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明細書 :目的タンパク質の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5152962号 (P5152962)
公開番号 特開2008-301768 (P2008-301768A)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
公開日 平成20年12月18日(2008.12.18)
発明の名称または考案の名称 目的タンパク質の製造方法
国際特許分類 C12P  21/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12P 21/00 C
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2007-152567 (P2007-152567)
出願日 平成19年6月8日(2007.6.8)
審査請求日 平成22年6月1日(2010.6.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】朴 龍洙
【氏名】金政 真
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】伊藤 良子
参考文献・文献 米国特許第07226781(US,B1)
特開2004-173507(JP,A)
国際公開第2007/029360(WO,A1)
国際公開第2005/085456(WO,A1)
Biotechnol. Bioeng.,1997年,Vol.56, No.1,p.106-116
Biotechnol. Bioeng.,2004年,Vol.89, No.4,p.424-433
J. Biol. Chem.,2003年,Vol.278, No.31,p.29344-29351
Mol. Biotechnol.,2009年,Vol.43,p.67-75
調査した分野 C12P 21/00
C12N 15/09
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
miniFレプリコンと、バキュロウイルスDNAと、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドと、目的タンパク質発現用プロモーターとを含む目的タンパク質発現バクミドと、
miniFレプリコンと、バキュロウイルスDNAと、分子シャペロンをコードするポリヌクレオチドと、前記目的タンパク質発現用プロモーターと比べて転写活性化がより早期であり且つ転写量がより少ない分子シャペロン発現用プロモーターとを含む分子シャペロン発現バクミドと、
を昆虫由来の細胞に導入する工程を含み、
前記分子シャペロン発現用プロモーターは、OpIE2プロモーターであり、
前記分子シャペロンがERp57、BiP、又はHSP70である、
目的タンパク質の製造方法。
【請求項2】
前記目的タンパク質発現用プロモーターは、ポリヘドリンプロモーターである請求項1に記載の目的タンパク質の製造方法。
【請求項3】
前記分子シャペロンが、ERp57又はBiPである請求項1又は請求項2に記載の目的タンパク質の製造方法
【請求項4】
前記バキュロウイルスDNAは、BmNPV DNA又はAcMNPV DNAである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の目的タンパク質の製造方法。
【請求項5】
前記昆虫細胞がカイコガの細胞である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の目的タンパク質の製造方法。
【請求項6】
前記目的タンパク質発現バクミド及び前記分子シャペロン発現バクミドの少なくとも一方は、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子の少なくとも1種を欠損しているバクミド変異体である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の目的タンパク質の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、目的タンパク質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バキュロウイルス遺伝子発現系は、真核生物である昆虫由来の細胞中で組換えタンパク質を生産するため、糖鎖付加、リン酸化などの翻訳後修飾が行われるため、活性を有する組換えタンパク質の大量生産に適している。
さらに効率よく組換え遺伝子の発現を行うために、カイコ発現系に利用されるカイコガ核多角体病ウイルス(BmNPV)をBAC(Bacterial Artificial Choromosome)クローン化できるBmNPVシャトルベクター(バクミド)が開発され、大腸菌体内でのクローニングや組換えウイルスの構築を迅速に行うことができるようになった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
