TOP > 国内特許検索 > 多軸鍛造用圧縮治具 > 明細書

明細書 :多軸鍛造用圧縮治具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4362589号 (P4362589)
公開番号 特開2006-116592 (P2006-116592A)
登録日 平成21年8月28日(2009.8.28)
発行日 平成21年11月11日(2009.11.11)
公開日 平成18年5月11日(2006.5.11)
発明の名称または考案の名称 多軸鍛造用圧縮治具
国際特許分類 B21J   1/02        (2006.01)
B21J  13/02        (2006.01)
FI B21J 1/02 Z
B21J 13/02 H
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2004-309822 (P2004-309822)
出願日 平成16年10月25日(2004.10.25)
審査請求日 平成19年7月19日(2007.7.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】三浦 博己
個別代理人の代理人 【識別番号】100082740、【弁理士】、【氏名又は名称】田辺 恵基
審査官 【審査官】宇田川 辰郎
参考文献・文献 特開平01-181997(JP,A)
特開2004-176134(JP,A)
特開2000-197943(JP,A)
調査した分野 B21J 1/02
B21J 13/02
B30B 15/06
特許請求の範囲 【請求項1】
下部治具部に対して上部治具部を上下方向に移動させることによって圧縮室内の鍛造試料を圧縮加工する多軸鍛造用圧縮治具であって、
上記下部治具部は、上記上部治具部の上部アンビルを上方から挿脱動作される上記圧縮室と、上記圧縮室の下面に連通する位置から前端面に至るまでの間に形成された通路と、上記通路に挿脱される下部アンビルとを具え、
上記通路に上記下部アンビルを挿入することにより上記下部アンビルの上面によって上記圧縮室の下面を閉塞し、かつ上記上部治具部を上記下部治具部から離れる方向に移動させることにより上記上部アンビルを上記圧縮室から引き抜いた状態において、上記圧縮室に上記鍛造試料を入れた後上記上部治具部を上記下部治具部の方向に移動させることにより上記圧縮室に挿入された上記上部アンビル上記下部アンビルと上記圧縮室の壁面との間に上記鍛造試料を第1の圧縮軸方向に圧縮加工し、
次に上記下部アンビルを上記通路から引き出した後、上記上部治具部を上記下部治具部の方向に移動させることにより上記上部アンビルによって上記加工後の鍛造試料を上記通路に突き落し、
次に当該加工後の鍛造試料を上記通路を介して外部に取り出した後当該通路に上記下部アンビルを挿入すると共に、上記上部治具部を上記下部治具部から離れる方向に移動させることにより上記上部アンビルを上記圧縮室から引き抜いた状態にし、これにより上記圧縮室に上記加工後の鍛造試料を入れることにより当該加工後の鍛造試料を上記第1の圧縮軸方向とは異なる第2の圧縮軸方向に圧縮加工できるようにする
ことを特徴とする多軸鍛造用圧縮治具。
【請求項2】
上記上部治具部及び上記下部治具部間に挿脱される圧縮高さ調節板を具え、
該圧縮高さ調節板は、上記上部アンビルによって上記鍛造試料を圧縮加工する際には上記上部治具部及び上記下部治具部間位置に挿入されると共に、当該圧縮加工された上記鍛造試料を上記圧縮室から上記通路に突き落す際には上記上部治具部及び上記下部治具部間位置から引き抜かれる
ことを特徴とする請求項1に記載の多軸鍛造用圧縮治具。
【請求項3】
下部治具部に対して上部治具部を移動させることによって圧縮室内の鍛造試料を圧縮加工する多軸鍛造用圧縮治具であって、
上記上部治具部は、第1の底面部の一端縁部に、圧縮上面と該圧縮上面に連接する圧縮側面とでなる圧縮凹所を有し、
上記下部治具部は、上記上部治具部の上記第1の底面部に対応する第2の底面部をもつ案内凹所を有し、
上記上部治具部を上記下部治具部から離れる方向に移動させることにより上記上部治具部を上記案内凹所から引き抜いた状態において、上記案内凹所のうち上記圧縮凹所に対応する位置に上記鍛造試料を入れた後、上記上部治具部を上記下部治具部の方向に移動させることにより、上記圧縮凹所の上記圧縮上面及び上記圧縮側面と、上記案内凹所の上記第2の底面部及び当該第2の底面部に連接する側面部とによって上記圧縮室を形成すると共に、上記圧縮凹所の上記圧縮上面によって上記下部治具部の上記第2の底面部との間に上記鍛造試料を第1の圧縮軸方向に圧縮加工し、
