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明細書 :通信端末、通信方法および通信システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4790734号 (P4790734)
登録日 平成23年7月29日(2011.7.29)
発行日 平成23年10月12日(2011.10.12)
発明の名称または考案の名称 通信端末、通信方法および通信システム
国際特許分類 H04W  76/02        (2009.01)
H04W  74/08        (2009.01)
H04W  84/18        (2009.01)
H04W  88/04        (2009.01)
FI H04Q 7/00 582
H04Q 7/00 574
H04Q 7/00 633
H04Q 7/00 652
請求項の数または発明の数 17
全頁数 25
出願番号 特願2007-557920 (P2007-557920)
出願日 平成19年2月9日(2007.2.9)
国際出願番号 PCT/JP2007/052805
国際公開番号 WO2007/091738
国際公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
優先権出願番号 2006034598
優先日 平成18年2月10日(2006.2.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年12月3日(2008.12.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】長谷川 圭吾
【氏名】藤井 威生
個別代理人の代理人 【識別番号】100094488、【弁理士】、【氏名又は名称】平石 利子
審査官 【審査官】前田 典之
参考文献・文献 長谷川圭吾,他,アドホックネットワークにおけるブロードキャストのためのオンデマンド型高効率MACプロトコル,電子情報通信学会総合大会講演論文集,日本,社団法人電子情報通信学会,2006年 3月 8日,通信(2),第578頁
小川将克,他,アドホックネットワークにおける動的な無線端末の状態変化を用いた高効率フラッディング方式,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2004年 1月 7日,ITS 103(542),第7頁-14頁
Il-Whan Kim, et.al.,Selective Rebroadcast Suppression (SRS) Scheme for Directional Border Flooding in Mobile Ad Hoc Networks,1st International Symposium on Wireless Pervasive Computing,米国,IEEE,2006年 1月16日
調査した分野 H04W 76/02
H04W 74/08
H04W 84/18
H04W 88/04
特許請求の範囲 【請求項1】
ブロードキャストによりデータパケットのマルチホップ通信を行う通信端末において、
送信元の通信端末からブロードキャスト送信された、データパケットのID情報を含む第1のRequestパケットを受信するRequest受信手段と、
既に受信済みのデータパケットのID情報を記憶する受信パケットID記憶手段と、
前記Request受信手段で受信した、前記第1のRequestパケットが有するデータパケットのID情報と、前記受信パケットID記憶手段に記憶されている既に受信済みのデータパケットのID情報とから、前記第1のRequestパケットが有するID情報によって識別されるデータパケットを既に受信しているか否かの判断を行う判断手段と、
前記判断手段により、前記データパケットを受信していない場合、前記第1のRequestパケット内のデータパケットのID情報を記録し、制御信号であるreply信号を送信するreply送信手段と、
前記送信元の通信端末によって受信された、前記第1のRequestパケットを受信した通信端末からの前記reply信号が所定の閾値を超えた場合に、前記送信元の通信端末によってブロードキャストされた前記データパケットを受信するデータパケット受信手段と、
前記データパケット受信手段で前記データパケットを受信した後、任意に設定された検出時間内で周囲の通信状況を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記検出時間内で周囲に通信があることを検出しなかった場合、前記データパケット受信手段によって受信されたデータパケットのID情報を含む第2のRequestパケットをブロードキャストするRequest送信手段と、
前記Request送信手段でブロードキャストした前記第2のRequestパケットに応答するreply信号を受信するreply受信手段と、
前記reply受信手段により受信した前記reply信号が所定の閾値をえた場合、前記データパケットをブロードキャストするデータパケット送信手段と、
を備えたことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記判断手段により、前記データパケット受信済みと判断された場合、前記Request送信手段で送信されたRequestパケットを破棄する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記検出時間は乱数によって設定する、
ことを特徴とする請求項または2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記検出手段により検出時間内で周囲に通信があること検出された場合、前記検出時間を一時停止して送信を待機する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【請求項5】
受信したデータパケットのSNRを検知するデータパケットSNR検知手段を更に有し、
前記データパケットSNR検知手段により検知された当該データパケットのSNRが所定の閾値より小さければ、前記検出時間を短く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【請求項6】
送信したデータパケットの回数を計測する送信回数計測手段を更に有し、
前記送信回数計測手段で計測したデータパケットの回数が一定回数より多ければ、前記検出時間を短く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【請求項7】
複数の端末で同じデータパケットのID情報を付加したRequestパケットを保持し、該複数の端末がreply信号を受信した場合に、協調ダイバーシチ送信を行う、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【請求項8】
パケットの衝突を通知する緊急信号送信手段を更に有し、
前記Requestパケット受信手段またはデータパケット受信手段でRequestパケットまたはデータパケットを受信する際に、パケットが衝突して受信できなかった場合、前記緊急信号送信手段により緊急信号を送信する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【請求項9】
前記検出時間内に受信したRequestパケットが有するデータパケットのID情報が、前記第2のRequestパケットに含まれる、既に有しているデータパケットのID情報と同一の場合に、当該受信したRequestパケットのSNRを検知するRequestパケットSNR検知手段を更に有し、
前記RequestパケットSNR検知手段により検知された当該RequestパケットのSNRが所定の閾値より大きい場合、前記検出時間を延長する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【請求項10】
ブロードキャストによりデータパケットのマルチホップ通信を行う通信方法において、各通信端末は、
