TOP > 国内特許検索 > 磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法 > 明細書

明細書 :磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4487080号 (P4487080)
公開番号 特開2008-188341 (P2008-188341A)
登録日 平成22年4月9日(2010.4.9)
発行日 平成22年6月23日(2010.6.23)
公開日 平成20年8月21日(2008.8.21)
発明の名称または考案の名称 磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法
国際特許分類 A61B   5/055       (2006.01)
FI A61B 5/05 380
A61B 5/05 382
請求項の数または発明の数 3
全頁数 19
出願番号 特願2007-028006 (P2007-028006)
出願日 平成19年2月7日(2007.2.7)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】巨瀬 勝美
【氏名】飯田 奈智子
個別代理人の代理人 【識別番号】100087398、【弁理士】、【氏名又は名称】水野 勝文
【識別番号】100103506、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 弘晋
【識別番号】100126147、【弁理士】、【氏名又は名称】川上 成年
審査官 【審査官】後藤 順也
参考文献・文献 特開平07-159355(JP,A)
特表2008-526430(JP,A)
特開平11-272865(JP,A)
特開2007-054214(JP,A)
飯田奈智子,巨瀬勝美,「指骨海綿骨三次元構造計測用コンパクトMRIの開発」,Osteoporosis Japan,2006年 9月18日,Vol.14 増刊1,第159頁
調査した分野 A61B 5/055
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
海綿骨とその周囲の骨髄に含まれる水素原子核の核磁気共鳴信号から得られた画素数のヒストグラムを使用して海綿骨体積率を求める磁気共鳴イメージング装置におけるデ-タ処理方法において、
実数部画像を用いることにより、前記海綿骨体積率を定量的に求めることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法。
【請求項2】
前記海綿骨のみを含む画素の画素強度分布と、前記骨髄のみを含む画素の画素強度分布のそれぞれを、正規分布をなす2本の分布曲線とし、
前記海綿骨と前記骨髄の両方を含む画素による画素強度分布を、前記海綿骨のみを含む画素の画素強度分布と、前記骨髄のみを含む画素の画素強度分布のそれぞれの平均値の間に分布する一様な分布とし、
さらに、その一様な分布を,前記海綿骨のみを含む画素の画素強度分布である正規分布と、前記骨髄のみを含む画素の画素強度分布である正規分布の標準偏差によって広げた分布曲線とし、
前記3本の分布曲線をもって、前記ヒストグラムをフィッティングすることにより、前記海綿骨体積率を定量的に求めることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法。
【請求項3】
前記海綿骨と前記骨髄の両方を含む画素からなる核磁気共鳴信号から得られた画素数の半分の値に、前記海綿骨のみによる核磁気共鳴信号から得られた画素数を加えた画素数を、前記海綿骨のみの画素と、前記骨髄のみの画素と、前記海綿骨と前記骨髄の両方を含む画素とによる核磁気共鳴信号から得られたそれぞれの画素数の総和で除することにより、前記海綿骨体積率を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法に関し、特に骨粗鬆症診断を行うための海綿骨の骨質評価に重要な海綿骨体積率を求めるためのデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、高齢者の骨折や寝たきりなどにつながる疾患である。国内における骨粗鬆症患者の患者総数は、1000万人を超えると言われ、骨粗鬆症の克服は社会的要請となっている。
【0003】
