TOP > 国内特許検索 > 通信装置、移動体通信システム及び通信方法 > 明細書

明細書 :通信装置、移動体通信システム及び通信方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5092115号 (P5092115)
公開番号 特開2009-296456 (P2009-296456A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月5日(2012.12.5)
公開日 平成21年12月17日(2009.12.17)
発明の名称または考案の名称 通信装置、移動体通信システム及び通信方法
国際特許分類 H04W  56/00        (2009.01)
H04W  84/18        (2009.01)
H04W   4/04        (2009.01)
FI H04Q 7/00 462
H04Q 7/00 633
H04Q 7/00 108
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2008-149626 (P2008-149626)
出願日 平成20年6月6日(2008.6.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年12月11日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報 Vol.107 No.393」に発表
審査請求日 平成23年5月16日(2011.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】田中 久陽
【氏名】篠原 健太
個別代理人の代理人 【識別番号】100122884、【弁理士】、【氏名又は名称】角田 芳末
【識別番号】100133824、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 仁恭
審査官 【審査官】桑江 晃
参考文献・文献 特開2007-104621(JP,A)
特開2008-219526(JP,A)
調査した分野 H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/26
特許請求の範囲 【請求項1】
アンテナと、
通信可能範囲にある複数の端末から前記アンテナを介して電波を受信する受信部と、
前記通信可能範囲にある前記複数の端末に対し前記アンテナを介して電波を送信する送信部と、
前記受信部で受信した受信電波と前記送信部から送信した送信電波との位相差を検出する位相検出部と、
前記位相検出部から得られる前記位相差を記憶するメモリと、
前記メモリに記憶されている複数の前記位相差の平均を算出する平均算出部と、
前記メモリに記憶されている複数の前記位相差の分散を算出する分散算出部と、
前記平均算出部から得られる前記平均値が所定の第一閾値以下で且つ前記分散算出部から得られる前記分散値が所定の第二閾値以上であることを検出したときに、前記送信部の電波送信動作を停止する制御部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記送信部の前記電波送信動作の停止時に、前記平均算出部から得られる前記平均値が所定の第一閾値より大きい且つ前記分散算出部から得られる前記分散値が所定の第二閾値未満であることを検出すると、所定の時間後に前記電波送信動作の停止を解除する請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
更に、前記メモリに記憶されている複数の前記位相差に応じて、前記複数の端末のグループ分けを行なうグループ設定部と
前記グループ設定部で分けられたグループの数を算出するグループ数算出部と、を備え、
前記制御部は、前記平均算出部から得られる前記平均値が所定の第一閾値以下且つ前記分散算出部から得られる前記分散値が所定の第二閾値以上又は前記グループ数算出部から得られる前記グループの数が所定の第三閾値異常であることを検出して前記送信部の電波送信動作を停止する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
アンテナと、通信可能範囲にある複数の端末から前記アンテナを介して電波を受信する受信部と、前記通信可能範囲にある前記複数の端末に対し前記アンテナを介して電波を送信する送信部と、前記受信部で受信した受信電波と前記送信部から送信した送信電波との位相差を検出する位相検出部と、前記位相検出部から得られる前記位相差を記憶するメモリと、前記メモリに記憶されている複数の前記位相差の平均を算出する平均算出部と、前記メモリに記憶されている複数の前記位相差の分散を算出する分散算出部と、前記平均算出部から得られる前記平均値が所定の第一閾値以下で且つ前記分散算出部から得られる前記分散値が所定の第二閾値以上であることを検出したときに、前記送信部の電波送信動作を停止する制御部と、を有する第一通信部を備える第一車両と、
