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明細書 :有機体窒素化合物の分解方法及び水処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4069197号 (P4069197)
公開番号 特開2002-316190 (P2002-316190A)
登録日 平成20年1月25日(2008.1.25)
発行日 平成20年4月2日(2008.4.2)
公開日 平成14年10月29日(2002.10.29)
発明の名称または考案の名称 有機体窒素化合物の分解方法及び水処理方法
国際特許分類 C02F   3/34        (2006.01)
C01B  21/50        (2006.01)
C01C   1/08        (2006.01)
C12P   3/00        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
C12R   1/48        (2006.01)
FI C02F 3/34 ZABZ
C01B 21/50 Z
C01C 1/08
C12P 3/00 Z
C12N 1/20 D
C12N 1/20 F
C12N 1/20 D
C12R 1:48
C12P 3/00 Z
C12R 1:48
請求項の数または発明の数 7
微生物の受託番号 FERM P-18294
全頁数 11
出願番号 特願2001-122540 (P2001-122540)
出願日 平成13年4月20日(2001.4.20)
審判番号 不服 2004-024126(P2004-024126/J1)
審査請求日 平成13年4月20日(2001.4.20)
審判請求日 平成16年11月25日(2004.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】祥雲 弘文
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
参考文献・文献 特開平5-317880(JP,A)
特開平11-253992(JP,A)
佐々木康幸ほか、”放線菌Sreptomyces antibioticusの脱窒系の解析”、日本農芸化学会誌、第74巻 臨時増刊号、2000年3月
調査した分野 C02F3/28-3/34
C12N1/20
C01B21/50
特許請求の範囲 【請求項1】
有機体窒素化合物を分解するにあたり、
有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力を有するストレプトミセス属の放線菌を前記有機体窒素化合物に作用させることによって、前記有機体窒素化合物から亜硝酸を生産することを特徴とする有機体窒素化合物の分解方法。
【請求項2】
有機体窒素化合物を含有する水を処理するにあたり、
前記水と、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力を有するストレプトミセス・アンチビオティカス FERM P-18294で表される放線菌とを混合し、前記有機体窒素化合物を分解することを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
前記放線菌が有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力を有する請求項2記載の水処理方法。
【請求項4】
前記放線菌が有機体窒素化合物からアンモニアを生産する能力及び亜硝酸及びアンモニアから窒素を生産する能力を有する請求項2又は3記載の水処理方法。
【請求項5】
前記放線菌を好気的条件下に培養し、前記有機体窒素化合物を分解する請求項2~4のいずれか一項記載の水処理方法。
【請求項6】
前記放線菌が従属栄養細菌である請求項2~5のいずれか一項記載の水処理方法。
【請求項7】
前記従属栄養細菌が、ストレプトミセス・アンチビオティカス FERM P-18294である請求項6記載の水処理方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機体窒素化合物の分解方法及び水処理方法に関し、特に、Streptomyces antibioticus(ストレプトミセス・アンチビオティカス、以下「S.antibioticus」と称す) NRRL B-546を利用した、排水からの有機体窒素化合物の除去技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、汚染窒素の除去は、排水処理場において、硝化・脱窒処理によって行われている。
