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明細書 :通信装置及び通信タイミング同期方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5382576号 (P5382576)
登録日 平成25年10月11日(2013.10.11)
発行日 平成26年1月8日(2014.1.8)
発明の名称または考案の名称 通信装置及び通信タイミング同期方法
国際特許分類 H04W  56/00        (2009.01)
H04J   3/06        (2006.01)
H04L   7/00        (2006.01)
FI H04W 56/00 130
H04J 3/06 A
H04L 7/00 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2009-098353 (P2009-098353)
出願日 平成21年4月14日(2009.4.14)
審査請求日 平成24年2月22日(2012.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】田中 久陽
【氏名】篠原 健太
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【弁理士】、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
特許請求の範囲 【請求項1】
近隣の他の通信装置との間で双方向に第1の無線信号の送信及び受信を行う通信装置において、
通信タイミングを管理しているタイミング管理部と、
前記第1の無線信号の受信処理を行う無線信号受信部と、
前記無線信号受信部で受信した第1の無線信号に含まれる時刻又はタイミングの情報を平均して得た情報により、前記タイミング管理部が管理する通信タイミングを補正するタイミング補正部と、
外部から送信される時刻情報又はタイミング情報が含まれる第2の無線信号を受信する時刻情報又はタイミング情報受信部と、
第1の無線信号の送信を行う送信部と、
前記送信部から送信される第1の無線信号として、前記時刻情報又はタイミング情報受信部で前記第2の無線信号が受信できた場合に、その受信した第2の無線信号より取得した時刻情報又はタイミング情報を含ませ、前記第2の無線信号が受信できない場合に、前記タイミング管理部で管理された通信タイミングの情報を含ませる制御部とを備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の通信装置において、
前記送信部から送信させる第1の無線信号に含ませる、前記タイミング管理部で管理されたタイミングの情報は、前記タイミング管理部が管理するタイミングと前記無線信号受信部が受信した第1の無線信号の受信タイミングとのずらし量に、受信した第1の無線信号に含まれるずらし量情報で示されるずらし量を加算した時間の情報であることを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の通信装置において、
前記時刻情報又はタイミング情報受信部が受信する第2の無線信号は、測位用の時刻情報が含まれる無線信号であることを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項3記載の通信装置において、
前記制御部は、前記第2の無線信号に含まれる測位用の時刻情報より正確な時刻情報が受信できてから、予め決められた一定期間だけ、前記送信部が送信させる第1の無線信号に受信した時刻情報を含ませ、前記一定期間経過後に、前記タイミング管理部で管理されたタイミングについての情報を第1の無線信号に含ませるように切替えることを特徴とする通信装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の通信装置において、
当該通信装置は車両に搭載された通信装置であり、
複数の車両間で自律分散型TDMA方式で通信を行うことを特徴とする通信装置。
【請求項6】
近隣の複数台の通信装置で双方向に第1の無線信号の送信及び受信を行う場合に適用される通信タイミング同期方法において、
自らの通信装置内での通信タイミングを管理し、
他の通信装置から送信された第1の無線信号を受信して取得した時刻又はタイミングの情報を平均して得た情報により、前記管理している通信タイミングを補正し、
前記第1の無線信号とは別の、外部から送信される時刻情報又はタイミング情報が含まれる第2の無線信号を受信し、
前記第2の無線信号を受信できた場合に、その受信した第2の無線信号より取得した時刻情報又はタイミング情報を、他の通信装置に送信する第1の無線信号に含ませ、前記第2の無線信号が受信できない場合に、前記管理している通信タイミングの情報を、他の通信装置に送信する第1の無線信号に含ませることを特徴とする通信タイミング同期方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車などの車両間で通信を行うのに適用して好適な通信装置、及びその通信装置に適用される通信タイミング同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両どうしの間で無線通信(以下車車間通信と称する)を行うようにして、各車両の走行状態などを近隣の車両とデータ伝送して、交通事故防止などを目的とした安全運転支援システムを構築することが提案され、各種実験が行われている。
【0003】