送信元の通信端末からブロードキャスト送信された、データパケットのID情報を含む第1のRequestパケットを受信するRequest受信ステップと、
前記第1のRequestパケットが有するデータパケットのID情報と、メモリに記憶されている既に受信済みのデータパケットのID情報とから、前記第1のRequestパケットが有するID情報によって識別されるデータパケットを既に受信しているか否かの判断を行うステップと、
前記データパケットを受信していない場合、前記第1のRequestパケット内のデータパケットのID情報を記録し、制御信号であるreply信号を送信するステップと、
前記送信元の通信端末によって受信された、前記第1のRequestパケットを受信した通信端末からの前記reply信号が所定の閾値を超えた場合に、前記送信元の通信端末によってブロードキャストされた前記データパケットを受信するステップと、
前記データパケットを受信した後、任意に設定された検出時間内で周囲の通信状況を検出するステップと、
前記検出時間内で周囲に通信があることを検出しなかった場合、前記データパケット受信ステップにおいて受信されたデータパケットのID情報を含む第2のRequestパケットをブロードキャストするステップと、
ブロードキャストした前記第2のRequestパケットに応答するreply信号を受信するステップと、
受信した前記reply信号が所定の閾値をえた場合、前記データパケットをブロードキャストするステップと、
行うことを特徴とする通信方法。
【請求項11】
複数の通信端末から構成され、データパケットをブロードキャスト送信するアドホック・マルチホップ通信システムにおいて、
前記複数の通信端末のうち、データパケットを保有している送信元の通信端末は、当該データパケットのID情報を含むRequestパケットをブロードキャスト送信し、
前記複数の通信端末のうち、前記Requestパケットを受信した通信端末は、受信したRequestパケットが有するデータパケットのID情報と、当該通信端末のメモリに記憶されている既に受信済みのデータパケットのID情報とから、前記Requestパケットが有するID情報によって識別されるデータパケットを既に受信しているか否かの判断を行い、既に前記データパケットを受信しているときは応答しないが、未だ前記データパケットを受信していないときは当該データパケットの受信を必要としていることを意味するreply信号を送信し、
前記送信元の通信端末は、所定の閾値以上の前記reply信号を受信したときにのみ、前記データパケットをブロードキャストする
ことを特徴とする通信システム。
【請求項12】
前記送信元の通信端末は、前記データパケットを受け取った場合において、前記データパケットを送信した通信端末との距離を判断する機能(装置)を備え、前記距離が遠いほど短く成るべく設定された前記待ち時間が経過した後に、前記Requestパケットをブロードキャスト送信する、
ことを特徴とする請求項11記載の通信システム。
【請求項13】
前記各通信端末は、所与の待ち時間が経過した後に前記Requestパケットをブロードキャスト送信するものであり、
前記各通信端末が、他の通信端末が送信する前記Requestパケットの受信電力をモニタする装置(機能)をさらに備え
前記データパケットを保有している前記各通信端末は、他の通信端末から受信した前記Requestパケットが有するデータパケットのID情報が、当該各通信端末が既に有しているデータパケットのID情報と同一の場合に、当該各通信端末が備える前記受信電力をモニタする装置(機能)によって当該受信したRequestパケット受信電力を検知し、検知された受信電力の大きさが大きいときは前記待ち時間を長く成るべく設定し、当該受信したRequestパケットの受信電力の大きさが小さいときは前記待ち時間を短く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項11または12記載の通信システム。
【請求項14】
前記各通信端末は、所与の待ち時間が経過した後に前記Requestパケットをブロードキャスト送信するものであり、
前記各通信端末は、前記データパケットの送信回数を累積して記憶し、
前記累積した送信回数が多いときに前記待ち時間を短く成るべく設定し、
前記累積した送信回数が少ないときに前記待ち時間を長く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の通信システム。
【請求項15】
前記通信端末のうち2つの通信端末がダイバーシチ送信における2つのアンテナとして機能することを特徴とする請求項11から14の何れかに記載の通信システム。
【請求項16】
前記各通信端末は、複数のRequestパケットまたはデータパケットを同時受信したときは、前記reply信号を送信せずに、reply信号に割り当てられている時間と重複しないように、Requestパケットの再送要求を送信し、
前記Requestパケットの再送要求を受信した前記通信端末は、Requestパケットを再送する、
ことを特徴とする請求項11記載の通信システム。
【請求項17】
前記各通信端末は、複数の前記Requestパケットまたはデータパケットを同時受信したときは、reply信号を送信せずに、当該reply信号に割り当てられている時間にReqestパケットの再送要求をreply信号とは異なる符号化をして送信する
ことを特徴とする請求項11記載の通信システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アドホックネットワークにおいてブロードキャスト通信を行う通信端末、通信方法および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集中制御局を必要とせず自律分散的に形成されるアドホックネットワークが注目を集めている。アドホックネットワークは移動端末だけで構成することが可能であるため、柔軟性に優れており、現在多く用いられているセルラ通信や無線LAN、今後急速な発展が予想されるITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)など様々なネットワークに対応することでシームレスな通信を実現でき、これまでサービスの提供が困難であった場所でも手軽に情報を得ることができるようになると考えられている。
【0003】
災害時において基地局などのインフラが被害を受けた際、緊急の通信網として、端末間の通信のみですむアドホックネットワークは有用であると考えられる。
アドホックネットワークでは、送信元(ソース)となる端末と直接通信を行うことができない端末は、マルチホップ通信により他の端末が中継を行うことで情報の受信を可能とする。
【0004】
しかしアドホックネットワークは、インフラが無いために、送信開始時間を制御するアクセス制御が難しいことや、近隣の端末や受信する端末の正確な位置情報を特定するルート制御が困難といった技術的課題が挙げられる。
【0005】
そこで、基本的な通信方法として、まずは自端末の通信可能領域内にある全端末にデータを送信するブロードキャストを行う手法がある。このブロードキャストはルーティングや全端末への情報配信を行う場合に利用され、そのデータ転送をフラッディングと呼ぶ。フラッディングは、ブロードキャストパケットを受信した端末が、必ず1回リブロードキャストを行うことで全端末にブロードキャストパケットを行きわたらせる手法である。しかし、単純にブロードキャストパケットを受信した端末が全て、パケットをリブロードキャストしてしまうと、トラヒックが急増して、パケットが衝突する確率が増え、全体のデータ伝送が滞ってしまう(ブロードキャストストーム問題)。
よって、最小のブロードキャスト数で全ての端末にデータを送信することが課題となる。
【0006】
