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明細書 :微生物群集解析による水処理施設の稼動状況の判断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4815581号 (P4815581)
公開番号 特開2006-159046 (P2006-159046A)
登録日 平成23年9月9日(2011.9.9)
発行日 平成23年11月16日(2011.11.16)
公開日 平成18年6月22日(2006.6.22)
発明の名称または考案の名称 微生物群集解析による水処理施設の稼動状況の判断方法
国際特許分類 C02F   3/12        (2006.01)
C02F   1/00        (2006.01)
C02F   3/34        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C02F 3/12 ZNAH
C02F 1/00 D
C02F 1/00 J
C02F 1/00 V
C02F 3/34 101A
C02F 3/34 101B
C02F 3/34 101C
C12Q 1/04
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 23
出願番号 特願2004-352125 (P2004-352125)
出願日 平成16年12月6日(2004.12.6)
審査請求日 平成19年11月12日(2007.11.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】中井 裕
【氏名】小田和 賢一
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特開平09-285299(JP,A)
特開2004-242578(JP,A)
特開2002-101884(JP,A)
特開2001-017175(JP,A)
特開2004-008176(JP,A)
特開2002-084908(JP,A)
調査した分野 C02F3/00-3/34
C02F1/00
C12Q1/04
C12Q1/68
特許請求の範囲 【請求項1】
β-proteobacteriaに属するアンモニア酸化細菌であるNm.urea/oligotropha/marinaクラスターまたはNm.europaeaクラスターの少な
JP0004815581B2_000006t.gifまたは生物化学的酸素要求量(BOD)の値によって、指標となる微生物群を使い分けることを特徴とする、微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで水処理の状況を表示する方法。
【請求項2】
NH-Nが400mg/1000cm以下の場合にはNm.urea/oligotropha/marinaクラスターを指標とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
NH-Nが400mg/1000cm以上の場合にはNm.europaeaクラスターを指標とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
T-Nが1500mg/1000cm以下の場合にはNm.urea/oligotropha/marinaクラスターを指標とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
T-Nが1500mg/1000cm以上の場合にはNm.europaeaクラスターを指標とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
BODが3000mg/1000cm以下の場合にはNm.urea/oligotropha/marinaクラスターを指標とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
BODが3000mg/1000cm以上の場合にはNm.europaeaクラスターを指標とする請求項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は複合微生物を利用した水処理施に関する。詳しくは、稼働状況を微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで水処理施設の稼動状況の判断方法、および当該判断方法を備えた水処理施設に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水処理に関しては、活性汚泥のような複合的な生物反応を利用した処理方法が広く用いられる。このような生物処理においてその中にどのような微生物が存在しているかは明確化されることなく用いられているのが現状である。中でも、汚水中に高濃度で含まれるアンモニア態窒素は、水域汚染や悪臭の原因となり、その除去は重要であるが、アンモニア除去を担うアンモニア酸化細菌(以下、AOBと称することもある)の動態については不明な点が多い。
【0003】
最近、これらの微生物系の動態を把握して、水処理施設のプロセス診断に用いる試みが幾つかなされている。
【0004】
たとえば、特開2002-101884には微生物をDNA配列の違いにより分離して得られる増殖状況と水処理反応の状況を比較して、主に鉄処理の排水処理に活かす試みが開示されている。
【0005】
また、特開2004-8176には、混合微生物の遺伝子解析データおよび過去の解析データの類似度を対比する混合微生物系の監視方法および管理方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、指標とする微生物の設定方法や汚水の窒素濃度の影響については示されておらず、具体的に水処理施設の稼動状況の判断方法を備えた水処理施設が望まれていた。

【特許文献1】特開2002-101884号公報