骨粗鬆症の診断や治療効果判定には、骨密度計測ばかりでなく、海綿骨の三次元的微細構造を反映する骨質の評価が重要とされている。これは骨密度の減少だけではなく、骨構造、特に海綿骨の骨梁構造の劣化が骨粗鬆症における骨脆弱化に重要な意義をもつと考えられるからであり、海綿骨の骨質を評価するため、海綿骨微細構造計測において海綿骨体積率やその他の骨構造パラメータが求められている。
【0004】
そして、従来このような計測が行われている高分解能MRI装置においては、絶対値画像を用い、ノイズ(海綿骨)の部分をレイリー分布、信号(骨髄)の部分を正規分布でフィッティングして、それらを分離する方法が、下記非特許文献1に示されている。また,絶対値画像を対象として、繰り返し演算により、海綿骨と骨髄をヒストグラム上で分離して海綿骨体積率を求める方法が、下記非特許文献2に示されている。

【非特許文献1】JOURNAL OF BONE AND MINERAL RESARCH,Volume 10,Number 5,1995 Blackwell Scinece,Inc. p804-805
【非特許文献2】International Journal of Imaging Systems and Technology,Volume 10,1999,John Wiley & Sons,Inc. p186-198.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高分解能MRIによる海綿骨微細構造計測において、海綿骨の体積率を求めるには、海綿骨と骨髄の画素を分離することが不可欠であるが、従来は、上記非特許文献1に示めされているように、骨と骨髄の両方を含む画素からなる核磁気共鳴信号から得られた画素値に関しては、定量的な解析は行われておらず、定量性に問題があった。また、上記非特許文献2に示されているように、繰り返し演算により海綿骨と骨髄の画素を分離する方法も提案されているが、膨大な演算時間を要するため、実用的なレベルには達していない。
【0006】
本発明は、係る問題点に鑑みて鋭意研究を重ねてなされたものであり、実数部画像を用いることにより骨と骨髄の両方を含む画素からなる核磁気共鳴信号より得られた画素を定量的に分離して、計測することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、海綿骨とその周囲の骨髄に含まれる水素原子核の核磁気共鳴信号から得られた画素数のヒストグラムを使用して海綿骨体積率を求める磁気共鳴イメージング装置におけるデ-タ処理方法において、実数部画像を用いることにより、前記海綿骨体積率を定量的に求めることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法である。
【0008】
本データ処理方法においては、実数部画像データを用いるのみであるので、従来の絶対値画像データを用いる場合に使用される磁気共鳴イメージング装置に対して,特別なハードウェアは必要としない。
【0009】
また、磁気共鳴イメージング装置に適用される撮像パルスシークエンスは、計測時間を短縮するため、三次元強制回復スピンエコー撮像パルスシークエンスを用いるのが好ましい。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において前記海綿骨のみを含む画素の画素強度分布と、前記骨髄のみを含む画素の画素強度分布のそれぞれを、正規分布をなす2本の分布曲線とし、前記海綿骨と前記骨髄の両方を含む画素による画素強度分布を、前記海綿骨のみを含む画素の画素強度分布と、前記骨髄のみを含む画素の画素強度分布のそれぞれの平均値の間に分布する一様な分布とし、さらに、その一様な分布を,前記海綿骨のみを含む画素の画素強度分布である正規分布と、前記骨髄のみを含む画素の画素強度分布である正規分布の標準偏差によって広げた分布曲線とし、前記3本の分布曲線をもって、前記ヒストグラムをフィッティングすることにより、前記海綿骨体積率を定量的に求めることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法である。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記海綿骨と前記骨髄の両方を含む画素からなる核磁気共鳴信号より得られた画素数の半分の値に、前記海綿骨のみによる核磁気共鳴信号から得られた画素数を加えた画素数を、前記海綿骨のみの画素と、前記骨髄のみの画素と、前記海綿骨と前記骨髄の両方を含む画素とによる核磁気共鳴信号から得られたそれぞれの画素数の総和で除することにより、前記海綿骨体積率を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置におけるデータ処理方法である。
