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明細書 :メタン発酵による排水処理方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982789号 (P4982789)
公開番号 特開2008-036529 (P2008-036529A)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成20年2月21日(2008.2.21)
発明の名称または考案の名称 メタン発酵による排水処理方法及び装置
国際特許分類 C02F   3/28        (2006.01)
FI C02F 3/28 ZABB
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2006-213716 (P2006-213716)
出願日 平成18年8月4日(2006.8.4)
審査請求日 平成21年8月4日(2009.8.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501273886
【氏名又は名称】独立行政法人国立環境研究所
発明者または考案者 【氏名】珠坪 一晃
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】北村 龍平
参考文献・文献 特開平05-123691(JP,A)
特開昭62-279897(JP,A)
特開平07-308686(JP,A)
特開平06-079295(JP,A)
特開平01-293189(JP,A)
調査した分野 C02F 3/28 - 3/34
特許請求の範囲 【請求項1】
有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなる上昇流嫌気性汚泥床処理装置により10~20℃の低温度有機性排水を処理する方法において、前記有機性排水が生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水であり、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うことを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
有機性排水及び/又は嫌気処理水を、メタン発酵槽の高さ方向の異なる複数箇所から、分配供給及び/又は分配流入・循環させることを特徴とする請求項1記載の排水処理方法。
【請求項3】
有機性排水に還元剤を投入することを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理方法。
【請求項4】
10~20℃の低温度、かつ、生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水の処理に用いられる処理装置であって、有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなり、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うための送液管を設けたことを特徴とする上昇流嫌気性汚泥床処理装置。
【請求項5】
有機性排水供給部が、メタン発酵槽の高さ方向の複数箇所に有機性排水を分配供給しうる複数の供給管を有し、該供給管のそれぞれに、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うための複数の送液管が接続されていることを特徴とする請求項記載の上昇流嫌気性汚泥床処理装置。
【請求項6】
有機性排水供給部に、還元剤を投入するための還元剤導入部を有することを特徴とする請求項又は記載の上昇流嫌気性汚泥床処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を上昇流嫌気性汚泥床処理装置によりメタン発酵処理する排水処理方法と、それに用いる装置に関し、より詳しくは、有機性排水が生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水や、10~20℃の低温度有機性排水を生物学的にメタン発酵処理するのに適した処理方法及びそれに用いる上昇流嫌気性汚泥床処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間活動の結果排出される有機性排水の処理は環境保全のために必要不可欠である。これらの排水は比較的低有機物濃度(重クロム酸酸化法による有機物濃度:CODcr,1g/L以下)であり、水温も外気温に左右され10-25℃とメタン発酵微生物の至適温度よりも低いことが知られている。現在、下水や産業排水などの有機性排水の処理は主に好気性微生物の働きを利用した標準活性汚泥法によって行われているが、有機性排水の好気性微生物処理では空気(酸素)の供給が必要である。曝気動力として用いられる電力消
費量は莫大であり日本国内の総電力消費量の0.6%に達している。また、排水の好気性微生物処理では除去有機物の約50%が余剰汚泥(産業廃棄物)に姿を変えており、汚泥発生量の抑制も排水処理システムの開発上重要な課題である。
【0003】
