0015】
エタノール及び酢酸ナトリウム水溶液の混合物にゲルを浸漬する増感2工程において、混合物中のエタノールの濃度は特に限定されないが、例えば混合物の全重量に対して20~40重量%程度であることが好ましく、30重量%であることがより好ましい。混合物中の酢酸ナトリウムの濃度も特に限定されないが、例えば0.5 M~1.0 M程度であることが好ましい。0.5 M以下、及び1.0 M以上の濃度では十分な増感効果を得ることができない場合がある。また、増感2工程における混合物への浸漬時間は30分以上とすることが好ましいが、不必要に長時間の浸漬を行なうと低分子量のタンパク質の検出感度低下を生じることがある。
【0016】
続いて、工程(b)又は工程(b')で得られたゲルをエタノール及び硝酸銀水溶液の混合物に浸漬する工程を行なう(染色工程)。従来報告された論文(Schevchenko A et.al. Anal.Chem.(1996)68 pp850-858など)や市販の銀染色キット等では、ゲルを酢酸ナトリウムで処理する増感2工程と硝酸銀で処理する染色工程との間に水などによる洗浄を行う工程が採用されているが、本発明者らの研究によれば、増感2工程と染色工程の間に水等による洗浄をおこなうと低分子量のタンパク質の検出感度が低下する等の問題が生じることが判明した。本発明の方法の好ましい態様によれば、増感2工程(工程(b)又は工程(b'))で得られたゲルを水洗することなく染色工程に付することにより、増感2工程で得られる検出感度の増感効果を十分に発揮させることができ、低分子量のタンパク質の検出感度も十分保持される。
【0017】
従来の銀染色方法では、染色工程において硝酸銀水溶液、硝酸銀及びホルマリン混合水溶液、又は硝酸銀及びチオ硫酸ナトリウム混合水溶液などにゲルを浸漬する工程が採用されている。しかしながら、硝酸銀水溶液を単独で用いた場合には染色性が不十分であり、硝酸銀及びホルマリン水溶液を用いた場合には染色性は向上するものの、タンパク質へのアルデヒドによる化学修飾が引き起こされる可能性があることから、質量分析計での解析を行う場合にはホルマリンの使用は極力排除しなければならないという問題がある。また、硝酸銀及びチオ硫酸ナトリウム混合水溶液ではゲルの組成変化による染色の低下が生じるという問題がある。本発明者らの研究により、硝酸銀水溶液にエタノールを添加することにより、ゲルの背景の染色を抑え、かつ染色されるタンパク質のバンドを明確化して検出感度の向上を達成できることが見出された。
【0018】
染色工程において、エタノール及び硝酸銀水溶液の混合物におけるエタノールの濃度は特に限定されないが、例えば混合物の全重量に対して15~20重量%程度であり、20重量%であることがより好ましい。また、同混合物における硝酸銀の濃度は混合物全重量に対して0.2~0.3重量%程度であることが好ましく、0.25重量%であることがより好ましい。染色工程における浸漬時間は15~20分程度であることが好ましい。浸漬時間が長くなると、その後の洗浄工程において余剰の銀イオンを洗浄しきれずに、結果として背景の染色が生じることがある。
【0019】
上記に説明したとおり、本発明の方法では、上記の工程(a-2)、(b)(又は(b'))、及び(c)(又は(c'))において、エタノールと水とを含む混合溶液を用いており、これは本発明の特徴の一つである。従来、固定工程及び/又は増感工程でメタノールと水との混合物を用いる報告があるが、本発明者らの研究によれば、メタノールを用いる場合には、全体に染色が薄くなり、検出感度が低下するという問題が生じることが判明した。また、本発明者らの研究により、上記の問題はメタノールに替えてエタノールを用いることにより解決できることが見いだされた。さらに高級のアルコールを用いた場合には、検出感度に大きな差は見られないが背景の染色が高くなる傾向が認められることから、エタノールを採用することが最適である。なお、工程(a)の増感1工程において少量のエタノールを添加しておくことは差し支えない。なお、上記工程(a)、(a-2)、(b)、(b')、(c)、及び(c')を行なう温度は特に限定されないが、例えば25℃程度が好ましい。