次に上記上部治具部を上記下部治具部から離れる方向に移動させた後上記上部治具部を上記案内凹所から引き抜いた状態において、上記鍛造試料を上記案内凹所から外部に取り出して入れ直すことにより当該鍛造試料を上記第1の圧縮軸方向とは異なる第2の圧縮軸方向に圧縮加工できるようにする
ことを特徴とする多軸鍛造用圧縮治具。
【請求項4】
上記案内凹所は、横断面がほぼ多角形形状になるように形成されると共に、上記第2の底面部は上記多角形形状の突出角部の方向に行くに従って深くなるように傾斜することにより、上記案内凹所に入れられる上記鍛造試料を上記突出角部の位置に位置決めし易くする
ことを特徴とする請求項3に記載の多軸鍛造用圧縮治具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸鍛造用圧縮治具に関し、特に複数の圧縮加工工程の間に余分な加工工程が入る必要性をなくすようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料において、サブミクロンオーダの結晶粒を得るための微細化技術として、重ね圧延(ARB)法や多軸鍛造法のように、強ひずみ加工手法を用いたものがある。
【0003】
これらの強ひずみ加工手法によって加工すれば、直径0.2〔μm〕前後の超微細結晶粒からなる金属材料を生成できる。この超微細粒金属材料は、機械的性質、強度、加工性などの点において、優れた性質をもつので、工業的に有用であると考えられる。
【0004】
ところが、ARB法は薄板製造には向いているが、薄板にはできないバルク材の製造には原理的に適していない。
【0005】
これに対して、多軸鍛造法は、極端に大きい金属材料の製造には不適であるが、バルク材の結晶粒を超微細化するに適している。
【0006】
多軸鍛造法は、図13に示すように、加工前の鍛造試料1Aとして、縦寸法、横寸法及び奥行寸法の比が1.5:1.22:1のものを用意し、当該鍛造試料1Aの縦軸方向に対して、矢印a1で示すように、圧縮加工をすることにより、縦寸法、横寸法、奥行寸法が1:1.5:1.22になるような第1の中間鍛造試料1Bを得る。この軸比は1回の圧縮で40%のひずみを得るものであり、軸比を変えることにより各パスごとのひずみ量を変えることができる。この場合、圧縮鍛造治具の圧縮室と圧縮凹部の比を変える。
【0007】
続いてこの第1の中間鍛造試料1Bに対して、第2の圧縮加工工程として、矢印a2で示すように、横軸方向に圧縮加工をすることにより、縦寸法、横寸法、奥行寸法の比が1.22:1:1.5の第2の中間鍛造試料1Cを得る。
【0008】
この第2の中間鍛造試料1Cに対して、第3の加工工程として、矢印a3で示すように、奥行き方向に縦寸法、横寸法及び奥行寸法の比が1.5:1.22:1の加工後の鍛造試料1Dを得る。
【0009】
この加工後の鍛造試料1Dの縦寸法、横寸法及び奥行寸法の比は、加工前の鍛造試料1Aと同じであり、かくして加工前の鍛造試料1Aの縦方向軸、横方向軸及び奥行方向軸についての多軸の鍛造サイクルが1サイクル分終了したことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、このような手法で多軸について鍛造加工をする場合、各圧縮軸についての圧縮加工をする際に、他の圧縮軸方向について、鍛造試料が外部に膨出する現象(これをバレリングと呼ぶ)が生ずる問題がある。
【0011】
例えば図13において、加工前の鍛造試料1Aに対して縦軸方向に圧縮加工a1をすることにより第1の中間鍛造試料1Bを得たとき、図14に示すように、他の圧縮軸方向、すなわち幅方向及び奥行方向にバレリングによって膨出部BLが膨出する。
【0012】
この膨出部BLをそのままにして他の軸方向の圧縮加工をすると、当該膨出部BLの影響により正しい圧縮軸方向の圧縮加工ができないために、正しく結晶粒の微細化ができなくなるおそれがある。
【0013】
そこで従来は、1つの軸方向について圧縮加工をしたとき、その都度当該膨出部BLを除去するために端面を研削、研磨するような余分な作業をする必要があった。
【0014】
このような研削、研磨作業は、1回の圧縮加工ごとに行なわなければならないために、多軸鍛造加工工程が複雑になると共に、研削、研磨するごとに素材が減って行く問題がある。
