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明細書 :歩行補助装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4742263号 (P4742263)
公開番号 特開2007-159971 (P2007-159971A)
登録日 平成23年5月20日(2011.5.20)
発行日 平成23年8月10日(2011.8.10)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
発明の名称または考案の名称 歩行補助装置
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2005-363361 (P2005-363361)
出願日 平成17年12月16日(2005.12.16)
審査請求日 平成20年12月9日(2008.12.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】友納 昌則
【氏名】下条 誠
【氏名】星野 隆行
個別代理人の代理人 【識別番号】100082740、【弁理士】、【氏名又は名称】田辺 恵基
【識別番号】100136881、【弁理士】、【氏名又は名称】佐尾山 和彦
審査官 【審査官】長谷川 一郎
参考文献・文献 特開2005-230099(JP,A)
特開昭61-187852(JP,A)
特開2004-174653(JP,A)
特開2002-085496(JP,A)
特開2006-187348(JP,A)
特開2006-305225(JP,A)
調査した分野 A61H 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
装着者の体幹部に装着される体幹保持手段と、
上記体幹保持手段の左及び右側位置に取り付けられた第1回動部と、該第1回動部によって回動動作する第1棒状部材と、該第1棒状部材の下端に取り付けられた第2回動部と、該第2回動部によって回動動作する第2棒状部材と、該第2棒状部材の下端に取り付けられた足部とをそれぞれ有し、上記体幹部から下肢の両側に沿いかつ当該下肢とは離間した状態で下方向に上記足部に至るまでそれぞれ延在する左側及び右側下肢補助手段と、
上記下肢が地面から離れている遊脚期において、上記下肢の足首部分に設けた第1の検出部材と上記第2棒状部材の対応部分に設けた第2の検出部材との相互間の動きを検出し、当該第1の検出部材及び第2の検出部材間の間隔が離れることがないように上記左側及び右側下肢補助手段の上記第1及び第2回動部を回動動作させることにより上記左側及び右側下肢補助手段を上記下肢の動きに追従動作させる追従手段と、
上記下肢が上記地面に着地している支持脚期中、上記左側及び右側の下肢補助手段の上記第2棒状部材の先端で上記地面を押し付け続けることにより装着者自身の自重によって関節部位に生じる負荷を低減させる抜重制御手段と
を具えることを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
上記歩行補助装置は、
上記下肢の位置に基づいて上記下肢が地面に接地するよりも先、若しく上記下肢が地面に接地するのとほぼ同時に上記左側及び右側下肢補助手段の上記第2棒状部材の先端で上記地面を押し付けることにより上記下肢に対する衝撃荷重を軽減させる衝撃荷重軽減制御手段
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
上記追従手段は、上記体幹部の所定位置に設けられた第1の回転駆動手段と、上記下肢の膝付近に設けられた第2の回転駆動手段とを介して、上記左側及び右側下肢補助手段を上記下肢の動きに合わせて追従動作させる
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
上記追従手段は、比例微分制御により生成した駆動信号を用いて上記第1の回転駆動手段及び上記第2の回転駆動手段を回転駆動させる
ことを特徴とする請求項3に記載の歩行補助装置。
【請求項5】
上記左側及び右側下肢補助手段の先端は、地面に接触する部分が半月状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項6】
上記左側及び右側下肢補助手段の先端には、所定の衝撃緩衝材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項7】
上記左側及び右側下肢補助手段は、下肢の長さに合わせて、その長さを調節可能な長さ調整手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装置に関し、例えば下肢弱体者の平地、不整地、坂及び階段等における随意的な歩行動作を補助する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会の進行により、加齢に伴う筋力や体力の低下等が原因で歩行機能に障害を持つ人々が増えつつある。高齢者が自立した生活を送るための前提条件としては、日常生活の基本動作である歩行・移動機能が充足されることが必要であり、歩くことは高齢者にとって肉体的・精神的な健康を保つ上で非常に重要である。
【0003】
高齢者の自立という点からみれば、歩行機能に支障が出ればすぐに車椅子や電動三輪車を使用するというのではなく、歩行器の活用も検討するなど高齢者の残存能力を活かすことも重要である。特に車椅子では、階段昇降に対応することができないばかりか、周辺環境の影響を受けて日常生活に支障が出ることも多く、下肢を使用しないことで筋力を衰弱させてしまい、ひいては骨の強度をも低下させてしまう。
【0004】
加えて、長時間の座位姿勢は脊柱側わん等の骨の変形、褥創などの原因となり、健康への悪影響を及ぼしてしまう。一方、直立姿勢は脊柱への負担を軽減し、呼吸器、循環器、消化器などの働きを活性化させ、呼吸、食事、排泄といった基本的な生命維持の機能を促進することにつながる。
【0005】
このような理由から、直立姿勢による歩行動作の重要性は高く、QOL(Quality Of Life)の向上に大きく関わるものであるため、歩行機能に障害がある下肢弱体者が自立して歩行動作を行うことを補助し、下肢弱体者及び介護者の双方の身体的かつ精神的負担を軽減するような歩行支援機が必要とされている。
【0006】
一方、歩行動作の歩行補助装具として松葉杖が広く普及しており、これらの中には抜重効果を利用して下肢弱体者の歩行時における地面からの衝撃を軽減するものもあって有効な手段ではあるが、関節の動きを制限するものも多く、その場合歩行動作に大きな影響を与えてしまうことにもなる。
【0007】