前記第一通信部と等しい構成であり、前記第一通信部と無線通信を行う第二通信部を備える第二車両と
よりなる移動体通信システム。
【請求項5】
通信可能範囲にある複数の端末からアンテナを介して電波を受信するステップと、
前記通信可能範囲にある前記複数の端末に対し前記アンテナを介して電波を送信するステップと、
受信した受信電波と送信した送信電波との位相差を検出し、この検出した位相差を記憶するステップと、
記憶されている複数の位相差の平均値を算出するステップと、
記憶されている複数の位相差の分散を算出するステップと、
算出される平均値が所定の第一閾値以下で、且つ算出される前記分散値が所定の第二閾値以上であることを検出して電波送信動作を停止するステップと
を備える通信方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、通信の同期の基準となる基地局を持たずとも複数の通信装置間の通信を同期させることができる通信装置、移動体通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アドホック・センサネットワークにおいて、各端末のローカルな時刻を互いに同期しネットワークレベルで一つの共通したタイミングを維持することはタイミング同期と呼ばれている。特に、ネットワークにおいてTDMA(時分割多元接続:Time Division Multiple Access)を用いる場合や、各端末がパワーセーブモードを用いて同時にオン・オフ制御を行なう際、このタイミング同期が必須となる。
【0003】
このようなタイミング同期の研究動向として、非特許文献1に記載されるような同期アルゴリズムが提案されている。この同期アルゴリズムは車車間通信における複数の車群間のタイミング同期を主な目的とするものであり、このタイミング同期プロセスによれば、複数の車群間の安定した同期状態が維持されるとされている。
【0004】
図6は、多数の自動車が一つの道路上を通行する様子を示している。図6に示す各自動車は、通信機能を有しており、ある通信範囲以内に存在する他の自動車と相互に通信可能な通信端末である。
【0005】
ここで、ある端末と通信可能な1台以上の通信端末を1つの集合としてみたとき、その集合に属する1台以上の通信端末と通信可能な端末はその集合に含めるようにする。ここでは、この集合のことを端末群と定義する。例えば、図6ではA、B、C、Dの4つの端末群が存在している。このような環境において、TDMA(時分割多元接続)方式により通信を行なう通信システムを構築するためには、各端末群は、自端末群に属するすべての通信端末を同期させる通信同期方法が必要である。
【0006】
また、図6に示すような環境では、端末が移動しているため、端末あるいは端末群の融合・分離が頻繁におこることが予想される。例えば、図6の場合、端末群BとCは分離した直後であり、この後端末群Bは端末群Aと、端末群Cは端末群Dと融合していくことが想像できる。そのため、同期状態が崩れにくい通信同期手法であることが必要となる。
【0007】
図6に示す端末群A~Dの各端末は、データ送信後、1フレームの間、他の複数の通信端末の送信データを受信し、送信タイミングを観測することにより次の送信タイミングを得る。そして、複数の通信端末からの送信データの相加平均を利用することにより自端末の次の送信タイミングを調整するようにしている。これにより、基準局を必要とすることなく、通信端末間で通信の衝突を起こさず端末群の同期を取ることができるのである。特許文献1には、上述の通信同期方法が示されている。

【特許文献1】特開2008-22307号公報
【非特許文献1】今井、鈴木「タイミング同期の自立分散制御に関する検討」信学技法、USN2007-13,pp67-71,May 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に開示された技術では、各端末のタイミングが進行波のように平面上に一定のズレを生じながら安定に持続するモードロック状態と呼ばれる「局所解」が生じることが判明している。このモードロック状態が生じている端末群を概念的に示したのが図7である。モードロック状態とは、ある特定の少数端末を中心としてその周りに位置する端末の同期タイミングが、均等な勾配を保ちながら回転波のように進行する状態のことであり、非常に強固な構造であることが知られている。