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明細書 :超低膨張ガラス材料の線膨張係数評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4036268号 (P4036268)
公開番号 特開2006-047196 (P2006-047196A)
登録日 平成19年11月9日(2007.11.9)
発行日 平成20年1月23日(2008.1.23)
公開日 平成18年2月16日(2006.2.16)
発明の名称または考案の名称 超低膨張ガラス材料の線膨張係数評価方法
国際特許分類 G01N  29/06        (2006.01)
FI G01N 29/20 501
請求項の数または発明の数 7
全頁数 32
出願番号 特願2004-231023 (P2004-231023)
出願日 平成16年8月6日(2004.8.6)
審査請求日 平成16年8月11日(2004.8.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】592004404
【氏名又は名称】中央精機株式会社
発明者または考案者 【氏名】櫛引 淳一
【氏名】荒川 元孝
【氏名】大橋 雄二
【氏名】篠崎 行啓
個別代理人の代理人 【識別番号】100066153、【弁理士】、【氏名又は名称】草野 卓
【識別番号】100100642、【弁理士】、【氏名又は名称】稲垣 稔
【識別番号】100128705、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 幸雄
審査官 【審査官】遠藤 孝徳
参考文献・文献 特開平8-136516(JP,A)
特開平11-258216(JP,A)
特開2002-257502(JP,A)
特許第3510201(JP,B2)
特許第3392041(JP,B2)
櫛引淳一、荒川元孝、大橋雄二、岡部亮一,“直線集束ビーム超音波材料解析システムによるガラス材料の評価”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2003年 9月22日,第103巻、第339号,p.1-6
櫛引淳一、荒川元孝、大橋雄二、岡部亮一,“直線集束ビーム超音波材料解析システムによるガラス材料の評価”,超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム論文集,日本,超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム論文委員会,2003年11月12日,第24巻、D-5,p.351-352
調査した分野 G01N 29/00 - 29/52
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
超音波材料特性解析装置で測定した漏洩弾性波特性により超低膨張ガラス材料の線膨張係数を評価する超低膨張ガラス材料の線膨張係数評価方法であり、
(a) 使用超音波周波数帯において、超低膨張ガラス材料の標準試料の縦波の音速と減衰係数、横波の音速と減衰係数、及び密度を測定する工程と、
(b) 上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料に対する第1の漏洩弾性波特性を計算する工程と、
(c) 上記標準試料に対して漏洩弾性波干渉信号V(z)曲線を測定してそのV(z)曲線から第2の漏洩弾性波特性を求める工程と、
(d) 上記工程(b) で計算した上記第1の漏洩弾性波特性と上記工程(c) で上記V(z)曲線から求めた上記第2の漏洩弾性波特性の比を校正係数として求める工程と、
(e) 超低膨張ガラス材料の測定試料に対しV(z)曲線を測定してそのV(z)曲線から第3の漏洩弾性波特性を求める工程と、
(f) 上記測定試料について求めた上記第3の漏洩弾性波特性を上記校正係数で校正する工程と、
(g) 上記超低膨張ガラス試料の線膨張係数と、絶対校正された上記第3の漏洩弾性波特性との関係を求める工程と、
(h) 評価対象の超低膨張ガラス試料に対して第4の漏洩弾性波特性を測定し、上記関係を基にして、線膨張係数を評価する工程と、
を含むことを特徴とする超低膨張ガラス材料の線膨張係数評価方法。
【請求項2】
請求項記載の線膨張係数評価方法において、
上記工程(b) は上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩弾性表面波速度VLSAW(std.calc.)を計算し、その計算結果から対応するV(z)曲線の漏洩弾性表面波の周期成分ΔzLSAW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性の1つとして計算する工程を含み、
上記工程(c) は上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩弾性表面波の周期成分ΔzLSAW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d) は上記漏洩弾性表面波の周期成分の比KZ(LSAW) = ΔzLSAW(std.calc.)/ΔzLSAW(std.meas.)を上記校正係数として求める工程を含み、
上記工程(e) は上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩弾性波の周期成分ΔzLSAW(measured)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は上記測定試料についての周期成分ΔzLSAW(measured)を上記校正係数KZ(LSAW)で校正した周期成分ΔzLSAW(calibrated) = KZ(LSAW)ΔzLSAW(measured)を求め、その校正した周期成分ΔzLSAW(calibrated)から上記測定試料の校正された漏洩弾性表面波速度VLSAW(calibrated)を上記校正された漏洩弾性波特性として計算により求める工程を含むことを特徴とする線膨張係数評価方法。
【請求項3】
請求項記載の線膨張係数評価方法において、
上記工程(b) は更に、上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩擬似縦波速度VLSSCW(std.calc.)を計算し、その計算結果から対応するV(z)曲線の漏洩擬似縦波の周期成分ΔzLSSCW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性の1つとして計算する工程を含み、
上記工程(c) は更に、上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩擬似縦波の周期成分ΔzLSSCW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d) は更に、上記漏洩擬似縦波の周期成分の比KZ(LSSCW) = ΔzLSSCW(std.cal
c.)/ΔzLSSCW(std.meas.)を上記校正係数として求める工程を含み、
上記工程(e) は更に、上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩擬似縦波の周期成分ΔzLSSCW(measured)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は更に、上記測定試料についての周期成分ΔzLSSCW(measured)を上記校正係数KZ(LSSCW)で校正した周期成分ΔzLSSCW(calibrated) =KZ(LSSCW)ΔzLSSCW(measured
)を求め、その校正した周期成分ΔzLSSCW(calibrated)から上記測定試料の校正された漏洩擬似縦波速度VLSSCW(calibrated)を上記校正された漏洩弾性波特性として計算により求める工程を含むことを特徴とする線膨張係数評価方法。
【請求項4】
請求項記載の線膨張係数評価方法において、
上記工程(b) は上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩弾性表面波速度VLSAW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性として計算する工程を含み、
上記工程(c) は上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩弾性表面波速度VLSAW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d)は上記漏洩弾性表面波速度の比KV(LSAW)= VLSAW(std.calc.)/VLSAW(std.me
as.)を上記校正係数として求める工程を含み、
上記工程(e) は上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩弾性表面波速度VLSAW(measured)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は上記測定試料についての漏洩弾性表面波速度VLSAW(measured)を上記校正係数KV(LSAW)で校正した漏洩弾性表面波速度VLSAW(calibrated) =KV(LSAW)VLSAW(measured)を求め、その校正した漏洩弾性表面波速度VLSAW(calibrated)を上記校正された漏洩弾性波特性として計算により求める工程を含むことを特徴とする線膨張係数評価方法。
【請求項5】
請求項記載の線膨張係数評価方法において、
上記工程(b) は更に、上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩擬似縦波速度VLSSCW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性の1つとして計算する工程を含み、
上記工程(c) は更に、上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩擬似縦波速度VLSSCW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d) は更に、上記漏洩擬似縦波速度の比KV(LSSCW) = VLSSCW(std.calc.)/VLSS
CW(std.meas.)を上記校正係数として求める工程を含み、
上記工程(e) は更に、上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩擬似縦波速度VLSSCW(measured)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は更に、上記測定試料についての漏洩擬似縦波速度VLSSCW(measured)を上記校正係数KV(LSSCW)で校正した漏洩擬似縦波速度VLSSCW(calibrated) =KV(LSSCW)VLSSCW(measured)を求め、その校正した漏洩擬似縦波速度VLSSCW(calibrated)を上記校正された漏洩弾性波特性として計算により求める工程を含むことを特徴とする線膨張係数評価方法。
【請求項6】
請求項1記載の線膨張係数評価方法において、上記工程(g) は、評価対象の超低膨張ガラス試料に周期的な脈理が存在する場合、脈理面に対し所望の角度傾いた試料を切り出し、代替えの試料とする工程を含むことを特徴とする線膨張係数評価方法。
【請求項7】
請求項1記載の線膨張係数評価方法において、上記工程(g) は、漏洩弾性波の伝搬減衰が大きい評価対象の場合、より低い超音波周波数を用いて漏洩弾性波特性を測定することを特徴とする線膨張係数評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波材料特性解析装置により測定される漏洩弾性波の伝搬特性、特に位相