このような課題を解決する手法として、メタン発酵処理法が知られている。嫌気性微生物の働きを利用したメタン発酵は、酸素供給のための曝気動力が不要のため消費エネルギーが少なく、また菌体の増殖収率が小さいため余剰汚泥の排出が少ない。さらに、有機物分解の結果生じるメタンガス(エネルギー)を回収できる創エネルギー型の排水処理法である。しかしながら、一般的なメタン発酵技術では、増殖速度の遅いメタン生成菌を反応器内に保持するために、20-40日程度の滞留時間(処理時間)を維持する必要があり、メタン発酵処理法は有機物濃度が高い生ごみや余剰汚泥等の処理や一部の産業廃水の処理など濃厚有機性排水処理に用いられるのが一般的であった。
【0004】
しかし最近の20年ほどの間に、排水の滞留時間(処理時間)とは独立に汚泥(菌体)の滞留時間を制御することで、高濃度の生物量を反応器内に保持し、高速・高負荷で排水の嫌気処理を行おうという新方式の処理システムの開発が行われてきている(非特許文献1参照)。生物の保持方法としては装置内に固定された充填物に微生物を付着保持させる固定床法(例えば、特許文献1参照)、流動粒状担体(砂、粒状活性炭など)に微生物を付着させる流動床法(例えば、特許文献2参照)、微生物の自己造粒体(グラニュール状汚泥)を利用する上昇流嫌気性汚泥床(例えば、特許文献3参照)、膜分離により微生物を保持する処理方法(例えば、特許文献4参照)などがある。特に、嫌気性微生物の自己造粒体であるグラニュール状汚泥(生物膜)を形成させ、装置内に保持する上昇流嫌気性汚泥床(Upflow Anaerobic Sludge Blanket: UASB)による排水処理方法は、その排水処理能力(許容有機物負荷)の高さと安定性から中・高有機物濃度の産業排水を処理対象として多く適用がなされている。
【0005】
上昇流嫌気性汚泥床(UASB)による嫌気排水処理では、生物膜(グラニュール状汚泥)の形成・維持により、排水と別々の装置内滞留時間で微生物を維持でき装置内に高密度に微生物を集積出来るため、従来、数十日かかった有機性排水の処理時間を数時間にまで短縮できるようになった。
【0006】
しかしながら、生物膜利用嫌気性処理技術は嫌気性微生物の増殖とそれらの高密度集積体である生物膜の形成が容易な中・高濃度(2-10gCODcr/L)の易分解性有機性排水に限定されており、量的に最も多く排出される低有機物濃度排水(1gCODcr/L以下)への技術の適用は困難とされていた。これは、低有機物濃度条件下では、生物膜の形成、即ち嫌気性微生物の増殖に必要な有機物量の確保ができず、生物膜の崩壊や沈降性の悪化を招き、その結果、嫌気微生物(汚泥)の流失とプロセスの破綻を招いてしまうためである。また、有機物のメタン発酵処理の際に酢酸からのメタン生成反応を担うメタン生成細菌の酢酸に対する基質飽和定数(Ks)は150mgCOD/Lと大きく(例えば、非特許文献2参照)、排水の有機物濃度低下は微生物活性や増殖速度の低下、有機物分解効率の低下を招き、さらに、有機物分解に伴い生成するバイオガス(炭酸、メタン等)の量が少ないため上昇流嫌気性汚泥床法において生物膜の形成・維持に必要とされる汚泥床での物理的撹拌も不足する。
【0007】
一般的に有機性排水や廃棄物のメタン発酵処理では、装置内(排水)の温度をメタン生成細菌の至適増殖温度である中温度(30-37℃)、高温度(50-65℃)に維持している。しかしながら、低有機物濃度排水のメタン発酵処理では回収可能なメタン量が少なく、多量に排出される低温度の排水(例えば、10-25℃)を加熱するのは費用の面から難しい。さらに低温度排水のメタン発酵処理では、メタン生成微生物の増殖速度や基質分解速度が低下し、装置内に必要量の微生物を保持すること(物性に優れる生物膜の形成・維持)、良好な水質を得ることが困難になる。また低水温下では流入排水の溶存酸素濃度や酸化還元電位が高まり嫌気条件(低い酸化還元電位:-250m~-300mV以下)を要求するメタン生成反応が阻害される等の問題が生じる。また、水温低下により水の粘性が増加するため排水と汚泥(微生物)との接触効率が低下するという問題点もある。
【0008】
すなわち、これら低有機物濃度排水の無加温処理を対象としたメタン発酵排水処理プロセスを実現するためには、汚泥床への適度な物理的攪拌の付与などにより、メタン生成微生物への効率的基質供給とメタン生成微生物の高密度凝集塊である生物膜の物理的性状(沈降性など)維持を行うことで、菌体の高濃度保持と活性維持を実現することが鍵となる。また流入水の酸化還元電位を低く維持するための方策も必要である。
【0009】
低有機物濃度排水をメタン発酵処理するために、嫌気処理水を常時循環させ、原水と共に排水流入部より供給する嫌気性グラニュール汚泥膨張床法(Expanded Granular Sludge Bed:EGSB法)の有効性が知られている(例えば、非特許文献3参照)。この方法では、嫌気処理水を循環させ供給原水と共にメタン発酵槽に供給することで、汚泥床を積極的に流動化させ生物膜と原水(基質)との接触効率を増加させるものである。また、嫌気処理水の供給により、原水の酸化還元電位(ORP)が高い場合(酸素が微量に混入している場合)にも、装置内の嫌気的雰囲気(低ORP条件)を維持しやすいという特徴もある。ここでは、嫌気性汚泥膨張床法を20℃条件下での低濃度排水(0.6-0.8gCODcr/L)の処理に適用したところ、低濃度排水の高速処理を安定的に行うことができた。また、EGSB法が10℃から15℃という低温度条件下における有機性排水処理においても有効であることが知られている(例えば、非特許文献4参照)。
