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明細書 :アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4900569号 (P4900569)
公開番号 特開2007-246294 (P2007-246294A)
登録日 平成24年1月13日(2012.1.13)
発行日 平成24年3月21日(2012.3.21)
公開日 平成19年9月27日(2007.9.27)
発明の名称または考案の名称 アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法
国際特許分類 C04B  35/453       (2006.01)
C04B  35/64        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
H01L  35/22        (2006.01)
FI C04B 35/00 P
C04B 35/64 E
H01L 35/34
H01L 35/22
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2006-067968 (P2006-067968)
出願日 平成18年3月13日(2006.3.13)
審査請求日 平成21年3月10日(2009.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】関野 徹
【氏名】西條 佳孝
【氏名】山本 泰生
【氏名】安達 智彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100108084、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 睦子
【識別番号】100115484、【弁理士】、【氏名又は名称】林 雅仁
【識別番号】100148998、【弁理士】、【氏名又は名称】菱田 高弘
審査官 【審査官】武石 卓
参考文献・文献 特開平04-219359(JP,A)
特開2002-118296(JP,A)
KIM,Kyoung Hun et al.,Sintering Characteristics of ZnO Fabricated by Spark Plasma Sintering Process for High Temperature Thermoelectric Materials Application,Journal of the Korean Ceramic Society,KR,Korean Ceramic Society,2003年,Vol.40, No.6, pp.560-565
KATSUYAMA,S. et al.,Thermoelectric properties of (Zn1yuMgy)1xAlxO ceramics prepared by the polymerized complex method ,Journal of Applied Physics,米国,American Inst. of Physics,2002年 8月 1日,Vol.92, No.3, pp.1391-1398
調査した分野 C04B 35/453
C04B 35/64
H01L 35/34
H01L 35/22
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記工程を順に有する、アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法:
(1)酸化亜鉛とアルミナとを含有する原料混合物であって、アルミナ含有量が酸化亜鉛重量とアルミナ重量との合計量の2重量%以下である原料混合物を用意する工程1、
(2)前記原料混合物からなる圧粉体を、昇温速度50℃/分以上で800~1100℃まで昇温させる工程2、
(3)昇温させた前記圧粉体を、ガス圧0.05~0.13MPaの不活性ガス中、40MPa以下で加圧しながら、且つ、前記温度を維持しながら、10分以下で放電プラズマ焼結する工程3、及び
(4)前記放電プラズマ焼結により得られる焼結体を、少なくとも600℃になるまで、降温速度50℃/分以上で降温させる工程4。
【請求項2】
原料混合物中のアルミナ含有量が、酸化亜鉛重量とアルミナ重量との合計量の1~2重量%である、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