ブロードキャストストーム問題を解決するために、従来の技術では、確率的に中継を行うか行わないかを決定する手法、中継を行う前に同じデータパケットを一定回数以上重複して受け取った場合は中継を中止する手法、端末間の距離を既知と仮定し、データパケットを受け取った端末との距離が一定以上ならば中継、それ以下ならば中止するという手法、GPSを使って、データパケットを受け取った端末との位置関係を調べ、自身のブロードキャストによってブロードキャストの範囲が一定面積以上に拡大できるならば中継する手法、あらかじめアドホックネットワーク内にクラスタと呼ばれる小さなネットワークを複数構成しておき、クラスタ内の特定の端末だけがブロードキャストを行う手法が提案されている(Yu-Chee Tseng, Sze-Yao Ni, Yuh-Shyan Chen, and Jang-Ping Sheu, “The Broadcast Storm Problem in a Mobile Ad Hoc Network,” Proceedings of the 5th annual ACM/IEEE international conference on Mobile computing and networking, Washington, United States, pp. 151≡162, 1999.参照)。しかし、上記手法では、重複中継数は減少するものの確実に全端末にデータを届けることができない可能性が生じてしまう。
【0007】
ところで、アドホックネットワークにおけるMACプロトコルの主な種類として、CSMA/CA方式(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance:衝突回避機能付き搬送波感知多重アクセス方式)とRTS/CTS方式(Request to Send/Clear to Send)がある(LAN MAN Standard committee of the IEEE Computer Society, “Information technology≡ Telecommunications and information exchange between systems≡ Local and metropolitan area networks≡ Specific requirements≡ Part11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications,” ANSI/IEEE Standard 802.11-1999(R2003), June 2003.参照)。
【0008】
CSMA/CA方式とは、同一チャネルに複数の端末が通信をする際の競合を回避する手法である。動作例を図18に示す。パケットの送信を試みる端末A、Bは、まずチャネルが使用中であるビジーから使用中でないアイドルに代わった後、DIFS(Distributed Inter Frame Space:分散制御用フレーム間隔)の時間をおいて、他端末のチャネルの使用状況をセンスする(キャリアセンス)。チャネルが空き状態であれば、端末A、Bは乱数によりコンテンションウインドウ(CW)を設定する。一方、もしチャネルが使用中であれば、チャネルが空くまで待ち、チャネルが空き状態になった後、再度DIFS時間の時間をおく。その後、前述のチャネルが空き状態だった場合と同様に端末A、Bは乱数によりCWを設定する。
【0009】
このCWは、端末が同時にパケットを送信することによるパケットの衝突を低減させるために用いられる。このCWは通常端末毎に乱数により確率的に大きさが与えられ、そのCWに一定時間(Slot Time)を掛けたバックオフ時間の間送信を待機して、端末同士の衝突の確率を下げるようにしている。
【0010】
チャネルが空いている間、端末のバックオフ時間は一定時間(Slot Time)毎に減少(カウントダウン)する。このカウントダウンにより、CWの大きさが0になった端末が送信権を持つこととなる。図18において、もし端末Aのバックオフ時間が0にならない間に端末Bのバックオフ時間が0になって、端末Bがパケットを送信しチャネルが使用中になると、再び端末Aは待機状態となり、端末Bのパケット送信が終了すると、端末Aは、アイドル状態になった後、DIFSの期間が経過するまで、バックオフ時間をそのまま保持する。DIFS経過後、再度カウントダウンを開始し、端末Aのバックオフ時間が0になったとき、端末Aはパケットの送信を開始する。ここで、もし複数の端末(端末A、端末C)のバックオフ時間が同時に0になると、衝突が発生する。そして、衝突を起こしてパケットの送信ができなかった端末は、新たにバックオフ時間を設定することで再度の送信機会をうかがう。
【0011】
この方式では、送信端末の通信範囲外に端末があった場合、その端末が送信端末からの通信を知らずに送信してしまい、パケットが衝突してしまう隠れ端末問題が生じてしまう。
【0012】
RTS/CTS方式とは、ユニキャスト通信において、特定の受信端末へのデータ送信が可能か確認をしてデータを送信する手法である。図19に動作例を示す。送信端末Aが受信端末BにRTS(送信要求)メッセージを送る。受信端末BがRTSメッセージを受信し、データの受信が可能であれば、送信端末AへCTS(受信準備完了)メッセージを返す。CTSメッセージを受信した送信端末Aは受信端末Bへデータを送信する。
通信に関与しない端末C、DがRTSまたはCTSを受信した場合は、通信に関与しないので送信を控える。この通信を控えるフラグとなるものがNAVであり、このNAVが設定されている場合は、当該端末は送信禁止状態となる。
【0013】
しかし、RTS/CTS方式はユニキャスト通信を想定しているため、ブロードキャストでこの方式を行うと、CTSメッセージを受ける際に、同時に複数の端末からCTSメッセージが返されることになり、CTSメッセージが衝突してしまう。
【0014】
よって、ブロードキャストにおいても、RTS/CTS方式のようにパケットの送信が可能かどうか確認をし、かつCSMA/CA方式でキャリアセンスをして他端末から送信されたパケットとの衝突を防ぐシステムが必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
アドホックネットワークを用いてパケットをブロードキャストする際、受信可能なエリア内の端末密度が高い場合などは、既にエリア内の多くの端末がそのパケットを受信しているにも関わらず、パケットを受信した端末がリブロードキャストを行ってしまい、冗長な通信が頻繁に発生して通信リソースを浪費してしまう。また、トラヒックの増加に伴うデータの衝突や、他の通信との競合が増加し、スループットを更に下げることとなる。
【0016】
この発明はこのような点に鑑みてなされたもので、アドホックネットワークにおけるブロードキャストにおいて、無駄な送信の削減をし、端末がブロードキャストをしたデータパケットが確実かつ短時間で効率よく受信する通信端末、通信方法および通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は以下を要旨とする。
(1)ブロードキャストによりデータパケットのマルチホップ通信を行う通信端末において、
送信元の通信端末からブロードキャスト送信された、データパケットのID情報を含む第1のRequestパケットを受信するRequest受信手段と、
既に受信済みのデータパケットのID情報を記憶する受信パケットID記憶手段と、
前記Request受信手段で受信した、前記第1のRequestパケットが有するデータパケットのID情報と、前記受信パケットID記憶手段に記憶されている既に受信済みのデータパケットのID情報とから、前記第1のRequestパケットが有するID情報によって識別されるデータパケットを既に受信しているか否かの判断を行う判断手段と、
前記判断手段により、前記データパケットを受信していない場合、前記第1のRequestパケット内のデータパケットのID情報を記録し、制御信号であるreply信号を送信するreply送信手段と、
前記送信元の通信端末によって受信された、前記第1のRequestパケットを受信した通信端末からの前記reply信号が所定の閾値を超えた場合に、前記送信元の通信端末によってブロードキャストされた前記データパケットを受信するデータパケット受信手段と、