速度を用いた超低膨張ガラス材料の線膨張係数評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、次々世代極端紫外線リソグラフィ(Extreme Ultra-Violet Lithography: EUVL)システムの開発が進められている。EUVLシステムの基本要素技術として、EUV光源、非球面光学系、露光装置、多層膜マスク、及びレジストプロセスの5項目が挙げられ、それらの技術開発が平行して進められている。このEUVLシステムの開発において最も根本的で重要な課題は、光学系およびフォトマスクの基体となる超低膨張ガラス素材の開発である。同時に、その材料開発には、その材料特性を正確に把握し解析するための計測・評価技術が不可欠である。
【0003】
EUVLシステムにおいて、光学レンズ材料やマスク基板材料に対してサブ・ナノメーターオーダーでの熱的安定性が要求される。すなわち、所望の温度(例えば、マスク基板において22±3℃)で線膨張係数 (Coefficient of Thermal Expansion: CTE)が±5 ppb/K以下となる超低膨張ガラスが必要となる(非特許文献1)。ここで、0℃での固体の長さをL0、温度T℃での長さをLとすると、線膨張係数は(dL /dT)/ L0によって与えられる。現在、市販されている超低膨張ガラスとして、TiO2-SiO2ガラスとLi2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラスの二種類が挙げられ、従来より、大型天体望遠鏡や半導体製造装置(ステッパー)用のレンズ材料として用いられている。前者のガラスは、SiO2とTiO2の比を調整することにより、後者のガラスは化学組成比に加えて結晶化プロセス(アニーリングの温度と時間)を調整することにより超低膨張係数を実現している(非特許文献1及び非特許文献2)。これらのガラスの中で最も良いグレードのものでも、線膨張係数の仕様は±30 ppb/K(インゴット内分布:±10 ppb/K)(ULE (C-7971/7972), Corning社)、±20 ppb/K(インゴット内分布:±10 ppb/K)(Zerodur, Schott社)となっており、所望の温度において±5 ppb/K以内というEUVLシステム用の超低膨張ガラス仕様としては不十分である。最近、国内外のガラスメーカー各社でEUVLグレードの超低膨張ガラスの試作が行われ始めている。その材料の開発のためには線膨張係数に対して±0.2 ppb/K(±σ, σ:標準偏差)以下の測定精度が必要とされる(非特許文献1)。
【0004】
現在、EUVL用基板の線膨張係数の評価法としていくつかの方法が提案されている。線膨張係数を直接測定する方法として、熱膨張計などを用いた方法がある。最近、レーザーを用いたものが開発されているが、最も良いものでも精度が±5 ppb/Kと不十分である。現在、±1 ppb/Kの精度を目標として開発が進められているが、それ以上の精度向上は望めない。さらに、この方法は特別な形状の試料(例えば、100 mml×6 mmφ)を必要とし、その作製のためには破壊を伴うこと、実際の試料に対しての面分布測定が不可能であることなど、材料評価法、品質管理という点で問題がある。
【0005】
一方、超低膨張ガラスの線膨張係数と他の物理的・化学的特性(超音波速度(非特許文献3)、化学組成比や屈折率(非特許文献1))の間に線形的な関係があることを利用した評価法がある。超音波パルスエコー法を用いた縦波音速測定、蛍光X線分析法、電子線マイクロアナライザ、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法などを用いた化学組成比測定、および光干渉計を用いた屈折率測定などによる線膨張係数の評価では、それぞれ±0.4 ppb/K、±2 ppb/K、±0.023 ppb/Kの精度が達成されている(非特許文献1)。しかし、縦波音速や屈折率の測定による方法は、厚さが100 mmという大きな試料を用いなければこの精度が達成できず、また、厚さ方向の平均値しか得られない。この場合、TiO2-SiO2ガラスにおいて問題となっている周期的な脈理が存在する試料の評価においては、脈理の周期に対応した線膨張係数分布をとらえることができない。また、縦波音速を測定するためには試料の厚さの測定も行わなければならず、評価に非常に手間がかかる。さらに、EUVL用のマスク基板の大きさは152 mm×152 mm×6.35 mmtであり、これに直接適用した場合、その厚さにより精度が著しく(約18倍)低下する。
【0006】
EUVL用超低膨張ガラス基板の評価技術として、線膨張係数に対して測定精度が高いこと、空間分解能が高いことはもちろん、実際、EUVLシステムで使用される試料形状のものを非破壊的に評価できること、さらに光学系が反射型であることから試料の表面近傍を評価でき、その特性分布を評価できることなどが必要とされる。
新しい物質・材料特性の解析・評価技術として超音波材料特性解析装置が開発されているが(非特許文献4)、この評価技術は上記課題を克服できる可能性がある。とりわけ集束超音波を用いた定量計測法(V(z)曲線解析法)が有効である。これは、水を負荷した試料表面に励起される漏洩弾性表面波(LSAW)の伝搬特性(位相速度(VLSAW)と伝搬減衰(αLSAW))、あるいは漏洩擬似縦波(LSSCW)の伝搬特性(位相速度(VLSSCW)と伝搬減衰(αLSSCW))を計測することにより材料評価を行う。本手法によれば、非破壊・非接触的にガラス基板面全体の特性分布の高精度測定が可能である。計測のためには、点集束超音波ビーム(PFB)と直線集束超音波ビーム(LFB)が使用できるが、ここでは、LFB超音波材料特性解析装置をとりあげて説明を進める((非特許文献4及び非特許文献5)参照)。
【0007】
LFB超音波材料特性解析装置は、LFB超音波デバイスと試料間の相対距離zを変化させたときに得られるV(z)曲線を解析することにより、水/試料境界を伝搬する漏洩弾性波の伝搬特性を求めることができる。図1は、超音波トランスデューサ1とLFB音響レンズ2とから成る超音波デバイスとガラス試料3系の断面図であり、計測の原理を示すものである。水中における焦点を原点として座標軸を図に示すようにとる。超音波トランスデューサ1により励振した平面超音波を、LFB音響レンズ2によりくさび状に集束し、水カプラ4を介してガラス試料3表面に照射する。試料を焦点面5より超音波デバイス側へ近づけた場合、ガラス試料3からの反射波のうち、超音波トランスデューサ1の出力に支配的に寄与する成分は、音響レンズ2の開口面の効果により近似的に図1に示す#0、#1、#2の経路をとる成分のみとなる。#0の成分は試料からの直接反射成分であり、#1の成分は、LSAWの励振臨界角θLSAWでガラス試料3に入射し、ガラス試料3表面をLSAWとして伝搬する成分である。#2の成分は、漏洩擬似縦波(LSSCW)の励振臨界角θLSSCWでガラス試料3に入射し、ガラス試料3表面をLSSCWとして伝搬する成分である。トランスデューサ出力V(z)は、これら3つの成分の干渉波形として得られる。V(z)曲線解析モデル(非特許文献5)において近似的に次式のように表される。
【0008】
V(z) = VI(z)(LSAW) + VI(z)(LSSCW) + VL(z) (1)
ただし、
VL(z) = VL'(z) + ΔVL(z) (2)
ここで、VI(z)(LSAW)、VI(z)(LSSCW)はそれぞれLSAW、LSSCWの干渉成分であり、VL(z)は超音波デバイスの特性を反映した成分である。また、VL'(z)は漏洩弾性波が励振されない試料(例えばテフロン(登録商標))に対するV(z)曲線であり、ΔVL(z)はVL'(z)のVL(z)に対するずれである。VI(z)(LSAW)、VI(z)(LSSCW)をV(z)曲線解析法に基づいて抽出し(非特許文献5)、それらの干渉周期ΔzLSAW、ΔzLSSCWを求め、次式(3)のΔzに代入してLSAW速度VLSAW、LSSCW速度VLSSCWを求める。
【0009】
【数1】
JP0004036268B2_000002t.gif
ここで、fは超音波周波数、VWは水中の縦波音速である。VWは、V(z)曲線測定時に熱電対により測定される水カプラ温度から(非特許文献6)により得ることができる。
【0010】
次に、V(z)曲線解析法によりLSAW速度VLSAWおよびLSSCW速度VLSSCWを抽出する手順を図2に示すフロー図を用いて説明する。超低膨張ガラス(C-7971, Corning社製)に対してf = 225 MHzで測定したV(z)曲線を取り上げて説明する。
ステップS1:通常、デシベルスケールで測定されるV(z)曲線(図3A)をデジタル波形に変換してコンピュータに読み込み、リニアスケール(図3B)に変換する。
ステップS2:V(z)曲線の測定と同時に測定した水カプラの温度TWより、(非特許文献6)からVWを得る。
ステップS3:超音波デバイスの特性を反映したVL(z)曲線の近似曲線であるVL'(z)曲線(例えばテフロン(登録商標)に対するV(z) の測定曲線(図3C))を、ステップS1のV(z)曲線から差し引き、VI'(z)曲線を求める(図4A)。
ステップS4:ステップS3のVI'(z)曲線に対し、デジタルフィルタを用いて、LSAWによる干渉成分(ΔzLSAW周期成分)を除去して直流成分を含む低周波成分を表すVI''(z)曲線を抽出する(図5A)。
ステップS5:ステップS4で得られたVI''(z)をステップS3で求めたVI'(z)から引き算することによりLSAWの解析に必要な干渉出力VI(z)(LSAW)曲線を得る(図4B)。
ステップS6:ステップS5で得られたVI(z)(LSAW)曲線を図4Bに示すFFT解析区間においてFFT解析することにより周波数スペクトラム分布(図4C)が得られ、そのピーク周波数から周期ΔzLSAWが求まる。
ステップS7:ステップS6で得られたΔzLSAWとステップS2で得られたVWより式(3)からVLSAWが求まる。
ステップS8:ステップS4で得られたVI''(z)から、デジタルフィルタを用いてLSSCWによる干渉成分(ΔzLSSCW周期成分)を除去して直流成分を含むΔVL(z)曲線を抽出する(図5B)。
ステップS9:ステップS8で得られたΔVL(z)をステップS4で得られたVI''(z)から引き算することにより、LSSCWの解析に必要な干渉出力VI(z)(LSSCW)曲線を得る(図5C)。
ステップS10:ステップS9で得られたVI(z)(LSSCW)曲線を図5Cに示すFFT解析区間においてFFT解析することにより周波数スペクトラム分布(図5D)が得られ、そのピーク周波数から周期ΔzLSSCWが求まる。
ステップS11:ステップS10で得られたΔzLSSCWとステップS2で得られたVWより、式(3)からVLSSCWが求められる。
【0011】
これまで、VLSAWを用いた材料評価においては、音響的損失が小さく速度分散を示さない材料(例えば、単結晶材料)を主に対象にしていたため、その損失が大きく速度分散を示す可能性のある超低膨張ガラス材料に対する解析法が開発されていなかった。V(z)曲線解析法により得られる漏洩弾性波速度(VLSAW値とVLSSCW値)は、装置や超音波デバイスに依存して真値からずれるため、(非特許文献7)に示されるような標準試料を用いた絶対校正を行なう必要がある。本校正法においては、漏洩弾性波伝搬特性の数値計算が必要となるが、(非特許文献8)や(非特許文献9)に基づき、試料および水は無損失を仮定して、速度分散、減衰係数は無視して計算が行われていた。すなわち、音響的損失が大きく速度分散を示す可能性のある材料に対する適切な標準試料の作成方法はいまだ検討されていなかった。

【特許文献1】特願2001-059587号
【非特許文献1】K. E. Hrdina, B. G. Ackerman, A. W. Fanning, C. E. Heckle, D. C. Jenne, and W. D. Navan, "Measuring and tailoring CTE within ULE Glass," Proc. SPIE, Emerging Lithographic Technologies VII, Vol. 5037, pp. 227-235 (2003).