【0012】
前記海綿骨のみによる核磁気共鳴信号から得られた画素数に加える「前記海綿骨と前記骨髄の両方を含む画素からなる核磁気共鳴信号より得られた画素数」は前記半分(0.5)に限られるものではなく、0.4~0.6として海綿骨体積率を算出する場合も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来ほとんど考慮されなかった、海綿骨と骨髄の両方を含む画素からなる核磁気共鳴信号より得られた画素値を定量的に計測することを可能とし、骨強度の評価や骨折リスクの推定に、特に骨粗鬆の診断に効果を奏するものである。
【0014】
また、骨微細構造は、骨代謝と密接に関係している骨のリモデリングの結果を直接反映するため、薬剤の効果判定にも効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(MRI装置)
最初に、本発明の実施の形態に係るデータ処理方法を使用するMRI装置の構成を簡単に説明する。図1は本発明の実施の形態に係るデータ処理方法を使用するMRI装置のブロック図であり、本装置の構成は、装置全体100を制御し、NMR信号を収集し、画像の構成・表示等を行うコンピュータ(PC)110、核スピン系を励起する高周波(RF)信号を生成し、また被検体から受信したNMR信号を増幅・検波する送受信部130、x、y、z方向の勾配磁場コイル143~145をドライブする勾配磁場電源部150、核スピン系を励起するパワアンプ160、均一な静磁場を発生して核磁化を作り出す永久磁石141と、勾配磁場コイル143~145と核スピン系に高周波を与え信号を受信するRFコイル142からなる信号検出プローブ部140と、取得したNMR信号から再構成される画像を表示する画像ディスプレイ120から構成されている。
【0016】
なお、154~156は、x、y、z方向の電流増幅器用のオフセット調節回路である。
【0017】
次に、MRI装置の動作を簡単に説明する。まず撮像に必要なパラメータとなる、繰返し時間TR、エコー時間TEを入力デバイス114からコンピュータ110に入力する。コンピュータ110は、入力されたパラメータをパルス発生器112を駆動するためのデータ形式に変換して出力し、パルス発生器112を駆動する。
【0018】
パルス発生器112は、MRI装置のパルスシーケンス、即ちRFパルスの波形と位置情報、勾配パルスの波形等を正確なタイミングで出力し、さらにNMR信号をAD変換するためのトリガ信号等を出力する。高周波のシンセサイザ113から定常的に出力されるラーモア周波数の高周波は、パルス発生器112から出力されるRFパルスの波形によって変調器132で変調される。このとき同時にパルス発生器112から出力された位相情報により、高周波の位相も決定され、回転座標系における所定の位相のRFパルスが変調器132から出力される。そしてこのRFパルスは、パワーアンプ160で増幅されRFコイル142に供給される。
【0019】
一方、パルス発生器112から出力された勾配磁場パルスの波形は、x、y、zの3軸方向の勾配磁場コイル143~145を駆動するための3つの電流増幅器151、152、153にそれぞれ入力される。そして被検体の核磁化のラーモア歳差運動は、RFコイル142で受信されてNMR信号となり、プリアンプ170に入力され増幅された後、位相敏感検波器131において、シンセサイザ113から出力されたラーモア周波数の参照信号を用いて位相敏感検波される。
【0020】
このとき、互いに90°位相の異なる2つの参照信号を用いることにより、回転座標系における互いに直交した成分の核磁化の信号を検出することができ、その結果2種類の信号が得られ、AD変換器111によってデジタルデータに変換され、変換されたデジタルデータはコンピュータ110へ転送される。
【0021】