前記データパケット受信手段で前記データパケットを受信した後、任意に設定された検出時間内で周囲の通信状況を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記検出時間内で周囲に通信があることを検出しなかった場合、前記データパケット受信手段によって受信されたデータパケットのID情報を含む第2のRequestパケットをブロードキャストするRequest送信手段と、
前記Request送信手段でブロードキャストした前記第2のRequestパケットに応答するreply信号を受信するreply受信手段と、
前記reply受信手段により受信した前記reply信号が所定の閾値を越えた場合、前記データパケットをブロードキャストするデータパケット送信手段と、
を備えたことを特徴とする通信端末。
【0018】
(2)前記判断手段により、前記データパケット受信済みと判断された場合、前記Request送信手段で送信されたRequestパケットを破棄する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【0019】
(3)前記検出時間は乱数によって設定する、
ことを特徴とする請求項または2に記載の通信端末。
【0020】
(4)前記検出手段により検出時間内で周囲に通信があること検出された場合、前記検出時間を一時停止して送信を待機する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【0021】
(5)受信したデータパケットのSNRを検知するデータパケットSNR検知手段を更に有し、
前記データパケットSNR検知手段により検知された当該データパケットのSNRが所定の閾値より小さければ、前記検出時間を短く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【0022】
(6)送信したデータパケットの回数を計測する送信回数計測手段を更に有し、
前記送信回数計測手段で計測したデータパケットの回数が一定回数より多ければ、前記検出時間を短く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【0023】
(7)複数の端末で同じデータパケットのID情報を付加したRequestパケットを保持し、該複数の端末がreply信号を受信した場合に、協調ダイバーシチ送信を行う、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【0024】
(8)パケットの衝突を通知する緊急信号送信手段を更に有し、
前記Requestパケット受信手段またはデータパケット受信手段でRequestパケットまたはデータパケットを受信する際に、パケットが衝突して受信できなかった場合、前記緊急信号送信手段により緊急信号を送信する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【0025】
(9)前記検出時間内に受信したRequestパケットが有するデータパケットのID情報が、前記第2のRequestパケットに含まれる、既に有しているデータパケットのID情報と同一の場合に、当該受信したRequestパケットのSNRを検知するRequestパケットSNR検知手段を更に有し、
前記RequestパケットSNR検知手段により検知された当該RequestパケットのSNRが所定の閾値より大きい場合、前記検出時間を延長する、
ことを特徴とする請求項から何れかに記載の通信端末。
【0026】
(10)ブロードキャストによりデータパケットのマルチホップ通信を行う通信方法において、各通信端末は、
送信元の通信端末からブロードキャスト送信された、データパケットのID情報を含む第1のRequestパケットを受信するRequest受信ステップと、
前記第1のRequestパケットが有するデータパケットのID情報と、メモリに記憶されている既に受信済みのデータパケットのID情報とから、前記第1のRequestパケットが有するID情報によって識別されるデータパケットを既に受信しているか否かの判断を行うステップと、
前記データパケットを受信していない場合、前記第1のRequestパケット内のデータパケットのID情報を記録し、制御信号であるreply信号を送信するステップと、
前記送信元の通信端末によって受信された、前記第1のRequestパケットを受信した通信端末からの前記reply信号が所定の閾値を超えた場合に、前記送信元の通信端末によってブロードキャストされた前記データパケットを受信するステップと、
前記データパケットを受信した後、任意に設定された検出時間内で周囲の通信状況を検出するステップと、
前記検出時間内で周囲に通信があることを検出しなかった場合、前記データパケット受信ステップにおいて受信されたデータパケットのID情報を含む第2のRequestパケットをブロードキャストするステップと、
ブロードキャストした前記第2のRequestパケットに応答するreply信号を受信するステップと、
受信した前記reply信号が所定の閾値をえた場合、前記データパケットをブロードキャストするステップと、
有することを特徴とする通信方法。
【0027】
(11)複数の通信端末から構成され、データパケットをブロードキャスト送信するアドホック・マルチホップ通信システムにおいて、
前記複数の通信端末のうち、データパケットを保有している送信元の通信端末は、当該データパケットのID情報を含むRequestパケットをブロードキャスト送信し、
前記複数の通信端末のうち、前記Requestパケットを受信した通信端末は、受信したRequestパケットが有するデータパケットのID情報と、当該通信端末のメモリに記憶されている既に受信済みのデータパケットのID情報とから、前記Requestパケットが有するID情報によって識別されるデータパケットを既に受信しているか否かの判断を行い、既に前記データパケットを受信しているときは応答しないが、未だ前記データパケットを受信していないときは当該データパケットの受信を必要としていることを意味するreply信号を送信し、
前記送信元の通信端末は、所定の閾値以上の前記reply信号を受信したときにのみ、前記データパケットをブロードキャストする
ことを特徴とする通信システム。
【0028】
(12)前記送信元の通信端末は、前記データパケットを受け取った場合において、前記データパケットを送信した通信端末との距離を判断する機能(装置)を備え、前記距離が遠いほど短く成るべく設定された前記待ち時間が経過した後に、前記Requestパケットをブロードキャスト送信する、
ことを特徴とする請求項11記載の通信システム。
【0029】
(13)前記各通信端末は、所与の待ち時間が経過した後に前記Requestパケットをブロードキャスト送信するものであり、
前記各通信端末が、他の通信端末が送信する前記Requestパケットの受信電力をモニタする装置(機能)をさらに備え
前記データパケットを保有している前記各通信端末は、他の通信端末から受信した前記Requestパケットが有するデータパケットのID情報が、当該各通信端末が既に有しているデータパケットのID情報と同一の場合に、当該各通信端末が備える前記受信電力をモニタする装置(機能)によって当該受信したRequestパケット受信電力を検知し、検知された受信電力の大きさが大きいときは前記待ち時間を長く成るべく設定し、当該受信したRequestパケットの受信電力の大きさが小さいときは前記待ち時間を短く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項11または12記載の通信システム。
【0030】
(14)前記各通信端末は、所与の待ち時間が経過した後に前記Requestパケットをブロードキャスト送信するものであり、
前記各通信端末は、前記データパケットの送信回数を累積して記憶し、
前記累積した送信回数が多いときに前記待ち時間を短く成るべく設定し、
前記累積した送信回数が少ないときに前記待ち時間を長く成るべく設定する、
