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明細書 :スマートボルテックスジェネレータ及びそれを備えた航空機、船舶、回転機械

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4940434号 (P4940434)
登録日 平成24年3月9日(2012.3.9)
発行日 平成24年5月30日(2012.5.30)
発明の名称または考案の名称 スマートボルテックスジェネレータ及びそれを備えた航空機、船舶、回転機械
国際特許分類 F15D   1/10        (2006.01)
B64C  23/06        (2006.01)
B63B   1/32        (2006.01)
FI F15D 1/10
B64C 23/06
B63B 1/32 Z
請求項の数または発明の数 24
全頁数 45
出願番号 特願2007-528908 (P2007-528908)
出願日 平成17年12月28日(2005.12.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 社団法人日本航空宇宙学会発行「第47回構造強度に関する講演会講演集」(平成17年7月20日)第141~143頁に発表
特許法第30条第1項適用 社団法人日本航空宇宙学会発行「第43回飛行機シンポジウム講演集」(平成17年10月12日)第162~166頁に発表
国際出願番号 PCT/JP2005/024290
国際公開番号 WO2007/077620
国際公開日 平成19年7月12日(2007.7.12)
審査請求日 平成20年12月2日(2008.12.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】池田 忠繁
個別代理人の代理人 【識別番号】100081776、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 宏
審査官 【審査官】井上 茂夫
参考文献・文献 米国特許第06427948(US,B1)
特開平08-309671(JP,A)
調査した分野 F15D 1/10
B63B 1/32
B64C 23/06
特許請求の範囲 【請求項1】
流体の流れと境界をなす物体表面に設置されて該物体表面で発生する流れの剥離を抑制し、該流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するボルテックスジェネレータであって、
前記物体表面に配設される、少なくとも一部が形状記憶合金よりなる本体を備え、
前記流体の昇・降温に応じて、前記形状記憶合金が高温側で安定な高温側安定相と低温側で安定な低温側安定相とに相変態することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化するように構成されていることを特徴とするスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項2】
前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、
前記本体に対して所定の関係で配設され、前記多方向性特性の発揮に必要なバイアス力の少なくとも一部としての、所定の助力を前記形状記憶合金に付与する助力付与手段をさらに備え、
使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態開始温度に前記流体の温度が降温過程で到達した時に、該形状記憶合金が前記高温側安定相から前記低温側安定相に変態し始め、かつ、該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態開始温度に該流体の温度が昇温過程で到達した時に、該形状記憶合金が該低温側安定相から該高温側安定相に逆変態し始めるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項3】
前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項4】
前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項5】
前記助力付与手段が前記助力としての弾力を前記形状記憶合金に付与する弾性体を備えていることを特徴とする請求項2、3又は4記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項6】
前記弾性体が板ばねよりなることを特徴とする請求項5記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項7】
前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、
前記多方向性特性の発揮に必要なバイアス力としての、前記流体の流体力が前記形状記憶合金に所定の方向から付与されるように、前記本体が構成され、
使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態開始温度に前記流体の温度が降温過程で到達した時に、該形状記憶合金が前記高温側安定相から前記低温側安定相に変態し始め、かつ、該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態開始温度に該流体の温度が昇温過程で到達した時に、該形状記憶合金が該低温側安定相から該高温側安定相に逆変態し始めるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項8】
前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されていることを特徴とする請求項7記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項9】
前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されていることを特徴とする請求項7記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項10】
前記形状記憶合金が多方向性形状記憶効果を有し、少なくとも該多方向性形状記憶効果により、前記本体の形体が前記第1形体と前記第2形体とに変化するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項11】
前記流体の温度が使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、前記本体が高温側記憶形状たる第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、該本体が低温側記憶形状たる第2形体を維持するように構成されていることを特徴とする請求項10記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項12】
前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、前記本体が低温側記憶形状たる第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、該本体が高温側記憶形状たる第2形体を維持するように構成されていることを特徴とする請求項10記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項13】
流体の流れと境界をなす物体表面に設置されて該物体表面で発生する流れの剥離を抑制し、該流体の流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するボルテックスジェネレータであって、
前記流体力が所定の方向から付与されるように前記物体表面に配設される、少なくとも一部が形状記憶合金よりなる本体を備え、
前記流体力の増・減に応じて、前記形状記憶合金が低負荷側で安定な低負荷側安定相と高負荷側で安定な高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化するように構成されていることを特徴とするスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項14】
流体の流れと境界をなす物体表面に設置されて該物体表面で発生する流れの剥離を抑制し、該流体の流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するボルテックスジェネレータであって、
前記流体力が所定の方向から付与されるように前記物体表面に配設される、少なくとも一部が超弾性合金よりなる本体を備え、
前記流体力の増・減に応じて、前記超弾性合金が相変態を伴わずに超弾性変形することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化するように構成されていることを特徴とするスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項15】
前記本体は、前記物体表面に固定される台座部と、該本体が前記第1形体にあるときに該台座部に対して所定の起立姿勢で起立して流れの剥離抑制機能を発揮するとともに、該本体が前記第2形体にあるときに該台座部に対して所定の傾倒姿勢となって乱流抑制機能を発揮する渦発生部とを有していることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一つに記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項16】
前記本体は、前記台座部と、該台座部の端縁から湾曲又は屈曲することで該台座部に対して所定の起立角度で起立する前記渦発生部とが一体的に形成された板状体よりなり、少なくとも該台座部と該渦発生部との境界部たる湾曲部又は屈曲部が前記形状記憶合金よりなることを特徴とする請求項15記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項17】
前記本体は、前記物体表面に固定される台座部と、該本体が前記第1形体にあるときに該台座部に対して所定の起立姿勢で起立して流れの剥離抑制機能を発揮するとともに、該本体が前記第2形体にあるときに該台座部に対して所定の傾倒姿勢となって乱流抑制機能を発揮する渦発生部とを有していることを特徴とする請求項14に記載のスマートボルテックスジェネレータ
【請求項18】
前記本体は、前記台座部と、該台座部の端縁から湾曲又は屈曲することで該台座部に対して所定の起立角度で起立する前記渦発生部とが一体的に形成された板状体よりなり、少なくとも該台座部と該渦発生部との境界部たる湾曲部又は屈曲部が前記超弾性合金よりなることを特徴とする請求項17記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項19】
前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、
前記渦発生部が前記台座部から湾曲又は屈曲することで該台座部に対して所定の起立角度で起立するように、前記形状記憶合金が形状記憶処理されていることを特徴とする請求項15又は16記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項20】
前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、
前記渦発生部が前記台座部に対して起立角度を小さくする方向に傾倒した所定の傾倒姿勢となるように、前記形状記憶合金が形状記憶処理されていることを特徴とする請求項15又は16記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項21】
前記形状記憶合金が多方向性形状記憶効果を有し、
前記渦発生部が前記台座部から湾曲又は屈曲することで該台座部に対して所定の起立角度で起立するように前記形状記憶合金が形状記憶処理され、かつ、該渦発生部が該起立角度を小さくする方向に傾倒した所定の傾倒姿勢となるように該形状記憶合金が形状記憶処理されていることを特徴とする請求項15又は16記載のスマートボルテックスジェネレータ。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか一つに記載のスマートボルテックスジェネレータが翼表面に設けられた航空機であって、
前記本体は、離着陸中の少なくとも一部で前記第1形体を維持し、かつ、巡航中に前記第2形体を維持するように構成されていることを特徴とする航空機。
【請求項23】
請求項1乃至21のいずれか一つに記載のスマートボルテックスジェネレータが船体表面又は船体に取り付けられた翼の表面に設けられていることを特徴とする船舶。
【請求項24】
請求項1乃至21のいずれか一つに記載のスマートボルテックスジェネレータが翼表面に設けられていることを特徴とする回転機械。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れと境界をなす物体表面、例えば、航空機の翼表面、船舶の船体表面又は船体に取り付けられた翼の表面や回転機械の翼表面等に設置されて、該物体表面で発生する流れの剥離を抑制するスマートボルテックスジェネレータ及びそれを備えた航空機、船舶、回転機械に関し、より詳しくは少なくとも一部に形状記憶合金又は超弾性合金を含み、流体の温度変化又は流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータ及びそれを備えた航空機、船舶、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の翼は、飛行経路中で最も時間の長い巡航時に、翼形状が最適となるように設計されている。すなわち、巡航時に、高速で重量分の揚力を得ることができ、かつ、できるだけ抗力が小さくなるように、翼が設計されている。
【0003】
一方、揚力は、対気速度、迎角又は翼の曲がりが大きくなるに連れて大きくなる。このため、離着陸時の低速飛行時や旋回時には、高い揚力を得るために、翼の迎角を大きくしたり、翼に設けられたヒンジ部分で翼形状を大きく曲げたりしている。しかしながら、翼の迎角が限度を越えて増したり、翼の曲げが大きくなりすぎると、流れが翼表面から剥がれて、抗力が大きくなるとともに、十分な揚力が得られなくなり、操縦性が低下するおそれがある。
【0004】
そこで、翼の迎角や曲がりが大きくなる離着陸時に翼表面で発生する、流れの剥離を抑制すべく、航空機の翼表面にボルテックスジェネレータが設置されている。ボルテックスジェネレータは、翼面上のある位置から縦渦を発生させ、運動量の大きい境界層の外側の流れを翼表面の遅い流れと混ぜることにより、翼表面の流れの運動量を増加させて剥離の発生を抑制する。
【0005】
航空機に使用されている通常のボルテックスジェネレータは、長方形や台形等の板状体よりなり、板面に流れが当たるように流れ方向に対して板面が斜めを向くとともに、翼面に対して板面が略垂直に起立した状態で設置される。なお、大型機用では、起立した板状体の長さは約55~75mm、高さは約20~23mm、厚さは約2mmであり、これらの板状体が、操縦翼の前方に、横方向(翼の長手方向)に間隔をおいて複数配置される。
【0006】
ところで、ボルテックスジェネレータは、翼の迎角や曲がりが大きくなる離着陸時に翼面からの流れの剥離を抑制するという機能を発揮する一方で、翼の迎角や曲がりが小さくなる巡航時には、ボルテックスジェネレータにより発生する渦により、翼表面の流れを乱し、乱流により抗力を増大させるという欠点がある。飛行経路中で最も時間の長い巡航時に、ボルテックスジェネレータにより抗力が増大することは、航空機の運動性能や燃費の観点より大きな問題となる。
【0007】
そこで、飛行状況に応じて、ボルテックスジェネレータの態様を調整する技術が知られている。
【0008】
例えば、特許文献1(特開平5-16892号公報)には、図18に示されるように、翼80の翼表面81における流体の流れの状態、流体の流速又は流体の流れの中に発生する渦を検知するセンサ82と、センサ信号に基づいて剥離の状態を解析するとともに、剥離の状態に応じた制御信号を発する、CPU等よりなるデータ処理手段83と、データ処理手段83からの制御信号により作動する圧電アクチュエータ等の駆動手段84と、流れと境界をなす翼表面81に対する先端位置85が駆動手段84により昇降可能とされたボルテックスジェネレータ86とを備えた剥離制御装置が開示されている。
【0009】
この剥離制御装置では、翼表面81における流体の流れの状態等をセンサ82で検知し、センサ信号に基づく剥離の状態に応じたデータ処理手段83からの制御信号により、駆動手段84を作動させて、翼表面81に対するボルテックスジェネレータの先端位置85を移動調整する。これにより、翼表面81に剥離が発生していない場合は、ボルテックスジェネレータ86の先端位置85が翼80内に退いた状態にする一方、翼表面81に剥離が発生している場合は、ボルテックスジェネレータ86の先端位置85が翼表面81から所定量突出した状態にすることで、流れの剥離を最適に制御することができる。
【0010】
また、特許文献2(US6,427,948 B1)には、図19に示されるように、本体90と、自然状態で弓形の板ばね91と、電気抵抗による加熱要素92とを備えたボルテックスジェネレータが開示されている。本体90は、翼表面に固定される長方形状の台座部93と、台座部93の一端(前端)側の一側面に一体に連結されるとともに、台座部93から垂直に起立した起立面を有する長方形状のフィン部94とから構成されている。そして、フィン部94が形状記憶合金よりなり、この形状記憶合金の記憶処理された形状は、弓形ではなく、フィン部94の起立面が平坦となるように直状に伸びた形状である。また、フィン部94は、変態終了温度以下の温度で、板ばね91の弓形状に追従するように弓形に変形可能とされている。このため、変態終了温度以下の温度で、フィン部94の前縁部94a、後縁部94bに、板ばね91の係合クリップ部91a、91bが嵌め込まれることで、板ばね91のばね力により、フィン部94は板ばね91の弓形に追従するように弓形に変形した形状とされている。また、フィン部94の起立面には、導線95、96を介して電気が供給されて電気抵抗によりフィン部94を加熱する加熱要素92が接着されている。
【0011】
このため、このボルテックスジェネレータでは、フィン部94は、形状記憶合金の変態終了温度以下のときは板ばね91のばね力により弓形とされるので、翼表面に渦を発生させて流れの剥離を抑制する。一方、フィン部94は、加熱要素92により逆変態終了温度以上に加熱されると、板ばね91のばね力に抗して、形状記憶された直状に伸びた形状となる。直状に伸びたフィン部94は、流体の流れに沿って平行に延びるため、翼表面に渦が発生せず、乱流による抗力増大を抑えることができる。したがって、このボルテックスジェネレータでは、加熱要素92に対する電気の供給を制御することで、フィン部94の形状を変化させて、流れの剥離を最適に制御することができる。
【0012】
なお、このボルテックスジェネレータでは、電気系統の故障等により、加熱要素92への電気の供給が絶たれてフィン部94の温度が変態終了温度を下回ると、フィン部94は板ばね91のばね力により弓形に戻る。このため、このボルテックスジェネレータでは、何らかの理由で加熱要素92に電気を供給できなくなったとしても、板ばね91によりフィン部94を弓形にして、フィン部94の剥離抑制機能を発揮させることができるので、フェールセーフ機構が働く。ただし、この場合、巡航時においてもフィン部94が翼表面に渦を発生させることになるため、抗力の増大を招く。