【0010】
しかしながら、これらのEGSB法による低濃度排水の高速処理では、排水の有機物除去率が50-70%と低いレベルにとどまる等の問題点も明らかになった。また、量的に最も多く排出される、より低有機物濃度の排水(0.1-0.4gCODcr/L)にこの方法を適用する場合、メタン生成微生物の活動に必要な基質濃度が確保できず、保持汚泥の物性悪化(沈降性の悪化)を招くため、低有機物濃度の排水を安定的かつ効率的に処理可能なメタン発酵処理法は確立していない。
【0011】
さらに、上向流嫌気排水処理装置(UASB法)において排水供給ノズルより間欠的に通常運転の3~5倍の吐出速度で排水供給を行うことで、汚泥床のチャネリングを防止する手段が知られている(例えば、特許文献5参照)。しかし、この方法は、汚泥床のチャネリングやリアクター下部における過剰有機物供給によるグラニュール汚泥(生物膜)の肥大化防止のために、被処理水の供給速度を速める手段が示されているだけであり、低有機物濃度、低温度というメタン発酵不適排水を効率的に処理するために、グラニュール汚泥を構成するメタン発酵微生物の基質親和性等の微生物学的知見に基づいた適切な基質供給手段は示されていない。
【0012】
一方、中・高濃度有機性排水の上向流嫌気排水処理装置による処理では高負荷運転を行うと排水流入部の設けられている汚泥床下部での揮発性脂肪酸の蓄積が生じてpHの低下を招き、メタン発酵処理が不安定になる。その解決方法として反応槽の高さ方向の複数箇所から汚泥床部に排水を分配導入し、汚泥床への有機物負荷量を分散させる嫌気排水処理法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、この方法では過剰な負荷を分散するための排水処理方法が示されているだけであり、低負荷運転状況(低濃度排水処理)において汚泥床部で微生物に効率的に有機物を与える方法は示されていない。
【0013】

【特許文献1】特開2005-81238号公報
【特許文献2】特開平9-248591号公報
【特許文献3】特開平5-50089号公報
【特許文献4】特開2000-24661号公報
【特許文献5】特開2003-340487号公報
【特許文献6】特開平11-207384号公報
【非特許文献1】微生物固定化法による排水処理、須藤隆一 著・編、産業用水調査会、p.220-221、1988年初版
【非特許文献2】D J. Batstone et al., Anaerobic digestion model No.1, IWA Publishing, 2002.
【非特許文献3】低有機物濃度排水の高速メタン発酵処理、川崎達也、珠坪一晃、渡辺正孝、大橋晶良、原田秀樹、第39回日本水環境学会年会講演集、p.343、2005年
【非特許文献4】低濃度有機性排水の低温メタン発酵処理、珠坪一晃、川崎達也、第8回水環境学会シンポジウム講演集、p.172、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、メタン発酵汚泥(生物膜)に効率的に有機性排水の供給と物理的な攪拌を行える条件を作り出すことで、メタン発酵汚泥の活性や物性(沈降性など)が維持され、メタン発酵に不適な低有機物濃度排水や低温度排水の高効率処理を実現するメタン発酵排水処理方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来の方法では、上昇流嫌気性汚泥床処理方法等のグラニュール状生物膜を利用したメタン発酵法の適用排水種は、グラニュール状生物膜の高密度保持(高速、安定処理)が可能な有機物濃度が2~20gCODcr/L程度と比較的高い排水に限定されている。また、微生物活性の維持の観点から発酵槽の温度を中温域(30~35℃)、高温域(55~65℃)に維持する必要があったため、常温条件下で量的に最も多く排出されている低有機物濃度排水を嫌気性排水処理法に適用することができなかった。ブラジルやインドなど平均気温が25-30℃と高く維持される地域においては、都市下水の無加温処理に上昇流嫌気性汚泥床処理が用いられているが、グラニュール状生物膜の形成は生じず、その有機物処理性能(速度、許容出来る有機物負荷)や安定性は低い。また、排水循環によりグラニュール状生物膜の効率的な利用を目指したEGSB法による低有機物濃度排水の無加温メタン発酵処理において、嫌気処理水を単に循環させ、原水供給部から原水と共に供給すると、流入排水の有機物濃度が低下してしまい、メタン生成反応を担うメタン生成細菌の活性低下を招くという問題があった。
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、上昇流嫌気性汚泥床処理法等の自己造粒生物膜を利用するメタン発酵排水処理法において、嫌気処理水を間欠的に流入・循環させることで、メタン発酵微生物の基質資化(活性維持)に有利な有機物濃度を確保しつつ、上昇流付与による汚泥床の攪拌によって処理対象原水(有機性排水)と微生物との接触反応を促し、基質の拡散・供給律速を招くことなくメタン生成微生物の高密度・長時間保持ができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0017】
