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明細書 :過熱水蒸気発生装置及び過熱水蒸気発生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4923258号 (P4923258)
公開番号 特開2007-248042 (P2007-248042A)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年4月25日(2012.4.25)
公開日 平成19年9月27日(2007.9.27)
発明の名称または考案の名称 過熱水蒸気発生装置及び過熱水蒸気発生方法
国際特許分類 F22B   1/28        (2006.01)
F22G   3/00        (2006.01)
FI F22B 1/28 Z
F22G 3/00 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 19
出願番号 特願2007-015920 (P2007-015920)
出願日 平成19年1月26日(2007.1.26)
優先権出願番号 2006037299
優先日 平成18年2月14日(2006.2.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年4月21日(2009.4.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】奥山邦人
【氏名】森昌司
個別代理人の代理人 【識別番号】100094835、【弁理士】、【氏名又は名称】島添 芳彦
審査官 【審査官】黒石 孝志
参考文献・文献 特開昭56-049164(JP,A)
特開2004-286265(JP,A)
特開昭61-173025(JP,A)
国際公開第2005/049185(WO,A1)
調査した分野 F22B 1/28
F22G 1/16
F22G 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも部分的に水に接した多孔質体と、多孔質体の毛細管現象によって供給された水を加熱して水蒸気を発生させる発熱体とを備えた水蒸気発生装置において、
前記多孔質体内に形成され、該多孔質体の外側の領域から分離した中空部と、
前記中空部に生成した過熱水蒸気を該中空部から装置外に送出する過熱水蒸気送出手段とを有し、
前記多孔質体の細孔の出口部は、前記中空部の内壁面に位置し、
前記発熱体は、間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように配置されており、
前記細孔内の水を気化し且つ過熱するための乾燥域が、前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成され、
前記発熱体は、該発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内水蒸気を過熱して前記中空部に過熱水蒸気を生成することを特徴とする過熱水蒸気発生装置。
【請求項2】
前記過熱水蒸気を更に加熱する水蒸気加熱装置を更に有し、水蒸気加熱装置は、前記水蒸気送出手段を介して前記中空部と連通することを特徴とする請求項1に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項3】
前記乾燥域は、前記内壁面の局部加熱によって形成された乾燥帯域からなり、湿潤な内壁面帯域が、前記乾燥帯域の間に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項4】
前記内壁面と前記発熱体との接触部分の熱流束は、1MW/m2以上に設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項5】
前記中空部は、円形断面を有し、前記発熱体は、前記中空部の内周面に接し又は近接し且つ軸芯を該中空部の軸線方向に配向したコイル状電熱体からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の過熱水蒸気発生装置。
【請求項6】
少なくとも部分的に水に接した多孔質体の毛細管現象によって水を発熱体に供給し、該発熱体の熱によって水蒸気を発生させる水蒸気発生方法において、
前記多孔質体の外側の領域から分離した中空部を該多孔質体内に形成し、
間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように前記発熱体を配置し
前記細孔内の水を気化し且つ過熱するための乾燥域を前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成し、
前記発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内水蒸気を過熱して前記中空部に過熱水蒸気を生成し、
該過熱水蒸気を過熱水蒸気送出手段によって前記中空部から装置外に送出することを特徴とする過熱水蒸気発生方法。
【請求項7】
前記中空部に生成した過熱水蒸気を更に加熱し、高温の過熱水蒸気を生成することを特徴とする請求項6に記載の過熱水蒸気発生方法。
【請求項8】
前記乾燥域は、前記内壁面の局部加熱によって形成された乾燥帯域からなり、湿潤な内壁面帯域前記乾燥帯域の間に形成されることを特徴とする請求項6に記載の過熱水蒸気発生方法。
【請求項9】
前記内壁面と前記発熱体との接触部分の熱流束を1MW/m2以上に設定することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の過熱水蒸気発生方法。
【請求項10】
前記発熱体の発熱開始後、1分以内に200℃以上の温度の過熱水蒸気を前記中空部に生成することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の過熱水蒸気発生方法。
【請求項11】
少なくとも部分的に液体に接した多孔質体と、多孔質体の毛細管現象によって供給された前記液体を加熱して蒸気を発生させる発熱体とを備えた蒸気発生装置において、
前記多孔質体内に形成され、該多孔質体の外側の領域から分離した中空部と、
前記中空部に生成した過熱蒸気を該中空部から装置外に送出する過熱蒸気送出手段とを有し、
前記多孔質体の細孔の出口部は、前記中空部の内壁面に位置し、
前記発熱体は、間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように配置されており、
