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明細書 :水素生成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5374702号 (P5374702)
公開番号 特開2008-222470 (P2008-222470A)
登録日 平成25年10月4日(2013.10.4)
発行日 平成25年12月25日(2013.12.25)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 水素生成方法
国際特許分類 C01B   3/36        (2006.01)
H01M   8/06        (2006.01)
FI C01B 3/36
H01M 8/06 R
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2007-060769 (P2007-060769)
出願日 平成19年3月9日(2007.3.9)
審査請求日 平成22年3月5日(2010.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】水口 仁
【氏名】鈴木 茂
【氏名】松本 圭司
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
【識別番号】100101465、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 正和
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100107836、【弁理士】、【氏名又は名称】西 和哉
【識別番号】100108453、【弁理士】、【氏名又は名称】村山 靖彦
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開2005-139440(JP,A)
特表平08-501115(JP,A)
特開2001-348207(JP,A)
特開2002-037606(JP,A)
特開2003-024770(JP,A)
特表2002-504023(JP,A)
特開2003-137503(JP,A)
特表2003-519616(JP,A)
特開2002-105466(JP,A)
特開2003-095614(JP,A)
特開2006-131691(JP,A)
特表2007-515362(JP,A)
特表2009-526737(JP,A)
Feg-Wen CHANG et al.,Production of hydrogen via partial oxidation of methanol over Au/TiO2 catalysts,Applied Catalysis A: General,2005, Vol.290,pp.138-147
Feg-Wen CHANG et al.,Hydrogen production by partial oxidation of methanol over gold catalysts supported on TiO2-MOx (M=Fe, Co, Zn) composite oxides,Applied Catalysis A: General,2006, Vol.302,pp.157-167
Tinghua WU et al.,Partial oxidation of methane to hydrogen and carbon monoxide over a Ni/TiO2 catalyst,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2005,Vol.226, pp.41-48
水口 仁,感光体材料から生まれたプラスチック廃材の処理システム-酸化チタンの熱励起を利用した分解システム-,日本画像学会誌,2005年 8月10日,第44巻,第4号,第265~269ページ
調査した分野 C01B3/00-6/34
B01J21/00-38/74
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特許請求の範囲 【請求項1】
酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成方法であって、
前記酸化物半導体を350℃以上かつ500℃以下に加熱し、この加熱した酸化物半導体に気相の有機化合物及び酸素ガスを通過させて前記有機化合物を前記酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成することを特徴とする水素生成方法(ただし、二酸化チタンが単独で金、若しくはニッケルを担持している触媒、又は二酸化チタンが鉄、コバルト、若しくは亜鉛の酸化物と複合酸化物を形成して、前記複合酸化物が金を担持している触媒を利用した方法を除く)
【請求項2】
記酸素ガスの濃度は、この酸素ガスと前記有機化合物の合計量に対して30体積%以上かつ70体積%以下であることを特徴とする請求項記載の水素生成方法。
【請求項3】
酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成方法であって、
前記酸化物半導体を300℃以上かつ450℃以下に加熱し、この加熱した酸化物半導体に液相の有機化合物の蒸気及び酸素ガスを通過させて前記有機化合物を前記酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成することを特徴とする水素生成方法(ただし、二酸化チタンが単独で金、若しくはニッケルを担持している触媒、又は二酸化チタンが鉄、コバルト、若しくは亜鉛の酸化物と複合酸化物を形成して、前記複合酸化物が金を担持している触媒を利用した方法を除く)
【請求項4】
記酸素ガスの濃度は、この酸素ガスと前記有機化合物の合計量に対して50体積%以下であることを特徴とする請求項記載の水素生成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成装置及び水素生成方法に関し、更に詳しくは、家庭用固定式燃料電池やパーソナルコンピュータ(PC)等のモバイル用途の燃料電池等の各種FC用水素発生装置に好適に用いられ、繰り返し使用した場合であっても、酸化物半導体の活性を失うことなく炭化水素等の有機化合物から水素を生成することが可能な水素生成装置及び水素生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用据置型燃料電池に用いられる水素生成装置としては、液化天然ガス(LPG)を原料とする水蒸気改質型の水素生成装置が実用化されている。また、パーソナルコンピュータ(PC)等のモバイル用途の燃料電池等に用いられる水素生成装置としては、メタノールを白金触媒を用いて加熱分解して水素を生成する水素生成装置が実用化されている。
【0003】
一方、ポリカーボネート等を分解するシステムとしては、3.2eVのギャップエネルギー(Eg)を有する半導体である酸化チタン(TiO)の熱励起により大量に生成される正孔を利用した分解システムが提案されている(特許文献1、非特許文献1、2)。
この分解システムは、酸化チタンを250~600℃という高温に加熱することにより、この酸化チタンに大量に生成する正孔と当該正孔の強力な酸化力によりポリカーボネート等のポリマーを瞬時に水と二酸化炭素に完全に分解するシステムである。
【特許文献1】特開2005-139440号公報
【非特許文献1】水口 仁、「感光体材料から生まれたプラスチック廃材の処理システム」、日本画像学会誌、日本画像学会、2005年、第156号、p.265-269