ことを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の通信システム。
【0031】
(15)前記通信端末のうち2つの通信端末がダイバーシチ送信における2つのアンテナとして機能することを特徴とする請求項11から14の何れかに記載の通信システム。
【0032】
(16)前記各通信端末は、複数のRequestパケットまたはデータパケットを同時受信したときは、前記reply信号を送信せずに、reply信号に割り当てられている時間と重複しないように、Requestパケットの再送要求を送信し、
前記Requestパケットの再送要求を受信した前記通信端末は、Requestパケットを再送する、
ことを特徴とする請求項11記載の通信システム。
【0033】
(17)前記各通信端末は、複数の前記Requestパケットまたはデータパケットを同時受信したときは、reply信号を送信せずに、当該reply信号に割り当てられている時間にReqestパケットの再送要求をreply信号とは異なる符号化をして送信する
ことを特徴とする請求項11記載の通信システム。
【発明の効果】
【0034】
からに記載の通信端末、10に記載の通信方法、11から16に記載の通信システムによれば、無駄な送信の削減をし、トラヒックを減らし、結果としてスループットを向上させることができる。
具体的には、(1)に記載の通信端末によれば、Requestパケットをブロードキャストし、該Requestパケットに応答するreply信号が所定の閾値を超えた場合、データパケットをブロードキャストする。よって、無駄なブロードキャストを削減することができ、帯域の占有時間や消費電力も少なくすることができる。また、周囲の通信状況を検出するので、通信範囲内に複数の端末が配置されていても、データパケットが衝突することなく、確実に送信される。
また、ネットワーク範囲内での通信においては、無駄なデータパケットの送信がないため、短時間でネットワーク内の全端末にデータパケットを送信することができる。
【0035】
(2)に記載の通信端末によれば、Requestパケットの受信において、端末がデータパケットを受信していた場合に該Requestパケットを破棄するので、無駄なデータパケットの送信を削減することができる。
【0036】
(3)に記載の通信端末よれば、検出時間を乱数によって設定するので、自端末からのRequestパケットが他の端末からのRequestパケットと衝突する確率を下げることができる。
【0037】
(4)に記載の通信端末によれば、検出時間を一時停止して送信を待機するので、次回のRequestパケット送信において、検出時間の終了を早めることができ、他の端末からのRequestパケットと衝突する確率を下げることができる。
【0038】
(5)に記載の通信端末によれば、受信したデータパケットのSNRが小さい端末に対して、検出時間を短く成るべく設定するので、より遠くの端末へデータパケットを優先的に送信することができ、短時間でより広範囲にデータパケットを送信することができる。
【0039】
(6)に記載の通信端末によれば、データパケットの送信回数が多い端末に対して、データパケットの中継に貢献し、該端末へ送信すれば確実にデータパケットを他の端末へ中継するとみなす。該端末に対して検出時間を短く成るべく設定するので、短時間でより確実かつ広範囲にデータパケットを送信することができる。
【0040】
(7)に記載の通信端末によれば、同じデータパケットのID情報を付加したRequestパケットを保持し、reply信号を受信した複数の端末で、協調ダイバーシチ送信を行うので、ダイバーシチ利得を得てより確実にデータパケットを送信することができる。
【0041】
(8)に記載の通信端末によれば、パケットが衝突しても、衝突を通知する緊急信号を送信するので、誤ってパケットが送信済みとなり、周囲の端末へパケットが届かなくなることが無く、確実にパケットをブロードキャストすることができる。
【0042】
(9)に記載の通信端末によれば、既に有しているデータパケットのID情報と同一のデータパケットのID情報を有すRequestパケットのSNRが、設定した閾値より大きい場合、検出時間を長く設定するので、SNRの小さい、より遠い端末が優先的にデータパケットを送信することができ、データパケットをより遠くへ送信することができる。
【0043】
(10)に記載の通信方法によれば、Requestパケットをブロードキャストし、該Requestパケットに応答するreply信号が所定の閾値を超えた場合、データパケットを送信する。よって、無駄なブロードキャストを削減することができ、帯域の占有時間や消費電力も少なくすることができる。また、周囲の通信状況を検出するので、通信範囲内に複数の端末が配置されていても、データパケットが衝突することなく、確実に送信される。
また、ネットワーク範囲内での通信においては、無駄なデータパケットの送信がないため、短時間でネットワーク内の全端末にデータパケットを送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信端末100の構成図である。なお通信端末100は、図2において後述する端末source,端末A~Dの構成と同様である。
11は制御部であり、装置全体の制御を司る。
1は無線受信部であり、入力された信号を無線周波数からベースバンド信号に変換し、入力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換(A/D変換)して制御部11へ送る。
2は無線送信部であり、制御部11から送られたデジタル信号をアナログ信号に変換(D/A変換)した後、信号を無線周波数に変換する。
3は変調・符号化部であり、送信するデータのデータ系列を符号化し、さらに変調を行う。4は復調・復号部であり、変調、符号化された受信信号を元のデータ系列に戻す。
5はメモリであり、送信しようとするパケットのID、受信したパケットのIDを記録する。また、データ系列の記録も行う。DIFS時間やSIFS(Short Inter Frame Space:短フレーム間隔)時間の設定値も記憶している。なお、DIFS時間とSIFS時間は、IEEE802.11において規定されている固定値である。
6はCW(コンテンションウインドウ)設定部であり、CSMA/CA方式における、衝突を回避するためのCWを乱数によって設定する。
7はタイマーであり、パケットを送信するまでのDIFS時間、SIFS時間、バックオフ時間を計測する。
8は受信電力監視部であり、CSMA/CA方式におけるキャリアセンス時、後に述べるreply信号の受信において、受信電力の監視をおこなう。
9はRequest/reply記憶部であり、Requestパケットおよびreply信号を格納するとともに、ブロードキャストを行うための手続きがどこまで完了したかを記録する。また、データパケットの送信を決定するreply信号の受信電力の閾値を設定し格納する。この閾値は、あらかじめ決められた端末の通信可能範囲において、通信可能な最大距離での1端末からの受信電力を計算することで設定する。
10は優先度判定部であり、受信SNR(Signal-to-Noise Power Ratio)を推定する。
12はアンテナであり、データパケット等の信号を送受信する。
13はサーキュラーであり、アンテナ12で受信したパケットを無線受信部1へ送る。また、無線送信部2から送られたパケットをアンテナ12へ送る。
【実施例1】
【0045】
図2は端末source,A~Dの空間配置図である。端末source,端末A~Dの構成は、通信端末100の構成と同様である。ここで、端末A,B,Cは、端末sourceの送信可能範囲内に配置しているため、端末sourceから送信されたデータパケットを受信することができるものとする。また、端末Dは、端末sourceの送信可能範囲外であり、端末Aの送信可能範囲内に配置しているため、端末Dは端末sourceから送信されたデータパケットを受信することができないが、端末Aから送信されたデータパケットは受信することができるものとする。
【0046】