また、歩行補助装具としては、両脚下肢支柱を装着ベルトにより装着者の脚部に取り付け、股関節の位置に配置された内側部股継手の回動により両脚下肢支柱を交互歩行させることにより、装着者の交互歩行の向上を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特開平11-42259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところでかかる構成の歩行補助装具では、両脚下肢支柱を装着ベルトにより装着者の身体に対して直接取り付ける構造であるため、内側部股継手の回動により装着者の関節の動きを制限してしまったり、内側部股継手の回動タイミングと、装着者の歩行タイミングとが一致しないときには滑らかな歩行動作を妨げてしまうという問題があった。
【0009】
またかかる構成の歩行補助装具では、内側部股継手の回動により両脚下肢支柱を交互歩行させることが目的であり、下肢弱体者の歩行動作時に、装着者自身の自重によって関節部位に生じる負荷を低減させることはできないという問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、下肢弱体者の随時性のある歩行動作に影響を与えることなく歩行動作時に、下肢に対する衝撃荷重を軽減させると共に装着者自身の自重によって関節部位に生じる負荷を低減させ、平地及び階段等における移動動作を有効に補助し得る歩行補助装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発においては、人体の体幹部を保持する体幹部保持手段と、体幹保持手段の所定位置に取り付けられ、人体の下肢とは離間した状態で当該下肢に沿って延設された棒状部材が当該下肢の動きに合わせて折曲可能に形成された構造の下肢補助手段と、下肢が地面から離れている遊脚期における当該下肢の位置を検出し、当該位置に基づいて当該下肢補助手段を下肢に追従させる追従手段と、下肢が地面に着地している支持脚期中、下肢補助手段の棒状部材の先端で地面を押し付け続けることにより装着者自身の自重によって関節部位に生じる負荷を低減させる抜重制御手段とを設けるようにする。
【0012】
これにより、装置を人体の体幹部でのみ装着し、下肢に対しては何ら拘束することのない状態で、遊脚期には下肢の動きに下肢補助手段を追従させ、下肢が地面に着地した状態の支持脚期に移行すると装着者自身の自重によって関節部位に生じる負荷を低減させることができるので、装着者の随意的な歩行動作を妨げることなく、歩行動作を補助することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置を装着者の体幹部でのみ装着し、下肢に対しては何ら拘束することのない状態で、遊脚期には下肢の動きに下肢補助手段を追従させ、下肢が地面に着地した状態の支持脚期に移行すると装着者自身の自重によって関節部位に生じる負荷を低減させることができるので、装着者の随意的な歩行動作を妨げることなく、歩行動作を補助することができ、かくして下肢弱体者の随時性のある歩行動作に影響を与えることなく歩行動作時に、下肢に対する衝撃荷重を軽減させると共に装着者自身の自重によって関節部位に生じる負荷を低減させ、平地及び階段等における移動動作を有効に補助し得る歩行補助装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0015】
(1)本発明の基本概念
本発明では、歩行を通じて下肢弱体者に対する肉体的・精神的な健康を保ち、かつ歩行動作時における人体の関節部位や骨格系への負荷を減少させることに鑑み、また人体と機械との協調動作を通じて機械が歩行動作の妨害となることを回避するため、体幹部だけで装着し下肢への装着を排除すると共に当該下肢への負担を軽減する非拘束型の人体に優しいヒューマンインタフェースとしての体重支持アシスト型の歩行補助装置を提供することを目的としている。
【0016】
この歩行補助装置では、下肢弱体者の関節部位に負担を与えることなく、脚が地面に着地したときの骨に対する骨面圧を軽減するために、装着者の自重及び歩行動作時の衝撃荷重を当該歩行補助装置のアシスト対象としているが、その際下肢を拘束することがないように当該下肢と歩行補助装置とを接触させることなく、人体と歩行補助装置とを腰部等の体幹部でのみ取り付け固定するようになされている。
【0017】
特に、この歩行補助装置は、人体の坐骨結節でのみ当該歩行補助装置からの支持反力(後述する)を受け、下肢が拘束されることのない開リンク構造を採用することにより、装着者の関節部位に対し直接的にトルクや引っ張り力を与えることなく、当該関節部位に余分な力が加わることを防止するようになされている。このような基本概念を取り入れた歩行補助装置の具体的な構成について以下、説明する。
【0018】
(2)歩行補助装置
(2-1)歩行補助装置の全体構成
図1に示すように、1は全体として本発明の歩行補助装置を示し、人体の体幹部に装着するための体幹装着部2と、当該体幹装着部2の所定位置から人体の下肢に沿って延設された棒状部材でなる右側下肢補助部3A、左側下肢補助部3B及び当該右側下肢補助部3A、左側下肢補助部3Bを下肢の動きに追従させる追従制御を行ったり、下肢弱体者の足が地面に接地する前に右側下肢補助部3A、左側下肢補助部3Bの先端にある半月形状の足部6A及び6Bを地面に押し付けることによって下肢に対する衝撃荷重を軽減させ、下肢が地面に着地している支持脚期中には装着者自身の自重によって骨に対する骨面圧や関節部位に生じる負荷を軽減させるための抜重制御を行うコントローラユニット4によって構成されている。
【0019】
この歩行補助装置1は、体幹装着部2の所定位置から上方に延びた2本の右側体幹保持部10A、左側体幹保持部10Bが設けられ、半円状に形成された先端部11A及び11Bが人体の脇の下に位置されることによって、当該歩行補助装置1自体が左右に振られてしまうようなぶれを体幹装着部2及び右側体幹保持部10A、左側体幹保持部10Bによる複数箇所で抑え、歩行補助装置1の装着状態を安定化させるようになされている。
【0020】
なお、歩行補助装置1では、右側体幹保持部10A、左側体幹保持部10Bの先端部11A及び11Bが人体の脇の下に位置することになるが、当該右側体幹保持部10A及び左側体幹保持部10Bにいって直接体重を支えることはなく、あくまで左右のぶれを抑えるために設けられている。
【0021】
(2-2)体幹装着部の構成
図2及び図3に示すように体幹装着部2は、人体の体幹部である腰部の周囲を包み込むように装着され、前面のベルト12及び13によって体幹部と当該体幹装着部2とが一体に取り付けられるようになされている。
【0022】
