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明細書 :エレクトレット微小発電装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5487493号 (P5487493)
公開番号 特開2009-077614 (P2009-077614A)
登録日 平成26年3月7日(2014.3.7)
発行日 平成26年5月7日(2014.5.7)
公開日 平成21年4月9日(2009.4.9)
発明の名称または考案の名称 エレクトレット微小発電装置
国際特許分類 H02N   3/00        (2006.01)
FI H02N 3/00 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2007-270675 (P2007-270675)
出願日 平成19年9月18日(2007.9.18)
審査請求日 平成22年6月23日(2010.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】岡本 洋
【氏名】桑野 博喜
審査官 【審査官】河村 勝也
参考文献・文献 特開2006-180450(JP,A)
特表2005-529574(JP,A)
国際公開第2006/085915(WO,A2)
特表2002-542758(JP,A)
調査した分野 H02N 3/00
H02N 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
幅3mm以下の複数のエレクトレット膜ストライプを有する一辺1cm以下、共振周波数100Hz以上のマイクロ振動子と、
前記ストライプに対向する電極対を有し、
整流回路の半導体素子の動作に必要な0.2V以上の電圧を生成するために前記各電極対を3個以上直列接続した直列電極回路と、
該直列電極回路の一方の端を出力コンデンサーの一端と接続し、
整流回路の半導体素子の動作に必要な0.2V以上の電圧を生成し、かつ10メガオーム以上の高いゼロバイアスインピーダンスの整流回路に100Hz以上100kHz以下の周波数で電流を供給するために浮遊容量ひいては時定数を最小化するため前記直列電極回路の他方の端を前記整流回路の入力端子に5mm以下の距離で接続し、
前記整流回路の出力端子を前記出力コンデンサの他方の端と接続し、
前記電極間ギャップ面積と前記電極の面積との和に対する、前記電極間ギャップ面積の比が3%以上であることを特徴とするエレクトレット振動発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトレット振動発電装置において、
シリコン基板上に作成された前記電極対と、
前記整流回路として、前記シリコン基板上の5mm平方の面積内に作成された漏れ電流の小さな微小接合断面積のpn接合型あるいはショットキー型の2個または4個のダイオードと
を有することを特徴とするエレクトレット振動発電装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のいずれか1項に記載のエレクトレット振動発電機において、前記エレクトレット膜ストライプが前記マイクロ振動子の表面のうち2面以上に作成された前記マイクロ振動子を有することを特徴とするエレクトレット振動発電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエレクトレット振動発電機において、エレクトレット膜ストライプが酸化シリコン膜あるいはポリマー製エレクトレット材料で作成されていることを特徴とするエレクトレット振動発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の前記マイクロ振動子が反磁性材料および永久磁石との組み合わせにより反磁性浮上していることを特徴とするエレクトレット振動発電装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の前記マイクロ振動子上に作成された一個あるいは複数のFET制御エレクトレット膜ストライプと、
前記FET制御エレクトレット膜ストライプそれぞれに対向するFET制御電極対とを有し、前記FET制御電極対それぞれの片方を接地し、他方を5mm以下の距離でFETのゲート端子に接続し、