【0003】
従来型の窒素除去(活性汚泥法)は、根本的に(1)好気的な硝化処理によるアンモニア体窒素の硝酸への変換と(2)嫌気的な脱窒処理による硝酸の窒素ガス(N)への変換の2過程の組み合わせからなる。
【0004】
これらの過程は、被処理水への通気を制御することによって、交互に行われている。それぞれの過程は、活性汚泥中に生息する硝化菌と脱窒菌の働きを利用したものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この窒素処理システムは、重大な欠陥を持つ。即ち、温暖化ガス・亜酸化窒素(NO)の大気中への大量放出である。NOは、炭酸ガスの数百倍もの温室効果を示し、更にオゾン層も破壊することが知られている。また、NOは、大気中での半減期が150年であり、一旦放出されると半永久的になくならない。
【0006】
大気中のNO濃度は、炭酸ガスの1/1000程度と微量である。しかし、その強力な温室効果と、20世紀以降の大気中のNOの増加率(毎年0.3%)とを考え合わせると、その地球温暖化に与える影響は、炭酸ガスに並ぶほど重大である。
【0007】
従来型の窒素除去では、一般に、硝化菌の好気性要求度と脱窒菌の嫌気性要求度は非常に高く、適当な通気を制御することが困難である。硝化菌、脱窒菌のいずれも、適正な通気が行われないと、副産物としてNOを生成し、これが大気中に放出される。
【0008】
既存の技術を用いて大量の処理水への通気を完全に制御するためには、莫大なコストや時間がかかる。このため、現存の排水処理技術の中では、排水処理におけるNOの放出は、大気中のNO濃度上昇原因の一つとされている。
【0009】
本発明の課題は、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力を有する微生物によって、有機体窒素化合物から亜硝酸生産する方法を得ることである。
また、本発明の課題は、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力を有する微生物によって、効率的な水処理方法を得、水処理の際のNO生成を効率的に抑制することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機体窒素化合物を分解するにあたり、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力を有するストレプトミセス属の放線菌を前記有機体窒素化合物に作用させることによって、前記有機体窒素化合物から亜硝酸を生産することを特徴とする有機体窒素化合物の分解方法に係るもの(第1発明)である。
【0011】
また、本発明は、有機体窒素化合物を含有する水を処理するにあたり、前記水と、有機体窒素化合物から窒素(窒素ガス)を生産する能力を有するストレプトミセス・アンチビオティカス FERM P-18294で表される放線菌とを混合し、前記有機体窒素化合物を分解することを特徴とする水処理方法に係るもの(第2発明)である。
【0012】
本発明者は、S.antibioticus NRRL B-546が、有機体窒素化合物の好気的な未知の反応機構により亜硝酸を生成し、また、有機体窒素化合物の好気的な脱アミノ反応によりアンモニアを生成し、NO生成を抑制しつつ、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力を有することを見出し、本発明に至った。
【0013】
本発明の第1発明は、所定の微生物を培養することによって、有機体窒素化合物から亜硝酸を生物的に生産できることが見出されたことに基づく。
【0014】
本発明では、かかる微生物は、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力を有している。
【0015】
本発明では、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力とは、有機体窒素化合物から亜硝酸を直接生産する能力、及び有機体窒素化合物から硝酸等の中間化合物を生産して中間化合物から亜硝酸を生産する能力のいずれか少なくとも一方の能力をいう。
【0016】
単独のストレプトミセス属の放線菌が有機体窒素を亜硝酸に変換することは、知られていない。硝化細菌の硝化において、アンモニアからの亜硝酸の生成が知られている。
【0017】
