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明細書 :送液システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4625959号 (P4625959)
公開番号 特開2007-147001 (P2007-147001A)
登録日 平成22年11月19日(2010.11.19)
発行日 平成23年2月2日(2011.2.2)
公開日 平成19年6月14日(2007.6.14)
発明の名称または考案の名称 送液システム
国際特許分類 F16K  13/00        (2006.01)
B81B   3/00        (2006.01)
FI F16K 13/00 Z
B81B 3/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2005-344113 (P2005-344113)
出願日 平成17年11月29日(2005.11.29)
審査請求日 平成20年11月25日(2008.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 淳史
個別代理人の代理人 【識別番号】100083404、【弁理士】、【氏名又は名称】大原 拓也
審査官 【審査官】刈間 宏信
参考文献・文献 特開2000-035821(JP,A)
特開平11-257233(JP,A)
特開平07-027239(JP,A)
特開2002-066999(JP,A)
特開2002-147628(JP,A)
特開2004-195289(JP,A)
特開2001-146982(JP,A)
実開昭63-074571(JP,U)
特開2005-247963(JP,A)
特開2004-262976(JP,A)
特表2002-511559(JP,A)
特開平05-180352(JP,A)
特開2000-179729(JP,A)
特開昭61-192992(JP,A)
特開2004-225789(JP,A)
特開2006-097812(JP,A)
調査した分野 F16K 13/00
B81B 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
賦圧手段、流量制御手段および流量検出手段を有する送液システムにおいて、前記流量制御手段が流路内の一部に流路の管壁に密着して設けられた高分子ゲル層からなり、この層を構成する高分子ゲルが刺激応答性を有し、かつ、その層の厚さが流路の相当直径の0.5倍以上である本体と外部刺激賦与手段とからなることを特徴とする送液システム。
【請求項2】
外部刺激が温度変化である請求項1記載の送液システム。
【請求項3】
高分子ゲルが架橋されたN-アルキルアクリルアミド系ポリマーのヒドロゲルである請求項1または2記載の送液システム。
【請求項4】
流路が分岐を有し分岐点の先のそれぞれに設けられた流量制御手段本体の高分子ゲル層の刺激応答性が逆である請求項1~3のいずれか1項記載の送液システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は送液システムさらに詳しくはマイクロマシンへの応用に適した送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
刺激応答性高分子ゲルは、温度変化、電場印加、光照射、pH変化、化学物質添加等の微小な外部刺激の賦与に応じて膨潤・収縮し、その形状・物性が著しく変化する特性を有する。このような特性を物質分離、エネルギー変換に関連する各種用途に応用することが試みられている。
【0003】
送液システム関連でも、特許文献1には、弾性膜を一つの壁とした容積部内に電気応答性あるいは熱応答性の高分子ゲルを設け、その変形により前記弾性膜を弾性変形させ直接あるいはニードルを介して流体流路の面積を調整することを特徴とする流量制御装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、圧力によって網目孔サイズが変化する高分子ゲルを介して、物質を選択して透過させるまたは透水量を制御するようにした圧力機能性ケミカルバルブが記載されている。
【0005】

【特許文献1】特開平7-27239号公報
【特許文献2】特開2002-147628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の装置のように、高分子ゲルの変形により弾性膜を弾性変形させて流路の面積を調整する方式による場合には、物理的な間隙の調整により流路の面積調整を行うので、流速に依存して高分子ゲルの機械的な変形を伴うために、原理的に1マイクロリットル/分あるいはそれ以下の微少流量の精密制御には適用できない。一方、特許文献2記載のバルブのように、高分子ゲルの網目サイズの変化を直接透水量の調整に応用する試みもあったが、いずれもゲルの形態が膜状に限られ、やはり微少流量の精密制御には適用できないものであった。
【0007】
本発明の目的は、機械的な制御部材が不要であると同時に微少流量の精密制御が可能であって、マイクロマシンへの応用に適した送液システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、賦圧手段、流量制御手段および流量検出手段を有する送液システムにおいて、前記流量制御手段が流路内の一部に流路の管壁に密着して設けられた高分子ゲル層からなり、この層を構成する高分子ゲルが刺激応答性有し、かつ、その層の厚さが流路の相当直径の0.5倍以上である本体と外部刺激賦与手段とからなることを特徴としている。
【0009】
