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明細書 :振動発電装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5597822号 (P5597822)
公開番号 特開2009-017769 (P2009-017769A)
登録日 平成26年8月22日(2014.8.22)
発行日 平成26年10月1日(2014.10.1)
公開日 平成21年1月22日(2009.1.22)
発明の名称または考案の名称 振動発電装置
国際特許分類 H02K  35/00        (2006.01)
FI H02K 35/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2007-203642 (P2007-203642)
出願日 平成19年7月6日(2007.7.6)
審査請求日 平成22年6月23日(2010.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】岡本 洋
【氏名】小貫 哲平
【氏名】桑野 博喜
審査官 【審査官】尾家 英樹
参考文献・文献 特表2008-536470(JP,A)
特開2005-519572(JP,A)
調査した分野 H02K 35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
発電装置本体の運動を検出しその信号を出力する運動状態検出器と、
前記の信号を入力して内部質量制御信号を出力する制御回路と、
前記制御信号を入力して内部質量の運動を制御する制御素子と、
前記素子によって運動を制御される一つまたは複数の内部質量と、
前記内部質量の運動から電気エネルギーをエネルギー出力として取り出すエネルギー変換装置とを具備して成り、
振動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電することを特徴とする振動発電装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御素子と前記エネルギー変換装置が実質的に同一の装置であることを特徴とする振動発電装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御素子に接続される前記制御回路の出力部分がコンデンサーからなるエネルギー貯蔵部と電界効果トランジスターによるスイッチを含み、電界効果トランジスターによる回路のスイッチングにより制御信号に従った電圧を出力し、その際に電流が制御素子からエネルギー貯蔵部への方向のみならず逆方向も含む双方向に流れ、従ってその際に出入りするエネルギーがエネルギー貯蔵部から供給あるいは貯蔵されることを特徴とする振動発電装置。

【請求項4】
請求項1において、
前記制御素子および前記エネルギー変換装置のいずれか若しくは双方がエレクトレット材料を含む材料を使用した設計による静電相互作用、磁性体材料を含む材料を使用した設計による電磁相互作用、あるいはピエゾエレクトリック材料を含む材料を使用した設計による機械電気エネルギー変換に基づくことを特徴とする振動発電装置。
【請求項5】
請求項1、2、3、4において、前記制御素子によって前記内部質量に与えられる力が、前記運動状態検出器から出力される発電装置の速度信号を変数とし該速度信号の1乗と3条の項からなる多項式の計算結果に比例することを特徴とする振動発電装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置に係り、それに加わる圧縮力や引っ張り力等でなく外部環境によって引き起こされた発電機本体の加速度の時間変化から発電する、即ち環境中の相対運動を利用しない、内部質量を有する振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時間変化する加速度から発電する機械振動エネルギー変換の方式としては、従来回転運動を行う内部質量を用いた振動発電型腕時計(例えば、非特許文献1参照)や、ばねで支持された内部質量の並進運動により発電を行う方式の提案(例えば、非特許文献2参照)がある。即ちこれらのような発電機内の運動質量が受動的にふるまう振動発電技術は共振状態の有無に関わらず周知である。
【0003】