【非特許文献2】I. Mitra, M. J. Davis, J. Alkemper, R. Muller, H. Kohlmann, L. Aschke, E. Morsen, S. Ritter, H. Hack, and W. Pannhorst, "Thermal expansion behavior of proposed EUVL substrate materials," Proc. SPIE, Vol. 4688, pp. 462-468 (2002).
【非特許文献3】H. E. Hagy and W. D. Shirkey, "Determining absolute thermal expansion of titania-silica glasses: a refined ultrasonic method," Appl. Opt., Vol. 14, pp. 2099-2103 (1975).
【非特許文献4】J. Kushibiki, Y. Ono, Y. Ohashi, and M. Arakawa, "Development of the line-focus-beam ultrasonic material characterization system," IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq. Contr., Vol. 49, pp. 99-113 (2002).
【非特許文献5】J. Kushibiki and N. Chubachi, "Material characterization by line-focus-beam acoustic microscope," IEEE Trans. Sonics and Ultrason., Vol. SU-32, pp. 189-212 (1985).
【非特許文献6】W. Kroebel and K.-H. Mahrt, "Recent results of absolute sound velocity measurements in pure water and sea water at atmospheric pressure," Acustica, Vol. 35, pp. 154-164 (1976).
【非特許文献7】J. Kushibiki and M. Arakawa, "A method for calibrating the line-focus-beam acoustic microscopy system," IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq. Contr., Vol. 45, pp. 421-430 (1998).
【非特許文献8】J. J. Campbell and W. R. Jones, "Propagation of surface waves at the boundary between a piezoelectric crystal and a fluid medium," IEEE Trans. Sonics Ultrason., vol. SU-17, pp. 71-76 (1970).
【非特許文献9】I. A. Viktrov, Rayleigh and Lamb Waves: Physical Theory and Applications (Plenum, New York, 1967), Chap. I, pp. 46-57
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来法による線膨張係数の評価法は測定精度が低く、実際に使用される試料形状のもの
を非破壊的に評価できない、分布特性を測定できないという問題がある。一方、従来法よ
り高精度に、かつ、非破壊・非接触的に材料基板面内の分布特性測定の実現が期待される
LFB超音波材料特性解析装置による材料評価において、速度分散特性を示す可能性のある
超低膨張ガラス材料に対する解析法が開発されていない。
そこで本発明においては、超音波材料特性解析装置により測定される漏洩弾性波速度を
用いた超低膨張ガラスの線膨張係数の解析評価が行えるように、一般的な標準試料の作成(選択した試料基板に対し、音速、減衰係数、および密度を測定することで、その試料基板に対する漏洩弾性波速度の理論値を計算できるようにすること)および校正方法を与え、得られる弾性特性の結果をもとにした線膨張係数の評価法を与える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による超低膨張ガラス材料の線膨張係数を評価する方法は、
(a) 使用超音波周波数帯において、超低膨張ガラス材料の標準試料の縦波の音速と減衰
係数、横波の音速と減衰係数、及び密度を測定する工程と、
(b) 上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料に対する第1の漏洩弾性波特性を計算する工程と、
(c) 上記標準試料に対して漏洩弾性波干渉信号V(z)曲線を測定してそのV(z)曲線から第2の漏洩弾性波特性を求める工程と、
(d) 上記工程(b) で計算した上記第1の漏洩弾性波特性と上記工程(c) で上記V(z)曲線から求めた上記第2の漏洩弾性波特性の比を校正係数として求める工程と、
【0014】
(e) 超低膨張ガラス材料の測定試料に対しV(z)曲線を測定してそのV(z)曲線から第3の漏洩弾性波特性を求める工程と、
(f) 上記測定試料について求めた上記第3の漏洩弾性波特性を上記校正係数で校正する工程
(g) 上記超低膨張ガラス試料の線膨張係数と、絶対校正された上記第3の漏洩弾性波特性との関係を求める工程と、
(h) 評価対象の超低膨張ガラス試料に対して第4の漏洩弾性波特性を測定し、上記関係を基にして、線膨張係数を評価する工程、
とを含む。
【0015】
この発明による線膨張係数評価方法において
上記工程(b) は上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩弾性表面波速度
VLSAW(std.calc.)を計算し、その計算結果から対応するV(z)曲線の漏洩弾性表面波の周期
成分ΔzLSAW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性の1つとして計算する工程を含み、
上記工程(c) は上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩弾性表面波の
周期成分ΔzLSAW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d) は上記漏洩弾性表面波の周期成分の比KZ(LSAW) = ΔzLSAW(std.calc.)/Δ
zLSAW(std.meas.)を上記校正係数として求める工程を含み、
上記工程(e) は上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩弾性波の周期成分ΔzLSAW(me
asured)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は上記測定試料についての周期成分ΔzLSAW(measured)を上記校正係数KZ(
LSAW)で校正した周期成分ΔzLSAW(calibrated) = KZ(LSAW)ΔzLSAW(measured)を求め、そ
の校正した周期成分ΔzLSAW(calibrated)から上記測定試料の校正された漏洩弾性表面波
速度VLSAW(calibrated)を上記校正された漏洩弾性波特性として計算により求める工程を
含む。
【0016】
この発明による線膨張係数評価方法において
上記工程(b) は更に、上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩擬似縦波
速度VLSSCW(std.calc.)を計算し、その計算結果から対応するV(z)曲線の漏洩擬似縦波の
周期成分ΔzLSSCW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性の1つとして計算する工程を含み、
上記工程(c) は更に、上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩擬似縦
波の周期成分ΔzLSSCW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d) は更に、上記漏洩擬似縦波の周期成分の比KZ(LSSCW) = ΔzLSSCW(std.cal
c.)/ΔzLSSCW(std.meas.)を上記校正係数として求める工程を含み、
【0017】
上記工程(e) は更に、上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩擬似縦波の周期成分Δ
zLSSCW(measured)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は更に、上記測定試料についての周期成分ΔzLSSCW(measured)を上記校正
係数KZ(LSSCW)で校正した周期成分ΔzLSSCW(calibrated) = KZ(LSSCW)ΔzLSSCW(measured
