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明細書 :光導波路型DNAセンサおよびDNA検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5130517号 (P5130517)
公開番号 特開2008-070214 (P2008-070214A)
登録日 平成24年11月16日(2012.11.16)
発行日 平成25年1月30日(2013.1.30)
公開日 平成20年3月27日(2008.3.27)
発明の名称または考案の名称 光導波路型DNAセンサおよびDNA検出方法
国際特許分類 G01N  33/50        (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI G01N 33/50 P
G01N 21/27 C
C12Q 1/68 A
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2006-248665 (P2006-248665)
出願日 平成18年9月13日(2006.9.13)
審査請求日 平成21年9月3日(2009.9.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】伊藤 公紀
【氏名】片岡 淳司
個別代理人の代理人 【識別番号】110001243、【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
【識別番号】100115624、【弁理士】、【氏名又は名称】濱中 淳宏
【識別番号】100136490、【弁理士】、【氏名又は名称】中西 英一
審査官 【審査官】吉森 晃
参考文献・文献 特開2003-262634(JP,A)
特開2005-077396(JP,A)
特開2007-033203(JP,A)
特開2008-014832(JP,A)
電気化学会第72回大会講演要旨集,2005年,p.358, 3L21
Chem. Sensor.,2005年,Vol.21, Suppl.A,p.160-162
調査した分野 C12N 15/00-15/90
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
光導波路と、
前記光導波路に光を結合するための光結合手段と、
DNAを固定可能であり、一方の符号の電荷が帯電した金微粒子が分散した金コロイド溶液と、プローブDNAと、ターゲットDNAとが付与される、前記光導波路上の領域とを備え、
前記結合した光は、少なくとも前記領域を横切るように前記光導波路を導波し、
前記領域上に付与された前記金微粒子をさらに備え、
前記領域には、前記電荷と反対の符号の電荷が導入されており、
前記領域の表面では、該表面と前記金微粒子とが静電的に吸着していること
を特徴とする光導波路型DNAセンサ。
【請求項2】
前記金微粒子には、前記プローブDNAが固定されていることを特徴とする請求項に記載の光導波路型DNAセンサ。
【請求項3】
前記結合した光の波長帯域は、前記金微粒子の吸収波長帯域と少なくとも一部で重なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路型DNAセンサ。
【請求項4】
DNAを固定可能であり、一方の符号の電荷が帯電した金微粒子が分散した金コロイド溶液と、プローブDNAと、ターゲットDNAとが付与される領域を有する光導波路であって、該領域には、前記電荷と反対の符号の電荷が導入されている光導波路を用意する工程と、
前記領域に前記金コロイド溶液、前記プローブDNA、および前記ターゲットDNAを付与する工程と、
前記光導波路に光を結合して、該結合した光を、前記領域を横切るように導波させる工程と、
前記領域を横切った光を受光する工程と
を備えることを特徴とするDNA検出方法。
【請求項5】
前記プローブDNAと前記ターゲットDNAとがミスマッチの場合は、前記金微粒子は、前記領域の表面に静電的に吸着していることを特徴とする請求項に記載のDNA検出方法。
【請求項6】
前記結合した光の波長帯域は、前記金微粒子の吸収波長帯域と少なくとも一部で重なっていることを特徴とする請求項またはに記載のDNA検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路型DNAセンサおよびDNA検出方法に関し、より詳細には、光を用いてDNAセンシングを行う光導波路型DNAセンサおよびDNA検出方法
【背景技術】
【0002】