酸化亜鉛が粉末であり、前記粉末の平均粒子径が2μm以下である、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項4】
アルミナが粉末であり、前記粉末の平均粒子径が5nm~2μmである、請求項のいずれかに記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法に関する。より詳細には、熱電変換材料として有用な、低熱伝導率及び高導電率の特性を兼備したアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱電変換材料としては、p型とn型とが知られている。熱電変換材料は、材料の温度差に基づいて電気を取り出すことができる機能材料であり、その性能は、一般に性能指数Zによって示される。具体的には、性能指数Zは、下記式(1)
Z=S×σ/κ (1)
(但し、Sはゼーベック係数、σは導電率、κは熱伝導率を示す。)
によって示される。ここで、式中の(S×σ)は、特に「出力因子」と呼ばれる。
【0003】
熱電変換材料の性能を高める(Zを大きくする)ためには、式(1)から考察すると、出力因子を大きくするとともに、熱伝導率を小さくすることが重要となる。
【0004】
熱電変換材料としては金属酸化物が良く知られている。特に亜鉛の一部をアルミニウムに置換した酸化亜鉛(Zn1-xAlO)は、n型熱電変換材料として公知であり、廃熱発電などの高温域での用途展開が期待されている。例えば、特許文献1~4には、亜鉛の一部をアルミニウムに置換した酸化亜鉛(以下「アルミニウム含有酸化亜鉛」とも言う)からなる熱電変換材料及びその用途について記載されている。
【0005】
当該アルミニウム含有酸化亜鉛は、次のような特徴を有する。即ち、希少元素を含まず、安価に製造できる,人体に対する有害性が低い,出力因子が他のn型熱電変換材料よりも大きい,などが長所として挙げられる。他方、熱伝導率が他のn型熱電変換材料に比して極端に大きいという特徴も有する。そのため、大きな出力因子を有するにもかかわらず、熱伝導率も大きいために性能指数Zを十分に高めることができないという問題がある。
【0006】
上記問題を改善するためには、例えば、材料中に気孔を導入して相対密度を低下させて、熱伝導率κを小さくすることが挙げられる。即ち、多孔化による熱伝導率の低下である。この場合における相対密度と熱伝導率との関係は、Maxwellの式により見積もりが可能である。つまり、ZnOの熱伝導率を30W/mKとし、気孔(空気)の熱伝導率を0.024W/mKとすると、相対密度を70重量%に小さくする(30重量%の気孔の導入)ことにより、熱伝導率は16W/mKと約半分にまで小さくすることができる。
【0007】
しかしながら、上記手法を採用しても、性能指数Zを十分に高めるには至っていない。理由は、相対密度の低下により、導電経路も減少するために、導電率σについても同時に低下させてしまうからである。なお、相対密度と導電率との関係は限定的ではないが、一般には相対密度が90%未満になると導電率は著しく低下する。このような理由に基づき、従来法では、常圧焼結法、加圧焼結法、真空焼結法、放電プラズマ焼結法等のいかなる製造方法によっても、低熱伝導率及び高導電率の特性を兼備したアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は得られていない。

【特許文献1】特開昭62-132380号公報
【特許文献2】特開平8-186293号公報
【特許文献3】特開2001-44520号公報
【特許文献4】特開2002-118300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱電変換材料として有用な、低熱伝導率及び高導電率の特性を兼備したアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法として、特定条件における放電プラズマ焼結を採用する場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法に関する。
【0016】
.下記工程を順に有する、アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法:
(1)酸化亜鉛とアルミナとを含有する原料混合物であって、アルミナ含有量が酸化亜鉛重量とアルミナ重量との合計量の2重量%以下である原料混合物を用意する工程1、
(2)前記原料混合物からなる圧粉体を、昇温速度50℃/分以上で800~1100℃まで昇温させる工程2、