また体幹装着部2は、ベルト12及び13によって体幹部と一体に取り付けられた際、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bの先端に設けられた足部6A及び6B(図1)が地面に押し付けられたときの支持反力を、人体の神経が集中している個所を回避した部位に相当する例えば坐骨結節で受けるための坐骨結節保持部14が設けられている。
【0023】
従って体幹装着部2は、人体の腰部の周囲を包み込むと共に、人体の坐骨結節を坐骨結節保持部14によって保持することになるので、体幹部に対して一段と強固かつ一体に装着されると共に、下肢については何ら装着されていない開リンク構造の自由な状態を維持し得るようになされている。
【0024】
(2-3)下肢補助部の構成
図1に示したように右側下肢補助部3A、左側下肢補助部3Bは、体幹装着部2における左右両側の所定位置から人体の下肢に沿って延設されており、体幹装着部2と右側下肢補助部3A、左側下肢補助部3Bとは第1回動部8A及び8Bを介して取り付けられている。
【0025】
右側下肢補助部3Aの第1棒状部材4A及び左側下肢補助部3Bの第1棒状部材4Bは、第1回動部8A及び8Bと一体に取付固定されており、当該第1回動部8A及び8Bがその軸中心に矢印方向へ回転することにより、人体における下肢の動き(特に膝から上の部分)に合わせて第1棒状部材4A及び第1棒状部材4Bが可動し得るようになされている。
【0026】
また第1棒状部材4A及び第1棒状部材4Bは、第2回動部9A及び9Bと一体に取付固定されると共に、当該第2回動部9A及び9Bを介して第2棒状部材5A及び第2棒状部材5Bが取り付けられている。
【0027】
右側下肢補助部3Aの第2棒状部材5A及び左側下肢補助部3Bの第2棒状部材5Bは、第2回動部9A及び9Bと一体に取付固定されており、当該第2回動部9A及び9Bがその軸中心に矢印方向へ回転することにより、人体における下肢の動き(特に膝から下の部分)に合わせて第2棒状部材5A及び第2棒状部材5Bが可動し得るようになされている。
【0028】
因みに第1回動部8A及び8B、第2回動部9A及び9Bは、その内部にロータリーエンコーダ33(図16)の内蔵されたDC(Direct Current)駆動モータからなるアクチュエータ32(図16)が設けられており、これによりコントローラユニット4からの命令に応じた回転角度に回転駆動し得ると共に、そのときの実際の回転角度をロータリーエンコーダ33によって検出し、その検出結果をコントローラユニット4へ伝達するようになされている。
【0029】
また第2棒状部材5A及び第2棒状部材5Bは、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bが地面と接触したときに当該地面を押し付ける半月形状の足部6A及び6Bがその先端に取り付けられており、これにより下肢の動きに合わせて歩行動作時に足部6A及び6Bが地面に接地する際、どのような角度で地面に接地しても半月形状の足部6A及び6Bによって安定した状態を維持し、下肢弱体者が転倒するような事態を回避し得るようになされている。
【0030】
なお、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bは、第1棒状部材4A及び4Bと、第2棒状部材5A及び5Bと、足部6A及び6Bとが接続されたときの全体の長さが、人体の体幹部に体幹装着部2が装着されたときの下肢よりも僅かに長くなるように設定されている。
【0031】
これにより右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bは、歩行動作時に下肢弱体者の足が地面に接地するよりも先に、その先端に設けられている足部6A及び6Bを地面に押し付けてスティフネス制御(後述する)及び抜重制御することができるため、足の骨に対する骨面圧(衝撃荷重)を軽減させ、かつ下肢弱体者の体重を支持し得るようにアシストすることができる。
【0032】
この足部6A及び6Bは、図4に示すように、地面と直接接触する当接部分TP1(破線で示す)に弾力性を有するゴム製素材が衝撃緩衝材として用いられており、これにより接地時の衝撃荷重を更に軽減し得るようになされている。
【0033】
なお足部6A及び6Bは、地面と当該足部6A及び6Bとが接触したときに地面からの圧力(以下、これを面圧と呼ぶ)を検知するためのシステム面圧センサ(図示せず)が当接部分TP1の内部に設けられており、どの瞬間に足部6A及び6Bが地面と接触し、遊脚期から支持脚期へ移行するかをコントローラユニット4へ伝達し得るようになされている。
【0034】
ところで右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bは、コントローラユニット4の制御により、下肢の動きに追従させる必要があり、そのために下肢の動き(位置)を正確に認識するための3軸磁気センサ7A及び7B(Honeywell製:HMC2003)が下肢の足首近傍に相当する第2棒状部材5A及び5Bの所定位置に取り付けられている。
【0035】
(2-4)装着者側装備
このような構成でなる歩行補助装置1が実際に下肢弱体者に装着された場合、図5に示すように体幹装着部2だけが人体の体幹部に装着された状態で、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bについては下肢と所定距離だけ離れた位置に配置されることになり、下肢弱体者にとっては何かに拘束されているという自覚が一切ない中で、当該歩行補助装置1によるアシストを受けることが出来るようになされている。なお歩行補助装置1では、下肢弱体者である装着者に対して拘束感を与えないことに加え、その装着者に対してセンサレスなシステムであることも大きな特徴である。
【0036】
このとき歩行補助装置1のコントローラユニット4は、図示しないが下肢弱体者の背中に背負った例えばリュックサック等の中に収められて持ち運ばれるようになされており、当該コントローラユニット4によって右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bを下肢の動きに合わせて駆動制御することにより下肢弱体者の歩行動作をアシストするようになされている。
【0037】
ところで下肢弱体者は、歩行補助装置1の3軸磁気センサ7A及び7Bがセンシングする対象となる直径25mm、厚さ5mmでなるネオジウム磁石MG1及びMG2(以下、これを単に磁石MG1及びMG2と呼ぶ)を例えば下肢の足首近傍に取り付けるようになされており、これにより3軸磁気センサ7A及び7Bが磁石MG1及びMG2の磁力を検知し、その検知結果をコントローラユニット4へ伝達するようになされている。
【0038】