高齢化に伴い医療費の増大が深刻になっており、医療費を抑えるために微量なDNAを迅速、常温で検出できるセンサの開発が求められている。近年、金微粒子を利用して、DNA検体を迅速、また常温で検出できる方法が報告されている(非特許文献1)。
【0003】
また、金コロイド溶液を用いたDNA検出法が報告されている。図1は、従来の、金コロイド溶液を用いたDNA検出法を説明するための図である。
図1において、光3を透過する材料からなる容器1中に、金コロイド溶液2が入れられている。この金コロイド溶液2は、金コロイド溶液に一本鎖DNA(プローブDNA)を滴下して金微粒子にプローブDNAを固定し、次いで、ターゲットとする一本鎖DNA(ターゲットDNA)を金コロイド溶液に滴下して生成される。
【0004】
このとき、プローブDNAとターゲットDNAとが相補的である場合、ハイブリダイゼーション反応が起こり、金微粒子の凝集が起こる。金微粒子が分散した金コロイドは赤色であるが、上記凝集が起こると吸収スペクトルが長波長側にシフトして、溶液の色が赤色から紫色へと変化する。
【0005】
従来では、この色の変化を利用してDNAセンシングを行っている。すなわち、図1において、容器1において、光3の入射側と対向する側にフォトダイオード等の受光素子4を配置し、金コロイド溶液2に対して光3を照射し、その透過光5を受光素子4にて受光している。受光素子4にて受光した透過光5の吸収スペクトルを調べることにより、DNAセンシングを行っている。
【0006】

【非特許文献1】三浦佳子、米澤徹、“金ナノ粒子の調整とそれを利用したバイオセンシング”Dojin News No.113(2005)、p.1-7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来では、金コロイド溶液に光を入射し、その透過光のスペクトルを解析することによってDNA検出を行っているが、金コロイド溶液では、マイナスの電荷を持つCOO基が金微粒子を取り囲んでおり、金微粒子間に電気的な反発力が働き、金微粒子同士が凝集せずに分散している。従って、少量のDNA検体(プローブDNAおよびターゲットDNA)では正確な測定が行えず、光の通過する領域に金微粒子を多く存在させるために、多量の金コロイド溶液が必要であった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、少量のDNA検体であっても正確にDNA検出が可能な光導波路型DNAセンサおよびDNA検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光導波路と前記光導波路に光を結合するための光結合手段と、DNAを固定可能であり、一方の符号の電荷が帯電した金微粒子が分散した金コロイド溶液と、プローブDNAと、ターゲットDNAとが付与される、前記光導波路上の領域とを備え、前記結合した光は、少なくとも前記領域を横切るように前記光導波路を導波し、前記領域上に付与された前記金微粒子をさらに備え、前記領域には、前記電荷と反対の符号の電荷が導入されており、前記領域の表面では、該表面と前記金微粒子とが静電的に吸着していることを特徴とする光導波路型DNAセンサである
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記金微粒子には、前記プローブDNAが固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記結合した光の波長帯域は、前記金微粒子の吸収波長帯域と少なくとも一部で重なっていることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、DNAを固定可能であり、一方の符号の電荷が帯電した金微粒子が分散した金コロイド溶液と、プローブDNAと、ターゲットDNAとが付与される領域を有する光導波路であって、該領域には、前記電荷と反対の符号の電荷が導入されている光導波路を用意する工程と、前記領域に前記金コロイド溶液、前記プローブDNA、および前記ターゲットDNAを付与する工程と、前記光導波路に光を結合して、該結合した光を、前記領域を横切るように導波させる工程と、前記領域を横切った光を受光する工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記プローブDNAと前記ターゲットDNAとがミスマッチの場合は、前記金微粒子は、前記領域の表面に静電的に吸着していることを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項またはに記載の発明において、前記結合した光の波長帯域は、前記金微粒子の吸収波長帯域と少なくとも一部で重なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、DNAを固定可能であり、一方の電荷で帯電した材料、プローブDNA、およびターゲットDNAが付与される光導波路の所定の領域に対して、上記電荷の符号と反対の電荷を導入しているので、上記材料を光導波路に静電的に吸着することができる。よって、少量のDNA検体であっても正確にDNA検出が可能な光導波路型DNAセンサおよびDNA検出方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