(3)昇温させた前記圧粉体を、ガス圧0.05~0.13MPaの不活性ガス中、40MPa以下で加圧しながら、且つ、前記温度を維持しながら、10分以下で放電プラズマ焼結する工程3、及び
(4)前記放電プラズマ焼結により得られる焼結体を、少なくとも600℃になるまで、降温速度50℃/分以上で降温させる工程4。
2.原料混合物中のアルミナ含有量が、酸化亜鉛重量とアルミナ重量との合計量の1~2重量%である、上記項1に記載の製造方法。
3.酸化亜鉛が粉末であり、前記粉末の平均粒子径が2μm以下である、上記項1又は2に記載の製造方法。
4.アルミナが粉末であり、前記粉末の平均粒子径が5nm~2μmである、上記項1~3のいずれかに記載の製造方法。

以下、本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法について説明する。
【0020】
アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体
本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、一般組成式:Zn1-yAl1+δ
〔但し、0<x≦0.035、0≦y≦x、1+δは酸素原子数を示す〕
によって示される。焼結体におけるアルミニウムの含有態様は限定的ではなく、例えば、酸化亜鉛の亜鉛原子の一部がアルミニウム原子に置換されたいわゆる置換型固溶の態様、酸化亜鉛格子の間にアルミニウム原子が入り込んだいわゆる侵入型固溶の態様等がある。
【0021】
アルミニウムの含有量を示すxは0<x≦0.035であれば良いが、0.015≦x≦0.035がより好ましい。
【0022】
亜鉛の含有量は1-yで表される。yの採り得る値は、例えば、上記したアルミニウム含有態様に応じて変動する。yの採り得る値は限定的ではないが、yは0≦y≦xであればよい。
【0023】
酸素原子数は1+δで表される。δの採り得る範囲は限定的ではないが、0≦δ≦(3x-2y)/2の範囲内であれば好ましい。
【0024】
本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、従来品と比較すると、相対密度が低い場合であっても導電率σの低下が抑制されている。具体的には、相対密度が70~90%の場合に、20℃における導電率が250S/cm以上である。また、相対密度が80~90%の場合に、20℃における導電率が500S/cm以上である。
【0025】
なお、本明細書における相対密度は、次式により算出される密度である。即ち、気孔や欠陥を含むバルク体の実測密度を嵩密度(実密度)とし、気孔や欠陥を含まないとして理論的に算出される密度を理論密度とし、両密度を[嵩密度/理論密度×100(%)]に代入することによって算出される密度である。
【0026】
本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の平均結晶粒子径は限定的ではないが、2μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。なお、この値は、電子顕微鏡による観察により無作為に選択した100個以上の結晶粒子についてインターセプト法又は画像解析法により求めた直径の測定値の算術平均である。
【0027】
本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、相対密度の低下に伴って、熱伝導率κは低下する。これは、相対密度の低下によって多孔化することに基づく効果であり、かかる相関関係はmaxwellの式により理論的に特定される相関曲線と実質的に一致する。また、相対密度を固定した場合には、焼結体の測定温度が高くなるに従って熱伝導率κは低下するため、高温環境下で動作させる材料として用いる場合ほど、熱伝導率κを低くした状態で使用できる。
【0028】
以上の通り、本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、相対密度を低くした場合に、熱伝導率κを低くできるとともに、導電率σの低下を従来の常識を覆すかの如く、高く維持することができる。このような特性を有するため、本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、熱電変換材料の性能指数Zが高い。また、相対密度を低くした材料で使用する場合には、熱電変換材料の軽量化、耐熱衝撃特性の改善、コスト削減等にも寄与する。
【0029】
より具体的には、性能指数Zは下記式(1)
Z=S×σ/κ (1)