【特許文献2】特開2004-159599号公報
【特許文献3】特開2004-008176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、環境保全等に関する複合微生物作用を利用したさまざまな水処理プロセスにおいて、従来ブラックボックス的に扱われてきた複合微生物系の菌相変化と浄化作用の関係に基づいた新たな水処理プロセスの状態診断方法と制御方法を提供する。特に、畜舎汚水処理について、指標とする微生物の設定方法や汚水の窒素濃度の影響を明らかにし、水処理施設の稼働状況のモニタリングや施設の性能評価・性能保証に用いることを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複合微生物を利用した水処理施設の稼働状況を微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで把握する水処理施設の稼動状況の判断方法が得られる。
【0009】
また、複合微生物を利用した水処理施設の稼働状況を微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで把握する水処理施設が窒素浄化施設、あるいは、水処理施設が回分式または連続式の間欠曝気処理方法の施設、あるいは水処理施設が畜舎汚水処理施設である水処理施設の稼動状況の判断方法が得られる。
【0010】
また、処理槽内で優占的なアンモニア酸化細菌の種を特定し、且つ、当該アンモニア酸化細菌の至適生息条件を明確にすることを特徴とする水処理施設の稼動状況の判断方法が得られる。
【0011】
また、微生物群の優占株を指標とすることを特徴とする、あるいは、外部から接種された優占株を指標とすることを特徴とする、あるいは、優占株がアンモニア酸化細菌(AOB)であることを特徴する、あるいは、優占株が、β-proteobacteriaに属するアンモニア酸化細菌であることを特徴とする、あるいは、β-proteobacteriaに属するアンモニア酸化細菌が、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスターまたはNm. europaeaクラスターであることを特徴とする、複合微生物を利用した水処理施設の稼働状況を微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで把握する水処理施設の稼動状況の判断方法が得られる。
【0012】
また、汚水の水質によって指標となる優占株を使い分けることを特徴とする、あるいは、汚水を、アンモニア態窒素(NH4+-N)、全窒素(T-N)、または生物化学的酸素要求量(BOD)を指標として調整することを特徴とする、あるいは、汚水のNH4+-N が400mg/1000cm3以下の場合には、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター、400mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることを特徴とする、あるいは、汚水のT-Nが1500mg/1000cm3以下の場合には、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター、1500mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることを特徴とする、あるいは、汚水のBODが3000mg/1000cm3以下の場合には、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター、3000mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることを特徴とする複合微生物を利用した水処理施設の稼働状況を微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで把握する水処理施設の稼動状況の判断方法。
【0013】
また、複合微生物を利用した水処理施設の稼働状況を微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで把握する水処理施設が得られる。
【0014】
また、Nm. urea/ oligotrapha/
marinaクラスターを優占株として含む汚泥を接種することを特徴とする、NH4+-Nが400mg/1000cm3以下、T-Nが1500mg/1000cm3以下、またはBOD3000mg/1000cm3以下である汚水の処理施設が得られる。
【0015】
また、Nm. europaeaクラスターを優占株として含む汚泥を接種することを特徴とする、NH4+-N が400mg/1000cm3以上、T-Nが1500mg/1000cm3以上、またはBOD3000mg/1000cm3以上である汚水の処理施設が得られる。
【発明の効果】
【0016】
上記課題を解決するために、複合微生物を利用した水処理プロセスにおいて、畜舎汚水処理過程における細菌群集構造やアンモニア酸化細菌の動態に着目した。中でも、畜舎汚水処理過程における年間を通して長期的に検出された菌株(優占株)やβ-proteobacteriaに属するAOB群を解析した。
【0017】