そのため、モードロック状態の発生を回避する手法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)しかし非特許文献1に記載の提案では、モードロック状態がある割合で消滅し、その結果所望の完全同期状態が得られる場合があるが、その状態は不確実なことが判明している。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、モードロック状態の発生をより効果的に抑え、確実に解消させる通信装置、移動体通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の通信装置は、アンテナと、このアンテナを介して通信可能範囲にある複数の端末から電波を受信する受信部と、同じくアンテナを介して通信可能範囲にある複数の端末に対し電波を送信する送信部と、受信部で受信した受信電波と送信部から送信した送信電波との位相差を検出する位相検出部と、位相検出部から得られる位相差を記憶するメモリと、メモリに記憶されている複数の位相差の平均を算出する平均算出部と、メモリに記憶されている複数の位相差の分散を算出する分散算出部と、平均算出部から得られる平均値が所定の第一閾値以下で且つ分散算出部から得られる分散値が所定の第二閾値以上であることを検出したときに、送信部の電波送信動作を停止する制御部と、を備えている。
【0011】
また、本発明の好ましい形態としては、上記の制御部は、送信部の電波送信動作の停止時に、平均算出部から得られる平均値が所定の第一閾値より大きく、且つ分散算出部から得られる分散値が所定の第二閾値未満であることを検出すると、所定の時間後に電波送信動作の停止を解除するようにする。
更に、本発明の好ましい形態として、メモリに記憶されている複数の位相差に応じて、複数の端末のグループ分けを行なうグループ設定部が設けられ、このグループ設定部で分けられたグループの数を算出する。そして、上記制御部は、平均算出部から得られる平均値が所定の第一閾値以下であり、且つ分散算出部から得られる分散値が所定の第二閾値以上又は算出したグループの数が所定の第三閾値以上であることを検出して送信部の電波送信動作を停止するようにしている。
【0012】
また、本発明の通信方法は、通信可能範囲にある複数の端末からアンテナを介して電波を受信するステップと、この通信可能範囲にある複数の端末に対しアンテナを介して電波を送信するステップと、受信した受信電波と送信した送信電波との位相差を検出し、この検出した位相差を記憶するステップと、記憶されている複数の位相差の平均値を算出するステップと、記憶されている複数の位相差の分散を算出するステップと、この算出される平均値が所定の第一閾値以下であって、且つ算出される分散値が所定の第二閾値以上であることを検出して電波送信動作を停止するステップと、を含んでいる。
【0013】
上述した通信装置、移動体通信システム及び通信方法では、モードロックのコアになると電波の送信を禁止し、モードロックのコアから外れると所定の期間後に電波の送信を行なうことで、モードロック状態を消滅させることができるようにしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モードロック状態からでも完全同期状態を得ることのできる、通信装置、移動体通信システム及び通信方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
本発明の通信装置及びこの通信装置を用いた通信同期方法の仕組みについて、図1のブロック構成図と、図2及び図3のフローチャートを基に説明する。
図1は、本実施形態例である通信装置のブロック構成図である。図1に示すように、本例の通信装置100は、無線用のアンテナ101を備え、このアンテナ101は、切換えスイッチ102を介して、受信部103と送信部104に接続されている。受信部103は、通信可能範囲にある複数の端末から電波を受信し、送信部104は、通信可能範囲にある複数の端末に対して電波を送信する。
【0017】
また、受信部103と送信部104は、位相検出部105及びずらし量取得部120に接続されている。
【0018】
位相差検出部105は、クロック発生器108から出力されるパルスのタイミングと、受信部103が送信電波を受信するタイミングとの差を位相差として検出する。クロック発生器108は、後述する較正部106からの較正出力に応じたクロックを発振する発振器であり、通信装置100が電波送信を行なうタイミングに同期したクロックを発振する発振器である。具体的には、位相検出部105において、自局に近接する、受信可能な端末から電波が送信されるタイミングと、通信装置100が電波送信を行なうタイミングに同期したクロックとの位相差を検出する。このような位相差は受信可能なすべての端末のそれぞれについて検出される。
【0019】