前記細孔内の液体を気化し且つ過熱するための乾燥域が、前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成され、
前記発熱体は、該発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内蒸気を過熱して前記中空部に過熱蒸気を生成することを特徴とする過熱蒸気発生装置。
【請求項12】
前記乾燥域は、前記内壁面の局部加熱によって形成された乾燥帯域からなり、湿潤な内壁面帯域が、前記乾燥帯域の間に形成されることを特徴とする請求項11に記載の過熱蒸気発生装置
【請求項13】
少なくとも部分的に液体に接した多孔質体の毛細管現象によって前記液体を発熱体に供給し、該発熱体の熱によって蒸気を発生させる蒸気発生方法において、
前記多孔質体の外側の領域から分離した中空部を該多孔質体内に形成し、
間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように前記発熱体を配置し、
前記細孔内の液体を気化し且つ過熱するための乾燥域を前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成し、
前記発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内蒸気を過熱して前記中空部に過熱蒸気を生成し、
該過熱蒸気を過熱蒸気送出手段によって前記中空部から装置外に送出することを特徴とする過熱蒸気発生方法。
【請求項14】
前記乾燥域は、前記内壁面の局部加熱によって形成された乾燥帯域からなり、湿潤な内壁面帯域が前記乾燥帯域の間に形成されることを特徴とする請求項13に記載の過熱蒸気発生方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気発生装置及び過熱水蒸気発生方法に関するものであり、より詳細には、多孔質体の毛管給水作用と発熱体の加熱作用とを用いて極めて短時間に過熱水蒸気を発生させることができる過熱水蒸気の発生装置及び発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飽和水蒸気温度以上に加熱された過熱水蒸気が各種プラントのプロセスにおいて工業的に使用され、或いは、木材、食品等の乾燥、加工、殺菌等の用途に使用されている。近年、このような過熱水蒸気を利用した家庭用調理器等が市場に普及しつつあり、過熱水蒸気の用途は、近年殊に拡大している。この種の家庭用調理器等では、水槽内の水に電熱ヒータを浸漬して水槽の水を加熱し、水の気化によって発生した水蒸気を再加熱することによって過熱水蒸気を発生させている。例えば、特開2004-186103公報(特許文献1)には、水蒸気生成ヒータ及び水蒸気加熱ヒータを備えた調理器用の水蒸気発生装置が開示されている。この方式の装置では、水を気化して水蒸気を生成する水蒸気発生工程と、水蒸気を加熱する水蒸気加熱工程とからなる二段階の工程を段階的に実行する比較的複雑な装置構成が採用される。しかし、このような方法で過熱水蒸気を発生させる場合、装置構造が大型化するとともに、装置の起動から水蒸気発生までの予工程にかなりの時間が必要となるという問題が生じる。このため、簡易な装置又は方法で迅速に過熱水蒸気を発生させることができる装置の開発が要望されている。
【0003】
特開平9-273755号公報(特許文献2)には、マイクロ波透過性及び吸水性を有する多孔質体をマイクロ波加熱手段によって加熱し、多孔質体に供給された水を加熱して過熱水蒸気を発生させるように構成された水蒸気発生装置が記載されている。同様に、特開2001-267061号公報(特許文献3)及び特開2001-254952号公報(特許文献4)には、マイクロ波加熱手段及び多孔質体を用いた水蒸気発生装置が開示されている。この方式の装置は、マイクロ波加熱装置を含む比較的複雑な装置構成を要する。
【0004】
多孔質体及び発熱体を用いた水蒸気発生装置として、電熱ヒータ等の発熱体を埋め込んだ多孔質体を部分的に液浴に浸漬してなる水蒸気発生装置が知られている(特開昭50-14901号公報(特許文献5))。この方式の水蒸気発生装置の構造が、図13に概略的に示されている。図13に示す如く、液浴Wの水は、多孔質体101の細孔に吸い上げられ、発熱体102によって加熱され、多孔質体101の外側面から流出する。他の構造の水蒸気発生装置として、伝熱効率を改善する多孔質の溶射被覆層を気化器内面及び発熱体表面に形成し、効率的に水蒸気を発生させるように構成した水蒸気発生装置(特開昭56-49163号公報(特許文献6))、或いは、電極間に配置された多孔質体に水を供給し、多孔質内の水の導電性又はジュール効果によって水を気化させるように構成された水蒸気発生装置(特開昭53-109001号公報(特許文献7))が知られている。
【0005】
多孔質体を用いた同様な構造の水蒸気発生装置として、宇宙等の無重力空間において未蒸発ミストの発生を防止すべく、定量ポンプを用いて多孔質体に液を供給し、多孔質体中空部の内壁面に漏出した液を伝熱管の発熱によって蒸発させるように構成されたものが特開昭61-243201号公報(特許文献8)に記載されている。

【特許文献1】特開2004-186103公報
【特許文献2】特開平9-273755号公報
【特許文献3】特開2001-267061号公報
【特許文献4】特開2001-254952号公報
【特許文献5】特開昭50-14901号公報
【特許文献6】特開昭56-49163号公報
【特許文献7】特開昭53-109001号公報
【特許文献8】特開昭61-243201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発熱体を被覆し又は発熱体を埋込んだ多孔質体の外側面から水蒸気を発生させるように構成した従来の水蒸気発生装置(特許文献5及び6)では、保水状態の多孔質体を全体的に加熱しなければならない。保水状態の多孔質体は、大きな熱容量を有するので、発熱体の加熱開始から水蒸気発生までに、かなりの時間が必要となる。仮に、短時間に水蒸気を発生させるために多孔質体の容積を低減し、薄い多孔質体で発熱体を被覆するように設計することも考慮し得るが、このような設計を採用した場合、液浴から水を吸い上げる多孔質体の機能(即ち、発熱体に対する液体の供給量)が極端に低下するので、水蒸気発生量は、大きく低下してしまう。
【0007】