本発明において、前記外部刺激が温度変化であることが好ましく、また、前記高分子ゲルが架橋されたN-アルキルアクリルアミド系ポリマーのヒドロゲルであることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、流路が分岐を有し分岐点の先のそれぞれに設けられた流量制御手段本体の高分子ゲル層の刺激応答性が逆であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械的な制御部材が不要であると同時に10の-1~-6乗マイクロリットル/分という微少流量域で目的物質(液体)を長期間、制御された任意の速度で注入することが可能で、マイクロマシンへの応用に適した送液システムが提供される。ゲルの孔径はゲルの合成時にできる網目構造により決まるので、合成時の外部環境を制御することにより、網目の不均一性を利用して平均孔径を変化させることができ、流速の絶対値を上記の範囲で制御可能である。
【0012】
また、流路が分岐を有し分岐点の先のそれぞれに設けられた流量制御手段本体の高分子ゲル層の刺激応答性が逆である態様においては、両方の流量制御手段本体に同じ外部刺激を付与することにより、主たる流路を反転させる機能も発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においては、流量制御手段の本体が流路内の一部に流路の管壁に密着して設けられた高分子ゲル層からなり、この層を構成する高分子ゲルが刺激応答性を有し、かつ、その層の厚さが流路の相当直径と同等以上、具体的には相当直径の0.5倍以上、好ましくは1~50倍、特に好ましくは3~30倍であることが重要である。
【0014】
こうすることで、外的環境を変化させてゲルに刺激を賦与しても、ゲルが流路に拘束されて体積変化を生じにくく高分子マトリックスの網目密度がほとんど変化しない条件下で作動することになる。流速は印加圧力に比例しゲル合成時の層の厚さに反比例するため、流速と層の厚さに依存する高分子ゲルの機械的な変形は、流速に影響を与えない。ゲルの巨視的な体積変化が抑制されているため、外部刺激により高分子マトリックスに加わる引力が増加する場合には、網目の孔が大きくなる部分(ドメイン)と小さくなる部分(ドメイン)とに相分離する(相分離効果)。このとき大孔径のドメインが層の厚さ方向にパーコレートすると流速は増大する(パーコレート効果)が、そうでないと小孔径のドメインを通過する時間に律速され、流速が減少するようになる。この相分離効果/パーコレート効果のバランスにより、外的環境変化による流速の実効の平均孔径が決まり、巨視的な流速が増加または減少するようになる。
【0015】
これに対して、ゲルの拘束を解いて体積変化を自由にすると、同じく外部刺激により高分子マトリックスに加わる引力が増加する場合に、相分離により平衡状態では全ての孔径は減少して流速は減少することになり、流量を任意に制御することが不可能となる。
【0016】
本発明において、賦圧手段の形式は特に限定されず種々のものが使用可能であるが、部品点数等の面から給液貯槽の水位を調整する方式が好ましく採用可能である。また、流量検出手段としては、流量制御手段通過液の先端面の位置を光学的に検出して、その移動速度を測定する方式が例示される。
【0017】
流路の構成材料としては、ガラスの円管が例示されるが、材質的には金属管あるいはプラスチック管も採用可能であり、また、断面形状も楕円形、角形であってもよい。流路の相当直径も特に限定されないが、所要流量の面から通常0.1~10mm程度に設定される。
【0018】
外部刺激としては、温度変化、電場印加、光照射、pH変化、化学物質添加等種々の形態があり得るが、被送液の組成に対する影響、賦与手段の構成の簡易性等の面から温度変化が好ましく採用される。温度変化の賦与手段としては、流量制御手段全体を包み込む槽内に温度調節された熱媒を流通させるようにした構成が例示される。
【0019】
本発明において、高分子ゲルの組成は加える外部刺激の種類、所要流量等に応じて適宜選定されるが、外部刺激として温度変化を採用し、微少流量の精密制御を図る場合には、相転移温度域、入手の容易性の面から、架橋されたN-アルキルアクリルアミド系ポリマーのヒドロゲルが好ましく採用される。アルキル部分の種類を選択することにより、相転移温度を変化させることが可能で、作動温度を5~50℃の範囲で選択できる。
【0020】
高分子ゲルを流路の管壁に密着させる方法としては、構成材料が透明な場合に適用可能な方法として、流路内面の所定部分をシランカップリング剤等で処理してから、処理部分の一部にモノマー混合物および光重合開始剤の溶液(ヒドロゲルの場合には水溶液)を充填し外部から所定の光照射を行う方法が例示される。
【0021】
本発明においては、ゲルの網目構造をゲルの合成時に制御し、外的環境を適切に設定して、溶媒の性質に対応した網目の平均流径を変化させることにより、流量を制御するものである。
【0022】
本発明の構成例を図1に示す。賦圧手段1として、本例では給液貯槽11の水位を調整し、送水圧Δpを加える方式が採られている。流量制御手段2は、流路内壁に密着して形成された熱応答性の高分子ゲル層21からなる本体と、この部分を覆うように設置された恒温槽22からなる外部刺激賦与手段とを有している。恒温槽22には温度制御された熱媒の入口23とその出口24とが設けられている。流量検出部3においては、流量制御手段通過液の先端面31の位置を光学的に検出してその移動速度を測定する方式が採用されるが、検出手段の図示は省略されている。
【0023】
流路に分岐がある場合の態様を図2により説明する。分岐点4の先の流路の一方に昇温により流量が減少する高分子ゲル層211を、他方に昇温により流量が増加する高分子ゲル層212をそれぞれ設けておき、その両方を覆うように設置された恒温槽221に低温度の熱媒を供給して送液すると、211側が主たる流路となるが、熱媒温度を上げて所定の値にすると、主たる流路が212側に切り換わる。以下に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
シランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)で内面処理した内径1.35mmのガラス円管の中間部に、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)700mM、N,N´-メチレンビスアクリルアミド(BIS)8.6mM、光重合開始剤(VA-086:2,2´-アゾビス[2-メチル-N(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド])1mM水溶液を長さが1.5mmとなるように注入し、0℃で、紫外線源(波長365nm、強度275W/平方m)から10cmの距離で30分間光照射してゲル化させた。
【0025】
このようにして得られた高分子ゲル層を流量制御手段の本体として、図1に示す送液システムを組み立てて、温度30℃、送水圧(Δp)水柱80cmで試験をしたところ、顕微鏡とデジタルマイクロスコープを利用して正確に測定したガラス管中のメニスカスの位置から算出した定常流量は1×10の-6乗ml/分であった。高分子ゲル層に温度変化を加え40℃に昇温すると、定常流量が8×10の-10乗ml/分と3桁低下した。
【実施例2】
【0026】
モノマー水溶液の組成および濃度を、NIPA600mM、アクリルアミド(AAm)100mM、BIS8.6mM、ガラス円管内長さを2mmとする以外は実施例1と同様にして、高分子ゲルを生成させた。この場合の実施例1と同様にして測定した定常流量は30℃で1×10の-6乗ml/分であり、65℃への昇温により6×10の-8乗ml/分と2桁低下した。
【実施例3】
【0027】
モノマー水溶液の組成および濃度を、NIPA619mM、AAm81mM、BIS 8.6mM、ガラス円管内長さを5mm、重合ゲル化温度を40℃とする以外は実施例1と同様にして、高分子ゲルを生成させた。水柱の高さを10cmとする以外は実施例1と同様にして測定した定常流量は、30℃で5×10の-7乗ml/分であり、40℃に昇温すると9×10の-6乗ml/分とこの場合には1桁増大した。
【実施例4】
【0028】
モノマー水溶液の組成および濃度を、NIPA620mM、AAM80mM、BIS 8.6mM、ガラス円管内長さを9mm、重合ゲル化温度を40℃とする以外は実施例1と同様にして、高分子ゲルを生成させた。この場合の水柱の高さを1cmとする以外は実施例1と同様にして測定した定常流量は、30℃で8×10の-6乗ml/分であり、40℃に昇温すると2×10の-4乗ml/分とこの場合も1桁増大した。
【実施例5】
【0029】
モノマー水溶液の組成および濃度を、NIPA1050mM、BIS12.9mM、ガラス円管内長さを5mm、重合ゲル化温度を40℃とする以外は実施例1と同様にして、高分子ゲルを生成させた。この場合の水柱の高さを5cmとする以外は実施例1と同様にして測定した定常流量は、30℃で2×10の-4乗ml/分であり、40℃に昇温し水柱2cmで測定した定常流量は8×10の-3乗ml/分であった。
【実施例6】
【0030】
モノマー水溶液の組成および濃度を、NIPA2100mM、BIS25.8mM、ガラス円管内長さを6mm、重合ゲル化温度を40℃とする以外は実施例1と同様にして、高分子ゲルを生成させた。この場合の水柱の高さを23cmとする以外は実施例1と同様にして測定した定常流量は、30℃で2×10の-4乗ml/分であり、40℃に昇温し水柱9cmで測定した定常流量は1×10の-4乗ml/分であった。
【実施例7】
【0031】
モノマー水溶液の組成および濃度を、NIPA525mM、BIS175mM、ガラス円管内長さを5mm、重合ゲル化温度を40℃とする以外は実施例1と同様にして、高分子ゲルを生成させた。この場合の水柱の高さを78cmとする以外は実施例1と同様にして測定した定常流量は、23℃で4×10の-7乗ml/分であり、40℃に昇温すると1×10の-7乗ml/分と1/4に低下した。
【実施例8】
【0032】
モノマー水溶液の組成および濃度を、NIPA525mM、BIS175mM、ガラス円管内長さを2mm、重合ゲル化温度を40℃とする以外は実施例1と同様にして、高分子ゲルを生成させた。この場合の水柱の高さを27cmとする以外は実施例1と同様にして測定した定常流量は、23℃で5×10の-6乗ml/分であり、40℃に昇温すると4×10の-4乗ml/分と2桁増加した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の送液システムは、機械的な制御部材が不要であると同時に10の-1~-6乗マイクロリットル/分という微少流量域で目的物質(液体)を長期間、制御された任意の速度で注入することが可能なので、マイクロマシンへ適用し、生産プロセス、環境管理さらには、医療分野での薬物の投与等への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の送液システムの構成を示す説明図。
【図2】流路に分岐がある場合の態様の要部を示す模式的平面図。
【符号の説明】
【0035】
1 賦圧手段
2 流量制御手段
3 流量検出部(検出手段は図示省略)
4 分岐点
11 給液貯槽
21 高分子ゲル層(流量制御手段本体)
22 恒温槽(外部刺激賦与手段)
23、231 熱媒入口
24、241 熱媒出口
31、311,312 流量制御手段通過液の先端面
211 第1の高分子ゲル層
212 第1の高分子ゲル層とは逆の刺激応答特性を有する第2の高分子ゲル層
図面
【図1】
0
【図2】
1