また、一般的な上昇流嫌気排水処理装置(UASB法)では、原水の供給部が反応槽底部にのみ設置されており、低濃度排水の処理を行った場合、反応槽の上方に向かって有機物濃度が低下するため、基質濃度をメタン生成細菌の基質飽和定数以上に維持するのは困難となり、反応槽全体の保持汚泥(メタン生成微生物)の有機物分解能を発揮させることができない。そこで、反応槽の高さ方向に複数設置した原水及び/又は嫌気処理水を分配供給し、供給有機物濃度を最適化して有機物分解効率を向上できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0018】
さらに、低水温の排水は、一般的に酸化還元電位や溶存酸素濃度が高くなりやすく、発酵槽に保持される嫌気性微生物の活性低下を招きやすくなる。そのため、有機性排水供給部に、還元剤を投入するための還元剤導入部を設け、供給される有機性排水の酸化還元電位を還元状態に維持することで、有機性排水のメタン発酵処理におけるメタン発酵効率(有機物除去率、メタン回収率)が高められることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち本発明は、(1)有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなる上昇流嫌気性汚泥床処理装置により10~20℃の低温度有機性排水を処理する方法において、前記有機性排水が生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水であり、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うことを特徴とする排水処理方法に関する。


【0020】
また本発明は、(2)有機性排水及び/又は嫌気処理水を、メタン発酵槽の高さ方向の異なる複数箇所から、分配供給及び/又は分配流入・循環させることを特徴とする上記(1)記載の排水処理方法や、()有機性排水に還元剤を投入することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の排水処理方法に関する。


【0021】
さらに本発明は、()10~20℃の低温度、かつ、生物分解性有機物濃度として0.15~1gCODcr/Lの低有機物濃度排水の処理に用いられる処理装置であって、有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなり、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うための送液管を設けたことを特徴とする上昇流嫌気性汚泥床処理装置や、()有機性排水供給部が、メタン発酵槽の高さ方向の複数箇所に有機性排水を分配供給しうる複数の供給管を有し、該供給管のそれぞれに、メタン発酵槽で処理された嫌気処理水を循環なしの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、嫌気処理水を循環供給の条件下でメタン発酵を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うための複数の送液管が接続されていることを特徴とする上記(4)記載の上昇流嫌気性汚泥床処理装置や、()有機性排水供給部に、還元剤を投入するための還元剤導入部を有することを特徴とする上記()又は(5)記載の上昇流嫌気性汚泥床処理装置に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、低有機物濃度排水を生物学的にメタン発酵処理し、メタンガスを回収する処理方法及び装置に利用可能であり、メタン生成細菌の増殖や活性維持に必要な排水有機物濃度の維持と、嫌気性生物膜の形成維持(菌体の装置内への高密度保持)や短絡流防止に有効な物理的な攪拌の付与を行い得る。そのため、低有機物濃度排水の無加温嫌気性微生物処理(メタン発酵)を高効率かつ安定的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の排水処理方法としては、有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなる上昇流嫌気性汚泥床処理装置により有機性排水を処理する方法において、メタン発酵槽で嫌気処理された嫌気処理水をメタン発酵槽に、間欠的に流入・循環させ、又は/及び流入量を増減して流入・循環させ、メタン発酵を行う方法であれば特に限定されるものではなく、前記上昇流嫌気性汚泥床処理装置としては、メタン発酵槽で嫌気処理された嫌気処理水をメタン発酵槽に間欠的に流入・循環するための送液管を備えた、後述する本発明の上昇流嫌気性汚泥床処理装置を好適に例示することができる。ここで、嫌気処理水とは、有機性排水(原水)が汚泥床に存在する嫌気汚泥(メタン発酵汚泥)と接触することで有機物分解とメタン・炭酸ガスへの転換(メタン発酵反応による有機物分解)が進行した結果、有機物分解が行われた処理水をメタン発酵汚泥及び生成ガスと分離した処理水を意味する。
【0024】
