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明細書 :固体高分子型燃料電池用セパレータおよびそれを用いた固体高分子型燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4336855号 (P4336855)
公開番号 特開2005-294083 (P2005-294083A)
登録日 平成21年7月10日(2009.7.10)
発行日 平成21年9月30日(2009.9.30)
公開日 平成17年10月20日(2005.10.20)
発明の名称または考案の名称 固体高分子型燃料電池用セパレータおよびそれを用いた固体高分子型燃料電池
国際特許分類 H01M   8/02        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
H01M   8/24        (2006.01)
FI H01M 8/02 R
H01M 8/10
H01M 8/24 R
請求項の数または発明の数 5
全頁数 27
出願番号 特願2004-108598 (P2004-108598)
出願日 平成16年3月31日(2004.3.31)
審査請求日 平成17年3月15日(2005.3.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】594156880
【氏名又は名称】三重県
発明者または考案者 【氏名】中北 賢司
【氏名】富村 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100103252、【弁理士】、【氏名又は名称】笠井 美孝
審査官 【審査官】須田 裕一
参考文献・文献 特開2001-143740(JP,A)
特開2002-298872(JP,A)
特開2003-132934(JP,A)
特開2003-100319(JP,A)
特開2002-083610(JP,A)
調査した分野 H01M 8/02
H01M 8/10
H01M 8/24
特許請求の範囲 【請求項1】
固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して該酸化電極に重ね合わされて該酸化電極の表面に酸化ガス流路を形成する第一セパレータと、該膜/電極接合体の該燃料電極に重ね合わされて該燃料電極の表面に燃料ガス流路を形成する第二セパレータとからなる、固体高分子型燃料電池用セパレータであって、
前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて、周辺縁部に位置して積層方向で連通せしめられる酸化ガス供給孔と酸化ガス排出孔,燃料ガス供給孔と燃料ガス排出孔,冷却水供給孔と冷却水排出孔を、少なくとも各一対形成する一方、
前記第一セパレータの前記酸化電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる酸化ガス用溝を複数形成して、それら各酸化ガス用溝の一方の端部を前記酸化ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記酸化ガス排出孔に接続し、
前記第二セパレータの前記燃料電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる燃料ガス用溝を複数形成して、それら各燃料ガス用溝の一方の端部を前記燃料ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記燃料ガス排出孔に接続し、
前記第一セパレータ又は前記第二セパレータにおける前記主面と裏側の副面において、少なくとも一本の冷却用溝を形成して、該冷却用溝の一方の端部を前記冷却水供給孔に接続すると共に他方の端部を前記冷却水排出孔に接続して、
記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第一辺縁部の上端付近に前記酸化ガス供給孔を形成する一方、該各第一辺縁部の下端付近に前記酸化ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第一セパレータの前記副面において、該第一辺縁部に位置して、該酸化ガス供給孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス供給用接続凹所と、該酸化ガス排出孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該酸化ガス供給用接続凹所を前記酸化ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる酸化ガス供給側貫通孔と、該酸化ガス排出用接続凹所を該酸化ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる酸化ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第一セパレータを板厚方向に貫通して形成したことを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して該酸化電極に重ね合わされて該酸化電極の表面に酸化ガス流路を形成する第一セパレータと、該膜/電極接合体の該燃料電極に重ね合わされて該燃料電極の表面に燃料ガス流路を形成する第二セパレータとからなる、固体高分子型燃料電池用セパレータであって、
前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて、周辺縁部に位置して積層方向で連通せしめられる酸化ガス供給孔と酸化ガス排出孔,燃料ガス供給孔と燃料ガス排出孔,冷却水供給孔と冷却水排出孔を、少なくとも各一対形成する一方、
前記第一セパレータの前記酸化電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる酸化ガス用溝を複数形成して、それら各酸化ガス用溝の一方の端部を前記酸化ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記酸化ガス排出孔に接続し、
前記第二セパレータの前記燃料電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる燃料ガス用溝を複数形成して、それら各燃料ガス用溝の一方の端部を前記燃料ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記燃料ガス排出孔に接続し、
前記第一セパレータ又は前記第二セパレータにおける前記主面と裏側の副面において、少なくとも一本の冷却用溝を形成して、該冷却用溝の一方の端部を前記冷却水供給孔に接続すると共に他方の端部を前記冷却水排出孔に接続して、
記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第二辺縁部の上端付近に前記燃料ガス供給孔を形成する一方、該各第二辺縁部の下端付近に前記燃料ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第二セパレータの前記副面において、該第二辺縁部に位置して、該燃料ガス供給孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス供給用接続凹所と、該燃料ガス排出孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該燃料ガス供給用接続凹所を前記燃料ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる燃料ガス供給側貫通孔と、該燃料ガス排出用接続凹所を該燃料ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる燃料ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第セパレータを板厚方向に貫通して形成したことを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して該酸化電極に重ね合わされて該酸化電極の表面に酸化ガス流路を形成する第一セパレータと、該膜/電極接合体の該燃料電極に重ね合わされて該燃料電極の表面に燃料ガス流路を形成する第二セパレータとからなる、固体高分子型燃料電池用セパレータであって、
前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて、周辺縁部に位置して積層方向で連通せしめられる酸化ガス供給孔と酸化ガス排出孔,燃料ガス供給孔と燃料ガス排出孔,冷却水供給孔と冷却水排出孔を、少なくとも各一対形成する一方、