車車間通信を行う場合の通信方式としては、例えば、無線LANなどに適用されているCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式を適用することが考えられる。このCSMA方式では、各車両の通信装置で、用意された伝送チャンネルの状態を一定期間モニタして、通信中であると判断した場合には送信を行わず、通信が行われていないと判断したとき、パケットの送信を行う方式である。このCSMA方式を車車間通信に適用した場合には、比較的混雑していない道路を走行中の場合には、近隣の車両の台数が限られているため、比較的良好に通信が可能である。
【0004】
しかしながら、CSMA方式では、自らの通信装置と直接無線通信ができない隠れ端末の問題や、制御メッセージの伝送によるトラヒックの増大による通信品質の低下などの問題がある。このため、車車間通信においては、自律分散型TDMA(Time Division Multiple Access)方式が注目されている。この自律分散型TDMA方式では、フレーム周期を定めて、そのフレーム周期内の1つのスロットを使ってパケットの送信を行う方式である。但し、車車間通信の場合には基本的に制御信号などを送信する基地局が存在しない通信であるので、フレーム周期を他の車両の通信装置とどのように同期させるのかが問題になる。
【0005】
図7は、従来の自律分散型タイミング同期手法を適用した通信装置の構成例を示した図である。
図7に基づいて構成を説明すると、この例では、送受信アンテナ101を備え、この送受信アンテナ101が、切替スイッチ102を介して無線受信部103と無線送信部104とに選択的に接続される構成としてある。無線送信部104は、データ生成部112から供給される送信パケットを、クロック発生部111で発生させたクロックに同期させて送信させる。無線受信部103は、受信したパケットをずらし量取得部105に供給すると共に位相差検出部106に供給する。
【0006】
ずらし量取得部105は、受信部103で受信したパケットに含まれる情報である、ずらし量の情報を取得する。このずらし量は、パケットの送信元で付与された情報であり、受信可能な全ての通信装置で取得される。取得されたずらし量の情報は、加算器107に供給する。
【0007】
位相差検出部106は、クロック発生部111から供給されるクロックパルスのタイミングと、受信部103でパケットを受信するタイミングとの位相差を検出する。検出した位相差の情報は加算器107に供給する。
【0008】
加算器107では、ずらし量取得部105で取得したずらし量の情報と、位相差検出部106で取得した位相差の情報とを加算してタイミング誤差情報とし、そのタイミング誤差情報をメモリ108に供給して記憶させる。メモリ108には、複数の各端末(通信装置)から送信されたパケットごとに、位相差検出部106で検出された位相差とずらし量とを加算して得たタイミング誤差情報を記憶させてある。
ここでのタイミング誤差情報とは、クロック発生部111から出力されるパルスのタイミングと、自局に近接した信号を受信可能な各通信装置が次にパケットを送信すると予想されるタイミングとの差の情報である。
【0009】
メモリ108に記憶されたタイミング誤差情報は、平均算出部109に送られる。平均算出部109では、メモリ108に蓄積されている複数の通信装置毎に算出されているタイミング誤差の平均値が算出される。
【0010】
平均算出部109で算出されたタイミング誤差の平均値は、較正部110に送られる。較正部110では、タイミング誤差の平均値に基づいた較正出力を生成し、この較正出力をクロック発生部111及びデータ生成部112に供給する。
【0011】
データ生成部112では、指示された較正出力をタイミング情報として含まれた送信パケットを生成させ、生成された送信パケットを無線送信部104に供給して、無線送信部104に接続された送受信アンテナ101から、近隣の通信装置に対して無線送信させる。無線送信させるタイミングについても、クロック発生部111から指示される。
【0012】
図8のフローチャートは、この通信装置での通信動作を示したものである。このフローチャートは、各通信装置が通信タイミングを周辺の通信装置と同期を確保して、その同期を維持するための動作である。
まず、通信装置は各自の通信の最小単位である一周期の間、周辺の通信装置から送られてくるビーコンやデータパケットなどをもとに周辺装置の通信タイミングを観測する(ステップS1)。この周辺装置の通信タイミングの観測は、平均算出部109での処理に相当する。そして、周辺の通信装置の通信タイミングの分布や平均などの統計値をもとに、自身の通信タイミングを補正する(ステップS2)。この補正処理は、較正部110での処理に相当する。そして、ステップS2において補正した自身の通信タイミングの情報を送信パケットに付加し、周辺の通信装置に対し通知を行なう(ステップS3)。そしてステップS1の処理に戻る。
【0013】
この図8のフローチャートに示す処理をそれぞれの通信装置が行うことで、近隣の通信装置との間で通信タイミングの同期が取れるようになり、同期したタイミングで良好に通信が可能となる。
特許文献1には、このような同期処理を行う通信技術の例についての記載がある。
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】特開2008-22307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図7に示した構成の通信装置で、図8に示したようにタイミング情報を通知しあって同期させることで、例えば近隣の通信装置の台数が少ない場合には、比較的短時間で適正に同期させることが出来る。ところが、実際に車車間通信を行う状態を想定した場合には、例えば混雑した道路を走行しているような場合には、非常に多くの通信装置が近隣に存在することが想定され、そのような場合には、図8のフローチャートに示した処理を行うだけでは、種々の要因から全ての通信装置で完全に同期させるのは困難である。