)を求め、その校正した周期成分ΔzLSSCW(calibrated)から上記測定試料の校正された漏
洩擬似縦波速度VLSSCW(calibrated)を上記校正された漏洩弾性波特性として計算により求
める工程を含む。
【0018】
この発明による線膨張係数評価方法において
上記工程(b) は上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩弾性表面波速度
VLSAW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性として計算する工程を含み、
上記工程(c) は上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩弾性表面波速
度VLSAW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d) は上記漏洩弾性表面波速度の比KV(LSAW) = VLSAW(std.calc.)/VLSAW(std
.meas.)を上記校正係数として求める工程を含み、
【0019】
上記工程(e) は上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩弾性表面波速度VLSAW(measur
ed)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は上記測定試料についての漏洩弾性表面波速度VLSAW(measured)を上記校
正係数KV(LSAW)で校正した漏洩弾性表面波速度VLSAW(calibrated) = KV(LSAW)VLSAW(meas
ured)を求め、その校正した漏洩弾性表面波速度VLSAW(calibrated)を上記校正された漏洩
弾性波特性として計算により求める工程を含む。
【0020】
この発明による線膨張係数評価方法において
上記工程(b) は更に、上記音速、減衰係数、及び密度から上記標準試料の漏洩擬似縦波
速度VLSSCW(std.calc.)を上記漏洩弾性波特性の1つとして計算する工程を含み、
上記工程(c) は更に、上記標準試料についての上記V(z)曲線から標準試料の漏洩擬似縦
波速度VLSSCW(std.meas)を求める工程を含み、
上記工程(d) は更に、上記漏洩擬似縦波速度の比KV(LSSCW)= VLSSCW(std.calc.)/VLSSC
W(std.meas.)を上記校正係数として求める工程を含み、
上記工程(e) は更に、上記測定試料についてのV(z)曲線から漏洩擬似縦波速度VLSSCW(m
easured)を上記漏洩弾性波特性の1つとして求める工程を含み、
上記工程(f) は更に、上記測定試料についての漏洩擬似縦波速度VLSSCW(measured)を上
記校正係数KV(LSSCW)で校正した漏洩擬似縦波速度VLSSCW(calibrated) = Kz(LSSCW)VLSSC
W(measured)を求め、その校正した漏洩擬似縦波速度VLSSCW(calibrated)を上記校正され
た漏洩弾性波特性として計算により求める工程を含む。
【0021】
の発明による線膨張係数評価方法において、上記工程(g)は、評価対象の超低膨張ガラス試料に周期的な脈理が存在する場合、脈理面に対し所望の角度傾いた試料を切り出し、代替の試料とする工程を含む
【0022】
この発明による線膨張係数評価方法において、上記工程(g)は、漏洩弾性波の伝搬減衰が大きい評価対象の場合、より低い超音波周波数を用いて漏洩弾性波特性を測定する
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、超低膨張ガラス材料に対する音速、減衰係数の周波数依存性と密度を計測することにより、その基本音響特性を明らかにし、超音波材料特性解析装置校正用の標準試料を作成できる。また、V(z)曲線よりLSAWモードとLSSCWモードを抽出し、LSAWおよびLSSCWの両伝搬モードに対する速度分散性も含めた絶対値計測が可能になる。また、LSAWおよびLSSCWの速度とバルク音響特性(縦波音速、横波音速、密度、弾性定数など)との関係を利用することにより、超音波材料特性解析装置によるV(z)曲線の測定からバルク音響特性を見積もることが可能になる。これらの音響特性と線膨張係数との関係を求めることで、音響特性測定による線膨張係数の高精度評価を可能にする。これらの結果、線膨張係数の許容幅±5 ppb/KのEUVL用超低膨張ガラス材料を実現するために要求される測定精度を有する評価技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、速度分散特性を示す等方性材料(脈理等のない一般的なガラス材料)に対する一般的な評価を行なう場合の、LFB超音波材料特性解析装置の絶対校正のための標準試料を作成する方法を説明する。標準試料にする基板に対し、バルク波(縦波と横波)の音速と減衰係数の周波数依存性および密度を以下の方法により測定する。
バルク音響特性(音速、減衰係数)の測定方法として、高周波(RF)トーンバーストパルス6を用いた複素型測定法を例に取り上げて説明する。バルク波音速測定時の実験構成を図6に示す。バッファーロッド7(例えば、合成石英ガラス)の片端面に超音波トランスデューサ1を装着した超音波デバイスを用いる。縦波音速測定の場合、カプラ8として純水を用い、ガラス試料3の表面からの反射信号V2とその裏面からの反射信号V3が時間軸上でスプリアス信号と重ならないようにカプラの伝搬長を調整し、V3/V2の振幅|V3/V2|、位相φ(図7に示す)を各周波数において測定することにより、式(4), (5)からそれぞれ試料の縦波音速Vl、縦波減衰係数αlが求められる。
【0025】
【数2】
JP0004036268B2_000003t.gif

【0026】
ここで、ωは角周波数、hは試料の厚さ、πは試料裏面での反射の際の位相回転、 ΔθはV2信号とV3信号の回折による位相進みの差分、|ATT3/ATT2|は回折損失比である。T23、T32はそれぞれカプラから試料、試料からカプラへの透過係数、R23はカプラから試料をみた反射係数である。回折の影響はWilliamsの厳密式(参考文献1)を用いた数値計算により補正する。石英系ガラスは一般にVHF帯において速度分散を示すため、その影響を考慮した解析を行う(参考文献2)。また、音響特性の周波数特性を精密に求めるために、測定に用いた超音波トランスデューサの円形ピストン音源としての実効径を求め、回折の影響を補正する(参考文献3)。試料厚さは、例えば、光学式リニアエンコーダ内蔵の接触式測長器により計測する(特許文献1)。
【0027】
横波は水中を伝搬しないため、横波音響特性の測定はサロール(サリチル酸フェニル)により試料をバッファーロッド7に接着して行う。図6ではカプラ8に置き換える接着層8’をカッコ内に示している。このとき、サロールの接着層厚さを1μm未満と非常に薄くするため、V1信号とV2信号の間にはRFパルス6の幅より短い時間差しか生じず、V1信号とV2信号が時間軸上で分離できない。このため接着層内での多重反射成分が時間軸上で重なり、これを一つのパルスとして見なせば、このパルスが接着層8’を透過あるいは反射する際に振幅変化ABLおよび位相変化θBLが生じることと等価になる。バッファーロッド7からガラス試料3を見た反射係数から接着層8’の音響パラメータ(音速、減衰係数、密度、厚さ)を見積もることにより、ABL、θBLは計算される。試料の横波音速VS、横波減衰係数αSはそれぞれ式(6), (7)により求められる。
【0028】
【数3】
JP0004036268B2_000004t.gif

【0029】
密度ρはアルキメデスの原理に基づき測定する。
SiO2を主成分とした石英系ガラスはVHF・UHF帯において音響的損失が大きく速度分散を示す可能性があるため、漏洩弾性波の伝搬特性の計算においてはその影響を考慮しなければならない。従って、漏洩弾性波速度を精密に求めるためには、速度分散、減衰係数を考慮して数値計算を行なわなければならない。等方性固体の場合、以下の式を用いて数値計算が行なえる。
【0030】
【数4】
JP0004036268B2_000005t.gif

【0031】
ここで、αLSAW、αWはそれぞれ、LSAWの規格化伝搬減衰、水中の減衰係数である。数値計算における水の音響パラメータは、標準試料に対するV(z)曲線の測定時の水カプラの温度TWより、(非特許文献6)から水の音速を、(参考文献4)から水の減衰係数を得る。水の速度分散については1GHzまでは無視でき、減衰係数は1GHzまでは周波数の二乗に比例する(参考文献5)。
次に、LFB超音波材料特性解析装置により測定される漏洩弾性波速度の絶対値を得るために、上記のように作成した標準試料を用いた校正の手順を図8に示すフロー図を用いて説明する。
ステップS1:所望の(V(z)曲線測定に使用する)超音波周波数範囲および温度範囲において、標準試料に対して縦波の音速Vl(f)と減衰係数αl(f)、横波の音速Vs(f)と減衰係数αs(f)、および密度ρを高精度に測定する。
ステップS2:測定試料に対してV(z)曲線を測定し、図2のV(z)曲線解析法によりΔzLSAW (measured) 、ΔzLSSCW (measured)を求める。このときのV(z)曲線測定時の温度TW(measured)から、(非特許文献6)により求めたVWをVW(measured)とする。