そのことによって前記整流回路中において前記FET素子が10pA以下の漏れ電流を有する整流素子として機能することを特徴とするエレクトレット振動発電装置。
発明の詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置に係り、特にMEMS(Micro Electromechanical Systems)技術に代表されるような技術によって製造される微小な発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中の振動から発電する技術の歴史は古く、特筆すべき例としては自動巻き発電ウォッチがある(例えば、非特許文献1参照)。これは1センチメートル程度の規模の振動発電装置であり、扱う電圧電流はそれぞれ1V、1マイクロアンペア程度である。このような電力規模においては周知のダイオードによる半波整流によってコンデンサーへの充電が実用になる。
【0003】
これをもとに複数のコンデンサーを半導体スイッチを使ってつなぎ変えることにより昇圧回路を形成して時計回路を駆動する方式が実用に供されている(例えば、非特許文献2参照)。また、整流回路そのものに関しては医療用インプラントデバイスや分散したセンサーノードのための発電に供する目的でダイオードの代わりにFET(Feild Effect Transistor)を使用した低損失の整流回路が周知である(例えば、特許文献1参照)。一方で、超低電力デバイス研究が進展する中で(例えば、非特許文献3参照)、低出力であるが超小型の振動発電装置の潜在的需要が発生し、特にエレクトレット機械電気エネルギー変換素子における研究が他のピエゾエレクトリック材料を用いた素子の研究などとともに進展している(例えば、非特許文献4参照)。
【0004】

【非特許文献1】日本時計学会誌,No.120,1987年の第40~48ページ
【非特許文献2】日本時計学会誌,No.126,1988年の第28~40ページ
【非特許文献3】Nature、Vol,445,2007年の第745~748ページ
【非特許文献4】Proceedings of the 23rd Sensor Symposium,2006年の第521~524ページ
【0005】

【特許文献1】米国特許第5,999,849号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
将来の微小な体内インプラント医療技術のより広範な使用あるいはユビキタスセンサーネットワーク社会の到来に備えて、必要な電力をその場で発電するマイクロエネルギー発電技術の開発の重要性が近年認識されてきている。一般にマイクロエネルギー発電技術では環境中にある人工あるいは自然の光、振動、化学、熱エネルギーなどから発電する。このうち環境中の振動エネルギーや音場エネルギーから発電する振動発電においては、一般にはエネルギー密度が比較的小さいために微小な出力電力パワーを効率よく整流した上でエネルギーとして蓄積し、主に間欠的な使用に供する技術が決定的に重要になる。
【0007】
それにもかかわらず、ナノワット程度以下の電力規模においてそのような技術は現時点で存在していない。順方向電圧降下を最小化するために例えばSchottkyダイオード素子を使用した回路等が周知であるが、それらの方式はナノワット規模の電力に適用するには不十分である。また、一定振幅の振動に対しては振動発電機の理論上の最大出力が振動周波数の4乗に比例することから、人工的なエネルギー供給の場合はより高周波ではたらく整流および電力蓄積技術が必要になるが、これは低電力になるほど困難になる。従って超低電力センサーノードに電力をその場供給する潜在的に大規模な需要に応える技術が欠落している。
【0008】
この状況に応えるためには、微小な出力を扱う整流回路のみを取り出して検討するのではなく、機械電気エネルギー変換素子も含めて総合的に設計することが重要である。従って、本発明の目的は、微小な出力電流および電圧しか得られず、またこれらが余り低くない周波数を持っている場合にこれを効率よく整流し、エネルギーを低損失に貯蔵して低電力回路による使用に供するような装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本願によって開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0010】