この他にも、機械的共振器を用いた可変容量振動発電装置の提案(例えば、特許文献1参照)や、振動発電装置と加速度計を融合した装置の提案(例えば、特許文献2参照)がある。前者においては、共振型振動発電装置が共振周波数近辺以外においては低効率になる点は発明者らにより認識されており、その解決法として異なる共振周波数をもつ複数の共振器を同時に使う方法が記述されている。後者の発明ではデジタル計算機により発電装置内を運動する質量を能動的に制御し、加速度測定の精度改善に使用する。
【0004】
大規模な振動発電機に目を転ずると海洋波発電分野において水面波の振動エネルギーを電気エネルギーへ変換する多くの発明がある。陸地か浅海底と海洋波面との間に起こる相対運動を利用した発電法が本出願人の調査結果では圧倒的多数を占める。特に、特許文献3に記載された発明では一定の決まった周波数の水面波エネルギーからは90%の高効率でエネルギーが取り出せることが示されていることから、当該分野において今日でも新たな発明の水準をそれと比較すべき高水準の考案であると見なされている。ところが実際の海洋波においては周波数スペクトルが大きく広がっているために、実用的応用が見込まれる状況下では上記の発明による発電は極めて低効率にならざるを得ない。この点は特許文献3の出願人により認識されており、発電装置の能動制御により一定でない周波数の海洋波運動にも対応する発明が報告されている(特許文献4参照)。そこでは海洋波の運動と発電機の運動のカップリングを発電機の見かけの硬さなどを制御することにより改善する方法が述べられている。
【0005】

【特許文献1】 特開2005-137071号広報
【特許文献2】 特開2006-329800号広報
【特許文献3】 米国特許第3,928,967号
【特許文献4】 米国特許第4,134,023号
【0006】

【非特許文献1】日本時計学会誌,No.120,1987年の第40~48ページ
【非特許文献2】センサーズ アンド アクチュエーターズ A,vol.52,(1996年),第8~11頁(Sensors and Actuators A,vol.52,1996,pp8-11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
代替エネルギーへの移行は現在から将来へむけての重要なトレンドの一つである。そのうち機械的エネルギーの社会における役割は風力発電や海洋波力発電において見られるように重要性を増しており、将来は主要なエネルギー源の一つになる可能性がある。一方で、分散化された情報システムやセンサーネットワークの社会への浸透も近未来の主要なトレンドとなる。その中で使用されるネットワークノードは数が多く、分散しているために現実的なエネルギー供給の方法が問題となり、熱エネルギーや光エネルギーのほか振動エネルギーを利用した自律的なエネルギー調達法が提案・研究されている。これら2つのトレンドを包含した大きな流れとしては発電装置の規模の多様化が期待される。本発明は発電装置の規模の大小の如何によらず、将来利用が見込まれる機械的振動エネルギーの利用効率を、時間変化する加速度から発電する場合において最大化する。更に本発明は発電装置の規模の如何に依存しないのみならず、具体的な機械電気エネルギー変換の方法の如何にも依存しない一般性を持つ。
【0008】
機械的エネルギー資源の潜在能力を生かした発電を実現するには、高効率な機械電気エネルギー変換機構が必要である。ところが、従来技術には数々の問題点がありスペクトルの広がった現実の機械的エネルギー資源に基づく高効率発電には適さない。幾つかのケースをここで検討する。まず従来提案あるいは使用された小型発電装置を検討すると、非特許文献1、2においては受動的内部質量の発電装置内の運動による発電方法が記述されているが、前者においては共振器を用いた効率増幅はなされていない。後者では共振条件下で発電効率は良くなるが、純粋な受動素子であるため共振周波数以外の動作周波数ではそのような利点を享受できない。実際、共振器がもつ共振点での発電効率の増加は発電可能周波数帯域幅が狭くなるという代償を伴うことは広く認識されている。例えば、特許文献1の申請者らは複数の共振周波数の異なる共振器を具備して環境の持つ広帯域振動スペクトルに対応した発電を行う方法を提案している。しかしながら、この解決法では帯域を広げるに従って発電機の大きさと質量が増加することに注意すべきである。振動発電装置の設計の優劣の指標の一つとしては、与えられた環境における質量あたりの発電量が考察されなければならない。
【0009】