コンピュータ110では、後述するパルスシーケンスが終了し、画像再構成に必要なデータが取得されると、画像再構成プログラムが起動されて再構成が行われ、取得された画像が画像ディスプレイ120に表示される。なお被検者は椅子に着座したままの自然な姿勢で中指を円筒形状のRFコイルの内部に挿入して検査を受ける。
【0022】
図2は、図1に係るMRI装置に用いられる信号検出プローブ部140の正面図、図3は図2に係るMRI装置の検出コイル部の上面図、図4は図2に係るMRI装置の電磁シールドの説明図である。
【0023】
図2~図4において、信号検出プローブは、高周波コイル142とチューニングキャパシタC、マッチングキャパシタCなどからなる並列共振回路、信号を取り出すための高周波コネクタ148、それらを収容する高周波シールドボックス147から形成される。
【0024】
高周波シールドボックス147は、中指R 一本のみが高周波シールドボックス147の内部に入る設計となっているため、他の指や組織からの熱雑音の混入が防がれる。
【0025】
図4において、146は電磁シールドカバーであり、手を覆うように成形された板状の成形板や、変形の容易な織物など電磁シールド性の高い素材からなり、磁石141本体に電気的に接続され、外部から指へ電波が混入するのを防いでいる。
【0026】
図5は、本発明の実施の形態に係るデータ処理方法を使用するMRI装置に用いられる三次元強制回復スピンエコー撮像パルスシーケンスの説明図である。図5(A)は高周波パルスとそのエコー信号波形を示し、(B)、(C)、(D)はそれぞれy、x、z方向の勾配磁場を示している。
【0027】
このシーケンスは、90°パルス(90°x’パルス)と180°パルス(180°y’パルス)によって発生させたスピンエコー信号を、二つの勾配磁場(GxとGz)で位相エンコードを行い、その後に、もう一つの勾配磁場(Gy)を印加しながら、画像再構成に必要な信号を取得する。
【0028】
そして、信号観測された横向きの磁化(静磁場に垂直な磁化)を、効率よく静磁場方向に戻すために、撮像のためのスピンエコー信号の発生プロセスにおいて分散した横磁化を、スピンエコー信号を発生させた後に、前述の撮像のために印加した位相エンコード勾配磁場とは逆の符号を持った勾配磁場(リワインド勾配磁場)と、二つ目の180°パルス(180°y’パルス)の後に加えた信号読み出し勾配磁場Gyによって収束させる。
【0029】
また、このとき二つ目の180°パルス(180°y’パルス)を使用することにより、静磁場の不均一性による横磁化の分散も同時に収束させている。このように収束させた横磁化を、それに垂直な方向の強制回復のための高周波パルス(90°-x’パルス)を印加することにより、静磁場方向に強制的に戻して計測時間の短縮を可能にしている。
【0030】
図5(E)(F)は、縦磁化と横磁化の時間的変化を示している。図(E)に示すように、縦磁化は強制回復パルスによって略ゼロの値から熱平衡状態に近い値まで回復する。また図(F)に示すように、横磁化は最初の励起パルスから上記の強制回復パルスまでの間に横緩和により減衰するために、エコー時間(TE)はできるだけ短く設定される。
(位相補正)
図6は本発明の実施の形態に係るデータ処理方法において用いられる位相補正法の説明図である。MRI装置(図1参照)において、受信され検波器131で直交位相検波されたNMR信号S(kx,ky)は回転座標系における横磁化M(x,y)の直交する2成分(M//x’とM//y’) に対応したI(in-phase)チャンネルの信号と、Q(quadrature-phase)チャンネルの信号の2種類の信号が、図6に示されている。
【0031】
図6に示されたk空間(信号サンプリングを行った空間)の原点0の時刻における核磁化分布において、虚数部(Qチャンネル)を無信号(ノイズのみ)に、実数部(Iチャンネル)を核磁化分布に、対応させるために0次の位相補正法が行われる。
【0032】
0次の位相補正法は、スピンエコーのピークの時刻において、Iチャンネルの信号が正で最大で、Qチャンネルの信号がゼロとなるように、実数部の信号と虚数部の信号に対し、二次元回転と同様の操作を行うものである。すなわち、位相補正角をqとし、補正前の信号をS(k)=R(k)+iI(k)、補正後の信号をS'(k)=R'(k)+iI'(k)とするとき、
【0033】
【数1】
JP0004487080B2_000002t.gif

【0034】
【数2】
JP0004487080B2_000003t.gif