粒子径15nm程度の金微粒子が分散した金コロイド溶液は、赤色である。この金コロイド溶液において、金微粒子が凝集すると、吸収スペクトルが長波長側にシフトして、溶液の色は赤色から青に変化する。この金微粒子の凝集は、金微粒子に固定されたプローブDNAとターゲットDNAとがハイブリダイゼーション反応することによって起こるものである。
【0020】
本発明の一実施形態に係るDNAセンシングは、上記色の変化、あるいは凝集を利用して、すなわち、プローブDNAとターゲットDNAとのハイブリダイゼーション反応を利用して、吸収スペクトル、透過スペクトル、あるいは蛍光等の光の特性、または屈折率変化を測定することによって行っている。
【0021】
さて、光を用いたDNAセンシングに金コロイド溶液等のコロイド溶液を用いると、金微粒子が分散しているので上述のように、大量のDNA検体や金コロイド溶液が必要である。そこで、本発明の一実施形態では、センシング領域に金微粒子を、コロイド溶液中の金粒子密度よりも高密度に配置している。
【0022】
このような配置を実現するために、本発明の一実施形態では、光導波路のセンシング領域上に、金微粒子を取り囲む官能基であるCOO基と反対の電荷であるプラスの電荷を持つ官能基(例えば、NH基)を配置する。すなわち、上記領域にプラス電荷を導入する。こうすることで、センシング領域上に金コロイド溶液を付与すると、溶液中の金微粒子は、該金微粒子を取り囲むCOO基とセンシング領域上に導入されたプラス電荷(例えば、NH基)との間のクーロン力によって静電的にセンシング領域に吸着する。この様子を図2(a)に示す。
【0023】
図2(a)において、光導波路21上に、金コロイド溶液22が付与されており、さらに金微粒子23がプラス電荷の導入が施された光導波路21に静電的に吸着されている。この光導波路21には、シランカップリング処理を行ってNH基(不図示)が配置されており、該NH基と金微粒子23の周囲にあるCOO基との間に働くクーロン力により、金微粒子23は光導波路21に静電的に吸着している。
【0024】
これに対して、上述のプラス電荷の導入が施されていないと、図2(b)に示すように、光導波路21上に金コロイド溶液22を付与しても、通常通り、金微粒子23は溶液中で分散している。
【0025】
図2(a)および図2(b)から分るように、光導波路の表面にプラス電荷を導入すると、光導波路の界面に金微粒子が吸着しているので、図2(a)の矢印方向Pに光を導波させると、導波路中を導波する光の進行方向における導波路の長さ(単に、「導波路の長さ」とも呼ぶ)分だけ、導波路を導波する光を金微粒子に作用させることができる。従って、DNA検体や金コロイド溶液を少量にしても、上記導波路の長さ分だけ、測定光である導波路を導波する光と金微粒子とが作用する領域をかせぐことができる。
【0026】
すなわち、図2(b)や、図1に示す従来の方法のように、金微粒子が分散したコロイド溶液を用いる場合、検体の量が少量だと測定に用いる光が作用する金微粒子の数は、金微粒子が溶液中で分散しているのでわずかとなってしまい、より高精度な測定を行うために、検体や金コロイド溶液の量を大量にしなければならない。しかしながら、図2(a)のようにすることで、所定量の金コロイド溶液において、分散により3次元的に分布している金微粒子を、2次元的に配置することができ、この2次元的に配置された面と平行に光を導波させることによって、2次元的に配置された金微粒子の全てに対して、上記導波光を作用させることができる。よって、従来のように、コロイド溶液のままで測定する際の、分散によって測定光と作用しない金微粒子をも上記測定光と作用させることができるので、コロイド溶液中の金微粒子を効率よく利用することができ、検体等の微量化を実現できる。
【0027】