ステップS3:測定試料を測定したときと同じ周波数において、標準試料に対してV(z)曲線を測定し、V(z)曲線解析法によりΔzLSAW (std.meas.)、ΔzLSSCW (std.meas.)を求める。このときのV(z)曲線測定時の温度TW(std.meas.)から、(非特許文献6)により求めたVWをVW(std.meas.) 、(参考文献4)により求めたαWをαW(std.meas.)とする。
ステップS4:標準試料の音速、減衰係数、および密度を用いて、式(8)によりV(z)曲線を測定した温度、周波数におけるLSAW速度VLSAW(std.calc.)を計算する。
ステップS5:ステップS4で得られたVLSAW(std.calc.)とステップS3で得られたVW(std.meas.)から式(3)を用いてΔzLSAW (std.calc.)を計算する。
ステップS6:次式(16)により校正係数KZ(LSAW)を求める。
【0032】
【数5】
JP0004036268B2_000006t.gif

【0033】
ステップS8:ステップS7で得られたΔzLSAW (calibrated)、ステップS2で得られたVW(measured)を式(3)に代入することにより校正されたVLSAW(calibrated)を求める。
ステップS9:標準試料の音速、減衰係数、および密度を用いて、V(z)曲線を測定した温度、周波数におけるLSSCW速度VLSSCW(std.calc.)を式(8)により計算する。
ステップS10:ステップS9で得られたVLSSCW(std.calc.)とステップS3で得られたVW(std.meas.)から式(3)を用いてΔzLSSCW (std.calc.)を計算する。
ステップS11:次式(18)により校正係数KZ(LSSCW)を求める。
【0034】
【数6】
JP0004036268B2_000007t.gif

【0035】
ステップS13:ステップS12で得られたΔzLSSCW(calibrated)と、ステップS2で得られたVW(measured)を式(3)に代入することにより校正されたVLSSCW(calibrated)を求める。
上述では、標準試料のΔzLSAW、ΔzLSSCWを使って校正係数を決める場合を示したが、標準試料のVLSAW、VLSSCWを使って校正係数を決めてもよい。その例について図9を参照して説明する。
ステップS1、S2、S3は図8の場合と同じなので説明を省略する。
ステップS4:標準試料の音速、減衰係数、および密度を用いて、式(8)によりV(z)曲線を測定した温度、周波数におけるLSAW速度VLSAW(std.calc.)を計算する。
ステップS5:ステップS3で得られたΔzLSAW (std.meas.)とVW(std.meas.)から式(3)を用いてVLSAW (std.meas.)を計算する。
ステップS6:次式(20)により校正係数KV(LSAW)を求める。
【0036】
【数7】
JP0004036268B2_000008t.gif

【0037】
ステップS8:標準試料の音速、減衰係数、および密度を用いて、V(z)曲線を測定した温度、周波数におけるLSSCW速度VLSSCW(std.calc.)を式(8)により計算する。
ステップS9:ステップS3で得られたΔzLSSCW (std.meas.)とVW(std.meas.)から式(3)を用いてVLSSCW (std.meas.)を計算する。
ステップS10:次式(22)により校正係数KV(LSSCW)を求める。
【0038】
【数8】
JP0004036268B2_000009t.gif

【0039】
最後に、上記のようにして得られる絶対校正されたLSAW速度、LSSCW速度の分散特性を用いた超低膨張ガラス材料の評価方法について説明する。
第1の評価方法として、図8において標準試料に対してステップS4で得られたVLSAW(std.calc.)に対するステップS1で得られた横波音速の比、およびステップS9で得られたVLSSCW(std.calc.)に対するステップS1で得られた縦波音速の比を求める。同様にして、標準試料に対してステップS4で得られたVLSAW(std.calc.)およびステップS9で得られたVLSSCW(std.calc.)に対するステップS1で得られた密度の比を求める。図9の結果に対しても同様に適用できる。これらの比は、化学組成比を反映し材料ごとに変化するので、評価試料に対するLSAW速度やLSSCW速度の測定値に上記音速比を掛け算することで、縦波音速、横波音速、密度を推定することが可能である。
【0040】
第2の評価として、超低膨張ガラス材料は一般的に等方性固体であるため、縦波音速の周波数特性から弾性定数c11を、横波音速の周波数特性から弾性定数c44を、両者の結果より弾性定数c12をそれぞれ周波数fの関数として次式により求めることができる。
【0041】
【数9】
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【0042】
さらに得られた弾性定数を用いて、次式のように材料の弾性特性の指標であるヤング率Eやポアソン比σを周波数の関数として求めることができる。
【0043】
【数10】
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【0044】
第3の評価として、線膨張係数と上記音響特性との関係を求め、線膨張係数を評価する。また、化学組成比、屈折率などの結果と上記音響特性の関係を求め、測定試料の音響特性変化の原因を調べることができる。
【実施例】
【0045】
ここでは、超低膨張ガラスとして、TiO2-SiO2ガラスであるC-7971 (Corning社製)とLi2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラスであるZerodur (Schott社製)各1枚に対して縦波の音速と減衰係数、横波の音速と減衰係数の周波数特性、および密度の室温付近における温度依存性を測定し、標準試料とする。また、リファレンスとしてSiO2が100%である合成石英ガラス(C-7980, Corning社製)に対する測定結果も併せて示す(参考文献6)。まず、標準試料を作成する。標準試料に対して、20、23、26℃付近においてそれぞれ50 MHzから250 MHzまでの周波数範囲における縦波と横波の音響特性を測定した。23℃における測定結果を図10に示す。C-7980とC-7971はこの周波数帯で速度分散はほとんどなく無視できるが、Zerodurは縦波、横波とも明らかに速度分散を示している。また、Zerodurの減衰係数はC-7980とC-7971のそれよりも1桁程度大きい。C-7980とC-7971の横波の減衰係数は非常に小さい値を示し、測定精度と関連したうねりも生じているが、これは接着層に用いたサロールの音響パラメータのばらつきに起因するものであり、Zerodurの結果においても同程度のうねりが含まれている。減衰係数αは一般にα=α0 fβと表すことができる。図10の結果をこの式で近似すると、C-7971に対しては、αl = 1.3×10-16 f 2 (m-1)、αs = 2.5×10-16 f 2 (m-1)、Zerodurに対しては、αl = 9.08×10-10 f 1.36 (m-1)、αs = 7.99×10-10 f 1.40 (m-1)、C-7980に対してはαl = 1.1×10-16 f 2 (m-1)、αs = 2.0×10-16 f 2 (m-1)となった。密度は、C-7971に対しては2197.82 (kg/m3)、Zerodurに対しては2530.75 (kg/m3)、C-7980に対しては2199.82 (kg/m3)となった。これらの結果を用いて漏洩弾性波速度の数値計算を行った結果を図11に示す。C-7971のLSAW速度に対する横波音速の比、およびLSSCW速度に対する縦波音速の比を図12Aに示す。225 MHzにおけるLSAW速度に対する横波音速の比は1.0979、LSSCW速度に対する縦波音速の比は0.9990である。また、図11Aの結果と密度測定値より求めたLSAW速度、およびLSSCW速度に対する密度の比は図12Bのようになる。Zerodurに対しても同様に、各速度比を図12Cに、密度と速度の比を図12Dに示す。225 MHzにおけるLSAW速度に対する横波音速の比は1.0845、LSSCW速度に対する縦波音速の比は0.9861である。
【0046】
225 MHzにおけるZerodurに対するV(z)曲線、VI(z)(LSAW)曲線、VI(z)(LSSCW)曲線の測定例を図13に示す。Zerodurは、C-7971よりαLSAWが小さく、図13Bの干渉波形が存在する区間が図4Bの場合よりも広い。蛍光X線分析法により化学分析を行った結果を図14に示す。ただしZerodurに対するLi2O濃度は(参考文献7)の値を用いている。各試料の音響特性は化学組成比の違いを反映して異なっている。また、Zerodurにおいては、超低膨張係数を実現するために結晶化技術を用いており、化学組成比の他に、この作製プロセスに起因する音響特性の変化が付加されている。
【0047】
音速の変化は弾性定数の変化と密度の変化によるものである。C-7971とC-7980に対して、225 MHzにおける縦波音速、横波音速、密度、および式(24)と式(25)により求めた弾性定数c11とc44を図15に示す。c11とc44の変化は密度の変化より、それぞれ70倍、80倍大きい。音速の変化は主に弾性定数の変化によるものといえる。