とする方法である。
【0035】
位相補正角qは,ゼロ位相エンコードの信号において、信号読み取り方向に、信号のノルムが最大になるデータポイントを求め、その時のIチャンネルの信号強度をノルムで除したものがcosq 、Qチャンネルの信号強度をノルムで除したものがsinqである。
【0036】
そして、図1に示された、AD変換器111において、得られた二種類の信号に対して0次位相補正を行った後に、複素フーリエ変換を行うことによって、画像を再構成して実数部画像を得ている。
【0037】
なお、上記の位相補正の操作は、k空間の信号に対して行なうのでなく、画像そのものに対して行ってもよい。
(ヒストグラム分離法)
手指の海綿骨の微細構造を解析するためには、得られた画像において、海綿骨の画素の分布、骨髄の画素の分布、海綿骨と骨髄が混合した画素の分布を分離しなければならないが、海綿骨と骨髄が混合した画素は、部分体積効果により画像上で分離することは不可能である。
【0038】
本発明の実施の形態においては、MRI装置によって得られた画像の海綿骨内の直方体領域や海綿骨を含む任意の領域において、画素値のヒストグラムを作成し、そのヒストグラムから海綿骨、骨髄、それらが混合した部分に分離することにより、海綿骨が全体積に占める割合(BVF: bone volume fraction)を求め、ヒストグラム上で一つの値の上下で海綿骨と骨髄を分離したときに、その割合を再現できる値(閾値)を求める。
【0039】
最初に、本発明の実施の形態の理解を容易にするために、従来行われている絶対値画像によるヒストグラム分離法について説明する。
【0040】
海綿骨領域の絶対値画像データから、画素値のヒストグラムを作成すると、ノイズ部分(海綿骨部分)による分布と、信号部分(骨髄部分)による分布の2つのヒストグラムが得られる。ノイズ部分はレイリー分布をし、信号部分はには正規分布(但し、ノイズがある程度少ない場合に限られる)をする。
【0041】
また、MRI装置による骨微細構造計測では、骨髄からの信号を取得しているため、その骨髄信号の相補的な部分が海綿骨となるため、MRI装置が必要なSNRを有する場合に、海綿骨部分はレイリー分布をし、骨髄部分は正規分布をする。
【0042】
レイリー分布で表される海綿骨部分の関数形は、
【数3】
JP0004487080B2_000004t.gif

【0043】
また、正規分布となる骨髄の信号の関数形は、
【数4】
JP0004487080B2_000005t.gif

【0044】
そして、フィッティングカーブを表す曲線をh(x)と表すと、
【数5】
JP0004487080B2_000006t.gif

【0045】
次に、本発明の実施の形態に係るデータ処理方法となる実数部画像に基くヒストグラム分離法について説明する。
【0046】
本発明の実施の形態に係るデータ処理方法の特徴は、従来の絶対値画像に基くヒストグラム分離方法では全く考慮していない部分体積効果を考慮して海綿骨体積率を求めることにある。
【0047】
MRI装置の性能上、或いは検査時間の制約から画素サイズの微細化に限界があるため、海綿骨と骨髄が混合した部分が生じ、海綿骨と骨髄の両方を含み中間値をとる画素が生じるが、これを部分体積効果と呼ばれるものであり、絶対値画像に基くヒストグラム分離方法においてはこの部分体積効果のため海綿骨と骨髄の分離が曖昧となり、海綿骨の部分が骨髄だと判断されたり、逆に骨髄が海綿骨と判断されてしまうという問題がある。
【0048】
すなわち、従来の絶対値画像においては、海綿骨(ノイズ)の画素強度分布はレイリー分布となり、骨髄から得られる信号の画素強度分布は正規分布となるが、熱雑音(ガウスノイズ)が重畳した場合、部分体積効果の影響を受けた分布を定式化するのは困難である。
【0049】
そこで、本発明の実施の形態におけるデータ処理方法では、海綿骨(ノイズ)領域からの信号も、骨髄領域からの信号も、正規分布となるノイズによる広がりを持つ実数部画像データを用いて、部分体積効果の定式化を行った。
【0050】
詳しくは、図7で示すように、部分体積効果による画素強度分布を、画素が海綿骨乃至骨髄に完全に含まれる場合と、それらを1つの境界面だけで跨ぐ場合を包含して、ノイズと骨髄の信号の間の一様な分布とし、これにより、部分体積効果による部分が、一定の分布に正規分布の広がりを持たせた分布として定義した。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態に係るデータ処理方法に係る実数部画像データから得られたヒストグラムの1例を示したものである。