なお、光導波路に付与された金コロイド溶液に含まれる金微粒子の全てを、光導波路に静電的に吸着させることが好ましいが、吸着されずに溶液に金微粒子が残っていても良い。本発明の一実施形態で重要なことの一つは、付与される金コロイド溶液に含まれる金微粒子を効率良く導波路を導波する光と作用させることであり、上記金コロイド溶液の少なくとも一部を光導波路に静電的に吸着させれば、付与される金コロイド溶液に含まれる金微粒子において、導波路を導波する光と作用する金微粒子を増加することができる。
【0028】
本発明の一実施形態で重要なことは上述のように、測定光である導波路を導波する光と作用する金微粒子の数を増やすことであり、そのために、導波光によるエバネッセント波の染み出す領域に、より多くの金微粒子を存在させることが重要である。そのために、マイナス電荷によって分散している金微粒子を光導波路のセンシング領域上に静電的に吸着させている。
【0029】
なお、本発明の一実施形態では、プローブDNAを固定するために用いる材料として金微粒子を用いているが、これに限らず、例えば、酸化シリコン(SiO)等、DNAを固定可能であり、一方の符号の電荷を有する官能基に取り囲まれる等して、上記符号の電荷で帯電して溶液中で分散される材料であればいずれの材料であっても良い。このような材料としては、コロイド溶液の際の色と、凝集した時の色とが異なる材料であることが好ましい。
【0030】
(第1の実施形態)
図3(a)は、本実施形態に係る光導波路型DNAセンサの側面図であり、図3(b)は、図3(a)に示した光導波路型DNAセンサの上面図である。
図3において、ガラス基板31の一方の面には、カリウムイオン交換ガラス光導波路(硝酸カリウム溶融塩中400℃、1hイオン交換)32が、厚さ約2ミクロンで形成されている。光導波路32は、シングルモード導波路である。ガラス基板31の、光導波路32が形成された面と対向する面には、光吸収層33が形成されている。光導波路32の所定の領域には、有機EL材料であるAlq3 34が形成されている。Alq3 34を覆うようにしてCytop35が形成されており、該Cytop35上にはカバーガラス36が配置されている。
【0031】
光導波路32上の、図3(b)の矢印方向Dに向かって、Cytop35やカバーガラス36から所定の距離だけ離間して、プリズム37が配置されている。このプリズム37と光導波路32との間には、インデックスマッチングオイル(不図示)が配置されており、光導波路32を導波する光はプリズム37へと入射される。光導波路32上の、Cytop35やカバーガラス36とプリズム37との間の領域であって、導波光Sが導波する領域上に、金コロイド溶液を付与するための領域であるセンシング領域38が形成されている。このセンシング領域38は、テフロン(登録商標)シートなどから形成することができ、上記センシング領域38上に、金コロイド溶液が付与され、また、DNA検体も付与される。すなわち、導波光Sが横切るようにセンシング領域38が形成されている。
【0032】
また、Alq3 34に光を入射するように、紫外線照射用のLED39が配置されている。このLED39からは、波長365nmの紫外線が照射される。
【0033】
プリズム37からの出射光を受光するようにフィルタ40および光センサ41が配置されている。また、ガラス基板31の、光吸収層33が形成されていない領域から出射される光を受光するように、フィルタ42および光センサ43が形成されている。
【0034】
ところで、本実施形態において、金微粒子の吸収スペクトルに対応するために、有機EL材料であるAlq3を用いている。Alq3の発光波長領域は、500~600nmの幅広い波長領域である。よって、金微粒子の吸収スペクトルとAlq3の発光スペクトルとがほぼ重なっている、すなわち、Alq3の発光波長領域が金微粒子の吸収ピークの波長に対応しているため、感度の高い検出が可能となる。
【0035】
よって、本実施形態のように構成し、LED39から紫外線(波長=365nm)をAlq3 34に照射して、Alq3 34にてフォトルミネッセンス光を生成する。この生成されたフォトルミネッセンス光のうち、所定の光が光導波路32に結合し、導波光Sとなる。このようにして、シングルモード導波路である光導波路32中を、スペクトル幅の広い導波光Sが導波することになる。この導波光Sは、プリズム37から出射され、該プリズムから出射された出射光Uは、フィルタ40を介して光センサ41に入射する。また、上記生成されたフォトルミネッセンス光のうち光Tは、ガラス基板31の、光吸収層33が形成されていない領域から外に出射され、後述する、フィルタ42を介して、光センサ43に入射する。
【0036】
次に、本実施形態に係る光導波路型DNAセンサの作製方法を説明する。