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、翼表面81における流体の流れの状態等を検知するセンサ82と、CPU等よりなるデータ処理手段83と、ボルテックスジェネレータ86を駆動させる圧電アクチュエータ等の駆動手段84とを要する。
【0014】
また、上記特許文献2に記載の従来技術では、加熱要素92に対する電気の供給の制御により、形状記憶合金よりなるフィン部94の温度を調整して、フィン部94の形体を変化させている。さらに、この従来技術において、離着陸時と巡航時とでフィン部94の形体を確実に変化させようとすると、その変化時期を判断するためのセンサやデータ処理手段が必要となる。
【0015】
このため、上記特許文献1及び2に記載の技術は、外部からのエネルギー供給が必要で、装置構造が複雑であり、電気系統等の故障が発生し易く、また修理及びメンテナンスや既存の翼に対する取り付けも面倒である、という問題がある。
【発明の開示】
【0016】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、温度変化等に応じて多方向性特性を有するボルテックスジェネレータであって、外部からのエネルギー供給が不要で、構造が簡単であり、故障が発生し難く、かつ、修理及びメンテナンスや既存の翼等に対する取り付けも容易なスマートボルテックスジェネレータ及びそれを備えた航空機、船舶、回転機械を提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【0017】
(請求項1~12に記載の発明)
上記課題を解決する本発明のスマートボルテックスジェネレータは、流体の流れと境界をなす物体表面に設置されて該物体表面で発生する流れの剥離を抑制し、該流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するボルテックスジェネレータであって、前記物体表面に配設される、少なくとも一部が形状記憶合金よりなる本体を備え、前記流体の昇・降温に応じて、前記形状記憶合金が高温側で安定な高温側安定相と低温側で安定な低温側安定相とに相変態することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
ここに、「形状記憶合金」とは、超弾性効果と形状記憶効果とを有する合金のことであり、この形状記憶効果には一方向性形状記憶効果と二方向性形状記憶効果等の多方向性形状記憶効果とが含まれる。なお、ここでいう超弾性効果(形状記憶合金の超弾性効果)とは、形状記憶合金の相変態を伴って大きく弾性変形する(1%以上の弾性歪み量で超弾性変形する)ことをいう。
【0019】
また、「流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮する」とは、流体の昇・降温に従って複数の態様で自動的に繰り返し作動することをいい、形状記憶合金の一方向性形状記憶効果とこの形状記憶合金に多方向性特性を発揮させるために必要不可欠なバイアス力との組み合わせを利用する場合、及び形状記憶合金の多方向性形状記憶効果を利用する場合を含む意味である。なお、ここでいう「流体の温度」とは、本発明のスマートボルテックスジェネレータが物体表面に設置されて使用に供された状態(使用中)における、本体周りの流体温度、すなわち本体が曝される気体又は液体の温度(より具体的には気温や水温等)のことをいう。また、ここでいう「繰り返し動作」とは、前記本体が複数の形体に繰り返し変化すること、例えば、前記本体の形体が前記第1形体と前記第2形体とに繰り返し変化することをいう。
【0020】
また、「高温側安定相」には、例えば、高温時及び/又は低負荷時に安定なオーステナイト相が含まれ、「低温側安定相」には、例えば、低温時及び/又は高負荷時に安定なマルテンサイト相が含まれる。
【0021】
さらに、「渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体」とは、前記物体表面に渦を発生させることにより該物体表面から流れが剥離することを抑制しうるように設計された前記本体の形体を意味し、この「第1形体」には、設計上最適な一つの形体、設計上良好な一つの形体及び設計上良好な複数の形体が含まれる。すなわち、この「第1形体」には、前記流体の昇・降温に応じて連続的又は段階的に変化する複数の形体が含まれる。同様に、「乱流を抑制しうる第2形体」とは、前記物体表面に発生する乱流を抑制しうるように設計された前記本体の形体を意味し、この「第2形体」には、設計上最適な一つの形体、設計上良好な一つの形体及び設計上良好な複数の形体が含まれる。すなわち、この「第2形体」には、前記流体の昇・降温に応じて連続的又は段階的に変化する複数の形体が含まれる。
【0022】
また、「乱流を抑制しうる」とは、本体が第1形体から第2形体に変化することで、第1形体にある本体により発生する渦を減少又は無くすことができるという意味である。
【0023】
加えて、「前記形状記憶合金が高温側で安定な高温側安定相と低温側で安定な低温側安定相とに相変態することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化する」における「形状記憶合金が高温側安定相と低温側安定相とに相変態することにより、第1形体と第2形体とに本体の形体が変化する」とは、形状記憶合金が高温側安定相から低温側安定相に変態することで、本体の形体が第1形体から第2形体に変化するとともに、形状記憶合金が低温側安定相から高温側安定相に逆変態することで、本体の形体が第2形体から第1形体に変化したり(後述する第1の態様に相応する)、あるいは形状記憶合金が低温側安定相から高温側安定相に逆変態することで、本体の形体が第1形体から第2形体に変化するとともに、形状記憶合金が高温側安定相から低温側安定相に変態することで、本体の形体が第2形体から第1形体に変化したり(後述する第2の態様に相応する)することをいう。
【0024】
このスマートボルテックスジェネレータでは、本体の少なくとも一部が形状記憶合金よりなり、この形状記憶合金が流体の昇・降温に応じて高温側安定相と低温側安定相とに相変態することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と、乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化する。
形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有するものである場合において、流体の昇・降温によりその形状記憶合金が高温側安定相と低温側安定相とに相変態することで、本体が第1形体と第2形体とに変化する態様として、以下の2種を例示することができる。
【0025】
すなわち、(1)本体周りの流体温度が、使用中に形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の逆変態終了温度(例えばオーステナイト変態終了温度)以上の温度であるときに、本体が第1形体をなすとともに、本体周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の変態終了温度(例えばマルテンサイト変態終了温度)以下の温度であるときに、本体が第2形体をなし、流体の昇・降温に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第1の態様、(2)本体周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の変態終了温度(例えばマルテンサイト変態終了温度)以下の温度であるときに、本体が第1形体をなすとともに、本体周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の逆変態終了温度(例えばオーステナイト変態終了温度)以上の温度であるときに、本体が第2形体をなし、流体の昇・降温に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第2の態様である。
【0026】
ここに、本明細書においては、「変態終了温度」とは、温度をそれ以下に下げても、形状記憶合金の変態が進行しない温度、あるいは形状記憶合金が所定の形状の範囲に到達する温度を意味し、また、「逆変態終了温度」とは、温度をそれ以上に上げても、形状記憶合金の変態が進行しない温度、あるいは形状記憶合金が所定の形状の範囲に到達する温度を意味する。
【0027】
また、形状記憶合金が二方向性形状記憶効果を有するものである場合において、流体の昇・降温によりその形状記憶合金が高温側安定相と低温側安定相とに相変態することで、本体が第1形体と第2形体とに変化する態様として、以下の2種を例示することができる。
【0028】
すなわち、(1)本体周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の逆変態終了温度(例えばオーステナイト変態終了温度)以上の温度であるときに、本体が高温側記憶形状たる第1形体をなすとともに、本体周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の変態終了温度(例えばマルテンサイト変態終了温度)以下の温度であるときに、本体が低温側記憶形状たる第2形体をなし、流体の昇・降温に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第1の態様、(2)本体周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の変態終了温度(例えばマルテンサイト変態終了温度)以下の温度であるときに、本体が低温側記憶形状たる第1形体をなすとともに、本体周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の逆変態終了温度(例えばオーステナイト変態終了温度)以上の温度であるときに、本体が高温側記憶形状たる第2形体をなし、流体の昇・降温に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第2の態様である。
【0029】
なお、本発明のスマートボルテックスジェネレータを航空機に適用する場合の好ましい態様としては、前記第1の態様を挙げることができる。この場合、後述する実施形態で示されるように、航空機の離着陸時に本体が第1形体をなすとともに、航空機の巡航時に本体が第2形体をなすように、離着陸時における低空での想定温度(高温側の想定気温)が前記逆変態終了温度以上になるとともに、巡航時における高空(巡航高度)での想定温度(低温側の想定気温)が前記変態終了温度以下になるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等を調整して得られた形状記憶合金を採用することができる。なお、この想定温度としては、高温側及び低温側のそれぞれにおいて、ある一つの温度を設定することもできるし、あるいはある温度範囲を設定することもできる。
【0030】
このように、このスマートボルテックスジェネレータでは、本体周りにある流体の温度変化を制御入力として、スマートボルテックスジェネレータの多方向性特性を発揮させている。すなわち、このスマートボルテックスジェネレータは、自ら自分の置かれた環境を検知し、自ら判断し、自ら最適な形体に変化する、所謂スマート構造となっている。また、形状記憶合金の相変態を起こすべく外部からエネルギーを供給する必要がなく、エネルギー供給手段としての電気装置や、ボルテックスジェネレータの駆動手段が不要となる。
【0031】
したがって、本発明のスマートボルテックスジェネレータは、構造が簡単であり、故障が発生し難く、かつ、修理及びメンテナンスや既存の翼等に対する取り付けも容易となる。
【0032】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、前記本体に対して所定の関係で配設され、前記多方向性特性の発揮に必要なバイアス力の少なくとも一部としての、所定の助力を前記形状記憶合金に付与する助力付与手段をさらに備え、使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態開始温度に前記流体の温度が降温過程で到達した時に、該形状記憶合金が前記高温側安定相から前記低温側安定相に変態し始め、かつ、該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態開始温度に該流体の温度が昇温過程で到達した時に、該形状記憶合金が該低温側安定相から該高温側安定相に逆変態し始めるように構成されている。
【0033】
ここに、「バイアス力」とは、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金を少なくとも一部に含む前記本体に対して、多方向性特性を発揮させるために必要不可欠なものとして、該本体に外部から与えられる力を意味する。また、助力付与手段が形状記憶合金に付与する「助力」には、例えば、ばね力等の弾力、重り等によって付与される力、ポンプ等が発生する空気圧や水圧等の流体圧力が含まれる。なお、前記「バイアス力」には、前記「助力」の他に、本発明のスマートボルテックスジェネレータの使用中に必然的に本体周りの流体から形状記憶合金に負荷される流体力が含まれる。
【0034】
また、「使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重」とは、本発明のスマートボルテックスジェネレータの使用中に本体を構成する形状記憶合金に外部から作用する全ての荷重を意味し、この「外部荷重」には、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金の場合における、前記助力及び使用中に必然的に本体周りの流体から負荷される流体力と、多方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金の場合における、使用中に必然的に本体周りの流体から負荷される流体力及び必要に応じて補助的に負荷される補助力(例えば、弾力、流体圧力や重りより付与される力)が含まれる。
【0035】
なお、本明細書で、「変態」というときは、高温側安定相から低温側安定相への相変態又は低負荷側安定相から高負荷側安定相への相変態を意味し、「逆変態」というときは、低温側安定相から高温側安定相への相変態又は高負荷側安定相から低負荷側安定相への相変態を意味する。
【0036】
このスマートボルテックスジェネレータでは、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金により少なくとも一部が構成された本体に対して、多方向性特性を付与するために必要なバイアス力の少なくとも一部として、助力付与手段による助力を利用する。すなわち、このスマートボルテックスジェネレータでは、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金に助力付与手段からの助力がバイアス力の少なくとも一部として付与される。このため、流体温度に応じて変化する該形状記憶合金の応力-歪み特性と、少なくとも該助力を含むバイアス力とのバランスにより、流体の昇・降温に応じて該形状記憶合金が相変態して高温側安定相となったり低温側安定相となったりする。そして、流体温度が低下すれば、それにより形状記憶合金の降伏応力(変態応力)が低下するので、該バイアス力の助けを借りて、本体の形体が第1形体から第2形体に変化したりあるいは第2形体から第1形体に変化したりする。また、本発明のスマートボルテックスジェネレータの使用中には必然的に、本体周りの流体から形状記憶合金に流体力が負荷されている。このため、使用中に必然的に負荷されるこの流体力を前記バイアス力(一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金に多方向性特性を発揮させるために必要不可欠な力)の一部として利用する場合はその力の大きさを考慮しつつ、助力付与手段から形状記憶合金に付与される助力と、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金の応力-歪み特性とを適切に設定することにより、流体の昇・降温に応じて本体を確実に第1形体又は第2形体に維持することができる。したがって、このスマートボルテックスジェネレータでは、本体が第1形体を維持しているときは、流れの剥離抑制機能を確実に発揮し、かつ、本体が第2形体を維持しているときは乱流抑制機能を確実に発揮する。
【0037】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されている。
【0038】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体の温度が前記逆変態終了温度以上の高温側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体の温度が前記変態終了温度以下の低温側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0039】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されている。
【0040】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体の温度が前記変態終了温度以下の低温側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体の温度が前記逆変態終了温度以上の高温側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0041】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記助力付与手段が前記助力としての弾力を前記形状記憶合金に付与する弾性体を備えている。
【0042】
ここに、「弾性体」には、例えば、金属ばね、弾性ゴムや熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体が含まれる。
【0043】
このスマートボルテックスジェネレータでは、弾性体の弾力が前記助力として前記形状記憶合金に付与されるため、弾性体の弾力を適切に設定することにより、本体の形体を確実に第1形体又は第2形体に維持することができる。
【0044】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記弾性体が板ばねよりなる。
【0045】
このスマートボルテックスジェネレータでは、板ばねのばね力が前記助力として前記形状記憶合金に付与されるため、板ばねのばね力を適切に設定することにより、本体の形体を第1形体又は第2形体に確実に維持することができる。また、板ばねであれば、その形状、大きさ、厚さや材質を適切に設定することでばね力を容易に調整することができるとともに、構造の簡素化やメンテナンスフリーにもより貢献する。
【0046】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、前記多方向性特性の発揮に必要なバイアス力としての、前記流体の流体力が前記形状記憶合金に所定の方向から付与されるように、前記本体が構成され、使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態開始温度に前記流体の温度が降温過程で到達した時に、該形状記憶合金が前記高温側安定相から前記低温側安定相に変態し始め、かつ、該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態開始温度に該流体の温度が昇温過程で到達した時に、該形状記憶合金が該低温側安定相から該高温側安定相に逆変態し始めるように構成されている。