また、気化すべき水は、毛細管現象によって多孔質体内を発熱体に向かって径方向内方に流動するのに対し、加熱面に発生した水蒸気は、気化による急激な体積増大を伴って水と逆の方向、即ち、加熱面から径方向外方に流動する。即ち、水蒸気は、水と逆行し、加熱面に対する水の供給は、妨げられる。この結果、水蒸気生成量の増大または水蒸気温度の上昇のために発熱体の発熱量を増大させると、発熱体廻りの多孔質体部分が過乾燥し、或いは、発熱体を構成する電熱ヒータが過熱し又は焼き切れるといった問題が生じる。
【0008】
他方、多孔質体内の水に直に通電し、水の発熱によって水を気化させるように構成した従来の水蒸気発生装置(特許文献7)においては、ポンプ等の圧送装置によって水を多孔質体内に圧入する必要が生じる。また、この構成の装置では、多孔質体内の多量の水を全体的又は一律に蒸発させる必要が生じるので、高い電圧を多孔質体内の水に印加しなければならない。このため、高電圧の電力供給が必要となり、これは、装置使用上の安全性の観点からも望ましくない。
【0009】
これに対し、上記特許文献8の水蒸気発生装置は、定量ポンプによって水を供給する構成を備えるものの、この水蒸気発生装置によれば、水の流動は、水蒸気の挙動によって妨げられず、多孔質体の過乾燥の問題も回避し得ると考えられ、従って、特許文献8の水蒸気発生装置は、この意味において優れた構成を備える。しかしながら、特許文献8の水蒸気発生装置では、多孔質体は、液を多孔質体に保持し、未蒸発ミストが中空部に飛散するのを防止する手段として主に使用されたものにすぎず、液は、多孔質体中空部の内壁面に漏出してからヒータ外面に伝熱接触し、蒸発する。このため、特許文献8の装置では、表面積を大きく設定した二重管構造のシースヒータが用いられる。しかしながら、シースヒータの表面平均熱流束は、40~90kW/m2程度であるにすぎず、伝熱面の熱流束は小さい。このような構成では、飽和水蒸気を生成し得たとしても、過熱水蒸気を生成することはできない。
【0010】
仮に、特許文献8の装置において、ヒータ発熱量を増大したとしても、供給された熱の多くは、水蒸気発生量を増大するのに消費されてしまい、発生する水蒸気量が増大するにすぎず、発熱体の熱は、水蒸気温度の上昇に所望の如く寄与し難い。即ち、特許文献8の水蒸気発生装置は、過熱水蒸気の生成を意図したものではなく、過熱水蒸気の生成の可能性については、開示も示唆もしていない。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複雑な装置構成を採用することなく、迅速に過熱水蒸気を発生させることができ、しかも、制御性及び応答性に優れた過熱水蒸気の発生装置及び発生方法を提供することにある。
【0012】
本発明は又、液浴から水を吸い上げる多孔質体の機能を損なわずに加熱開始から過熱水蒸気発生までの時間を短縮し、多孔質体及び発熱体の過乾燥又は過熱を防止することができる過熱水蒸気の発生装置及び発生方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は更に、圧送装置を要することなく、水蒸気発生面に水を円滑に供給し、しかも、比較的低電圧の電力を供給することによって迅速に過熱水蒸気を発生させることができる過熱水蒸気の発生装置及び発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成すべく、少なくとも部分的に水に接した多孔質体と、多孔質体の毛細管現象によって供給された水を加熱して水蒸気を発生させる発熱体とを備えた水蒸気発生装置において、
前記多孔質体内に形成され、該多孔質体の外側の領域から分離した中空部と、
前記中空部に生成した過熱水蒸気を該中空部から装置外に送出する過熱水蒸気送出手段とを有し、
前記多孔質体の細孔の出口部は、前記中空部の内壁面に位置し、
前記発熱体は、間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように配置されており、
前記細孔内の水を気化し且つ過熱するための乾燥域が、前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成され、
前記発熱体は、該発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内水蒸気を過熱して前記中空部に過熱水蒸気を生成することを特徴とする過熱水蒸気発生装置を提供する。
【0015】
本発明は又、少なくとも部分的に水に接した多孔質体の毛細管現象によって水を発熱体に供給し、該発熱体の熱によって水蒸気を発生させる水蒸気発生方法において、
前記多孔質体の外側の領域から分離した中空部を該多孔質体内に形成し、
間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように前記発熱体を配置し
前記細孔内の水を気化し且つ過熱するための乾燥域を前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成し、
前記発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内水蒸気を過熱して前記中空部に過熱水蒸気を生成し、
該過熱水蒸気を過熱水蒸気送出手段によって前記中空部から装置外に送出することを特徴とする過熱水蒸気発生方法を提供する。
【0016】
本発明の上記構成によれば、液浴の水は、毛細管現象によって中空部内壁面の出口部に供給される。出口部から発生した水蒸気は、水蒸気送出手段によって中空部内の領域から装置外に送出される。水蒸気の流動領域と、供給水の流動領域とは分離し、水蒸気は、水の供給を妨げない。
【0017】
また、発熱体の熱は、出口部に形成されたメニスカス部の水に作用する。メニスカス部の薄い水膜は、熱容量が小さい微小量の水であることから、比較的低電圧の電力を発熱体に供給することにより、発熱体の熱によって水を急激に蒸発させることができる。しかも、水は、細孔内で気化するので、水蒸気は、細孔出口部に近接した発熱体によって直ちに過熱される。過熱水蒸気は、発熱開始後数十秒~数分以内に中空部に生成し、発熱停止後速やかに消失する。
【0018】
更に、液浴の水は、多孔質体の毛細管現象により、蒸発速度に相応して供給されるので、水蒸気は、中空部内壁面から連続的に発生する。多孔質体及び発熱体の接触部又はその近傍には、常に水が供給されるので、多孔質体及び発熱体の過乾燥又は過熱を防止することができる。しかも、多孔質体に熱伝導する発熱体の熱は、出口部に向かって流動する水の予熱に有効利用されるので、多孔質体の外側面から系外に散逸する熱量は、低減する。
【0019】