前記第一セパレータの前記酸化電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる酸化ガス用溝を複数形成して、それら各酸化ガス用溝の一方の端部を前記酸化ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記酸化ガス排出孔に接続し、
前記第二セパレータの前記燃料電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる燃料ガス用溝を複数形成して、それら各燃料ガス用溝の一方の端部を前記燃料ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記燃料ガス排出孔に接続し、
前記第一セパレータ又は前記第二セパレータにおける前記主面と裏側の副面において、少なくとも一本の冷却用溝を形成して、該冷却用溝の一方の端部を前記冷却水供給孔に接続すると共に他方の端部を前記冷却水排出孔に接続して、
前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第一辺縁部の上端付近に前記酸化ガス供給孔を形成する一方、該各第一辺縁部の下端付近に前記酸化ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第一セパレータの前記副面において、該第一辺縁部に位置して、該酸化ガス供給孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス供給用接続凹所と、該酸化ガス排出孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該酸化ガス供給用接続凹所を前記酸化ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる酸化ガス供給側貫通孔と、該酸化ガス排出用接続凹所を該酸化ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる酸化ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第一セパレータを板厚方向に貫通して形成して、更に、
前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第二辺縁部の上端付近に前記燃料ガス供給孔を形成する一方、該各第二辺縁部の下端付近に前記燃料ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第二セパレータの前記副面において、該第二辺縁部に位置して、該燃料ガス供給孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス供給用接続凹所と、該燃料ガス排出孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該燃料ガス供給用接続凹所を前記燃料ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる燃料ガス供給側貫通孔と、該燃料ガス排出用接続凹所を該燃料ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる燃料ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第二セパレータを板厚方向に貫通して形成したことを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記第一セパレータと前記第二セパレータのそれぞれの前記副面に形成された前記酸化ガス供給用接続凹所,前記酸化ガス排出用接続凹所,前記燃料ガス供給用接続凹所,前記燃料ガス排出用接続凹所の各位置を、相互に水平方向で異なるように設定した請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して、該酸化電極の表面に第一セパレータを重ね合わせると共に、該燃料電極の表面に第二セパレータを重ね合わせて、該酸化電極と該第一セパレータの重ね合わせ面間に酸化ガス流路を形成すると共に、該燃料電極と該第二セパレータの重ね合わせ面間に燃料ガス流路を形成した単セルを用い、かかる単セルの複数を積層状態で重ね合わせることによって形成された固体高分子型燃料電池において、
前記第一セパレータおよび前記第二セパレータとして請求項1乃至4の何れかに記載のものを採用したことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子電界質膜を用いた固体高分子型燃料電池およびそれに用いられるセパレータに係り、特に酸化ガス流路と燃料ガス流路および冷却水流路を、特定構造をもって形成することにより、優れた反応効率と共に優れた冷却効率を実現することが出来ると共に、酸化ガス流路や燃料ガス流路における水の滞留を可及的に防止せしめて安定した発電効率を得ることの出来る、固体高分子型燃料電池およびそれに用いられるセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、良く知られているように、固体のイオン交換膜等の固体高分子膜を電解質としてその両面に重ね合わせた一対の触媒電極の表面に対して、酸化剤としての酸素(空気)と燃料としての水素を供給し、電気化学的に反応させることによって電力を得るものである。
【0003】
ところで、固体高分子型燃料電池では、目的とする電圧を安定して効率的に得るために、各触媒電極の表面上に酸素や水素を安定して供給することが重要であると共に、適当な温度に維持することも重要となる。
【0004】
そこで、一般に、固体高分子電解質膜の両面に対してそれぞれシート状の酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して、その酸化電極の表面に第一セパレータを重ね合わせると共に、燃料電極の表面に第二セパレータを重ね合わせた構造の単セルが採用されており、かかる単セルを複数段重ね合わせて電気的に直列接続せしめた構造とされている。そして、第一セパレータに設けた凹溝を酸化電極で覆蓋することによって酸化ガス流路が形成されると共に、第二セパレータに設けた凹溝を燃料電極で覆蓋することによって燃料ガス流路が形成されている。また、第一セパレータ又は第二セパレータの電極と重ね合わされる主面に対する裏側の副面には、第一セパレータ又は第二セパレータに設けた凹溝を隣接する別の単セルの副面で覆蓋することによって冷却流路が形成されている。
【0005】
また、相互に重ね合わされた各単セルの外周縁部には、重ね合わせ方向に貫通するようにして、酸化ガス供給孔および酸化ガス排出孔と、燃料ガス供給孔および燃料ガス排出孔、更に冷却水供給孔および冷却水排出孔が、それぞれ形成されている。そして、これらの給排孔を通じて給排される酸化ガス,燃料ガス,冷却水が、各単セルにおいて、それぞれ、上述の酸化ガス流路,燃料ガス流路,冷却水流路に流通せしめられるようになっている。
【0006】
ここにおいて、これら酸化ガス流路,燃料ガス流路,冷却水流路の形態は、発電の効率や安定性に関して重要な影響を与えるものであると考えられており、従来から、各種の流路形態が提案されている。これら3種の流路形態の好ましい一つの態様が、特開2002-83610号公報(特許文献1)に開示されている。
【0007】
しかしながら、かかる特許文献1に開示されている流路構造では、未だ、発電の効率や安定性に関して十分に満足できるものとは言い難かった。具体的には、次のような問題を内在している。
(1)燃料ガス流路が、鉛直上下方向に延びる複数本の直線形態をもって形成されており、水平方向に延びる酸化ガス流路に対して直交している。そのために、固体高分子電解質膜を挟んで対向位置せしめられる燃料ガス流路と酸化ガス流路の重なり合う部分が狭くなってしまい、反応効率乃至は発電効率を十分に得ることが難しい。
(2)燃料ガス流路が、上端縁部に設けられた燃料ガス供給孔から下端縁部に設けられた燃料ガス排出孔に向けて鉛直上下方向に延びる直線形態をもって形成されている。そのために、固体高分子電解質膜の上端縁部と下端縁部との温度勾配が大きくなり、反応効率乃至は発電効率が局部的に低くなり易い。
【0008】
なお、上記(1),(2)の問題に対処するために、例えば燃料ガス流路の隣接する複数本を上下端部で相互に接続することにより、全体として屈曲して延びる形態を実現することも考えられる。ところが、上下方向に延びる燃料ガス流路を接続して屈曲形態とすると、下端部の折り返し部分において水が溜まり易く、水の滞留によって燃料ガスの流通が妨げられる結果、安定した発電が実現され難くなるという問題があり、現実的ではないのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、固体高分子型燃料電池における発電の効率や安定性を高度に実現せしめ得る、酸化ガス流路,燃料ガス流路,冷却水流路の新規な形態を実現する固体高分子型燃料電池用セパレータおよびそれを用いた固体高分子型燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0011】