図14より、C-7971にはSiO2とTiO2のみが含まれており、TiO2濃度は6.9 wt%と求まった。SiO2が100%のガラスである合成石英ガラス(C-7980, Corning 社製)に対する漏洩弾性波速度との比較により、TiO2濃度、線膨張係数、および密度に対するLSAW速度とLSSCW速度の感度および分解能はそれぞれ図16、図17のように求められた。ただし、C-7971の線膨張係数は0 ppb/Kと仮定し、C-7980のそれはカタログ値である520 ppb/Kとした。LSAW速度のほうがLSSCW速度よりも諸特性に対して分解能が高く、材料の解析・評価にはLSAW速度が適している。EUVL用の超低膨張ガラスの目標とする仕様±5 ppb/Kを満足するには、TiO2-SiO2ガラスのLSAW速度を±1.15 m/s以内にすればよい。
【0048】
次に、LFB超音波材料特性解析装置を市販の超低膨張ガラス(C-7972, Corning社製)の評価に適用する。図18Aに示すようなPremiumグレード(線膨張係数(5-35℃):±30 ppb/K以内、インゴット内分布:10 ppb/K以内)のインゴットから、図18Bに示すように周期的な脈理11が基板面に平行な試料(試料A)と図18Cに示すように脈理11が基板面に垂直な試料(試料B)を1枚ずつ用意した。基板の大きさは50 mm×60 mm×4.7 mmtである。試料Aに対する測定結果を図19に示す。図19Aに示す測定線に沿って、f=225MHzとし1mmおきに測定を行なった。LSAWの伝搬方向は各測定線の方向と平行である。LSAW速度の測定結果を図19Bと図19Cに示す。試料面内で最大12.14 m/sの分布が捉えられた。図16より、この音速変化は、線膨張係数の変化で52.6 ppb/K、TiO2濃度の変化で0.70 wt%、密度の変化で0.203 (kg/m3)と換算される。線膨張係数の仕様(試料面内において10 ppb/K以内)よりも約5倍大きい。同様に試料Bに対する測定結果を図20に示す。図20Aに示す測定線に沿ったLSAW速度の測定結果を図20Bと図20Cに示す。試料面内で最大4.34 m/sの分布が捉えられた。z方向には細かい周期的な速度変動が見られるが、y方向には見られない。脈理による変化を捉えるために、z方向に試料中心±1mmの範囲を0.02mmおきに測定した結果を図21Aに、試料中心付近の1mm×1mmの領域をz方向に0.05 mmおき、y方向に0.25 mmおきに2次元分布の測定を行った結果を図21Bに示す。図21Bにおいては、音速の大小を明暗に対応させており、白点線は図21Aの測定位置に対応する。z方向に約0.17mmの周期性が見られた。この結果と図16より、TiO2の少ない音速の小さい層とTiO2の多い音速の大きい層が交互に現れているのがわかる。試料Aと試料Bの音速差の違いは音響レンズの測定領域としての空間分解能と弾性特性の変化の周期との関係によるものである。LFB音響レンズの測定領域としての空間分解能は、集束方向はデフォーカス距離zDに依存し、2|zD|tanθLSAWで与えられ、非集束方向は超音波ビーム幅に依存する。超低膨張ガラスに対して測定に使用されるzDは-280μmであることから、集束方向の空間分解能は280μm程度と考えられる。また、測定に用いた200 MHz帯の音響レンズの非集束方向の空間分解能は900μm程度と考えられる。基板の深さ方向の分解能は、LSAWのエネルギーが集中している基板表面下約1波長分(超音波周波数225 MHzに対して約15μm)である。試料Aが試料Bに比べて分布が大きい原因として、脈理に平行な試料を用意したというものの、基板面全体において完全に平行にはなっていないため、脈理に関係した弾性特性の分布が捉えられたものと考えられ、その最大変動は12.14m/sである。試料Bに対してz方向に走査した場合には、超音波測定領域13と脈理11の周期との関係は図22Aのようになり、超音波測定領域13が脈理11の周期よりも大きくなるため、各層の特性が平均化されて、速度変化が小さくなったと考える。さらに、y方向に走査した場合には図22Bのようになり、y方向に位置を変えても脈理11の異なる領域、すなわち音響特性が異なる領域に超音波測定領域13が大きくまたがり、平均的な特性を検出しているので、LSAW速度の変化がさらに小さくなったと考える。また、脈理を図21のように画像化することにより、試料面に対する脈理の方向を精密に評価することも可能である。
【0049】
次に脈理による真の音響特性の変化を捉える方法について検討を行なう。図21に示したように、脈理は周期的に存在する。脈理に対して基板を斜めにカットすると、ガラス基板表面14の脈理11の周期は図22Cに示すようにT/sinθで表される。θが小さいほど基板表面の周期は広くなり、Tを170μmとすると、例えば、θ= 90°のとき170μm、θ= 30°のとき340μm、θ= 9.8°のとき1mm、θ= 4.9°のとき2mm、θ= 0°のとき無限大となる。脈理を基板面に対して平行に近い角度にすることにより、基板面上の脈理の周期が広くなることがわかる。その周期を、使用する超音波ビームの空間分解能よりも十分広くすることにより、脈理による真の音響特性の変化を捉えることができる。
【0050】
例えば、脈理が基板面に対して12°傾いた別の試料を用意し、LSAW速度をz方向に0.1mmおきに測定した結果を図23Aに、試料中心付近の3.5 mm×4 mmの領域をz方向に0.1mmおき、y方向に1mmおきに2次元分布の測定を行った結果を図23Bに示す。最大の音速差は5.21m/sであり、その周期は約0.8mmであった。この音速差を図17に示した感度を用いて、他の物理的・化学的特性の変化に換算すると、線膨張係数は22.6 ppb/K、TiO2濃度は0.30wt%、密度は0.087 (kg/m3)の変化に対応する。
次に、Zerodurに対して適用した。試料として、4つの異なるインゴットから1枚ずつ(Class 0を2枚、Class 1を1枚、Class 2を1枚)の計4枚の50mm×50mm×5.5mmtの大きさの試料を取り出した。ここで、それぞれのClassの線膨張係数(0-50℃)の絶対値の仕様は、Class 0は±20 (ppb/K)以内、Class 1は±50 (ppb/K)以内、Class 2は±100 (ppb/K)以内であり、インゴット内の相対的な変化の仕様はいずれも±20 (ppb/K)以内である。各試料に対して、中心を含んで一方向に分布測定を行なった結果を図24に示す。1枚の基板における速度分布は最大0.32 m/sと小さい。インゴット間では速度分布が存在し、4枚の試料の間で最大5.21 m/sの差が捉えられた。特に、最高グレードのClass 0において、4.53 m/sの大きな差が検出されている。また、蛍光X線分析法による化学組成比および密度を求めた結果をそれぞれ図25、図26に示す。音響特性の変化は化学組成比の変化および結晶化プロセスの違いを反映したものである。
【0051】
次に、LSAW速度の測定精度(再現性)の向上について検討を行なう。図16に示したようにC-7971に対するLSAW速度の再現性(±σ)は、±0.09 m/s (±0.0026%)であり、Zerodurに対する±0.0018%やGadolinium Gallium Garnet (GGG)やLiTaO3などの単結晶材料に対する±0.0007%よりも悪い。C-7971に対するV(z)曲線は図4Bに示したように波形減衰率が大きく、LSAWの解析に使用できる区間は-280μmまでである。一方、Zerodurにおいては図13Bに示したように-480μmまで、単結晶材料においては測定区間のすべての領域において干渉が存在し解析に使用できる。このことから、LSAW速度の再現性を向上させるためには図4Bに示すVI(z)(LSAW)曲線の波形減衰率α0を小さくし、解析領域が広くなるようにすればよい。
【0052】
V(z)曲線解析法においてαLSAWは以下の式から得られる(非特許文献5)。
【0053】
【数11】
JP0004036268B2_000012t.gif

【0054】
ここで、kLSAWはLSAWの波数である。一般に、αLSAWは水中への縦波の放射に伴う減衰αWL(LSAW)、固体中の音波の吸収αAB(LSAW)、散乱減衰αSC(LSAW)の和として、以下のように表される。
αLSAW = αWL(LSAW) + αAB(LSAW) + αSC(LSAW) (30)
ここで、試料表面を光学研磨することで水と試料境界面での散乱が無く、試料内部構造に起因する散乱も無いものと仮定すると、αSCは無視できる。
式(29)より、α0は次式で表される。
【0055】
【数12】
JP0004036268B2_000013t.gif

【0056】
LSAWの粒子変位成分は縦波と横波の粒子変位成分から構成されるが、横波成分が主であり、また図10の結果から明らかのように、横波に対する減衰が大きい。したがって、LSAWの固体中の吸収項は横波の減衰係数と等しいと仮定して、αAB(LSAW) = αs/kLSAWとし、αs = αs0 fβ、αW = αW0 f 2、kLSAW=2πf/VLSAWのように超音波周波数fを用いた表記で式(32)を書き換えると次式が得られる。
【0057】
【数13】