メタン発酵槽で嫌気処理された嫌気処理水をメタン発酵槽に間欠的に流入・循環させる方法としては特に制限されないが、例えば、メタン生成細菌の基質親和性を考慮して嫌気処理水循環無しの条件下でメタン発酵を行う形態(ワンパスモード)と、汚泥と基質の接触効率の向上等の効果を期待した嫌気処理水の循環供給を行う形態(循環モード)での運転を繰り返し行うことで、低有機物濃度排水の高効率メタン発酵と、安定運転(高効率な汚泥保持)を可能にする方法が好ましい。嫌気処理水の循環を行わないワンパスモードと、処理水循環を行う循環モードの繰り返し間隔は、排水の有機物濃度、温度、酸化還元電位やメタン発酵槽の排水処理時間などに応じて任意に設定できる。処理水の水質を向上させるためにはワンパスモード(循環無し)での運転時間を長く設定すれば良いが、排水の酸化還元電位が高い(溶存酸素濃度が高い)場合には、ワンパスモードで運転すると装置内の酸化還元電位が上昇しやすくなり、結果的に処理水質の悪化、メタン回収率の悪化を招くおそれがある。また、ワンパスモードでの運転では、排水の短絡を招きやすく、スラッジベットの物理的な攪拌不足等により高密度菌体保持の鍵となるグラニュール状生物膜の維持が困難になる。また、ワンパスモードと循環モードの切り替えを行う代わりに、常時循環モードでの運転を行いつつ、循環流量を増減させることでも同様の効果を得ることができる。
【0025】
また、有機性排水(原水)をメタン発酵槽の高さ方向の異なる複数箇所から分配供給したり、嫌気処理水をメタン発酵槽の高さ方向の異なる複数箇所から分配流入・循環させたり、有機性排水と嫌気処理水とをメタン発酵槽の高さ方向の異なる複数箇所から分配供給及び分配流入・循環させることもできる。例えば、低濃度有機性排水をメタン発酵槽の高さ方向の異なる複数箇所から分配供給する処理を行った場合、反応槽の上方に向かって有機物濃度が低下することがなく、基質濃度をメタン生成細菌の基質飽和定数以上に維持することができ、反応槽全体の保持汚泥(メタン生成微生物)の有機物分解能を発揮させることができる。
【0026】
次に、処理の対象となる有機性排水(原水)として、下水、農村集落排水、し尿、食品加工排水、飲料製造排水、繊維製造排水、紙パルプ製造排水その他産業排水などが挙げられる。これらの有機性排水は本発明の処理方法および装置で処理する場合、生物分解性の有機物(BOD成分)を含有する排水であれば良く、生物分解性有機物濃度(以下、単に有機物濃度という)として0.1gCODcr/L-20gCODcr/L程度の排水、特に有機物濃度0.15gCODcr/L-1gCODcr/L程度の低有機物濃度排水、及び/又は、5~25℃の無加温条件下の有機性排水、特に10~20℃の低温度有機性排水の場合、本発明の効果を有利に享受することができる。また、一般的には、被処理原水(排水)に無機塩類等を加える必要は無いが、有機物が過多の場合や、メタン発酵微生物群の増殖に必要な無機塩類が不足する場合は、窒素源、リン源をはじめ、ニッケル、コバルト、マグネシウム、鉄等の無機塩類、アルカリ度を供給するための重炭酸ナトリウム等を加えることができる。また、硫酸塩の含有量が少ない場合には、硫酸塩を少量加えることで、発酵槽内で硫酸塩還元反応に伴う硫化物が生成されるので、発酵槽内の嫌気的な雰囲気を維持(低い酸化還元電位を維持)することができる。因みに、硫酸塩還元細菌はメタン生成細菌と比較して溶存酸素の存在や酸化還元電位の高い状況でも失活しにくいため、低有機物濃度・低温排水の処理にも寄与することができる。
【0027】
本発明において有機物の分解とメタン生成のためのメタン発酵に用いられるメタン生成微生物群としては、従来よりメタン発酵に用いられている微生物、すなわち、有機物の加水分解・酸生成反応を担う酸生成微生物群、酸生成反応の結果生じる中間代謝脂肪酸(プロピオン酸、酪酸等)を酢酸と水素にまで分解する水素生成酢酸化微生物群、酸生成反応の最終生成物である酢酸、水素をメタンガスに転換するメタン生成微生物群等の嫌気性微生物群を含む、総称メタン発酵微生物群(メタン発酵汚泥)を挙げることができる。
【0028】
このようなメタン生成微生物群は、有機物を含む排水を嫌気的に分解させることにより発生させることができるが、既存のメタン発酵槽より採取した汚泥、メタン生成微生物群が存在する環境(底泥、家畜糞尿)より採取した汚泥などを植種源として用いることができる。装置の立ち上げ・馴致期間を短縮する場合や、低濃度排水の処理に適用する場合は、産業排水の処理などに用いられている上昇流嫌気性汚泥床型の反応器(UASBリアクター、EGSBリアクター)より採取した自己造粒化汚泥(グラニュール汚泥)を用いるのが好ましい。自己造粒化嫌気性生物膜(グラニュール状汚泥)の形成には、メタン生成微生物群の生育に必要な有機物量を確保すること、および有機物分解の最終過程を担うメタン生成細菌をその倍加時間以上の時間装置内に維持することが必要である。有機物濃度が低い排水の場合、排水の処理量を増加させる(処理時間を短縮する)ことで生物膜の健全な形成・維持に必要な有機物量を確保し、保持汚泥の流失を防ぐことが好ましい。
【0029】
一般的な中温性酢酸資化性メタン生成細菌であるMethanosaeta属細菌の至適温度(37℃)における倍加時間は3-4日であり、低有機物濃度・低温度といった条件下では、倍加時間は更に長くなるため自己造粒化汚泥の植種などにより装置の立ち上げ期間において14-30日以上の汚泥滞留時間を維持することが有効である。