【0052】
図8において、棒状のハッチング部はMRI装置で取得された被検体に係る信号強度毎の画素値のヒストグラム、細線はヒストグラムのフィッティング曲線、太線は海綿骨のみによる信号強度分布曲線、破線は骨髄のみによる信号強度分布曲線、一点鎖線は部分体積効果による信号強度分布曲線を示している。
【0053】
実数部画像データによる海綿骨領域の画素値のヒストグラムは、骨と骨髄だけの画素に対応する二つの「正規分布」と、海綿骨と骨髄の両方を含む画素に対応する「台形状の分布」に分解される。
【0054】
海綿骨に対応する正規分布をf(x)、骨髄に対応する正規分布をg(x)とすると、それぞれの分布は、
【0055】
【数6】
JP0004487080B2_000007t.gif

【0056】
【数7】
JP0004487080B2_000008t.gif
と表される。
【0057】
海綿骨と骨髄の両方が含まれている画素に基く部分体積効果による信号強度分布は、海綿骨の信号の平均値μ1と骨髄の信号の平均値μ2間における一定の分布(図9参照)を、個々の位置において、正規分布(標準偏差はs、ノイズの原因は共通)で広げたものになり、コンボリューションとなる。
【0058】
コンボリューションは、それぞれの関数をフーリエ変換して、掛け合わせ、それを逆フーリエ変換することによって得られる。部分体積効果による信号強度分布をp(x)とすると、フィッティングカーブh(x)は、
【数8】
JP0004487080B2_000009t.gif
となる。
【0059】
(ヒストグラムのフィッティング方法)
実数部画像を用いたフィッティング方法は、[数8]において、xは、選択した海綿骨内の四角柱の領域の実数部画像データの最小値と最大値を、0~100に正規化した変数であり、[数8]を0~100で積分すると、
【0060】
【数9】
JP0004487080B2_000010t.gif
となり、それぞれの分布は、0~100にほぼ局在しており、積分領域を-∞~∞とできるため、
【0061】
【数10】
JP0004487080B2_000011t.gif
となる。
【0062】
全画素のヒストグラムh(x)の積分値をSとおくと、f(x)とg(x)の積分値は、それぞれA、Bであるから([数6] 、[数7]参照)、
【数11】
JP0004487080B2_000012t.gif
となる。
【0063】
よって、図7に示すフィッティングを行うためには、二つの正規分布を規定するA、μ1、B、μ2、σの5個のパラメータを、フィッティングカーブの基礎とされたヒストグラムとの二乗誤差が最小になるように決定し、決定されたパラメータにより、f(x)、g(x)の曲線を規定し、部分体積効果による分布p(x) を求める。
【0064】
海綿骨と骨髄の分離のための閾値(T)は、ヒストグラムH(x)を全体で積分した値に海綿骨体積率BVF(Bone Volume Fraction)を掛けた値と、ヒストグラムH(x)を0から閾値まで積分した値が一致するように決定する(下記[数13])。
【0065】
そして、BVFは
【数12】
JP0004487080B2_000013t.gif
と定義する。
【0066】
【数13】
JP0004487080B2_000014t.gif

【0067】
なお、絶対値画像データを用いた場合のフィッティングは、[数10]を[数14]に置き換えることによって同様に行うことが可能あり、[数13]を使用して閾値(T)も同様に求めることができるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
【数14】
JP0004487080B2_000015t.gif

【0069】
図10は本発明の実施の形態に係るデータ処理方法の主要部を説明するフロー図であり、本発明の実施の形態に係るデータ処理方法を総括している。
【実施例1】
【0070】
ファントムを被検体とし、本発明に係るデータ処理方法を適用して海綿骨、骨髄、および部分体積効果による信号強度分布の分離を行った。
(1)MRI装置
図1に示す。
(2)ファントムの仕様
ガラスキャピラリ(外径:1.5mm 内径:1.2mm 本数:61本)