JP0004036268B2_000014t.gif

【0058】
式(33)より、C-7971およびZerodur標準試料に対するα0の計算結果を図27A、図27Cに示す。ここで、点線、一点鎖線、破線はそれぞれ式(33)の第1項、第2項、第3項の計算結果、実線はそれらの和α0である。ここで、αABとして横波の減衰係数に対する近似曲線(αs = 2.5×10-16 f2 (m-1))を用いた。周波数が高くなるに従い、α0は大きくなる。この場合、α0を決める支配的要因は、αWL(LSAW)の項により計算される水中への放射による減衰である。次に、図27Aおよび図27Cの結果を用いて、通常V(z)曲線解析に用いることができる焦点から35 dB減衰するまでの距離を計算した結果をそれぞれ図27B、図27Dに示す。いずれの結果も、周波数が高いほど35 dB減衰するまでの距離は短くなる。また、Zerodurの方がC-7971よりも全周波数領域でα0が小さく、解析区間が長い。このため、Zerodurの方がC-7971よりも測定再現性が高いことが予想できる。再現性を向上させるためには、周波数を下げればよいということがわかる。
【0059】
通常、測定に用いられる200 MHz 帯の超音波デバイス(開口半径rが1.0mm)の他に、動作中心周波数が100 MHz (r =1.5mm)、70 MHz (r = 2.0mm)の超音波デバイスを用意した。それぞれの超音波デバイスの最大デフォーカス量は560μm、870μm、1160μmである。これらの超音波デバイスにおいて一周波数をそれぞれ選択し、V(z)曲線を200回繰り返し測定したときの再現性(±σ)の結果を図28に示す。また、このときのV(z)曲線を図29に示す。C-7972に対しては75 MHzのときに±0.0010%と再現性が最も良くなった。このとき、線膨張係数に対する分解能は±0.14 ppb/K、TiO2濃度に対する分解能は±0.0019wt%、密度に対する分解能は±0.0006 (kg/m3)となる。この値は線膨張係数の評価技術に対する要求(±0.2 ppb/K)よりも良く、本解析法は超低膨張係数ガラスの解析評価法として極めて有用であることを実証している。また、
【0060】
【数14】
JP0004036268B2_000015t.gif

【0061】
の方向伝搬に対しても、同様に再現性が向上しており、それぞれ、±0.0007%、±0.0005%である。しかし、V(z)曲線測定のためのデフォーカス量を増やすと測定領域が広がり、空間分解能は低下する。評価対象に応じて適切な周波数を選択する必要がある。図19や図20に示したように音響特性の変化が大きいガラス材料を評価する場合には、200 MHz帯の超音波デバイスで十分である。しかし、より均質な基板の評価に適用する場合には、より低い周波数で測定を行い、高い測定精度で基板全体の評価を行なえばよい。
本解析法を行なうために、標準試料を作成したが、その過程でバルク波音速を求めた。バルク波音速の測定は、LSAW速度測定に比べて時間はかかるものの、上述のように、速度分散を考慮した回折の補正(参考文献2)、トランスデューサの実効径の評価(参考文献3)、および厚さ測定における歪みの補正(特許文献1)を行なうことにより、高精度に求めることができる。特に、縦波の場合には水をカプラとして測定が行なえるため、比較的簡便に測定が行なえる。縦波音速の誤差として、試料の厚さの測定誤差と位相の測定誤差の影響が考えられる。今回用いた超低膨張ガラス(C-7971)の標準試料は厚さ4818.14μmの試料であり、厚さの測定精度は±0.06μmであることから、厚さによる音速の誤差は±12.5ppmとなる。また、位相による音速の誤差は±5.2ppm(±0.03m/s)である。これらにより縦波音速の二乗誤差は13.5ppm (±0.08m/s)となる。厚さ、位相どちらの誤差も、最大誤差を取っているので、この誤差を±3σ程度と考えると、±σは±0.03m/sとなる。このとき、他の物理的・化学的特性に対する縦波音速の感度と分解能は図30のように表せる。線膨張係数に対して±0.07ppb/Kの分解能が得られている。また、EUVL用の基板(6.35mm厚)へ適用する場合の縦波音速の二乗誤差は±0.02m/sとなり、線膨張係数などに対する分解能はさらに向上する。
【0062】
以上の結果から、C-7971に対するLSAW速度、LSSCW速度、縦波音速の各測定精度と他の物理的・化学的特性に対する分解能をまとめると図31のようになる。超音波周波数を低くすることによりLSAW速度の測定精度(分解能)が向上することがわかる。また、縦波音速については、従来100mmもの厚さの試料に対する平均的な特性の測定を通してようやく達成していた測定精度より高い精度を、わずか5 mm程度の厚さの試料に対して実現できている。このことから、縦波音速測定により高精度に線膨張係数の解析・評価を行なうことも可能であり、基板の均質性改善が実現した後の段階において、超均質な基板の解析評価、品質管理を行なう手法として極めて有効である。同様に、横波を用いた場合でも同程度の測定精度が達成される。
【0063】
以上のように説明した実施例に基づいて、この発明による超低膨張ガラスの線膨張係数の解析評価法の基本的な処理手順を図32に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
ステップS1:所望の温度および周波数範囲において、標準試料のバルク波の音速(縦波音速Vl(f)、横波音速VS(f))、減衰係数(縦波減衰係数αl(f)、横波減衰係数αS(f))、および密度ρを測定する。
ステップS2:ステップS1で得られた音速(Vl(f)、VS(f))、減衰係数(αl(f)、αS(f))、および密度ρから数値計算により、標準試料に対する漏洩弾性波特性(VLSAW(std.calc.)、VLSSCW(std.calc.)、ΔzLSAW(std.calc.)、ΔzLSSCW(std.calc.))を求め、さらに標準試料に対するV(z)曲線から漏洩弾性波特性(VLSAW(std.meas.)、VLSSCW(std.meas.)、ΔzLSAW(std.meas.)、ΔzLSSCW(std.meas.))を求め、これら2つの特性から校正係数を求める。
ステップS3:S2で得られた漏洩弾性波の規格化伝搬減衰を考慮して、使用するLFB超音波デバイスにおいて漏洩弾性波特性の測定精度が高くなる超音波周波数f0を決定する。
ステップS4:ステップS3で決定した超音波周波数f0において、測定試料面上の一点あるいは複数点でV(z)曲線を測定して漏洩弾性波特性(VLSAW(measured)、VLSSCW(measured)、ΔzLSAW(measured)、ΔzLSSCW(measured))を求め、ステップS2で得られた校正係数により、校正された測定試料の漏洩弾性波特性を求める。
ステップS5-1:ステップS4の結果から、測定試料に周期的な脈理が存在しない、あるいは、超音波の測定領域より脈理の周期が十分大きいとき、S4で得られた校正結果を測定試料に対する真の(あるいは平均的な)漏洩弾性波特性分布とする。
ステップS5-2:ステップS4の結果から、測定試料に周期的な脈理が存在する、あるいは、超音波の測定領域より脈理の周期が小さい、あるいは、両者が同程度の大きさのとき、脈理の周期が大きくなるように試料面を脈理面に対して所望の角度傾けて切り出し、S4と同様の手順で漏洩弾性波特性分布を求め、これを測定試料に対する真の漏洩弾性波特性分布とする。
第1の評価
ステップS6-1:標準試料に対して、LSAW速度に対する横波音速の比、LSSCW速度に対する縦波音速の比、およびLSAW速度とLSSCW速度に対する密度の比を求める。
ステップS7-1:ステップS6-1で求めた比を測定試料の漏洩弾性波速度にかけることにより、測定試料のバルク波音速、密度を求める。
第2の評価
ステップS8:ステップS7-1で求めた値から、測定試料の弾性定数、ヤング率、ポアソン比を評価パラメータとして求める。
第3の評価
ステップS6-2:線膨脹係数、化学組成比、屈折率、密度などの結果と音響特性(バルク波音速、漏洩弾性波速度、弾性定数、ヤング率など)との関係を評価パラメータとして求める。
ステップS7-2:音響特性の測定結果に対して、ステップS6-2で得られた関係を利用して、線膨脹係数、化学組成比、屈折率、密度などを見積り、これを評価パラメータとする。
【産業上の利用可能性】
【0064】
超音波材料特性解析システムにより測定される漏洩弾性波速度を用いた超低膨張ガラスの線膨張係数の解析評価法は、ガラス基板内あるいは基板間の線膨張係数の差を明確に捉えるため、ガラス基板の評価、選別、品質管理に用いるだけでなく、材料の作製プロセス評価・改善に用いることができるであろう。これによって、インゴット全体にわたって所望の温度でゼロ線膨張係数という理想的なガラス材料の実現に貢献できる。また、本手法は超低膨張ガラス材料のみでなく、合成石英ガラスや一般のガラスやセラミックスの評価に対しても有用であることはいうまでもなく、単結晶材料にも適用できる。このため、広く材料の開発、評価・選別、作製プロセスの改善などに極めて有用である。
[参考文献]
[参考文献1]A. O. Williams, Jr., "The piston source at high frequencies," J. Acoust. Soc. Am., vol. 23, pp. 1-6 (1951).