【0015】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、圧縮加工工程においてバリレングを生じさせないようにした多軸鍛造用圧縮治具を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる課題を解決するため本発明においては、下部治具部11Bに対して上部治具部11Aを上下方向に移動させることによって圧縮室18内の鍛造試料25を圧縮加工する多軸鍛造用圧縮治具11であって、下部治具部11Bは、上部治具部11Aの上部アンビル19を上方から挿脱動作される圧縮室18と、圧縮室18の下面に連通する位置から前端面に至るまでの間に形成された通路30と、通路30に挿脱される下部アンビル31とを具え、通路30に下部アンビル31を挿入することにより下部アンビル31の上面によって圧縮室18の下面を閉塞し、かつ上部治具部11Aを下部治具部11Bから離れる方向に移動させることにより上部アンビル19を圧縮室18から引き抜いた状態において、圧縮室18に鍛造試料25を入れた後上部治具部11Aを下部治具部11Bの方向に移動させることにより圧縮室18に挿入された上部アンビル19下部アンビル31と圧縮室18の壁面との間に鍛造試料25を第1の圧縮軸方向に圧縮加工し、次に下部アンビル31を通路30から引き出し、また圧縮高さ調整板33を引き抜いた後、上部治具部11Aを下部治具部11Bの方向に移動させることにより上部アンビル19によって加工後の鍛造試料25を通路30に突き落し、次に当該加工後の鍛造試料25を通路30を介して外部に取り出した後当該通路30に下部アンビル31を挿入すると共に、上部治具部11Aを下部治具部11Bから離れる方向に移動させることにより上部アンビル19を圧縮室18から引き抜いた状態にし、これにより圧縮室18に加工後の鍛造試料25を入れることにより当該加工後の鍛造試料25を第1の圧縮軸方向とは異なる第2の圧縮軸方向に圧縮加工できるようにする。
【0017】
また、本発明においては、下部治具部41Bに対して上部治具部41Aを移動させることによって圧縮室47内の鍛造試料55を圧縮加工する多軸鍛造用圧縮治具41であって、上部治具部41Aは、第1の底面部44Gの一端縁部に、圧縮上面46Aと該圧縮上面46Aに連接する圧縮側面46C、46Dとでなる圧縮凹所46を有し、下部治具部41Bは、上部治具部41Aの第1の底面部44Gに対応する第2の底面部42Gをもつ案内凹所42を有し、上部治具部41Aを下部治具部41Bから離れる方向に移動させることにより上部治具部41Aを案内凹所42から引き抜いた状態において、案内凹所42のうち圧縮凹所46に対応する位置に鍛造試料55を入れた後、上部治具部41Aを下部治具部41Bの方向に移動させることにより、圧縮凹所46の圧縮上面46A及び圧縮側面46C、46Dと、案内凹所42の第2の底面部42G及び当該第2の底面部42Gに連接する側面部42C、42Dとによって圧縮室47を形成すると共に、圧縮凹所46の圧縮上面46Aによって下部治具部41Bの第2の底面部42Gとの間に鍛造試料55を第1の圧縮軸方向に圧縮加工し、次に上部治具部41Aを下部治具部41Bから離れる方向に移動させた後、上部治具部41Aを案内凹所42から引き抜いた状態において、鍛造試料55を案内凹所42から外部に取り出して入れ直すことにより当該鍛造試料55を第1の圧縮軸方向とは異なる第2の圧縮軸方向に圧縮加工できるようにする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上部治具部を、位置決め固定された下部治具部から離れた状態から、当該下部治具部の方向へ移動させることにより、順次複数の圧縮軸方向が変更された鍛造試料を圧縮室内に入れて圧縮加工を繰り返すことができ、これにより鍛造試料の結晶粒を多軸鍛造法により容易に超微細化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0020】
(1)第1の実施の形態
図1及び図2において、11は全体として多軸鍛造用圧縮治具を示し、上部治具部11Aと下部治具部11Bとを有する。
【0021】
下部治具部11Bにおいて、方形平面形状を有する基台15上に、厚い板状のメス型圧縮加工板16が取付ボルト17によって取付けられている。
【0022】