本発明の第2発明は、所定の微生物によって、有機体窒素化合物から窒素を生物的に生産できることが見出されたことに基づく。
【0018】
本発明では、かかる微生物は、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力を有している。
【0019】
本発明では、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力とは、有機体窒素化合物から窒素を直接生産する能力、及び有機体窒素化合物から亜硝酸やアンモニア等の中間化合物を生産して中間化合物から窒素を生産する能力のいずれか少なくとも一方の能力をいう。
【0020】
単独の微生物が有機体窒素を窒素ガスに変換することは、知られていない。脱窒菌の脱窒において、硝酸又は亜硝酸からの窒素ガスの生成が知られているのみである。
【0021】
本発明によれば、所定の微生物によって、有機体窒素化合物から亜硝酸が生産され、或いは又有機体窒素化合物から窒素が生産されるので、活性汚泥のような複雑な生物群を用いる必要がなく、通気条件が制御し易い、効率的な水処理方法が得られ、水処理の際、NO生成の抑制を効率的に行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明では、有機体窒素化合物としては、特に制限されず、種々のものを用いることができる。かかる有機体窒素化合物は、例えば、タンパク質、アミノ酸、核酸、アミン類等の含窒素有機化合物が挙げられる。
【0023】
本発明にかかる亜硝酸は、所定の微生物によって、有機体窒素化合物から生産される。かかる亜硝酸は、特に限定されず、例えば、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩等として存在することができる
【0024】
本発明の第1発明では、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力を有する微生物を用いる。かかる微生物は、ストレプトミセス属の放線菌よく、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する限り、特に制限されない。
【0025】
かかる微生物は、有機体窒素化合物から硝酸等の中間化合物を生産し中間化合物から亜硝酸を生産する能力を有することができる。
【0026】
かかる微生物は、好気的条件下に、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する能力を有するのが好ましい。微生物を好気的条件下で培養できれば、嫌気的条件下で培養するのと比べ、通気条件を制御し易いからである。
【0027】
また、かかる微生物は、従属栄養細菌であるのが好ましい。有機体窒素化合物の利用能に優れ、酵母エキス、肉エキス、NZアミン(商品名)等の有機体窒素化合物を含有する培地での維持や培養が容易だからである。
【0028】
さらに、かかる微生物は、グルコースやグリセロール等の炭素源の添加によって、亜硝酸生成活性が抑制されないのが好ましい。なお、かかる微生物の亜硝酸生成活性が、培地や排水等に混入している炭素源により抑制される場合には、かかる炭素源を除去するか、かかる炭素源を不活化することが有効である。
【0029】
また、かかる微生物は、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する際に、特に、NO生成を抑制するものであるのが好ましい。
【0030】
さらに、かかる微生物は、ストレプトミセス属の放線菌、特に、S.antibioticus NRRL B-546が好ましい。かかる微生物は、有機体窒素化合物から硝酸を生産する能力と、硝酸から亜硝酸を生産する能力とを有しており、有機体窒素化合物からの亜硝酸の生産能力に優れ、NO生成が著しく低いからである。
【0031】
本発明者は、これまでに、従来知られていなかった放線菌に属する新規脱窒菌を発見している。
【0032】
S.antibioticus NRRL B-546は、その一例であり、通常の脱窒菌と同様に硝酸を還元し、Nを生成する。
【0033】
さらに、本発明者は、S.antibioticus NRRL B-546が、脱窒だけでなく、これまで知られていない新たな窒素代謝能を持つことを発見し、「共脱窒」と名付けた。
【0034】
共脱窒は、硝酸又は亜硝酸とアンモニアとをNに変換する反応で、反応中間物にNOを伴わない。また、この反応は、好気的反応である〔日本農芸化学会2000年度大会(3月)にて発表〕。