真核生物の細胞におけるタンパク質発現では、細胞内器官である小胞体においてタンパク質の翻訳後修飾が行われる。翻訳後修飾は各種の分子シャペロンによってなされており、例えば、糖鎖付加、ジスルフィド結合の形成、フォールディング等が挙げられる。
また、熱ショックに対する応答として、タンパク質の構造を正常に維持する作用を有する1種の分子シャペロンであるヒートショックプロテインが細胞質に発現することが知られている。
【0004】
また、昆虫細胞を用いた目的タンパク質発現系において、目的タンパク質の回収率の向上を目指し、目的タンパク質を発現するプラスミドと分子シャペロンを発現するプラスミドとを用いて形質転換した細胞株が知られている。前記形質転換細胞株においては、目的タンパク質と分子シャペロンとが同時に安定的に発現していることで目的タンパク質の回収率が向上するとされている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】

【特許文献1】特開2004-173507号公報
【非特許文献1】Biotechnol. Bioeng., 2004, Vol.89, p424-433.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、目的タンパク質と分子シャペロンとを同時に安定的に発現可能な細胞株を目的タンパク質に応じてそれぞれ確立する必要があり、また、目的タンパク質の回収率の点においても十分であるとは言い難かった。
本発明は、目的タンパク質の回収率が良好な目的タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、miniFレプリコンとバキュロウイルスDNAと目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドと目的タンパク質発現用プロモーターとを含む目的タンパク質発現バクミドと、miniFレプリコンとバキュロウイルスDNAと分子シャペロンをコードするポリヌクレオチドと前記目的タンパク質発現用プロモーターと比べて転写活性化がより早期であり且つ転写量がより少ない分子シャペロン発現用プロモーターとを含む分子シャペロン発現バクミドと、を昆虫由来の細胞に導入する工程を含む目的タンパク質の製造方法である。
【0008】
前記目的タンパク質発現用プロモーターは、ポリヘドリンプロモーターであることが好ましい。また、前記分子シャペロン発現用プロモーターは、OpIE1又はOpIE2であることが好ましい。また、前記バキュロウイルスDNAは、BmNPV DNA又はAcMNPV DNAであることが好ましい。更に前記目的タンパク質発現バクミド及び前記分子シャペロン発現バクミドの少なくとも一方は、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子の少なくとも1種を欠損しているバクミド変異体であることが好ましい。
特に、好ましい目的タンパク質の製造方法は、miniFレプリコン、バキュロウイルスDNA、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び目的タンパク質発現用プロモーターを含む目的タンパク質発現バクミドと、miniFレプリコン、バキュロウイルスDNA、分子シャペロンをコードするポリヌクレオチド、及び前記目的タンパク質発現用プロモーターと比べて転写活性化がより早期であり且つ転写量がより少ない分子シャペロン発現用プロモーターを含む分子シャペロン発現バクミドと、を昆虫由来の細胞に導入する工程を含み、前記分子シャペロン発現用プロモーターは、OpIE2プロモーターであり、前記分子シャペロンがERp57、Bip、又はHSP70である当該目的タンパク質の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目的タンパク質の回収率が良好な目的タンパク質の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の目的タンパク質の製造方法は、miniFレプリコンとバキュロウイルスDNAと目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドと目的タンパク質発現用プロモーターとを含む目的タンパク質発現バクミドと、miniFレプリコンとバキュロウイルスDNAと分子シャペロンをコードするポリヌクレオチドと前記目的タンパク質発現用プロモーターと比べて転写活性化がより早期であり且つ転写量がより少ない分子シャペロン発現用プロモーターとを含む分子シャペロン発現バクミドと、を昆虫由来の細胞に導入する工程を含むものである。
目的タンパク質発現用プロモーターに比べて、分子シャペロン発現用プロモーターの転写活性化に要する時間が短く、且つ、プロモーター活性が低く転写量が少ないことにより、目的タンパク質を良好な回収率で製造することができる。
【0011】
本発明においてminiFレプリコンは、大腸菌DH5αF’IQより分離したプラスミド由来の配列であって複製に必要な領域を意味する。このminiFレプリコンは、例えばF’レプリコンから得ることができる。このminiFレプリコンの構造は、例えば特開2004-173507号公報に開示されている。
【0012】