その結果、大部分の畜舎汚水処理槽内で、1~2種のβ-proteobacteriaに属するAOBが主体的に窒素除去を担っていること、および、その優占株のAOBクラスターは汚水のアンモニア態窒素(以後、NH4+-Nと称することもある)、全窒素(以後、T-Nと称することもある)、または生物化学的酸素要求量(以後、BODと称することもある)によって決まってくることを見出した。これらの情報によって、畜舎汚水処理槽の運転管理を効率よく行うことができることを見出した。さらに、特定された優占株を含む汚泥を既存のまたは新規の汚水処理施設に接種することで、当該汚水処理施設の運転管理を効率よく行うことが可能であることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明によれば、複合微生物を利用した水処理施設の稼働状況を微生物群集構造の分子生物学的解析を行うことで、あるいは解析済みの複合微生物を接種することによって、水処理施設の稼動状況を判断する方法が得られる。なかでも、処理槽内で優占的なアンモニア酸化細菌の種数を特定し、且つ、当該アンモニア酸化細菌の至適生息条件を明確にして水処理施設の稼動状況を判断できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明において水処理施設はいかなる施設でもよいが、特に、窒素浄化施設に好適にもちいることができる。曝気方法など処理方法についても特に限定されず、例えば、回分式または連続式の間欠曝気処理方法の施設が好ましい。中でも、回分式間欠曝気処理方法の施設はコスト面、施設規模、維持管理、処理能の安定性が良く、好適に用いることができる。同法は同一処理槽で流入、曝気、沈殿、放流の各工程を時間的に繰り返し、さらに曝気を間欠的に行うことで、好気工程と嫌気工程を組み込むものであり、比較的低コストで高い有機物分、窒素、リン除去が見込める。また、浄化する汚水は、とくに限定されてないが、畜舎汚水処理に適用することができる。
【0020】
本発明においては、微生物群の優占株を特定して、稼動状況の指標として用いることができる。当該優占株は、年間を通して長期的に検出された菌株を用いれば良い。特に、窒素処理を目的とする施設では、処理槽内でアンモニア酸化細菌(AOB)の種数を特定し優先株を特定して水処理施設の稼動状況の判断方法の指標に用いることができる。アンモニア酸化細菌としては、具体的には、β-proteobacteriaに属する、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスターまたはNm. europaeaクラスターを指標とすることができる。
【0021】
投入される汚水(処理原水、または単に汚水と称される場合がある)について、窒素濃度や生物化学的酸素要求量など各種値を調整し、それらの値によって指標となる優占株を使い分けることができる。、窒素濃度として、アンモニア態窒素(NH4+-N)の値を用いる時には、400mg/1000cm3以下の場合には、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター、400mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることができる。
【0022】
また、窒素濃度として、全窒素(T-N)が1500mg/1000cm3、以下の場合には、Nm. urea/oligotrapha/ marinaクラスター、1500mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることができる。
【0023】
また、物化学的酸素要求量(BOD)の値で場合分けすることもでき、3000mg/1000cm3以下の場合には、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター、3000mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることができる。
【0024】
これら汚水の分析値であるNH4+-N 、T-N 、BODの測定方法は各種公知の測定法を用いることができる。あるいは実施例に示した方法で測定することができる。
【0025】
微生物群からの優占株の特定方法は、一般的な分子生物学的解析手法によって行うことができる。たとえば汚泥からRNAを抽出し、β-proteobacteriaに属すAOBに特異的なプライマーを用いて、PCR-DGGEおよびクローンライブラリー法によりAOBが持つ機能遺伝子(アンモニアモノオキシゲナーゼAをコードする遺伝子)の解析を行えばよい。あるいは実施例に示した方法により、微生物群から優占株を特定することができる。
【0026】
水処理施設で優占株を把握できた場合、当該施設ではその微生物を指標として稼動状況を判断することが出来る。例えば、年間を通じてその株の状況を把握すればよい。その方法は例えば、当該菌株に特徴的なRNAなどの遺伝子を分子生物学的手法で定量することで把握することができる。
【0027】
また、新規に建設する汚水処理施設に対して、あるいは、既存の汚水処理施設に対して、その処理水質に合わせた微生物活性を有する微生物群を接種することができる。当該微生物群は、指標とすべき優占株が特定されているなど、分子生物学的な情報の解析済みのものを用いることが望ましい。当該微生物群を接種する場合、それらを含む汚泥として接種することができる。
【0028】
たとえば、T-Nを1500mg/1000cm3、以下に設定する汚水処理施設の場合には、Nm. urea/
oligotrapha/ marinaクラスター、1500mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることがこできる。
【0029】
同様に、処理原水の指標として、NH4+-Nの値を用いる時には、400mg/1000cm3以下の場合には、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター、400mg/1000cm3以上の処理槽ではNm. europaeaクラスターを用いることができる。
【0030】
また、処理原水のBODを3000mg/cm3以下に設定する汚水処理施設には、Nm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター、3000mg/1000cm3以上に設定する汚水処理施設には、Nm. europaeaクラスターを優占種とする活性汚泥を接種することができる。それにより、汚水処理装置の立ち上げを短期間に正確に実施できる。