【0035】
本発明にかかるS.antibioticus NRRL B-546は、受託番号:FERM P-18294として、平成13年 4月12日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託してある。この菌株は、
1.枝分かれのある菌糸状の形態を示し、
2.チロシンを含む培地で黒色の色素を生成し、
3.平板培地上で白色の胞子を形成し、
4.グリセロールを炭素源として良好に生育し、
5.異化的硝酸還元能をもち、
分類学上、ストレプトミセス属の放線菌に属する。
【0036】
かかる微生物が、有機体窒素化合物から亜硝酸を生産する代謝系は、少なくとも、S.antibioticus NRRL B-546のような従属栄養細菌では、初めての発見である。
【0037】
また、かかる微生物が、酵母エキストラクト等の複雑な有機体窒素化合物から亜硝酸を生産できることは、ストレプトミセス属の放線菌では初めての発見である。
【0038】
かかる微生物の培養の条件は、有機体窒素化合物からの亜硝酸の生産に適するならば、特に制限されることはない。用いる微生物の種類、溶液中の有機体窒素化合物の濃度、溶液の組成、培養密度、培養温度、培養時間等、種々の条件を設定し、微生物の亜硝酸生産能を制御することができる。
【0039】
本発明では、かかる微生物を培養して、溶液中の有機体窒素化合物を亜硝酸に変換することができる。かかる亜硝酸は、他の生物的処理や化学的処理により、更に窒素にまで変換することができる。
【0040】
このように、本発明の亜硝酸の生産方法は、生活排水や工場排水等の排水中の有機体窒素化合物を硝酸又は亜硝酸に分解することができるので、排水処理の方法として極めて有用である。
【0041】
本発明の第2発明では、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力を有する微生物を用いる。かかる微生物は、ストレプトミセス・アンチビオティカス FERM P-18294で表される放線菌よく、有機体窒素化合物から窒素を生産する限り、特に制限されない。
【0042】
本発明では、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力を有する微生物は、有機体窒素化合物から硝酸化合物や亜硝酸化合物等の中間化合物を生産して中間化合物から窒素を生産する能力を有することができ、また、かかる微生物は、有機体窒素化合物からアンモニアを生産してアンモニアから窒素を生産する能力を有することができる。
【0043】
かかる微生物は、硝酸又は亜硝酸とアンモニアとを窒素に変換する共脱窒の能力を有するのが好ましい。単独の微生物が2種以上の基質を窒素に変換できることは、脱窒性能を向上させるのに有利だからである。
【0044】
本発明では、微生物は、好気的条件下に、有機体窒素化合物から窒素を生産する能力を有するのが好ましい。微生物を好気的条件下で培養できれば、嫌気的条件下で培養するのと比べ、通気条件を制御し易いからである。
【0045】
また、かかる微生物は、従属栄養細菌であるのが好ましい。有機体窒素化合物の利用能に優れ、酵母エキス、肉エキス、NZアミン等の有機体窒素化合物を含有する培地での維持や培養が容易だからである。
【0046】
さらに、かかる微生物は、グルコースやグリセロール等の炭素源の添加によって、窒素生成活性が抑制されないのが好ましい。なお、かかる微生物の窒素生成活性が、培地や排水等に混入している炭素源により抑制される場合には、かかる炭素源を除去するか、かかる炭素源を不活化することが有効である。
【0047】
また、かかる微生物は、有機体窒素化合物から窒素を生産する際に、特に、NO生成を抑制するものであるのが好ましい。
【0048】
また、かかる微生物は、ストレプトミセス属の放線菌、特に、S.antibioticus NRRL B-546である。かかる微生物は、有機体窒素化合物からの窒素の生産能が優れ、NO生成が著しく低いからである。
【0049】
かかる微生物の代謝系は、少なくとも、S.antibioticus NRRL B-546のような従属栄養細菌では、初めての発見である。
【0050】
かかる微生物が単独で、酵母エキストラクト等の複雑な有機体窒素から窒素を生産できることは、初めての発見である。
【0051】
本発明にかかるS.antibioticus NRRL B-546は、有機体窒素化合物から硝酸、亜硝酸及びアンモニアを生産する能力を有し、硝酸又は亜硝酸とアンモニアとを窒素に変換する能力を有している。