本発明では共振点における発電効率の増加を得る利点を享受しつつ、同時に発電可能周波数帯域幅を広くする方法を実現する。それは発電機内部の質量の運動を能動的に制御することによって行われる。特許文献2においては、内部質量の運動に計算機によって算出された影響を及ぼしつつ発電と加速度計測を同時に行う方法が述べられている。しかしながら、この発明では発電を行いつつ加速度の計測を行うことに目標が置かれ、能動的制御による発電効率の改善に関しては記述されていない。
【0010】
特許文献4ではそこに示された発電装置が共振周波数で最大効率を持つことが指摘された上で、海洋波の持つ広いエネルギー周波数スペクトル帯域から効率よく発電するために調和振動子の見かけのQ値を減らすことにより性能を改善する方法が記述されている。しかし、この方法ではQ値が減少した分だけ共振の利益を享受できなくなる問題がある。
【0011】
従って本発明の目的は、振動エネルギー利用技術一般において従来存在した共振器のエネルギー変換効率とエネルギー変換周波数バンド幅のトレードオフの問題を抜本的に取り除き、高帯域幅でかつ高効率発電を実現することにある。実際、受動的な調和振動子の場合、発電最大量は振動子の質量m、共振周波数・、環境中の振動振幅スペクトル密度(単位周波数あたり長さの二乗の次元を持つ)Aのみで厳しく制限される。実際、発電量をPとするとこれは
【数1】
JP0005597822B2_000002t.gif
で与えられる。この状況はとりわけMEMS(Micro Electromechanical Systems)技術に代表されるような超小型発電技術分野において発電量に厳しい限界を課している。本発明ではこの限界の制限を受けない方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本願によって開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の振動発電装置のうち代表的なものは、運動状態検出器、内部質量制御信号を出力する制御回路、運動を制御する制御素子、発電装置内を移動する内部質量、エネルギー変換装置、出力回路を具備して構成される。運動状態検出器は加速度計および一個あるいは複数の積分器を含む制御回路から構成され、位置、速度、加速度等の発電装置の運動状態のうち必要なものを出力する。制御回路は内部質量の運動をどのようなタイミングでどのように制御するかを計算する。運動を制御する制御素子は制御回路の出力する信号に従い、内部質量の運動に補正を加える。内部質量は発電装置の内部を移動できる適切な慣性質量を持った物体要素である。エネルギー変換装置は内部質量の運動エネルギーの一部を電気エネルギーに変換する機械電気変換素子である。出力回路は前記エネルギー変換装置の出力を応用に適した形の電圧、電流、直交流の形に整形する。
【0014】
前記運動状態検出器は、例えば加速度計の出力を時間積分して速度信号を出力するものが好適である。
【0015】
前記運動状態検出器は、例えば前記速度信号をネガティブフィードバックして加速度信号を補正することによって速度信号がある時定数以上の長時間スケールにおいてドリフトしないようにするものであれば好適である。この時定数の逆数は本発明の振動発電装置の下限動作周波数を与え得る要素の一つになる。下限動作周波数が発電装置のサイズで制限される場合もあることに留意する。
【0016】
より具体的には、出力速度信号vが下記の積分方程式によって記述されるものが好適である。
【数2】
JP0005597822B2_000003t.gif
ここにa、Tはそれぞれ計測された加速度および充分に大きな時定数である。この両辺を微分することにより粘性流体中の質点の運動方程式への類似が明らかであり、そのことから更に、T以下のタイムスケールでは出力が加速度の積分を与える一方でT以上のタイムスケールでは出力がドリフトしないようにゼロ近辺にとどまることが分かる。従って下限動作周波数を下げるために大きなTが望ましいが、積分中の第二項が加速度計の誤差やノイズとコンパラブルなほど小さくなってはならない。
【0017】
前記制御回路は、前記速度情報を使用して前記速度と外部環境が発電装置に及ぼす力との積、即ち環境が発電装置に及ぼす仕事率、を与えられた状況の下で最大にするものであれば好適である。ここに、外部環境が発電装置に及ぼす力は発電装置が外部環境に及ぼす反作用力に大きさが等しく、後者は内部質量の運動状態に依存することに留意する。
【0018】