【0030】
本発明の有機性排水(原水)のメタン発酵処理法に用いられる本発明の上昇流嫌気性汚泥床処理装置としては、有機性排水供給部、メタン生成微生物群を含有する汚泥床、気・固・液分離部、嫌気処理水流出部、嫌気処理水循環部、及びガス排出部を備えたメタン発酵槽からなり、メタン発酵槽で嫌気処理された嫌気処理水をメタン発酵槽に間欠的に流入・循環するための送液管を設けた装置であれば特に限定されるものではないが、有機性排水供給部が、メタン発酵槽の高さ方向の複数箇所に有機性排水を分配供給しうる複数の供給管を有し、該供給管のそれぞれに、メタン発酵槽で嫌気処理された嫌気処理水をメタン発酵槽に間欠的に分配流入・循環するための複数の送液管が接続されているものが望ましい。また、有機性排水供給部に、還元剤を投入するための還元剤導入部を有するものがより好ましい。そして、有機性排水(原水)や嫌気処理水を送液するための送液ポンプ等が送液管等に設けられている。
【0031】
一般的には、被処理原水である有機性排水の排水供給部からメタン発酵槽への供給は、連続的に行われるが、被処理原水を反応器高さ方向に分配導入する場合や、被処理対象の原水の供給量が一定では無い場合等には断続的に行っても良い。
【0032】
本発明の上昇流嫌気性汚泥床処理装置を用いた、メタン発酵による有機性排水の処理においては、一般的にメタン発酵槽の底部に原水流入部が設けられているため、発酵槽上方に向かって有機物濃度が低下する。そのため、本発明では、発酵槽上部において、有機物濃度がメタン生成細菌の最適活動に必要な基質飽和定数以下に減少してしまうため、発酵槽高さ方向に複数の排水供給部(原水/嫌気処理水導入部)を備えることが望ましい。これにより、発酵槽上部においても槽内への供給有機物濃度を高めることができる。
【0033】
また、本発明においては、通常排水(原水)は無加温条件下で処理されるが、排水の温度が低下すると排水の溶存酸素濃度や酸化還元電位(ORP)が上昇することが知られている。メタン発酵反応は、-250mV程度の低いORP条件を要求するため、排水のORPの上昇はメタン生成反応すなわち嫌気条件下における有機物分解反応に阻害を及ぼす。また、ORPの高い条件下では、メタン発酵による有機物分解反応の結果生じるメタンガスが酸化されてしまい、メタン回収効率が低下する可能性もある。嫌気性グラニュール汚泥膨張床法(EGSB法)では、メタン発酵後の低ORPの嫌気処理水を循環させ、原水(排水)と混合してメタン発酵槽に供給するため、高いORPの排水処理の際に発酵槽内のORPを低い条件で維持するのに有効である。しかしながら、低有機物濃度排水処理においては、処理水循環(循環モードでの運転)を行うと、流入排水の有機物濃度が低下し、処理水質の悪化を招く。他方、メタン発酵処理水の循環を行わない排水供給条件(ワンパスモード)においては、排水に還元剤等を加えて、あらかじめ被処理排水のORPを低く維持、制御することが有効である。排水に添加する還元剤としては、硫化物(硫化水素、硫化ナトリウム等)、酸化鉄(II)、水素、システイン、チオグリコール酸などを用いることができる。
【0034】
以上の本発明の処理方法、装置では曝気動力を必要としないため処理に関わる動力を好気性処理法(活性汚泥法)と比較して数分の一以下にまで低減できる。さらに、除去有機物の30-80%程度をメタンガス(エネルギー)として回収することができ、余剰汚泥の発生量は除去有機物の5-15%程度と非常に少ない。すなわち、有機性排水処理の結果生じる余剰汚泥の処分に関わるコスト、エネルギーも大幅に削減できる。すなわち本発明の有機性排水のメタン発酵処理方法、処理装置により有機性排水処理に伴う消費エネルギーを大幅削減することができ、さらに処理の結果生じる余剰汚泥も削減できることから、有機性排水処理に伴って発生する化石燃料由来の二酸化炭素を大幅に削減できる。
【0035】
以下、図面による説明と実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0036】
図1は本発明の実施形態による有機物性排水のメタン発酵処理方法を実施するのに好ましい上昇流嫌気性処理装置の一形態の概要を例示した図である。1はメタン発酵槽であり、有機性排水(原水)送液管2を介してメタン発酵槽1内に処理対象となる原水を導入する。通常は、装置底部の送液管2aより原水を導入し処理を行うが、装置内での有機物濃度を高め、高効率にメタン発酵を行うために、発酵槽の汚泥床部5への原水導入のために設置した送液管2bより処理対象の原水を導入し、処理を行うことができる。排水送液管2aより供給された原水は、メタン発酵槽1の汚泥床部5に存在する嫌気汚泥(メタン発酵汚泥)と接触することで有機物分解とメタン・炭酸ガスへの転換(メタン発酵反応による有機物分解)が進行する。有機物分解が行われた処理水は、気・固・液分離装置6で、メタン発酵汚泥、生成ガスと分離され、排水流出管7より系外に排出されるが、その一部は嫌気処理水として循環使用される。また、気・固・液分離装置6で分離されたメタンガス、炭酸ガスは、ガス排出管8を通じて系外に排出される。
【0037】