【0016】
この問題点を解決するための別の同期処理としては、例えばそれぞれの通信装置で、何らかの基準となる時刻情報を受信して、その受信した時刻情報でクロックタイミングを補正して、同期させることが考えられる。例えば、衛星から送信される測位用の時刻情報信号であるGPS(Global Positioning System)信号を受信して、通信装置で設定される通信タイミングを、その受信した測位信号により得られた時刻に同期したタイミングに設定することが考えられる。
【0017】
ところが、現実環境においては様々な要因により、GPS信号で得られる時刻の精度の劣化が発生する。その1つとして挙げられるのが、ビルや森林、トンネルなどの遮蔽物による測位率の低下である。一般にGPS受信機に搭載されている内部時計の精度は高くなく、数十秒間測位ができない状態となった場合、車車間通信で要求される同期精度から大きく外れてしまう。また、GPS信号の精度に関しても常に保証されてはおらず、GPS衛星の配置や天候、さらに車車間通信の場合は移動体環境であるためにフェージングの影響も受けることになり、大幅な時刻精度の劣化が起こりうる。
【0018】
ここで、外部信号による時刻情報を用いたタイミング同期の同期状態の安定性を確認するために、シミュレーションを行なった例について説明する。ここでは、100台の通信装置を一定間隔で格子状に配置し、各通信装置は周辺の12台と通信可能であるとし、初期状態では、全ての通信装置の通信タイミングが同期している状態を想定する。
但し、シミュレーション時の条件として、各通信装置は、内部時計が、1秒あたり6μsの範囲でずれているものとする。そして、ここでは周辺の通信装置のうち1台でも32μs以上のタイミングのずれが生じたとき、その通信装置の同期が外れたとみなす。
【0019】
そのような環境を想定して、シミュレーションを開始させると、通信開始から3秒程度までは、内部時計の精度で全ての通信装置で同期が維持され、100%の通信装置で同期状態となっているが、3秒経過後から徐々に同期が外れだしてしまう。例えば、GPS信号を受信している通信装置であっても、ビル街などの測位率の低い環境においては、8秒経過で、同期状態にある通信装置の割合が30%程度まで低下してしまう。GPS信号のような時刻情報を全く受信していない通信装置の場合には、8秒経過でほぼ100%の通信装置で、同期外れ状態となってしまう。従って、車車間通信のような通信システムでは、外部信号のみでタイミング同期を維持することが困難である。
【0020】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、車両間通信などに適用可能な自律分散型同期通信を行う場合に、各通信装置で迅速に通信タイミングの同期がとれるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、他の通信装置から送信された第1の無線信号に含まれる時刻又はタイミングの情報を平均して得た情報により、自らの通信装置が管理している通信タイミングを補正する。そして、外部から送信される第2の無線信号を受信し、その第2の無線信号から時刻情報又はタイミング情報を取得できた場合に、その受信した時刻情報又はタイミング情報を、他の通信装置に送信する無線信号に含ませる。また、時刻情報が受信できない場合には、自らの通信装置が管理している通信タイミングの情報を、他の通信装置に送信する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、自律分散型TDMA方式のようなタイミング同期を必要とする通信システムにおいて、高速かつ安定な同期状態を実現することができる。特に本発明は、車車間通信のような、通信装置を搭載した車両などの移動が顕著な環境においても安定した効果が見込まれる。また、本発明が使用する外部参照信号により得られる時刻情報又はタイミング情報は、精度がある程度悪くても利用が可能という特徴をもつため、既存の外部信号の利用が可能である。本発明は特にITSにおける交通安全運転システムでの利用が期待されている。また、MIMOにおける基地局間同期などの分野での活用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態による通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるタイミング通知処理例を示したフローチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態によるタイミング設定処理例を示したフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態によるフレーム周期の設定例を示す説明図である。
【図5】無線通信可能な通信装置の配置例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態により同期する通信装置の比率の変化例を示す特性図である。
【図7】従来の通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】従来のタイミング通知処理例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態の例を、図1~図6を参照して説明する。この図1~図6において、従来技術として説明した図1及び図2に対応する部分には同一符号を付す。
本実施の形態においては、自動車などの車両(移動体)に搭載する通信装置としてある。そして、自ら(自局)の通信装置を中心として例えば半径数百メートル程度の範囲内の他の通信装置と双方向に通信を行うものである。通信可能な距離は一例であり、より遠くの通信装置と通信を行う構成でもよい。