一つの特別の場合をとりわけここで述べる価値がある。この特別な構成の場合、制御回路は前記速度信号に比例した力を制御素子を通じて内部質量に及ぼす。このような制御は共振状態にある調和振動子においては自然に行われており、それが共振状態における発電効率の増大の本質である。言い換えれば、この制御を人工的に施すことにより周波数によらず共振状態にある調和振動子と同じく外部環境の運動と内部質量の運動の同期を得ることが出来る。
【0019】
とりわけ発電機の規模が大きい場合、前記の発電効率は環境の運動について知識がある場合にはさらに改善される余地がある。そのため可能な場合は前記制御回路は、前記運動状態検出器からの信号に加えて他のセンサーなどによって得られる副次的情報も考慮して発電量の最大化を図ることが望ましい。例えば、そのようなセンサーは海洋波の波形を光学的にモニターして制御回路が一定時間経過後の発電装置にどのような力が加わるか計算するのを補助する情報を提供する。
【0020】
前記制御回路は状況に応じて簡単なアナログ回路でもあり得るし汎用コンピューターでもあり得る。これらの運動状態検出器および制御回路はエネルギーを消費するが、装置をスケールアップした場合にその様なエネルギーは定数項として振る舞い、発電量に対して常に無視できる。しかしながら実際上の場合、とりわけ発電装置が小さいマイクロエネルギー源の場合は運動状態検出器および制御回路のエネルギー消費が設計上考慮されなくてはならない。
【0021】
前記制御素子は、前記内部質量の運動を制御する電磁相互作用、静電相互作用などをもちいた電気機械エネルギー変換素子が好適である。
【0022】
前記制御素子は内部質量とエネルギーの受け渡しを行う。エネルギーの授受も行われる場合は装置をスケールアップした場合に前記のように定数として振舞わないのでエネルギー損失をできるだけ低く抑えられる素子が好適である。この他、制御素子から正味のエネルギーを得る設計も考えられる。この場合は制御素子が後記のエネルギー変換装置を兼ねることになる。
【0023】
前記内部質量は、これを装置内部にばねで吊るす設計やレールの上を転がる設計、反磁性を利用して浮上させる設計などが考えられるが、移動可能性のみが本質的であるので個々の応用目的に合った最適な方法が選択されれば好適である。ただし摩擦力や内部機械ロスは可能な限り小さいことが望ましい。
【0024】
前記エネルギー変換装置は、磁性体や強誘電体などの材料に基礎を置いた電磁相互作用、静電相互作用などをもちいた電気機械エネルギー変換素子が好適である。発電装置の大きさの制限を考慮に入れない場合、内部質量の運動のエネルギー変換即ち発電による実効的摩擦係数・は逆説的ながら小さいほど良いことに留意する。ここに、実行摩擦による制動力Fは・と内部質量の速度vの積である。・が小さいことが望ましい理由は共振状態にある調和振動子との類似から自明である。ただし、エネルギー変換による実効的摩擦は装置自体の内部摩擦に比べて大きく取らなければならない。また、単位時間に機械的エネルギーのうちどれだけを電気エネルギーに変換するかは定量的に制御される必要がある。
【0025】
エレクトレット材料を用いた電気機械エネルギー変換は本発明の実現にとりわけ好適である。その理由として内部質量と受け渡しされるエネルギーを自然にコンデンサーに蓄えられることが挙げられる。コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーはコイルに蓄えられた磁気エネルギーと比較して低損失である。内部質量素子に帯電したエレクトレット材料が塗布されている場合、その近傍にある電極に電圧を加えて内部質量に外力を加えることが出来るほか、内部質量の運動は電極間に流れる電流として得ることが出来る。
【0026】
実際、前記電圧をVとすると前記外力Fは以下の式で与えられる。
【数3】
JP0005597822B2_000004t.gif
ここにσ、w、V、ε、g、dはそれぞれエレクトレット膜の表面電荷密度、エレクトレット膜の運動方向に垂直な方向の実効的な長さ(電気機械エネルギー変換機構が複数個集積されている場合それに応じて実効的長さも大きくなる)、エレクトレット膜の比誘電率、エレクトレット膜表面と対向電極間のギャップ距離、そしてエレクトレット膜の厚さである。また、電極間に流れる電流Iは
【数4】
JP0005597822B2_000005t.gif
で与えられる。ここにvは内部質量の運動速度である。
【0027】