【0047】
ここに、「流体の流体力」とは、本発明のスマートボルテックスジェネレータが物体表面に設置されて使用に供された状態(使用中)における、該物体表面を流れる本体周りの流体の流体力であって、本体に対して所定の方向から付与される流体力を意味し、別途設けた助力付与手段が助力として流体圧力を発生する場合の該流体圧力を含まない。
【0048】
また、「流体の流体力が前記形状記憶合金に所定の方向から付与されるように」とは、本体に所定の方向から作用する流体力をバイアス力として、流体の昇・降温に応じて、形状記憶合金が高温側安定相と低温側安定相とに相変態することにより、本体の形体が第1形体と第2形体とに変化しうるように、という趣意である。
【0049】
このスマートボルテックスジェネレータでは、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金により少なくとも一部が構成された本体に対して、多方向性特性を付与するために必要なバイアス力として、前記物体表面を流れる流体の流体力を利用する。すなわち、このスマートボルテックスジェネレータでは、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金に前記流体力がバイアス力として所定の方向から付与される。このため、流体温度に応じて変化する該形状記憶合金の応力-歪み特性と、該形状記憶合金にバイアス力として付与される該流体力とのバランスにより、流体の昇・降温に応じて該形状記憶合金が相変態して高温側安定相となったり低温側安定相となったりする。そして、流体温度が低下すれば、それにより形状記憶合金の降伏応力(変態応力)が低下するので、該流体力の助けを借りて、本体の形体が第1形体から第2形体に変化したりあるいは第2形体から第1形体に変化したりする。このため、前記物体表面を流れる本体周りの流体から形状記憶合金に所定の方向から付与される流体力と、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金の応力-歪み特性とを適切に設定することにより、流体の昇・降温に応じて本体を確実に第1形体又は第2形体に維持することができる。したがって、このスマートボルテックスジェネレータでは、本体が第1形体を維持しているときは、流れの剥離抑制機能を確実に発揮し、かつ、本体が第2形体を維持しているときは乱流抑制機能を確実に発揮する。また、このスマートボルテックスジェネレータでは、前記バイアス力としての前記助力が必須ではないため、前記助力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0050】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されている。
【0051】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体の温度が前記逆変態終了温度以上の高温側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体の温度が前記変態終了温度以下の低温側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0052】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されている。
【0053】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体の温度が前記変態終了温度以下の低温側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体の温度が前記逆変態終了温度以上の高温側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0054】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記形状記憶合金が多方向性形状記憶効果を有し、少なくとも該多方向性形状記憶効果により、前記本体の形体が前記第1形体と前記第2形体とに変化するように構成されている。
【0055】
ここに前記「多方向性形状記憶効果」とは、形状記憶合金自体が有する特性であって、外部からバイアス力を付与されることなく、温度変化に応じた相変態により、形状記憶合金単独で複数の記憶処理された形状に自動的に繰り返し変化することを意味する。例えば、二方向性形状記憶効果とは、外部からバイアス力を付与されることなく、逆変態終了温度(例えば、オーステナイト変態終了温度)以上の高温側で記憶処理された形状と、変態終了温度(例えば、マルテンサイト変態終了温度)以下の低温側で記憶処理された形状とに、昇・降温に従って自動的に繰り返し変化することをいう。
【0056】
また、「少なくとも該多方向性形状記憶効果により、前記本体の形体が前記第1形体と前記第2形体とに変化する」とは、形状記憶合金の多方向性形状記憶効果と、本体を構成する形状記憶合金に使用中に必然的に負荷される本体周りの流体の流体力とにより、本体の形態が第1形体と第2形体とに変化する場合の他、形状記憶合金の多方向性形状記憶効果と、前記流体力と、本体の形体を変化させるのに必要に応じて補助的に負荷される補助力(弾力、重り等によって付与される力や、別途設けた手段からの空気圧や水圧等の流体圧力等)とにより、本体の形体が第1形体と第2形体とに変化する場合も含む趣意である。すなわち、形状記憶合金として多方向性形状記憶効果を有するものを用いる場合は、本体に対して所定の関係で配設された補助力(弾力、重り等によって付与される力や、空気圧や水圧等の流体圧力等)付与手段を、必要に応じて設けてもよい。
【0057】
このスマートボルテックスジェネレータでは、多方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金により少なくとも一部が構成された本体が、少なくとも該多方向性形状記憶効果により、流体の温度が前記逆変態終了温度以上であるときに第1形体及び第2形体の一方を維持し、かつ、流体の温度が変態終了温度以下であるときに第1形体及び第2形体の他方を維持する。このため、前記助力付与手段等のバイアス力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0058】
本発明のスマートボルテックスジェネレータの好適な態様において、前記流体の温度が使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、前記本体が高温側記憶形状たる第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、該本体が低温側記憶形状たる第2形体を維持するように構成されている。
【0059】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体の温度が前記逆変態終了温度以上の高温側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体の温度が前記変態終了温度以下の低温側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0060】
本発明のスマートボルテックスジェネレータの好適な態様において、前記流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態終了温度以下であるときに、前記本体が低温側記憶形状たる第1形体を維持し、かつ、該流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときに、該本体が高温側記憶形状たる第2形体を維持するように構成されている。
【0061】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体の温度が前記変態終了温度以下の低温側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体の温度が前記逆変態終了温度以上の高温側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0062】
(請求項13に記載の発明)
ここに、本発明のスマートボルテックスジェネレータは、流体の流れと境界をなす物体表面に設置されて該物体表面で発生する流れの剥離を抑制し、該流体の流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するボルテックスジェネレータであって、前記流体力が所定の方向から付与されるように前記物体表面に配設される、少なくとも一部が形状記憶合金よりなる本体を備え、前記流体力の増・減に応じて、前記形状記憶合金が低負荷側で安定な低負荷側安定相と高負荷側で安定な高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化するように構成されているものも含む。
【0063】
「流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮する」とは、流体力の方向及び増・減に従って複数の態様で自動的に繰り返し作動することをいう。なお、ここでいう「流体力」とは、本発明のスマートボルテックスジェネレータが物体表面に設置されて使用に供された状態(使用中)における、該物体表面を流れる本体周りの流体の流体力、すなわち本体が曝される気体又は液体の流体力のことをいう。
【0064】
また、「流体力が所定の方向から付与されるように」とは、本体に対して所定の方向から作用する流体力の増・減に応じて、形状記憶合金が低負荷側安定相と高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することにより、本体の形体が第1形体と第2形体とに変化しうるように、という趣意である。ここでいう、形状記憶合金における「超弾性変形」とは、形状記憶合金の相変態を伴う弾性変形であって、弾性歪み量が1%以上となる大きな弾性変形を意味する。
【0065】
なお、「低負荷側安定相」には、例えば、高温時及び/又は低負荷時に安定なオーステナイト相が含まれ、「高負荷側安定相」には、例えば、低温時及び/又は高負荷時に安定なマルテンサイト相が含まれる。
【0066】
また、「形状記憶合金」、「渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体」、「乱流を抑制しうる第2形体」及び「乱流を抑制しうる」については、前述した流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータについての定義と同様であるため、その説明を援用することで記載を省略する。
【0067】
さらに、「前記形状記憶合金が低負荷側で安定な低負荷側安定相と高負荷側で安定な高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化する」における「形状記憶合金が低負荷側安定相と高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することにより、第1形体と第2形体とに本体の形体が変化する」とは、形状記憶合金が低負荷側安定相から高負荷側安定相に変態しながら超弾性変形することで、本体の形体が第1形体から第2形体に変化するとともに、形状記憶合金が高負荷側安定相から低負荷側安定相に逆変態しながら超弾性変形することで、本体の形体が第2形体から第1形体に変化したり(後述する第1の態様に相応する)、あるいは形状記憶合金が高負荷側安定相から低負荷側安定相に逆変態しながら超弾性変形することで、本体の形体が第1形体から第2形体に変化するとともに、形状記憶合金が低負荷側安定相から高負荷側安定相に変態しながら超弾性変形することで、本体の形体が第2形体から第1形体に変化したり(後述する第2の態様に相応する)することをいう。
【0068】
このスマートボルテックスジェネレータでは、本体の少なくとも一部が形状記憶合金よりなり、本体に所定の方向から作用する流体力の増・減に応じて形状記憶合金が低負荷側安定相と高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と、乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化する。
【0069】
形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有するものである場合において、流体力の増・減によりその形状記憶合金が低負荷側安定相と高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することで、本体が第1形体と第2形体とに変化する態様として、以下の2種を例示することができる。
【0070】
すなわち、(1)本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の逆変態終了応力(例えばオーステナイト変態終了応力)以下であるときに、本体が第1形体をなすとともに、本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の変態終了応力(例えばマルテンサイト変態終了応力)以上であるときに、本体が第2形体をなし、流体力の増・減に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第1の態様、(2)本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の変態終了応力(例えばマルテンサイト変態終了応力)以上であるときに、本体が第1形体をなすとともに、本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の逆変態終了応力(例えばオーステナイト変態終了応力)以下であるときに、本体が第2形体をなし、流体力の増・減に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第2の態様である。
【0071】
ここに、本明細書においては、「逆変態終了応力」とは、負荷により生じる形状記憶合金の応力がそれ以下に減少しても、形状記憶合金の変態が進行しない応力、あるいは形状記憶合金が所定の形状の範囲に到達する応力を意味し、また、「変態終了応力」とは、負荷により生じる形状記憶合金の応力がそれ以上に増加しても、形状記憶合金の変態が進行しない応力、あるいは形状記憶合金が所定の形状の範囲に到達する応力を意味する。
【0072】
また、形状記憶合金が二方向性形状記憶効果を有するものである場合において、流体力の増・減によりその形状記憶合金が低負荷側安定相と高負荷側安定相とに相変態しながら超弾性変形することで、本体が第1形体と第2形体とに変化する態様として、以下の2種を例示することができる。
【0073】
すなわち、(1)本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の逆変態終了応力(例えばオーステナイト変態終了応力)以下であるときに、本体が低負荷側記憶形状たる第1形体をなすとともに、本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の変態終了応力(例えばマルテンサイト変態終了応力)以上であるときに、本体が高負荷側記憶形状たる第2形体をなし、流体力の増・減に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第1の態様、(2)本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の変態終了応力(例えばマルテンサイト変態終了応力)以上であるときに、本体が高負荷側記憶形状たる第1形体をなすとともに、本体に対して所定の方向から作用する流体の流体力が、形状記憶合金の逆変態終了応力(例えばオーステナイト変態終了応力)以下であるときに、本体が低負荷側記憶形状たる第2形体をなし、流体力の増・減に応じて本体が第1形体と第2形体とに繰り返し変化する第2の態様である。
【0074】
なお、このスマートボルテックスジェネレータを航空機に適用する場合の好ましい態様としては、前記第1の態様を挙げることができる。この場合、後述する実施形態で示されるように、航空機の離着陸時に本体が第1形体をなすとともに、航空機の巡航時に本体が第2形体をなすように、例えば、離着陸時における低速での想定負荷(低負荷側の想定負荷)が前記逆変態終了応力以下になるとともに、巡航時における高速(巡航速度)での想定負荷(高負荷側の想定負荷)が前記変態終了応力以上になるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等を調整して得られた形状記憶合金を採用することができる。なお、この想定負荷としては、低負荷側及び高負荷側のそれぞれにおいて、ある一つの負荷を設定することもできるし、あるいはある負荷範囲を設定することもできる。
【0075】
このように、このスマートボルテックスジェネレータでは、本体周りにある流体の流体力の変化を制御入力として、スマートボルテックスジェネレータの多方向性特性を発揮させている。すなわち、このスマートボルテックスジェネレータも、前述した流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータと同様、自ら自分の置かれた環境を検知し、自ら判断し、自ら最適な形体に変化する、所謂スマート構造となっており、形状記憶合金の相変態を起こすべく外部からエネルギーを供給する必要がなく、エネルギー供給手段としての電気装置や、ボルテックスジェネレータの駆動手段が不要となる。
【0076】
また、この流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータでは、前記バイアス力としての前記助力が必須ではないため、前記助力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0077】
ここに、前記流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、使用中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態開始応力に前記流体力が増大過程で到達した時に、該形状記憶合金が前記低負荷側安定相から前記高負荷側安定相に変態し始め、かつ、該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態開始応力に前記流体力が減少過程で到達した時に、該形状記憶合金が該高負荷側安定相から該低負荷側安定相に逆変態し始めるように構成されている。
【0078】
このスマートボルテックスジェネレータでは、形状記憶合金の応力-歪み特性(超弾性特性)と、該形状記憶合金に付与される流体力とのバランスにより、流体力の増・減に応じて該形状記憶合金が相変態して低負荷側安定相となったり高負荷側安定相となったりする。すなわち、流体力が形状記憶合金に対し逆変態終了応力以下となる場合には、該形状記憶合金が低負荷側安定相となり、流体力が形状記憶合金に対し変態終了応力以上となる場合には、該形状記憶合金が高負荷側安定相となる。このため、前記物体表面を流れる本体周りの流体から形状記憶合金に付与される流体力と、形状記憶合金の応力-歪み特性とを適切に設定することにより、流体力の増・減に応じて本体を確実に第1形体又は第2形体に維持することができる。
【0079】
また、前記流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記流体力が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態終了応力以下であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体力が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了応力以上であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されている。