(但し、Sはゼーベック係数を示す。σは導電率:S/cmを示す。κは熱伝導率:W/mKを示す。)により定義され、相対密度が65~90%である場合に、20℃における性能指数Zは0.2×10-5/K以上である。また、相対密度が80~90%である場合に、20℃における性能指数Zは0.5×10-5/K以上である。
【0030】
上記性能指数で評価される熱電変換特性は、従来品に対して明確に優位性があり、即ち、本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体はn型熱電変換材料として廃熱発電、地熱発電、太陽熱発電等の高温域での用途展開に対して有利である。なお、n型熱電変換材料は材料内部の高温端から低温端に向かって電子が流れる(電流の向きは逆)ことにより、電流を取り出すことができる。
【0031】
アルミニウム含有酸化亜鉛焼結体の製造方法
本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、次の工程を順に有する、放電プラズマ焼結法を用いた製造方法によって好適に製造することができる:
(1)酸化亜鉛とアルミナとを含有する原料混合物であって、アルミナ含有量が酸化亜鉛重量とアルミナ重量との合計量の2重量%以下である原料混合物を用意する工程1、
(2)前記原料混合物からなる圧粉体を、昇温速度50℃/分以上で800~1100℃まで昇温させる工程2、
(3)昇温させた前記圧粉体を、ガス圧0.05~0.13MPaの不活性ガス中、40MPa以下で加圧しながら、且つ、前記温度を維持しながら、10分以下で放電プラズマ焼結する工程3、及び
(4)前記放電プラズマ焼結により得られる焼結体を、少なくとも600℃になるまで、降温速度50℃/分以上で降温させる工程4。
【0032】
上記の通り、本発明の製造方法では、原料として酸化亜鉛とアルミナとを用いて、原料混合物からなる圧粉体を特定条件下において放電プラズマ焼結する。放電プラズマ焼結は、公知の焼結機によって実施できるが、特定の条件下において放電プラズマ焼結を行うことによって本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は得られる。
【0033】
放電プラズマ焼結機としては、例えば、図7に例示するものがある。この放電プラズマ焼結機は、上端及び下端に一対の電極が配置されており、放電プラズマ焼結時に電極間に直流パルス電流を印加する。上下のカーボンプレートの間には、試料(原料)を収容する黒鉛ダイスがあり、黒鉛ダイスに収容した試料は一対の黒鉛パンチによって挟まれて圧力印加状態において放電プラズマ焼結に供される。
【0034】
以下、上記各工程について説明する。
≪工程1≫
工程1では、酸化亜鉛とアルミナとを含有する原料混合物であって、アルミナ含有量が酸化亜鉛重量とアルミナ重量との合計量の2重量%以下である原料混合物を用意する。
【0035】
酸化亜鉛、アルミナの形状はともに限定的ではなく、粒子、粉末、ウイスカ等の各種状態のものが広く使用できる。アルミナの種類についても、γ型、α型、δ型、η型、θ型、アモルファス型等の各種結晶形のものが使用でき、更に水酸化アルミニウムも使用できる。本発明ではとりわけγアルミナ(いわゆる活性アルミナ)を用いることが好ましい。
【0036】
酸化亜鉛の大きさは限定的ではないが、粉末である場合には、その平均粒子径は2μm以下が好ましく、100~500nm程度がより好ましい。
【0037】
アルミナの大きさも限定的ではないが、粉末である場合には、その平均粒子径は、5nm~2μm程度が好ましく、20nm~0.5μm程度がより好ましい。
【0038】
酸化亜鉛とアルミナとの混合は、例えば、公知のボールミルやミキサーを用いて行う。混合は、アルミナ含有量が酸化亜鉛重量とアルミナ重量との合計量の2重量%以下となるように行う。この中でも、アルミナ含有量が1~2重量%となる範囲が好ましい。
【0039】
原料混合物は、実質的に酸化亜鉛とアルミナとの2成分のみでよいが、放電プラズマ焼結特性、焼結体の特性等を向上させるために、例えば、インジウム、スズ、希土類等から選択される少なくとも1種を添加剤(第3成分)として更に含めてもよい。このような添加剤の含有量は限定的ではないが、原料混合物中0.2重量%以下が好ましい。
≪工程2≫
工程2では、前記原料混合物からなる圧粉体を、昇温速度50℃/分以上で800~1100℃まで昇温させる。
【0040】
圧粉体は、例えば、原料混合物を放電プラズマ焼結機の試料を収容する黒鉛ダイスに収容し、付設された一対の黒鉛パンチによって圧縮することにより作製できる。ここでいう圧粉体は一定の形状を保つ程度に成形されているものを意味する。