コントローラユニット4は、3軸磁気センサ7A及び7Bから伝達された磁力に基づいて、第1回動部8A、8B及び第2回動部9A、9Bを回転させる際の回転トルクを算出し、その算出した回転トルクに応じて第1回動部8A、8B及び第2回動部9A、9Bを回転駆動させることにより、下肢の動きに右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bを追従させ得るようになされている。
【0039】
また下肢弱体者は、歩行補助装置1の足部6A及び6Bにおける当接部分TP1の内部に設けられたシステム面圧センサと同様に、実際の脚が地面に接触したか否かを検知するための靴面圧センサが靴底内部に設けられた靴SZを装着するようになされている。但し、靴SZの靴面圧センサについては当該歩行補助装置1にとって必ずしも不可欠なものではなく、追加装備されなければ装着者に対して歩行補助装置1がセンサレスなシステムであり続けるが、追加装備されたときには歩行補助装置1の右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bと、下肢弱体者の靴SZとの接地タイミングが一段と明確化されることになる。
【0040】
これにより、歩行補助装置1のコントローラユニット4は、その靴面圧センサによる面圧センサ出力を例えば赤外線通信等の近距離無線通信方式により受信し、下肢弱体者の脚がどの瞬間に地面と接触し、遊脚期から支持脚期へ移行するかを認識し得るようになされている。
【0041】
さらに歩行補助装置1では、抜重制御時の骨面圧を軽減させるためのアシスト力を下肢の筋力に応じて決定する必要があり、そのためにはいわゆる表面筋電位を計測し、その表面筋電位の計測値に応じてアシスト力を決定するようになされている。この場合、表面筋電位を計測するための筋電計については、当該歩行補助装置1にとって必ずしも不可欠なものではなく、当該筋電計が追加装備されなければ装着者に対して歩行補助装置1がセンサレスなシステムであり続けるが、当該筋電計により表面筋電位の計測値が得られた場合には、支持脚期中における歩行補助装置1の右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bの姿勢から、どの程度の体重が脚に負担として生じるかを推定し、一段と正確なアシスト力を決定することが可能となる。
【0042】
この表面筋電位とは、筋活動に伴う筋の電気的活動を、皮膚表面に貼り付けた電極によって導出するものであり、一般的にEMG(Electro Myo Gram) と呼ばれている。従って歩行補助装置1では、この表面筋電位を用いることにより、体表付近にある筋全体の電気的活動量の継時的変化や複数筋の活動パターン(時間・空間的な組み合わせ)を、半定量的に観察、分析することが可能となる。
【0043】
実際上、歩行補助装置1では、図6に示すように下肢弱体者の下肢に貼り付けた複数の電極DKと、当該複数の電極DKから得られる微弱なEMG信号を所定レベルに増幅するEMGアンプ15とからなる筋電計16によって得られる筋電信号ME1をコントローラユニット4へ送出するようになされている。
【0044】
この場合、歩行補助装置1のコントローラユニット4では、膝の筋力との相関を持った筋電信号ME1を下肢が動作するよりも早く計測することができ、その筋電信号ME1に基づいて膝の関節の筋力と剛性を推定し、膝の筋力に応じた一段と正確なアシスト力を決定し得るようになされている。
【0045】
(3)追従制御
(3-1)下肢の3次元位置検出
次に、下肢の動きに右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bを追従させるための追従制御の原理を説明するにあたって、3軸磁気センサ7A及び7Bと、磁石MG1及びMG2との関係に基づいて下肢の3次元位置を求める方法について説明するが、3軸磁気センサ7A及び7B共に同じ方法であるため、説明の便宜上右側下肢補助部3Aの3軸磁気センサ7Aについてのみ説明し、左側下肢補助部3Bの3軸磁気センサ7Bについては省略する。
【0046】
図7(A)及び(B)に示すように、磁石MG1と一定の距離だけ離れた位置に存在する3軸磁気センサ7Aは、下肢弱体者の歩行方向をX軸、当該歩行方向のX軸に対して垂直上方向(すなわち抜重アシスト方向)をY軸、X軸に対して垂直横方向をZ軸としたときのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の磁力の強さを検出し、その検出結果をコントローラユニット4へ送出する。
【0047】
これによりコントローラユニット4は、3軸磁気センサ7Aから得られる3軸(X軸、Y軸及びZ軸)の磁力の強さのバランスに基づいて磁石MG1の動く方向すなわち下肢の動く方向(角度)を算出し得るようになされている。
【0048】
また図8に示すようにコントローラユニット4は、3軸磁気センサ7Aにおける3軸方向の磁力の強さMx、My、Mzによる磁気ベクトルVBを、VB=(Mx、My、Mz)で表したとき、当該3軸磁気センサ7Aと磁石MG1との間の距離Lを、(1)式の計算式によって算出する。
【0049】
L=k/|VB|…………………………………………………………………………(1)
【0050】
ここで「k」は磁石MG1の持つ磁力の強さと環境における磁力の伝わり易さに応じて決定される係数であり、必ずしも正確に計測する必要はなくキャリブレーションによって容易に求めることが可能である。
【0051】
従ってコントローラユニット4は、距離Lと、3軸(X軸、Y軸及びZ軸)の磁力の強さのバランスに基づいて算出した下肢の動く方向とに基づいて、3軸磁気センサ7Aからみた下肢の足首部分に相当する相対的な3次元位置を下肢と非接触かつ無拘束に求め得るようになされている。
【0052】
(3-2)性能評価試験
因みに、コントローラユニット4による計算で求められる推定位置と実測位置とがどの程度の誤差を有するのかを検証する場合の性能評価試験と、その性能評価試験の結果について図9及び図10を用いて説明する。
【0053】
図9に示すように、追従制御の性能評価試験では、実際と同様に3軸磁気センサ7Aと磁石MG1との間の距離Lだけ離れた位置に設けられた方眼紙17上の磁石MG1が実際に移動したとき、図10に示したX—Yグラフに表されるように、実際に磁石MG1を置いたときの実測位置(○)と、方眼紙18上の3軸磁気センサ7Aの出力値に基づいて計算された推定位置(□)と、先に計算された推定位置(□)に補正処理を施すことにより推定誤差を低減させた補正処理後の推定位置(△)として表すようになされている。
【0054】