【0031】
優占株の特定された汚泥を接種する方法は、分子生物学的な新たな解析を省略できることから、汚水処理施設の監視方法として大変有用である。この方法は新規に建設する汚水処理施設のみならず、既設の処理施設に接種してもよく、既設の処理施設に接種する場合には稼動状況を管理するのみならず、処理機能の改善を行うことも可能である。
次に、本発明を実施例に基づき、詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
なお、本実施例において、NH4+-N、T-Nおよび BODは以下の方法で測定した。
NH4+-NおよびT-N については、試料を1500×g、10分遠心分離後、孔経0.45μmのメンブレンフィルター(MILLIPORE)を用いてろ過し、そのろ液を分析に用いた。
NH4+-NはAmmonia Salicylate(HACH)とAmmonia Cyanurate(HACH)を用いたサリチル酸法により測定した。
T-Nはアルカリ性ペルオキソ二硫酸カリウムを加え加熱処理(120℃、30分)後、NitraVer3(HACH)を用いてカドミウム還元法により測定した。
【0033】
BODは懸濁浮遊物質を除去した後、BOD計測器(BOD-2000型:セントラル科学)を用い、微生物電極法により測定した。
【0034】
〔実施例1〕
国内で普及している水処理施設について、真正細菌群集構造およびAOBの動態を解析した。乳牛50頭を飼養する畜舎から排出される汚水量5.0m3/日、BOD量18.5kg/日の汚水処施設を対象とした(A槽と称する)。当該施設は、回分式間欠曝気槽であり、24時間1サイクル(投入1時間、曝気6時間、静置6時間、曝気6時間、静置4時間、放流1時間)で運転されていた。A槽の汚水の分析値を表1に示す。
【0035】
【表1】
JP0004815581B2_000002t.gif

【0036】
1回の処理サイクルにおける槽内のアンモニア酸化細菌の群集構造を解析する目的で、2月(冬期)、4月(春期)、9月(夏期)において、各季節、曝気開始後(0、)6、12、21時間後の汚泥混合液を滅菌済み容器で採水し、核酸抽出に用いた。
(1)核酸抽出およびRT-PCR
Zhongtangら(1999)の方法に、超音波処理工程を加えた方法で核酸抽出をおこなった。その後、全RNAのみを得るため、核酸溶液はRNase-free DNase(Takara)で37℃、30分処理され、10pMの518rプライマーとReverTra Ace-α(TOYOBO)を用いて、用法にしたがい逆転写反応を行った。合成された相補的なDNA溶液1μlを以下のPCR-DGGEに用いた。
【0037】
Rotthauweら(1997)によって設計されたamoA1-F/amoA2-Rプライマーセット(amoA1-F:5’-GGGGTTTCTACTGGTGGT-3’;amoA2-R:5’-CCCCTCKGSAAAGCCTTCTTC-3’)を用いて、PCR法により、amoA491bpを増幅した。ただし、DGGE泳動のため、amoA1-Fプライマーには33塩基のGCクランプ(5’-CCGCCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGG-3’)を5’側に付加した(Ovedら、2001)。PCR産物は1.2%アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイド溶液で染色して確認した後、DGGEをおこなった。染色後、DGGEバンドパターンを記録し、明瞭なバンドについては切り出し、配列決定をおこなった。再増幅PCR時にGCクランプのついていないamoA1-F/amoA2-Rプライマーセットを用いた。
【0038】
核酸抽出後、RT-PCRにより合成された相補的なDNA溶液は-80℃にて保存し、GCクランプの付加されていないamoA1-F/amoA2-Rを用いて、DGGE解析時と同様の条件で増幅されたamoAのPCR産物をクローンライブラリー解析に用いた。クローニングは、Perfectly Blunt cloning kit(Invitrogen)を用い、用法に準じて行った。その後、この反応液をNovaBlue SinglesTMCompetent
Cells(Invitrogen)に加え,氷中に5分,42℃で30秒,氷中に5分で形質転換させた後、最終濃度50μg/cm3のアンピシリン(和光純薬)を含むLB培地に移し、37℃ 15時間培養した。インサートの方向と配列をABI PRIMS 310 Autosequencer(Applied Biosystems)により決定した。
【0039】
DGGEおよびクローンライブラリー法で決定した全配列およびデータベース上の相当配列を用い、系統樹推定のもととなる進化距離の計算にはKimuraのモデル(Kimura、1980)を使用し、距離行列法の一つである近隣結合法(Neighbor-Joining method)(Saitouら、1987)を用いて系統樹を作成した。
【0040】
結果を以下に示す。
(5)DGGE解析結果
2003年2月、4月、9月における曝気開始0、6、12時間後の活性汚泥についてPCR-DGGEによるamoA解析を行った。その電気泳動像を図1に示す。この泳動像の変性剤濃度は写真上部が30%、写真下部が60%である。また、DGGEバンドの近縁種に関する情報を表2に示す。
【0041】
【表2】
JP0004815581B2_000003t.gif

【0042】
2月の電気泳動像について、曝気開始0時間後に泳動図の中間部に4本のバンド(wa01、wa02、wa03、wa04)が検出され、曝気開始6時間後、12時間後でも同様に4本のバンドが同一位置に見られた。処理過程におけるバンドパターンの明瞭な変化は観察されなかった。wa01、wa02、wa03、wa04を切り出し、塩基配列を決定したところ、すべてのバンドは同一配列で、相同性検索を行った結果、未培養なamoA配列(Uncultured