バキュロウイルスDNAとしては、BmNPV DNA又はAcMNPV DNAであることが好ましい。BmNPV DNAとAcMNPV DNAは本発明におけるバクミドの使用目的によって適宜選択可能である。
ここでBmNPVは、蚕の幼虫、蚕の蛹および蚕の培養細胞に感染して、感染細胞の核内に多角体をつくるカイコガ核多角体病ウイルス(Bombyx mori nucleopolyhedrovirus)を意味し、BmNPV DNAは、BmNPVのDNA配列を意味する。
またAcMNPVは、オートグラファ・カルフォルニカ多角体病ウイルス(Autographa californica multiple nucleopolyhedrovirus)を意味し、AcMNPV DNAは、AcMNPVのDNA配列を意味する。
【0013】
本発明における分子シャペロン発現バクミドは分子シャペロンをコードするポリヌクレオチドの少なくとも1種を含む。分子シャペロンをコードするポリヌクレオチドは、複数の分子シャペロンをコードするものであってもよい。
前記分子シャペロンは、真核生物の細胞に由来する分子シャペロンであれば、特に制限なく用いることができ、特定のタンパク質に特異的な分子シャペロンであっても、タンパク質全般を対象とする普遍的な分子シャペロンであってもよい。更に、普遍的な分子シャペロンは、構成的に存在するものであっても、ヒートショック等の特定の条件下に発現する誘導性のものであってもよい。
【0014】
また本発明における分子シャペロンは、目的タンパク質に応じて適宜選択することができる。例えば、目的タンパク質が糖タンパク質の場合には、糖修飾及び/又は糖タンパク質のフォールディングに関与する分子シャペロンを好ましく用いることができ、具体的には、カルネキシン、カルレティキュリン等を挙げることができる。また、例えば、目的タンパク質がジスルフィド結合を有するタンパク質の場合には、ジスルフィド結合形成に関与する分子シャペロンを好ましく用いることができ、具体的には、ERp57、ERp72等のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼファミリーのタンパク質を挙げることができる。また、例えば、目的タンパク質の糖鎖付加部位がN末端側からおよそ50アミノ酸残基より下流に位置する場合には、糖タンパク質のフォールディングに関与する特定の分子シャペロンを好ましく用いることができ、具体的には、BiP等を挙げることができる。
【0015】
前記分子シャペロンをコードするポリヌクレオチドは、例えば、ヒト由来のcDNAライブラリーを鋳型として適切なプライマーを用いたPCRを適用することで調製することができる。
【0016】
本発明における目的タンパク質発現用プロモーターとしては、目的タンパク質遺伝子の転写活性化が可能であれば、公知のプロモーターを特に制限なく用いることができる。また、公知のプロモーター改変方法により、プロモーター活性を向上させた改変プロモーターであってもよい。
中でも目的タンパク質の発現効率の観点から、高いプロモーター活性を有するプロモーターであることが好ましい。具体的には、例えば、ポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等を挙げることができ、中でもポリヘドリンプロモーターを好ましく挙げることができる。
【0017】
本発明における分子シャペロン発現用プロモーターは、前記目的タンパク質発現用プロモーターと比べて転写活性化がより早期であり且つ転写量がより少ないプロモーターであることを特徴としている。
【0018】
ここで転写量が少ないプロモーターであるとは、プロモーターの下流に位置する分子シャペロン遺伝子のmRNAへの転写活性が低く、分子シャペロンの発現量が少ないことを意味する。
【0019】
また、転写活性化がより早期であるとは、本発明における目的タンパク質発現バクミドと分子シャペロン発現バクミドとを昆虫由来の細胞に導入した後、目的タンパク質の発現までに要する遅延時間よりも、分子シャペロンの発現までに要する遅延時間の方が短いことを意味する。これにより分子シャペロンが充分量発現された後に、目的タンパク質を発現させることができ、分子シャペロンによる目的タンパク質のフォールディングがより効率的に行われる。
【0020】
一般的に、プロモーターには常に発現しているものと限られた時期に発現するものとがあることが知られている。常に発現しているプロモーターとしては、例えば、アクチンプロモーター等を挙げることができる。
また、限られた時期に発現するプロモーターとしては、例えば、感染後36時間程度から発現を開始するポリヘドリンプロモーター、感染後12時間程度から発現を開始するGP64プロモーター、感染直後から発現し、その後42時間程度で発現が終了するOpIE2プロモーター、等を挙げることができる。
【0021】
本発明においては、目的タンパク質の回収率の点から、分子シャペロン発現用プロモーターの活性化に要する時間は、ウイルスの増幅を阻害しない限り、短い方が好ましい。
【0022】
本発明において目的タンパク質発現用プロモーターと分子シャペロン発現用プロモーターの組合せは、目的タンパク質や発現させる昆虫由来の細胞の種類等に応じて適宜選択することができるが、目的タンパク質の回収率の観点から、例えば、目的タンパク質発現用プロモーターとしてポリヘドリンプロモーターを用いる場合、分子シャペロン発現用プロモーターとしてOpIE1、OpIE2等を用いることが好ましく、OpIE2を用いることがより好ましい。