メス型圧縮加工板16の中央位置には、その厚みを貫通するように、断面が方形形状の圧縮室18が穿設され、当該圧縮室18には上方から上部治具部11Aの上部アンビル19が挿脱自在に挿入されている。
【0023】
上部アンビル19は、メス型圧縮加工板16の上表面とほぼ平行に対向するように配設された圧縮動作板20の下面中央位置に下方に突出するように設けられていると共に、上部アンビル19の周囲に圧縮動作板20の厚みを貫通するように4つの案内孔21A、21B、21C及び21Dが穿設され、当該案内孔21A、21B、21C及び21Dに対してメス型圧縮加工板16の上表面に植立された4本の案内棒22A、22B、22C及び22Dが挿通されている。
【0024】
これにより圧縮動作板20従って上部アンビル19が上下方向に往復移動できるようになされている。
【0025】
圧縮動作板20の上面中央部には、円柱状の取付用突部23が上方に突出するように設けられ、この取付用突部23が圧縮駆動部(図示せず)に取付けられ、これにより取付用突部23を介して圧縮動作板20が案内棒22A~22Dによって案内されながら、上下方向に移動し、これにより圧縮室18に挿入された上部アンビル19が、圧縮室18に入れられた鍛造試料25に対して上方から圧縮加工力を加え、その後上方に退避することができる。
【0026】
かかる構成に加えて、基台15の中央部には、圧縮室18と連通する位置から前端面に至るまでの間に直線的に延長する通路30が形成され、この通路30に下部アンビル31が前後方向に挿脱自在に挿入されている。
【0027】
下部アンビル31は図3に示すように、断面長方形状の板状金具でなり、作業員が前方端のつまみ部31Aをつまんで下部アンビル31を前方から通路30に挿入操作したとき、その先端部分の上面が圧縮室18の下面を閉塞するように位置決めされる。これにより圧縮室18に上方から鍛造試料25が挿入されたとき、当該鍛造試料25が下部アンビル31の上表面に載置された状態になり、この状態において圧縮室18に上方から挿入される上部アンビル19の下面と、下部アンビル31の上面とによって鍛造試料25を圧縮加工できるようになされている。
【0028】
メス型圧縮加工板16の表面には、圧縮高さ調節板33が設けられている。
【0029】
圧縮高さ調節板33は図4に示すように先端部に切れ目33Aを有し、当該切れ目33Aに上部治具部11Aの上部アンビル19を挿通させながら、左右方向に移動できるような状態で、圧縮高さ調節板33をメス型圧縮加工板16上において右方向から挿入したり、この挿入状態から右方向に引き抜いたりできるようになされている。
【0030】
この実施の形態の場合、上部アンビル19の圧縮動作板20からの突出長さは、メス型圧縮加工板16の厚みとほぼ同じに選定され、これにより圧縮高さ調節板33が挿入されていないとき、圧縮動作板20がその下面をメス型圧縮加工板16の上面に当接させる位置にまで降下することにより、上部アンビル19の下端面が丁度基台15の通路30の上面位置まで下降できる。
【0031】
以上の構成において、図5に示すように、下部治具部11Bの案内棒22A~22Dに対して、矢印bによって示すように、上方から圧縮動作板20の案内孔21A~21Dを挿入することにより、上部治具部11Aを下部治具部11Bに対して上下方向に移動できるように装着する。
【0032】
このときの装着作業は、作業者が圧縮動作板20の左及び右側面から外方に突出するように設けられている棒状ハンドル35A及び35Bを手で把持することにより行い得る。
【0033】
このように下部治具部11Bに上部治具部11Aを装着する際に、下部治具部11Bのメス型圧縮加工板16上に矢印cで示すように右方から圧縮高さ調節板33を挿入したり、当該挿入状態から右方に引き抜いたりすることができる。
【0034】
このようにして下部治具部11B上に圧縮高さ調節板33を介在させた状態で、取付用凸部23を介して鍛造駆動部によって鍛造試料25の3つの圧縮軸について順次鍛造作業を行う。
【0035】
先ず鍛造試料25の第1の圧縮軸方向への鍛造を行う際に、鍛造駆動部によって上部治具部11Aを案内棒22A~22Dに沿って上方に引き上げることにより圧縮動作板20から下方に突出している上部アンビル19をメス型圧縮加工板16の圧縮室18及び圧縮高さ調節板33の切れ目33Aから上方に引き抜く。
【0036】