【0080】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体力が前記逆変態終了応力以下の低負荷側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体力が前記変態終了応力以上の高負荷側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0081】
前記流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記流体力が前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態終了応力以上であるときに、前記本体が前記第1形体を維持し、かつ、該流体力が該外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了応力以下であるときに、該本体が前記第2形体を維持するように構成されている。
【0082】
このスマートボルテックスジェネレータでは、流体力が前記変態終了応力以上の高負荷側にあるときに、本体が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体力が前記逆変態終了応力以下の低負荷側にあるときに、本体が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0083】
なお、前述のとおり、前記流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータにおいても、形状記憶合金として、二方向性形状記憶効果等の多方向性形状記憶効果を有するものを採用することは可能である。
【0084】
また、前記流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮する、形状記憶合金を用いたスマートボルテックスジェネレータにおいても、本体に対して所定の関係で配設された補助力(弾力、重り等によって付与される力や、空気圧や水圧等の流体圧力等)付与手段を、必要に応じて設けてもよい。
【0085】
(請求項14に記載の発明)
さらに、本発明のスマートボルテックスジェネレータは、流体の流れと境界をなす物体表面に設置されて該物体表面で発生する流れの剥離を抑制し、該流体の流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するボルテックスジェネレータであって、前記流体力が所定の方向から付与されるように前記物体表面に配設される、少なくとも一部が超弾性合金よりなる本体を備え、前記流体力の増・減に応じて、前記超弾性合金が相変態を伴わずに超弾性変形することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化するように構成されているものも含む。
【0086】
ここに、本明細書における「超弾性合金」とは、相変態を伴わずに1%以上の弾性歪み量で超弾性変形し、かつ、形状記憶効果を有しない合金をいう。ここでいう、超弾性合金における「超弾性変形」とは、超弾性合金の相変態を伴わない弾性変形であって、弾性歪み量が1%以上となる大きな弾性変形を意味する。
【0087】
また、「流体力が所定の方向から付与されるように」とは、本体に対して所定の方向から作用する流体力の増・減に応じて、超弾性合金が相変態を伴わずに超弾性変形することにより、本体の形体が第1形体と第2形体とに変化しうるように、という趣意である。
【0088】
なお、「流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮する」、「流体力」、「渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体」、「乱流を抑制しうる第2形体」及び「乱流を抑制しうる」については、前述した流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータについての定義と同様であるため、その説明を援用することで記載を省略する。
【0089】
このスマートボルテックスジェネレータでは、本体の少なくとも一部が超弾性合金よりなり、本体に所定の方向から作用する流体力の増・減に応じて超弾性合金が相変態を伴わずに超弾性変形することにより、渦の発生により流れの剥離を抑制しうる第1形体と、乱流を抑制しうる第2形体とに、前記本体の形体が変化する。
【0090】
このように、このスマートボルテックスジェネレータでは、本体周りにある流体の流体力の変化を制御入力として、スマートボルテックスジェネレータの多方向性特性を発揮させている。すなわち、このスマートボルテックスジェネレータも、前述した流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータと同様、自ら自分の置かれた環境を検知し、自ら判断し、自ら最適な形体に変化する、所謂スマート構造となっており、超弾性合金の超弾性変形を起こすべく外部からエネルギーを供給する必要がなく、エネルギー供給手段としての電気装置や、ボルテックスジェネレータの駆動手段が不要となる。
【0091】
また、この流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータでは、前記バイアス力としての前記助力が必須ではないため、前記助力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0092】
なお、前記流体力の変化に応じて多方向性特性を発揮する、超弾性合金を用いたスマートボルテックスジェネレータにおいても、本体に対して所定の関係で配設された補助力(弾力、重り等によって付与される力や、空気圧や水圧等の流体圧力等)付与手段を、必要に応じて設けてもよい。
【0093】
(請求項15~21に記載の発明)
本発明のスマートボルテックスジェネレータの好適な態様において、前記本体は、前記物体表面に固定される台座部と、該本体が前記第1形体にあるときに該台座部に対して所定の起立姿勢で起立して流れの剥離抑制機能を発揮するとともに、該本体が前記第2形体にあるときに該台座部に対して所定の傾倒姿勢となって乱流抑制機能を発揮する渦発生部とを有している。
【0094】
このスマートボルテックスジェネレータでは、渦発生部が台座部に対して所定の起立姿勢で起立することで、本体が第1形体となって流れの剥離抑制機能を発揮し、また、渦発生部が台座部に対して所定の傾倒姿勢となることで、本体が第2形体となって乱流抑制機能を発揮する。このため、起立姿勢及び傾倒姿勢を適切に設定することで、本体の形体を第1形体及び第2形体に確実に維持することができる。
【0095】
本発明のスマートボルテックスジェネレータの好適な態様において、前記本体は、前記台座部と、該台座部の端縁から湾曲又は屈曲することで該台座部に対して所定の起立角度で起立する前記渦発生部とが一体的に形成された板状体よりなり、少なくとも該台座部と該渦発生部との境界部たる湾曲部又は屈曲部が前記形状記憶合金又は前記超弾性合金よりなる。
【0096】
このスマートボルテックスジェネレータにおける本体は、台座部と渦発生部とが一体に形成された板状体よりなるので、その製造が容易であるとともに軽量となり、かつ、本体の耐久性を向上させる上でも有利となる。また、台座部と渦発生部との境界部(湾曲部又は屈曲部)のみに形状記憶合金又は超弾性合金を採用する場合は、本体の他の部位を例えば合成樹脂製とすることにより、軽量化を図ることもできる。
【0097】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、前記渦発生部が前記台座部から湾曲又は屈曲することで該台座部に対して所定の起立角度で起立するように、前記形状記憶合金が形状記憶処理されている。
【0098】
ここに、形状記憶合金が前記形状記憶処理された形状にあるときの本体と、前記第1形体にある本体とは、姿勢や形状が同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
【0099】
このスマートボルテックスジェネレータでは、渦発生部が台座部に対して所定の起立角度で起立するように、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金が形状記憶処理されているので、該形状記憶合金が高温側安定相又は低負荷側安定相にあるときに、渦発生部が台座部に対して所定の起立角度で起立する。
【0100】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記形状記憶合金が一方向性形状記憶効果を有し、前記渦発生部が前記台座部に対して起立角度を小さくする方向に傾倒した所定の傾倒姿勢となるように、前記形状記憶合金が形状記憶処理されている。
【0101】
ここに、形状記憶合金が前記形状記憶処理された形状にあるときの本体と、前記第2形体にある本体とは、姿勢や形状が同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
【0102】
このスマートボルテックスジェネレータでは、渦発生部が台座部に対して所定の傾倒姿勢となるように、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金が形状記憶処理されているので、該形状記憶合金が高温側安定相又は低負荷側安定相にあるときに、渦発生部が台座部に対して所定の傾倒姿勢となる。
【0103】
本発明のスマートボルテックスジェネレータは、好適な態様において、前記形状記憶合金が多方向性形状記憶効果を有し、前記渦発生部が前記台座部から湾曲又は屈曲することで該台座部に対して所定の起立角度で起立するように前記形状記憶合金が形状記憶処理され、かつ、該渦発生部が該起立角度を小さくする方向に傾倒した所定の傾倒姿勢となるように該形状記憶合金が形状記憶処理されている。
【0104】
ここに、渦発生部が台座部に対して所定の起立角度で起立するように、形状記憶合金が形状記憶処理された形状にあるときの本体と、前記第1形体にある本体とは、姿勢や形状が同一であっても、あるいは異なっていてもよい。また、渦発生部が前記起立角度を小さくする方向に傾倒した所定の傾倒姿勢となるように、形状記憶合金が形状記憶処理された形状にあるときの本体と、前記第2形体にある本体とは、姿勢や形状が同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
【0105】
このスマートボルテックスジェネレータでは、渦発生部が台座部に対して所定の起立角度で起立し、かつ、渦発生部が所定の傾倒姿勢となるように、多方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金がそれぞれ形状記憶処理されているので、例えば、該形状記憶合金が高温側安定相又は低負荷側安定相にあるときに、渦発生部が台座部に対して所定の起立角度で起立し、かつ、該形状記憶合金が低温側安定相又は高負荷側安定相にあるときに、渦発生部が所定の傾倒姿勢となる。
【0106】
(請求項2224に記載の発明)
本発明のスマートボルテックスジェネレータの好適な態様において、前記物体表面は航空機の翼表面であり、前記本体は、該航空機の離着陸中の少なくとも一部で前記第1形体を維持し、かつ、該航空機の巡航中に前記第2形体を維持するように構成されている。
【0107】
すなわち、本発明のスマートボルテックスジェネレータは航空機に好適に用いることができる。本発明のスマートボルテックスジェネレータを備えた請求項22に記載の航空機は、請求項1乃至21のいずれか一つに記載のスマートボルテックスジェネレータが翼表面に設けられた航空機であって、前記本体は、離着陸中の少なくとも一部で前記第1形体を維持し、かつ、巡航中に前記第2形体を維持するように構成されていることを特徴とするものである。
【0108】
ここに、「航空機の離着陸中の少なくとも一部」とは、航空機が離陸している間(航空機の高度又は/及び速度が増大している間)の少なくとも一部、又は航空機が着陸している間(航空機の高度又は/及び速度が減少している間)の少なくとも一部を意味する。
【0109】
この航空機の翼表面に設けられたスマートボルテックスジェネレータでは、航空機の離着陸中の少なくとも一部で本体が前記第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、航空機の巡航中に本体が前記第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。このため、航空機の離着陸時に流れが翼表面から剥離することを抑制することができ、失速の抑制や不安定現象の改善を図ることが可能となる。また、航空機の巡航時には、渦の発生を減少又は無くして、渦による乱流を抑制することができるので、乱流による抗力増大を抑えることが可能となる。
【0110】
本発明のスマートボルテックスジェネレータの好適な態様において、前記物体表面は、船舶の船体表面(船体のうち浸水する部分における船体表面)又は船体に取り付けられた翼の表面である。
【0111】
すなわち、本発明のスマートボルテックスジェネレータは船舶に好適に用いることができる。本発明のスマートボルテックスジェネレータを備えた請求項23に記載の船舶は、請求項1乃至21のいずれか一つに記載のスマートボルテックスジェネレータが船体表面又は船体に取り付けられた翼の表面に設けられていることを特徴とするものである。
【0112】
この船舶の船体表面又は船体に取り付けられた翼の表面に設けられたスマートボルテックスジェネレータでは、船舶の航行中の一部たる、流体の温度が高温側の想定温度以上となる温度範囲又は流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲で、例えば、高温側安定相又は低負荷側安定相としてのオーステナイト相となって、本体の形体が第1形体(又は第2形体)となり、船舶の航行中の他の一部たる、流体の温度が低温側の想定温度以下となる温度範囲又は流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲で、例えば、低温側安定相又は高負荷側安定相としてのマルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相)となって、本体の形体が第2形体(又は第1形体)となる。このため、航行中の前記一部で、剥離抑制機能(又は乱流抑制機能)を発揮して船体表面又は翼表面から流れが剥離することを抑制でき(又は、渦の発生を減少若しくは無くして、渦による乱流を抑制でき)、また、航行中の前記他の一部で、乱流抑制機能(又は剥離抑制機能)を発揮して渦の発生を減少又は無くして、渦による乱流を抑制できる(又は、流れが剥離することを抑制できる)。
【0113】
本発明のスマートボルテックスジェネレータの好適な態様において、前記物体表面は回転機械の翼表面である。
【0114】
すなわち、本発明のスマートボルテックスジェネレータは回転機械に好適に用いることができる。本発明のスマートボルテックスジェネレータを備えた請求項24に記載の回転機械は、請求項1乃至21のいずれか一つに記載のスマートボルテックスジェネレータが翼表面に設けられていることを特徴とするものである。
【0115】
ここに、「回転機械」には、タービン、圧縮機、ターボポンプ等のポンプや送風機等が含まれ、この回転機械の「翼」にはタービン翼(ブレード)、回転翼、や羽根等が含まれる。
【0116】
この回転機械の翼表面に設けられたスマートボルテックスジェネレータでは、回転機械の運転中の一部たる、流体の温度が高温側の想定温度以上となる温度範囲又は流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲で、例えば、高温側安定相又は低負荷側安定相としてのオーステナイト相となって、本体の形体が第1形体(又は第2形体)となり、回転機械の運転中の他の一部たる、流体の温度が低温側の想定温度以下となる温度範囲又は流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲で、例えば、低温側安定相又は高負荷側安定相としてのマルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相)となって、本体の形体が第2形体(又は第1形体)となる。このため、運転中の前記一部で、剥離抑制機能(又は乱流抑制機能)を発揮して翼表面から流れが剥離することを抑制でき(又は、渦の発生を減少若しくは無くして、渦による乱流を抑制でき)、また、運転中の前記他の一部で、乱流抑制機能(又は剥離抑制機能)を発揮して渦の発生を減少又は無くして、渦による乱流を抑制できる(又は、流れが剥離することを抑制できる)。したがって、例えば作動中に温度変化があり、その温度変化により作動流体の性質(粘性等)が大きく変化し、その結果、流れが羽根等から剥離してしまうような回転機械に、好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1は、実施形態1に係り、本体が第1形体にあるスマートボルテックスジェネレータの斜視図である。
【0118】
図2は、実施形態1に係り、本体が第2形体にあるスマートボルテックスジェネレータの斜視図である。
【0119】
図3は、実施形態1に係り、スマートボルテックスジェネレータの組み立て分解斜視図である。
【0120】
図4は、実施形態1に係り、スマートボルテックスジェネレータが主翼に設置された飛行機を模式的に示す斜視図である。
【0121】
図5は、実施形態1に係り、スマートボルテックスジェネレータを航空機の主翼に設置した状態を模式的に示す平面図である。
【0122】
図6は、実施形態1に係り、各温度における、スマートボルテックスジェネレータの本体を構成する形状記憶合金の応力-歪み特性を示す図である。
【0123】
図7は、飛行機の翼表面における流れを模式的に示すものであり、図7(a)は、ボルテックスジェネレータが設けられた翼表面において、翼表面からの流れの剥離が抑制される様子を説明する図であり、図7(b)は、ボルテックスジェネレータが設けられていない翼表面において、翼表面から流れが剥離する様子を説明する図である。
【0124】
図8は、実施形態2に係り、本体が第1形体にあるスマートボルテックスジェネレータの斜視図である。
【0125】
図9は、実施形態3に係り、本体が第1形体にあるスマートボルテックスジェネレータの斜視図である。
【0126】
図10は、実施形態4に係り、本体が第1形体にあるスマートボルテックスジェネレータの斜視図である。
【0127】
図11は、実施形態5に係り、本体が第1形体にあるスマートボルテックスジェネレータの斜視図である。
【0128】
図12は、実施形態6に係り、本体が第1形体にあるスマートボルテックスジェネレータの斜視図である。
【0129】
図13は、実施形態7に係り、スマートボルテックスジェネレータが船体に設置された船舶を模式的に示す斜視図である。
【0130】
図14は、船舶の船体表面における流れを模式的に示すものであり、図14(a)は、ボルテックスジェネレータが設けられた船体表面において、船体表面からの流れの剥離が抑制される様子を説明する図であり、図14(b)は、ボルテックスジェネレータが設けられていない船体表面において、船体表面から流れが剥離する様子を説明する図である。
【0131】
図15は、実施形態8に係り、スマートボルテックスジェネレータが羽根に設置されたターボポンプを模式的に示す斜視図である。
【0132】