ここでOpIE1及びOpIE2は、オルギアシュードツガタ多角体病ウイルス(Orgyia pseudotsugata multiple nucleopolyhedrovirus)に由来するプロモーターを意味する。
【0023】
本発明における目的タンパク質発現バクミドは、miniFレプリコン、バキュロウイルスDNA及びトランスポゾンの付着部位から構成されたバクミドの基本骨格に対して、両末端に配置されたトランスポゼースの認識配列と目的タンパク質発現用プロモーターと目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む挿入フラグメントを相同組換えして得ることができる。
また、分子シャペロン発現バクミドも同様に、バクミドの基本骨格に対して、分子シャペロン発現用プロモーターと分子シャペロンをコードするポリヌクレオチドを含む挿入フラグメントを相同組換えして得ることができる。
【0024】
miniFレプリコン、バキュロウイルスDNA及びトランスポゾンの付着部位から構成されたバクミドの基本骨格は、公知の方法で作製することができ、例えば特開2004-173507号公報や、Biochemical and Biophysica Research Communications 326 (2005) p564-569などに記載されている。
また、バクミドの基本骨格に対する挿入フラグメントの相同組換えは公知の方法で行うことができる。例えば、国際公開2007/029360号明細書に記載のλリコンビネーション系を好適に適用することができる。
【0025】
本発明において、分子シャペロン発現用バクミド及び目的タンパク質発現バクミドの少なくとも一方は、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子の少なくとも1種を欠損していることが好ましい。これにより、目的タンパク質の回収率をより向上させることができる。
ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子の少なくとも1つを欠損させる方法としては、例えば、国際公開第2007/029360号明細書に記載の方法及びそれを適宜変更した方法を用いることができる。
【0026】
上記目的タンパク質発現バクミドと分子シャペロン発現バクミドとを導入(感染)する昆虫由来の細胞としては、昆虫個体の細胞であっても、確立した細胞株であってもよく、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0027】
昆虫の種類としては、バクミドが感染しうる昆虫であれば特に制限はない。具体的には、例えば、バクミドがAcMNPV DNAを含む場合、スポドプテラ・フルギペルタ(Spodoptera frugiperda)及びイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)を挙げることができる。また、バクミドがBmNPV DNAを含む場合、カイコガ(Bombyx mori)を挙げることができる。
【0028】
また、確立された細胞株としては、例えば、カイコガに由来するBm5細胞及びBmN4細胞、スポドプテラ・フルギペルタに由来するSf細胞、並びに、イラクサギンウワバに由来するTn細胞等を挙げることができる。
【0029】
目的タンパク質発現バクミドを昆虫由来の細胞に導入する方法としては、公知の方法を適用することができる。
例えば、確立された細胞株に導入する場合には、細胞を培養している培地に直接添加することで、目的タンパク質発現バクミドを昆虫由来の細胞に導入することができる。また、カイコガ個体の細胞に導入する場合には、カイコガの幼虫個体又はカイコガの蛹に目的タンパク質発現バクミドを含む溶液を直接接種することで導入することができる。
【0030】
本発明においては、昆虫由来の細胞によって生成された目的タンパク質を回収する回収工程を更に設けることが好ましい。
目的タンパク質の回収としては、特に制限なく公知の方法を適用することができる。このような回収工程には、例えば、Hisタグ及びFlagタグのようなタグや、発現した目的タンパク質に対する抗体などを用いる方法や、イオン交換カラム及びアフィニティカラムなどによる精製方法など、公知の手段を用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中の%は特記しない限り、質量基準である。尚、市販のキットを使用した場合には、特記しない限り添付の取り扱い説明書にしたがって操作を行った。
【0032】
(参考例)
<システインプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子欠損バクミド変異体の構築>
[1]pBmCPKI-CATプラスミドの作製