好ましくは、上記乾燥域は、発熱体の熱によって発熱体近傍の内壁面に形成された乾燥帯域からなり、湿潤な内壁面帯域が乾燥帯域の間に形成される。更に好ましくは、中空部内壁面と発熱体との接触部分の熱流束は、1MW/m2以上に設定され、或いは、発熱体全表面の平均熱流束値は、200kW/m2以上に設定される。これにより、細孔内の水を瞬時に気化し、200℃以上の過熱水蒸気を発熱開始後1分以内に中空部に確実に生成することができる。所望により、発熱開始後30秒以内に、300℃以上の過熱水蒸気を中空部に生成することも可能である。
【0020】
他の観点より、本発明は、少なくとも部分的に液体に接した多孔質体と、多孔質体の毛細管現象によって供給された前記液体を加熱して蒸気を発生させる発熱体とを備えた蒸気発生装置において、
前記多孔質体内に形成され、該多孔質体の外側の領域から分離した中空部と、
前記中空部に生成した過熱蒸気を該中空部から装置外に送出する過熱蒸気送出手段とを有し、
前記多孔質体の細孔の出口部は、前記中空部の内壁面に位置し、
前記発熱体は、間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように配置されており、
前記細孔内の液体を気化し且つ過熱するための乾燥域が、前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成され、
前記発熱体は、該発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内蒸気を過熱して前記中空部に過熱蒸気を生成することを特徴とする過熱蒸気発生装置を提供する。
【0021】
本発明は又、少なくとも部分的に液体に接した多孔質体の毛細管現象によって前記液体を発熱体に供給し、該発熱体の熱によって蒸気を発生させる蒸気発生方法において、
前記多孔質体の外側の領域から分離した中空部を該多孔質体内に形成し、
間隔を隔てて前記中空部の内壁面に接触し又は近接し且つ該内壁面に沿って延びるように前記発熱体を配置し、
前記細孔内の液体を気化し且つ過熱するための乾燥域を前記発熱体の発熱によって前記内壁面に間隔を隔てて形成し、
前記発熱体と前記多孔質体との間の熱伝導と、該発熱体の輻射熱とによって、表面が乾燥した前記乾燥域の細孔内蒸気を過熱して前記中空部に過熱蒸気を生成し、
該過熱蒸気を過熱蒸気送出手段によって前記中空部から装置外に送出することを特徴とする過熱蒸気発生方法を提供する。
【0022】
本発明は、水蒸気の生成のみならず、多孔質体の毛細管現象によって吸い上げ可能な液の蒸発に適用することができる。使用可能な液体として、各種液体燃料が挙げられる。本発明の過熱蒸気発生装置又は過熱蒸気発生方法によれば、液浴の液は、毛細管現象によって中空部内壁面の出口部に供給され、出口部で気化して生成した燃料の過熱蒸気は、過熱蒸気送出手段によって中空部内の領域から装置外に送出される。蒸気の流動領域と、供給液の流動領域とは分離するので、蒸気は、液の供給を妨げない。また、液は、細孔内で気化するので、蒸気は、細孔出口部に近接した発熱体によって過熱される。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、複雑な装置構成を採用することなく、迅速に過熱水蒸気を発生させることができ、しかも、制御性及び応答性に優れた過熱水蒸気の発生装置及び発生方法を提供する。
【0024】
本発明の過熱水蒸気発生装置及び過熱水蒸気発生方法によれば、液浴から水を吸い上げる多孔質体の機能を損なわずに加熱開始から過熱水蒸気発生までの時間を短縮し、多孔質体及び発熱体の過乾燥又は過熱を防止することができる。
【0025】
また、本発明の過熱水蒸気発生装置及び過熱水蒸気発生方法によれば、圧送装置を要することなく、水蒸気発生面に水を円滑に供給するとともに、比較的低電圧の供給によって過熱水蒸気を発生させることができる。
【0026】
更に、本発明は、液浴から液を吸い上げる多孔質体の機能を損なわずに発熱体の熱で効果的に過熱蒸気を発生させることができる過熱蒸気発生装置及び過熱蒸気発生方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の好適な実施形態において、上記過熱水蒸気発生装置(以下、単に「水蒸気発生装置」という。)は、上記中空部に生成した過熱水蒸気を更に加熱する水蒸気加熱装置を更に有し、水蒸気加熱装置は、水蒸気送出手段を介して多孔質体の中空部と連通する。中空部に発生した過熱水蒸気は、加熱装置によって更に高温に加熱される。加熱装置によって加熱した水蒸気は、高温の過熱水蒸気として系外の装置等に供給される。好ましくは、液浴に水を供給するための給水系には、水質浄化装置が介装される。水質浄化装置は、例えば、給水に含まれるカルシウム等の硬度成分を吸着するイオン交換樹脂のフィルタを内蔵する。
【0028】
発熱体は、例えば、中空部の内壁面に密着したニクロム線又はカンタル線からなる。発熱体は、所望により、赤熱する程度に加熱される。このように加熱した場合であっても、発熱体の輻射熱は、含水状態の多孔質体に吸熱されるので、放熱による熱損失は極めて小さく、従って、所望の熱効率が得られる。
【0029】
好ましくは、上記中空部は、円形断面を有し、上記発熱体は、中空部の内周面に接し又は近接し且つ軸芯を中空部の軸線方向に配向したコイル状電熱体からなる。コイル状電熱体は、加熱時に径方向に熱膨張し、中空部の内周面を押圧するので、接触熱抵抗は低下し、更に効率的に過熱水蒸気又は過熱蒸気を中空部に発生させる。このような装置構造は、電熱体の熱膨張によって多孔質体と電熱体とが離間し、接触熱抵抗が増大する構造(例えば、多孔質体の外周に電熱体を配置した構造)と比べ、熱効率の観点より極めて有利である。所望により、複数の中空部を多孔質体に形成し、各中空部に発熱体を内装しても良い。
【0030】
多孔質体の細孔径、有効熱伝導率、材質、中空部断面寸法等は、水蒸気加熱装置又は蒸気加熱装置の使用目的、液体の物性、水蒸気又は蒸気の物性等に相応して適宜設定される。例えば、多孔質体の細孔径を小径に設定した場合、毛管力及び蒸発界面積を増大し得るが、反面、液体の流動抵抗が増大する。従って、多孔質体の細孔径には、使用目的等に相応した最適値があると考えられる。また、有効熱伝導率が小さい多孔質体を用いた場合、多孔質体内の温度勾配が増大して中空部内壁面の表面温度が上昇するので、水蒸気又は蒸気は、効率的に蒸発界面から発生する。しかしながら、実際には、多孔質体の素材の耐熱性、熱変形等の要因をも考慮する必要があるので、各種の要因を考慮した上で最適な有効熱伝導率の多孔質体を選択すべき必要があると考えられる。
【0031】
また、多孔質体の寸法、殊に、多孔質体の高さは、液浴の液を多孔質体固有の毛管力によって中空部の内周壁面全域に供給し得るように設定することが望ましい。