(固体高分子型燃料電池用セパレータに関する本発明)
請求項1に記載の発明の特徴とするところは、固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して該酸化電極に重ね合わされて該酸化電極の表面に酸化ガス流路を形成する第一セパレータと、該膜/電極接合体の該燃料電極に重ね合わされて該燃料電極の表面に燃料ガス流路を形成する第二セパレータとからなる、固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて、周辺縁部に位置して積層方向で連通せしめられる酸化ガス供給孔と酸化ガス排出孔,燃料ガス供給孔と燃料ガス排出孔,冷却水供給孔と冷却水排出孔を、少なくとも各一対形成する一方、前記第一セパレータの前記酸化電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる酸化ガス用溝を複数形成して、それら各酸化ガス用溝の一方の端部を前記酸化ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記酸化ガス排出孔に接続し、前記第二セパレータの前記燃料電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる燃料ガス用溝を複数形成して、それら各燃料ガス用溝の一方の端部を前記燃料ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記燃料ガス排出孔に接続し、前記第一セパレータ又は前記第二セパレータにおける前記主面と裏側の副面において、少なくとも一本の冷却用溝を形成して、該冷却用溝の一方の端部を前記冷却水供給孔に接続すると共に他方の端部を前記冷却水排出孔に接続して、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第一辺縁部の上端付近に前記酸化ガス供給孔を形成する一方、該各第一辺縁部の下端付近に前記酸化ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第一セパレータの前記副面において、該第一辺縁部に位置して、該酸化ガス供給孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス供給用接続凹所と、該酸化ガス排出孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該酸化ガス供給用接続凹所を前記酸化ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる酸化ガス供給側貫通孔と、該酸化ガス排出用接続凹所を該酸化ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる酸化ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第一セパレータを板厚方向に貫通して形成した固体高分子型燃料電池用セパレータにある。

【0012】
このような本発明に従う構造とされたセパレータにおいては、第一セパレータにおける酸化ガス用溝と第二セパレータにおける燃料ガス用溝が、何れも、水平方向に平行に延びるように形成されていることから、それら第一セパレータと第二セパレータを、膜/電極接合体(MEA)を挟んで重ね合わせることにより、膜/電極接合体の両面において、酸化ガス流路と燃料ガス流路が、何れも水平方向に延びるようにして相互に平行に形成されることとなる。
【0013】
それ故、固体高分子電解質膜を挟んで対向位置せしめられる燃料ガス流路と酸化ガス流路の重なり合う部分が十分な面積をもって形成され得て、固体高分子型燃料電池における反応効率乃至は発電効率を有利に確保することが可能となる。
【0014】
しかも、本発明に従う構造とされたセパレータにおいては、酸化ガス用溝と燃料ガス用溝が、何れも、複数本の水平凹溝を上下に接続した葛折状とされていることから、それらによって形成される酸化ガス流路と燃料ガス流路において、酸化ガス流路に発生する水や、燃料ガス流路に結露する水が、重力の作用とガス流通圧を巧く利用して、速やかに排出される。それ故、流路内に滞留する水に起因する発電効率の低下が効果的に回避され得るのである。
【0015】
また、酸化ガス流路と燃料ガス流路が、何れも、固体高分子電解質膜の表面を左右方向に往復するように形成されると共に、上下方向に複数形成されることから、固体高分子電解質膜の全体において温度勾配が小さく抑えられることとなり、局部的な温度異常に起因する発電効率の低下も軽減され得る。
【0016】
さらに、本発明に従う構造とされたセパレータにおいて、冷却水流路は、冷却用溝によって冷却水供給孔と冷却水排出孔を繋ぐように形成されるが、かかる冷却水流路は、酸化ガス流路や燃料ガス流路のように水の滞留の問題がないことから、その流路形態は大きな自由度をもって設計することが出来るのであり、設計上および性能上、有効な冷却水流路が実現され得る。
【0027】
また、本発明に従えば、主として水平方向に延びる上述の如き酸化ガス流路が有利に形成され得る。しかも、酸化ガス供給孔および酸化ガス排出孔の各必要形成数が、酸化ガス供給用接続凹所や酸化ガス排出用接続凹所を巧く利用することによって、少なくて済むこととなり、第一のセパレータの構造が簡略化されて製造も容易となる
【0028】
請求項2に記載の発明の特徴とするところは、固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して該酸化電極に重ね合わされて該酸化電極の表面に酸化ガス流路を形成する第一セパレータと、該膜/電極接合体の該燃料電極に重ね合わされて該燃料電極の表面に燃料ガス流路を形成する第二セパレータとからなる、固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて、周辺縁部に位置して積層方向で連通せしめられる酸化ガス供給孔と酸化ガス排出孔,燃料ガス供給孔と燃料ガス排出孔,冷却水供給孔と冷却水排出孔を、少なくとも各一対形成する一方、前記第一セパレータの前記酸化電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる酸化ガス用溝を複数形成して、それら各酸化ガス用溝の一方の端部を前記酸化ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記酸化ガス排出孔に接続し、前記第二セパレータの前記燃料電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる燃料ガス用溝を複数形成して、それら各燃料ガス用溝の一方の端部を前記燃料ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記燃料ガス排出孔に接続し、前記第一セパレータ又は前記第二セパレータにおける前記主面と裏側の副面において、少なくとも一本の冷却用溝を形成して、該冷却用溝の一方の端部を前記冷却水供給孔に接続すると共に他方の端部を前記冷却水排出孔に接続して、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第二辺縁部の上端付近に前記燃料ガス供給孔を形成する一方、該各第二辺縁部の下端付近に前記燃料ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第二セパレータの前記副面において、該第二辺縁部に位置して、該燃料ガス供給孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス供給用接続凹所と、該燃料ガス排出孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該燃料ガス供給用接続凹所を前記燃料ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる燃料ガス供給側貫通孔と、該燃料ガス排出用接続凹所を該燃料ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる燃料ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第セパレータを板厚方向に貫通して形成した固体高分子型燃料電池用セパレータにある。

【0029】
このような請求項2に記載の発明に従えば、主として水平方向に延びる上述の如き燃料ガス流路が有利に形成され得る。しかも、燃料ガス共用孔および燃料ガス排出孔の各必要形成数が、燃料ガス供給用接続凹所や燃料ガス排出用接続凹所を巧く利用することによって、少なくて済むこととなり、第二のセパレータの構造が簡略化されて製造も容易となる。