前記エレクトレット電気機械エネルギー変換を用いた場合、制御素子として可変電圧の内部コンデンサーからの電荷ソース・シンク回路を実現すると、適切な制御を行うことにより内部コンデンサー、即ち回路中のエネルギー貯蔵装置に次第にエネルギーを蓄えていくことができる。そのような回路が可能であることは充分に荷電した可変電極間隔をもった並行平板コンデンサーがこの目的に使用できることから明らかである。平板間の吸引力は他の力(例えば補助的なばねによる力)によりキャンセルできるので、エネルギーを消費せずに電極間隔を制御しながら出力電圧を調節することができる。
【0028】
エネルギー変換装置の電力出力は直流、交流、その他の波形のいずれでもあり得るし、出力インピーダンスもエネルギー変換装置の物理的原理に応じて様々であり得る。前記出力回路は、前記エネルギー変換装置からの電力出力の整形に加え、場合によってはエネルギー貯蔵装置と組み合わせることにより外部への安定した連続的あるいは間欠的な電力供給を実現すると好適である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来技術にある共振型振動発電装置において問題であった望ましくない周波数選択性を除去するという効果がある。異なる共振周波数をもつ複数の振動子を並列に使用する方法でも同じ目標を達成できるが、この解決法では装置の質量あたりの発電量の増加は望めないことに留意する。振動発電装置においては装置の質量あたりの発電量が設計の優劣の評価指標を策定する上で考慮されるべきである。
【0030】
振動発電機の評価指標、あるいは性能指数としては無次元の
【数5】
JP0005597822B2_000006t.gif
が適切である。ここにP、m、C、ωはそれぞれ発電量(仕事率)、内部質量素子の質量(複数個の場合はその和)、環境中の振動のr.m.s.(平均からのずれの2乗平均の平方根)振幅、環境中の振動振幅の2乗のスペクトルの平均周波数である。発電量は内部質量素子の質量や外部振動エネルギーを増やすと当然大きくなるので、発電装置の性能を比較するには単純な発電量の比較では不十分であり、このような数値指標の使用が助けになる。ただし、この指標は外部環境の振動スペクトルの形に依存することに注意すべきであり、違うスペクトルに対するγ値の比較にはあまり意味がない。にもかかわらず、特定の発電装置がどのようなスペクトルに適しており他のスペクトルに適さないかなどを判断する材料にはなると考えられる。
【0031】
例えば比較的静かな場所に置かれた小型発電機の例として、m=100g(例えばタングステン約5cc)、c=10μm、ω=100Hzの場合を考えると、発電量Pは(5)式よりγ・10μWとなることがわかる。即ち、実用になる発電量となる例えば1mWを得るには、自然な広帯域スペクトルに対してγ値として少なくとも100程度を得ることが望ましい。制御回路はこの電力出力のうちごく一部で動作させる必要があるが、近年のnWレベルのFETなどの超低消費電力能動電子デバイスの出現と普及がこれらの数字を現実的なものとしている。尚、本発明は、より大きな発電装置をより大きな振動エネルギーのある自然・人工環境中で使う場合は上記の例よりも大幅に適用が容易になると考えられる。その一方でMEMS技術などを使用するマイクロ発電に応用する場合は、性能を若干犠牲にしても制御回路の単純化、即ちその低消費電力化が図られるべきである。
【0032】
まず単色のデルタ関数型の外部振動スペクトルについて従来の調和振動子を用いた発電機を評価すると、外部振動の振動数と調和振動子の固有振動数が一致している場合にはγ値は最大振動子のQ値に等しくなる。最大といった意味は、これが上限で通常内部エネルギー損失によりγ値は減少するからである。これは規則的な外部励起に対してはQ値の高い振動子がより効率よく発電できる事実を表わしている。しかし、共振条件を少しでも外れるとγ値は急激に小さくなる。これに対して、本発明で記述された装置の場合γ値は最大で
【数6】
JP0005597822B2_000007t.gif
で与えられる。ここにμは外部振動速度vに比例した内部質量に加える力F=μvの表式に現れる比例係数である。そもそも共振の有無がないためにγ値が外部振動周波数ωに極めて弱い依存性を持つことがわかる。これが本発明の最も顕著な帰結である。比例係数μ大きいほどQ値の大きな振動子同様に高性能になるが、内部質量の運動距離が長くなるので発電機のサイズの上限が考慮されなくてはならない。この制限を満たす限りにおいて、μを大きく設定することにより広帯域にわたって高性能の発電装置を構成することが出来る。