bacterium clone M-20)にもっとも高い相同性(99%)を示した。また、近縁な既知種はNitrosomonas oligotropha(以下、Nm. oligotropha)だった。
【0043】
4月の電気泳動像について、 曝気開始0時間後、6時間後からは明瞭なバンドパターンを検出できなかったが、12時間後では2本のバンド(sa01、sa02)が検出された。また、同刻の泳動像の上部には、帯状の蛍光部分(スメア)が見られた。バンドsa01、sa02を切り出し、塩基配列を決定したところ、両者は同一の配列であった上、2月に検出されたamoA配列と100%一致するNm. oligotrophaに近縁な配列だった。
【0044】
9月の電気泳動像について、曝気開始0時間後からは明瞭なバンドパターンを検出できなかったが、6時間後では3本のバンド(na01、na02、na03)が泳動図の上部に、4本のバンド(na04、na05、na06、na07)が泳動図の中間部に見られ、12時間後でも6時間後と同様のバンドパターンが見られた。これらのバンドを切り出し、塩基配列を決定したところ、バンドna01、na02、na03は互いに同一の配列だった上、2月、4月に検出されたamoA配列と100%一致するNm. oligotrophaに近縁な配列だった。一方、バンドna04、na05、na06、na07についても塩基配列を決定したところ、互いに同一配列で、未培養なAOB(Uncultured ammonia-oxidizing beta proteobacterium)にもっとも高い相同性(93%)を示し、近縁な既知種はNitrosomonas urea(以下、Nm. urea)だった。
【0045】
以上のように、DGGEを用いたamoA解析により検出されたAOB種は2月、4月、9月にて、それぞれ1種、1種、2種で、全季節を通しても2種のみだった。さらに、2種のうち1種は2月、4月、9月を通して検出されたため、長期的に1種のβ-proteobacteriaに属すAOB種が優占的だったことも明らかとなった。これは未培養なAOB(Uncultured bacterium clone M-20)にもっとも高い相同性(99%)を示す、Nm. oligotrophaに近縁(96%)な種であった。また、もう一方の9月のみに検出された配列も、未培養なAOB(Uncultured ammonia-oxidizing beta proteobacterium)ともっとも相同性が高く(93%)、Nm. marinaに近縁な(86%)種であった。
【0046】
DGGE解析およびクローンライブラリー解析で得られた決定配列(450bp)をデータベース上のAOB種のamoA相当配列部分とともに系統樹を作成した結果、決定配列はすべてNm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスターに属していた(図2)。
【0047】
なお、8週間の培養後、2種類のAOB選択培地のいずれからも、多数のコロニーが形成されたものの、各培地で10個ずつのコロニーについてPCRによりamoAの有無を検査したところ、全てのコロニーに増幅はみられず、β-proteobacteriaに属すAOB株を得ることはできなかった。
【0048】
以上より、回分式間欠曝気処理で運転されるA槽では長期的に1~2種のAOBが優占化し、これらはすべてNm.
ureae/ oligotropha/ marinaクラスターに属していたことを示した。
【0049】
以上より、窒素除去の安定化を目指したAOBの人為的な制御を実現する上ではa.処理槽内で優占的なAOBの種数、b.AOBクラスターの至適生息条件を明確にすることが好ましいことが判った。
【0050】
〔実施例2〕
12カ所の畜舎汚水処理槽における優占アンモニア酸化細菌の解析回分式処理槽内の優占AOBは種レベルでそれほど多様ではないという実施例1の結果を受け、ほかの12カ所の畜舎汚水処理槽についてもAOB種の多様性を評価した。
【0051】
国内の回分式処理槽8カ所と連続式処理槽4カ所の計12カ所の汚水処理槽に対し、水質分析とAOB解析を行った。各槽の運転条件および水質を表3、表4に示す。
【0052】
【表3】
JP0004815581B2_000004t.gif

【0053】
【表4】
JP0004815581B2_000005t.gif

【0054】
各槽の原汚水、曝気槽内汚泥混合液、処理水(消毒前の放流水)の試料を4℃にて郵送し、実施例1に準じた分析を行った。
【0055】
結果を図3~図14に示す。DGGEによるamoA解析の結果、12カ所のうち8カ所の畜舎汚水処理槽では1種のAOBのみが検出され、2カ所の畜舎汚水処理槽では2種のAOBのみが検出された。
【0056】
DGGEで得られた配列、450bp分をデータベース上のAOB種のamoA相当配列部分とともに系統樹を作成した結果、決定配列はNm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスターやNm. europaeaクラスターに属していることがわかった(図15)。
【0057】
優占AOBをクラスターごとに見てみると、12カ所のうち1カ所(E槽)を除き、すべてNm.europaeaクラスターに属し、E槽では実施例1におけるA槽と同じNm. urea/ oligotrapha/marinaクラスターに属した。また、Nitrospiraクラスター(Nitrospira属)に属す配列はすべての槽で一切検出されなかった。
【0058】
さらに、各処理槽における原汚水のNH4+-N、T-N濃度およびBODと優占AOBクラスターの関係について、調べた(図16~図18)。NH4+-N濃度については、原汚水がおよそ400mg/1000cm3と豚舎汚水としては比較的低い濃度の場合、Nm. ureaやN. oligotraphaといったNm.