この状態において、作業者は、圧縮高さ調節板33の切れ目33Aを介してメス型圧縮加工板16の圧縮室18に外形が正方形形状の鍛造試料25を挿入する。
【0037】
このとき鍛造試料25は圧縮室18内において上下方向に第1の圧縮軸を向けて下部アンビル31上に置かれた状態になる。
【0038】
この状態において鍛造駆動部が1回圧縮動作をすることにより上部治具部11Aが案内棒22A~22Dに沿って下方に移動されると、上部アンビル19が鍛造試料25を下部アンビル31上に圧縮する。
【0039】
このとき鍛造試料25は、上部アンビル19及び下部アンビル31間に圧縮されることにより外側面が外方に膨出しようとしても、その周囲には圧縮室18の内壁面があるので、当該外側面の膨出が抑制され、その結果鍛造試料25のバレリング作用を防止できる。
【0040】
かくして第1の圧縮軸についての圧縮作業が終了すると、次に作業者が下部アンビル31を通路30から前方に引き出すと共に、圧縮高さ調節板33を右方向に引き出すような操作をする。
【0041】
このとき鍛造試料25の下面に接触していた下部アンビル31が通路30から引き抜かれることにより鍛造試料25が通路30に露出するが、圧縮作業時に側面が圧縮室18の内壁面に強く押し付けられていることにより、鍛造試料25は通路30に自然に落下することはできずに圧縮室18内に止まっている。
【0042】
この状態において、次に作業者が圧縮駆動部に対して圧縮動作と同様の押し込み動作をさせた後、圧縮駆動部に対して上方に移動する動作をさせることにより上部アンビル19を圧縮室18から上方に引き抜くような退避位置になるまで上部治具部11Aを引き上げる。
【0043】
このとき上部アンビル19が下方に押し込み動作することにより圧縮室18内に止まっていた鍛造試料25が通路30に突き落とされ、当該突き落とされた鍛造試料25を作業者が通路30から外部に取り出す。
【0044】
かくして鍛造試料25の第1の圧縮軸に対する圧縮加工が終了し、続いて作業者は通路30に下部アンビル31を挿入ことにより圧縮室の下面を閉塞させると共に、圧縮高さ調節板33を左方向にメス型圧縮加工板16上に挿入した後、その切れ目33Aを通して圧縮室18内に鍛造試料25を挿入する。
【0045】
このとき作業者は、鍛造試料25の軸方向を90〔°〕回転させて第2の圧縮軸が上下方向に向くような状態で圧縮室18内に挿入する。
【0046】
この状態において、作業者は、鍛造駆動部を圧縮動作させる。このとき上部アンビル19は圧縮室18に挿入された鍛造試料25に対して2回目の圧縮動作を繰り返すことにより下部アンビル31上に当該鍛造試料25を圧縮する。
【0047】
このときも、鍛造試料25の外側面が膨出動作をしようとしても、圧縮室18の壁面によって当該膨出動作が抑制されることにより鍛造試料25のバレリングが防止される。
【0048】
かくして鍛造試料25は第2の圧縮軸についての圧縮加工をされる。
【0049】
この2回目の圧縮加工が終了すると、作業者は通路30から下部アンビル31を外部に引き出すと共に、圧縮高さ調節板33を右方向に引き出す。
【0050】
続いて1回目の圧縮作業と同様に鍛造駆動部を押し込み動作させることによって上部治具部11Aを圧縮高さ調節板33が取り除かれた厚みの分だけ押し込み動作させ、これにより、圧縮室18内に止まっている鍛造試料25を通路30に突き落とした後、上部アンビル19が圧縮室18の上方に退避する位置になるまで上部治具部11Aを引き上げる。
【0051】
このとき作業者は通路30に押し落とされた鍛造試料25を外部に取り出した後、通路30に下部アンビル31を挿入すると共に、圧縮高さ調節板33を右方からメス型圧縮加工板16上に挿入する。
【0052】
かくして鍛造試料25の第2軸に対する圧縮加工が終了し、続いて作業者は当該鍛造試料25の軸方向を90〔°〕回転させて第3の圧縮軸が上下方向に向くような向きに回転させて、圧縮高さ調節板33の切れ目33Aを介して圧縮室18に挿入する。
【0053】
その後、作業者は、鍛造駆動部を3回目の圧縮動作させることにより上部アンビル19を圧縮室18に挿入された鍛造試料25に対して圧縮動作させる。
【0054】
このとき鍛造試料25は下部アンビル31との間で第3軸方向に圧縮加工されるが、このときも外側面が膨出動作をしようとしても圧縮室18の壁面によって当該膨出動作が抑制されることにより鍛造試料25のバレリングが防止される。
【0055】