この場合、実測位置(○)と、推定位置(□)との間には最大約3[cm]弱の差しかなく、補正処理後の推定位置(△)についても、実測位置(○)とは最大約1[cm]程度の差しかないことが実験結果として表されている。
【0055】
すなわち歩行補助装置1では、コントローラユニット4により右側下肢補助部3Aを下肢(右脚)に装着された磁石MG1に追従させる場合、約1[cm]程度の誤差だけで追従制御する実現可能性が潜在的にあることが判明した。但し、その追従制御の実現可能性については、あくまで追従実験を実際に行って評価する必要がある。
【0056】
ところで歩行補助装置1は、この追従制御により約1[cm]程度の誤差を生じさせる可能性はあるが、この程度の誤差は特に問題ではなく、それよりも右側下肢補助部3Aが下肢(右脚)の動きに合わせて追従する際に、右側下肢補助部3Aが下肢(右脚)の動き以上に動いてしまったり、或いは不規則に動いてしまって下肢弱体者の下肢(右脚)に対して不必要な力が働く等の下肢(右脚)の動きにマッチングしない動作が行われることを確実に回避することが重要であり、その点についても考慮されているが、そのことについては後述する。
【0057】
(3-3)追従制御
コントローラユニット4は、実際に下肢(右脚)の3次元位置を算出して認識すると、その下肢(右脚)の3次元位置に合わせて右側下肢補助部3Aを追従させるのだが、その際、図11に示すように、3軸磁気センサ7Aが磁石MG1の現在位置を追従制御の目標点として認識し、その目標点に右側下肢補助部3Aを動かすため第1回動部8A、第2回動部9Aを回転させるべき回転角度を決定する。
【0058】
またコントローラユニット4は、右側下肢補助部3Aの局所的な部分に相当する第1回動部8A、第2回動部9Aの回転し難さを表す固有の関節インピーダンスに基づいて表される粘性項及び重力補償項等を項目としたトルク推定式を用い、第1回動部8A、第2回動部9Aを上述の回転角度に回転駆動させるための回転トルクに応じた駆動電圧を算出するようになされている。
【0059】
ここで、トルク推定式に対して、関節インピーダンスに基づいて表される粘性項を設けているのは、歩行補助装置1の関節部分に相当する第1回動部8A及び第2回動部9Aに対しインピーダンス特性を表現することで急制動を抑止し、滑らかな動作を実現するためである。またトルク推定式に対して、重力補償項を設けているのは、歩行補助装置1の関節部分に相当する第1回動部8A及び第2回動部9Aに対し、重力(歩行補助装置1の重量)に抗するトルクを与えることで、右側下肢補助部3Aが重力に引かれて勝手に伸びてしまう(転倒の原因になる)ことの防止や位置制御の精度を向上させるためである。
【0060】
ところで図12に示すようにコントローラユニット4は、トルク推定式の粘性項を設定する際、下肢弱体者の下肢(右脚)に装着された磁石MG1に対する3軸磁気センサ7Aの位置がサークルCIR1内にあるときは、右側下肢補助部3Aが下肢(左脚)を正確に追従制御できている状況であるため、コントローラユニット4による駆動電圧のゲインを下げることにより磁石MG1と3軸磁気センサ7Aとの間隔が離れることがないように第1回動部8A、第2回動部9Aを強粘性状態に設定する。
【0061】
すなわちコントローラユニット4は、第1回動部8A、第2回動部9Aの動きを固くして右側下肢補助部3Aが下肢(右脚)の動き以上に動き過ぎないように制御し得、かくして下肢(右脚)の動きと右側下肢補助部3Aの動きとをマッチングさせ得るようになされている。
【0062】
またコントローラユニット4は、トルク推定式の粘性項を設定する際、下肢弱体者の下肢(右脚)に装着された磁石MG1に対する3軸磁気センサ7Aの位置がサークルCIR2内にあるときは、サークルCIR1のときよりも追従制御の精度が落ちており、下肢(右脚)の動きに対して右側下肢補助部3Aが少し遅れて追従している状況にあるため、コントローラユニット4による駆動電圧のゲインを上げることにより磁石MG1と3軸磁気センサ7Aとの間隔を容易に近接させるように第1回動部8A、第2回動部9Aを弱粘性状態に設定する。因みに粘性項の調節は、歩行補助装置1が滑らかな動作を可能とするための機能であるが、その機能は唯一の方法ではなく、これ以外にも様々なコントローラ動作を適用することが可能である。
【0063】
すなわちコントローラユニット4は、第1回動部8A、第2回動部9Aの動きを柔らかくして右側下肢補助部3Aを動き易くするように制御し得、かくして下肢(右脚)の動きと右側下肢補助部3Aの動きとをマッチングさせ得るようになされている。
【0064】
さらにコントローラユニット4は、下肢弱体者の下肢(右脚)に装着された磁石MG1に対する3軸磁気センサ7Aの位置がサークルCIR3内にあるときは、磁石MG1の磁力を検出することが出来ておらず、追従制御できていない磁気ロスト帯にあるため、第1回動部8A、第2回動部9Aに対する駆動電圧の供給をそもそも停止して、下肢(右脚)の動きを妨げることを回避するようになされている。
【0065】
従って、実際に、下肢(右脚)に装着された磁石MG1の動きに右側下肢補助部3Aを追従させたときの実験結果としては、図13に示すように下肢弱体者の歩行方向(X軸)、アシスト力を働かせる抜重アシスト方向(Y軸)としたとき、図14に示すように磁石MG1の動き(すなわち実線で示される下肢の動き)に対して、3軸磁気センサ7Aの動き(すなわち破線で示される右側下肢補助部3Aの動き)がほぼ同じような軌跡を描くことが判明した。
【0066】
また歩行補助装置1では、図15に示すように磁石MG1の動きに右側下肢補助部3Aを追従させて地面に足部6Aを着地させたとき、靴の踵部分から当該右側下肢補助部3Aにおける足部6Aの中心までの距離mについても、ばらつきが少ない方が良好であり、その距離mと歩行速度との関係を調査した。
【0067】
この場合、歩行速度毎に得られる距離mの平均値(●)については、歩行速度に拘わらず、概ね一定していることが示されており、これにより歩行補助装置1では右側下肢補助部3Aにより安定した状態で抜重制御を実行し得ることが確認できた。
【0068】
(4)歩行補助装置の回路構成
次に、上述した歩行補助装置1の具体的な回路構成について説明する。
【0069】
図16に示すように歩行補助装置1は、大きく分けて、下肢弱体者である装着者自身に取り付けられる装着者装備部20と、装着者とは直接接触せず、遊脚期における下肢の動きに対する追従制御と、下肢が地面に接地する際の衝撃荷重を軽減させるスティフネス制御と、支持脚期における装着者の自重をアシスト対象として支持し抜重する抜重制御とを行う歩行補助部30とによって構成される。
【0070】
装着者装備部20では、バッテリ21及びコントローラユニット4とが一体となって構成されており、当該バッテリ21からの電源をコントローラユニット4へ供給すると共に、歩行補助部30へも供給する。