市販のスライドガラスを超音波洗浄により洗浄し、十分にリンスした後、400℃の硝酸カリウム溶液塩中に40分間浸す。このようにして、ガラス基板31上に形成されたカリウムイオン交換光導波路32を作製する。次いで、光導波路32の所定の領域に真空蒸着法によりAlq3 34の薄膜を作製し、該作製されたAlq3 34を覆うようにCytop35を形成し、カバーグラス36を配置する。次いで、センシングエリア38をテフロン(登録商標)シートにより形成し、光導波路32の所定の領域にインデックスマッチングオイルを塗布して、該インデックスマッチングオイル上にプリズム37を配置する。
【0037】
さて、金コロイド溶液では、マイナスの電荷を持つCOO基が金微粒子を取り囲むことによって微粒子間に電気的な反発力が働く。よって、金コロイド溶液は、粒子同士が凝集せずに分散している。そのため、基板表面にプラスの電荷を持ちえるNH基を導入すれば、静電的に基板上に金微粒子を吸着することができる。
【0038】
よって、本実施形態では、光導波路のセンシング領域38にシランカップリング処理を行うことで、光導波路基板にNH基を導入している。すなわち、図3に示した構成のセンサを用意し、金コロイド溶液中の金微粒子を取り囲む官能基の有する電荷と反対の電荷を、センシング領域38に導入する処理を行う。
【0039】
次いで、金コロイド溶液(濃度74ppm、粒子径16.5nm)をセンシング領域38に滴下する。センシング領域38表面にはシランカップリング処理により、NH基が導入されているので、上記滴下された金コロイド溶液中の金微粒子は、センシング領域38の表面に電気的に吸着することによって固定化される。
【0040】
次いで、Au-プローブDNA、および0.5MのNaCl溶液とターゲットDNAとを金微粒子が静電的に吸着しているセンシング領域38に滴下する。このようにして、本実施形態に係る光導波路型DNAセンサが作製される。なお、本実施形態では、金微粒子とDNAの結合には、Au-S結合を利用している。
【0041】
上記滴下されたターゲットDNAが、プローブDNAとフルマッチのときは、プローブDNAとターゲットDNAとはハイブリダイゼーション反応するはずである。つまり、ターゲットDNAがプローブDNAとフルマッチなのか、ミスマッチなのかに応じて、金微粒子に固定されたDNAの電荷の状態が異なり、光導波路への固定化に差が生じると考えられる。
【0042】
よって、本実施形態では、ターゲットDNAがプローブDNAとフルマッチなのか、ミスマッチなのかに応じて、DNAが固定された金微粒子の光導波路のセンシング領域への固定を制御するために、センシング領域にシランカップリング処理を行う等して、プラス電荷の導入を行っている。
【0043】
次に、本実施形態に係るDNA検出方法について説明する。
まず、図3において、プラス電荷が導入されたセンシング領域38に、金コロイド溶液と、プローブDNAと、ターゲットDNAとをそれぞれ付与する。次いで、Alq3 34に対して、LED39から紫外線を照射して、フォトルミネッセンス光を発生させる。このフォトルミネッセンス光の発光スペクトルは、波長帯域500nm~600nmにピークがあり、金微粒子の吸収ピークとほぼ重なっている。発生したフォトルミネッセンス光の一部は導波光Sとして、光導波路32に結合し、また、他の一部は、光Tとしてセンサから出射して、フィルタ42を介して光センサ43に入射する。
【0044】
上記導波光Sは、全反射しながら光導波路32を導波するので、エバネッセント波が発生する。このとき、プローブDNAとターゲットDNAとがミスマッチのときは、センシング領域の表面に1本鎖のDNAが固定された(プローブDNAが固定された)金微粒子が静電的に吸着している(固定されている)ので、上記エバネッセント波がその範囲内に存在する金微粒子に作用して、およそ波長530nmの光が吸収される。よって、プリズム37から出射し、フィルタ40を介して光センサ41にて受光された光を解析すると、吸収ピークであるおよそ波長530nmの光強度が時間と共に弱まる。この様子を図4に示す。
【0045】
図4において、スペクトル(a)は、固定化(吸着)が起こる前の光センサ41にて受光した光の透過スペクトル、すなわち、金コロイド溶液、プローブDNA、およびターゲットDNAをセンシング領域38に付与する前の透過スペクトルである。スペクトル(b)は、金コロイド溶液、プローブDNA、およびターゲットDNAをセンシング領域38に付与(固定後(吸着後)とも呼ぶ)してから10分後の光センサ41にて受光した光の透過スペクトルであり、スペクトル(c)は、固定後(吸着後)から20分後の光センサ41にて受光した光の透過スペクトルであり、スペクトル(d)は、固定後(吸着後)から30分後の光センサ41にて受光した光の透過スペクトルである。図4から分るように、時間の経過と共に、透過スペクトルの、およそ530nm付近の光強度が弱まっているので、該波長帯域の光が吸収されていることが分かる。すなわち、センシング領域38の表面に金微粒子が固定されていることが分る。