野生型BmNPV DNA(フナコシ社)を鋳型として、プライマーセットAc051232(配列番号15)-Ac051229(配列番号16)を用いてPCRを行い、システインプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子を含むPCR産物を得た。PCRは10×KODバッファー、100μM dNTP、1.2mM Mg2+、1unit KODpol(TOYOBO社製)を用いて、94℃ 30sec、60℃ 30sec、74℃ 45secを25サイクルの条件で行った。増幅させた572bpのPCRフラグメントを1.5%アガロースゲル電気泳動した後、ゲルから切り出して精製した。次いで常法によりpT7Blue Vector(Novagen社製)に導入してシステインプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子を含むpBmCPKIプラスミドを得た。
【0033】
次に、pKD3(エール大学(米)のMary K. B. Berlyn博士から供与)とプライマーセットCat051230(配列番号17)-Cat051231(配列番号18)を用いて上記と同様にPCRを行い、クロラムフェニコール耐性遺伝子カセット(CAT)を得た。
上記pBmCPKIプラスミドをSgrAI-PshAIで切断し、T4DNAポリメラーゼ(例えば宝酒造のBlunting kit)で平滑末端化した後、この平滑化したpBmCPKIプラスミドに、クロラムフェニコール耐性遺伝子カセットを挿入して連結し、プラスミドpBmCPKI-CATを得た。
【0034】
[2]CPKI-CATフラグメントの作製
プラスミドpBmCPKI-CATを鋳型として、プライマーセットAc051232(配列番号15)-Ac051229(配列番号16)を用いてPCRを行い、システインプロテアーゼ遺伝子の一部と、キチナーゼ遺伝子の一部とがクロラムフェニコール耐性遺伝子に置き換わったシステインプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子欠損用カセット(CPKI-CATフラグメント)を得た。
【0035】
[3]BmNPV Bacmid Pの構築
bacmid-BmNPV DNAを含むDH10Bコンピテントセル(インビトロジェン社)にRed recombinase plasmid pKD46(エール大学(米)のMary K.B. Berlyn 博士から供与)をトランスフォーメーションし、Kan/Amp LBプレート(カナマイシン、アンピシリン:各50μg/ml)上で、30℃一晩培養した。生育したコロニーのうちbacmid-BmNPVとpKD46が含まれているものを選択し、0.2%アラビノース存在下のSOB培地(カナマイシン、アンピシリン:各50μg/ml)で、再度30℃一晩培養した培養液(D610の値が0.5~0.6)に氷冷10%グリセロールを加えて、エレクトロポレーション用のコンピテントセルを作製した。
作製したコンピテントセル50μlに、500ngの精製CPKI-CATフラグメントを常法に従ってヒートショック法によってトランスフォーメーションし、500μlのSOCを添加後、37℃1時間培養した。培養液をCm/Kan LBプレート一枚に付き250μlでプレーティング後、37℃で一晩培養した。形成されたコロニーを拾い、システインプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子欠損バクミド変異体(BmNPV Bacmid P)を単離した。
【0036】
(実施例1)
<分子シャペロン発現バクミドの調製>
-ERp57発現バクミドの調製-
分子シャペロンERp57をコードするポリヌクレオチドを、ヒト胃由来cDNAライブラリーを鋳型とし、下記表1に示したプライマーセット(配列番号1及び配列番号2)と、LA Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で3分間保持した後、95℃ 30秒、56℃ 40秒、72℃ 2分30秒を32サイクルの条件でPCRを行うことによって調製した。この断片を常法によりpENTR/D-TOPO(インビトロジェン社製)に挿入した。
【0037】
【表1】
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【0038】
・OpIE2プロモーターを有するデスティネーションベクターの調製
pIB/V5-His-TOPO(インビトロジェン社製)を鋳型とし、下記表2に示したPCRプライマーセット(配列番号3及び配列番号4)と、KOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社製)を用いて、95℃ 2分の後、95℃ 30秒、55℃ 40秒、68℃ 1分30秒を30サイクルの条件でPCRを行い、OpIE2プロモーターを含むポリヌクレオチドを得た。
また、pDEST8(インビトロジェン社製)を鋳型とし、下記表2に示したPCRプライマーセット(配列番号5及び6)と、LA Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、95℃ 2分の後、95℃ 30秒、55℃ 40秒、72℃ 8分を32サイクルの条件でPCRを行い、pDEST8のデスティネーションベクター部分を増幅した。
上記で得られたOpIE2プロモーターを含むポリヌクレオチドとpDEST8のデスティネーションベクター部分とを、制限酵素XhoI及びHindIIIでそれぞれ処理し、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いてライゲーション処理を行い、OpIE2プロモーターを含むデスティネーションベクターpDIEを得た。