【0020】
工程(c)に続き、(d)上記染色工程で得られたゲルを水で洗浄する工程(洗浄工程);(e)上記洗浄工程で得られたゲルを炭酸ナトリウム及びホルマリンの混合物を含む水溶液に浸漬する工程(現像工程);及び(f)上記工程(e)で得られたゲルを酸性水溶液に浸漬する工程(現像停止工程)を行なうことにより、ゲルの銀染色を行なうことができる。上記工程(d)から(e)は当業界で通常用いられている方法に従って行なうことができる。
【0021】
洗浄工程は、なるべく短時間で、かつ余剰の銀イオンを十分除去できるように行うことが望ましい。洗浄が不十分だと背景の染色が認められ、タンパク質のバンドが検出できない場合がある。具体的には、30秒~1分程度にわたり浸漬及び振とうする工程を2~3回繰り返し行うのが好ましい。現像工程において、該水溶液における炭酸ナトリウムの濃度は、例えば2~3重量%であることが好ましく、2.5重量%であることがさらに好ましい。該水溶液におけるホルマリンの濃度は、例えば0.04~0.06重量%であることが好ましく、0.06重量%であることがより好ましい。現像工程における浸漬時間は染色されるタンパク質との関係で適宜決定することができるが、通常は1ないし10分程度である。不必要に長時間の浸漬を行なうと、タンパク質がアルデヒドにより化学修飾を受ける可能性があり、質量分析計による解析が不可能になる場合がある。現像停止工程において用いられる酸の種類は特に限定されず、通常用いられる鉱酸類や酢酸などの有機酸などを適宜使用可能である。例えば、酸性水溶液として酢酸水溶液を用いる場合には、酢酸の濃度は例えば1重量%以上あれば十分である。
【0022】
本発明の方法は自動化することも可能であり、少なくとも上記工程(a)、(b)、及び(c)を含む銀染色方法を行なうための銀染色のための自動化装置、好ましくは少なくとも上記工程(a)、(a-2)、(b')、(c')を含む銀染色方法を行なうための自動化装置などは本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。さらに、上記工程(a)、(b)、及び(c)に加えて上記工程(d)ないし(e)を含めた銀染色方法を行なうための銀染色のための自動化装置も本発明の範囲に包含される。また、本発明により提供されるキットは、上記の工程(a)、(b)、及び(c)において用いられる試薬のうち少なくとも2種以上を含むキットとして提供される。例えば、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及び硝酸銀からなる群から選ばれる2種以上の試薬の組み合わせなどが好ましい。また、この試薬の組み合わせにエタノール及び/又は酢酸を組み合わせて提供してもよい。さらに、工程(e)で用いられる炭酸ナトリウム及びホルマリンを組み合わせて提供してもよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
市販の15%ポリアクリルアミドゲル(バイオクラフト社製)を用いて、市販のマーカー(LMWマーカー;アマシャムバイオサイエンス社製)をタンパク質の量を計算して添加し、20mAの定電流で電気泳動した。サンプルバッファーは市販のメルカプトエタノールを含むもの(第一化学社製)を用いた。電気泳動後のポリアクリルアミドゲルを直ちに0.02%チオ硫酸ナトリウム水溶液に2分浸漬し、続いて40%エタノール/10%酢酸混合水溶液に30分×2回浸漬し、30%エタノール/0.5 M酢酸ナトリウム混合水溶液に30分浸漬し、さらに20%エタノール/0.25%硝酸銀混合水溶液に20分浸漬して銀染色を行なった。上記で得られたポリアクリルアミドゲルを水で1分×2回洗浄し、2.5%炭酸ナトリウム/0.06%ホルマリン混合水溶液に6分浸漬し、1%酢酸水溶液に5分浸漬することにより現像及び現像停止を行なった。得られたポリアクリルアミドゲルの写真を図1に示す。図中、BSAはアルブミン、CAはカーボニックアンヒドレーゼ、LAはα-ラクトアルブミンを示す。図中の数字は各タンパク質の検出された最低量であり、それぞれ、BSAが30pg、CAが30pg、LAが42pgであった。図中、BSA及びCAの添加量は、左のレーンより100ng、50ng、10ng、5ng、1ng、500pg、100pg、50pg、30pg、10pg、5pg、3pgであり、同じくLAの添加量は140ng、70ng、14ng、7ng、1.4ng、700pg、140pg、70pg、42pg、14pg、7pg、4.2pgである。