【0033】
上記の結果はγ値をより現実の環境振動に近い広帯域の外部振動スペクトルについて評価することにより更に明らかになる。例えば、周波数の逆5乗に比例するスペクトルの場合(全エネルギーの発散を抑えるために低周波端にカットオフ周波数を設定する)、従来の調和振動子を用いた発電装置のγ値は上限0.994で抑えられ、いわば実用にならないのに対して、本発明で記述される装置の場合は上限が
【数7】
JP0005597822B2_000008t.gif
となる。前者ではQ値が表式から消えているのに対して、後者では単色励起の場合と本質的に同等な性能指数が得られている。実用上重要な顕著な違いであると言える。尚、周波数スペクトルの指数5が自然である根拠は幾つかあるが、その議論は本発明において特段の重要性はない。
【0034】
また、本発明によれば、周波数選択性を除去しているにも関わらず、単に調和振動子のダンピングを増加する等の自明な解決法とは異なり鋭い共振による発電効率の増幅効果を犠牲にしないことが可能であるという効果がある。
【0035】
さらに、本発明によれば、高効率を保っているにも関わらず、内部質量と発電装置本体の相対運動から発電するために環境中の相対運動を必要としないという効果がある。言い換えれば、慣性系に対する加減速運動さえあれば発電が出来るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0037】
本発明の一実施例によると、運動状態検出器は加速度計の出力に後記速度信号の反転信号を大きな時定数で割ったものとの和を時間積分して速度信号として出力する。したがってネガティブフィードバック制御により長期的に見て速度信号はゼロ点近辺に保持される。この構成により加速度信号の誤差が時間積分により蓄積して速度信号の信頼性を損なう事態を防止できる。
【0038】
図2は、前記運動状態検出器を示す図である。加速度計ACCはMEMS素子に基づくもので加速度信号を出力する。この出力から速度信号を大きな時定数で割った結果を差し引いた信号を積分器ITG1で時間積分して速度信号出力を得る。加算器や積分器などはアナログ電圧信号に対して作用するものであり、低消費電力オペアンプもしくはFET、および受動電子部品により構成される。
【0039】
この実施例における運動状態検出器の機能をまとめると次のようになる。この運動状態検出器の唯一の機能は発電機の速度を電気信号として出力することにある。ところが、力学においては全ての慣性系は同等であるから出力速度は加速度の積分によってのみ得られ、従って任意のオフセットがある。このオフセットは速度信号の長期平均がゼロになるようにフィードバック制御される。すなわち、長期的に見て発電装置が動かないような慣性系に対する速度信号が出力される。前記速度信号を除算するのに使われた時定数は発電装置の対応できる最低振動数の逆数を与えうる要素の一つとなる。
【0040】
本実施例によると、内部質量は水平に置かれたレールの上を一次元的に滑らかに移動する。内部質量はレール上におけるその位置が余り中央から逸れない様に弱いばねで支えられていても良いが、その場合においても、ばねの自然長付近では発電装置の扱わない低周波領域を除いて内部質量は自由物体のように振舞う。内部質量はレール上を出来るだけ低摩擦で移動する必要があるが、そのためにはベアリング、車輪、反磁性体を用いた磁気浮上など多くの周知の技術のうち適切なものを選択すればよい。一次元のレールが上記のように水平に置かれている場合、内部質量の運動にカップリングする環境の運動はレールに沿った平行移動、レールの中央点を中心としてレールを軸としない2つの回転運動の3つになる。
【0041】
本発明の他の実施例によると、鉛直方向の外部環境の運動から発電するために内部質量は鉛直に置かれたレール上を移動する。この場合弱いばねの重力下での伸長による長すぎる鉛直方向のサイズを抑えるために複数個のステージをばねで直列に吊るし、かつ各々のステージが下端で前段から吊るされ上端から次段のステージを吊るすことにより全体の長さが抑えられているために、充分にばね定数が弱くしかも鉛直方向に使えるばねが、発電装置の高さ制限がある場合でも実効的に提供される。図3に一段ステージの場合を示す。
【0042】
本発明のもとの実施例に戻ると、内部質量表面にエレクトレット材料を塗布して帯電させておき周辺に2枚の金属板を配置して電圧をかけて内部質量に力を与えることにより制御素子を実現する。またこれにエネルギー変換装置を兼用させるか、同様の原理に基づくエネルギー変換装置を独立に構成する。