【0039】
【表2】
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【0040】
常法に従い、ゲートウェイ(登録商標)・クローニングによりpDIEに、上記で作製したERp57遺伝子を含むプラスミドからERp57遺伝子を挿入し、続いてBac-to-Bac(登録商標)システムにより遺伝子発現カセットを、上記で得られたシステインプロテアーゼ遺伝子及びキチナーゼ遺伝子欠損バクミド変異体(BmNPV Bacmid P)に挿入することにより、分子シャペロン発現用プロモーターとしてOpIE2を含み、分子シャペロンとしてERp57を発現する分子シャペロン発現バクミドを得た。
【0041】
-Bip発現バクミドの調製-
ERp57発現バクミドの調製において、上記表1に示したプライマーセットの代わりに下記表3に示すプライマーセット(配列番号7及び配列番号8)を用いて調製した分子シャペロンBipをコードするポリヌクレオチドを用いた以外は同様にして、分子シャペロンとしてBipを発現する分子シャペロン発現バクミドを得た。
【0042】
【表3】
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【0043】
-HSP70発現バクミドの調製-
ERp57発現バクミドの調製において、上記表1に示したプライマーセットの代わりに下記表4に示すプライマーセット(配列番号9及び配列番号10)を用いて調製した分子シャペロンHSP70を用いた以外は同様にして、分子シャペロンとしてHSP70を発現する分子シャペロン発現バクミドを得た。
【0044】
【表4】
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【0045】
-CNX発現バクミドの調製-
ERp57発現バクミドの調製において、上記表1に示したプライマーセットの代わりに下記表5に示すプライマーセット(配列番号11及び配列番号12)を用いて調製した分子シャペロンCNXを用いた以外は同様にして、分子シャペロンとしてCNXを発現する分子シャペロン発現バクミドを得た。
【0046】
【表5】
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【0047】
-CRT発現バクミドの調製-
ERp57発現バクミドの調製において、上記表1に示したプライマーセットの代わりに下記表6に示すプライマーセット(配列番号13及び配列番号14)を用いて調製した分子シャペロンCRTを用いた以外は同様にして、分子シャペロンとしてCRTを発現する分子シャペロン発現バクミドを得た。
【0048】
【表6】
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【0049】
<GFPuv-β3GnT2融合タンパク質発現バクミドの調製>
J.Biotechnol. 129, p681-688, 2007に記載の方法に従ってGFPuv-β3GnT2融合タンパク質を発現するバクミドを調製した。このバクミドにおいてモデルタンパク質(目的タンパク質)であるGFPuv-β3GnT2融合タンパク質はポリヘドリンプロモーターによって発現調節を受けている。
【0050】
<GFPuv-β3GnT2融合タンパク質の発現>
得られた分子シャペロン発現バクミド1μgと、GFPuv-β3GnT2融合タンパク質を発現するバクミド1μgとを、カイコガの幼虫(四齢)へ注射器で導入した。7日後、カイコガの幼虫の体液から発現したタンパク質を常法により回収し、遠心分離により精製した。
次いで発現したタンパク質について、Biosci. Biotechnol. Biochem. 67、p2388-2395、2003に記載の方法により、β3GnT2活性を測定した。結果を図1に示した。
【0051】
(比較例1)
実施例1のGFPuv-β3GnT2融合タンパク質の発現において、分子シャペロン発現バクミドの代わりに、発現用遺伝子を含まないバクミドを用いた以外は実施例1と同様にして、GFPuv-β3GnT2融合タンパク質を発現させ、β3GnT2活性を測定した。結果を図1に示した。
【0052】
図1において、GFPはGFPuv-β3GnT2融合タンパク質発現用バクミド、Bacmidは発現用遺伝子を含まないバクミドを、また、ERp57等は分子シャペロン発現バクミドをそれぞれ接種したことを示す。
図1から、目的タンパク質発現バクミドとしてGFPuv-β3GnT2融合タンパク質発現バクミドを用い、分子シャペロン発現バクミドとしてERp57、Bip及びHSP70発現バクミドを用いることによって、目的タンパク質であるGFPuv-β3GnT2融合タンパク質を良好な回収率で得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】カイコガ幼虫を用いたGFPuv-β3GnT2融合タンパク質の発現結果を示すグラフである。
図面
【図1】
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