【0041】
前記圧粉体を、昇温速度50℃/分以上で800~1100℃まで昇温させる。ここで、昇温速度は50~100℃/分程度が好ましい。昇温は、前記圧粉体の温度が800~1100℃の範囲における指定の温度に達するまで行う。
≪工程3≫
工程3では、昇温させた前記圧粉体を、ガス圧0.05~0.13MPaの不活性ガス中、40MPa以下で加圧しながら、且つ、前記温度を維持しながら、10分以下で放電プラズマ焼結する。
【0042】
昇温した前記圧粉体は、40MPa以下(好ましくは30MPa以下)で加圧しながら、且つ、前記温度(800~1100℃)を維持しながら放電プラズマ焼結する。加圧の下限値は限定的ではないが、10MPa程度である。
【0043】
放電プラズマ焼結の時間は、10分以下とするが、5分以下で完結すれば好ましい。焼結時間の下限値は限定的ではないが、少なくとも1分程度とする。
【0044】
放電プラズマ焼結の雰囲気としては、ガス圧0.05~0.13MPa、好ましくはガス圧0.08~0.11MPaの不活性ガス雰囲気とする。一般に不活性雰囲気としては真空雰囲気が知られているが、真空雰囲気は酸化亜鉛を昇華させ易いために好ましくなく、本発明では特に不活性ガス雰囲気とする。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の、酸素などの反応性ガスを含有しない雰囲気が挙げられる。
≪工程4≫
工程4では、前記放電プラズマ焼結により得られる焼結体を、少なくとも600℃になるまで、降温速度50℃/分以上で降温させる。ここで、降温速度はより速い方が良く、100℃/分以上が好ましい。降温速度の上限は限定的ではないが、200℃/分程度である。
【発明の効果】
【0045】
本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、相対密度を低くした場合に、熱伝導率κを低くできるとともに、導電率σの低下を従来の常識を覆すかの如く、高く維持することができる。このような特性を有するため、本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体は、熱電変換材料の性能指数Zが高い。また、相対密度を低くした材料で使用する場合には、熱電変換材料の軽量化、耐熱衝撃特性の改善、コスト削減等にも寄与する。
【0046】
より具体的には、相対密度が65~90%である場合に、20℃における性能指数Zは0.2×10-5/K以上である。また、相対密度が80~90%である場合に、20℃における性能指数Zは0.5×10-5/K以上である。
【0047】
上記性能指数で評価される熱電変換特性は、従来品に対して明確に優位性があり、即ち、本発明のアルミニウム含有酸化亜鉛焼結体はn型熱電変換材料として廃熱発電、地熱発電、太陽熱発電等の高温域での用途展開に対して有利である。
【0048】
本発明の製造方法によれば、上記特徴を有する本発明の焼結体を簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1~14で作製した焼結体の相対密度と導電率σとの関係を示す図である。
【図2】実施例1~14で作製した焼結体の相対密度と熱伝導率κとの関係を示す図である。
【図3】比較例1~30で作製した焼結体の相対密度と導電率σとの関係を示す図である。
【図4】比較例1~30で作製した焼結体の相対密度と熱伝導率κとの関係を示す図である。
【図5】比較例1~30で作製した焼結体の相対密度と性能指数Zとの関係を示す図である。
【図6】実施例1~14で作製した焼結体の相対密度と性能指数Zとの関係を示す図である。
【図7】放電プラズマ焼結機の断面概念図の一例である。
【符号の説明】
【0050】
1.パルス電流
2.電極
3.カーボンプレート
4.黒鉛パンチ
5.試料(を収容する空間)
6.黒鉛ダイス
7.電極
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0052】
実施例1~14
≪原料混合物の調製≫
酸化亜鉛粉末(平均粒子径:0.2μm、ハクスイテック製)及びγアルミナ粉末(平均一次粒子径:0.02μm、旭化成製)を用意した。
【0053】
酸化亜鉛粉末とγアルミナ粉末とを下記表1に示す配合(Al量)となるように湿式混合し、乾燥させ、更に乾式ボールミルで混合することにより原料混合物を調製した。
≪放電プラズマ焼結≫
調製した原料混合物は、放電プラズマ放置(住友石炭鉱業社製Dr.Sinter)の黒鉛ダイスに収容して圧粉体とした。また、内部の雰囲気ガスをアルゴンに置換した。