【0025】
図1は、本実施の形態の通信装置の構成例を示した図である。
本実施の形態の通信装置は、送受信アンテナ101を備え、この送受信アンテナ101が、切替スイッチ102を介して無線受信部103と無線送信部104とに選択的に接続される構成としてある。無線送信部104は、データ生成部112から供給される送信パケットを、クロック発生部111で発生させたクロックに同期させて送信させる。無線受信部103は、受信したパケットをずらし量取得部105に供給すると共に位相差検出部106に供給する。クロック発生部111は、各部に供給するクロックで、送信や受信などの通信タイミングを管理するタイミング管理部として機能する。

【0026】
ずらし量取得部105は、受信部103で受信したパケット(又はビーコン)に含まれる情報である、ずらし量の情報又は時刻情報を取得する。このずらし量又は時刻情報は、パケットの送信元で付与された情報であり、受信可能な全ての通信装置で取得される。取得されたずらし量の情報又は時刻情報は、加算器107に供給する。

【0027】
位相差検出部106は、クロック発生部111から供給されるクロックパルスのタイミングと、受信部103でパケットを受信するタイミングとの位相差を検出する。検出した位相差の情報は加算器107に供給する。

【0028】
加算器107では、ずらし量取得部105で取得したずらし量又は時刻情報の情報と、位相差検出部106で取得した位相差の情報とを加算してタイミング誤差情報とし、そのタイミング誤差情報をメモリ108に供給して記憶させる。メモリ108には、複数の各端末(通信装置)から送信されたパケットごとに、位相差検出部106で検出された位相差又は時刻情報とずらし量とを加算して得たタイミング誤差情報を記憶させてある。
ここでのタイミング誤差情報とは、クロック発生部111から出力されるパルスのタイミングと、自局に近接した信号を受信可能な各通信装置が次にパケットを送信すると予想されるタイミングとの差の情報である。

【0029】
メモリ108に記憶されたタイミング誤差情報は、平均算出部109に送られる。平均算出部109では、メモリ108に蓄積されている複数の通信装置毎に算出されているタイミング誤差の平均値が算出される。

【0030】
平均算出部109で算出されたタイミング誤差の平均値は、較正部110に送られる。較正部110では、タイミング誤差の平均値に基づいた較正出力を生成し、この較正出力をクロック発生部111に供給する共に、切替スイッチ119を介してデータ生成部112に供給する。切替スイッチ119は、較正部110の出力とメモリ116の時刻情報とを切替えるスイッチであり、その切替制御については後述する。ずらし量取得部105と位相差検出部106と加算器107とメモリ108と平均算出部109と較正部110とは、タイミング補正部として機能し、タイミング管理部であるクロック発生部111が管理するクロックタイミングを補正する処理が行われる。
ここまでの切替スイッチ119を除いた構成については、従来例として図7に示した構成と同じである。

【0031】
そして本実施の形態の通信装置は、外部の時刻情報又はタイミング情報を受信するための時刻情報又はタイミング情報受信部としての構成を備える。図1の構成では、GPS信号を受信する構成としてある。
即ち、GPS信号を受信する受信アンテナ113を備え、その受信アンテナ113が外部信号受信部114に接続してある。外部信号受信部114では、GPS衛星から送信される時間情報を含む測位用の信号であるGPS信号を受信処理する。GPS信号を受信処理する外部信号受信部114は、通常複数チャンネルの信号受信を行う構成としてあり、複数の衛星からのGPS信号の捕捉を行う。外部信号受信部114で受信したGPS信号は、時刻参照部115に供給する。

【0032】
時刻参照部115では、外部信号受信部114で受信した複数の衛星からの時間情報に基づいて、正確な現在時刻を算出して、内部時計の時刻をその算出した時刻とする時刻合わせ処理を行う。そして、時刻参照部115で得られる時刻情報と、取得した瞬間の時刻をメモリ116に記憶させる。