図16は、ターボポンプの羽根表面における流れを模式的に示すものであり、図16(a)は、ボルテックスジェネレータが設けられた羽根表面において、羽根表面からの流れの剥離が抑制される様子を説明する図であり、図16(b)は、ボルテックスジェネレータが設けられていない羽根表面において、羽根表面から流れが剥離する様子を説明する図である。
【0133】
図17は、実施形態9~11に係り、流体の流れ方向に対してスマートボルテックスジェネレータの設置方向を変更した例を示す斜視図である。
【0134】
図18は、従来のボルテックスジェネレータを示す断面図である。
【0135】
図19は、他の従来のボルテックスジェネレータを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0136】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
[第1実施形態]
この第1実施形態は、流体の温度変化に応じて二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。
【0137】
(実施形態1)
この実施形態1は、形状記憶合金の一方向性形状記憶効果とばね力及び流体力よりなるバイアス力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。また、この実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを航空機たる飛行機、より具体的には高空飛行する飛行機(例えば、ジェット機)に適用したものである。
【0138】
図1~図3に示される本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、航空機の翼表面、より具体的には図4及び図5に示されるように、飛行機2の操縦翼をもつ主翼2aの上面の前縁側に、横方向(主翼2aの長手方向)に間隔をおいて複数設置されて、使用に供されるものである。このスマートボルテックスジェネレータ1は、流体の流れと境界をなす主翼2aの表面で発生する流れの剥離を抑制し、また、流体の温度変化に応じて二方向性特性を発揮する。なお、スマートボルテックスジェネレータ1の設置数は特に限定はなく、数個~数十個程度の範囲で適宜設定される。また、スマートボルテックスジェネレータ1の設置場所も特に限定されず、例えば、操縦翼の前方で、かつ、流れが剥離する部位よりも前方側であれば、主翼2aの中程でもよい。また、各スマートボルテックスジェネレータ1は、図1に示される第1形体にある本体の渦発生部(後述する)の板面(本体の屈曲凹側又は湾曲凹側たる表側の面)に飛行時の流体の流れが当たるように、流れ方向(図1及び図5のA矢印方向)に対して該渦発生部の板面が斜めを向くように設置される。
【0139】
すなわち、この飛行機2は、流体の流れと境界をなす主翼2a表面に設置されて主翼2a表面で発生する流れの剥離を抑制し、流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータ1を備えている。
【0140】
スマートボルテックスジェネレータ1は、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金よりなる本体3と、本体3に対して所定の関係で配設されて本体3に所定の助力としてのばね力(弾性力)を付与する助力付与手段としての板ばね(弾性体)4とを備えている。
【0141】
図3に示されるように、本体3は、形状記憶合金よりなる長方形状等の板状体(平板)を曲げ加工することにより一体に形成されたものである。本体3は、主翼2aの上面にボルト5、5により固定される略平板状の台座部6と、該本体3が後述する第1形体(図1参照)にあるときにこの台座部6の一側端縁から屈曲(又は湾曲)することで所定の起立姿勢で起立して流れの剥離抑制機能を発揮する略平板状の渦発生部7とからなる。なお、台座部6には、2個のボルト挿通孔8、8が貫設されている。
【0142】
すなわち、本体3は、渦発生部7が台座部6から屈曲して台座部6に対して所定の起立角度(台座部6を含む水平面に対して傾斜して起立している渦発生部7の仰角(該水平面と渦発生部7とがなす角)。図3に示す角度θ)で起立するように、無負荷時における前記形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度(逆変態終了温度)以上の高温側で、前記形状記憶合金が形状記憶処理されることにより形成されている。このため、この本体3は、無負荷時における前記形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上の温度のときに、該形状記憶合金が高温側安定相たるオーステナイト相になって、外部からの荷重が負荷されていない自然状態で、渦発生部7が台座部6に対して所定の前記起立角度θで起立する。
【0143】
なお、前記形状記憶合金が形状記憶処理された形状にあるときの本体(図3参照)3と、後述する第1形体にある本体(図1参照)3とは、起立角度が異なる。すなわち、第1形体にある本体3は、板ばね4のばね力及び本体3に対して図1のA矢印方向から作用する流体の流体力により、形状記憶処理された形状にあるときの本体3よりも起立角度が小さくなる。
【0144】
本体3を構成する形状記憶合金は、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、飛行機2の離着陸中の少なくとも一部でオーステナイト相になり、飛行機2の巡航中にマルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相)になるものである。すなわち、この形状記憶合金は、飛行機2の離着陸時における低空での想定気温(高温側の想定気温で、ある一つの値)が、飛行中に形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上となり、かつ、飛行機2の巡航時における高空(巡航高度)での想定気温(低温側の想定気温で、ある一つの値)が、前記外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了温度以下となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等が調整されている。
【0145】
すなわち、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、飛行中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態開始温度に前記流体の温度が降温過程で到達した時に、前記形状記憶合金がオーステナイト相からマルテンサイト相に変態し始め、かつ、前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態開始温度に前記流体の温度が昇温過程で到達した時に、前記形状記憶合金がマルテンサイト相からオーステナイト相に逆変態し始めるように構成されている。
【0146】
ここに、本実施形態では、板ばね4のばね力及び飛行中の本体3周りの流体の流体力が、使用中に形状記憶合金に作用する前記外部荷重となる。また、板ばね4のばね力及び飛行中に本体3に対して図1のA矢印方向から作用する流体の流体力が、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金に多方向性特性を発揮させるのに必要なバイアス力となる。
【0147】
また、航空機に適用する場合、高温側の想定気温は-30~40℃程度の範囲内の所定の値に設定することができ、低温側の想定気温は-60~-40℃程度の範囲内の所定の値に設定することができる。また、本体3を構成する形状記憶合金の無負荷時における変態温度は、例えば、マルテンサイト変態温度を-45~-35℃程度とし、オーステナイト変態温度を-35~-25℃程度とすることができる。
【0148】
また、本発明者は、飛行中のすべての時刻において、形状記憶合金の温度の流体温度に対する追従時間の遅れは1秒未満であり、形状記憶合金の温度が飛行中の流体温度に極めて良好に追従して、両者がほぼ完全に一致することを確認している。
【0149】
本体3を構成する形状記憶合金としては、例えば、変態温度を調整すべくCu、FeやCo等を必要に応じて添加したNi-Ti系や、あるいはCu-Zn-Al系等のものを採用することができる。
【0150】
図3に示されるように、板ばね4は、所定のばね力を有する略長方形状の金属薄板よりなり、外部からの荷重が負荷されていない自然状態で、反るように湾曲した弓状の横断面形状を有している。この板ばね4は、弓状に湾曲した凸曲面が本体3の裏面側(本体3の屈曲凸側又は湾曲凸側)と向かい合うように配置されて、本体3に取り付けられるため、本体3が後述する第2形体にあるとき(図2参照)でも、板ばね4にはばね力が残っている。板ばね4の長辺側の一側端付近には、2個のボルト挿通孔9、9が貫設されている。また、板ばね4の長辺側の他側端には、本体3の渦発生部7の先端が嵌り込む溝部10を形成する、断面L字状のクリップ部11が曲げ加工により設けられている。
【0151】
ここに、板ばね4のばね力は、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、流体の温度が離着陸時における高温側の想定温度以上であるときは、形状記憶合金の応力-歪み特性と前記バイアス力との力関係により、スマートボルテックスジェネレータ1が後述する第1形体を維持することができ、かつ、流体の温度が巡航時における低温側の想定温度以下であるときは、形状記憶合金の応力-歪み特性と前記バイアス力との力関係により、スマートボルテックスジェネレータ1が後述する第2形体を維持することができるように、設定されている。
【0152】
すなわち、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、このスマートボルテックスジェネレータ1を主翼2a上面に取り付けた飛行機2が離着陸するときの少なくとも一部(離着陸過程で、高度が低い側の一部)である、流体の温度が高温側の想定温度以上であるときは、図1に示されるように本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮し、かつ、同飛行機2の巡航中(流体の温度が低温側の想定温度以下であるとき)は、図2に示されるように本体3の渦発生部7が主翼2aの表面に沿うように起立姿勢から傾倒して寝た状態の最適な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適な第2形体となって)、最適な乱流抑制機能を発揮しうるように、離着陸時及び巡航時における想定気温や本体3に作用する流体の流体力等を総合勘案しつつ、板ばね4のばね力や、本体3を構成する形状記憶合金の応力-歪み特性が設定されている。
【0153】
ここに、本体3の第1形体には、渦発生部7が最適又は良好な起立角度で起立した最適又は良好な起立姿勢にある形体の他、この最適又は良好な起立姿勢から起立角度がある範囲で連続的に減少した良好な複数の起立姿勢にある形体も含まれる。また、本体3の第2形体は、渦発生部7の前記起立角度θが略0度となり、渦発生部7が台座部6と共に略平板状をなして主翼2aの表面に沿うように寝た、最適な傾倒姿勢である。
【0154】
本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、板ばね4のクリップ部11の溝部10に本体3の渦発生部7の先端を嵌め込み、板ばね4を本体3の形状に沿わせて弾性変形させつつ、本体3のボルト挿通孔8、8及び板ばね4のボルト挿通孔9、9に通したボルト5、5により、板ばね4と共に本体3の台座部6を主翼2aの上面に固定して、使用に供される。
【0155】
なお、スマートボルテックスジェネレータ1の主翼2aへの取り付け作業は、無負荷時における前記形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上である地上で行われる。このため、取り付け作業前においては、本体3は形状記憶処理された形状をなしており、本体3の渦発生部7は所定の前記起立角度で起立している(図3参照)。そして、取り付け後では、板ばね4のばね力により、本体3の渦発生部7は前記起立角度θが若干小さくなった姿勢で起立している。
【0156】
かかる構成を有する本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、以下に示すように、本体3を構成する形状記憶合金の一方向性形状記憶効果と、板ばね4のばね力及び本体3に対して図1のA矢印方向から作用する流体の流体力よりなるバイアス力とを利用して、本体3周りの流体温度の上下に従って自動的に繰り返し動作する二方向性特性を発揮する。
【0157】
ここに、以下の説明は、高温側の想定気温を-10℃、低温側の想定気温を-50℃とし、また、本体3を構成する形状記憶合金の無負荷時における変態温度については、マルテンサイト変態開始温度及びオーステナイト変態開始温度を共に-35℃(すなわち、可逆変態温度を-35℃)にした場合のものである。なお、可逆変態温度とは、変態中に形状記憶合金の内部でエネルギの損失がない理想的な場合の変態温度とする。
【0158】
飛行中においては、飛行機2の高度に応じて流体温度が変化するが、図6に示されるように、この温度変化に応じて本体3を構成する形状記憶合金の応力-歪み特性も変化する。また、飛行中は、本体3を構成する形状記憶合金に、図6の点線で示されるバイアス力が作用している。ただし、前記流体の流体力を考慮すると複雑になるため、図6の点線は板ばね4のばね力のみによるバイアス力を示す。このため、図6に示す各温度における形状記憶合金の応力-歪み特性とバイアス力とが釣り合ったところが作動点となって、本体3の形体が変化する。なお、図6中の△は降温時の作動点を示し、▼は昇温時の作動点を示す。
【0159】
そして、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1が主翼2aに設置された飛行機2が離陸し始めるとき、及び離陸の前期段階では、本体3周りの流体温度は高温側の想定気温(-10℃)以上の温度である。このとき、例えば10℃、-10℃における前記形状記憶合金の応力-歪み特性によれば、本体3を構成する前記形状記憶合金は、それぞれ、約340MPa、約220MPaの負荷でオーステナイト相から応力誘起マルテンサイト相に変態するが、このときこの形状記憶合金に付与されている前記バイアス力は60MPa程度である(図6参照)。このため、流体温度が高温側の想定気温たる-10℃以上であるときは、本体3を構成する前記形状記憶合金はオーステナイト相のままで、若干弾性変形している。したがって、形状記憶合金の応力-歪み特性と前記バイアス力とのバランスにより、本体3の渦発生部7が最適~良好な起立角度(90度程度)で起立して、本体3の形体が第1形体に維持される(図1の状態)。これにより、本体3の渦発生部7は、主翼2aの表面に渦を発生させて、主翼2aの表面から流れが剥離することを効果的に抑制する(図7(a)参照)。なお、図7(a)は、ボルテックスジェネレータが設けられた翼表面において、翼表面からの流れの剥離が抑制される様子を説明する図であり、図7(b)は、ボルテックスジェネレータが設けられていない翼表面において、翼表面から流れが剥離する様子を説明する図である。
【0160】
そして、この飛行機2が上昇すると、それに伴い本体3周りの流体温度が低下する。そうすると、流体の降温に伴い、形状記憶合金の応力-歪み特性も変化する。例えば、流体温度が-30℃であるときは約70MPaの負荷で、オーステナイト相から応力誘起マルテンサイト相に変態し、流体温度が-50℃であるときには、無負荷状態で温度誘起マルテンサイト相となっており、約30MPaの負荷で、応力誘起マルテンサイト相に変態する(図6参照)。また、図には示していないが、流体温度が-30℃と-50℃との間には、無負荷状態でオーステナイト相と温度誘起マルテンサイト相とが混合しており、30MPaより低い負荷で応力誘起マルテンサイト相に変態する領域がある。このため、本体周りの流体温度が-30℃以下になる、離陸の後期段階では、形状記憶合金の応力-歪み特性と前記バイアス力とのバランスにより、本体3の渦発生部7が大きく傾倒する。なお、この離陸の後期段階では、本体の渦発生部7は、完全には寝た状態(本体3の第2形体)となっていないので、渦の発生による剥離抑制機能を多少は発揮している。
【0161】
そして、この飛行機2がさらに上昇して巡航時の高度に達すると、本体3周りの流体温度が低温側の想定気温(-50℃)以下になる。そうすると、本体3を構成する形状記憶合金はその降温過程でバイアス力が付与された状態(前記外部荷重を受けた状態)で冷却される結果、オーステナイト相から応力誘起マルテンサイト相に変態する。したがって、形状記憶合金の応力-歪み特性と前記バイアス力とのバランスにより、本体3の渦発生部7は主翼2aの表面に沿うように完全に寝た状態の最適な傾倒姿勢となって、本体3の形体が第2形体に維持される(図2の状態)。これにより、本体3の渦発生部7による渦の発生がなくなり、渦の発生による乱流を効果的に抑制する。
【0162】
その後、この飛行機2が着陸するときは、高度の下降に伴い本体3周りの流体温度が上昇するので、形状記憶合金の応力-歪み特性と前記バイアス力とのバランスにより、本体3の渦発生部7が寝た状態から起きあがる。そして、着陸の後期段階で、本体3周りの流体温度が高温側の想定気温以上になれば、再び本体3が前記第1形体となって、流れが剥離することを効果的に抑制する。
【0163】
このようにこのスマートボルテックスジェネレータ1では、本体3周りの流体温度が前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上の高温側にあるときに、本体3が第1形体を維持して流れの剥離抑制機能を発揮し、かつ、流体の温度が前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金のマルテンサイト変態終了温度以下の低温側にあるときに、本体3が第2形体を維持して乱流抑制機能を発揮する。
【0164】
こうして、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、本体3周りの流体温度の変化に応じて、本体3を構成する形状記憶合金がオーステナイト相とマルテンサイト相とに相変態することを介して、渦の発生により流れの剥離を抑制する第1形体と、乱流を抑制する第2形体とに、本体3の形体が変化する。
【0165】
このように、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、本体3周りにある流体の温度変化を制御入力として、スマートボルテックスジェネレータ1の二方向性特性を発揮させている。すなわち、このスマートボルテックスジェネレータ1は、自ら自分の置かれた環境を検知し、自ら判断し、自ら最適な形体に変化する、所謂スマート構造となっている。また、形状記憶合金の相変態を起こすべく外部からエネルギーを供給する必要がなく、エネルギー供給手段としての電気装置や、ボルテックスジェネレータの駆動手段が不要となる。したがって、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、構造が簡単であり、故障が発生し難く、かつ、修理及びメンテナンスや既存の翼に対する取り付けも容易となる。
【0166】
また、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、巡航時における抗力を低下させることができるので、飛行機2の燃費向上に大きく貢献する。
【0167】