を正6角形状に重ねて、試験管(外径:15.0mm 内径:13.5mm)内に納め、試験管の中にベビーオイルを満たした。
【0071】
図11は本実施例1に係るファントム説明用の断面図である。但し、便宜上ガラスキャピラリの総数を37本に減じたものを図示している。
(3)シーケンス
図5に示した3D-DESE(3D強制回復スピンエコー )
TR:50 ms、TE:6ms
(4)画素の仕様
マトリクスサイズ:128×128×128 画素サイズ:160 μm
計測データのマトリクスサイズ256×256×256にフーリエ補間(見かけ上の画素サイズは80 μm)をしてデータ処理に使用した。
【0072】
図12に本実施例に係るファントムの撮像結果を示している。撮像画像は歪みがなく鮮明である。
【0073】
図13は本実施例1に係るヒストグラムを分離したグラフであり、図(A)が本実施例に係る実数部画像に基くヒストグラムの分離を、図(B)は比較のために示した従来の絶対値画像に基くヒストグラムの分離を示している。詳細は被検体を人の中指中骨節遠位部とした実施例3で説明する。
【実施例2】
【0074】
被検体を人の中指中節骨遠位部とし、本発明に係るデータ処理方法を適用した実施例を示す。
(1)MRI装置
図1に示す。
(2)被検体
計測対象部位:健常者男女10人の非利き腕の中指中節骨遠位部
(3)シーケンス
図5に示した3D-DESE(3D強制回復スピンエコー)
TR:50 ms、TE:6ms
(4)画素の仕様
マトリクスサイズ:112×112×128 画素サイズ:160 μm
計測データのマトリクスサイズ112×112×128を128×128×128のマトリックスに埋め込み(不足部分には0を埋め込む)、256×256×256にフーリエ補間(見かけ上の画素サイズは80 μm)した実数部画像を用いた。
【0075】
図14~図16は、ヒストグラム分離を示すグラフである。各図の右側(図B)が本実施例に係る実数部画像に基く10人の健常被験者の内の3人について表示したものであり、同時に比較のため、各図の左側(図A)に従来の絶対値画像に基いたヒストグラムの分離を示している。グラフ中、
ハッチング部:信号強度毎の画素値のヒストグラム
細線 :フィッティング曲線
太線 :海面骨のみによる信号強度分布曲線
破線 ::骨髄のみによる信号強度分布曲線
一点鎖線:部分体積効果による信号強度分布曲線 を示している。
【0076】
また、グラフの下には、絶対値画像に基く場合と実数部画像に基く場合のヒストグラム分離評価法を比較するために計算した、フィッティング曲線とヒストグラムとの最小二乗誤差と、それぞれの最小二乗誤差の比Gを算出して表示している。
【0077】
図14~図16のいずれの場合においても、従来の絶対値画像に基く場合の誤差に対して、本実施例2に係る実数部画像に基く場合の誤差は小さい。因みに図14を見ると、本実施例2に示す図(B)では、誤差が138,411と小さいのに対して、従来の絶対値画像に基くヒストグラム分離法では、誤差が618,415と大きく、従来の絶対値画像による分離法と実施例に係る実数部画像に基く分離法との誤差比Gは4.47であり、本実施例に係る実数部画像に基くデータ処理分離方法が優れた効果を奏することが判る。
【0078】
なお、図13は実施例1に係るファントムのヒストグラムの分離をグラフ表示したものであるが、被検体をファントムとした場合においても、実数部画像に基く場合の誤差は小さく、従来の絶対値画像に基く分離法と実施例に係る実数部画像に基く分離法との誤差比Gは5.58であり、本実施例に係る実数部画像に基くデータ処理分離方法が優れた効果を奏することが判る。
【実施例3】
【0079】
本実施例において、本発明に係るデータ処理方法と、ラトックスシステムエンジニアリング株式会社の三次元骨梁構造解析ソフト、TRI/3D-BONとを組合わせて、骨梁幅と骨梁数を求めた。
【0080】
骨梁幅Tb.Th (Trabecular Thickness、μm)とは、Parallel plate modelで骨梁の幅を近似したものであり(図17参照)、
【0081】
【数15】
JP0004487080B2_000016t.gif
で表される。
【0082】
また、骨梁数Tb.N (Trabecular Number、1/mm)とは、上記Parallel plate model(図17参照)において、