【0052】
かかるS.antibioticus NRRL B-546は、好気的な条件下に、NOの生成を抑制しつつ、有機体窒素化合物から窒素を生産することができる。
【0053】
このように、本発明にかかる微生物の有機体窒素化合物からの亜硝酸又はアンモニアの生成反応と、硝酸又は亜硝酸とアンモニアとを窒素に変換する共脱窒とを組み合わせれば、好気的処理単独で、NO排出削減型の画期的な有機体窒素除去システムが構築できる。
【0054】
この点で、本発明は、従来の硝化・脱窒処理の常識を打ち破り、従来の排水処理における硝化・脱窒処理に取って代わる可能性をもつ革新的なものである。
【0055】
本発明は、排水処理産業、特に、生活排水、農畜産排水、工業排水等の有機体窒素を多く含む排水からの窒素除去の分野において、産業上利用することができる。
【0056】
【実施例】
図面を参照して、本発明を実施例に基づいて、具体的に説明する。なお、本発明は、ここに記載する実施例に制限されるものではない。
図1は、S.antibioticus NRRL B-546による有機体窒素からの亜硝酸生産を示すグラフである。図2は、S.antibioticus NRRL B-546による有機体窒素からのアンモニア生産を示すグラフである。図3は、S.antibioticus NRRL B-546によるN0排出削減型窒素除去の一例を示すグラフである。
【0057】
実施例1~5
S.antibioticus NRRL B-546による有機体窒素からの亜硝酸生産を実験した。
S.antibiticus NRRL B-546を、300mLの0.1重量%酵母エキスのみ添加した培地A(実施例1)、培地Aにおいて酵母エキスを肉エキスに代えた培地(実施例2)及び培地Aにおいて酵母エキスをNZアミン(商品名)に代えた培地(実施例3)を用いて、好気的にフラスコ培養し、培地中の亜硝酸塩の濃度を測定した。
【0058】
実施例1の結果を図1に示す。図1に示すように、培養に伴って、培地中に亜硝酸の蓄積が見られた。なお、亜硝酸生成に適した培地組成は、実施例1~3のうちでは、実施例1の培地A(0.1重量%酵母エキス添加)を用いたときに最も亜硝酸の生成量が多く、その生成量は、フラスコあたり60μモルであった(図1参照)。
【0059】
これは、本菌が培地中の有機体窒素成分(酵母エキス等)から亜硝酸を生成する能力をもつことを示す。このような代謝系は、硝化細菌の硝化によりアンモニアが亜硝酸を生成することが知られているのみであり、本菌のような従属栄養細菌でははじめてであり、酵母エキストラクト等の複雑な有機体窒素からの亜硝酸生産は微生物を通じてはじめての発見である。
【0060】
なお、この亜硝酸生成活性は、培地Aに1重量%グルコース(実施例4)や3重量%グリセロール(実施例5)等の炭素源を添加することによって抑制される傾向があった(図1参照)。
【0061】
実施例6~8
亜硝酸生産を行う異化型硝酸還元酵素(Nar)活性を測定した。
Narは、脱窒に関与する酵素で膜画分に存在することが知られている。この酵素は、硝酸を還元し亜硝酸を生成する。
【0062】
培地A(実施例1)、培地Aに10mM亜硝酸を添加した培地(実施例6)、あるいは培地Aに10mM硝酸を添加した培地(実施例7)を用いて、実施例1と同様な好気条件で、S.antibioticus NRRL B-546を培養し、脱窒系酵素を誘導し、12時間経過したときの菌体を回収し、菌体の膜画分中の各種脱窒系酵素(Nar活性等)を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
また、気相をアルゴンガスで置換した後に、フラスコをゴム栓で密閉し、通気を制限した嫌気条件で、培地Aを用いてS.antibioticus NRRL B-546を培養し、菌体中のNar活性を測定した(実施例8)。結果を表2に示す。なお、各酵素の測定方法は、Kobayashi M, et al., J. Biol. Chem. 271, 16263-16267(1996)に従った。
【0064】
【表1】
JP0004069197B2_000002t.gif【0065】
表1に示すように、亜硝酸還元酵素が構成的に発現していることがわかった。菌体中のNar活性は、いずれの培地を用いたときも同程度であった。これは、好気的条件下でも、Narが機能可能であることを予想させるものである。通常の細菌では、この酵素は、嫌気条件下で硝酸によって誘導合成されるが、S.antibioticus NRRL B-546のNarは、これとは異なっているという特徴をもつ。