さらに、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、助力付与手段として板ばね4を採用しているので、板ばね4の形状、大きさ、厚さや材質を適切に設定することで、助力としてのばね力を容易に調整することができるとともに、構造の簡素化やメンテナンスフリーにもより貢献する。
【0168】
加えて、このスマートボルテックスジェネレータ1における本体3は、台座部6と渦発生部7とが一体に形成された板状体よりなるので、その製造が容易であるとともに軽量となり、かつ、本体3の耐久性を向上させる上でも有利となる。
【0169】
なお、この実施形態では、離陸中では前期段階で、着陸中では後期段階で、本体3が第1形体を維持する態様について説明したが、本体3を構成する形状記憶合金の応力-歪み特性及び板ばね4のばね力等を適切に設定することにより、離着陸中は常時、本体3が第1形体を維持するように構成してもよい。
【0170】
また、この実施形態では、本体3が第1形体にあるときの渦発生部7の前記起立角度を略90度とする例について説明したが、この起立角度はこれに限らず、所望の剥離抑制機能を発揮しうる範囲内で適宜設定可能である。同様に、本体3が第2形体にあるときの渦発生部7の前記起立角度も略0度に限られず、所望の乱流抑制機能を発揮しうる範囲内で適宜設定可能である。
【0171】
(実施形態2)
図8に示す本実施形態は、前記実施形態1と同様、形状記憶合金の一方向性形状記憶効果とばね力及び流体力よりなるバイアス力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものであり、前記実施形態1において、板ばね4の形状を変更したものである。
【0172】
すなわち、この実施形態における板ばね4は、長辺側の一側端に、本体3の渦発生部7の先端が嵌り込む溝部を形成する、断面L字状のクリップ部11が曲げ加工により形成されるとともに、長辺側の他側端に、本体3の台座部6の先端が嵌り込む溝部を形成する、断面L字状のクリップ部11が曲げ加工により形成されている。
【0173】
この板ばね4によれば、本体3の両端部、すなわち台座部6の端部及び渦発生部7の端部の双方を板ばね4のクリップ部11に嵌め込むことができる。したがって、スマートボルテックスジェネレータ1の設置がより容易となる。
【0174】
その他の構成及び作用効果は前記実施形態1と同様であるため、前記実施形態1の説明を援用することで、その説明を省略する。
【0175】
(実施形態3)
図9に示す本実施形態は、前記実施形態1と同様、形状記憶合金の一方向性形状記憶効果とばね力及び流体力よりなるバイアス力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものであり、前記実施形態1において、本体3及び板ばね4の形状を変更するとともに、主翼2aに対するスマートボルテックスジェネレータ1の設置方向を変更したものである。
【0176】
すなわち、この実施形態における本体3は、形状記憶合金よりなる帯状の板状体(平板)を曲げ加工することにより一体に形成されたものであり、形状記憶合金の記憶処理された形状において、帯状の一端側に設けられた、主翼2a上面にボルト5、5により固定される略平板状の台座部6と、帯状の他端側に設けられた、台座部6の一側端から連続して一体に立ち上がるように起立した略平板状の渦発生部7とからなる。なお、台座部6には、2個のボルト挿通孔(図示せず)が貫設されている。
【0177】
この本体3においては、前記実施形態1と同様、渦発生部7が台座部6から屈曲又は湾曲することで該台座部6に対して所定の起立角度(台座部6を含む水平面に対して傾斜して起立している渦発生部7の仰角(該水平面と渦発生部7とがなす角))で起立した起立姿勢となるように、形状記憶合金の形状が記憶処理されている。
【0178】
また、板ばね4は、外部からの荷重が負荷されていない自然状態で、反るように湾曲した弓状の横断面形状を有しており、前記実施形態1と同様、弓状に湾曲した凸曲面が本体3の裏面側(本体3の屈曲凸側又は湾曲凸側)と向かい合うように配置されて、本体3に取り付けられる。そして、帯状の板ばね4の一側端付近には、2個のボルト挿通孔(図示せず)が貫設されている。また、帯状の板ばね4の他側には、本体3の渦発生部7の先端が嵌り込む溝部を形成する、断面L字状のクリップ部11が曲げ加工により設けられている。
【0179】
かかる構成を有する本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、板ばね4のクリップ部11の溝部に本体3の渦発生部7の先端を嵌め込み、板ばね4を本体3の形状に沿わせて弾性変形させつつ、本体3及び板ばね4のボルト挿通孔に通したボルト5、5により、板ばね4と共に本体3の台座部6を飛行機2の主翼2a上面に固定して、使用に供される。このとき、この実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、帯状の本体3及び板ばね4が飛行時の流体の流れ方向(図9のA矢印方向)に対して略平行に延び、かつ、図9に示される第1形体にある本体3の渦発生部7の板面(本体3の屈曲凹側又は湾曲凹側たる表側の面)に飛行時の流体の流れが当たるように、飛行機2の主翼2a上面に設置される。なお、飛行機2の主翼2aに設置された状態において、飛行時の流体の流れ方向と逆方向の退向側(飛行機2の前方側)が前記帯状の一端側となり、該流れ方向の進向側(飛行機2の後方側)が前記帯状の他端側となる。
【0180】
このスマートボルテックスジェネレータ1では、飛行機2の離着陸時に流れの剥離抑制機能を発揮するときに、本体3の渦発生部7が台座部6から屈曲又は湾曲して該台座部6に対して所定の起立角度で起立した、良好又は最適な起立姿勢となって、本体3の形体が第1形体に維持される(図9の状態)。また、飛行機2の巡航時に乱流抑制機能を発揮するときは、本体3の渦発生部7が前記起立姿勢から傾倒し、渦発生部7が主翼2aの表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢となって、本体3の形体が第2形体に維持される。
【0181】
その他の構成及び作用効果は前記実施形態1と同様であるため、前記実施形態1の説明を援用することで、その説明を省略する。
【0182】
(実施形態4)
図10に示す本実施形態は、前記実施形態1と同様、形状記憶合金の一方向性形状記憶効果とばね力及び流体力よりなるバイアス力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものであり、前記実施形態1において、本体3及び板ばね4の形状等を変更するとともに、主翼2aに対するスマートボルテックスジェネレータ1の設置方向を変更したものである。
【0183】
すなわち、この実施形態における本体3は、帯状で略平板状の軽合金よりなる台座部6と、帯状の台座部6の一端側の一側端に、自己の一端側の一側端が固着されて、台座部6に対して略90度の角度で起立した帯状の渦発生部7とからなる。なお、台座部6には、2個のボルト挿通孔(図示せず)が貫設されている。
【0184】
そして、本体3のうち渦発生部7は、形状記憶合金よりなる帯状の板状体(平板)を曲げ加工することにより形成されたものである。この渦発生部7は、形状記憶合金の記憶処理された形状において、台座部6に固着された帯状の一端側が平坦状をなし、自由端たる帯状の他端側が台座部6の一側端から離れるように屈曲又は湾曲した形状をなしている。すなわち、渦発生部7は、帯状の渦発生部7の一端側が固着された台座部6に対して略90度の起立角度で起立するとともに、帯状の渦発生部7の他端側たる自由端側が台座部6の一側端から離れるように屈曲又は湾曲した形状となるように、形状記憶合金の形状が記憶処理されている。
【0185】
また、板ばね4は、外部からの荷重が負荷されていない自然状態で、帯状の略平板状(後述するクリップ部を除く)をなしている。そして、帯状の板ばね4の両端には、帯状の渦発生部7の両端がそれぞれ嵌り込む溝部を形成する、断面L字状のクリップ部11、11が曲げ加工により設けられている。
【0186】
かかる構成を有する本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、板ばね4のクリップ部11、11の溝部に本体3の渦発生部7の両端を嵌め込んで、板ばね4を本体3の渦発生部7の形状に沿わせて弾性変形させ、本体3の台座部6のボルト挿通孔に通したボルト5、5により、本体3の台座部6を飛行機2の主翼2a上面に固定して、使用に供される。このとき、この実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、本体3の帯状の台座部6等が飛行時の流体の流れ方向(図10のA矢印方向)に対して略平行に延び、かつ、図10に示される第1形体にある本体3の渦発生部7の板面(本体3の屈曲凹側又は湾曲凹側たる表側の面)に飛行時の流体の流れが当たるように、飛行機2の主翼2a上面に設置される。なお、飛行機2の主翼2aに設置された状態において、飛行時の流体の流れ方向と逆方向の退向側(飛行機2の前方側)が前記帯状の一端側となり、該流れ方向の進向側(飛行機2の後方側)が前記帯状の他端側となる。
【0187】
このスマートボルテックスジェネレータ1では、飛行機2の離着陸時に流れの剥離抑制機能を発揮するときに、本体3の渦発生部7が台座部6に対して略90度の起立角度で起立しつつ、渦発生部7の自由端側が台座部6の一側端から離れるように屈曲又は湾曲した形状となって、本体3の形体が第1形体に維持される(図10の状態)。また、飛行機2の巡航時に乱流抑制機能を発揮するときは、本体3の渦発生部7は、板ばね4のばね力及び巡航時の流体力により、自由端側が台座部6の一側端に沿うように変形し、台座部6に対して略90度の起立角度で起立しつつ流体の流れに沿って平行に延びた姿勢となって、本体3の形体が第2形体に維持される。
【0188】
その他の構成及び作用効果は前記実施形態1と同様であるため、前記実施形態1の説明を援用することで、その説明を省略する。
【0189】
(実施形態5)
図11に示す本実施形態は、形状記憶合金の一方向性形状記憶効果と流体力よりなるバイアス力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものであり、前記実施形態1において、本体3の形状等を変更するとともに、主翼2aに対するスマートボルテックスジェネレータ1の設置方向を変更し、かつ、助力付与手段としての板ばね4を無くしたものである。
【0190】
すなわち、この実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、前記実施形態3と同様、本体3が飛行時の流体の流れ方向(図11のA矢印方向)に対して略平行に延び、かつ、図11に示される第1形体にある本体3の渦発生部7の板面(本体3の屈曲凹側又は湾曲凹側たる表側の面)に飛行時の流体の流れが当たるように、飛行機2の主翼2a上面に設置される。
【0191】
また、この実施形態における本体3は、前記実施形態3と同様、形状記憶合金よりなる帯状の板状体(平板)を曲げ加工することにより一体に形成されたものであり、形状記憶合金の記憶処理された形状において、帯状の一端側に設けられた、主翼2aの上面にボルト5、5により固定される略平板状の台座部6と、帯状の他端側に設けられた、台座部6の一側端から連続して一体に立ち上がるように起立した略平板状の渦発生部7とからなる。なお、台座部6には、2個のボルト挿通孔(図示せず)が貫設されている。
【0192】
この本体3においては、前記実施形態1と同様、渦発生部7が台座部6から屈曲又は湾曲することで該台座部6に対して所定の起立角度(台座部6を含む水平面に対して傾斜して起立している渦発生部7の仰角(該水平面と渦発生部7とがなす角))で起立した起立姿勢となるように、形状記憶合金の形状が記憶処理されている。
【0193】
この本体3を構成する形状記憶合金は、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、飛行機2の離着陸中の少なくとも一部でオーステナイト相になり、飛行機2の巡航中にマルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相)になるものである。すなわち、この形状記憶合金は、飛行機2の離着陸時における低空での想定気温(高温側の想定気温で、ある一つの値)が、飛行中に形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上となり、かつ、飛行機2の巡航時における高空(巡航高度)での想定気温(低温側の想定気温で、ある一つの値)が、同外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了温度以下となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等が調整されている。
【0194】
すなわち、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、飛行中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態開始温度に前記流体の温度が降温過程で到達した時に、前記形状記憶合金がオーステナイト相からマルテンサイト相に変態し始め、かつ、前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態開始温度に前記流体の温度が昇温過程で到達した時に、前記形状記憶合金がマルテンサイト相からオーステナイト相に逆変態し始めるように構成されている。
【0195】
ここに、本実施形態では、飛行中の本体3周りの流体の流体力が、使用中に形状記憶合金に作用する前記外部荷重となる。また、飛行中に本体3に対して図11のA矢印方向から作用する流体の流体力が、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金に多方向性特性を発揮させるのに必要なバイアス力となる。
【0196】
そして、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、このスマートボルテックスジェネレータ1を主翼2a上面に取り付けた飛行機2が離着陸するときの少なくとも一部(離着陸過程で、高度が低い側の一部)である、流体の温度が高温側の想定温度以上であるときは、図11に示されるように本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮し、かつ、同飛行機2の巡航中(流体の温度が低温側の想定温度以下であるとき)は、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して主翼2aの表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮しうるように、離着陸時及び巡航時における想定気温や本体3に作用する流体の流体力等を総合勘案しつつ、本体3を構成する形状記憶合金の応力-歪み特性が設定されている。
【0197】
このスマートボルテックスジェネレータ1では、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金により構成された本体3に対して、多方向性特性を付与するために必要なバイアス力として、飛行中に主翼2a表面を流れる流体の流体力を利用する。すなわち、このスマートボルテックスジェネレータ1では、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金に、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体力がバイアス力として付与される。このため、流体温度に応じて変化する該形状記憶合金の応力-歪み特性と、該形状記憶合金にバイアス力として付与される該流体力とのバランスにより、流体の昇・降温に応じて形状記憶合金が相変態してオーステナイト相となったり、マルテンサイト相となったりして、本体3の形体が第1形体になったり、第2形体になったりする。
【0198】
このため、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体力に応じて、一方向性形状記憶効果を有する形状記憶合金の応力-歪み特性を適切に設定することにより、流体の昇・降温に応じて本体3を確実に第1形体又は第2形体に維持することができる。なお、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体力は、飛行機の速度や迎角等により変化するため、このことを加味して、形状記憶合金の応力-歪み特性を適切に設定する必要がある。
【0199】
そして、このスマートボルテックスジェネレータ1における本体3は、本体3周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときは、渦発生部7が台座部6に対して所定の起立角度(台座部6を含む水平面に対して傾斜して起立している渦発生部7の仰角(該水平面と渦発生部7とがなす角))で起立して前記第1形体となり、かつ、本体3周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の変態終了温度以下であるときは、渦発生部7が所定の傾倒姿勢となって前記第2形体となる。
【0200】
したがって、このスマートボルテックスジェネレータ1では、助力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0201】
その他の構成及び作用効果は前記実施形態1と同様であるため、前記実施形態1の説明を援用することで、その説明を省略する。
【0202】
(実施形態6)
図12に示す本実施形態は、形状記憶合金の二方向性形状記憶効果と必然的に負荷される本体3周りの流体力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものであり、前記実施形態1において、本体3を構成する形状記憶合金の種類を二方向性形状記憶効果を有するものに変更するとともに、バイアス力付与手段としての板ばね4を無くしたものである。
【0203】
すなわち、この実施形態における本体3は、本体3を構成する形状記憶合金に飛行中に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の逆変態終了温度(例えば、オーステナイト変態終了温度)以上の高温側で、高温側記憶形状たる前記第1形体となり、かつ、本体3を構成する形状記憶合金に飛行中に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金の変態終了温度(例えば、マルテンサイト変態終了温度)以下の低温側で、低温側記憶形状たる前記第2形体となるように、それぞれ形状記憶処理されている。
【0204】
このように形状記憶処理する方法としては、特に限定されないが、例えば、強加工、拘束加熱、トレーニングや拘束時効による方法を利用することができる。
【0205】
例えば、強加工法により二方向性形状記憶効果を作り出す場合は、形状記憶効果又は超弾性によって回復できる歪み量を越える領域まで、合金が適度に加工硬化する変形量で変形すればよい。
【0206】
この本体3を構成する形状記憶合金は、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、飛行機2の離着陸中の少なくとも一部でオーステナイト相になり、飛行機2の巡航中にマルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相)になるものである。すなわち、この形状記憶合金は、飛行機2の離着陸時における低空での想定気温(高温側の想定気温で、ある一つの値)が、飛行中に形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上となり、かつ、飛行機2の巡航時における高空(巡航高度)での想定気温(低温側の想定気温で、ある一つの値)が、同外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了温度以下となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等が調整されている。