本発明における微小な一次発電電圧を扱う状況下では、ダイオードを始めとするすべての能動電子回路素子中の電圧降下が大きく影響する。従って、図2に示すように例えばダイオードD1、D2を使用して整流し、コンデンサーC1にエネルギーを貯蔵する場合には半波整流が基本になる。ただし、全波整流をするのに十分な一次発電電圧が得られる場合には当然ながらこの限りではない。
【0011】
具体的には、機械電気エネルギー変換素子として例えばMEMS技術を用いて製作した、一辺1cm以下のマイクロ振動子をもつエレクトレット振動発電素子が考えられる。図3はエレクトレット型機械電気エネルギー変換素子の模式図である。エレクトレット機械電気エネルギー変換では、例えばマイクロ振動子OSL1の底面に塗布されたエレクトレット膜ELF1を荷電することにより、それに対向する金属電極CE1、CE2の中に反対電荷を誘起する。いまマイクロ振動子を左右に動かすと、反対電荷もそれに合わせて動くので負荷Lを流れる電流が発生する。負荷特性に対応して、電流に応じた電圧が発生する。ここで一般に負荷特性はオーミックではない。
【0012】
エレクトレット膜に対向した電極(以下、対向電極と言う。)に誘起されたこの電圧は振動に逆らう力をマイクロ振動子に与えるが、実際上さらに重要なファクターとしては整流回路の入力が高インピーダンスであることによる入力高抵抗Riと、対向電極CE1、CE2間の浮遊容量、あるいは、CE1またはCE2と電気的グラウンド間にある浮遊容量、による浮遊容量Cs、との組み合わせによる長い緩和時間、すなわち時定数Tr=Ri×Csの発生がある。これが例えば100Hzから100kHz程度のマイクロ振動子の振動周期を超えるとエネルギー回収率の低下をもたらす。さらに、発生電荷量を前記浮遊容量で割った値は発生電圧を与えるが、これが通常の半導体素子が動作する最低でも0.2V程度以上でなければならない。これは浮遊容量が小さくなくてはならないもう一つの理由を与える。
【0013】
一方で整流回路側に目を転ずれば、図2に示すように整流回路素子としてダイオードD1、D2を用いる場合、逆方向漏れ電流が大きな素子を使用すると、それよりも大きな電流が常に機械電気エネルギー変換素子から発生していなければ電荷がコンデンサーC1に蓄積しない問題がある。特に、ゼロバイアスでインピーダンスが10メガオーム以上ないと発電していない静止状態で蓄積した電荷が漏出してしまう。即ち本発明が主眼を置く間欠的な電力使用の場合は問題が更に大きくなる。そこで逆方向漏れ電流が小さなダイオードの使用が望ましいが、しかし今度は一般にそのような素子は電流スケールが全体として小さいために、順方向電圧に対して電流の立ち上がりが遅い問題がある。言い換えれば、順方向低電圧領域において小さすぎる電流しか流れず、即ち入力インピーダンスが非常に大きい。実際のミリメートル規模のエレクトレット型機械電気エネルギー変換素子の場合、適正な負荷インピーダンスは典型的に100メガオーム程度になるが、たとえばピコアンペア程度の微小な漏れ電流を持つダイオードはミリボルト程度の電圧領域でギガオーム以上の入力インピーダンスを持つ。本発明の発明者は、実験的検討の結果、これらのインピーダンスを整合させることが極めて重要であるとの知見を得た。
【0014】
前記対向電極CE1、CE2に付随する浮遊容量は例えば接地電極を遠ざけることにより、あるいは回路配線を例えば5mm程度以下にするなどの方策を採ることによりある程度は減らせるが、幾何学的な限界である電極間寄生容量Cが存在する。即ち、対向電極の幅をW,隣り合う対向電極間のギャップ距離をG、前記エレクトレット膜の奥行き方向長さをL、基盤の誘電率をεとすると、電極のある基板部分のうち電極の面積占有率はH=W/(W+G)である。電極のある基板部分のうち電極板のない部分の面積を電極間ギャップ面積と呼ぶことにする。さて、容量Cは
(数1) C=eL{K(sin(pH/2))/K(cos(pH/2))}
である。ここにKは第一種完全楕円積分であり、上式のKを含む無次元数値ファクターは殆どの領域で1.5~2程度であるが、Hが0.97程度で約3になり、Hが大きくなるにつれてその後急激に無限大に向けて大きくなる。勿論、Hが小さすぎるとエレクトレット膜との結合が悪化する。
【0015】