【0043】
より具体的には、図4は制御素子による静電相互作用に基づく内部質量制御の一実施例を示す図である。電気的に接地された内部質量IM1の下部表面はエレクトレット材料ELMでコートされている。内部質量は図面には示されていない弱いばねで支えられて、左右に移動できる。下部には電極ELR1,ELR2が配置され、ELR2が接地されている一方でELR1には任意の電圧を加えることができる。内部質量には前記の電圧に比例した力が加わる。逆に、内部質量が運動しているときに同じ構成をエネルギー変換装置として使うには、機械的エネルギーをELR1から接地電極に流れる電流として取り出すことが出来る。両電極ELR1,ELR2間にコンデンサー、インダクター、あるいは抵抗を接続すると其々実効的にばね、質量、あるいは摩擦要素として働く
【0044】
前記の内部質量制御を用いた発電の例を挙げる。図4の内部質量IM1は弱いばねで支えられているので、電極ELR1,ELR2が電気抵抗の充分に低い導線で電気的に接続されている場合ばねの自然長付近では自由質点のように振舞う。まず簡明さのため外部振動がない場合を考察する。いま内部質量が左から右へ等速直線運動をしているとする。次に電極間の導線を前記電界効果トランジスター(FET)スイッチを使用してオープンにし、同様のFETスイッチにより、帯電していないコンデンサーに切り替えると内部質量は更に右に移動するが、それに伴う電流の発生によりコンデンサーをチャージアップし、帯電したコンデンサーは電圧を持つので内部質量に制動力を及ぼし、最終的にはコンデンサーが完全に放電した時には内部質量は同じ速度で右から左に運動している。この瞬間にコンデンサーから元の導線に切り替えなおすと内部質量は更に逆方向に等速直線運動を開始する。即ち、内部質量はあたかも壁で弾性衝突をしたかの如く運動し、コンデンサーの帯電状態も全過程の前後で変わらないのでエネルギーの損失が無い。導線とコンデンサーの切り替えは本質的にはエネルギーを要さない過程である
【0045】
外部環境の振動がある場合、前記の要素過程を使って等速運動の速度を次第に上げていくことが出来る。そのためには運動状態検出器から得られている発電機の速度信号を利用する。再び図4で、発電装置全体が左から右に運動している場合は右から左に運動している内部質量を前記の要素過程を使用して右方向に弾性的に跳ね返す。逆に、発電装置全体が右から左に運動している場合は左から右に運動している内部質量を上記の要素過程を使用して左方向に弾性的に跳ね返す。跳ね返る度に内部質量は外部環境から機械的エネルギーを受取り増速する。
【0046】
前記の過程を使用して内部質量の速度を増加させた分量のエネルギーはエネルギー変換装置を用いて内部質量の速度を一定に保つように回収することにより定常的な発電ができる。もう一つの方法として、前記の要素過程で加速させないように内部質量を跳ね返すことにより、差分のエネルギーはコンデンサーに残った電荷の帯電エネルギーとして取り出すことが出来る。
【0047】
前記の記述においては、発電装置の運動状態に応じて弾性的な跳ね返しを行う方法を記述したが、どのようなタイミングでこの操作を行うかは指定しなかった。これには様々な方法が考えられるが、一つの方法は発電装置の速度に比例した操作回数を単位時間当たり実行する確率的制御が考えられる。このような制御を多数の内部質量に対して行った場合には、全体としてある範囲内の周波数においてどのような周波数の外部振動に対しても共振状態にある調和振動子と同じ発電効率が得られる。単一の内部質量の場合でも長時間平均を取れば同様である。このような発電ができる上限周波数は前記要素過程を行うことが出来る頻度によって決定される。下限周波数は前記運動状態検出器の積分時定数(図2)によって決まる周波数あるいは内部質量が運動できる経路の長さによって決定される。
【0048】
本発明の他の実施例によると、弾性的な跳ね返しを行う代わりに電極に電圧を連続的に印加することにより、内部質量の運動の連続制御を行う。とりわけ、発電機の速度に比例した力を内部質量におよぼす制御が共振状態にある調和振動子との類似により重要である。この場合、電極ELR1に制御電圧を加えることになるが、制御回路と電極間の電流の方向は内部質量の運動状態に依存することに注意する。
【0049】