【0071】
歩行補助部30では、コントローラユニット4から供給される命令に応じてモータドライバ31及びアクチュエータ32を駆動制御することにより、第1回動部8A、第2回動部9A(図1)を回転駆動し、遊脚期における右側下肢補助部3Aの追従制御や、下肢が地面に接地する際の衝撃荷重を軽減させるスティフネス制御、支持脚期における右側下肢補助部3Aによる抜重制御を実行するようになされている。なおスティフネス制御とは、歩行補助装置1の関節部分に相当する第1回動部8A、8B及び第2回動部9A、9Bに対して粘弾性を与えることにより衝撃荷重を軽減させるための制御のことであり、当該歩行補助装置1では追従・スティフネス・抜重の3種の制御系を有している。
【0072】
ここで遊脚期とは、図17に示すように下肢の右脚又は左脚に着目したとき(この場合は右脚)、歩行動作時に右脚が地面から離れているときの状態を表すのに対し、支持脚期とは図18に示すように、その右脚が地面に着地しているときの状態を表す。
【0073】
実際上、歩行補助部30(図16)は、アクチュエータ32内部のロータリーエンコーダ33によって検出される第1回動部8A、第2回動部9Aの回転角度センサ出力RS1、3軸磁気センサ7Aによって検出される磁石MG1の3次元位置を表す磁気センサ出力MS1、足部6Aにおける当接部分TP1内部に設けられたシステム面圧センサ35から検出される面圧センサ出力PS1をコントローラユニット4へそれぞれ送信するようになされている。
【0074】
コントローラユニット4の磁気モデル及び座標変換回路23は、歩行補助部30の3軸磁気センサ7Aからの磁気センサ出力MS1を受け取り、下肢(右脚)の膝の動きに相当する磁気モデルに基づいて、磁気センサ出力MS1に対応した3次元位置を示す座標を、右側下肢補助部3Aを動かすときの目標位置データDD1としてPD(Proportional Differential)コントローラ及びリミット回路25へ送出する。
【0075】
なお磁気モデル及び座標変換回路23は、第1回動部8A、第2回動部9Aにおける実際の回転角度を表した回転角度センサ出力RS1を歩行補助部30のロータリーエンコーダ33から受け取るようになされており、目標となる回転角度と、実際の回転角度とのズレを補正した目標位置データDD1を生成するようになされている。
【0076】
PDコントローラ及びリミット回路25は、目標位置データDD1に応じた目標位置に右側下肢補助部3Aを動かすための第1回動部8A、第2回動部9Aに対する回転トルクに応じた駆動命令D2を比例微分制御により生成し、これを加算回路28を介して歩行補助部30のモータドライバ31へ出力するようになされている。
【0077】
コントローラユニット4の平滑化及び筋モデル回路26は、筋電計16から供給される筋電信号ME1を受け取り、その筋電信号ME1の高周波成分をローパスフィルタによって除去した後、一定時間単位で積分することにより筋電積分値を求め、その筋電積分値を基に所定の筋モデルから下肢の膝に発生するであろう回転トルクを推定し、その回転トルクに対して所定のアシスト比(係数)を乗算することにより、支持脚期に右側下肢補助部3Aの足部6Aが地面を押し付けるときの目標となるアシスト力を求め、これを目標力データPD1としてコントローラ及びリミット回路27へ送出する。
【0078】
なお平滑化及び筋モデル回路26は、第1回動部8A、第2回動部9Aの回転トルクによって右側下肢補助部3Aの足部6Aが実際に地面を押し付けたときの回転角度を表した回転角度センサ出力RS1を歩行補助部30のロータリーエンコーダ33から受け取るようになされており、目標となる回転トルクに応じたアシスト力で地面を押し付けるときの回転角度と、実際の回転トルクに応じたアシスト力で地面を押し付けたときの回転角度とのズレを補正した目標力データPD1を生成するようになされている。
【0079】
コントローラ及びリミット回路27は、右側下肢補助部3Aに所定のアシスト力を発生させるため、第1回動部8A、第2回動部9Aに対して与える回転トルクに応じた駆動命令D3を加算回路28を介して歩行補助部30のモータドライバ31へ出力するようになされている。
【0080】
ところでコントローラユニット4の動作推定及び制御系選択回路24は、歩行補助部30のシステム面圧センサ35からの面圧センサ出力PS1及び下肢弱体者の靴面圧センサ22からの面圧センサ出力PS2を受け取るようになされている。
【0081】
従って動作推定及び制御系選択回路24は、面圧センサ出力PS1及びPS2の双方共に受け取っていないときは、右側下肢補助部3Aの動作状態が遊脚期(図16)であると推定し、抜重制御ではなく追従制御だけを実行するべく、コントローラ及びリミット回路27からの駆動命令D3の出力を停止し、PDコントローラ及びリミット回路25からの駆動命令D2だけを加算回路28を介して歩行補助部30のモータドライバ31へ出力する。
【0082】
また動作推定及び制御系選択回路24は、システム面圧センサ35からの面圧センサ出力PS1を受け取っているが、靴面圧センサ22からの面圧センサ出力PS2を受け取っていない段階では、右側下肢補助部3Aの足部6Aが右脚よりも先に地面に着地した状態すなわち遊脚期から支持脚期へ移行する直前の状態にあると推定し、右側下肢補助部3Aに対して追従制御及び抜重制御を双方共に所定の割合で実行するべく、コントローラ及びリミット回路27からの駆動命令D3と、PDコントローラ及びリミット回路25からの駆動命令D2とを加算回路28を介して歩行補助部30のモータドライバ31へ出力する。但し、靴面圧センサ22については当該歩行補助装置1にとって必ずしも不可欠なものではなく、追加装備されなければ装着者に対して歩行補助装置1がセンサレスなシステムであり続けるが、追加装備されたときには歩行補助装置1の右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bと、下肢弱体者の靴SZとの接地タイミングが一段と明確化されることになる。
【0083】
さらに動作推定及び制御系選択回路24は、システム面圧センサ35からの面圧センサ出力PS1及び靴面圧センサ22からの面圧センサ出力PS2の双方を受け取っている段階では、右側下肢補助部3Aの足部6A及び右脚の双方が地面に着地した状態すなわち支持脚期であると推定し、追従制御については実行せず抜重制御だけを実行するべく、PDコントローラ及びリミット回路25からの駆動命令D2の出力を停止すると共に、コントローラ及びリミット回路27からの駆動命令D3だけを加算回路28を介して歩行補助部30のモータドライバ31へ出力する。
【0084】