次に、上記構成の端末100の動作について説明する。以降、端末Aの構成について、「無線受信部A-1」,・・・,「アンテナA-12」、というように表記する。
まず、端末sourceの送信可能範囲にある端末A,B,Cが、端末sourceからデータパケットXを受信する際の動作について、図3のフローおよび図4のタイムチャートを参照にして説明する。ここでは簡略のために、端末Aについてのみ説明するが、端末B,Cも同様の動作を行う。
【0047】
端末Aの無線受信部A-1は、端末sourceからブロードキャストされたRequestパケットを受信する(ステップS101)。このRequestパケットには、この後端末sourceから送信されるデータパケットXのID情報、端末sourceのID情報、現在のホップ数等が含まれている。制御部A-11はRequestパケットを復調・復号部A-4で復調を行った後、メモリA-5に記憶されている、既に受信したデータパケットのIDと、Requestパケットに含まれているデータパケットのIDとの比較を行う。
もし既に端末Aが受信していたデータパケットであれば(ステップS103で「No」)、制御部A-11はこのRequestパケットを破棄する(ステップS105)。
【0048】
端末Aが受信していないデータパケットであれば(ステップS103で「Yes」)、制御部A-11は、受信したRequestパケットに付加しているデータパケットXのIDを、メモリA-5に記録する(ステップS107)。そして制御部A-11は、メモリA-5からSIFSの設定時間をタイマーA-7に転送し、SIFSの時間の計測をスタートさせる。制御部A-11は、SIFS時間の間受信電力監視部A-8に周囲の電力を監視させて、キャリアセンスを行う(ステップS109,ステップS111で「No」)。
【0049】
SIFS時間終了後(ステップS111で「Yes」)、制御部A-11はRequest/reply記憶部A-9からreply信号を呼び出し、変調・符号化部A-3で変調を行って無線送信部A-2を介して送信する(ステップS113)。ここでreply信号は一例としてパルス信号を用いることが可能であり、他の信号と衝突した場合でも受信側では電力の増加によるreply信号の検知が可能である。ここで、パルス信号の変わりに拡散信号もしくは通常の変調信号を利用してもよい。
そして、端末Aは端末sourceからブロードキャストされるデータパケットXを受信する(ステップS115)。
【0050】
次に、端末A,B,Cが端末sourceから受信したデータパケットXを中継送信するときの動作について、図5のフローおよび図6のタイムチャートを参照にして説明する。ここでも、図3,図4において説明したと同様、簡略のために、端末Aについてのみ説明するが、端末B,Cも同様の動作を行う。
【0051】
まず、制御部A-11は、CW設定部A-6にCWを設定させる(ステップS1)。次に制御部A-11は、メモリA-5からDIFSの設定時間をタイマーA-7に転送し、DIFS時間の計測をスタートさせる。制御部A-11は、DIFS時間の間送信を待機し、受信電力監視部A-8に周囲の電力を監視させて、キャリアセンスを行う(ステップS3)。
【0052】
DIFS時間終了後、制御部A-11は、ステップS1で設定したCWに基づいて、タイマーA-7でバックオフ時間の計測をスタートさせる。制御部A-11は、バックオフ時間の間受信電力監視部A-8に周囲の電力を監視させて、キャリアセンスを行う(ステップS5)。
もし、バックオフ時間の間、端末Aの周囲で送受信を行っていることを示す電力を検知した場合は(ステップS7で「Yes」)、バックオフ時間を一時停止し(ステップS9)、次回の送信まで待機する。
【0053】
バックオフ時間が終了したら(ステップS11「Yes」)、制御部A-11はメモリA-5からこの後送信する予定のデータパケットXのIDを呼び出し、Request/reply記憶部A-9から呼び出したRequestパケットに付加する。そして、変調・符号化部A-3で変調を行って、無線送信部A-2を介してアンテナA-12からデータパケットXのIDを付加したRequestパケットをブロードキャストする(ステップS13)。そして制御部A-11は、Request/reply記憶部A-9にRequestパケットが送信完了したことを記録する(ステップS15)。
【0054】
制御部A-11は、Requestパケットを送信すると同時に、メモリA-5からSIFSの設定時間をタイマーA-7に転送し、SIFS時間の計測をスタートさせる。SIFS時間経過後、端末Aはreply信号を受信するための待機時間が必要となる。制御部A-11は、SIFS時間+reply信号受信待機時間の間送信を待機し、受信電力監視部A-8に周囲の電力を監視させて、reply信号受信のための信号の監視を行う(ステップS17)。reply信号受信待機時間は、reply信号を送信した端末とRequestパケットを送信した端末との間の電波伝搬時間などを考慮したマージンとなる。
【0055】
端末Aは、ステップS17でSIFS時間+reply信号受信待機時間の間送信を待機している間、周辺端末から受信するreply信号の電力を受信電力監視部A-8で監視する(ステップS19)。SIFS時間+reply信号受信待機時間が終了するまでに、reply信号の受信電力がRequest/reply記憶部A-9に記憶されたreply信号の受信電力の閾値を越えた場合(ステップS19で「Yes」)、制御部A-11はRequest/reply記憶部A-9に、直前に送信したRequestパケットの情報を記録する(ステップS21)。そして、データパケットXを送信するために、タイマーA-7にSIFS時間の計測を再スタートさせ、受信電力管理部A-8にキャリアセンスを行わせる(ステップS23)。
【0056】
受信するreply信号の受信電力が、Request/reply記憶部A-9に記憶されている閾値を超えずSIFS時間+reply信号受信待機時間が終了した場合(ステップS19で「No」)、端末Aの送信可能範囲にある端末からはreply信号が送信されなかった、すなわち端末Aの送信可能範囲にはデータパケットXを持たない端末が存在しないとみなすことができるので、データパケットXを送信せず処理を終了する。これにより、データパケットの無駄なブロードキャストを削減することができる。
【0057】
ステップS23でのSIFS時間が終了したら(ステップS25で「Yes」)、制御部A-11はメモリA-5からデータパケットXを読み出し、変調・符号化部A-3で変調を行う。そして無線送信部A-2を介してアンテナA-12からデータパケットXをブロードキャストする(ステップS27)。
なお、ステップS17~S25までの時間(SIFS時間×2+reply信号受信待機時間)は、DIFS時間よりも短く成るべく設定している。
【0058】
ここで、端末Aに着目する。図2において、端末Aの送信可能範囲には、端末source,B,C,Dが配置しており、端末Aから送信されたパケットを受信することができる。
端末Aが端末B、Cより先にバックオフ時間を終了すると(ステップS11で「Yes」)、端末AはデータパケットXのIDを付加したRequestパケットをブロードキャストする(ステップS13)。
【0059】
端末Dについては、端末Aの送信可能範囲にあるので、Requestパケットの受信以降、上述したステップS101~115の動作を行う。端末DはまだデータパケットXを受信していないので(ステップS103で「Yes」)、reply信号を送信することになる(ステップS113)。端末Aはこのreply信号を受信して、データパケットXをブロードキャストする(ステップS27)。
【0060】
一方、端末B,Cは、既にデータパケットXを受信している(ステップS103で「No」)ので、端末AからのRequestパケットを受信しても、reply信号を送信せずRequestパケットを破棄する(ステップS105)。
【0061】
