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明細書 :抗不安剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4724837号 (P4724837)
公開番号 特開2002-068969 (P2002-068969A)
登録日 平成23年4月22日(2011.4.22)
発行日 平成23年7月13日(2011.7.13)
公開日 平成14年3月8日(2002.3.8)
発明の名称または考案の名称 抗不安剤
国際特許分類 A61K  31/045       (2006.01)
A61K   9/06        (2006.01)
A61K   9/08        (2006.01)
A61K   9/72        (2006.01)
A61P  25/22        (2006.01)
FI A61K 31/045
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/72
A61P 25/22
請求項の数または発明の数 8
全頁数 8
出願番号 特願2000-253393 (P2000-253393)
出願日 平成12年8月24日(2000.8.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成12年3月23日 社団法人日本薬理学会開催の「社団法人日本薬理学会第73回大会」において文書をもって発表
審判番号 不服 2007-021335(P2007-021335/J1)
審査請求日 平成14年10月10日(2002.10.10)
審判請求日 平成19年8月2日(2007.8.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501273886
【氏名又は名称】独立行政法人国立環境研究所
【識別番号】500398094
【氏名又は名称】梅津 豊司
発明者または考案者 【氏名】梅津 豊司
【氏名】伊藤 裕康
【氏名】永野 公代
【氏名】大内 広子
【氏名】山越 美穂
【氏名】坂庭 操
個別代理人の代理人 【識別番号】100102370、【弁理士】、【氏名又は名称】熊田 和生
参考文献・文献 特開平9-302377(JP,A)
Pharmacology Biochemistry and Behavior,1999,Vol.64,No.1,pp.35-40
Biosci.Biotechnol.Biochem.,1999,Vol.63,No.4,pp.743-748
調査した分野 A61K31/045
MEDLINE/STN
CA/STN
REGISTRY/STN
特許請求の範囲 【請求項1】
フェネチルアルコール及び/又はシトロネロールを有効成分とすることを特徴とする抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
【請求項2】
鎮静、筋弛緩、催眠及びアルコールによる増強作用を有しないことを特徴とする請求項1に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
【請求項3】
鎮静、筋弛緩作用を有しないことを特徴とする請求項1に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
【請求項4】
内服薬であることを特徴とする請求項1~3に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
【請求項5】
注射薬であることを特徴とする請求項1~3に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
【請求項6】
皮膚あるいは粘膜からの吸収薬であることを特徴とする請求項1~3に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
【請求項7】
吸入薬であることを特徴とする請求項1~3に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
【請求項8】
香料であることを特徴とする請求項1~3に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願発明は、不安神経症等既知の抗不安薬を必要とする精神神経疾患の治療及び日常におけるストレス軽減、緊張緩和等の、いわゆる、安らぎをもたらす薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代の我々を取り巻く急速な環境の変化は、その適応に困難を伴うことが多く、それがストレスとして心身にしばしば歪みをもたらしている。
多くの人々はうまく適応機制を駆使して解消しているが、それを行い得なかった一部の人々はノイローゼや心身症となる。
近年、精神科領域は言うに及ばず他科領域においてもそれらの患者が増加している。
その治療について、精神療法による心理学的接近とともに、薬物療法による生物学的接近も現在では非常に重要なものとなってきている。