これにより歩行補助部30のモータドライバ31は、コントローラユニット4から供給される駆動命令D2や駆動命令D3に応じて第1回動部8A、第2回動部9Aを回転させるための駆動電圧信号D4を、当該第1回動部8A、第2回動部9Aを回転駆動させるためのアクチュエータ32へ出力する。
【0085】
この結果、第1回動部8A、第2回動部9Aは、アクチュエータ32により駆動電圧信号D4に応じた回転トルクによって回転することにより、遊脚期における下肢の動きに合わせた追従制御や、スティフネス制御、支持脚期における抜重制御を実行し得るようになされている。
【0086】
(5)歩行感の獲得
次に歩行補助装置1において、歩行サイクルの中で追従制御から抜重制御に切り換えることにより、装着者に対して違和感のない歩行感を獲得させるための考え方について、次の図19を用いて説明する。
【0087】
この歩行補助装置1では、1回の歩行サイクルの中で、右脚だけに着目して考えた場合、歩行フェイズとしては遊脚期において最初に右脚を持ち上げだした加速初期、その後の加速維持期、最後の減速期へ移り変わり、その後、右脚が地面に着地した瞬間に支持脚期の両脚着地期間へ遷移し、最後に左脚が遊脚期に移ると右脚については片足着地期間へ遷移する。
【0088】
また、このとき歩行補助装置1では、遊脚期における加速初期及び加速維持期において右側下肢補助部3Aを追従制御させ、遊脚期における減速期から支持脚期における両脚着地期間の初期にはスティフネス制御させ、それ以降には抜重制御させるようになされている。
【0089】
ここでスティフネス制御とは、右側下肢補助部3Aに対して追従制御を行いながら当該右側下肢補助部3Aの足部6Aが地面に接地する直前若しくは接地した瞬間から所定のアシスト力で地面を押し付け、当該右側下肢補助部3Aをあたかもバネのように作用させるという粘弾性抵抗を変化させる力制御の一種である。従って歩行補助装置1では、スティフネス制御を行うことにより遊脚期から支持脚期へのスムースな移行を実現し得るようになされている。
【0090】
そして歩行補助装置1は、その後、スティフネス制御から抜重制御に切り換えることにより、下肢弱体者の骨面圧を軽減させて装着者自身の自重を支持し、歩行動作をアシストし得るようになされている。
【0091】
(6)動作及び効果
以上の構成において、歩行補助装置1では、体幹装着部2によって人体の体幹部だけを保持し、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bについては人体の下肢と直接接触することなく、遊脚期には当該右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bを下肢の動きに追従させると共に、支持脚期には下肢の着地よりも先に、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bの足部6A及び6Bを地面に着地させて所定のアシスト力で押し付けることにより抜重制御を行う。
【0092】
従って歩行補助装置1は、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bのアシスト力によって下肢弱体者の歩行動作を補助する際、下肢が一切拘束されることのないフリーな状態で装着者自身の自重を支え、歩行動作時における下肢への負荷を軽減させることができる。
【0093】
また歩行補助装置1は、下肢の着地よりも先に右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bの足部6A及び6Bを地面に着地させ、抗重力方向のアシストを行うことにより、平地及び階段等においても必ず足部6A及び6Bを先に着地させて抜重制御を行うことができるので、歩行場所を選ばず移動動作を有効に補助することができる。この場合、歩行補助装置1ではカメラ等による視覚情報、MAPデータ等の予備データを必要とせず、また歩行場所に応じた特別な操作を必要としないことも特徴であり、装着者に対して歩行動作を行わせるだけで意識的な特別の操作を必要とさせることのない状態で、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bの軌道・接地点を制御することができる。
【0094】
このように歩行補助装置1は、下肢と、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bとの距離を一定に保った状態で、抗重力方向にのみアシストを行うことにより、下肢弱体者の関節部位に余分な力が加えられることを防止することができるので、下肢弱体者に対して歩行補助装置1を特別意識させることなく、普通に歩行動作を行わせるだけで歩行感が軽いという印象を与えることができる。
【0095】
また、このとき歩行補助装置1では、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bによる抗重力方向のアシスト力を体幹装着部2の座骨結節保持部14を介して神経の集中していない体幹部の座骨結節で受けることができるので、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bによりアシスト力を受けたときであっても、痛みや不快感を感じることがなく、身体に無理のない状態で歩行動作を続行させることができる。
【0096】
さらに歩行補助装置1は、下肢(右脚又は左脚)が地面から離れている遊脚期には、下肢の動きに合わせて右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bを位置制御し、遊脚期から支持脚期にかけては、スティフネス制御を行うことにより、遊脚期から支持脚期へ滑らかに移行して安定した歩行動作を実現することができる。
【0097】
そして歩行補助装置1は、スティフネス制御から抜重制御に切り換えると、右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3Bの足部6A及び6Bを地面に押し付け、装着者自身の自重をアシスト対象として抜重するように力制御することにより、下肢弱体者の骨面圧を軽減させて関節部位に対する負担を大幅に軽減し、長時間の歩行動作を可能にする。
【0098】
以上の構成によれば、歩行補助装置1は下肢を一切拘束することなく、フリーな状態でかつ膝等の関節部位に負担を与えることなく下肢弱体者の歩行動作を補助し、平地及び階段等における歩行動作を有効に補助することができる。
【0099】