【0033】
そして、時刻参照部115で得られる現在の時刻情報を、切替スイッチ119に供給する。また、メモリ116に記憶された、受信したGPS信号に基づいて正確な時刻を取得した瞬間の時刻と、時刻参照部115で得られる現在時刻とを比較器118に供給し、2秒設定部117で設定された閾値以内かどうか比較する。ここでは、閾値として2秒としてあり、時刻参照部115で得られる現在時刻が、GPS信号に基づいて時刻合わせをした時刻から2秒以内である場合には、切替スイッチ119を、メモリ116の出力側とする。GPS信号に基づいて時刻合わせをした時刻から2秒経過した場合には、切替スイッチ119を、較正部110の出力側とする。

【0034】
切替スイッチ119で選択された出力は、既に説明したようにデータ生成部112に供給して、送信パケットに含ませる。このため、GPS信号に基づいて時刻合わせをした時刻から2秒以内である場合には、メモリ116に格納された現在時刻情報によるタイミング情報が、送信パケットに付加される。また、GPS信号に基づいて時刻合わせをした時刻から2秒経過した以後は、較正部110が出力するタイミング情報が、送信パケットに付加される。このように、切替スイッチ119とその切替え制御を行うための2秒設定部117及び比較器118とで、送信データに含ませるタイミング情報を選択させる制御部として機能する。

【0035】
データ生成部112では、供給されたいずれかのタイミング情報が含まれた送信パケット(又はビーコン)を生成させ、生成された送信パケットを無線送信部104に供給して、無線送信部104に接続された送受信アンテナ101から、近隣の通信装置に対して無線送信させる。無線送信させるタイミングは、クロック発生部111から指示される。

【0036】
図2のフローチャートは、本実施の形態の通信装置での通信動作の原理を示したものである。このフローチャートは、各通信装置が通信タイミングを周辺の通信装置と同期を確保して、その同期を維持するための動作である。
まず、通信装置は各自の通信の最小単位である一周期の間、周辺の通信装置から送られてくるビーコンやデータパケットなどをもとに周辺装置の通信タイミングを観測する(ステップS11)。この周辺装置の通信タイミングの観測は、平均算出部109での処理に相当する。そして、周辺の通信装置の通信タイミングの分布や平均などの統計値をもとに、自身の通信タイミングを補正する(ステップS12)。この補正処理は、較正部110での処理に相当する。

【0037】
そして次に、直近のタイミングで外部信号(ここではGPS信号)を参照したか否か判断する(ステップS13)。この判断は、図1の比較器118での比較処理に相当し、図1の構成例ではGPS信号により現在時刻が取得できてから2秒以内かどうか判断していることになる。ここで、外部信号を参照していない場合(即ち現在時刻が取得できてから2秒以内でない場合)には、ステップS12において補正した自身の通信タイミングの情報を送信パケットに付加し、周辺の通信装置に対し通知を行なう(ステップS14)。そしてステップS11の処理に戻る。
また、ステップS13で、外部信号を参照している場合(即ち現在時刻が取得できてから2秒以内である場合)には、その外部信号の時刻情報を送信パケットに付加し、周辺の通信装置に対し通知を行なう(ステップS15)。そしてステップS11の処理に戻る。

【0038】
この図2のフローチャートから判るように、本実施の形態においては、通信装置での同期合わせのために、外部信号(GPS信号)を直接的に利用してその通信装置でタイミング合わせするのではなく、受信した時刻情報は他の周辺の通信装置に送信して、間接的に利用することを意味している。その結果、外部信号のもつ時刻情報の精度や受信精度の不安定性などを大幅に低減させることを実現している。

【0039】
次に、本実施の形態の例の通信装置での、より具体的な同期処理の動作を、図3のフローチャートを参照して説明する。
本例の通信装置は、自律分散型TDMA方式に無線通信を行う。まず図4を参照して、自律分散型TDMA方式により通信を行う場合のフレーム構成について説明する。
自律分散型TDMA方式では、図4(a)に示すように、1フレーム期間が規定してあり、その1フレーム期間内に所定数のスロットが配置される構成としてある。図4(a)では、その複数のスロットの内で、無線通信に使用されているスロットを斜線を付与して示してあり、それ以外のスロットが空きスロットである。ここでは、例えば各通信装置は、1フレーム内の決められたスロット位置の1つのスロットを使って、毎フレームごとにパケットを送信する。1スロット長は、ここでは1msとする。