【0032】
本発明の好適な実施形態によれば、水蒸気発生装置又は蒸気発生装置は、発熱体に通電するための電力供給装置を更に備える。更に好適には、電力供給装置は、発熱体に通電すべき電力の電圧値又は電流値を制御して発熱体の発熱量を制御する発熱体制御手段を有する。本発明の水蒸気発生装置又は蒸気発生装置においては、発熱体の発熱量を制御することによって水又は液体の蒸発速度を変化させることができるので、発熱体制御手段は、水又は液体の蒸発速度を可変制御することができる。従って、このような構成によれば、水又は蒸気の蒸発速度を発熱体の発熱量に応じて任意に設定することができ、これにより、例えば、次工程に供給される過熱水蒸気又は過熱蒸気の流量制御等を実行することが可能となる。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明を適用した水蒸気発生装置の実施例を概略的に示す斜視図であり、図2及び図3は、図1に示す水蒸気発生装置の縦断面図及び横断面図である。
【0034】
水蒸気発生装置1は、過熱水蒸気を発生させる気化装置2と、水蒸気送出管3を介して気化装置2に接続された補助加熱装置4とから構成される。気化装置2は、液浴Wを収容する液槽5と、液槽5内の液浴Wに下部を浸漬した多孔質体6と、多孔質体6の中空部7に内装したコイル状発熱体8とから構成される。中空部7の下流端(水蒸気送出口)7aが多孔質体6の端面に位置決めされる。他方、中空部7の上流側は、多孔質体6内の閉塞端7bにおいて終端する。
【0035】
水蒸気送出管3の上流端が中空部7の下流端7aに接続される。補助加熱装置4は、耐熱性断熱材からなる本体9と、本体9を貫通する水蒸気流路10と、水蒸気流路10内に収容した補助加熱用発熱体11とから構成される。水蒸気流路10の下流端(水蒸気送出口)は、水蒸気給送管12の上流端に接続され、水蒸気給送管12の下流端(図示せず)は、系外の装置(図示せず)に接続され、或いは、系外の装置内に過熱水蒸気を吐出する。
【0036】
気化装置2の中空部7は、全長に亘って均等な直径を有する円形断面の水蒸気流路を多孔質体6内に形成する。気化装置2の発熱体8は、概ね全周に亘って中空部7の内周面に接し又は密着した円形断面のコイル状ニクロム線又はカンタル線からなり、通電時に発熱する。補助加熱装置4の水蒸気流路10は、全長に亘って均等な直径を有する円形断面の流体流路を本体9内に形成する。補助加熱装置4の発熱体11は、水蒸気が流通可能な間隙を有する。発熱体11も又、通電時に発熱する。本例では、不規則に曲げられ且つ丸められた金属線材(ステンレスワイヤ等)の綿状集合体が、発熱体11として水蒸気流路10内に充填される。このような発熱体11は、表面積が大きく、従って、発熱体11と水蒸気との十分な伝熱接触面積を確保するので、効率良く水蒸気を加熱することができる。
【0037】
気化装置2及び補助加熱装置4の発熱体8、11には、リード線15が夫々接続される。各リード線15の端子16には、電流供給装置20の通電配線21が接続される。電流供給装置20は、給電線22を介して交流電源23に接続される。本例の電流供給装置20は、交流電源(AC100V)23の電圧を降下させ、比較的低電圧の電力を発熱体10に供給する電圧調整器からなる。電流供給装置20は、端子16を介して発熱体8、11に交流電圧を印加し、発熱体8、11を発熱させる。
【0038】
給水装置25が、気化装置2の液槽5と関連して水蒸気発生装置1に設けられる。給水装置25は、系外の給水設備(図示せず)に接続された給水管26と、給水を浄化する水質浄化装置27と、液槽5内に水を供給する供給管28とから構成される。浄化装置27は、給水に含まれるカルシウム等の硬度成分を吸着するイオン交換樹脂のフィルタを内蔵し、液槽5に供給すべき水を浄化する。従って、水質浄化した水が、液浴Wとして液槽5内に貯留されるとともに、液浴Wの液面低下と関連して液浴Wに適宜補給される。
【0039】
図3に示す矢印で示す如く、多孔質体6は、液浴Wの水を吸い上げる。吸い上げられた水は、中空部7に向かって流動し、中空部7の内周面において発熱体8の熱を受熱する。水は、発熱体8の熱によって加熱され、急激に気化する。中空部7の内周面から発生した水蒸気Sは、発熱体8との伝熱接触によって更に加熱される。中空部7の水蒸気Sは、100℃以上の温度を有する。
【0040】
一般に、含水多孔質体に高温物体を接近させると、多孔質体の表面において急激な水の気化が生じること、そして、多孔質体の表面の水が蒸発によって減少すると、多孔質体の毛管力によって自動的に多孔質体表面に水が供給され、多孔質体表面の液枯れが生じ難いことは、知られている。気化装置2は、このような原理を応用し、急峻な装置の起動と、瞬時の飽和水蒸気(又は過熱水蒸気)生成と、迅速な過熱水蒸気の供給とを可能にしようとするものである。気化装置2は、後述する作動試験結果より明らかなとおり、装置起動後7秒程度で飽和水蒸気を発生させる。この時間は、構造の最適化、電力供給量の設定等により、更に短縮することが可能である。
【0041】
図2に示すように、中空部7の水蒸気Sは、水蒸気送出管3を介して補助加熱装置4の水蒸気流路10に流入し、補助加熱用の発熱体11に伝熱接触し、発熱体11の熱を受熱して更に加熱される。加熱後の水蒸気Sは、約300℃の温度を有する過熱水蒸気として水蒸気流路10から水蒸気給送管12に送出される。
【0042】
図4(A)は、図3のI-I線における断面図であり、図4(B)は、図4(A)の部分拡大断面図である。
【0043】
多孔質体6は、多数の連通空隙を有するセラミックス成形体からなり、耐熱性及び電気絶縁性を有する。連通空隙によって多孔質体6内に形成される多数の細孔30が、図4(B)に模式的に示されている。細孔30は、多孔質体6の下部において液槽5内の水(液浴W)に接し、水は、毛細管現象によって細孔30に吸い上げられる。細孔30は、中空部7の内壁面6aにおいて開口し、細孔30の開口部31が、発熱体8の表面に近接する。
【0044】
図5は、図4(B)に示す”a”部の拡大図である。
【0045】
細孔30内の水は、開口部31において表面張力により湾曲し、メニスカスMを形成する。メニスカスMは、薄い水膜として開口部31の全周に形成される。発熱体8から多孔質体6に熱伝導した発熱体8の熱Hは、メニスカスMの水に伝熱し、メニスカスMの水を加熱する。メニスカスMの水は又、発熱体8の輻射熱によっても加熱される。メニスカスMは、細孔30の出口の縁部に位置する微小質量の水又は薄い水膜であることから、熱容量が極めて小さく、メニスカスMの水は、発熱体8の熱によって瞬時に気化する。メニスカスMの水の気化によって発生した水蒸気Sは、発熱体8の表面に沿って流動し、発熱体8の表面と熱交換し、発熱体8の熱を更に受熱する。