【0054】
次いで、原料混合物を30MPaで加圧下、直流パルス電流を印加することにより、昇温速度50℃/分で800~1100℃(個別に表1に示す)にまで昇温し、前記温度を維持しながら下記表1に示す時間(1~5分間)で放電プラズマ焼結し、次いで600℃未満となるまで100℃/分の降温速度で冷却した。
【0055】
得られた焼結体「SPS-ZnO(Al)と称する」の表面を研削・鏡面研磨することにより14種類の試験体を得た。
【0056】
【表1】
JP0004900569B2_000002t.gif

【0057】
〔表1中、焼結方法SPS(S)は、放電プラズマ焼結を示す〕
比較例1~30
≪原料混合物の調製≫
下記表2に示す配合とする以外は、実施例と同様にして原料混合物を調製した。
≪常圧焼結≫
原料混合物の圧粉体(実施例と同じ圧粉体)を大気炉に収容し、焼結温度を1000~1400℃(個別に表2に示す)とし、焼結時間を下記表2に示す通り(2~24時間)とし、焼結体「PL-ZnO(Al)と称する」を作製した。
【0058】
得られた焼結体の表面を研削・鏡面研磨することにより30種類の試験体を得た。
【0059】
【表2】
JP0004900569B2_000003t.gif

【0060】
〔表2中、常圧(P)は、常圧焼結を示す〕
試験例1
実施例及び比較例で作製した各試験体について、XRD(理学電機製、RINT2500VHF)により結晶相を同定し、アルキメデス法により相対密度を算出した。また、電子顕微鏡(日立製作所製、S-4200型)により微細組織の観察を行い、平均粒子径を計算した。
【0061】
各試験体の熱電特性評価のために、直流4端子法(三菱化学製、MCP-T600)で導電率σの測定を行った。また、レーザーフラッシュ法(アルバック理工製、TC-7000型)で熱伝導率κを測定し、更に性能指数Zを算出した。
【0062】
これらの試験結果を表1及び表2に併記した。また、表1及び表2の右端に示される識別符号(Al量及び焼結時間が同じものは同符号)を用いて、各特性(σ、κ、Z)を図1~図6に図示した。
【0063】
試験例1の結果の考察
SPS-ZnO(Al)の相対密度と導電率σとの関係が図1に示されている。また、相対密度と熱伝導率κとの関係が図2に示されている。γアルミナの添加量が1重量%、2重量%のどちらの場合も、相対密度70~100%の範囲で高い導電性σを有することが分かる。また、熱伝導率κは相対密度の低下とともに減少し、最も低い場合には緻密な酸化亜鉛の3分の1程度まで低減することが分かる。これらの結果は、放電プラズマ焼結法が低い熱伝導性と高い導電性を両立できることを示している。
【0064】
PL-ZnO(Al)の相対密度と導電率σとの関係が図3に示されている。また、相対密度と熱伝導率κとの関係が図4に示されている。常圧焼結法では相対密度が100%近傍では高い導電率を示すものの、90%以下では全く導電性が得られないことが分かる。一方、熱伝導率は相対密度の低下とともに単調に減少し、相対密度が80%になるとほぼ半減することが分かった。これらの結果は、常圧焼結法が低い熱伝導性と高い導電性を両立できないことを示している。
【0065】
また、図5(実施例)と図6(比較例)との対比から明らかな通り、本発明の焼結体は、相対密度が90%以下の場合において明らかに高い性能指数Zを与える。特に、アルミナ含有量が実質的に1重量%となるように原料混合物を調製し、その原料混合物の圧粉体を焼結時間900~950℃において5分(4~5分間)放電プラズマ焼結した場合には、極めて良好な性能指数Zが得られることが分かる。
【0066】
放電プラズマ焼結法が、(低熱伝導率にもかかわらず)高い導電率を示す理由として、次のメカニズムが考えられる。即ち、アルミニウム含有酸化亜鉛は、添加したアルミナは酸化亜鉛と反応して「スピネル」を生成する。常圧焼結では、低温焼結(1000℃)でも高温焼結(1400℃)においても、ほぼ同じ量のスピネルが生成しており、添加したアルミナの大部分が絶縁体であるスピネルの生成に費やされ、導電性に寄与する酸化亜鉛中へのアルミナの固溶量が制限される。一方、放電プラズマ焼結法では、焼結温度が低い領域ではスピネルの生成が抑制され、添加したアルミナが効果的に酸化亜鉛中に固溶するために、緻密化が十分進んでいない多孔質な状態でも高い導電率を示す。このような現象は、放電プラズマ焼結が高圧環境下において実施でき、且つ、超高速昇温・冷却が可能であるために生じるものであると考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6