【0040】
各通信装置が送信するパケットは、例えは図4(b)に示すように、先頭部分のプリアンブルに続いて、データ部が配置される。車車間通信の場合には、データ部には、自車の現在位置、現在速度、進行方向、ブレーキなどの走行状態情報が付加される。さらに、通信同期処理のための情報として、先に説明したタイミング情報が付加される。このタイミング情報は、プリアンブル部とデータ部のいずれに配置しても良い。

【0041】
このようなフレーム構成で通信が行われることを前提として、各通信装置での具体的な同期処理について、図3のフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートでは、自らの通信装置を通信端末Xと称する。
まず、通信端末Xは、1フレームの間、自身の周辺に位置する複数の他の通信装置の送信データを受信し、それらの送信タイミングとずらし量Δを検出する(ステップS21)。そして、検出されたずらし量Δと、通信装置X自身のずらし量Δとを用いてそれらの送信タイミングを補正し、1フレーム後の他の複数の受信しうるすべての通信端末の送信タイミングを予測する。その予測される送信タイミングから、通信端末X自身の次周期におけるずらし量Δi+1を求める(ステップS22)。

【0042】
次に、直近のタイミングで、外部参照信号を受信出来たかどうかを判定する(ステップS23)。ステップS23で外部参照信号を受信出来たと判定した場合、参照時刻を、スロット長である1msで割った余りの値を基準タイミングとして算出する(ステップS27)。そして、基準タイミングと自身の送信タイミングからずらし量Δを求める(ステップS28)。そして、データパケットを生成する。このとき、送信データにステップS28で求めたずらし量Δを含める(ステップS29)。

【0043】
また、ステップS23で外部参照信号を受信出来なかったと判定した場合には、データパケットを生成する。このとき、送信データにずらし量Δi+1の情報を含ませる(ステップS24)。

【0044】
そして、ステップS24の処理後、又はステップS29の処理後、ステップS25に移り、送信タイミングをΔずらして、データを送信する。さらに、送信タイミングΔにΔi+1の値を代入し、値iにi+1を代入する(ステップS26)。その後、ステップS21へ戻る。

【0045】
次に、図3のフローチャートのステップS22での送信タイミングの補正と、自身の次周期におけるずらし量の求め方について、詳しく説明する。
まず、ステップS21での送信タイミング測定データから、ずらし量を求める通信端末の1スロット長を基準として、他の通信端末が1スロット長のどのタイミングで送信したかについて分布を調べ、自己のずらし量と、他の通信端末のずらし量から送信タイミングを補正する。

【0046】
例えば、ある他の通信端末Yの送信タイミングが0.4スロット長で、通信端末Yのずらし量が0.1スロット長であれば、補正された送信タイミングは0.5スロット長となる。次に、補正後の送信タイミングを相加平均し、周辺端末の平均タイミングを算出する。そして、その平均タイミングを次周期のずらし量Δi+1とする。また、ずらし量が1/2スロット長以下であれば、ずらし量だけ送信タイミングを遅らせ、ずらし量が1/2スロット長より大きければ、1スロット長からずらし量を引いた値だけ送信タイミングを早めるものとする。ここでは相加平均を用いているが、加重平均を用いてもよいし、タイミング分布の最頻値を利用するなどの応用も考えられる。

【0047】
次に、ステップS23において、直近のタイミングで外部参照信号を参照できたかどうかの条件判定について説明する。ここでいう直近とは、外部参照信号を受信することにより時刻情報を最後に取得してから、ステップS23の処理を行なう瞬間までのある短い時間のことをいう。この時間は、その参照信号により得られる時刻情報の正確さや、要求される同期の精度に応じて適切に設定される必要がある。たとえば、GPS信号を外部参照信号として使用し、数十μs程度の同期精度を要求されているときであれば、直近の20フレーム以内と設定する。この時間は、図1の2秒設定部117で設定した時間に相当する。