前記諸問題を解決する一つの方法は、エレクトレット振動発電素子の機械的マイクロ振動子は単一に保ちつつも、図1に示されるようにエレクトレット膜およびこれに対向した2個の電極の組を複数化し、さらに対向電極の組を3個以上直列に接続することによって同期した電圧を加算する。そのことにより出力電圧を整流回路の動作に十分な値まで増加させ、適正な整流動作を行うことができる。複数化されたエレクトレット膜の形状はストライプ状であり、小型エレクトレット振動発電素子であるからストライプの幅は3mm以下となる。
【0016】
また、共振周波数100Hz以上の比較的高い周波数で作動するマイクロ素子の場合は微細加工によりエレクトレット膜、対向電極、整流素子への配線、整流回路を例えば5mm以下に極小化することにより望ましくない寄生容量を最小化し、そこに流入する電荷を小さく抑えることにより電圧低下を低く抑えられるようなものが好適である。
【0017】
これに加えて、前記電極間寄生容量のうち、幾何学的部分の不必要な増大を回避するためには電極間ギャップ面積の電極全体の面積、即ち前記電極間ギャップ面積と電極面積の和、に対する比が3%以上である構成が好適である。すなわち、前記の電極の面積占有率を表すファクターHを用いて表現すれば、1-Hが3%=0.03以上であるような構成が好適である。
【0018】
また、請求項2に記載のエレクトレット振動発電装置は、シリコン基板の5mm平方の面積内に前記対向電極と整流用ダイオードとを集積することによって浮遊容量を最小化し、また特にゼロバイアスにおける漏れ電流を最小化するために微小接合断面積のダイオードを使用することを特徴とする。前記ダイオードとしてはpn接合型を使ってもよいし、順方向電圧効果を最小化するためにショットキー型を使ってもよい。また、整流回路としてはダイオードを4個使用した効率のよい全波整流回路としてもよいし、ダイオードを2個使用した動作スレッショルド電圧の低い半波整流回路としてもよい。
【0019】
また、請求項3に記載のエレクトレット振動発電装置は、発電装置単位体積当たりの発電量を最大化するために、前記マイクロ振動子の表面2面以上にストライプ状エレクトレットが形成されていることを特徴とする。例えば、前記マイクロ振動子の上面と下面の両方にストライプ状エレクトレット膜を複数形成し、これらそれぞれの面に対向した対向電極群を2枚の異なる基板上に形成し、これら2枚の基板によって前記マイクロ振動子をサンドイッチ状に挟む形態としてもよい。
【0020】
また、請求項4に記載のエレクトレット振動発電装置は、前記エレクトレット膜として酸化シリコン膜またはポリマー製エレクトレット材料で作成されていることを特徴とする。前記酸化シリコン膜はシリコンウエハーを熱酸化して形成される酸化シリコン膜でもよいし、薄膜デポジションにより形成される酸化シリコン膜でもよい。前記ポリマー製エレクトレット材料はCYTOPを使用してもよいし、パリレンを使用してもよい。
【0021】
また、請求項5に記載のエレクトレット振動発電装置は、前記マイクロ振動子が反磁性材料および永久磁石との組み合わせにより反磁性浮上することによって、機械摩擦や弾性エネルギー損失を最小化することを特徴とする。マイクロ振動子が反磁性体製で周囲にこれを浮上させるための永久磁石があってもよいし、逆にマイクロ振動子が永久磁石製で周囲にこれを浮上させるための反磁性体があってもよい。反磁性材料としてはグラファイトを使用してもよいし、ビスマスを使用してもよいし、高温超電導体を使用してもよい。
【0022】
ダイオードを使用した整流の場合は言わばダイオード中を流れる電力発生に寄与する電流全体に対して整流動作が行われる。ところが本質的に整流に必要な情報は電流がどちらに流れているか表わす1ビットのみである。そこで、請求項6に記載のエレクトレット振動発電装置は、機械電気エネルギー変換素子からマイクロ振動子の運動方向に関する情報を別途に取得してそれを整流回路の制御に使用することによって、より高効率に整流動作を行うことを特徴とする。
【0023】
具体的には、FET素子を整流に使用する場合微小な電荷のみでゲート電極をドライブすれば十分であることから、制御電圧信号を別途に機械電気エネルギー変換素子から得ることにより整流動作を効率化できる。この場合は扱う電荷量が微小なので、寄生容量を最小化することが特に重要である。このために、請求項6に記載のエレクトレット振動発電装置は前記機械電気エネルギー変換素子と前記FETのゲート電極を接続する配線の長さが5mm以下であることを特徴の1つとする。そのことにより少量の発生電荷によりFETのゲート電極を十分な電圧振幅で制御できる。