【0046】
一方、プローブDNAとターゲットDNAとがフルマッチのときは、金微粒子には2本鎖のDNAが固定されることになり、金微粒子はセンシング領域38に固定(吸着)されない。よって、固定後の経過時間に依らず、光センサ41にて受光した光の透過スペクトルはほとんど変化しない。この様子を図5に示す。
【0047】
図5において、スペクトル(a)は、固定化(吸着)が起こる前の光センサ41にて受光した光の透過スペクトルである。スペクトル(b)は、固定後(吸着後)から10分後の光センサ41にて受光した光の透過スペクトルであり、スペクトル(c)は、固定後(吸着後)から20分後の光センサ41にて受光した光の透過スペクトルであり、スペクトル(d)は、固定後(吸着後)から30分後の光センサ41にて受光した光の透過スペクトルである。図5から分るように、時間が経過しても、透過スペクトルの、およそ530nm付近の光強度にほとんど変化は見られないので、該波長帯域の光がほとんど吸収されていないことが分る。すなわち、センシング領域38の表面に金微粒子が固定されてないことが分る。
【0048】
本実施形態の構成において、フルマッチ時には金微粒子がプラス電荷を導入した光導波路表面に固定されず、ミスマッチ時に金微粒子が上記光導波路表面に固定されることを確認するため、以下のようにして吸収スペクトルを測定した。
【0049】
上述した方法により、同一の作製条件で3枚の光導波路基板を用意した。そのうちの第1の光導波路基板を2つに切断し、切断された一方の光導波路基板には、フルマッチになるように金コロイド溶液、プローブDNA、ターゲットDNAを付与し、他方の光導波路基板には、ミスマッチになるように金コロイド溶液、プローブDNA、ターゲットDNAを付与し、フルマッチの光導波路基板およびミスマッチの光導波路基板のそれぞれについて、該付与後(固定後)10分後に上記付与が行われた領域を通過させた光の吸収スペクトルを測定した。この吸収スペクトルを、図6および7に示す。
【0050】
これと同様にして、第2の光導波路基板についても2つに切断し、一方をフルマッチの基板、他方をミスマッチの基板として、固定後20分後の吸収スペクトルを測定した。第3の光導波路基板についても上述と同様にして2つに切断し、一方をフルマッチの基板、他方をミスマッチの基板として、固定後30分後の吸収スペクトルを測定した。これらの吸収スペクトルも図6および7に示す。
【0051】
図6から分るように、フルマッチの場合は、固定後からの経過時間に依らず、およそ530nmにある金微粒子の吸収ピークは見られなかった。よって、金微粒子による光の吸収はほとんど起こっていないことが分る。従って、光導波路基板を導波する光によるエバネッセント波の範囲内にはほとんど金微粒子が存在していない、すなわち、金微粒子はほとんど固定されていないことが分る。
【0052】
また、図7から分るように、ミスマッチの場合は、いずれの経過時間においても、金微粒子の吸収ピークと一致する、およそ530nmに吸収ピークが見られた。よって、金微粒子による光の吸収が起こっていることが分かる。従って、光導波路基板を導波する光によるエバネッセント波の範囲内に金微粒子が多数存在している、すなわち、金微粒子は光導波路基板表面に固定されていることが分かる。
【0053】
さて、検出方法の説明に戻ると、導波光Sは、光導波路32を通過してセンシング領域38において金微粒子が固定(静電的に吸着)されている場合は該金微粒子に作用して、プリズム37から出射されて出射光Uとなる。該出射光Uは、フィルタ40を介して光センサ41に入射する。
【0054】
光センサ43にて受光した光から得られる透過スペクトルはリファレンスとして機能するので、光センサ41にて受光した光から得られる透過スペクトルとの比を取ることによって、計算された透過スペクトルを取得する。この透過スペクトルを見て、およそ530nmのピークが時間の経過と共に減少する場合は、ミスマッチと判断し、減少せずにほとんど変化しない場合はフルマッチと判断する。このようにして、DNAの検出を行う。
【0055】