【0030】
請求項3に記載の発明の特徴とするところは、固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して該酸化電極に重ね合わされて該酸化電極の表面に酸化ガス流路を形成する第一セパレータと、該膜/電極接合体の該燃料電極に重ね合わされて該燃料電極の表面に燃料ガス流路を形成する第二セパレータとからなる、固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて、周辺縁部に位置して積層方向で連通せしめられる酸化ガス供給孔と酸化ガス排出孔,燃料ガス供給孔と燃料ガス排出孔,冷却水供給孔と冷却水排出孔を、少なくとも各一対形成する一方、前記第一セパレータの前記酸化電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる酸化ガス用溝を複数形成して、それら各酸化ガス用溝の一方の端部を前記酸化ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記酸化ガス排出孔に接続し、前記第二セパレータの前記燃料電極に重ね合わされる主面において、水平方向に延びる複数本の水平凹溝を鉛直方向に離隔して形成すると共にそれらの水平凹溝を端部で上下に接続することで少なくとも一往復以上の長さで葛折状に延びる燃料ガス用溝を複数形成して、それら各燃料ガス用溝の一方の端部を前記燃料ガス供給孔に接続すると共に他方の端部を前記燃料ガス排出孔に接続し、前記第一セパレータ又は前記第二セパレータにおける前記主面と裏側の副面において、少なくとも一本の冷却用溝を形成して、該冷却用溝の一方の端部を前記冷却水供給孔に接続すると共に他方の端部を前記冷却水排出孔に接続して、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第一辺縁部の上端付近に前記酸化ガス供給孔を形成する一方、該各第一辺縁部の下端付近に前記酸化ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第一セパレータの前記副面において、該第一辺縁部に位置して、該酸化ガス供給孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス供給用接続凹所と、該酸化ガス排出孔から鉛直方向に延び出す酸化ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該酸化ガス供給用接続凹所を前記酸化ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる酸化ガス供給側貫通孔と、該酸化ガス排出用接続凹所を該酸化ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる酸化ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第一セパレータを板厚方向に貫通して形成して、更に、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータにおいて水平方向で対向位置する第一辺縁部と第二辺縁部のうち、該各第二辺縁部の上端付近に前記燃料ガス供給孔を形成する一方、該各第二辺縁部の下端付近に前記燃料ガス排出孔をそれぞれ形成すると共に、該第二セパレータの前記副面において、該第二辺縁部に位置して、該燃料ガス供給孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス供給用接続凹所と、該燃料ガス排出孔から鉛直方向に延び出す燃料ガス排出用接続凹所とを形成すると共に、該燃料ガス供給用接続凹所を前記燃料ガス用溝の前記一方の端部に連通せしめる燃料ガス供給側貫通孔と、該燃料ガス排出用接続凹所を該燃料ガス用溝の前記他方の端部に連通せしめる燃料ガス排出側貫通孔とを、それぞれ該第二セパレータを板厚方向に貫通して形成したことにある。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記第一セパレータと前記第二セパレータのそれぞれの前記副面に形成された前記酸化ガス供給用接続凹所,前記酸化ガス排出用接続凹所,前記燃料ガス供給用接続凹所,前記燃料ガス排出用接続凹所の各位置を、相互に水平方向で異なるように設定したものである。

【0031】
これにより、膜/電極接合体に対して第一及び第二のセパレータを重ね合わせてなる単セルを複数積層して固体高分子型燃料電池を構成する際に、酸化ガスの給排用通路と燃料ガスの給排用通路のそれぞれの流通抵抗を十分に小さく抑えつつ、それら各給排用通路間でのリークや短絡の問題を有利に回避することが出来る。
【0038】
(固体高分子型燃料電池に関する本発明)
固体高分子型燃料電池に関する本発明の特徴とするところは、固体高分子電解質膜の両面に酸化電極と燃料電極を配設した膜/電極接合体に対して、該酸化電極の表面に第一セパレータを重ね合わせると共に、該燃料電極の表面に第二セパレータを重ね合わせて、該酸化電極と該第一セパレータの重ね合わせ面間に酸化ガス流路を形成すると共に、該燃料電極と該第二セパレータの重ね合わせ面間に燃料ガス流路を形成した単セルを用い、かかる単セルの複数を積層状態で重ね合わせることによって形成された固体高分子型燃料電池において、前記第一セパレータおよび前記第二セパレータとして、上述の如き本発明に従う構造とされたもの(請求項1乃至の何れかに記載のもの)を採用して、膜/電極接合体の両側に酸化ガス流路,燃料ガス流路,冷却水流路を、それぞれ形成せしめた固体高分子型燃料電池にある。
【0039】
このような本発明に従う構造とされた固体高分子型燃料電池においては、上述の如き本発明に従う特定構造のセパレータを採用して、何れも水平方向に延びる酸化ガス流路および燃料ガス流路が形成されることにより、優れた反応効率乃至は発電効率が達成されると共に、水の滞留が防止されて安定した発電が実現可能となる。しかも、冷却水流路によって十分な冷却効果が発揮されることから、一層安定した発電作動が実現され得る。
【発明の効果】
【0040】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた固体高分子型燃料電池用セパレータおよびそれを用いた固体高分子型燃料電池においては、特定構造の酸化ガス流路,燃料ガス流路,冷却水流路が形成される。具体的には、水平方向の左右両辺縁部に形成された酸化ガス給排孔および燃料ガス給排孔によって何れも水平方向に延びる酸化ガス流路および燃料ガス流路が形成されると共に、鉛直方向の上下両辺縁部に形成された冷却水給排孔によって冷却水流路が形成されることとなる。これにより、酸化ガスと燃料ガスの反応効率ひいては発電効率の向上が図られ得ると共に、ガス流路内への水の滞留が防止されて発電作動の安定化が実現され得る。また、酸化ガス給排孔や燃料ガス給排孔,酸化ガス流路,燃料ガス流路から独立形成された冷却水流路を流通せしめられる冷却水によって、有効な温調効果も発揮され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態及び本発明に関連した参考技術について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0042】
先ず、図1には、本発明に関連した参考技術としての固体高分子型燃料電池(PEFC)10の概略斜視図と、それを構成する単セル12の分解説明図が示されている。なお、図1においては、固体高分子型燃料電池10を横倒しして、鉛直下方から単セル12を抜き出した状態を示したものであり、単セル12においては、図中の上下方向が、固体高分子型燃料電池の設置状態下で水平方向(左右方向)となる。
【0043】
より詳細には、単セル12は、図2にも示されているように、固体のイオン交換膜等の固体高分子膜14を電解質としてその両面に一対の触媒電極としての酸化電極16aおよび燃料電極16bを重ね合わせて接合一体化した構造の膜/電極接合体18を備えており、この膜/電極接合体18を両面からサンドイッチ状に挟むようにして、第一セパレータ20と第二セパレータ22が重ね合わされている。更に、かかる単セル12が、板厚方向で複数枚重ね合わされることにより、固体高分子型燃料電池10の主体を為すセルスタックを構成するようになっている。
【0044】
そこにおいて、各単セル12には、膜/電極接合体18と第一セパレータ20の重ね合わせ面間において、酸素(空気)を供給する酸化ガス流路が形成されていると共に、膜/電極接合体18と第二セパレータ22の重ね合わせ面間において、燃料(水素)を供給する燃料ガス流路が形成されている。更に、相互に重ね合わされた隣接する二つの単セル12,12の間には、一方の単セル12の第一セパレータ20と他方の単セル14の第二セパレータ22の重ね合わせ面間において、冷却水を流通せしめる冷却水流路が形成されている。