続いて作業者が下部アンビル31を通路30から外方に引き出すと共に、圧縮高さ調節板33を右方向に引き抜いた後鍛造駆動部を押し込み動作させることにより、上部アンビル19が圧縮高さ調節板33の厚みの分だけ圧縮室18に押し込み動作をし、これにより圧縮室18に止まっている鍛造試料25が通路30に押し落とされる。
【0056】
かくして作業者は通路30に押し落とされた鍛造試料25を外部に取り出すことにより、3回目の圧縮作業を終了する。
【0057】
以上の構成によれば、鍛造試料25の第1軸ないし第3軸について、順次圧縮加工をすることにより多軸鍛造を行うことができるが、かくするにつき、第1軸、第2軸及び第3軸の圧縮加工を、圧縮室18の壁面によって閉塞された圧縮室18内において上部アンビル19と下部アンビル31との間で行うようにしたことにより、鍛造試料25の外表面が外部に膨出できないことにより、鍛造試料25の端面のバレリングを防止することができる。
【0058】
従って、圧縮加工後の鍛造試料25の外形及び寸法を加工前のものと変わらないようにできることにより、従来の場合のように、鍛造加工をしたときに生ずる端面のバレリングについてこれを研削したり研磨したりする必要性をなくし得、その結果多軸についての鍛造作業を、上部アンビル19及び下部アンビル31間の第1の圧縮作業工程と、下部アンビル31及び圧縮高さ調節板33を引き抜くと共に上部アンビル19を押し出し動作させることにより圧縮室18内に止まっている鍛造試料25を通路30に押し出す第2の作業工程と、上部アンビル19を圧縮室18から上方に退避させると共に、通路30に押し出された鍛造試料25を取り出した後、下部アンビル31及び圧縮高さ調節板33を元の位置に戻す第3の作業工程との3つの作業工程に簡略化することができる。
【0059】
(2)第2の実施の形態
図6及び図7は第2の実施の形態による多軸鍛造用圧縮治具41を示し、上部治具部41Aと、下部治具部41Bとを有する。
【0060】
下部治具部41Bは、図8に示すように、中央部において上方に開放している案内凹所42をもつメス型治具43でなり、当該メス型治具43の案内凹所42に対して、図9に示すような上部治具部41Aのオス型治具44を挿入させることにより、メス型治具43の案内凹所42に案内させながら、上下方向に移動できるように嵌め合わさせる。
【0061】
下部治具部41Bの案内凹所42は、図8に示すように、横断面が五角形形状を有し、当該五角形形状の底辺面部42Aと対向する突出角部42B位置において、90〔°〕より僅かに大きい角度(=90+α〔°〕)を形成するように一対の交差面部42C及び42Dが交差している。
【0062】
底辺面部42Aの両端は直角方向に互いに平行に延長する一対の平行面部42E及び42Fに連接していると共に、当該平行面部42E及び42Fの先端が交差面部42C及び42Dに連接している。
【0063】
案内凹所42の底面部42Gは、図7に示すように、底辺面部42Aから突出角部42Bの方向に行くに従って次第に深くなるように傾斜している。
【0064】
この実施の形態の場合、底面部42Gの傾斜は、メス型治具43の底面43Xに対してほぼ10〔°〕の傾斜をもっており、これにより案内凹所42の底面部42Gは最も深い位置で突出角部42Bと交差している共に、その交差角(従って底面部42G及び交差面部42C、42Dの交差角)は、90〔°〕より僅かに大きい角度(=90+α〔°〕)に選定されている。
【0065】
これに加えて、案内凹所42の底面部42Gは最も深い位置で一対の交差面部42C及び42Dと交差していると共に、その交差角がほぼ90〔°〕に選定されている。
【0066】
上部治具部41Aのオス型治具44は、図9に示すように、全体として横断面がほぼ五角形形状を有し、下部治具部41Bの案内凹所42(図8)に対応するように、底辺面部44Aと、これと対向する突出角部44Bと、突出角部44Bの位置で交差する交差面部44C及び44Dと、交差面部44C及び44Dからそれぞれ底辺面部44Aの両端に連接する平行面部44E及び44Fと、底辺面部44A、平行面部44E及び44Fと連接する底面部44Gとを有する。
【0067】
これにより、メス型治具43の案内凹所42に上方からオス型治具44が嵌め込まれたとき、対応する面、すなわち底辺面部42Aと44A、突出角部42Bと44B、交差面部42Cと44C、並びに42Dと44D、平行面部42Eと44E、並びに42Fと44F、底面部42Gと44Gが、互いに対向ないし対接することにより、以下に述べるように、圧縮室47において鍛造試料に対する圧縮加工をする。