【0024】
ここにおいて、特にMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のFET素子ではゲート漏れ電流が小さいので電力損失がほとんど無いことが本質的であり、また一般的に小型のFET素子のゲート入力容量は十分に小さく、言い換えれば少量の電荷しか必要としないことも重要である。そのため、請求項6に記載のエレクトレット振動発電装置は前記FET素子のゲート漏れ電流が10pA以下であることを特徴の1つとする。少量の電荷を別途に発生するには機械電気エネルギー変換素子の全有効面積のうち小さな一部分を供すれば十分である。従って、FET制御用の電荷発生のためのエレクトレット膜および対向電極面積を適正に設計することにより、大きな電圧が対向電極側で発生してもマイクロ振動子の運動への反作用が問題にならないように素子を設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0026】
図1は本発明の典型的な実施例の概念図である。複数のエレクトレット機械電気エネルギー変換装置EC1,EC2,EC3が配置され、出力電圧は直列接続により増大する。整流回路素子RD1,RD2により整流された出力はエネルギー貯蔵デバイスESに蓄積される。実施状況によっては機械システムより別途に配線SLを介して振動方向に関する情報を得て、それにより整流回路素子RD1,RD2を制御する。
【0027】
図4は本発明の一実施例であり、半導体微細加工プロセスにより構成した振動発電素子の斜視図である。機械電気エネルギー変換素子の対向電極付近に発生する寄生容量を最小化するために、発電装置全体が超小型化されている。寄生容量を最小化するには、整流ダイオード素子D3、D4までの配線も含めて微細化する必要があるため、これら整流素子も下側シリコン基板SS2上に対向電極群CE3と併せて集積されている。マイクロ振動子OSL2は上側シリコン基板SS1上にMEMS技術を用いて作成される。ここでマイクロ振動子を支えるばねは、例えばICPーRIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching)法などにより作成されたシリコン製の梁Bである。OSL2の下側にはCYTOP製などのエレクトレット膜ELF2がパターニングされ、更にコロナ放電法などにより帯電されている。2枚の基板は、SS1上に作成された例えばポリイミド製のスペーサーPSによって微小なギャップ間隔を残しながら接着される。D3、D4は微小な逆方向漏れ電流を持っているが、十分な順方向電流を得るためにはある程度の電圧を必要とする。そのような電圧を達成するためにエレクトレット膜ELF2および対向電極CE3は複数化され、直列に集積されている。エネルギー貯蔵デバイスは例えばコンデンサーであるが、その性質上比較的大容量を確保するためにはシリコンデバイスに対して電極EL1,EL2を介して外付けにするのが好適である。すなわち、直列電極回路であるところの対向電極群CE3の一方の端、すなわち図4の場合はCE3の左端、はEL2を介して外付けされたコンデンサーの一端と接続されている。また、対向電極群CE3の他端から始まる導線は、D3、D4からなる整流回路の入力端子、すなわちD3の片側とD4の片側からの導線が直接接続されている点、まで浮遊容量を最小化するために5mm以下の距離で接続されている。また、電極EL1で代表される整流回路の出力端子は、前記コンデンサーの他端と接続されている。

【0028】
図5は整流用FETを分離された信号ラインにより制御する方式の構成図である。この方式においては機械電気エネルギー変換素子から別途に直接得られる電流の向きを表わす信号を用いてFET素子を制御することにより高効率の整流動作を実現する。この構成ではマイクロ振動子OSL3の底面にパターニングされたエレクトレット膜が3つの区画に分割されている。エレクトレット膜ELF3,ELF4はそれぞれ1区画を形成し、それぞれがFET1,FET2を制御するための電圧信号を対向電極上に発生することを目的として設置されている。
【0029】