【0045】
また、各単セル12には、固体高分子型燃料電池10の設置状態下において水平方向で対向位置する第一辺縁部24と第二辺縁部26に位置して、酸化ガス供給孔28,酸化ガス排出孔30,燃料ガス供給孔32,燃料ガス排出孔34が、それぞれ、積層方向に貫通して形成されている。また、単セル12には、固体高分子型燃料電池10の設置状態下において鉛直方向で対向位置する第三辺縁部40と第四辺縁部42に位置して、冷却水供給孔36と冷却水排出孔38が、それぞれ、積層方向に貫通して形成されている。
【0046】
なお、特開2002-298876号公報等に記載されているように、各単セル12では、一般に、触媒電極16a,16bが固体高分子膜14よりも一回り小さくされており、酸化ガスや燃料ガス,冷却水の各給排孔28,30,32,34,36,38が形成された固体高分子膜14の外周縁部は、そこに重ね合わされる第一及び第二のセパレータ20,22との重ね合わせ面間に対して、必要に応じてガスケット等のシール部材が配設されることとなる。
【0047】
これにより、酸化ガス,燃料ガス,冷却水の各給排孔28,30,32,34,36,38は、固体高分子膜14と第一及び第二のセパレータ20,22の各対応する部分にそれぞれ貫通孔として形成されている。そして、固体高分子型燃料電池10において、積層された複数枚の単セル12間でも相互に連通せしめられており、全体として、固体高分子型燃料電池10の主体を為すセルスタックを積層方向に貫通する形態をもって、それら酸化ガス,燃料ガス,冷却水の各給排孔28,30,32,34,36,38が形成されている。
【0048】
なお、図面上に明示はされていないが、例えば特許文献1(特開2002-83610号公報)等に記載されているように、固体高分子型燃料電池10において、積層された複数の単セル12のうち、積層方向で一方の端部に位置せしめられた単セル12の第一セパレータ20と、積層方向で他方の端部に位置せしめられた単セル12の第二セパレータ22には、陽極側集電板と陰極側集電板が重ねられて、直列接続された複数枚の単セル12の総電力が、これら両集電板から外部に取り出されるようになっている。更に、陽極側集電板と陰極側集電板の各外面には、適当な絶縁スペーサ(図示せず)を介して、陽極側押え板43と陰極側押え板45が重ね合わされている。そして、図面上に明示はされていないが、これら複数の単セル12と両極の集電板や押え板43,45を含む全体が、四隅等において挿通された締付ボルトによって積層方向に締め付けられて一体的に固定されることにより、固体高分子型燃料電池10とされている。
【0049】
また、かかる固体高分子型燃料電池10において、陽極側押え板43と陰極側押え板45には、酸化ガス供給用ポート,酸化ガス排出用ポート,燃料ガス供給用ポート,燃料ガス排出用ポート,冷却水供給ポート,冷却水排出ポートの合計6個のポート44が形成されている。そして、これらそれぞれのポート44が、積層された複数の単セル12において相互に連通形成された上述の酸化ガス,燃料ガス,冷却水の各給排孔28,30,32,34,36,38の各対応する孔に対して接続されている。そして、各ポート44に対して図示しない外部管路が接続されることにより、酸化ガス,燃料ガス,冷却水の各給排孔28,30,32,34,36,38に対して、酸化ガス,燃料ガス,冷却水の給排が行われるようになっている。
【0050】
そして、これら各供給側ポート44を通じて各供給孔に供給された酸化ガス,燃料ガス,冷却水が、上述の単セル12内に形成された酸化ガス流路および燃料ガス流路と、単セル12,12間に形成された冷却水流路を流通せしめられた後、各排出孔を経て、各排出側ポート44を通じて排出されるようになっているのである。
【0051】
これにより、公知の如く、固体高分子膜14の第二セパレータ20側に配設された燃料電極16bにおいて、供給される燃料ガスが触媒作用でイオン化して電子を供給する一方、固体高分子膜14の第一セパレータ18側に配設された酸化電極16aにおいて、固体高分子膜14を通じて送られた水素イオンが外部から供給される酸化ガス(空気)および外部の電気回路を経て帰還した電子と反応して水蒸気を生成することとなり、全体として発電作用を発揮する電池として機能する。
【0052】
ここにおいて、目的とする発電作用を効率的に且つ安定して発揮させるには、各単セル12の触媒電極16a,16bに対して酸化ガスと燃料ガスを効率的に供給することが重要となると共に、各単セル12に対して冷却水を効果的に供給して高度な温度管理を実現することが重要となる。
【0053】
そこで、これら酸化ガス,燃料ガス,冷却水の各給排流路を形成する流路構造について、以下に説明を加える。
【0054】
すなわち、本参考技術では、図2~5に示されているように、第一セパレータ20および第二セパレータ22には、単セル12を構成する場合に同じ側に位置せしめられる第一辺縁部24に位置して、各同一数(本参考技術では、各3個)の酸化ガス供給孔28と燃料ガス供給孔32が、鉛直方向で交互に形成されている。また、それら第一セパレータ20および第二セパレータ22における左右方向で反対側の第二辺縁部24には、各対応する同一数(本参考技術では、各3個)の酸化ガス排出孔30と燃料ガス排出孔34が、鉛直方向で交互に形成されている。
【0055】
さらに、第一セパレータ20において、酸化電極16aに重ね合わせられる方の主面46には、図3及び図5に示されているように、第一辺縁部24に形成された酸化ガス供給孔28の近くから第二辺縁部26に向かって水平方向に延び出し、第二辺縁部26の近くで鉛直下方に屈曲して僅かに下方に延び、更にUターンして第一辺縁部24に向かって水平方向に延び出し、第一辺縁部26の近くで鉛直下方に屈曲して僅かに下方に延び、再びUターンして第二辺縁部26に向かって水平方向に延び出して、第二辺縁部26に形成された酸化ガス排出孔30に至る葛折状の屈曲した酸化ガス用溝48が、形成されている。この酸化ガス用溝48は、一つの酸化ガス供給孔28を対応する一つの酸化ガス排出孔30に接続するものであり、従って、各対を為す酸化ガス供給孔28と酸化ガス排出孔30の間に跨がるようにして、それら酸化ガスの給排孔28,30の数だけ(本参考技術では3本)、鉛直方向に所定距離を隔てて、並列的に形成されている。特に、水平方向に延びる各直線部分が、主面46の上下方向で略一定の間隔で位置するように形成されることが望ましい。
【0056】
ところで、第一セパレータ20の主面46において、各酸化ガス用溝48の両端部は、何れも、酸化ガス供給孔28又は酸化ガス排出孔30の近傍に位置しているが、酸化ガス供給孔28又は酸化ガス排出孔30にまでは至らないようにして形成されている。特に好ましくは、この酸化ガス用溝48の各端部は、第一セパレータ20の主面46において、酸化電極16aに対して直接に重ね合わされる位置、即ちガスケット等のシール部材よりも内周側であって、酸化電極16aの外周縁部よりも内周側に位置せしめられる。
【0057】
そして、この酸化ガス用溝48の各端部は、酸化ガス供給孔28又は酸化ガス排出孔30に対して、第一セパレータ20の副面(主面46の裏面)50に形成された酸化ガス供給用接続凹所52又は酸化ガス排出用接続凹所54を通じて、接続されている。即ち、酸化ガス供給用接続凹所52は、第一セパレータ20の副面50において、酸化ガス供給孔28から中央側に向かって所定長さで延びている。また、酸化ガス排出用接続凹所54は、第一セパレータ20の副面50において、酸化ガス排出孔30から中央側に向かって所定長さで延びている。更に、酸化ガス供給用接続凹所52の中央側端部には、第一セパレータ20を板厚方向に貫通する酸化ガス供給側貫通孔56が形成されている。また、酸化ガス排出用接続凹所54の中央側端部には、第一セパレータ20を板厚方向に貫通する酸化ガス排出側貫通孔58が形成されている。これにより、酸化ガス供給孔28を通じて供給された酸化ガスが、酸化ガス供給用接続凹所52から酸化ガス供給側貫通孔56を通じて酸化ガス用溝48に導かれ、更に、該酸化ガス用溝48から酸化ガス排出側貫通孔58を経て、酸化ガス排出用接続凹所54を通じて酸化ガス排出孔30に排出され得るようになっている。
【0058】
而して、前述の如き膜/電極接合体18に対する第一及び第二のセパレータ20,22の重ね合わせによって得られた単セル12を更に複数重ね合わせて得られたセルスタックにおいては、上述の酸化ガス供給用接続凹所52や酸化ガス用溝48,酸化ガス排出用接続凹所54が覆蓋されることによって、酸化ガス流路60が複数本形成されている。特に、この酸化ガス流路60のうち、酸化ガス用溝48にて形成された葛折状の部分は、酸化電極16aの表面において、主として左右方向(水平方向)に往復して延びる形態をもって、十分な面積で形成されているのである。