1957年ベンゾジアゼピン系化合物であるクロルジアセポキシド及びジアゼパムが開発され、それらは抗不安薬として位置づけられた。その後抗不安薬開発は目覚ましい発展を遂げ、今や多くの有用性の高い薬物が日常臨床で広く使用されている。
しかし、今まで開発されてきたベンゾジアゼピン系抗不安薬は優れた抗不安作用を示すと同時に、鎮静、筋弛緩、催眠及びアルコールによる増強など種々の作用を持っており、それが眠気、ふらつき、注意力散漫、アルコール併用による障害等の副作用として現れ、さらに長期使用の場合には薬物中断時の身体依存に基づく退薬症候群や乱用の問題も生じてきた。
そこで従来の抗不安薬が持ついろいろな欠点を解消するために、最近では選択的に不安に作用する薬物の開発が試みられているが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬に代わるものは未だ開発されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
現代におけるストレス過多の環境はノイローゼや心身症等抗不安薬を必要とする疾病を増加させている。
しかし、従来のベンゾジアゼピン系抗不安薬にはいろいろな短所があるという問題がある。
この出願の発明は、従来の抗不安薬に代わる新しい抗不安薬を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この出願発明は、フェネチルアルコール及び/又はシトロネロールを有効成分とする抗不安、緊張緩和、精神安定剤、とくに、鎮静、筋弛緩、催眠及びアルコールによる増強作用を有しない抗不安、緊張緩和、精神安定剤に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
この出願発明のフェネチルアルコールとシトロネロールはバラの花から得られた精油に含まれる主要成分であり、つぎに示す化学構造を有している。
【0006】
【化1】
JP0004724837B2_000002t.gif【0007】
【化2】
JP0004724837B2_000003t.gif【0008】
この出願発明の薬剤は、内服薬、注射薬、貼付薬、座薬、吸入薬として使用される。
注射薬は、筋肉注射、皮内注射、皮下注射、静脈注射等によって体内に注入される。
また、貼付薬は、従来使用されている膏体に混合することにより体内に吸収させる。
座薬は、従来使用されているカカオ脂、グリセロゼラチン、ステアリン酸ナトリウム、、プロピレングリコールモノステアレート等に混合することにより体内に吸収させる。
吸入薬は、従来の方法により体内に吸収させるものであって、例えば、水蒸気あるいは空気の中にこの出願発明の成分を加えることにより鼻孔あるいは口腔より体内に吸収させる。
【0009】
この出願発明のフェネチルアルコール及び/又はシトロネロールを主成分とする抗不安、緊張緩和、精神安定剤には、ベンゾジアゼピン系化合物を併用することができる。
また、初期の患者にベンゾジアゼピン系化合物によって投与し、その後この出願発明のフェネチルアルコール及び/又はシトロネロールを主成分とする抗不安、緊張緩和、精神安定剤を投与してもよい。
【0010】
人の抗不安作用の有無を確認するための動物実験で検討する方法として、コンフリクト試験が広く用いられている。
コンフリクト試験は、さらにゲラー型とフォーゲル型の2種類がある。ゲラー型コンフリクト試験とは、実験装置内にあるレバーを押すと餌が与えられるようにしマウスにレバー押し行動を行うよう訓練した後、餌と同時に電気ショックを与えることにより葛藤(コンフリクト)状態を設定する方法である。
【0011】
充分に訓練をするとマウスは電気ショックを恐れるために、レバー押し行動を行わなくなる。
しかし、抗不安作用を有する薬物を与えると、そのマウスは電気ショックにかまわずにレバー押しを行うようになる。
薬物のこの様な作用をゲラー型コンフリクト試験における抗コンフリクト作用と呼び、人における抗不安作用を示唆している。
【0012】
フォーゲル型コンフリクト試験では、絶水を施したマウスに水を飲むと電気ショックを与えることにより葛藤(コンフリクト)状態を設定する。
抗不安作用を有する薬物を与えるとそのマウスは電気ショックにかまわずに水を飲むようになる。この様な作用をフォーゲル型コンフリクト試験における抗コンフリクト作用と呼び、人における抗不安作用を示している。
【0013】
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の代表であるジアゼパムをマウスに体重1kg当たり0.5,1あるいは2mg/kg皮下投与すると、ゲラー型コンフリクト試験においては、警告期におけるレバー押し頻度が増加する(図1参照)。
なお、各用量について使用した動物は20匹 (N=20)である。
これが抗不安薬が特異的に有する抗不安作用を反映している、ゲラー型コンフリクト試験における抗コンフリクト作用である。
【0014】
【実施例】
以下、この出願発明を実施例により具体的に説明するが、この出願発明は、実施例に限られるものではない。
実施例1
フェネチルアルコールをオリーブ油に溶解して体重1kg当たり100, 200, 400mgをマウスに腹腔内投与した。