urea/ oligotrapha/ marinaクラスターに属すAOB種が優占化し、それ以上の高いNH4+-N濃度下ではNm. europaeaクラスターが優占化しやすい傾向がみられた。T-N およびBODについてもそれぞれ1,500mg/1000cm3、3,000mg/1000cm3を境界に、原汚水がそれより低い濃度下ではNm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスターに属すAOB種が優占化し、それより高い濃度下ではNm. europaeaクラスターが優占化しやすい傾向がみられた。
【0059】
すなわち、施設の窒素浄化能の指標として、特定の優占AOB種(Nm.
europaeaクラスター、またはNm. urea/ oligotrapha/ marinaクラスター)を用いることができること、および、原汚水の窒素濃度をコントロールすることで、優占株の種類が一定となり、稼動状況の指標として長期間用いることが可能であることが判った。
【0060】
〔実施例3〕水処理施設での実施の例
実施例1と同様の方法で優占株がNm. ureae/ oligotropha/ marinaクラスターに特定された回分式間欠曝気処理方法の水処理施設について、優占株を指標として施設の管理行った。なお、当該施設の原汚水のNH4+-N濃度は400mg/cm3以下で管理した。
【0061】
すなわち、定期的(4ヶ月おき)に汚泥のサンプリングを行い、実施例1と同様に、分子生物学的手法を用いて、処理槽内のNm. ureae/ oligotropha/ marinaクラスターに属する菌株を定量的に観察した。観察した期間において、当該株は常に優占であった。この期間、本水処理施設は、窒素の処理に関して、ほぼ一定の処理能力を維持していたことが水質分析によって示されており、本優占株の安定が窒素処理能力の安定化に貢献したものと判断した。
【0062】
〔実施例4〕水処理施設への微生物接種の実施の例
原汚水のNH4+-N濃度を400mg/cm3以下に設定した水処理施設において、優占株がNm. ureae/ oligotropha/ marinaクラスターと特定された活性汚泥を接種して運転を行った。実施例3同様に観察を行った結果、優占株はNm. ureae/ oligotropha/
marinaクラスターのまま推移し、窒素の処理も安定していた。このことから、本クラスターの微生物群集を優占に持つ活性汚泥を接種することは、水処理施設の維持に有効であると判断した。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】A槽におけるAOB解析のためのDGGE像
【図2】A槽で検出されたAOBの系統分類
【図3】B槽のDGGEによるAOB解析結果
【図4】C槽のDGGEによるAOB解析結果
【図5】D槽のDGGEによるAOB解析結果
【図6】E槽のDGGEによるAOB解析結果
【図7】F槽のDGGEによるAOB解析結果
【図8】G槽のDGGEによるAOB解析結果
【図9】H槽のDGGEによるAOB解析結果
【図10】I槽のDGGEによるAOB解析結果
【図11】K槽のDGGEによるAOB解析結果
【図12】M槽のDGGEによるAOB解析結果
【図13】N槽のDGGEによるAOB解析結果
【図14】O槽のDGGEによるAOB解析結果
【図15】検出された配列を含めた系統樹
【図16】原汚水のNH4+-N濃度と優占AOBクラスターの関係
【図17】原汚水のT-N濃度と優占AOBクラスターの関係
【図18】原汚水のBOD濃度と優占AOBクラスターの関係
図面
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【図18】
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