ずらし量取得部120は、受信部103で受信する電波のパケットに含まれる情報である、後述するずらし量を取得する。このずらし量は受信可能な端末のそれぞれについて取得される。
【0020】
位相差検出部105及びずらし量取得部120から得られた位相差及びずらし量の情報は、加算器121で加算された後、メモリ107に供給される。このメモリ107には、位相差検出部105で複数の各端末に対して検出された位相差及びずらし量取得部120で複数の各端末に対して取得されたずらし量を加算した値である、いわゆるタイミング誤差が記憶される。タイミング誤差とは、クロック発生器108から出力されるパルスのタイミングと、自局に近接する受信可能な各端末が次に電波送信を行なうと予測されるタイミングとの差のことである。
【0021】
メモリ107は、平均算出部109と、分散算出部110と、グループ設定部111に接続されている。まず、平均算出部109では、メモリ107に記憶されている複数の端末毎に算出されるタイミング誤差の平均値が算出される。そして、このタイミング誤差の平均値は比較器112で所定の閾値aと比較される。閾値aは、受信電波の周期の8%の値とされる。つまり、比較器112は受信電波の一周期の8%以上の誤差を検出したとき、出力を発生する。
【0022】
また、平均算出部109は較正部106に接続されている。較正部106は、平均算出部109から出力される、タイミング誤差の平均値に基づいた較正出力を生成し、当該較正出力をクロック発生器108に供給する。
【0023】
また、分散算出部110は、メモリ107に記憶されている複数のタイミング誤差の分散を算出する。そして、この分散は第二比較器113で所定の閾値bと比較され、閾値bを超えたときに、第二比較器113が出力を発生する。なお、閾値bを計算する式を以下に示す。
【0024】
【数1】
JP0005092115B2_000002t.gif

【0025】
更に、メモリ107はグループ設定部111と接続され、ここで、メモリ107に記憶されている複数の相差に応じて、複数の端末のグループ分けが行われる。そして、このグループ設定部111でグループ分けされ、グループ数算出部114においてグループ分けされたグループ数が算出される。
【0026】
そして、グループ数算出部114は第三比較器115で所定の閾値(例えば、グループ数100)と比較され、閾値100以上の時に第三比較器115から出力が得られる。
更に、第二比較器113と第三比較器115の出力はOR回路116に加えられ、このOR回路116の出力はAND回路117に加えられる。そしてAND回路117において、第一比較器112の出力との論理積がとられ、この出力が制御部118に送られる。
制御部118は、送受信切換えスイッチ102と送信部104の送信制御119を制御する。すなわち、制御部118は、平均算出部109から得られる平均値が所定の第一閾値a以下で、かつ分散算出部110から得られる分散値が所定の第二閾値σ以上又はグループ数算出部114から得られるグループの数が所定の第三閾値(例えば100)以上である場合に、送信制御スイッチ119をオフ状態として送信部104からの電波送信動作を停止するようにする。
【0027】
さらに、制御部118はAND回路117の出力の切り替えのタイミングに基づいて送受信切換えスイッチ102を制御することで、受信可能な各端末からの送信電波を受信するタイミングの変更を行う。
【0028】
図2は、複数の通信端末が通信しているグループに、まだ他の通信端末と通信を開始していないある通信端末(以下通信端末X)が新規に加入する方法に関するフローチャートであり、図3は、すでに他の複数の通信端末の通信に通信端末Xが参加している場合に、通信を同期させる方法に関するフローチャートである。
【0029】
まず、図2のフローチャートに基づいて、通信端末(以下通信端末X)が新規に加入する方法について説明する。
通信に参加したい通信端末Xは、ある時点から1フレームの間、他の複数の受信しうるすべての通信端末の送信データを受信し、それらの送信タイミングとずらし量Δを測定する(ステップS10)。
次に、このずらし量Δを用いて送信タイミングを補正し、1フレーム後の他の受信しうるすべての通信端末の送信タイミングを予測する(ステップS12)。
【0030】
そして、予測される送信タイミングから、空きスロット(送信間隔が1スロット長よりも長い区間)を特定し(ステップS14)、この特定した空きスロットにおいてデータを送信、つまり、通信に参加する。このとき、送信データにずらし量Δ0 =0という情報を含ませる(ステップS16)。その後、図2のステップS20(A)へ移行する。
【0031】
次に、図3に示すフローチャートに基づいて、複数の通信端末の通信に新たな通信端末Xが参加する場合の通信を同期させる方法について説明する。