本発明の排水処理方法に用いる上昇流嫌気性汚泥床処理装置は、嫌気処理水を装置上部より取り出し、排水送液管(2a,2b)に接続して、送液するための嫌気処理水送液管(3a,3b)を備える。送液管(3a、3b)より嫌気処理水を循環させ、メタン発酵槽1に導入することで、汚泥床に存在するメタン発酵汚泥と排水との接触効率が高まり、また、メタン生成細菌群への基質(原水)の供給効率向上と汚泥床における排水の短絡を防止することができ、結果的に排水のメタン発酵処理の安定性向上や効率向上に寄与する。また、嫌気処理水の循環導入により、高密度のメタン発酵微生物保持の鍵となるグラニュール状汚泥の形成・維持に必要な物理的攪拌を付与することができる。さらに処理対象の排水(原水)のORPが高い場合においては、低ORPの嫌気処理水を処理対象の原水と共に発酵槽に導入できるので、汚泥床のメタン生成微生物群の活性低下防止、生成したメタンガスのメタン酸化細菌による酸化防止に寄与する。嫌気処理水送液管3は、排水(原水)送液管2と接続させても良いし、嫌気処理水送液管3を直接メタン発酵槽1に接続させても良い。嫌気処理水の嫌気処理水送液管(3a,3b)を介してのメタン発酵槽1への導入は、間欠的に行うか、または、嫌気処理水を循環導入する流量を増減させることで、嫌気処理水の間欠循環と同様の効果が得られる。
【0038】
本発明の嫌気排水処理法に用いる上昇流嫌気性処理装置は、装置内を処理対象の排水が装置底部から上部に向かって流れるため、排水の有機物濃度は発酵槽の上部に向かって低下する。供給する処理対象排水の有機物濃度や有機物負荷が低いような条件下では、5の汚泥床上方の有機物濃度が減少し、メタン発酵微生物の活性維持が困難になる。処理対象排水の有機物濃度が減少する汚泥床の中央部や上部から、有機性排水を分配導入(2b)することで汚泥床全体のメタン発酵微生物群を活性化することができ、結果的に排水の処理効率やメタン回収効率を向上することができる。図1では、処理対象である有機性排水の分配のための送液管は、2a、2bのみであるが、発酵槽の高さ方向に複数の排水(原水)送液管を設けることができる。
【0039】
一般的には被処理原水の排水送液管2からメタン発酵槽1への供給は、連続的に行われるが、被処理原水を反応器高さ方向に分配導入する場合や、被処理対象の原水の排出量が一定では無い場合には断続的に行っても良い。処理対象排水の分配は、有機性排水送液管(2a,2b)にそれぞれ設けた送液ポンプの流量調節により行っても良いし、有機性排水送液管(2a,2b)に電磁弁を設けて流路を切り替えても良い。
【0040】
処理対象となる排水(原水)のORPが高く、メタン発酵槽内のORP上昇による排水処理効率の悪化を招く可能性がある場合には、排水送液管に還元剤を導入するための送液管を設けることができる。還元剤は、直接1のメタン発酵槽に投入するようにしても良い。
【0041】
図2には、下記の実施例1でのワンパスモード(UASBモード)、循環モード(EGSBモード)における発酵槽高さ方向における有機物濃度(COD濃度)の変化の様相を示した。これより、ワンパスモードでは発酵槽内で有機物濃度を微生物の基質飽和定数以上に保つことができ、その結果、発酵槽内の汚泥の活性が高く維持され、最終的に有機物分解量が増加することが分かった。一方、循環モードでは流入排水が嫌気処理水により希釈されるため流入有機物濃度は低下し、結果的に汚泥床における有機物分解速度が低下する傾向にあった。
【実施例1】
【0042】
内径5cm、高さ75cm、有効容積2Lの上昇流嫌気性処理装置を用いて20℃の温度条件下で、低濃度排水(有機物濃度0.3-0.4gCODcr/L)の連続排水処理試験を行った。植種汚泥としては、食品加工排水を処理しているメタン発酵槽より採取した中温(35℃)培養グラニュール汚泥を用いた。発酵槽1には、発酵槽底部に有機性排水(原水)送液管2aを設けた。また有機性排水(原水)送液管に還元剤を投入するための還元剤導入管4と嫌気処理水を循環導入するための送液管3aを設けた。排水処理試験に用いた被処理液はスクロース、酢酸、プロピオン酸を炭素源とした人工合成排水であり、有機物濃度は0.4CODcr/Lになるように調整した(実測濃度0.3-0.4gCODcr/L)。また同時に人工合成排水には、無機栄養塩、微量金属類、重炭酸ナトリウムを添加し、pHを6.8に調整した。上記の有機性排水を反応槽1底部の有機性排水(原水)送液管2aより上昇流で連続通水し、汚泥床部5においてメタン発酵汚泥と接触させて、連続的な排水処理実験を行って本発明のメタン発酵装置の有機物除去性能とメタン生成能を評価した。排水の処理性能試験は、排水処理時間(水理学的滞留時間)を1時間に設定して行った。
【0043】
連続排水処理実験は、以下の3つの条件下において行った。条件1(比較例)では、嫌気処理水を送液管3aより常時循環供給する循環モード(EGSBモード:上昇線流速5m/h)での運転を行った。条件2(本発明)では反応槽内での有機物濃度を高く維持するために、30分間送液管3aより嫌気処理水の循環供給を行わないワンパスモード(UASBモード:上昇線流速1m/h)での運転を行い、その後10分間嫌気処理水を送液管3aより循環供給する循環モード(EGSBモード)での運転を行った。このワンパスモード(UASBモード)、循環モード(EGSBモード)での運転をタイマー操作により繰り返し運転を行った。条件3(本発明)では、条件2に加え、処理対象の排水(原水)の酸化還元電位を低下させるために、還元剤導入管4より還元剤として硫化ナトリウム9水和物(最終濃度15mg/L)を供給した。運転条件1、2、3で各3ヶ月間の運転を行った。表1に各運転条件下における平均水質、COD除去量、メタン回収率等の運転成績を示した。