その一方でエレクトレット膜ELF5,ELF6は電力を発生することを目的とし、分割されている唯一の目的は前記の実施例と同じく十分な電圧を得るためである。2つのFETのゲート電極につながる信号ラインSL2,SL3は高抵抗R1,R2を介して接地されている。これらR1,R2の抵抗値はマイクロ振動子OSL3の固有周波数の逆数よりもはるかに長い時定数で放電するように選ばれており、従ってSL2,SL3は発電動作の観点からはフロートしているのと同様であるが、しかし同時にこれら高抵抗は2つのゲート電位が制御できない振る舞いをするのを防止し、長期的には電位がゼロから大きく外れないようにする役割を果たす。
【0030】
2つのFETはNチャンネル型エンハンスモードのMOS型デバイスである。従って、通常これらのFETのソース電極はP型シリコン基盤電極に接続されており、ソース電極がドレイン電極よりも高い電位にある場合はP型基盤からドレイン電極直下にあるN型領域にPN接合を通して電流が流れる。本回路ではこの電流を順方向電流として扱う。ダイオードの場合、低電圧でこの順方向電流が大きくなるようにデバイスを設計すると逆方向漏れ電流が大きくなる問題がある。しかしFETの場合は逆方向にバイアスされた場合に適切なゲート電圧を与えることにより漏れ電流の最小化を図ることができ、それが図5の回路が達成していることに他ならない。即ち、FET1,FET2のどちらに対しても、ドレイン電極がソース電極よりも高い電位にある場合はドレインソース間漏れ電流を止める必要があるが、3つの区画に分けられた対向電極からの信号は全て同期しているので、ドレインソース間電流を止める必要があるFET素子に対してはゲート電圧が大きく負に振れてN型チャンネルが閉じるように構成されている。このように整流されたELF5,ELF6からの電力エネルギーはコンデンサーC2に貯蔵される。
【0031】
上記の構成において、本発明が主眼を置いているような間欠使用を主とする発電装置においては、発電がなされていない場合のエネルギー損失を避けるためにFETのドレインソース間漏れ電流はゲート電圧がゼロであっても十分に小さい必要がある。この場合には、順方向電流が流れるべき時にゲート電圧が大きく正に振れてN型チャンネルを大きく開くことにより、ソースからドレインへのチャンネルを流れる電流が基板からドレインに流れるpn接合順方向電流を上回って全体としてのコンダクタンスを大きく改善するように設計されていれば好適である。この場合もデバイスパラメーターの選択を別とすれば、図5に示した基本設計は変わらない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明はIDタグの分野において、現在のRFIDにおけるアンテナからの電力供給に代わり、音波や超音波を用いた電力供給のために極めて多量に使用される可能性がある。その場合、現在10cm程度あるrfアンテナに比較して1cm以下のはるかに小型な装置により電力供給できる。他にも例えば医療目的のデータ収集のための体内インプラントデバイスに広く適用できる。極めて微小な体内インプラントデバイスを長期にわたって電池交換をせずに使用する場合、外部からエネルギー供給をする必要があるが、音波や超音波を用いたエネルギー注入は現在用いられているRF電磁波によるエネルギー転送に比べて、場所を取りがちな電磁コイルを使わないことから前記体内インプラントデバイスの極小化の観点から見て有利である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例の構成図。
【図2】ダイオードによる半波整流回路。
【図3】エレクトレット型機械電気エネルギー変換素子の模式図。
【図4】半導体微細加工プロセスにより構成した振動発電素子の模式図。
【図5】整流用FETを分離された信号ラインにより制御する整流方式の構成図。
【符号の説明】
【0034】
EC1,EC2,EC3 エレクトレット機械電気エネルギー変換装置
RD1,RD2 整流回路素子
SL1,SL2,SL3 信号ライン
ES エネルギー貯蔵デバイス
D1,D2,D3,D4 ダイオード素子
C1,C2 コンデンサー
ELF1,ELF2,ELF3,ELF4,ELF5 エレクトレット膜
CE1,CE2,CE3 対向電極
OSL1,OSL2,OSL3 マイクロ振動子
L 負荷
SS1,SS2 シリコン基板
B シリコン微細加工された梁
PS ポリマー製スペーサー
EL2,EL2 電極
R1,R2 高抵抗
FET1,FET1 Nチャンネル型エンハンスモードMOSFET素子



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4