まず、通信端末Xは、データの送信後、1フレームの間、他の複数の受信しうるすべての通信端末の送信データを受信し、それらの送信タイミングとずらし量Δを測定する(ステップS20)。
【0032】
その後、ずらし量Δと、通信端末X自身のずらし量Δを用いてそれらの送信タイミングを補正し、1フレーム後の他の複数の受信しうるすべての通信端末の送信タイミングを予測する(ステップS22)。
【0033】
次に、予測される送信タイミングから、通信端末X自身のずらし量Δi+1を求める(ステップS24)。そして、ステップS22で予測した送信タイミングの分布から、ネットワークがモードロック状態なのかどうかを判定する(ステップS26)。
【0034】
ステップS26でモードロック状態であると判定された場合は、送信タイミングをΔiずらすが、周囲に自身の送信タイミングを通知しない(ステップS30)。一方、ステップS26でモードロック状態でないと判定した場合、ずらし量Δ分ずらしてデータを送信する。
このとき、送信データにずらし量Δi+1の情報を含ませるようにする(ステップS28)。続いて、iにi+1を代入し、Δi にΔi+1の値を代入して(ステップS32)、ステップS20へ戻る。
【0035】
次に、ステップS12及びステップS22における送信タイミングの補正と、ステップS24でのずらし量の求め方について、詳しく説明する。
【0036】
まず、ステップS10及びステップS20での送信タイミング測定データから、ずらし量を求める通信端末の1スロット長を基準として、他の通信端末が1スロット長のどのタイミングで送信したかについて分布を調べ、自己のずらし量と、他の通信端末のずらし量から送信タイミングを補正する。例えば、ある通信端末Yの送信タイミングが0.4スロット長で、通信端末Yのずらし量が0.1スロット長であれば、補正された送信タイミングは0.5スロット長となる。
【0037】
次に、補正後の送信タイミングから、横軸を時間、縦軸を頻度としてヒストグラムを作成する。このヒストグラムの最も頻度の大きいタイミングをずらし量とする。このようにずらし量を選ぶと、各通信端末のずらし量の和が小さくなるため効率よく同期することができる。最も頻度の大きいタイミングが複数ある場合には、その中で最もずらし量の短くなるものを選ぶ。また、ずらし量が1/2スロット長以下であれば、ずらし量だけ送信タイミングを遅らせ、ずらし量が1/2スロット長より大きければ、1スロット長からずらし量を引いた値だけ送信タイミングを早めるものとする。
【0038】
次に、ステップS26でのモードロック状態の判定方法について詳しく説明する。ステップS24で求めたずらし量Δi+1がある適当なしきい値よりも小さく、かつ、ステップS22で求めた予測したすべての送信タイミングのばらつき度が、ある適当なしきい値よりも大きい場合、端末Xは自身が参加しているネットワークがモードロック状態にあると判定する。上記の条件を満たさない場合、モードロック状態ではないと判定する。ここでいうばらつき度は、分散を利用してもよいし、同期度や送信タイミングが大きく離れている端末のデータをいくつ受信するかといった情報を利用してもよい。
【0039】
また、各端末は自身が参加するネットワークがモードロック状態かどうかの情報を保持し、一度モードロック状態と判定した場合、その後一定フレーム時間の間はモードロック状態であると判定し続ける。
【0040】
ステップS30での自身の送信タイミングを通知しない方法としては、そのフレームでのデータ送信をとりやめる方法や、このデータの送信タイミングをステップS24におけるずらし量の計算に含めないという情報をデータに含めて送信する方法などが考えられる。
【0041】
図2及び図3のフローチャートに示す方法によると、衝突を起こすことなく通信を開始することができ、ネットワークが構築され、また、通信の同期をとることができる。
【0042】
次に、本発明の実施形態例の通信装置100及びそれを用いた通信同期方法の性能を評価するために、シミュレーションを行った。図4及び図5は、共に本実施形態例のシミュレーション結果と従来技術のシミュレーション結果を比較して示したものである。
【0043】
これまでのシミュレーションにより、端末の移動がある場合でさえモードロック状態が持続することが判明しているので、ここでは端末移動のタイムスケールがタイミング同期の収束のタイムスケールより充分長い(すなわちタイミング同期の収束が比較的早い)場合を想定し、そこでモードロック状態の解消プロセスを検証している。
ここで、端末の移動を考慮したとしても、モードロック状態の解消を促進することこそあれ抑制することは考えにくいので、以上の想定はモードロック状態解消手法の動作を検証するうえで理にかなっていると考えられる。
【0044】