【0024】
例2
市販の15%ポリアクリルアミドゲル(バイオクラフト社製)を用いて、市販のカーボニックアンヒドレーゼ(CA;シグマ社製)を1レーンあたり1μg添加し、20mAの定電流で電気泳動した。サンプルバッファーは市販のメルカプトエタノールを含むもの(第一化学社製)を用いた。電気泳動後のポリアクリルアミドゲルを直ちに0.02%チオ硫酸ナトリウム水溶液に2分浸漬し、続いて40%エタノール/10%酢酸混合水溶液に30分×2回浸漬し、30%エタノール/0.5 M酢酸ナトリウム混合水溶液に30分浸漬し、20%エタノール/0.25%硝酸銀混合水溶液に20分浸漬して銀染色を行なった。上記で得られたゲルを水で1分×2回洗浄し、2.5%炭酸ナトリウム/0.06%ホルマリン混合水溶液に5分浸漬し、1%酢酸水溶液に5分浸漬することにより現像及び現像停止を行なった。得られたポリアクリルアミドゲルの写真を図2(A)に示す。
【0025】
図2(A)の矢印により示したバンドを切り出した後、100mMチオ硫酸ナトリウム水溶液、30mMヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液の1:1混合水溶液で脱色し、水で数回洗浄した。水を抜き、ゲルを約1mm3の大きさに細分化して乾固した。必要量のトリプシン(プロメガ社製)を含んだ50mM重炭酸アンモニウム、2% アセトニトリル水溶液(pH8.0)で37℃にて一晩処理し、目的タンパク質を断片化した。断片化したペプチドは逆相樹脂充填ピペットチップを用いて抽出、脱塩、及び濃縮した。得られた断片化ペプチドを質量分析計(MALDI-TOF-TOF)で解析した質量分析スペクトルを図2(B)に示す。このスペクトルからタンパク質を検索(ペプチドマスフィンガープリンティング法)したところ、カーボニックアンヒドレーゼが検索され、アミノ酸配列のカバー率は74%であった。
【0026】
例3(核酸の分離及び銀染色)
市販の12.5%アクリルアミドゲル(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて、市販のマーカー(100bp ladder;アマシャムバイオサイエンス社製)を添加し、50mAの定電流で電気泳動した。サンプルバッファーとしてはTris-EDTAバッファー(pH7.5)を用いた。電気泳動後のポリアクリルアミドゲルを直ちに0.02%チオ硫酸ナトリウム水溶液に2分浸漬し、続いて40%エタノール/10%酢酸混合水溶液に30分×2回浸漬し、30%エタノール/0.5M酢酸ナトリウム混合水溶液に30分浸漬し、20%エタノール/0.25%硝酸銀混合水溶液に20分浸漬した。上記で得られたポリアクリルアミドゲルを水により1分×2回洗浄し、2.5%炭酸ナトリウム/0.06%ホルマリン混合水溶液に6分浸漬し、1%酢酸水溶液に5分浸漬することにより現像及び現像停止を行った。得られたポリアクリルアミドゲルの写真を図3に示す。図中各レーンには全核酸量で左のレーンより2.5μg、1.25μg、625ng、312.5ng、156.25ng、78.15ng、39.1ng、19.55ng、9.8ng、4.9ng、2.45ng、1.25ngである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の方法に従って銀染色を行なうことにより、ゲル電気泳動で分離された生体関連物質を極めて高感度に検出することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2