【0066】
また、培地Aにグルコース(実施例4)あるいはグリセロール(実施例5)を添加したところ、菌体内のNar活性は減少した。この結果は、S.antibioticus NRRL B-546によって生産される亜硝酸は、Narにより、硝酸から生成される可能性を示す。
【0067】
実施9~11
S.antibioticus NRRL B-546による有機体窒素からのアンモニア生産を試験した。
実施例1と同様の実験を行い、培地中のアンモニア濃度を定量した(実施)。結果を図2に示す。その結果、S.antibioticus NRRL B-546によって、有機体窒素からアンモニアが生成することが示された。この生成活性は、培地Aを用いたときに最も高く、フラスコあたり0.8mモルであった。
【0068】
また、図2に示すように、アンモニア生成は、培地Aにグルコース(実施10)又はグリセロール(実施11)を添加することによって抑制された。即ち、アンモニアの生成と亜硝酸の生成とは類似の培地条件で起こった。
【0069】
実施例12~1及び比較例1及び2
S.antibioticus NRRL B-546によるN0排出削減型窒素除去を実験した。
S.antibioticus NRRL B-546が、有機体窒素から亜硝酸及びアンモニアを作ることは、共脱窒反応により、有機体窒素からNが生成できることを予想させる。
【0070】
実際、表2に示す培地Bに10mMずつの亜硝酸とアンモニアを添加した培地(pH5.0:実施例12及びpH7.2:実施例1)を用いて、実施例1と同様の好気条件でS.antibioticus NRRL B-546を培養すると、気相中に窒素ガスが生成することが分かった(図3)。この例においては、硝酸又は亜硝酸は、安定同位体15Nで標識してあるので、アンモニアと硝酸又は亜硝酸のハイブリッドによる窒素ガスは、1514Nとして検出される。
【0071】
【表2】
JP0004069197B2_000003t.gif【0072】
なお、図3に示すように、亜硝酸とアンモニアとを添加した培地は、菌体を加えなくとも、pH5等の酸性(比較例1)では、pH7等の中性(比較例2)に比べて窒素ガスを多く生成する。したがって、図3のpH5.0で、微生物が生産する窒素の量は、培地自体が生成する窒素の量を控除することで求められる。
【0073】
また、培地Aに10mMずつの硝酸とアンモニアを添加した培地(pH5.0:実施例1及びpH7.2:実施例1)を用いて、実施例1と同様の好気条件でS.antibioticus NRRL B-546を培養した。
【0074】
この場合も、図3に示すように、気相中に窒素ガスが生成することが分かった。このことは、S.antibioticus NRRL B-546が、硝酸を亜硝酸に変換し、亜硝酸から窒素ガスを生産することを示す。
【0075】
実施例12~1の際、亜酸化窒素の生成量が少なかった(2μモル/フラスコ)。このことは、本菌を用いるシステムが、温室ガスである亜酸化窒素排出抑制型排水処理システムの構築に有用であることを示す。
【0076】
本菌の共脱窒系を利用すれば、排水からの有機体窒素及び硝酸の同時除去が可能である。また、本菌は、嫌気条件下よりも好気的条件下で強い窒素ガス生成活性を示すことから、好気的脱窒処理が可能である。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、単一の微生物を用いて有機体窒素化合物を亜硝酸又は窒素に変換できるので、従来に比べ制御が容易で効率的な窒素除去システムを提供することができる。
【0078】
また、本発明の方法は、制御が容易で効率的であるので、たとえ好気的な条件であっても、N0を発生させないで、有機体窒素化合物から窒素を除去するシステムの構築が可能である。かかる窒素除去は、温室ガスN0の大気中への放散が少ない環境にやさしい技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 S.antibioticus NRRL B-546による有機体窒素からの亜硝酸生産を示すグラフである。
【図2】 S.antibioticus NRRL B-546による有機体窒素からのアンモニア生産を示すグラフである。
【図3】 S.antibioticus NRRL B-546によるN0排出削減型窒素除去の一例を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2