【0046】
中空部7内に生成した水蒸気Sは、中空部7内を流動し、前述の如く、水蒸気送出管3(図1)に流出する。他方、図4(B)に矢印で示すように液浴Wから細孔30によって吸い上げられる水は、多孔質体6の外表面(外側面)から細孔30の開口部に供給される。従って、内壁面6aから発生した水蒸気Sは、開口部31に向かって供給される水の流動を妨げない。即ち、水蒸気発生面を構成する多孔質体6の内壁面6aと、内壁面6aに水を供給する液浴Wとが、多孔質体6を挟んで反対側に位置し(即ち、互い分離し)、水及び水蒸気の流動方向が実質的に同じ方向に設定されるので、液浴Wの水は、開口部31に円滑に供給され、開口部31には、メニスカスMが常に形成される。かくして、水蒸気Sは、多孔質体6の毛管給水作用の下で中空部7に連続的に生成する。
【0047】
しかも、多孔質体6に伝達した熱Hは、内壁面6aの径方向外方に熱伝導し、細孔30によって吸い上げられる水に熱伝達する。従って、開口部31に供給される前に給水の予熱がなされるとともに、多孔質体6の温度上昇が抑制される。
【0048】
図6は、図1に示す水蒸気発生装置1の作動試験結果を示す線図である。
【0049】
本発明者は、水蒸気給送管12の端部を大気開放するとともに、図2に示すように熱電対40を水蒸気給送管12に挿入し、計測器41によって水蒸気Sの温度を計測した。なお、作動試験に用いた多孔質体6及び本体9には、直径9mmの円形中空部7及び水蒸気流路10が夫々形成され、多孔質体6の下部は、約1mmだけ液浴Wの水に浸漬された。
【0050】
また、作動試験においては、多孔質体6として、高さ3cm程度の直方体形状のセラミックス多孔質体が採用された。このような多孔質体6では、水面から約3cmの高さに位置する多孔質体6の上面が水によって自然に湿り又は湿潤する状態が観察された。これは、多孔質体6の毛管力によって吸い上げられた水が中空部7の高さを超えて上昇し、中空部7の内周壁面(内壁面6a)全域に達していることを意味する。即ち、多孔質体6の寸法(殊に、高さ)は、中空部7の内周壁面全域に液浴Wの水を供給し得るように多孔質体固有の毛管力と関連して設定することが望ましい。
【0051】
計測器41の温度計測結果が図6に示されている。図6の横軸は、水蒸気発生装置1の起動後の経過時間を示し、図6の縦軸は、計測器41によって測定された水蒸気温度を示す。
【0052】
作動試験において、電流供給装置20から350Wの電力を発熱体8に給電するとともに、電流供給装置20によって発熱体11に通電し、発熱体11を加熱した。図6に示す如く、水蒸気発生装置1は、起動後約7秒経過時に100℃の飽和水蒸気を発生させ、起動から約20秒後に約300℃の過熱水蒸気を発生させた。起動後約60秒経過時に電力供給装置20から発熱体8、11への給電を停止し、発熱体8、11の加熱を停止すると、水蒸気温度は、急激に低下した。
【0053】
作動試験結果から明らかなとおり、水蒸気発生装置1は、急峻な水蒸気生成作用の下で起動後短時間で過熱水蒸気を発生させるとともに、発熱体8、11の加熱停止後、速やかに飽和水蒸気及び過熱水蒸気の発生を停止する。即ち、水蒸気発生装置1は、応答性及び制御性に極めて優れる。
【0054】
以上説明した如く、上記構成の水蒸気発生装置1によれば、液浴Wから水を吸い上げる多孔質体6の機能を損なわずに加熱開始から水蒸気発生までの時間を短縮することができる。しかも、多孔質体6の毛管給水作用により、多孔質体6及び発熱体8の過乾燥又は過熱を防止することできる。
【0055】
従って、水蒸気発生装置1によれば、飽和水蒸気又は過熱水蒸気をほぼ瞬間的に発生させるとともに、飽和水蒸気又は過熱水蒸気の供給をほぼ瞬間的に停止させることが可能となる。
【0056】
また、水蒸気発生装置1は、多孔質体の毛管力によって水を水蒸気発生面に供給するので、送水用ポンプ等の圧送装置を要しない。
【0057】
更に、水蒸気発生装置1は、多孔質体表面における水の気化によって水蒸気を生成するように構成されているので、細孔径等の適切な設定により、沸騰時の騒音(水の沸騰作用を用いた水蒸気発生装置の場合に生じるような沸騰時の騒音)は、かなり軽減する。
【0058】
しかも、水蒸気発生装置1は、極めて単純且つ小型に設計し得る構造を有する。これは、装置の低価格化をも可能にするので、実用的観点からも極めて有利である。
【実施例2】
【0059】
図7は、本発明の第2実施例に係る水蒸気発生装置の構成を概略的に示す斜視図であり、図8は、図7に示す水蒸気発生装置の縦断面図である。図7及び図8において、上記第1実施例の構成要素と実質的に同じ構成要素については、同一の参照符号が付されている。
【0060】
本実施例の水蒸気発生装置1は、上記第1実施例の水蒸気発生装置を更に発展させたものであり、上記第1実施例の水蒸気発生装置が付加的な加熱手段(補助加熱装置4)を備えるのに対し、本実施例の水蒸気発生装置1は、このような付加的加熱手段を備えず、気化装置2によって直に過熱水蒸気を生成する構成を備える。即ち、水蒸気発生装置1は、気化装置2、水蒸気送出管3、液槽5、多孔質体6及びコイル状発熱体8を有し、水蒸気送出管3の下流端(図示せず)は、系外の装置(図示せず)に接続されて該装置に過熱水蒸気を供給し、或いは、系外の装置内に過熱水蒸気を吐出する。発熱体8には、リード線15が接続され、リード線15の端子16には、電流供給装置20の通電配線21が接続され、電流供給装置20は、給電線22を介して交流電源23に接続される。給水装置25が、気化装置2の液槽5と関連して水蒸気発生装置1に設けられる。給水管26、水質浄化装置27及び供給管28を含む給水装置25は、水質浄化した水を液槽5内に供給する。多孔質体6の下部が液槽5の液浴Wに浸漬される。
【0061】
気化装置2の中空部7は、前述の第1実施例と同じく、全長に亘って均等な直径を有する円形断面の水蒸気流路を多孔質体6内に形成する。本発明者の実験によれば、多孔質体6に接触する発熱体8の熱容量を極力低下し、小電力で高い熱流束が得られるように発熱体を構成することにより、常温(大気温度又は室温)の水から短時間且つ効率的に過熱水蒸気を発生させることができると判明した。
【0062】
図9は、実験に使用した多孔質体6の横断面図であり、図10は、図9に示す中空部7の部分拡大断面図である。図11は、過熱水蒸気の温度及び発生時間に関する実験結果を示す線図であり、図12は、発熱体8の加熱量と、エネルギー変換効率との関係を示す線図である。