次に端末Bに着目する。端末Bは端末Aが先にバックオフ時間を終了し通信を始めたため(ステップS7で「Yes」)、バックオフ時間を一時停止して待機している(ステップS9)。端末Aがデータパケットの送信を終了したところで、端末BはDIFS時間待機した後、一時停止していたバックオフ時間を再スタートしキャリアセンスを行う(ステップS5)。端末Bが周辺端末における電力を検知せず(ステップS7で「No」)、バックオフ時間を終了すると(ステップS11で「Yes」)、Requestパケットをブロードキャストする(ステップS13)。しかし、端末Bの送信可能範囲には、既にデータパケットXを保持している端末source、A,Dしかなく、端末source、A、Dはreply信号を送信しない。そのため、端末Bはデータパケットのブロードキャストを行わないことになる。図7にタイムチャートを示す。
端末Cについても同様である。
【0062】
よって、各端末は無駄なデータパケットのブロードキャストを防ぐことができる。
【0063】
なお、データパケットを中継する端末A,B,CはステップS1~S27の手順を行うが、端末sourceについては、データパケットの送信元であるので、ステップS1~S25の手順を行わず、いきなりデータパケットを送信してもよいし、ステップS1~S25の手順を行ってもよい。
【0064】
計算機シミュレーションによる検討結果を以下に示す。図8に通常の全ての端末がリブロードキャストを行うフラッディングの動作例、図9に本発明の動作例を示す。シミュレーションは、簡単のためACK等による再送手続きを行わず、端末は10個、配置は格子状とする。実線は送受信を行う端末同士であり、点線は通信範囲にあるが直接通信は行わない端末同士である。
図10(a)はネットワーク内の端末数における、パケットの生存時間と、パケット遅延時間を示す図である。パケットの生存時間とは、送信元(sourceとする)に呼が発生してから、ネットワーク内のすべての端末の中継手続きが終了するまでの時間である。また、パケット遅延時間は、sourceがデータパケットを送信してからすべての端末にデータパケットが受信完了するまでの時間である。
図10(a)より、本発明の手法では、フラッディングより短時間でネットワーク内の端末にデータパケットが到達することがわかる。
【0065】
図10(b)はパケットの到達率を示す。パケットの到達率は次式で示す。
【0066】
(数1)
JP0004790734B2_000002t.gif
図10(b)より、本発明の手法による到達率の劣化がないことがわかる。
【0067】
図10(c)はデータ送信を行う確率を示す。データ送信率は次式で示す。
【0068】
(数2)
JP0004790734B2_000003t.gif 図10(c)より、本発明の手法が、フラッディングよりもデータ送信を行った端末数が少なく、無駄なデータ送信が少ないことがわかる。
【0069】
上記実施例に追加して、より効率のよいデータパケット中継方法を以下に記載する。
【0070】
(1) 受信SNR基準による優先制御
図11に示すように、データパケットを送信した端末と受信した端末の距離が離れているほど、受信した端末が次にデータパケットを中継する際に、より広い範囲にわたって送信を行うことができる。そこで、受信SNR(Signal-to-Noise Power Ratio)が小さい端末ほど、データパケットを送信する端末との距離が離れているとみなし、受信SNRが小さい端末に対してCWの乱数の範囲[CWmin,CWmax]を小さくし、バックオフ時間の終了を早める設定をすることで優先的に中継送信させてもよい。
【0071】
動作例のフローチャートを図12に示す。端末Zの元々のCWの乱数の範囲は、[CWmin,CWmax]=[0,63]とする。端末Yよりデータパケットを受信した(ステップS201)端末Zは、データパケットよりSNR値を優先度判定部10で推定する(ステップS203)。SNRの値が13dBより大きければ(ステップS205)、端末Zは端末Yに近い位置にあるとみなされるので、CWの乱数の範囲を[CWmin,CWmax]=[0,127]と大きくする(ステップS211)。
SNRの値が10dB以下であれば(ステップS205)、端末Zは端末Yより遠い位置にあるとみなされるので、CWの乱数の範囲を[CWmin,CWmax]=[0,31]と小さくする(ステップS207)。
SNRの値が10dBより大きく13dB以下であれば(ステップS205)、端末YのCWの乱数の範囲は変更せず[CWmin,CWmax]=[0,63]にする(ステップS209)。
これにより、より遠くにある端末に優先的にデータパケットを送信することで、短時間でより広範囲にデータパケットをブロードキャストできることになる。
【0072】
なお、ここで示したSNRの具体的な値は環境や通信方式によって大きく異なるものであり、その環境に適した値を設定するものであり、ここで示したものが全てではない。
【0073】
(2) ルーティング
複数のデータパケットを次々と受信して中継する場合、端末がデータパケットを中継送信する回数を記録する。中継送信する回数が多いほどデータパケットの中継に貢献しているものとして、CWの乱数の範囲を小さくしてもよい。
【0074】
(3) 協調ダイバーシチ
端末sourceから送信されたデータパケットを端末A、Bが受信し、端末Aが端末Dにデータパケットを中継送信する際、端末Aと端末Bが協調ダイバーシチ送信を行ってもよい。図13(a)に端末配置図、(b)にタイムチャートを示す。データパケットを中継送信する端末AがRequestパケットをブロードキャストすると、端末DがそのRequestパケットを受信する他に、端末Aの送信可能範囲内にある端末BもそのRequestパケットを受信する。端末Dがreply信号を送信すると、端末Aだけではなく端末Bも受信することができる。端末Bはその直前に送信された端末AからのRequestパケットに含まれているデータパケットのIDから、端末Aが端末Bも保持しているデータパケットを送信しようとしていることが判るので、端末Aとともにデータパケットを協調ダイバーシチ送信する。なお、ここでの協調ダイバーシチ送信にはSTBC(Space Time Block Code)を用いる。
【0075】
(4) Requestパケット重複通知
図14において、データパケットを中継する端末A,BがRequestパケットを送信する際に、CW設定がたまたま同じになりバックオフ時間が同時に終了してしまった場合、Requestパケットが衝突してしまう。その結果、周辺の端末C、D、Eがreply信号を送信することができない。これを解決するために、端末C、D、Eはパケット重複通知および再送要求を端末A、Bに送信する。具体的な方法として、スロット分割方式と符号分割方式がある。
【0076】
図15(a)にスロット分割方式のタイムチャートを示す。端末Aと端末BがブロードキャストしたRequestパケットが端末Cにおいて衝突した場合、端末Cは、SIFS時間、あらかじめ設定されたreply送信時間、SIFS時間をおいて、emergency信号を端末A、Bに送信する。端末A,Bは、DIFS時間をおいた後に、CWを再設定し、バックオフ時間が終了した端末BからRequestパケットを再送信する。
【0077】
図15(b)に符号分割方式のタイムチャートを示す。端末Aと端末BがブロードキャストしたRequestパケットが端末Cにおいて衝突した場合、端末Cは、SIFS時間をおいた後、あらかじめ設定されたreply信号送信時間にemergency信号を、異なる符号化をして端末A、Bに送信する。ここではemergency信号をCDMA方式で送信する。emergency信号を異なる符号で送信することで、もし端末D、Eから端末A,Bへreply信号を送信したとしても、その符号により双方の信号が分離可能なため、emergency信号のみを取り出すことが可能であり、端末A、Bが双方とも送信完了となってしまうことを避けることができる。
【0078】
これらの方式を採用することで、emergency信号を受信した端末A、BはRequestパケット重複のため、reply信号の返信が無かったためにデータパケット送信済みと誤判断してしまうことを防ぐことが可能であり、再度requestパケットを送信することで確実な通信を行うことができる。