【数16】
JP0004487080B2_000017t.gif
で表される。
【0083】
実施例2と同一の条件で、健常者46人について測定し、年齢に対する骨梁幅の関係を図18に、年齢に対する骨梁数の関係を図19に示した。
【0084】
図17に示すように、骨梁幅Tb.Th は加齢に伴って増加するが、骨梁数 Tb.Nは図18に示すように、加齢に伴って減少する。この実施例3の結果は加齢などによる骨密度の減少によって、骨梁が除々に細くなってやがて切れてしまい、骨梁は一度切れると元に戻らないといわれていることと整合している。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態に係るデータ処理方法を使用するMRI装置のブロック図である。
【図2】図1に係るMRI装置に用いられる信号検出プローブ部の正面図である。
【図3】図2に係るMRI装置の信号検出プローブ部の上面図である。
【図4】図2に係るMRI装置の磁気シールドの説明図である
【図5】本発明の実施の形態に係るデータ処理方法を使用するMRI装置に用いられる三次元強制回復スピンエコー撮像パルスシーケンスの説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るデータ処理方法を使用するMRI装置に用いられる位相補正法の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るデータ処理方法における部分体積効果の理想的な分布図の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るデータ処理方法における実数部画像に基くヒストグラムの1例である。
【図9】本発明の実施の形態に係るデータ処理方法における海綿骨と骨髄の間に分布する一定の分布の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るデータ処理方法の主要部を説明するフロー図である。
【図11】本発明の実施例1に係るファントム説明用の断面図である。
【図12】本発明の実施例1に係るファントムの撮像画像である。
【図13】本発明の実施例1に係るヒストグラム分離を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例2に係るヒストグラム分離を示すグラフである。
【図15】本発明の実施例2に係る他の被検体のヒストグラム分離を示すグラフである。
【図16】本発明の実施例2に係るさらに他の被検体のヒストグラム分離を示すグラフである。
【図17】骨を近似したParallel plate modelの説明図である。
【図18】本発明の実施例3に係る年齢に対する骨梁幅Tb.Thの変化を示すグラフである。
【図19】本発明の実施例3に係る年齢に対する骨梁数Tb.Nの変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0086】
100・・MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
110・・コンピュータ(PC)
111・・ADC(AD変換器)
112・・DSP(パルス発生器)
113・・DDS(シンセサイザ)
114・・入力デバイス
120・・ディスプレイ
130・送受信部
131・・検波器
132・・変調器
140・・RFプローブ部
141・・磁石
142・・RFコイル(高周波コイル)
143・・勾配磁場コイル(x方向)
144・・勾配磁場コイル(y方向)
145・・勾配磁場コイル(z方向)
146・・電磁シールドカバー
147・・高周波シールドボックス
148・・高周波コネクタ
150・・勾配磁場電源部
151・・電流増幅器(x方向)
152・・電流増幅器(y方向)
153・・電流増幅器(z方向)
154・・オフセット調整回路(x方向)
155・・オフセット調整回路(y方向)
156・・オフセット調整回路(z方向)
160・・送信機(パワアンプ)
161・・切替装置(切替え回路)
R・・中指(被検体)


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図13】
11
【図14】
12
【図15】
13
【図16】
14
【図17】
15
【図18】
16
【図19】
17
【図3】
18