【0059】
一方、第二セパレータ22において、燃料電極16bに重ね合わせられる方の主面62には、図4及び図5に示されているように、第二辺縁部26に形成された燃料ガス供給孔32の近くから第一辺縁部24に向かって水平方向に延び出し、第一辺縁部24の近くで鉛直下方に屈曲して僅かに下方に延び、更にUターンして第二辺縁部26に向かって水平方向に延び出し、第二辺縁部26の近くで鉛直下方に屈曲して僅かに下方に延び、再びUターンして第一辺縁部24に向かって水平方向に延び出して、第一辺縁部24に形成された燃料ガス排出孔34に至る葛折状の屈曲した燃料ガス用溝64が、形成されている。この燃料ガス用溝64は、一つの燃料ガス供給孔32を対応する一つの燃料ガス排出孔34に接続するものであり、従って、各対を為す燃料ガス供給孔32と燃料ガス排出孔34の間に跨がるようにして、それら燃料ガスの給排孔32,34の数だけ(本参考技術では3本)、鉛直方向に所定距離を隔てて、並列的に形成されている。特に、水平方向に延びる各直線部分が、主面63の上下方向で略一定の間隔で位置するように形成されることが望ましい。
【0060】
なお、本参考技術では、酸化ガスの給排孔28,30と燃料ガスの給排孔32,34が、第一及び第二辺縁部24,26に位置して上下方向で交互に同数だけ形成されていることから、燃料ガス用溝64は、前述の酸化ガス用溝48と同数だけ、形成されている。
【0061】
ところで、第二セパレータ22の主面62において、各燃料ガス用溝64の両端部は、前述の酸化ガス用溝48と同様に、何れも、燃料ガス供給孔32又は燃料ガス排出孔34の近傍に位置しているが、燃料ガス供給孔32又は燃料ガス排出孔34にまでは至らないようにして形成されている。特に好ましくは、この燃料ガス用溝64の各端部は、第二セパレータ22の主面62において、燃料電極16bに対して直接に重ね合わされる位置、即ちガスケット等のシール部材よりも内周側であって、燃料電極16bの外周縁部よりも内周側に位置せしめられる。
【0062】
そして、この燃料ガス用溝64の各端部は、燃料ガス供給孔32又は燃料ガス排出孔34に対して、第二セパレータ22の副面(主面62の裏面)66に形成された燃料ガス供給用接続凹所68又は燃料ガス排出用接続凹所70を通じて、接続されている。即ち、燃料ガス供給用接続凹所68は、第二セパレータ22の副面66において、燃料ガス供給孔32から中央側に向かって所定長さで延びている。また、燃料ガス排出用接続凹所70は、第二セパレータ22の副面66において、燃料ガス排出孔34から中央側に向かって所定長さで延びている。更に、燃料ガス供給用接続凹所68の中央側端部には、第二セパレータ22を板厚方向に貫通する燃料ガス供給側貫通孔72が形成されている。また、燃料ガス排出用接続凹所70の中央側端部には、第二セパレータ22を板厚方向に貫通する燃料ガス排出側貫通孔74が形成されている。これにより、燃料ガス供給孔32を通じて供給された燃料ガスが、燃料ガス供給用接続凹所68から燃料ガス供給側貫通孔72を通じて燃料ガス用溝64に導かれ、更に、該燃料ガス用溝64から燃料ガス排出側貫通孔74を経て、燃料ガス排出用接続凹所70を通じて燃料ガス排出孔34に排出され得るようになっている。
【0063】
而して、前述の如き膜/電極接合体18に対する第一及び第二のセパレータ20,22の重ね合わせによって得られた単セル12を更に複数重ね合わせて得られたセルスタックにおいては、上述の燃料ガス供給用接続凹所68や燃料ガス用溝64,燃料ガス排出用接続凹所70が覆蓋されることによって、燃料ガス流路76が複数本形成されている。特に、この燃料ガス流路76のうち、燃料ガス用溝64にて形成された葛折状の部分は、燃料電極16bの表面において、主として左右方向(水平方向)に往復して延びる形態をもって、十分な面積で形成されているのである。しかも、特に本参考技術では、酸化ガス供給孔28が第一辺縁部24の最上端に位置して形成されていると共に、燃料ガス供給孔32が第二辺縁部26の最上端に位置して形成されていることにより、酸化ガス用溝48と燃料ガス用溝64の各水平方向に延びる部分が、膜/電極接合体18を挟んで互いに対向位置して、即ち積層方向で略重なり合うようにして形成位置せしめられている。
【0064】
さらに、単セル12において、その鉛直上下に位置せしめられた第三辺縁部40と第四辺縁部42には、互いに略対角線方向で対向位置せしめられる各一方の角部近くにおいて、冷却水供給孔36と冷却水排出孔38が形成されている。そして、かかる冷却水供給孔36から供給される冷却水を単セル12,12の積層面間に導いて冷却作用を発揮させる冷却水流路78が、互いに重ね合わされた単セル12,12における第一セパレータ20と第二セパレータ22の各副面66,66間に形成されている。
【0065】
すなわち、第一セパレータ20における副面50には、図2及び図3に示されているように、第三辺縁部40に形成された冷却水供給孔36の近くから第四辺縁部42に向かって鉛直下方向に延び出し、第四辺縁部42の近くで水平方向(第一辺縁部24側)に屈曲して僅かに延び、更にUターンして第三辺縁部40に向かって鉛直上方に延び出し、第三辺縁部40の近くで水平方向(第一辺縁部24側)に屈曲して僅かに延び、再びUターンして第四辺縁部42に向かって鉛直下方に延び出して・・・、という屈曲形態を複数回繰り返すことにより、最終的に第四辺縁部42に形成された冷却水排出孔38に至る葛折状の屈曲した冷却用溝80が、形成されている。この冷却用溝80は、冷却水供給孔36を冷却水排出孔38に接続するものであり、かかる対を為す冷却水給排孔36,38の数だけ(本参考技術では1本)形成されている。特に、鉛直上下方向に延びる各直線部分が、副面50の左右方向で略一定の間隔で位置するように形成されることが望ましい。
【0066】
ところで、第一セパレータ20の副面50において、各冷却用溝80の両端部は、何れも、冷却水供給孔36又は冷却水排出孔38の近傍に位置しているが、冷却水供給孔36又は冷却水排出孔38にまでは至らないようにして形成されている。
【0067】
そして、この冷却用溝80の各端部は、冷却水供給孔36又は冷却水排出孔38に対して、第一セパレータ20の主面46に形成された冷却水供給用接続凹所82又は冷却水排出用接続凹所84を通じて、接続されている。即ち、冷却水供給用接続凹所82は、第一セパレータ20の主面46において、冷却水供給孔36から中央側(下方)に向かって所定長さで延びている。また、冷却水排出用接続凹所84は、第一セパレータ20の主面46において、冷却水排出孔38から中央側(上方)に向かって所定長さで延びている。更に、冷却水供給用接続凹所82の中央側端部には、第一セパレータ20を板厚方向に貫通する冷却水供給側貫通孔86が形成されている。また、冷却水排出用接続凹所84の中央側端部には、第一セパレータ20を板厚方向に貫通する冷却水排出側貫通孔88が形成されている。これにより、冷却水供給孔36を通じて供給された冷却水が、冷却水供給用接続凹所82から冷却水供給側貫通孔86を通じて冷却用溝88に導かれ、更に、該冷却用溝88から冷却水排出側貫通孔88を経て、冷却水排出用接続凹所84を通じて冷却水排出孔38に排出され得るようになっている。
【0068】
而して、前述の如き膜/電極接合体18に対する第一及び第二のセパレータ20,22の重ね合わせによって得られた単セル12を更に複数重ね合わせて得られたセルスタックにおいては、上述の冷却水供給用接続凹所82や冷却用溝80,冷却水排出用接続凹所84が覆蓋されることによって、一本の冷却水流路78が形成されている。特に、この冷却水流路78のうち、冷却用溝80にて形成された葛折状の部分は、酸化ガス流路60を形成する第一セパレータ20において、主として上下方向に往復して延びる形態をもって、十分な面積で形成されているのである。
【0069】
上述の如き構造とされた単セル12においては、図6に示されているように、酸化ガス供給孔28から酸化ガス流路60(酸化ガス用溝48)に至る接続部分と、燃料ガス供給孔32から燃料ガス流路76(燃料ガス用溝64)に至る接続部分との、何れにおいても、酸化ガス供給孔28や燃料ガス供給孔32から直接に膜/電極接合体18の表面に沿って酸化ガスや燃料ガスが酸化ガス流路60や燃料ガス流路76に流入することがない。即ち、膜/電極接合体18の表面上で、酸化ガス流路60や燃料ガス流路76は、酸化ガス供給孔28や燃料ガス供給孔32から独立して形成されており、第一及び第二のセパレータ20,22の裏側(副面)50,66を通って、酸化ガスや燃料ガスが、酸化ガス供給孔28や燃料ガス供給孔32から、酸化ガス流路60や燃料ガス流路76に導き入れられるようになっている。
【0070】