なお、本実施形態では、所定の波長帯域を有する光を光導波路に入射するためにAlq3 34やLED39を用いているが、これに限定されず、所定の波長帯域を有する光を光導波路に入射できればいずれの手段を用いても良い。例えば、光導波路32の所定の領域にプリズム37と対向するように第2のプリズムを配置し、該プリズムを介して光を光導波路32に入射するようにしても良い。また、所定の波長帯域の光が導波している光ファイバや光導波路の一方端を、光導波路32のプリズム37と対向する側の端面にバットジョイント法などにより接続して、上記光を光導波路32に入射するようにしても良い。
【0056】
また、本実施形態では、ミスマッチ時の、光導波路に吸着した金微粒子に固定されたDNAによるにエバネッセント波の吸収の影響を、測定する光に反映して、透過スペクトルや吸収スペクトルを変化できれば良い。よって、本実施形態では、金微粒子の吸収波長帯域と一致するような波長帯域を有する光を生成するためにAlq3を用いているが、上記一致が起こらなくても、上述のエバネッセント波の吸収の影響を測定光に反映できれば良い。導波光Sの波長帯域が金微粒子の吸収波長帯域と少なくとも一部で重なっていれば、上述のエバネッセント波の吸収の影響を測定光に反映できるので、本実施形態では、このような波長帯域の光を光導波路に導波できれば良い。
【0057】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、出射光Uから得られる透過スペクトルを測定してDNAセンシングを行っているが、本実施形態では、出射光Uから屈折率変化を測定してDNAセンシングを行う。この場合は、光センサ41を屈折率測定用のセンサとする。また、屈折率は温度によって変動するので、図3に示した光導波路型DNAセンサをホットプレート等の温調の上に配置し、センシング領域38の温度を一定に保つことが好ましい。
【0058】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、金コロイド溶液を用いているので、光導波路の表面にプラスの電荷を導入している。しかしながら、本発明では、光導波路の表面にプラスの電荷を導入することが本質ではない。本発明では、金コロイド溶液などの、DNAを固定するための材料が分散された溶液において、上記材料を光導波路の表面に静電的に吸着させることが本質である。よって、上記材料に帯電した電荷の符号と反対の符号の電荷を光導波路に導入することが重要である。例えば、上記材料が一方の符号の電荷を有する官能基によって取り囲まれている場合は、他方の符号の電荷を光導波路に導入するのである。よって、上記材料がプラスの電荷を有する官能基によって囲まれている場合は、光導波路の表面にマイナスの電荷を導入すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来の、金コロイド溶液を用いたDAN検出法を説明するための図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る金微粒子が静電的に光導波路に吸着する様子を示す図であり、(b)は、金微粒子が静電的に光導波路に吸着せずに、コロイド溶液中を分散している様子を示す図である。
【図3】(a)は、本実施形態に係る光導波路型DNAセンサの側面図であり、(b)は、(a)に示した光導波路型DNAセンサの上面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、プローブDNAとターゲットDNAとがミスマッチした際の、透過スペクトルの経時変化を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、プローブDNAとターゲットDNAとがフルマッチした際の、透過スペクトルの経時変化を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る、フルマッチ時の、吸収スペクトルの経時変化を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る、ミスマッチ時の、吸収スペクトルの経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
21 光導波路
22 金コロイド溶液
23 金微粒子
31 ガラス基板
32 カリウムイオン交換ガラス光導波路
33 光吸収層
34 Alq3
35 Cytop
36 カバーガラス
37 プリズム
38 センシング領域
39 LED
40,42 フィルタ
41、43 光センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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