従って、制御回路は任意の電圧を出力する機能のみならず、出入りする電流に伴うエネルギーの移動を内部のエネルギー貯蔵装置(自然な選択としてはコンデンサー)を使って低損失にマネジメントする機能を備えていなくてはならない。エネルギー損失が充分に小さければ、前記の運動制御をすることにより外界の振動エネルギーが次第に前記内部エネルギー貯蔵装置に移動することになる。このような制御回路が実現可能であることについては0027項で述べた通りである。

【0050】
前記の比例制御では、与えられた発電装置のサイズを高周波の振動成分について有効活用していない。何故ならば、単一周波数の外部振動を考えると(6)式で表わされる実効的なQ値は周波数に反比例して小さくなる。即ち、Q値に比例する振幅も同様に周波数に反比例して小さくなるからである。この無駄を無くすには高周波成分に対して内部質量の運動制御を低周波成分に比較して敏感に行う必要がある。一つの方法としては、(6)式の説明で述べたような出力速度信号vに比例した力F=μvを内部質量に加える比例制御を行う代わりに、この表式に非線形項を持たせて高い速度に線形以上の反応性を持たせることが挙げられる。具体的には、
【数8】
JP0005597822B2_000009t.gif
のように3次の項を持たせる。今、外部振動エネルギースペクトルが0033項で述べたf-5型であると仮走する。さらに外部振動のr.m.s.振幅Cおよび平均振動数fを用いて(8)式内の非線形性パラメータρを無次元化した量ρをρと定義する。今ρを0から2まで変化させて非線形性の応答を組み入れた装置の数値シミュレーションを行うと実際図5に示すように前記γ値は著しく増大する。但し図6に示すように、内部質量の原点からの平均的に期待されるずれの距離を前記Cで規格化した量λも、ρ=1までは緩やかとは言え、増大するので考慮に入れなければならない。これらのシミュレーションにおいてはμ/mf=4であり、また0040項で述べられたように、無制限な位置ドリフトを防ぐために固有振動数がfの0.25倍の弱いばねによって内部質量が支えられていることを前提とした。
【0051】
本発明の更に他の実施例によると、例えば外部振動が正弦波と先験的に知れている場合には速度が最大値になった時点で内部質量に撃力を瞬間的に加えることによって最大の発電効率を実現する。つまり、外部環境について知識がある場合には一般に発電量を増やす余地がある。
【0052】
本発明の更に他の実施例によると、前記項目を一般化して、例えば海洋波力発電において適切なセンサーを発電装置に装備することによって海洋波の形態および時間発展に関する情報を取得し制御回路に入力することによってこれを発電効率改善に供する。また、この例のような大規模な応用においては、外部振動と発電装置の内部質量の運動の間の機械的インピーダンスのマッチングを考慮することにより更に発電効率改善に供する。
【0053】
本発明の更に他の実施例によると、内部質量に強磁性体材料を使用し周辺に2組のコイルを配置して電流を与えることにより内部質量に力を与える。またこれにエネルギー変換装置を兼用させるか、同様の原理に基づくエネルギー変換装置を独立に構成する。
【0054】
本発明の更に他の実施例によると、出力回路は整流回路、同期整流回路、インピーダンス変換器、平滑回路、フライングキャパシター昇圧装置、コッククロフトーウォルトン型昇圧装置、エネルギー貯蔵回路、2次電池、電力制御回路のうちの単数あるいは複数の要素を含む構成になっており、外部に安定した連続的電力もしくは間欠動作に適した電力を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例の構成図。
【図2】運動状態検出器の実施例の構成図。
【図3】鉛直方向内部質量吊り下げ機構の構成図。
【図4】静電相互作用に基づく発電装置の実施例の構成図。
【図5】非線形項の大きさrの発電効率を表わす指数gに対する効果を示すグラフ。
【図6】非線形項の大きさrの発電機の大きさを表わす指数lに対する効果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0056】
ACC 加速度計
ELM エレクトレット材料
ELR1,ELR2 電極
IM1 内部質量
INV 反転アンプ
ITG1 積分器
SPRING1,SPRING2,SPRING3 ばね
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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