投与後、ゲラー型コンフリクト試験を実施すると、用量依存的に抗コンフリクト作用を発現する(図2参照)(N=20)。
【0015】
実施例2
シトロネロールをオリーブ油に溶解して体重1kg当たり100,200,400あるいは600mg をマウスに腹腔内投与した。
投与後、ゲラー型コンフリクト試験を実施すると、用量依存的に抗コンフリクト作用を発現する(図3参照)。(N=18)。
【0016】
実施例3
フェネチルアルコールを体重1kg 当たり100,200,400あるいは800mgを腹腔内投与してフォーゲル型コンフリクト試験を実施したところ、ジアゼパムと同様に用量依存的に飲水によって受ける電気ショックの頻度は増加した(抗コンフリクト作用(図4))。(N=12)
【0017】
実施例4
シトロネロールを体重1kg当たり50,100,200あるいは400mgを腹腔内投与してフォーゲル型コンフリクト試験を実施したところ、用量依存的に抗コンフリクト作用が発現した(図5)。(N=12-18)。
従って、本方法によってもフェネチルアルコールとシトロネロールはジアゼパムと同様に抗コンフリクト作用を有することが明らかである。
【0018】
参考例1
ジアゼパムはベンゾジアゼピン作動薬(アゴニスト)であり、その作用はベンゾジアゼピン拮抗薬(アンタゴニスト)であるフルマゼニルによって拮抗されることは良く知られている。それを確かめるために、フォーゲル型コンフリクト試験におけるジアゼパムの抗コンフリクト作用に及ぼすフルマゼニルの併用効果を調べた。
ジアゼパムを体重1kg当たり 0.75 mgを投与すると抗コンフリクト作用が発現するが、体重 1kg当たり1mgのフルマゼニルと体重1kg 当たり 0.75mgのジアゼパムを同時に投与すると抗コンフリクト作用は観察されない(図6)。(N=29-30)。すなわちジアゼパムの作用がフルマゼニルによって拮抗された。
【0019】
実施例5
ローズオイルを体重1kg当たり400mg投与すると抗コンフリクト作用が発現するが、このローズオイルの抗コンフリクト作用は体重1kg 当たり1mgのフルマゼニルを同時に投与しても変化しない。(図7)。(N=22-23)。
すなわち、ローズオイルの抗コンフリクト作用はフルマゼニルによっては拮抗されないことを示している。
従って、フェネチルアルコールとシトロネロールの抗コンフリクト作用の発現機序はジアゼパムのそれと異なることを示している。
つまり、フェネチルアルコールとシトロネロールは従来のベンゾジアゼピン系抗不安薬とは大きく異なる抗不安薬と成りうる。(図7、8)
【0020】
参考例1
もう一つのコンフリクト試験であるフォーゲル型コンフリクト試験においては、ジアゼパムをマウスに皮下投与して試験を実施した。体重当たり 0.375, 0.5, 0.75あるいは 1 mg/kg を投与したところ、飲水によってマウスが受ける電気ショックの頻度は、用量依存的に増加した(フォーゲル型コンフリクト試験における抗コンフリクト作用、図8)。(N=32-33)
この様にフェネチルアルコールとシトロネロールは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬であるジアゼパムと同様に、動物に注射投与すると2種類の試験において抗コンフリクト作用を示す。すなわち、この2物質は抗不安作用を有することが明らかである。他方、フェネチルアルコールとシトロネロールはベンゾジアゼピン系抗不安薬とは一線を画するものであることも明らかである。
【0021】
【発明の効果】
この出願発明のフェネチルアルコールとシトロネロールあるいはローズオイルは、抗コンフリクト作用を示すので、この出願発明によって、新規の抗不安薬を提供することができる。
しかも、今まで開発されてきたベンゾジアゼピン系抗不安薬は優れた抗不安作用を示すと同時に、鎮静、筋弛緩、催眠及びアルコールによる増強など種々の作用を持っており、それが眠気、ふらつき、注意力散漫、アルコール併用による障害等の副作用として現れ、さらに長期使用の場合には薬物中断時の身体依存に基づく退薬症候群や乱用の問題も生じてきたが、この出願発明の薬剤はそれらの問題を解決することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ジアゼパムをマウスに投与したゲラー型コンフリクト試験
【図2】 フェネチルアルコールをマウスに投与したゲラー型コンフリクト試験
【図3】 シトロネロールをマウスに投与したゲラー型コンフリクト試験
【図4】 フェネチルアルコールをマウスに投与したフォーゲル型コンフリクト試験
【図5】 シトロネロールをマウスに投与したフォーゲル型コンフリクト試験
【図6】 フルマゼニルとジアゼパムを同時にマウスに投与したときのと抗コンフリクト作用
【図7】 ローズオイルとフルマゼニルを同時にマウスに投与したときの抗コンフリクト作用
【図8】 ジアゼパムをマウスに投与したフォーゲル型コンフリクト試験における抗コンフリクト作用
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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