[参考文献2]J. Kushibiki, R. Okabe, and M. Arakawa, "Precise measurements of bulk-wave ultrasonic velocity dispersion and attenuation in solid materials in the VHF range," J. Acoust. Soc. Am., Vol. 113, pp. 3171-3178 (2003).
[参考文献3]M. Arakawa, J. Kushibiki, and N. Aoki, "An evaluation of effective radiuses of bulk-wave ultrasonic transducers as circular piston sources for accurate velocity measurements," IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq. Contr., Vol. 51, pp.496-501 (2004).
[参考文献4]J. M. M. Pinkerton, "The absorption of ultrasonic waves in liquids and its relation to molecular constitution," Proc. Phys. Soc., Vol. B62, pp. 129-141 (1949).
[参考文献5]橋本, 明石, 櫛引, "VHF/UHF帯における水の超音波減衰係数の測定," 信学技報, Vol. US97-50, pp. 37-42 (1997).
[参考文献6]J. Kushibiki, M. Arakawa, and R. Okabe "High-accuracy standard specimens for the line-focus-beam ultrasonic material characterization system," IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq. Contr., Vol. 49, pp.827-835 (2002).
[参考文献7]D. Gerlich and M. Wolf, "Thermoelastic properties of Zerodur glass-ceramic," J. Non-Cryst. Solids, vol. 27, pp. 209-214 (1978).
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】V(z)曲線の形成原理を説明する図。
【図2】V(z)曲線解析法のフローチャート。
【図3】V(z)曲線の解析手順を示す図であり、AはV(z)曲線の例を示す図、BはAのV(z)曲線をリニアスケールにしたもの、Cはテフロン(登録商標)に対して測定したVL(z)曲線の近似曲線であるVL' (z)曲線を示す図。
【図4】V(z)曲線の解析手順の一部を示す図であり、AはV(z)曲線からVL' (z)曲線を差し引いて得られた曲線を示す図、BはLSAWに対するVI(z)曲線を示す図、CはLSAWに対するVI(z)曲線をFFT解析することにより得られた、周波数スペクトラム分布を示す図。
【図5】V(z)曲線の解析手順の一部を示す図であり、Aは図4Aより抽出された低周波成分を示す図、BはΔVL(z)曲線を示す図、CはLSSCWに対するVI(z)曲線を示す図、DはLSSCWに対するVI(z)曲線をFFT解析することにより得られた、周波数スペクトラム分布を示す図。
【図6】バルク音響特性測定時の実験構成を示す図。
【図7】複素型測定法により測定したV3/V2の位相φを示す図。
【図8】LFB超音波材料特性解析装置の校正のフローチャートであり、ΔzLSAWやΔzLSSCWを用いて校正係数を作成する場合の説明図。
【図9】LFB超音波材料特性解析装置の校正のフローチャートであり、VLSAWやVLSSCWを用いて校正係数を作成する場合の説明図。
【図10】AはC-7971に対するバルク波音速の測定結果を示す図、BはZerodurに対するバルク波音速の測定結果を示す図、CはC-7980に対するバルク波音速の測定結果を示す図、DはC-7971に対する減衰係数の測定結果を示す図、EはZerodurに対する減衰係数の測定結果を示す図、FはC-7980に対する減衰係数の測定結果を示す図。
【図11】AはC-7971に対する漏洩弾性波速度の数値計算値を示す図、BはZerodurに対する漏洩弾性波速度の数値計算値を示す図、CはC-7980に対する漏洩弾性波速度の数値計算値を示す図。
【図12】Aは図10Aと図11Aの結果を用いて計算したC-7971のLSAW速度に対する横波音速の比、およびLSSCW速度に対する縦波音速の比を示す図、Bは図11Aの結果と密度測定値より求めたC-7971のLSAW速度、およびLSSCW速度に対する密度の比を示す図、Cは図10Bと図11Bの結果を用いて計算したZerodurのLSAW速度に対する横波音速の比、およびLSSCW速度に対する縦波音速の比を示す図、Dは図11Bの結果と密度測定値より求めたZerodurの LSAW速度、およびLSSCW速度に対する密度の比を示す図。
【図13】AはZerodurに対してf = 225 MHzにおいて測定したV(z)曲線を示す図。BはLSAWに対するVI(z)曲線を示す図。CはLSSCWに対するVI(z)曲線を示す図。
【図14】C-7971, Zerodur, C-7980に対する化学組成比を示す図。
【図15】C-7971とC-7980の225 MHzにおけるバルク音響特性を示す図。
【図16】超低膨張ガラス(C-7971)の物理的・化学的特性に対するLSAW速度の感度と分解能を示す図。
【図17】超低膨張ガラス(C-7971)の物理的・化学的特性に対するLSSCW速度の感度と分解能を示す図。
【図18】Aは周期的な脈理を含むガラスインゴットを示す図、Bは脈理がガラス基板に平行な試料Aを示す図、Cは脈理がガラス基板に垂直な試料Bを示す図。
【図19】Aは試料面に対して周期的な脈理が平行な超低膨張ガラス(C-7972)試料に対するLSAW速度の測定位置を示す図、BはAのX1, X2, X3の測定線に対するLSAW速度の測定結果を示す図、CはBのY1, Y2, Y3の測定線に対するLSAW速度の測定結果を示す図。
【図20】Aは試料面に対して周期的な脈理が垂直な超低膨張ガラス(C-7972)試料に対するLSAW速度の測定位置を示す図、BはAのZ1, Z2, Z3の測定線に対するLSAW速度の測定結果を示す図、CはBのY1, Y2, Y3の測定線に対するLSAW速度の測定結果を示す図。
【図21】Aは試料面に対して周期的な脈理が垂直な超低膨張ガラス(C-7972)試料に対してz方向に試料中心±1 mmの範囲を0.02 mmおきに測定した結果を示す図、Bは試料中心付近の1 mm×1 mmの領域をz方向に0.05 mmおき、y方向に0.25 mmおきに2次元分布の測定を行った結果を示す図。
【図22】Aは図18Cに示す周期的な脈理に垂直な試料に対して、LFB音響レンズによる超音波集束ビームの集束方向を脈理に垂直にした場合の超音波測定領域を示す図、Bはその方向を脈理に平行にした場合の超音波測定領域を示す図、Cは脈理が基板表面に対してθ傾いたときの試料表面の脈理の周期を表す図。
【図23】Aは周期的な脈理が試料面に対して12°傾いた試料に対してz方向に試料中心付近を0.1 mmおきに測定した結果を示す図、Bは試料中心付近の領域をz方向に0.1 mmおき、y方向に1 mmおきに2次元分布の測定を行った結果を示す図。
【図24】Zerodurに対するLSAW速度の分布を示す図。
【図25】Zerodurに対する化学組成比を示す図。
【図26】Zerodurに対する密度を示す図。
【図27】AはC-7971のLSAWに対するVI(z)曲線の波形減衰率に関連する式(33)の右辺の各項の変化を示す図、BはC-7971の解析時の解析区間を示す図、CはZerodurのLSAWに対するVI(z)曲線の波形減衰率に関連する式(33)の右辺の各項の変化を示す図、DはZerodurの解析時の解析区間を示す図。
【図28】C-7972、Zerodur、
【数15】
JP0004036268B2_000016t.gif
に対するLSAW速度の再現性を示す図。
【図29】C-7972、Zerodur、
【数16】
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に対して、パラメータの異なるデバイスを用いて測定したV(z)曲線を示す図。
【図30】超低膨張ガラス(C-7971)の化学的・物理的特性に対する縦波音速の感度と分解能を示す図。
【図31】LSAW速度、LSSCW速度、縦波音速の測定精度と、それらの速度測定による線膨張係数、TiO2濃度、密度に対する分解能を示す図。
【図32】この発明による超低膨張ガラスの線膨張係数の評価手順を示すフロー図。
【符号の説明】
【0066】
1:超音波トランスデューサ、2:LFB音響レンズ、3:ガラス試料、4:水カプラ、5:焦点面、6:RFパルス、7:バッファーロッド、8:カプラ、8’:接着層、9:空気、10:ガラスインゴット、11:脈理、12:ガラス基板、13:超音波測定領域、14:ガラス基板表面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
18
【図20】
19
【図22】
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【図24】
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【図25】
22
【図26】
23
【図27】
24
【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
28
【図32】
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【図21】
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【図23】
31