そこでまず、端末を32×32の格子状に配置し、その台数を1024台とした。また、非特許文献1のシミュレーションに倣い、すべての端末は初期状態では一切の通信を行なわず、100フレーム時間以内に順次ランダムに起動し、通信に参加するものとしている。
ここで、各端末の初期の通信タイミングをランダムに設定し、各端末は図1及び図2のフローチャートで説明した動作を行なうものとした。また、簡単のためタイミングビーコン同士のコリジョンの効果は無視できるものとして、各端末は1フレーム時間に1度、必ず通信範囲の全端末にタイミング情報を伝えることが可能であるとした。各端末の通信範囲としては、その端末を中心とする周辺端末数が20、24台の2通りを想定している。つまり、時分割多元接続を行なう際に、1フレーム内に設定されるスロット数は上記の周辺端末数に対し十分な数あるものとした。
【0045】
そして、簡単のためデータパケット長はすべて等しいとし、ガード時間はスロット長の8%としている。以上の条件の下で、提案手法の性能評価を行なったのが図4、図5である。図4は通信範囲が20台、図5は24台の時の結果である。評価の指標である同期度σ(degree of synchronization)を計算する式を以下に示す。
【0046】
【数2】
JP0005092115B2_000003t.gif

【0047】
σ=1は完全同期を表わし、逆に、σ=0は、すべての端末のタイミングが均一に分布した状態を表す(Nは端末群を構成する端末数を表わす)。一般に、モードロック状態においては、タイミングが広く分布しているために、σは0に近い値を持つ。
【0048】
図4及び図5とも、1000回試行したときに、500フレームが経過した時点で、同期度を横軸にとり、当該同期度に対応する試行の割合、つまり同期がとれない割合を頻度(%)で示した。比較の対象として、(i)モードロック状態の解消を行なわない同期手法(従来2)、さらに(ii)非特許文献1及び特許文献1のアイデアを利用した通信同期手法(従来1)の結果を同時に図示している。
図4、図5において、図中の小さな枠で囲んだ部分は、縦軸に示す頻度のスケールの最大値を10%に拡大して示したものである。
【0049】
図4、図5から分かるように、本発明の通信装置では100%に近い確率で完全同期が得られているのに対し、従来の2つの方法では、同期がとれない場合がある程度の確率で発生することが確認される。
なお、図4の場合(通信範囲が20台)は、本例の提案でも一部同期がとれないことが観測されたが、図5の場合(通信範囲が24台)では、同期がとれない状態が0となった。つまり、完全同期が実現できているといえる。
【0050】
なお、本実施形態の通信置を車両に搭載することにより、車車間の移動体通信を常時快適に行うことができる。つまり、運転手は、例えば自分の運転する車両に隣接している車両との距離を正確に知ることができるようになる。これにより、車両を運転する際の安全性を確実に向上させる、という効果がある。
【0051】
以上、本発明の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信装置のブロック構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、通信を開始していないある特定の通信端末が新規に加入する方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る、他の複数の通信端末の通信にある特定の通信端末が参加している場合の通信を同期させる方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態例のシミュレーション結果(通信範囲が20台)と従来技術のシミュレーション結果を比較して示した図である。
【図5】本発明の一実施形態例のシミュレーション結果(通信範囲が24台)と従来技術のシミュレーション結果を比較して示した図である。
【図6】通信可能な範囲にある複数の端末を群として、多数の自動車が一つの道路上を通行する様子を示した図である。
【図7】従来技術におけるモードロック状態が生じている端末群を概念的に示した図である。
【符号の説明】
【0053】
100…通信装置、101…アンテナ、102…送受信切換えスイッチ、103…受信部、104…送信部、105…位相検出部、106…較正部、107…メモリ、108…クロック発生器、109…平均算出部、110…分散算出部、111…グループ設定部、112…第一比較器、113…第二セパレータ、114…グループ算出部、115…第三比較器、116…OR回路、117…AND回路、118…制御部、119…送信制御スイッチ、120…ずらし量取得部、121…加算器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6