【0068】
オス型治具44の突出角部44Bの下端部分(従って底面部44Gの一端縁部)には、横断面が正方形形状の圧縮凹所46が穿設されている。
【0069】
圧縮凹所46は、オス型治具44が、その底面部44Gをメス型治具43の底面部42Gに当接する位置に嵌め込まれた状態(図7)において、図10に示すように、案内凹所42の底面部42Gとほぼ平行に対向する圧縮上面46Aと、案内凹所42の交差面部42C及び42Dとそれぞれ平行に対向する圧縮側面46C及び46Dとを有し、これによりオス型治具44の圧縮上面46A並びに圧縮側面46C及び46Dと、メス型治具43の底辺部42G並びに交差面部42C及び42Dとで囲まれた、横断面がほぼ1.22×1.5の長方形形状の圧縮室47を形成できるようになされている。
【0070】
この実施の形態の場合、圧縮凹所46の圧縮側面46C及び46D間の交差角度と、圧縮上面46A及び圧縮側面46C、46D間の交差角度とが、それぞれ90〔°〕より僅かに大きい角度(=90+α〔°〕)に選定されている。
【0071】
以上の構成において、作業者が棒状ハンドル51A及び51Bを把持して、上部治具部41Aのオス型治具44の上面に形成されている段部50を鍛造駆動部(図示せず)に取り付けることにより、オス型治具44が、図7において矢印dで示すように、下部治具部41Bのメス型治具43の案内凹所42に対して上方から下方に圧縮挿入動作をすると共に、上方へ引き抜き動作をする。
【0072】
すなわち先ず作業者は、鍛造駆動部によってオス型治具44をメス型治具43から上方に引き抜いた状態に操作した後、メス型治具43の案内凹所42の突出角部42Bの位置に鍛造試料55を入れる(図7)。ここで案内凹所42の突出角部42Bの位置は、底面部42Gが突出角部42Bの方向に行くに従って低くなるように傾斜すると共に、連接する一対の交差面部42C及び42Dが90+α〔°〕を形成していることにより、入れられた鍛造試料55が側面を交差面部42C及び42Dに当接した状態に容易に位置決めされる。
【0073】
続いて作業者は、鍛造駆動部を圧縮動作させることにより、オス型治具44をその底面部44Gがメス型治具43の底面部42Gに当接するまで下方に圧縮動作させる。
【0074】
このときオス型治具44は図11(A)に示すように、圧縮凹所46の内壁面を構成する圧縮上面46A並びに圧縮側面46C及び46D(図10(A))が、鍛造試料55から上方に離間した位置から、図11(B)に示すように、オス型治具44の方向に下方へ移動するのに応じて近づいて来る。
【0075】
やがて図11(C)に示すように、圧縮凹所46の圧縮上面46A並びに圧縮側面46C及び46Dが鍛造試料55に当接すると、当該圧縮上面46A並びに圧縮側面46C及び46Dと、メス型治具43の底面部42G並びに交差面部42C及び42Dとによって圧縮室47が形成される。
【0076】
このとき鍛造試料55は圧縮凹所46の圧縮上面46Aと、メス型治具43の底面部42Gとによって上下方向の第1の圧縮軸について圧縮変形加工を受ける。
【0077】
この圧縮変形加工時、鍛造試料55は側面方向に膨出しようとするが、当該側面方向への膨出はオス型治具44の圧縮側面46C及び46Dとメス型治具43の交差面部42C及び42Dとが鍛造試料55の側面に当接していることにより抑制される。
【0078】
この圧縮加工時においては、オス型治具44の底辺面部44Aが斜め上方に開くように傾斜しているメス型治具43の底辺面部42A(図8)と摺接しながら下方に降下して行くことにより、オス型治具44の先端部が全体としてメス型治具43の交差面部42C及び42Dの方向に押し付けられ、これにより圧縮室47内の鍛造試料55に対する圧縮動作を確実に行うことができる。
【0079】
かくして鍛造試料55の第1の圧縮軸に対する圧縮加工が終了すると、作業者は鍛造駆動部を操作してオス型治具44を上方位置に戻す。
【0080】
このとき鍛造試料55に当接していた圧縮室47の壁面は鍛造試料55をメス型治具43の突出角部42Bの位置に置いたまま上方に移動する。因に、オス型治具44の圧縮凹所46を構成する圧縮上面46A並びに圧縮側面46C及び46D相互間の角度が90+α〔°〕に設定されていることにより、圧縮加工後の鍛造試料55が当該圧縮上面46A並びに圧縮側面46C及び46D間に挟まることがない。