(7)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、歩行補助装置1の体幹装着部2が腰部に装着された際、第1棒状部材4A及び4B、第2棒状部材5A及び5B、足部6A及び6Bによる右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3B全体の長さが人体の下肢よりも僅かに長くなるように予め設定されているようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図20に示すように第2棒状部材5A及び5Bに設けられたねじN1の取り付け位置H1~H5を任意に変化させることにより下肢弱体者の好みに応じた任意の長さに調整できるようにしても良い。
【0100】
また上述の実施の形態においては、足部6A及び6Bの当接部分TP1にゴム製素材を衝撃緩衝材として用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図21に示すように、足部6A及び6Bの当接部分TP1の内部に、スプリングSPG等の衝撃緩衝材を取り付けることにより骨面圧を軽減させるようにしても良い。
【0101】
さらに上述の実施の形態においては、下肢の足首近傍に磁石MG1及びMG2を取り付け、それに対応した第2棒状部材5A及び5Bの所定位置に3軸磁気センサ7A及び7Bを取り付けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、又はこれに加えて、下肢の踝近傍や膝近傍に磁石MG1及びMG2を取り付け、それに対応した第2棒状部材5A及び5Bの所定位置に3軸磁気センサ7A及び7Bを取り付けるようにしても良い。この場合、足首近傍及び踝近傍や膝近傍の動きに基づいて下肢の3次元位置を一段と正確に検出することができる。
【0102】
さらに本発明の実施の形態においては、下肢の3次元位置を検出するために3軸磁気センサ7A及び7Bを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、装着者の歩行軌道に影響を与えず、装着者の関節部位に対してトルクを与えないのであれば、磁気センサ以外の超音波センサ、光センサ等のその他種々のセンサを用いて下肢の3次元位置を検出するようにしても良い。
【0103】
さらに本発明の実施の形態においては、DC駆動モータからなるアクチュエータ32を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、装着者の歩行軌道に影響を与えず、装着者の関節部位に対してトルクを与えないのであれば、DC駆動モータ以外のアクチュエータ、リニアモータ等のその他種々のアクチュエータを用いるようにしても良い。
【0104】
さらに上述の実施の形態においては、PDコントローラ及びリミット回路25による比例微分制御によって、駆動命令D2を生成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、P(Proportional)制御や、PID(Proportional Integral Differential)制御等のその他種々の制御方式によって駆動命令D2を生成するようにしても良い。
【0105】
さらに上述の実施の形態においては、体幹装着部2を下肢弱体者の腰部付近で取り付けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、体幹部であれば胴体付近で取り付けるようにしても良い。
【0106】
さらに上述の実施の形態においては、体幹部保持手段としての体幹装着部2、下肢補助手段としての右側下肢補助部3A及び左側下肢補助部3B、追従手段としての3軸磁気センサ7A及び7B、コントローラユニット4、衝撃荷重軽減制御手段及び抜重制御手段としてのコントローラユニット4によって歩行補助装置1を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々のハードウェア構成及び回路構成による体幹部保持手段、下肢補助手段、追従手段、衝撃荷重軽減制御手段及び抜重制御手段によって歩行補助装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の歩行補助装置は、一方又の下肢を切断している者の歩行動作を補助することにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の歩行補助装置の全体構成を示す略線図である。
【図2】体幹装着部の構成(1)を示す略線図である。
【図3】体幹装着部の構成(2)を示す略線図である。
【図4】足部の衝撃緩衝材の説明に供する略線図である。
【図5】歩行補助装置の装着状態を示す略線図である。
【図6】表面筋電位の計測の説明に供する略線図である。
【図7】下肢の3次元位置検出(1)の説明に供する略線図である。
【図8】下肢の3次元位置検出(2)の説明に供する略線図である。
【図9】性能評価試験の説明に供する略線図である。
【図10】性能評価試験の結果の説明に供する略線図である。
【図11】追従制御の説明に供する略線図である。
【図12】粘性制御の説明に供する略線図である。
【図13】歩行方向(X軸)及び抜重アシスト方向(Y軸)の説明に供する略線図である。
【図14】追従実験の結果の説明に供する略線図である。
【図15】歩行速度と追従誤差との関係を示す略線図である。
【図16】歩行補助装置の回路構成を示す略線的ブロック図である。
【図17】遊脚期の説明に供する略線図である。
【図18】支持脚期の説明に供する略線図である。
【図19】歩行感の獲得の説明に供する略線図である。
【図20】他の実施の形態における右側下肢補助部及び左側下肢補助部の構成を示す略線図である。
【図21】他の実施の形態における足部の構成を示す略線図である。
【符号の説明】
【0109】
1……歩行補助装置、2……体幹装着部、3A……右側下肢補助部、3B……左側下肢補助部、4……コントローラユニット、6A、6B……足部、7A、7B……3軸磁気センサ、8A、8B……第1回動部、9A、9B……第2回動部、14……座骨結節保持部、MG1、MG2……磁石、16……筋電計、20……装着者側装備部、22……靴面圧センサ、23……磁気モデル及び座標変換回路、24……動作推定及び制御系電卓回路、25……PDコントローラ及びリミット回路、26……平滑化及び筋モデル回路、27……コントローラ及びリミット回路、30……歩行補助部、31……モータドライバ、32……アクチュエータ、33……ロータリーエンコーダ、35……システム面圧センサ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
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【図19】
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【図20】
19
【図21】
20