【0063】
図9に示す多孔質体6は、幅50mm×高さ50mm×長さ120mmの寸法を有する市販の耐熱断熱レンガ(型式B5、 イソライト社製品、主成分:SiO2 55%、 Al2O3 41%、有効熱伝導率:0.33 [W/(m・K)])からなり、平均細孔径=9μm、モード径=90.6μm、空隙率=62.3%の物性を有する。直径D=8mmの中空部7が、図9に示す断面(50mm×50mm)の中心において、貫通孔として多孔質体6に穿設された。直径d(L1)=0.35mm、長さ1.1mのカンタル線が発熱体8として螺旋状に中空部7に配設された。カンタル線は、図10(A)に示すように、内壁面6aに密着するように配置された。カンタル線のピッチ間隔L2は、約2.5mmに設定され、カンタル線の巻数は、約40巻に設定された。中空部7の一端がシリコンゴム栓によって閉塞されるとともに、蒸留水が液槽5に供給され、多孔質体6を浸漬可能な室温の液浴Wが用意された。多孔質体6の下部が液浴Wに浸漬された。多孔質体6の下面の水深は、約3mmに設定された。カンタル線(発熱体8)に交流電流が印加され、発熱体8は発熱した。
【0064】
発熱体8の表面温度は、加熱開始後、短時間で100℃以上の温度に達した。300W(100V×3A)の電力を供給したとき、発熱体8の表面温度は、約0.1 秒で25℃(室温)から100 ℃に上昇した。発熱体8に対して、100W、200W及び300Wの電力を段階的に給電し、中空部7から流出する水蒸気の温度及び発生量が測定された。測定は、中空部7の出口に連結した測定用管路(図示せず)に熱電対(図示せず)を配置するとともに、凝縮器又は冷却器(図示せず)と、メスシリンダ(図示せず)とを熱電対の下流側に配置することによって実施された。なお、熱電対の位置は、中空部7の出口部から下流側に距離30mmを隔てた測定用管路内に設定され、また、水蒸気発生量は、20 分間の連続運転によって得られた凝縮水の量をメスシリンダで計測することによって行われた。
【0065】
図11に示す如く、100W(J/s)の電力を発熱体8に給電した場合、約20秒経過時に飽和水蒸気が中空部7に生成し、飽和水蒸気は、その後、継続的に中空部7に生成した。200Wの電力を発熱体8に給電した場合、約40秒経過時に300℃以上の過熱水蒸気が中空部7に生成した。300Wの電力を発熱体8に給電すると、約19秒経過時に300℃以上の過熱水蒸気が中空部7に生成した。なお、200W又は300Wの電力を発熱体8に給電した場合、管路内の温度は、数秒で100℃に達し、100℃の温度を一時的に維持した後、急速に温度上昇する特性を示した。
【0066】
測定用管路の温度が初期的に室温であり、中空部7に生成した水蒸気が測定用管路において初期的に凝縮する点を考慮すると、熱電対の測定値には若干の時間遅れが生じていると考えられ、中空部7の水蒸気温度は、実際には、測定値よりも早期に高温に達していると考えられる。
【0067】
また、200W又は300Wの電力を発熱体8に給電した場合、電力供給を停止すると、水蒸気の温度は急激に降下した。しかしながら、図11に示す測定結果において、水蒸気温度は、発熱体8の加熱停止後に室温まで降下していない。これは、過熱水蒸気によって測定用管路が加熱され、測定用管路の水蒸気がその影響を受けたことに起因すると考えられる。
【0068】
かくして、本実施例の水蒸気発生装置1は、補助的な加熱手段を用いずに、多孔質体6及び発熱体8のみによって迅速且つ効率的に過熱水蒸気を生成する。しかも、水蒸気発生装置1は、発熱体8の発熱後、極めて迅速に過熱水蒸気を生成することができ、発熱体8の発熱停止後、極めて迅速に温度降下する。即ち、水蒸気発生装置1は、制御性及び応答性に極めて優れる。
【0069】
図12には、エネルギー変換効率ηと、多孔質体6の底面温度との関係が示されている。エネルギー変換効率ηは、次式によって求められた。
【0070】
エネルギー変換効率η=Q/P
Q =m・Cpl(Tsat-Tin)+m・hfg +m・Cpv (Tv-Tsat)
P =V×I
ここに、
m : 蒸気発生速度[kg/s]
Tsat: 飽和温度[K]
Tin: 多孔質体下面部の温度[K]
Tv: 多孔質中空部出口より30mm 下流における水蒸気温度[K]
Cpl : (Tsat + Tin )/2 における水の定圧比熱[J/(kg ・K)]
Cpv : (Tsat + Tv )/2 における水蒸気の定圧比熱[J/(kg ・K)]
hfg : 蒸発潜熱[J/kg]
I : 電流[A]
V : 電圧[V]
【0071】
発熱体8に給電する電力を100Wから300Wに段階的に増大すると、エネルギー変換効率ηは、図12に示す如く増大し、エネルギー変換効率ηの最大値は、0.89に達した。他方、多孔質体6の底面温度Tinは、発熱体8に給電する電力の増大に伴って低下する傾向を示した。これは、熱伝導による放熱の方向(図9に実線矢印で示す方向)と、多孔質体6の毛管力による蒸発面への液体(水)の供給方向(図9に破線矢印で示す方向)とが、逆方向であり、熱伝導によって多孔質体6の内部に伝わる熱の一部が、蒸発面に向かう水の予熱に消費されることに起因する。即ち、発熱体8の発熱量が増大するにつれて蒸発面に流入しようとする水の流量が増大することから、中空部7の径方向外方に向かう熱の熱伝導効果に比して、毛管力によって蒸発面に供給される水の顕熱輸送効果が優り、この結果、多孔質体6の底面温度Tinが相対的に低下してエネルギー変換効率ηが増大したものと考えられる。
【0072】
従って、本実施例の水蒸気発生装置1は、発熱体8の発熱を極めて効率的且つ合理的に利用し、過熱水蒸気を中空部7に生成する。
【0073】
10(B)及び図10(C)には、水蒸気発生装置1における過熱水蒸気生成の原理が模式的に示されている。
【0074】
発熱体8に通電すると、発熱体8の表面温度は、500℃以上、例えば、700℃に達する。発熱体8の発熱は、主として発熱体8と内壁面6aとの接触部分から多孔質体6に伝熱し、この結果、図10(B)に示すように多孔質体6の表面細孔部に形成されるメニスカスの液膜部において急峻な水Wの蒸発が生じる。多孔質体6として、比較的低い熱伝導率の材質のものを採用した場合、多孔質体内部への伝熱作用が抑制されるので、水Wの気化が開始するまでの時間を短縮できると考えられる。
【0075】