【0048】
次に、ステップS27からS29までの、外部参照信号を直近のタイミングで参照出来たときの流れについて詳しく説明する。
まず、外部参照信号により得られた時刻についてスロット長で割った余り(mod)をとることによって基準タイミングを求める。たとえば、GPS信号を外部参照信号として取得し、スロット長が1msである場合、GPSにより得られる世界標準時の0:00:00を基準として、1msで割った余りの値を使用すればよい。次に、ここで得た基準タイミングからの現在の時刻におけるタイミングと自身の送信タイミングのずれを元に、ずらし量Δを算出する。たとえば、ある瞬間の送信タイミングが0.2スロット長で、基準タイミングに基づく参照時刻が0.6スロット長であったとき、Δは0.8スロット長とする。そして、データ送信の準備として、データパケットを生成する。このとき、データパケットにここで求めたΔを含めるようにする。

【0049】
以上説明した本実施の形態の通信装置による同期処理による同期性能を評価するために、シミュレーションによる解析を行なった例について、図5及び図6を参照して説明する。
ここでは、図5に示すように、32×32=1024台の通信装置(移動体)を格子状に配置する。各通信装置は近傍の28台の端末と通信が可能と想定する。
そして、ここでは1フレームの長さを100msとし、1フレームのスロット数を400と設定する。そして、周辺端末とのスロットのタイミングのずれの許容誤差をスロット長の12%である±15μsとする。

【0050】
そして、自動車のような移動体環境においてGPS信号を受信して参照することを想定し、GPS信号の参照により得られる時刻の誤差を[-50μs、 50μs]の一様乱数で与える。また、参照の頻度は2秒に1度、そしてビル街などの受信が困難な環境を想定して受信確率を40%とする。また、初期条件として各通信装置のスロットのタイミングをランダムに設定する。また、外部同期信号(GPS信号)はシミュレーション開始から2秒経過後から参照しはじめるものとする。

【0051】
このような条件を設定して、初期条件から開始したときの経過時間を横軸に、周辺の通信装置と同期が得られている通信装置の割合(同期ノード率)を縦軸にとり、プロットした結果を図6に示す。図6において、特性bは本例の送信パケットにGPS信号によるタイミング情報を付加した場合の例であり、特性aはGPS信号の受信を行わない場合の例である。さらに特性cは、受信したGPS信号で、自らの通信装置の同期タイミングを直接修正した場合の例である。
特性aと特性bを比較すると判るように、本実施の形態の例である特性bの場合には、GPS信号の参照開始後2秒で8割以上の通信装置が同期し、4秒程度で完全同期が得られた。これに対して、GPS信号の受信を行わない特性aの場合には、同期している通信装置の割合は4割程度から変化しない。
また、受信したGPS信号で、自らの通信装置の同期タイミングを直接修正した場合には、図6の特性cに示したように、そのときの各通信装置での受信精度に基づいて、同期状態にある通信装置の割合が絶えず変化してしまい、完全同期した状態にはならない。万一完全同期した状態になったとしても、一時的であり、受信したGPS信号で直接自らの通信装置を修正した場合には、同期状態が安定しない。

【0052】
このように本実施の形態の例の場合には、自律分散型TDMA方式で通信を行う場合に、各通信装置が迅速かつ確実に同期できるようになる効果を有する。

【0053】
なお、上述した実施の形態では、車車間通信を行う例について説明したが、その他の用途用の通信装置の同期処理に適用しても良い。例えば、MIMOにおける基地局間同期などに適用しても良い。

【0054】
また、上述した実施の形態では、時刻情報が得られる外部信号として、測位用信号であるGPS信号を使用したが、その他の時刻情報あるいはタイミング情報を使用しても良い。
例えば、地上波デジタル放送信号などの各種放送信号や、電波時計用の標準電波信号などを使用しても良い。また、外部信号そのものは、必ずしも時刻の情報を持つ必要はなく、基準となるタイミングが得られれば良い。具体的には、例えばテレビジョン放送信号の場合、フレーム周期などを示す同期信号が、絶対的なタイミング位置を示す信号である場合に、その同期信号を時刻情報の代わりのタイミング情報として使って、そのタイミング情報から、送信させるパケットに含ませるタイミング情報を生成させるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0055】
101…送受信アンテナ、102…切替スイッチ、103…無線受信部、104…無線送信部、105…ずらし量取得部、106…位相差検出部、107…加算器、108…メモリ、109…平均算出部、110…較正部、111…クロック発生部、112…データ生成部、113…受信アンテナ、114…外部信号受信部、115…時刻参照部、116…メモリ、117…2秒設定部、118…比較器、119…切替スイッチ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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