【0207】
すなわち、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、飛行中に前記形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の変態開始温度に前記流体の温度が降温過程で到達した時に、前記形状記憶合金がオーステナイト相からマルテンサイト相に変態し始め、かつ、前記外部荷重を受けた状態における前記形状記憶合金の逆変態開始温度に前記流体の温度が昇温過程で到達した時に、前記形状記憶合金がマルテンサイト相からオーステナイト相に逆変態し始めるように構成されている。
【0208】
ここに、本実施形態では、飛行中の本体3周りの流体の流体力が、使用中に形状記憶合金に作用する前記外部荷重となる。また、飛行中には必然的に図12のA矢印方向から本体3に流体力が負荷される。
【0209】
そして、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、このスマートボルテックスジェネレータ1を主翼2a上面に取り付けた飛行機2が離着陸するときの少なくとも一部(離着陸過程で、高度が低い側の一部)である、流体の温度が高温側の想定温度以上であるときは、図12に示されるように本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮し、かつ、同飛行機2の巡航中(流体の温度が低温側の想定温度以下であるとき)は、本体3の渦発生部7が主翼2aの表面に沿うように起立姿勢から傾倒して寝た状態の最適な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適な第2形体となって)、最適な乱流抑制機能を発揮しうるように、離着陸時及び巡航時における想定気温や本体3に作用する流体の流体力等を総合勘案しつつ、本体3を構成する形状記憶合金の応力-歪み特性が設定されている。
【0210】
本実施形態における本体3のその他の構成は、前記実施形態1と同様である。
【0211】
このスマートボルテックスジェネレータ1における本体3は、本体3周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の逆変態終了温度以上であるときは、渦発生部7が台座部6に対して所定の起立角度(台座部6を含む水平面に対して傾斜して起立している渦発生部7の仰角(該水平面と渦発生部7とがなす角))で起立して前記第1形体となり、かつ、本体3周りの流体温度が、前記外部荷重を受けた状態における形状記憶合金の変態終了温度以下であるときは、渦発生部7が所定の傾倒姿勢となって前記第2形体となる。
【0212】
したがって、このスマートボルテックスジェネレータ1では、助力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0213】
その他の構成及び作用効果は前記実施形態1と同様であるため、前記実施形態1の説明を援用することで、その説明を省略する。
【0214】
なお、この実施形態6においては、二方向性形状記憶合金の二方向性形状記憶効果と必然的に負荷される流体力との組み合わせにより、本体3の形体が第1形体と第2形体とに変化する例について説明したが、形状記憶合金の二方向性形状記憶効果と、本体3に必然的に負荷される流体力と、補助力付与手段から補助的に負荷される補助力(弾力、流体圧力や重り等による力)とにより、本体3の形体を第1形体と第2形体とに変化させることもできる。例えば、板ばね4を備えた前記実施形態1乃至4に係るスマートボルテックスジェネレータ1において、本体3を構成する形状記憶合金に二方向性形状記憶合金を採用するとともに、板ばね4のばね力を適切に設定することにより、形状記憶合金の二方向性形状記憶効果と、本体3に必然的に負荷される流体力と、補助的に負荷される補助力としてのばね力とにより、本体3の形体を第1形体と第2形体とに変化させることができる。
【0215】
また、この実施形態6に係るスマートボルテックスジェネレータ1において、図12に示される形状の本体3を構成する形状記憶合金に、前記一方向性形状記憶効果を有する一方向性形状記憶合金を採用するとともに、多方向性特性を付与するために必要なバイアス力として、飛行中に本体3に対して図12のA矢印方向から作用する流体の流体力を利用してもよい。
【0216】
さらに、前記実施形態5に係るスマートボルテックスジェネレータ1において、図11に示される形状の本体3を構成する形状記憶合金に二方向性形状記憶合金を採用してもよい。
【0217】
(実施形態7)
図13に示す本実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを船舶に適用したものである。
【0218】
すなわち、図13に示される船舶12は、流体の流れと境界をなす船体13表面に設置されて船体13表面で発生する流れの剥離を抑制し、流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータ1を備えている。
【0219】
船舶12の船体13表面に設置するスマートボルテックスジェネレータ1の種類や設置数は特に限定されない。例えば、前記実施形態1~6で示したようなスマートボルテックスジェネレータ1を数個~数十個設置することができる。
【0220】
各スマートボルテックスジェネレータ1は、船体13の表面のうち浸水する部分における船体13の表面や、船体13に取り付けられた翼(水中翼)の表面に設けることができる。図13に示される船舶12は、船体13の船尾側の両側面であって、船体13表面(船体13表面のうち浸水する部分における船体13の表面)に、複数のスマートボルテックスジェネレータ1が設けられている。
【0221】
図13に示される船舶12においては、各スマートボルテックスジェネレータ1が、船体13表面に上下方向に間隔をおいて複数設置されている。各スマートボルテックスジェネレータ1は、第1形体にある本体3の渦発生部7の板面に航行時の流体の流れが当たるように、流れ方向に対して渦発生部7の板面が斜めを向くように設置されている。また、各スマートボルテックスジェネレータ1は、本体3の台座部6等が航行中の流体の流れ方向に対して略平行に延び、かつ、第1形体にある本体3の渦発生部7の板面(本体3の屈曲凹側又は湾曲凹側たる表側の面)に航行中の流体の流れが当たるように、船体13表面に設置される。そして、このスマートボルテックスジェネレータ1は、流体の流れと境界をなす船体13の表面で発生する流れの剥離を抑制し、また、流体の温度変化に応じて二方向性特性を発揮する。
【0222】
すなわち、このスマートボルテックスジェネレータ1において、本体3を構成する形状記憶合金としては、実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、船舶12の航行中の一部(流体の温度が高温側の想定温度以上となる温度範囲)で高温側安定相(例えば、オーステナイト相)になり、船舶12の航行中の他の一部(流体の温度が低温側の想定温度以下となる温度範囲)で低温側安定相(例えば、マルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相))になるものを採用することができる。例えば、この形状記憶合金は、船舶12の航行中の一部での想定温度(高温側の想定水温で、ある一つの値)が、航行中に形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上となり、かつ、船舶12の航行中の他の一部での想定温度(低温側の想定水温で、ある一つの値)が、同外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了温度以下となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等を調整することができる。
【0223】
このため、スマートボルテックスジェネレータ1が船体13表面に設けられた船舶12は、船舶12の航行中の一部(例えば、流体の温度が高温側の想定温度以上となる温度範囲)では、本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮する。これにより、本体3の渦発生部7は、船体13の表面に渦を発生させて、船体13の表面から流れが剥離することを効果的に抑制する(図14(a)参照)。なお、図14(a)は、ボルテックスジェネレータが設けられた船体13表面において、船体13表面からの流れの剥離が抑制される様子を説明する図であり、図14(b)は、ボルテックスジェネレータが設けられていない船体表面において、船体表面から流れが剥離する様子を説明する図である。
【0224】
そして、船舶12の航行中の他の一部(例えば、流体の温度が低温側の想定温度以下となる温度範囲)では、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して船体13の表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮する。
【0225】
なお、この実施形態7においては、流体の温度が高温側の想定温度以上となるときに本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の温度が低温側の想定温度以下となるときに本体3が第2形体を維持する例について説明したが、これとは逆に、流体の温度が低温側の想定温度以下となるときに本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の温度が高温側の想定温度以上となるときに本体3が第2形体を維持するようにしてもよい。
【0226】
(実施形態8)
図15に示す本実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを回転機械たるターボポンプに適用したものである。
【0227】
すなわち、図15に示されるターボポンプ14は、羽根15と、流体の流れと境界をなす羽根15表面に設置されて、羽根15表面で発生する流れの剥離を抑制し、流体の温度変化に応じて多方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータ1とを備えている。
【0228】
ターボポンプ14の羽根15表面に設置するスマートボルテックスジェネレータ1の種類や設置数は特に限定されない。例えば、前記実施形態1~6で示したようなスマートボルテックスジェネレータ1を数個~数十個設置することができる。
【0229】
各スマートボルテックスジェネレータ1は、羽根15の根元側付近に、第1形体にある本体3の渦発生部7の板面に流体の流れが当たるように、流れ方向に対して渦発生部7の板面が斜めを向くようにそれぞれ設置されている。また、各スマートボルテックスジェネレータ1は、本体3の台座部6等が運転中の流体の流れ方向に対して略平行に延び、かつ、第1形体にある本体3の渦発生部7の板面(本体3の屈曲凹側又は湾曲凹側たる表側の面)に運転中の流体の流れが当たるように、羽根15表面に設置される。そして、このスマートボルテックスジェネレータ1は、流体の流れと境界をなす羽根15の表面で発生する流れの剥離を抑制し、また、流体の温度変化に応じて二方向性特性を発揮する。
【0230】
すなわち、このスマートボルテックスジェネレータ1において、本体3を構成する形状記憶合金としては、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、ターボポンプ14の運転中の一部(流体の温度が高温側の想定温度以上となる温度範囲)で高温側安定相(例えば、オーステナイト相)になり、ターボポンプ14の運転中の他の一部(流体の温度が低温側の想定温度以下となる温度範囲)で低温側安定相(例えば、マルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相))になるものを採用することができる。例えば、この形状記憶合金は、ターボポンプ14の運転中の一部での想定温度(高温側の想定温度で、ある一つの値)が、作動中に形状記憶合金に作用する外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度以上となり、かつ、ターボポンプ14の運転中の他の一部での想定温度(低温側の想定温度で、ある一つの値)が、同外部荷重を受けた状態における該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了温度以下となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等を調整することができる。
【0231】
このため、スマートボルテックスジェネレータ1が羽根15表面に設けられたターボポンプ14は、ターボポンプ14の運転中の一部(例えば、流体の温度が高温側の想定温度以上となる温度範囲)では、本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮する。これにより、本体3の渦発生部7は、羽根15の表面に渦を発生させて、羽根15の表面から流れが剥離することを効果的に抑制する(図16(a)参照)。なお、図16(a)は、ボルテックスジェネレータが設けられた羽根15表面において、羽根15表面からの流れの剥離が抑制される様子を説明する図であり、図16(b)は、ボルテックスジェネレータが設けられていない羽根表面において、羽根表面から流れが剥離する様子を説明する図である。
【0232】
そして、ターボポンプ14の運転中の他の一部(例えば、流体の温度が低温側の想定温度以下となる温度範囲)では、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して羽根15の表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮する。
【0233】
なお、この実施形態8においては、流体の温度が高温側の想定温度以上となるときに本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の温度が低温側の想定温度以下となるときに本体3が第2形体を維持する例について説明したが、これとは逆に、流体の温度が低温側の想定温度以下となるときに本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の温度が高温側の想定温度以上となるときに本体3が第2形体を維持するようにしてもよい。
【0234】
[第2実施形態]
この第2実施形態は、流体の流体力に応じて二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。
【0235】
(実施形態9)
この実施形態9は、形状記憶合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。また、この実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを航空機たる飛行機、より具体的には低空飛行する飛行機(例えば、プロペラ機)に適用したものである。
【0236】
すなわち、この実施形態は、前記実施形態5において、図11に示されるスマートボルテックスジェネレータ1における本体3を構成する形状記憶合金の種類を変更したものである。
【0237】
この実施形態における本体3を構成する形状記憶合金は、所定の超弾性効果を有するものであり、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、飛行機2の離着陸中の少なくとも一部でオーステナイト相になり、飛行機2の巡航中にマルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相)になるものであり、飛行機2の離着陸時における想定流体力(低負荷側の想定負荷で、ある一つの値)が、該形状記憶合金のオーステナイト変態終了応力以下となり、かつ、飛行機2の巡航時における想定流体力(高負荷側の想定負荷で、ある一つの値)が、該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了応力以上となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等が調整されている。
【0238】
すなわち、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1は、前記形状記憶合金の変態開始応力に前記流体の流体力が増大過程で到達した時に、前記形状記憶合金がオーステナイト相からマルテンサイト相に変態し始め、かつ、前記形状記憶合金の逆変態開始応力に前記流体の流体力が減少過程で到達した時に、前記形状記憶合金がマルテンサイト相からオーステナイト相に逆変態し始めるように構成されている。
【0239】
また、本実施形態では、飛行機2の離着陸時における流体温度と、飛行機2の巡航時における流体温度とで大きな差がない場合を想定している。さらに、飛行機2の速度は、離着陸時よりも巡航時の方が速く、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力は、離着陸時よりも巡航時の方が所定量大きい場合を想定している。
【0240】
そして、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、このスマートボルテックスジェネレータ1を主翼2a上面に取り付けた飛行機2が離着陸するときの少なくとも一部(離着陸過程で、流体力が低い側の一部)である、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下であるときは、図11に示されるように本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮し、かつ、同飛行機2の巡航中(流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上であるとき)は、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して主翼2aの表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮しうるように、離着陸時及び巡航時における想定負荷を勘案しつつ、本体3を構成する形状記憶合金の応力-歪み特性が設定されている。なお、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体力は、飛行機の速度や迎角等により変化するため、このことを加味して、形状記憶合金の応力-歪み特性を適切に設定する必要がある。
【0241】
例えば、この飛行機2の離着陸時及び巡航時における流体温度が略10℃で一定である場合を考えて、図6に示される、10℃の温度における形状記憶合金の応力-歪み特性によれば、流体力が350MPa程度までは形状記憶合金の変形が小さく、流体力が350MPa程度を超えると、形状記憶合金が大きく変形する。このことから、形状記憶合金の変態応力を、離着陸時の低負荷側の想定負荷と、巡航時の高負荷側の想定負荷との間に設定することで、離着陸時には、形状記憶合金が低負荷側安定相たるオーステナイト相となって、本体3が形状記憶処理された形状たる第1形体となり、また巡航時には、形状記憶合金が高負荷側安定相たるマルテンサイト相となって、本体3が第2形体となる。
【0242】