【0081】
この状態において作業者は、メス型治具43に残った鍛造試料55を案内凹所42から取り出して圧縮軸を90〔°〕回転させて再度圧縮室47の位置に入れ直す。
【0082】
その後作業者は鍛造駆動部を駆動して鍛造試料55の第2の圧縮軸に対する圧縮加工工程に入り、第1の圧縮軸の圧縮加工工程と同様にオス型治具44によって圧縮動作をした後元の位置に戻す。
【0083】
その後作業者はメス型治具43内に残っている鍛造試料55を取り出してさらに90〔°〕圧縮軸を回転させて第3の圧縮軸について鍛造駆動部に圧縮加工及びその復帰動作をさせる。
【0084】
以上の構成によれば、オス型治具44をメス型治具43から離間させた状態において鍛造試料55をメス型治具に入れる加工工程と、当該鍛造試料55に対してオス型治具44による圧縮加工をする第2の加工工程とを繰り返すだけの簡易な加工工程によって、多軸鍛造ができる圧縮治具を得ることができる。
【0085】
(3)圧縮加工結果
図1又は図6の多軸用圧縮治具11又は41によってCu-Cr合金でなる鍛造試料について、室温で累積ひずみが8.4になるまで圧縮加工した結果を、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、図12に示すような圧縮加工結果が得られた。
【0086】
図12において明らかなように、平均結晶粒径が0.5〔μm〕程度の超微細粒組織が観察できた。
【0087】
また実験によれば、図1又は図の多軸鍛造用圧縮治具を用いて累積ひずみが30までの多軸鍛造加工を行ったところ、鍛造試料の形状及びサイズは実験前とほぼ同様に維持できた。
【0088】
(4)他の実施の形態
なお、上述の第2の実施の形態においては、メス型治具43の案内凹所42の横断面形状が五角形の場合について述べたが、これに限らず、突出角部42Bに沿ってオス型治具44を圧縮動作させ得るような多角形にしても、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、多軸鍛造により超微細粒の金属材を得る場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明による第1の実施の形態の多軸鍛造用圧縮治具を示す平面図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】下部アンビルを示す平面図である。
【図4】圧縮高さ調節板を示す平面図である。
【図5】図1の多軸鍛造用圧縮治具の分解組立図である。
【図6】本発明による第2の実施の形態の多軸鍛造用圧縮治具を示す斜視図である。
【図7】図6の多軸鍛造用圧縮治具の側面図である。
【図8】下部治具部のメス型治具を示す斜視図である。
【図9】上下治具部のオス型治具を示す斜視図である。
【図10】オス型治具の圧縮凹所の平面構造及び側面構造を示す部分的略線図である。
【図11】オス型治具による圧縮加工動作の説明に供する部分的略線図である。
【図12】透過型電子顕微鏡を用いて観察した圧縮加工結果の超微細粒組織を示す略線図である。
【図13】従来の多軸鍛造法の概念を示す略線図である。
【図14】図13の多軸鍛造法により生ずるバリレングの説明に供する略線図である。
【符号の説明】
【0091】
1A~1D……鍛造試料、11、41……多軸鍛造用圧縮治具、11A……上部治具部、11B……下部治具部、15……基台、16……メス型圧縮加工板、17……取付ボルト、18……圧縮室、19……上部アンビル、20……圧縮動作板、21A~21D……案内孔、22A~22D……案内棒、23……取付用突部、30……通路、31……下部アンビル、33……圧縮高さ調節板、35A、35B……棒状ハンドル、41A……上部治具部、41B……下部治具部、42……案内凹所、42A……底辺面部、42B……突出角部、42C、42D……交差面部、42E、42F……平行面部、42G……底面部、43……メス型治具、43X……底面、44……オス型治具、44A……底辺面部、44B……突出角部、44C、44D……交差面部、44E、44F……平行面部、44G……底面部、46……圧縮凹所、46A……圧縮上面、46C、46D……圧縮側面、47……圧縮室、55……鍛造試料。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図13】
11
【図14】
12
【図12】
13