従って、本参考技術をモデル的に拡大示した図7や、従来構造として対応する部分を拡大示した図8に示されていることから明らかなように、本参考技術では、第一セパレータ20や第二セパレータ22と膜/電極接合体18の間に有効なシール圧力がかからないような凹所60(従来構造を示す図8を参照)を形成する必要がなく、第一セパレータ20や第二セパレータ22と膜/電極接合体18の間に形成された酸化ガス流路60や燃料ガス流路76に対して酸化ガスや燃料ガスが導かれる際に、膜/電極接合体18と反対側にガスが流入してしまうことが避けられて、酸化ガスや燃料ガスが、目的とする酸化ガス流路60や燃料ガス流路76に対して安定して供給され得るのである。
【0071】
また、本参考技術の単セル12とそれを用いて形成された固体高分子型燃料電池10においては、固体高分子膜14(膜/電極接合体18)の表裏において、酸化ガス流路60と燃料ガス流路76が、何れも水平方向に主として延びる形態で、且つ葛折状で次第に下段の水平路部分に移行するようにして複数段に形成されていることから、特に特許文献1に示されている如き従来構造における酸化ガス流路と燃料ガス流路が直交方向に主として設けられた構造に比して、膜/電極接合体18の両極における化学反応が一層効率的に生ぜしめられることとなる。
【0072】
しかも、特許文献1に示されている如き従来構造における燃料ガス流路では、鉛直方向に直線的に短絡して形成されていたが、本参考技術では、上述の如き葛折状に形成されていることから、燃料ガスの効率的な利用が実現されると共に、燃料ガス流路における圧力も十分に確保され得て更なる反応効率化が図られ得る。
【0073】
さらに、上述の如く、本参考技術では、酸化ガス流路60と燃料ガス流路76が、何れも葛折状で次第に下方に段階的に下がって流通せしめられる形態とされていることから、十分に長い流路形態を確保しつつ、酸化ガス流路60における発生水蒸気や燃料ガス流路76に供給される水蒸気の結露によって水が発生した場合にも、かかる水が速やかに排出され得ることとなり、目的とする発電が安定して実行されるのである。
【0074】
加えて、本参考技術では、冷却水流路78が、十分な長さで葛折状に形成されており、冷却水の給排孔36,38を少ない数だけ設ければ良いことから、製造が容易であると共に、強度の確保や漏水の防止という効果も発揮され得る。即ち、本参考技術では、冷却水の給排孔36,38を上下に位置する第三及び第四の辺縁部40,42に形成したことにより、冷却水に作用する重力も有効に利用しつつ、冷却水流路78に対して冷却水を有利に流通させることが出来る。しかも、冷却水流路78では、ガス流路のように水の滞留が問題とならないことから、本参考技術のように上下方向を主体的な流路形態として葛折状としても、特性的に何等の問題を発生するものでない。
【0075】
それ故、本参考技術では、冷却水の給排孔36,38を上下に位置する第三及び第四の辺縁部40,42に形成したことによって、酸化ガスおよび燃料ガスの各給排孔28,30,32,34を、水平方向両側に位置する第一及び第二の辺縁部24,26に形成せしめ得たのであり、以て、酸化ガス及び燃料ガスの流路60,76を、主として水平方向に延びる通路形態をもって葛折状に形成せしめ得たのである。その結果、酸化ガス及び燃料ガスの流路60,76における水の滞留の問題も完全に回避せしめ得た。また、酸化ガスと燃料ガス60,76の流路を相互に有効に対向位置せしめ得て、反応乃至は発電の効率を向上せしめることに成功し得たのである。

【0076】
次に、本発明の実施形態としての固体高分子型燃料電池用セパレータを構成する単セル12′が、図10~14に示されている。そして、本実施形態において、前記参考技術と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、図面中に、前記参考技術と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0077】
すなわち、本実施形態の単セル12′には、それを構成する第一及び第二のセパレータ20,22において、単セル12を構成する場合に同じ側に位置せしめられる第一辺縁部24の上端付近と下端付近に位置して、各一個の酸化ガス供給孔28と酸化ガス排出孔30が形成されている。また、他方の第二の辺縁部26の上端付近と下端付近に位置して、各一個の燃料ガス供給孔32と燃料ガス排出孔34が形成されている。即ち、これら各一個の酸化ガスの供給孔28と排出孔30および燃料ガスの供給孔32と排出孔34は、単セル12′の四隅付近に位置して重ね合わせ方向に貫通して形成されている。
【0078】
さらに、第一セパレータ20において、酸化電極16aに重ね合わせられる方の主面46には、図11及び図13に示されているように、第一辺縁部24に形成された酸化ガス供給側貫通孔56の近くから第二辺縁部26に向かって水平方向に延び出し、第二辺縁部26の近くで鉛直下方に屈曲して僅かに下方に延び、更にUターンして第一辺縁部24に向かって水平方向に延び出し、第一辺縁部24の近くで鉛直下方に屈曲して僅かに下方に延び、再びUターンして第二辺縁部26に向かって水平方向に延び出し、第二辺縁部26の近くで鉛直下方に屈曲して僅かに下方に延び、更にUターンして第一辺縁部24に向かって水平方向に延び出して第一辺縁部24に形成された酸化ガス排出側貫通孔58に至る葛折状の屈曲した酸化ガス用溝48が、形成されている。この酸化ガス用溝48は、一つの酸化ガス供給側貫通孔56を対応する一つの酸化ガス排出側貫通孔58に接続するものであり、従って、各対を為す酸化ガス供給側貫通孔56と酸化ガス排出側貫通孔58の間に跨るようにして、それら酸化ガスの給排貫通孔56、58の数だけ(本実施形態では4本)、鉛直方向に所定距離を隔てて、並列的に形成されている。特に、水平方向に延びる各直線部分が、主面46の上下方向で略一定の間隔で位置するように形成されることが望ましい。
【0079】
なお、本実施形態では、第一セパレータ20の副面において、第一の辺縁部には、酸化ガス供給孔28から鉛直下方に向かって直線的に延びる凹溝形態をもって、酸化ガス供給用接続凹所52が形成されている。そして、第一セパレータ20の主面には、この酸化ガス供給用接続凹所52の裏側にまで至るように、各酸化ガス用溝48の一方の端部が延び出して位置せしめられている。また、第一セパレータ20の副面において、第一の辺縁部には、酸化ガス排出孔30から鉛直上方に向かって直線的に延びる凹溝形態をもって、酸化ガス排出用接続凹所54が形成されている。そして、第一セパレータ20の主面には、この酸化ガス排出用接続凹所54の裏側にまで至るように、各酸化ガス用溝48の他方の端部(上記一方の端部よりも下方に位置する方の端部)が延び出して位置せしめられている。なお、本実施形態では、酸化ガス供給用接続凹所52よりも外周側に位置して、略平行に上下方向に延びるように酸化ガス排出用接続凹所54が形成されている。
【0080】
また、第一のセパレータ20には、酸化ガス供給用接続凹所52と酸化ガス排出用接続凹所54の内部に開口して板厚方向に貫通する酸化ガス供給側貫通孔56と酸化ガス排出側貫通孔58が、それぞれ、凹所52,54の長手方向で互いに所定距離を隔てて複数(本実施形態では、各4個)形成されている。そして、これらの酸化ガス供給側貫通孔56と酸化ガス排出側貫通孔58によって、各酸化ガス用溝48の一方の端部と他方の端部が、酸化ガス供給用接続凹所52と酸化ガス排出用接続凹所54に接続されている。
【0081】
なお、酸化ガスや燃料ガス,冷却水の各給排孔28,30,32,34,36,38は、第一セパレータ20や第二セパレータ22の主面46,62において、酸化電極16aや燃料電極16bに対して直接に重ね合わされる部分を外れた位置、即ちガスケット等のシール部材よりも外周側であって、酸化電極16aや燃料電極16bの外周縁部よりも外周側に位置せしめられるが、酸化ガス用溝48や燃料ガス用溝64の各端部は第一セパレータ20や第二セパレータ22の主面46,62において、酸化電極16aや燃料電極16bに対して直接に重ね合わされる位置、即ちガスケット等のシール部材よりも内周側であって、酸化電極16aや燃料電極16bの外周縁部よりも内周側に位置せしめられる。
【0082】
そして、この酸化ガス用溝48の各端部は、酸化ガス供給孔28又は酸化ガス排出孔30に対して、第一セパレータ20の副面(主面46の裏面)50に形成された酸化ガス供給用接続凹所52又は酸化ガス排出用接続凹所54を通じて、接続されている。即ち、酸化ガス供給用接続凹所52は、第一セパレータ20の副面50において、酸化ガス供給孔28から鉛直下方向に向かって所定長さで延びている。また、酸化ガス排出用接続凹所54は、第一セパレータ20の副面50において、酸化ガス排出孔30から鉛直上方向に向かって所定長さで延びている。更に、酸化ガス供給用接続凹所52には、第一セパレータ20を板厚方向に貫通する酸化ガス供給側貫通孔56が形成されている。また、酸化ガス排出用接続凹所54には、第一セパレータ20を板厚方向に貫通する酸化ガス排出側貫通孔58が形成されている。これにより、酸化ガス供給孔28を通じて供給された酸化ガスが、酸化ガス供給用接続凹所52から酸化ガス供給側貫通孔56を通じて酸化ガス用溝48に導かれ、更に、該酸化ガス用溝48から酸化ガス排出側貫通孔58を経て、酸化ガス排出溶接族凹所54を通じて酸化ガス排出孔30に排出され得るようになっている。