したがって、このスマートボルテックスジェネレータ1では、助力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0243】
その他の構成及び作用効果は前記実施形態1及び5と同様であるため、前記実施形態1及び5の説明を援用することで、その説明を省略する。
【0244】
(実施形態10)
この実施形態10は、形状記憶合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。また、この実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを船舶に適用したものである。
【0245】
この実施形態は、実施形態9と同様、前記実施形態5において、図11に示されるスマートボルテックスジェネレータ1における本体3を構成する形状記憶合金の種類を変更したものである。
【0246】
この実施形態における本体3を構成する形状記憶合金は、所定の超弾性効果を有し、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、船体12の航行中の一部(流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲)で低負荷側安定相(例えば、オーステナイト相)になり、船舶12の航行中の他の一部(流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲)で高負荷側安定相(例えば、マルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相))になるものを採用することができる。例えば、この形状記憶合金は、船舶12の航行中の一部での想定負荷(低負荷側の想定負荷で、ある一つの値)が、該形状記憶合金のオーステナイト変態終了応力以下となり、かつ、船舶12の航行中の他の一部での想定負荷(高負荷側の想定負荷で、ある一つの値)が、該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了応力以上となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等を調整することができる。
【0247】
このため、スマートボルテックスジェネレータ1が船体13表面に設けられた船舶12は、船舶12の航行中の一部(例えば、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲)では、本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮する。これにより、本体3の渦発生部7は、船体13の表面に渦を発生させて、船体13の表面から流れが剥離することを効果的に抑制する。
【0248】
そして、船舶12の航行中の他の一部(例えば、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲)では、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して船体13の表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮する。
【0249】
(実施形態11)
この実施形態11は、形状記憶合金の超弾性と流体力との組み金わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。また、この実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを回転機械たるターボポンプに適用したものである。
【0250】
この実施形態は、実施形態9と同様、前記実施形態5において、図11に示されるスマートボルテックスジェネレータ1における本体3を構成する形状記憶合金の種類を変更したものである。
【0251】
この実施形態における本体3を構成する形状記憶合金は、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、ターボポンプ14の運転中の一部(流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲)で低負荷側安定相(例えば、オーステナイト相)になり、ターボポンプ14の運転中の他の一部(流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲)で高負荷側安定相(例えば、マルテンサイト相(応力誘起マルテンサイト相))になるものを採用することができる。例えば、この形状記憶合金は、ターボポンプ14の運転中の一部での想定負荷(低負荷側の想定負荷で、ある一つの値)が、該形状記憶合金のオーステナイト変態終了応力以下となり、かつ、ターボポンプ14の運転中の他の一部での想定負荷(高負荷側の想定負荷で、ある一つの値)が、該形状記憶合金のマルテンサイト変態終了応力以上となるように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等を調整することができる。
【0252】
このため、スマートボルテックスジェネレータ1が羽根15の表面に設けられたターボポンプ14は、運転中の一部(例えば、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲)では、本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮する。これにより、本体3の渦発生部7は、羽根15の表面に渦を発生させて、羽根15の表面から流れが剥離することを効果的に抑制する。
【0253】
そして、ターボポンプ14の運転中の他の一部(例えば、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲)では、本体3の渦発生部7が羽根15の表面に沿うように起立姿勢から傾倒して寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮する。
【0254】
なお、前記実施形態9~11においては、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となるときに前記形状記憶合金がオーステナイト相となって本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となるときに前記形状記憶合金がマルテンサイト相となって本体3が第2形体を維持する例について説明したが、これとは逆に、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となるときに前記形状記憶合金がマルテンサイト相となって本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となるときに前記形状記憶合金がオーステナイト相となって本体3が第2形体を維持するようにしてもよい。
【0255】
また、前記実施形態9~11において、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となるときに本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となるときに本体3が第2形体を維持するように構成する場合は、図17に示されるように、流体の流れ方向(図17のA矢印方向)に対して、本体3の台座部6等が流体の流れ方向に対して略平行に延び、かつ、第1形体及び第2形体にある本体3の渦発生部7の板面(本体3の屈曲凸側又は湾曲凸側たる裏側の面)に流体の流れが当たるように、ボルテックスジェネレータ1を設置することが好ましい。
【0256】
さらに、前記実施形態9~11においては、形状記憶合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、本体3の形体が第1形体と第2形体とに変化する例について説明したが、形状記憶合金の超弾性効果と、流体力と、補助力付与手段から補助的に負荷される補助力(弾力、流体圧力や重り等による力)とにより、本体3の形体を第1形体と第2形体とに変化させることもできる。例えば、板ばね4を備えた前記実施形態1乃至4に係るスマートボルテックスジェネレータ1において、本体3を構成する形状記憶合金に所定の超弾性効果を有するものを採用するとともに、板ばね4のばね力を適切に設定することにより、形状記憶合金の超弾性効果と、流体力と、補助的に負荷される補助力としてのばね力とにより、本体3の形体を第1形体と第2形体とに変化させることができる。
【0257】
(実施形態12)
この実施形態12は、超弾性合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。また、この実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを航空機たる飛行機に適用したものである。
【0258】
この実施形態は、前記実施形態5において、図11に示されるスマートボルテックスジェネレータ1における本体3を構成する形状記憶合金を超弾性合金(相変態を伴わずに、1%以上(好ましくは2%以上)の弾性歪み量で超弾性変形する合金)に変更したものである。
【0259】
この実施形態における本体3を構成する超弾性合金は、所定の超弾性効果を有するものであり、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力が、飛行機2の離着陸時における想定流体力(低負荷側の想定負荷で、ある一つの値)よりも小さいときに、本体3が前記第1形体を維持し、かつ、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力が、飛行機2の巡航時における想定流体力(高負荷側の想定負荷で、ある一つの値)よりも大きいときに、超弾性合金が超弾性変形して本体3が前記第2形体を維持するように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等が調整されている。
【0260】
すなわち、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1では、このスマートボルテックスジェネレータ1を主翼2a上面に取り付けた飛行機2が離着陸するときの少なくとも一部(離着陸過程で、流体力が低い側の一部)である、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下であるときは、図11に示されるように本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮し、かつ、同飛行機2の巡航中(流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上であるとき)は、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して主翼2aの表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮しうるように、離着陸時及び巡航時における想定負荷を勘案しつつ、本体3を構成する超弾性合金の応力-歪み特性が設定されている。なお、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体力は、飛行機の速度や迎角等により変化するため、このことを加味して、超弾性合金の応力-歪み特性を適切に設定する必要がある。
【0261】
なお、本実施形態では、飛行機2の速度は、離着陸時よりも巡航時の方が速く、飛行中に図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力は、離着陸時よりも巡航時の方が所定量大きい場合を想定している。
【0262】
また、超弾性合金は、温度によって応力-歪み特性が大きく変化することがない。このため、超弾性合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータは、飛行機2の離着陸時における流体温度と、飛行機2の巡航時における流体温度とで、大きな差がある場合及び大きな差がない場合の何れでも適用できる。
【0263】
したがって、このスマートボルテックスジェネレータ1では、助力付与手段を別途設ける必要がなく、構成部品の削減により、構造の簡素化やメンテナンスフリーにより貢献する。
【0264】
その他の構成及び作用効果は前記実施形態1及び5と同様であるため、前記実施形態1及び5の説明を援用することで、その説明を省略する。
【0265】
(実施形態13)
この実施形態13は、超弾性合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。また、この実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを船舶に適用したものである。
【0266】
この実施形態は、実施形態12と同様、前記実施形態5において、図11に示されるスマートボルテックスジェネレータ1における本体3を構成する形状記憶合金を超弾性合金(相変態を伴わずに、1%以上(好ましくは2%以上)の弾性歪み量で超弾性変形する合金)に変更したものである。
【0267】
この実施形態における本体3を構成する超弾性合金は、所定の超弾性効果を有するものであり、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、船舶12の航行中の一部(図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力が、低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲)で、本体3が前記第1形体を維持し、かつ、船舶12の航行中の他の一部(図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力が、高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲)で、超弾性合金が超弾性変形して本体3が前記第2形体を維持するように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等が調整されている。
【0268】
このため、スマートボルテックスジェネレータ1が船体13表面に設けられた船舶12は、船舶12の航行中の前記一部では、本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮する。これにより、本体3の渦発生部7は、船体13の表面に渦を発生させて、船体13の表面から流れが剥離することを効果的に抑制する。
【0269】
そして、船舶12の航行中の前記他の一部では、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して船体13の表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮する。
【0270】
(実施形態14)
この実施形態14は、超弾性合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、二方向性特性を発揮するスマートボルテックスジェネレータに関するものである。また、この実施形態は、本発明のスマートボルテックスジェネレータを回転機械たるターボポンプに適用したものである。
【0271】
この実施形態は、実施形態12と同様、前記実施形態5において、図11に示されるスマートボルテックスジェネレータ1における本体3を構成する形状記憶合金を超弾性合金(相変態を伴わずに、1%以上(好ましくは2%以上)の弾性歪み量で超弾性変形する合金)に変更したものである。
【0272】
この実施形態における本体3を構成する超弾性合金は、所定の超弾性効果を有するものであり、本実施形態のスマートボルテックスジェネレータ1の使用状態において、ターボポンプ14の運転中の一部(図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力が、低負荷側の想定負荷以下となる負荷範囲)で、本体3が前記第1形体を維持し、かつ、ターボポンプ14の運転中の他の一部(図11のA矢印方向から本体3に作用する流体の流体力が、高負荷側の想定負荷以上となる負荷範囲)で、超弾性合金が超弾性変形して本体3が前記第2形体を維持するように、合金組成(成分や化合比)や熱処理条件等が調整されている。
【0273】
このため、スマートボルテックスジェネレータ1が羽根15表面に設けられたターボポンプ14は、ターボポンプ14の運転中の前記一部では、本体3の渦発生部7が最適又は良好な起立姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第1形体となって)、最適又は良好な剥離抑制機能を発揮する。これにより、本体3の渦発生部7は、羽根15の表面に渦を発生させて、羽根15の表面から流れが剥離することを効果的に抑制する。
【0274】
そして、ターボポンプ14の運転中の前記他の一部では、本体3の渦発生部7が起立姿勢から傾倒して羽根15の表面に沿うように寝た状態の最適な傾倒姿勢又は起立姿勢から所定量傾倒した良好な傾倒姿勢となって(本体3の形体が最適又は良好な第2形体となって)、最適又は良好な乱流抑制機能を発揮する。
【0275】
なお、前記実施形態12~14においては、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となるときに前記超弾性合金よりなる本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となるときに前記超弾性合金が超弾性変形して本体3が第2形体を維持する例について説明したが、これとは逆に、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となるときに前記超弾性合金が超弾性変形して本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となるときに本体3が第2形体を維持するようにしてもよい。
【0276】
また、前記実施形態12~14において、流体の流体力が高負荷側の想定負荷以上となるときに本体3が第1形体を維持し、かつ、流体の流体力が低負荷側の想定負荷以下となるときに本体3が第2形体を維持するように構成する場合は、図17に示されるように、流体の流れ方向(図17のA矢印方向)に対して、本体3の台座部6等が流体の流れ方向に対して略平行に延び、かつ、第1形体及び第2形体にある本体3の渦発生部7の板面(本体3の屈曲凸側又は湾曲凸側たる裏側の面)に流体の流れが当たるように、ボルテックスジェネレータ1を設置することが好ましい。
【0277】
さらに、前記実施形態12~14においては、超弾性合金の超弾性効果と流体力との組み合わせにより、本体3の形体が第1形体と第2形体とに変化する例について説明したが、超弾性合金の超弾性効果と、流体力と、補助力付与手段から補助的に負荷される補助力(弾力、流体圧力や重り等による力)とにより、本体3の形体を第1形体と第2形体とに変化させることもできる。例えば、板ばね4を備えた前記実施形態1乃至4に係るスマートボルテックスジェネレータ1において、本体3を構成する形状記憶合金の代わりに所定の超弾性効果を有する超弾性合金を採用するとともに、板ばね4のばね力を適切に設定することにより、超弾性合金の超弾性効果と、流体力と、補助的に負荷される補助力としてのばね力とにより、本体3の形体を第1形体と第2形体とに変化させることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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