【0044】
【表1】
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【0045】
表1の結果から明らかなように、条件1(比較例)では、常時嫌気処理水を循環させる循環モード(EGSBモード)での運転を行った。水質は常時安定しており、除去COD量は11.2gCOD/day、除去したCODに対するメタン回収率は70%となった。しかしながら、実験期間の後半には装置内のグラニュール状汚泥の沈降性が悪化する傾向を示した。条件2(本発明)では、ワンパスモード(UASBモード)、循環モード(EGSBモード)で繰り返し運転を行ったもので、COD除去量は条件1に対して約19%向上させることができた。また条件2では、実験期間を通じて、保持グラニュール汚泥の物性悪化なども観察されなかった。ただし、条件2においてはメタン回収率が条件1よりも若干低下した。排水処理実験に用いた人工排水のORPは0mVから-50mV程度であり、メタン発酵に適したORP(-200mvから-250mV)よりも高い。嫌気処理水の循環を行わないワンパスモード(UASBモード)では、装置内でのORPの上昇を招きやすくなる。そこで、条件3では、条件2に加え、処理対象の排水に還元剤を加え、ORPを-100mVから-150mVに制御した。その結果、条件3では条件2よりも14%除去COD量が増加し、メタン回収率も8%程度増加した。これより、ORPの高い排水を処理する場合に還元剤を投入し、流入排水のORPを低下させることで、低有機物濃度の排水を高効率に処理し、メタン回収を行えることが分かった。
【実施例2】
【0046】
上昇流嫌気性処理装置を用いた有機性排水のメタン発酵処理では、反応槽内を処理対象の排水(原水)が上昇流モードで通過し、汚泥床の嫌気性細菌と接触することで排水中の有機物分解が生じる。そのため汚泥床上部での有機物濃度が低下し、反応槽上部での基質分解速度も低下する(図2参照)。そこで、従来法の排水供給法(反応槽底部のみからの排水供給)と本発明の排水供給法(反応槽底部および汚泥床中央部からの排水供給方法)における排水処理性能の把握を行った。排水の連続処理実験には内径5cm、高さ75cm、有効容積2Lの上昇流嫌気性処理装置を用いた。植種汚泥として食品加工排水を処理しているメタン発酵槽より採取した中温(35℃)培養グラニュール汚泥を用い、20℃の温度条件下で、低濃度排水(有機物濃度0.3-0.4gCODcr/L)の連続排水処理試験を行った。発酵槽1には、発酵槽底部に有機性排水(原水)送液管2a、また発酵槽の汚泥床5中央部への排水導入のために送液管2b(反応槽底部からの高さ35cm)を設けた。また有機性排水(原水)送液管に還元剤を投入するための還元剤導入管4と嫌気処理水を循環導入するための送液管3aを設けた。排水処理試験に用いた被処理液はスクロース、酢酸、プロピオン酸を炭素源とした人工合成排水であり、有機物濃度は0.4CODcr/Lになるように調整した(実測濃度0.3-0.4gCODcr/L)また同時に人工合成排水には、ミネラル、微量栄養塩、重炭酸ナトリウムを添加し、pHを6.8に調整した。嫌気処理水の送液管3aを通じての循環(5m/h)は30分おきに10分間行った。還元剤(硫化ナトリウム9水和物)の還元剤導入管4を通じての投入は、最終濃度が15mg/Lとなるように連続的に行った。
【0047】
処理対象となる排水(原水)の供給は、排水処理時間(水理学的滞留時間)を1時間に設定して、反応槽底部の送液管2aと汚泥床部の送液管2bから行った。汚泥床部の送液管2bからの排水供給割合は、全排水供給量の0%から50%の間で変化させた。各排水分配条件下におけるCOD除去量の変化(底部の送液管2aのみからの排水供給時のCOD除去量を100%とした時の割合)を表2に示した。反応槽底部(送液管2a)のみからの排水供給に対して、汚泥床部(送液管2b)からの排水供給を10%から40%割合で行った場合、COD除去量を向上させることができることが明らかになり、排水の汚泥床部への分配導入の効果が示された。
【0048】
【表2】
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【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態による有機物含有排水のメタン発酵処理方法および装置を示す透視図である。
【図2】実施例1のワンパスモード(UASBモード)、循環モード(EGSBモード)における発酵槽高さ方向における有機物濃度(COD濃度)の変化の様相を示した図である。
【符号の説明】
【0050】
1 メタン発酵槽
2(2a,2b)有機性排水(原水)送液管
3(3a,3b)嫌気処理水送液管
4 還元剤導入管
5 汚泥床
6 気・固・液分離装置
7 排水流出管
8 ガス排出管
図面
【図1】
0
【図2】
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