【0083】
而して、前述の如き膜/電極接合体18に対する第一及び第二のセパレータ20、22の重ね合わせによって得られた単セル12を更に複数重ね合わせて得られたセルスタックにおいては、上述の酸化ガス供給用接続凹所52や酸化ガス用溝48、酸化ガス排出用接続凹所54が覆蓋されることによって、酸化ガス流路60が複数本形成されている。特に、この酸化ガス流路60のうち、酸化ガス用溝48にて形成された葛折状の部分は、酸化電極16aの表面において、主として左右方向(水平方向)に往復して延びる形態をもって、十分な面積で形成されているのである。
【0084】
一方、第二セパレータ22において、燃料電極16bに重ね合わせられる方の主面62には、図12及び図13に示されているように、前述の酸化ガス用溝48と同様に葛折状に延びる複数本(本実施形態では4本)の燃料ガス用溝64が形成されている。
【0085】
これら燃料ガス用溝64は、酸化ガス用溝48と略同じ構造で同じ形状と大きさをもって形成されていることから、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0086】
本実施形態では、第二セパレータ22の副面66において、第二の辺縁部には、燃料ガス供給孔32から鉛直下方に向かって直線的に延びる凹溝形態をもって、燃料ガス供給用接続凹所68が形成されている。そして、第二セパレータ22の主面62には、この燃料ガス供給用接続凹所68の裏側にまで至るように、各燃料ガス用溝64の一方の端部が延び出して位置せしめられている。また、第二セパレータ22の副面66において、第二の辺縁部26には、燃料ガス排出孔34から鉛直上方に向かって直線的に延びる凹溝形態をもって、燃料ガス排出用接続凹所70が形成されている。そして、第二セパレータ22の主面62には、この燃料ガス排出用接続凹所70の裏側にまで至るように、各燃料ガス用溝64の他方の端部(上記一方の端部よりも下方に位置する方の端部)が延び出して位置せしめられている。なお、本実施形態では、燃料ガス供給用接続凹所68よりも外周側に位置して、略平行に上下方向に延びるように燃料ガス排出用接続凹所70が形成されている。
【0087】
また、第二のセパレータ22には、酸化ガス供給用接続凹所68と燃料ガス排出用接続凹所70の内部に開口して板厚方向に貫通する燃料ガス供給側貫通孔72と燃料ガス排出側貫通孔74が、それぞれ、凹所68,70の長手方向で互いに所定距離を隔てて複数(本実施形態では、各4個)形成されている。そして、これらの燃料ガス供給側貫通孔72と燃料ガス排出側貫通孔74によって、各燃料ガス用溝64の一方の端部と他方の端部が、燃料ガス供給用接続凹所68と燃料ガス排出用接続凹所70に接続されている。
【0088】
また、第一及び第二のセパレータ20,22における第三辺縁部40と第四辺縁部42には、それぞれ、幅方向の中間部分であって、第三辺縁部40側では、酸化ガス供給孔28側に偏倚した位置に、第四辺縁部42側では、燃料ガス排出孔38側に偏倚した位置に、冷却水の供給孔36と排出孔38が、形成されている。そして、冷却水の供給孔36から下方に延びるようにして冷却水供給用接続凹所82が形成されていると共に、冷却水の排出孔38から上方に延びるようにして冷却水排出用接続凹所84が形成されている。また、これら冷却水供給用接続凹所82と冷却水排出用接続凹所84は、第一セパレータ20を貫通して形成された冷却水の供給側及び排出側の各貫通孔86,88を通じて、第一セパレータ20の副面50に葛折状に形成された冷却用溝80の各一方の端部に対して、それぞれ接続されている。
【0089】
このような実施形態に係る単セル12′であっても、前記参考技術と同様な効果を発揮し得る。特に、本実施形態では、冷却水の給排孔36、38を上下に位置する第三及び第四の辺縁部40、42に形成したことによって、酸化ガスおよび燃料ガスの各給排貫通孔56、58、72、74を、水平方向両側に位置する第一及び第二の辺縁部24、26に形成せしめ得たのであり、以て、酸化ガス及び燃料ガスの流路60、76を、主として水平方向に延びる通路形態をもって葛折状に形成せしめ得たのである。その結果、酸化ガス及び燃料ガスの流路60、76における水の滞留の問題も完全に回避せしめ得た。また、酸化ガスと燃料ガス60.76の流路を相互に有効に対向位置せしめ得て、反応乃至は発電の効率を向上せしめることに成功し得たのである。
【0090】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0093】
例えば、本発明において、酸化ガス用溝48や燃料ガス用溝64は、例えば2往復半や3往復半、或いは1往復や3往復,4往復などの往復形態で左右に延びるように形成することも可能である。更に、冷却水流路78を形成する冷却用溝80も、例えば冷却水の給排孔36,38を第三及び第四の辺縁部40,42に複数形成することによって、主として上下方向に延びる葛折状の形態をもって、1往復半や2往復半,3往復半などの適当な長さで、左右方向に複数並設することも可能である。
【0094】
なお、かかる冷却水流路78は、前記実施形態では第一セパレータ20の副面50に形成されていたが、第二セパレータ22の副面66に形成しても良い。
【0095】
また、冷却水流路78は第一又は第二のセパレータ20,22の副面50,66に形成されることから、冷却水給排孔36,38に対して、同じの副面50,66に形成した凹溝を通じて接続することによっても、水漏れの問題が有利に防止され得ることとなる。従って、特に冷却水流路78では、前記実施形態における接続凹所82,84や貫通孔86,88は、形成しなくても良い。
【0096】
その他、一々列挙はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に関連した参考技術としての燃料電池用セパレータと、それを用いて構成された単セルさらに該単セルを用いて形成された固体高分子型燃料電池を示す説明図である。
【図2】図1に示された固体高分子型燃料電池を構成する単セルの分解斜視図である。
【図3】図2に示された単セルを構成する第一セパレータの主面および副面を示す説明図である。
【図4】図2に示された単セルを構成する第二セパレータの主面および副面を示す説明図である。
【図5】図2に示された単セルを構成する第一セパレータおよび第二セパレータの各主面を示すモデル図である。
【図6】図3及び図4におけるA-A断面とB-B断面に相当する断面説明図である。
【図7】図2に示された単セルの構造を説明するために要部を拡大して示す分解説明図である。
【図8】従来構造の単セルを示す、図7に対応した分解説明図である。
【図9】本発明に関連した参考技術としての第一及び第二のセパレータの別の構造例を示す、図5に対応するモデル図である。
【図10】本発明の実施形態としての単セルの、図2に対応する図面である。
【図11】図10に示された単セルを構成する第一セパレータを示す、図3に対応する図面である。
【図12】図10に示された単セルを構成する第二セパレータを示す、図4に対応する図面である。
【図13】図10に示された単セルの、図5に対応する図面である。
【図14】図10に示された単セルの、図6に対応する図面である。
【符号の説明】
【0098】
10 固体高分子型燃料電池
12 単セル
14 固体高分子膜
16 触媒電極
(16a 酸化電極)
(16b 燃料電極)
18 膜/電極接合体
20 第一セパレータ
22 第二セパレータ
24 第一辺縁部
26 第二辺縁部
28 酸化ガス供給孔
30 酸化ガス排出孔
32 燃料ガス供給孔
34 燃料ガス排出孔
36 冷却水供給孔
38 冷却水排出孔
40 第三辺縁部
42 第四辺縁部
46 主面(第一セパレータ)
48 酸化ガス用溝
50 副面
52 酸化ガス供給用接続凹所
54 酸化ガス排出用接続凹所
56 酸化ガス供給側貫通孔
58 酸化ガス排出側貫通孔
60 酸化ガス流路
62 主面(第二セパレータ)
64 燃料ガス用溝
66 副面
68 燃料ガス供給用接続凹所
70 燃料ガス排出用接続凹所
72 燃料ガス供給側貫通孔
74 燃料ガス排出側貫通孔
76 燃料ガス流路
78 冷却水流路
80 冷却用溝
82 冷却水供給用接続凹所
84 冷却水排出用接続凹所
86 冷却水供給側貫通孔
88 冷却水排出側貫通孔
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図8】
4
【図10】
5
【図11】
6
【図12】
7
【図14】
8
【図1】
9
【図2】
10
【図5】
11
【図9】
12
【図13】
13