発熱体8の全発熱が水Wに伝熱して水Wの気化熱として消費された場合、水蒸気発生量は増大するが、発熱体8の発熱は、水蒸気温度の上昇に所望の如く寄与し難い。しかしながら、水蒸気発生装置1においては、水Wの気化が開始すると、発熱体8と接触した内壁面6a及びその近傍では、細孔30内に蒸気層が形成されるとともに、内壁面6aの局部的な乾燥が生じる。発熱体8の近傍の細孔30内において、水Wの液面は、図10(C)に示すように、細孔30の出口開口から細孔30内に後退する。この結果、発熱体8の発熱は、細孔30内に生成した水蒸気Sを過熱するように作用する。即ち、細孔30内に発生した水蒸気Sは、細孔30から流出する際、そして、中空部7内を流動する際、発熱体8の近傍を流動し、発熱体8の熱放射作用と、発熱体8の表面近傍の領域における対流伝熱作用とによって急激に過熱される。かくして、過熱水蒸気が中空部7に生成し、中空部7から系外の装置等に供給される。
【0076】
このように内壁面6aを局部加熱し、細孔30内に発生した水蒸気Sを過熱するためには、発熱体8が局所的に極めて高い熱流束を発生させる必要があると考えられる。内壁面6aと発熱体8との接触面積を仮に発熱体表面積の1/5と仮定し、全ての熱が内壁面6a及び発熱体8の接触部分を介して多孔質体6に伝熱すると仮定すると、300Wの電力を発熱体8に給電した場合、接触部分の熱流束は、計算上は、約1.3 MW/m2 である。好ましくは、発熱体8は、1MW/m2以上の熱流束が内壁面6a及び発熱体8の接触部分に得られるように構成され、或いは、発熱体8全表面の平均熱流束値は、200kW/m2以上に設定される。
【0077】
また、発熱体8は、内壁面6aを全面的に均一加熱するのではなく、間隔を隔てて内壁面6aを局部加熱するように配置されるので、水Wの気化と、水蒸気Sの過熱とが適切にバランスし、過熱水蒸気が中空部7に定常的に生成する。発熱体8の線径L1(図10(A))と、発熱体8の間隔L2(図10(A))との比は、例えば、1/3~1/10の範囲に設定される。
【0078】
内壁面6aには、乾燥した発熱体8近傍の内壁面帯域と、湿潤な発熱体8間の内壁面帯域とが、内壁面6aの局部加熱によって形成される。間隔を隔てて乾燥帯域を形成することにより、発熱体8近傍への三次元的な水Wの移動が生じるとともに、多孔質体6の全体的な乾燥が防止され、水Wが毛管作用によって円滑に発熱体8の近傍に補給される。
【0079】
以上説明した如く、上記構成の水蒸気発生装置1によれば、多孔質体6及び発熱体8からなる簡易な構成により、過熱水蒸気を定常的に発生させることができる。しかも、過熱水蒸気の発生は、発熱体8の発熱開始とほぼ同時に開始し、発熱体8の発熱停止とほぼ同時に終了する。即ち、過熱水蒸気を用いた従来の調理器等では、過熱水蒸気発生のための予熱時間又は準備時間に十分以上の長い時間を要していたのに対し、本発明の水蒸気発生装置によれば、数秒~数十秒の短時間で過熱水蒸気の供給を開始することが可能である。しかも、過熱水蒸気の生成は、発熱体8の発熱開始及び発熱停止に迅速に応答するので、水蒸気発生装置1は、極めて優れた制御性及び応答性を発揮する。従って、本発明の水蒸気発生装置は、制御性・応答性の観点からも実用的に極めて有利である。
【0080】
また、水蒸気発生装置1は、極めて高いエネルギー変換効率を発揮するので、発熱体作動電力等の投入エネルギーを極めて有効に利用できる。
【0081】
更に、水蒸気発生装置1は、多孔質体の毛管力によって水を水蒸気発生面に供給するので、送水用ポンプ等の圧送装置を必要とせず、沸騰騒音の問題も解消する。
【0082】
加えて、本実施例の水蒸気発生装置1は、実施例1の水蒸気発生装置のように補助的加熱手段(加熱装置4)を備えないので、実施例1の水蒸気発生装置よりも更に単純且つ小型に設計することができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0084】
例えば、多孔質体の細孔径、中空部の断面寸法、中空部の箇所数等は、適宜設計変更することができる。また、多孔質体として、耐熱性及び電気絶縁性を有し、発熱体の熱により劣化し又は分解しない材質のものを適宜採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、水蒸気を利用した各種の機器において採用し得る小型且つ安価な構造を有し、しかも、極めて迅速に過熱水蒸気を発生させる水蒸気発生装置及び水蒸気発生方法が提供される。殊に、本発明の水蒸気発生装置及び水蒸気発生方法は、家庭用調理器、蒸し器、殺菌消毒器、乾燥機等の如く、過熱水蒸気を利用した家庭用又は産業用の機器において好適に使用し得る。このような機器に本発明を適用した場合、本発明は、水蒸気発生機構の小型化及び低価格化を可能にするので、極めて有利である。また、本発明の構成は、液体燃料等を気化させる蒸気発生手段に応用することができるので、その実用的効果は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明を適用した水蒸気発生装置の実施例を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す水蒸気発生装置の縦断面図である。
【図3】図1に示す水蒸気発生装置の横断面図である。
【図4】図4(A)は、図3のI-I線における断面図であり、図4(B)は、図4(A)の部分拡大断面図である。
【図5】図4(B)に示す”a”部の拡大図である。
【図6】図1~図5に示す水蒸気発生装置の作動試験結果を示す線図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る水蒸気発生装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図8】図7に示す水蒸気発生装置の縦断面図である。
【図9】過熱水蒸気発生試験に使用した多孔質体及び発熱体の横断面図である。
【図10】図9に示す中空部の部分拡大断面図である。
【図11】過熱水蒸気の温度及び発生時間に関する実験結果を示す線図である。
【図12】発熱体の加熱量と、エネルギー変換効率との関係を示す線図である。
【図13】多孔質体及び発熱体を用いた従来の水蒸気発生装置の構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 水蒸気発生装置
2 気化装置
3 水蒸気送出管
5 液槽
6 多孔質体
6a 内壁面
7 中空部
7a 下流端(水蒸気送出口)
8 発熱体
20 電流供給装置
30 細孔
31 開口部
W 液浴
M メニスカス
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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