【0079】
(5) Requestパケット受信SNRによるCW延長
キャリアセンス中に、同一のデータパケットIDを付加している他端末からのRequestパケットを高いSNRで受信した場合、自端末の近隣でデータパケットの送信が行われると考えられるため、その直後にバックオフ時間が終了しデータパケットを送信することは効果的といえない。そこで、一定のSNR以上で受信した近隣の端末はCWを増加させバックオフ時間を延長する。
【0080】
図16において、端末A~Fは同一のデータパケットを保持しており、それぞれバックオフ時間経過後にRequestパケットを送信する状態である。受信SNRの閾値を15dBとする。
端末Dが先にバックオフ時間を経過し、Requestパケットをブロードキャストすると、端末A、B、C、EはSNR=15dBで受信する。よって、端末A、B、C、EはCWを10増加させ、バックオフ時間を延長する。
一方、端末Fの受信SNRは10dBである。よってCWはそのままである。
これにより、データパケットを送信した近傍の端末からのRequestパケットの送信が遅れるため、遠方の端末が先にデータパケットを送信する権利を得る可能性が高くなる。
【0081】
以下、本発明の上記通信端末を用いた通信システム(アドホック・マルチホップ通信システム)について説明する。
図17は、本発明の通信端末の処理を示すフローチャートである。
この通信システムでは、既に述べたようにデータパケットをブロードキャスト送信する。ここで、データパケットを保有している端末は、Requestパケットを、所定の待ち時間が経過した後に送信する(この送信もブロードキャストされる。S210)。この待ち時間は、後述の方法で重み付けがなされたものであってもよい。また、Requestパケットは、当該データパケットの受信を必要している端末が周囲に存在しているかを確認するためのデジタル信号である。
【0082】
Requestパケットを受信した端末は、既にデータパケットを受信しているときは応答しないが、未だデータパケットを受信していないときはreply信号を送信する。reply信号は、当該データパケットの受信を必要としていることを意味する電力値を検出するための信号である。言い換えると、reply信号は、デジタル信号には限定されず、有るか無いかを意味する信号である。
【0083】
Requestパケットを送信した端末は、一定電力以上のreply信号を受信したときにのみ、データパケットをブロードキャストする。
【0084】
図1の通信システムでは各端末は、データパケットを送信した端末との距離を判断する機能(装置)を備えることができる。図11においてすでに説明したように、本実施例では、各端末は、データパケットを受け取った場合において、距離が遠いほど確率的に短くなるような(短く成るべく)待ち時間を設定する。また、図1の通信システムでは各端末は、他の端末が送信するRequestパケットの受信電力をモニタする装置(機能)を備えることができる。データパケットを保有している各端末は、他の端末が送信したRequestパケットの受信電力の大きさが大きいときは確率的に長くなるような待ち時間を設定し、他の端末が送信したRequestパケットの大きさが小さいときは確率的に短くなるような待ち時間を設定することができる。
【0085】
さらに、図1の通信システムでは各端末はデータパケットの通信単位ごとに、その端末の送信が役立ったか否かを判断する装置(機能)を備えることができる。各端末は、ブロードキャストをしたときは判断の指標を増加させ、しなかったときは減少させる。
そして、判断の指標が高いときに確率的に短くなるような(短く成るべく)待ち時間を設定し、判断の指標が低いときに確率的に長くなるような待ち時間を設定することができる。
【0086】
図1の通信システムでは、図13において説明したように、端末のうち2つの端末がダイバーシチ送信における2つのアンテナとして機能するように構成できる。この場合、Requestパケットを送信した端末と、他の端末とが協調してダイバーシチ送信を行ったときは、当該他の端末はRequestパケットを送信しない。
【0087】
図1の通信システムでは、図15において説明したように(図15の上段)、各端末は、複数のRequestパケットを同時受信したときは、reply信号を送信せずに、当該reply信号に割り当てられている期間が経過した後に、Requestパケットの再送要求を各端末に送信するように構成できる。この場合には、Requestパケットの再送要求を受信した各端末は、Requestパケットを再送する。
【0088】
また、図15において説明したように(図15の下段)、各端末は、複数のRequestパケットを同時受信したときは、reply信号を送信せずに、Requestパケットの再送要求を各端末に送信するように構成できる。この場合には、Requestパケットの再送要求を受信した各端末は、当該再送要求をRequestパケットとは符号分割された系列で送信する。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本実施形態によれば、マルチホップ通信においてデータパケットをブロードキャストする際に、RTS/CTS方式のようなブロードキャストを行う。CSMA/CA方式を用いてキャリアセンスを行いパケットの競合を回避し、Requestパケットをブロードキャストし、reply信号との交換を行い、データパケットを送信する。これにより、冗長なブロードキャストを削減し、短時間でより効率よく遠方まで送信できる。
【0090】
災害時など、アドホックネットワークを用いて緊急情報を含むデータをブロードキャスト送信する場合であっても、本発明を用いれば各端末がデータパケットを確実に効率よく受信することができ、重要な情報の送受信や安否確認などを行うことができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1 本発明の一実施形態に係る通信端末の概略構成を示すブロック図である。
図2 同上の実施形態における端末source,A~Dの空間配置図である。
図3 同上の実施形態における、データパケットを受信する動作を示すフローチャートである。
図4 同上の実施形態における、データパケットを受信する動作を示すタイムチャートである。
図5 同上の実施形態における、データパケットを中継送信するときの端末Aの動作を示すフローチャートである。
図6 同上の実施形態における、データパケットを中継送信するときの端末Aの動作を示すタイムチャートである。
図7 同上の実施形態における、データパケットを中継送信するときの端末Bの動作を示すタイムチャートである。
図8 計算機シミュレーションによるCSMA/CAでの端末配置及び動作例である。
図9 計算機シミュレーションによる本発明での端末配置及び動作例である。
図10 計算機シミュレーションによる(a)パケット生存時間とパケット遅延、(b)パケットの到達率、(c)データ送信率を示すグラフである。
図11 受信SNRによる送信優先制御を行う際の概要を示す図である。
図12 受信SNRによる送信優先制御の動作を示すフローチャートである。
図13 協調ダイバーシチ送信を行う際の(a)端末配置図、(b)タイムチャートである。
図14 Requestパケット重複通知を行う際の概要を示す図である。
図15 Requestパケット重複通知を行う際の、(a)スロット分割方式、(b)符号分割方式のタイムチャートである。
図16 Requestパケット受信SNRによるCW延長の概要を示す図である。
図17 本発明の通信システムにおける基本動作の説明図である。
図18 従来のCSMA/CA方式による通信方法の概要を示す図である。
図19 従来のRTS/CTS方式による通信方法の概要を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
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【図18】
17
【図19】
18