【非特許文献2】水口 仁、「半導体の熱励起を利用した有機物分解システム」、化学と工業、日本化学会、2005年、第58巻、第7号、p.841-843
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の水蒸気改質型の水素生成装置では、貴金属を含む高価な触媒を使用すること、ならびに得られた水素含有ガスが高濃度の一酸化炭素を含むという問題点があった。
また、メタノールを加熱分解する水素生成装置では、水素生成時に発生した炭素の微粒子が白金触媒の表面に堆積することによる被毒で白金触媒の活性が低下し、その結果、水素の生成能力が低下するという問題点があった。
また、白金触媒の被毒防止のために、メタノールの加熱分解時に発生する一酸化炭素を二酸化炭素に改質する装置が必要になるという問題点や、触媒に白金という高価な貴金属を用いているために、触媒自体が高価なものとなり、生成する水素の製造コストも高くなってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、酸化物半導体の熱励起を利用してメタン、エタン、エチレン、アセチレン、メタノール等の有機化合物から水素を発生させることができ、この酸化物半導体の活性を失うことなく繰り返し使用することができ、しかも安価に水素を生成することができる水素生成装置及び水素生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、加熱した酸化物半導体に有機化合物及び酸素ガスを通過させて該有機化合物を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解することにより、酸化物半導体の熱励起を利用してメタン、エタン、エチレン、アセチレン、メタノール等の有機化合物から水素を容易に発生させることができ、この酸化物半導体の活性を失うことなく繰り返し使用することができ、しかも安価に水素を生成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の水素生成装置は、酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成装置であって、内部に前記酸化物半導体を保持し、有機化合物を前記酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成する反応器と、この反応器に設けられ前記酸化物半導体を所定の温度に加熱する加熱手段と、前記反応器に前記有機化合物及び酸素ガスを供給する供給手段とを備えてなることを特徴とする。
【0008】
この水素生成装置では、加熱手段により、反応器内に保持された酸化物半導体を所定の温度に加熱し、この反応器内に、供給手段を用いて有機化合物及び酸素ガスを供給し、この有機化合物を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成する。
これにより、簡単かつ安価な装置を用いて、有機化合物から水素を効率良く発生させることが可能になる。この酸化物半導体は水素発生時においても活性を失う虞が無く、繰り返し使用することが可能である。この酸化物半導体は、貴金属触媒に比べて安価であるから、水素の生成コストを低く抑えることが可能である。
【0009】
本発明の水素生成装置は、前記有機化合物は、気相の有機化合物であり、前記供給手段は、前記気相の有機化合物を供給する有機化合物供給手段と、前記酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段とを備えてなることを特徴とする。
【0010】
この水素生成装置では、反応器内に、有機化合物供給手段を用いて気相の有機化合物を供給するとともに、酸素ガス供給手段を用いて酸素ガスを供給する。この反応器では、気相の有機化合物を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成する。
これにより、簡単かつ安価な装置を用いて、気相の有機化合物から水素を効率良く発生させることが可能になる。
【0011】
本発明の水素生成装置は、前記有機化合物供給手段、前記酸素ガス供給手段のいずれか1つ以上に、前記有機化合物の供給量と前記酸素ガスの供給量との比を調整するための調整手段を設けてなることを特徴とする。
【0012】
この水素生成装置では、気相の有機化合物の供給量と酸素ガスの供給量の比を調整するための調整手段を設けたことにより、気相の有機化合物から目的とする水素を生成させ得るように、この気相の有機化合物の部分酸化分解時に必要な酸素ガス供給量を調整し、この気相の有機化合物を部分酸化分解し水素を生成させる。これにより、水素を効率よく生成させることが可能になる。
【0013】
本発明の水素生成装置は、前記有機化合物は、液相の有機化合物であり、前記供給手段は、前記酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段と、この酸素ガス供給手段から供給される酸素ガスを前記液相の有機化合物中を通過させて前記有機化合物の蒸気を含むガスを生成し前記反応器に供給する有機化合物蒸気供給手段とを備えてなることを特徴とする。
【0014】
この水素生成装置では、有機化合物蒸気供給手段により酸素ガス供給手段から供給される酸素ガスを液相の有機化合物中を通過させ、この有機化合物の蒸気を含むガスを生成し反応器に供給する。この反応器では、液相の有機化合物の蒸気を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成する。
これにより、簡単かつ安価な装置を用いて、液相の有機化合物から水素を効率良く発生させることが可能になる。
【0015】
本発明の水素生成装置は、前記酸素ガス供給手段に、不活性ガス供給手段を設け、前記酸素ガス供給手段から供給される酸素ガスと前記不活性ガス供給手段から供給される不活性ガスを混合した混合ガスを前記有機化合物蒸気供給手段に供給することを特徴とする。
【0016】
この水素生成装置では、酸素ガス供給手段から供給される酸素ガスと不活性ガス供給手段から供給される不活性ガスを混合した混合ガスを有機化合物蒸気供給手段に供給する。
これにより、酸素ガスの濃度を液相の有機化合物の蒸気を部分分解するのに必要な濃度に調整することが可能になり、よって、液相の有機化合物から水素を効率良く生成させることが可能になる。
【0017】
本発明の水素生成装置は、前記酸素ガス供給手段、前記不活性ガス供給手段のいずれか1つ以上に、前記有機化合物の供給量と前記酸素ガスの供給量との比を調整するための調整手段を設けてなることを特徴とする。
【0018】
この水素生成装置では、液相の有機化合物から目的とする水素を生成させ得るように、調整手段により、酸素ガス、不活性ガスのいずれか1つ以上のガス供給量を調整することにより、液相の有機化合物の供給量と酸素ガスの供給量との比を調整し、この液相の有機化合物を部分酸化分解し水素を生成させる。これにより、水素を効率よく生成させることが可能になる。
【0019】
これら不活性ガスを使用する態様において、不活性ガスとして窒素を使用する場合には、前記不活性ガス供給手段から空気を供給し、この空気に含まれる酸素分を酸素の供給から減じればよい。従って、空気のみの供給で部分酸化が行われることもあり得る。
【0020】
本発明の水素生成方法は、酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成方法であって、前記酸化物半導体を加熱し、この加熱した酸化物半導体に有機化合物及び酸素ガスを通過させて前記有機化合物を前記酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成することを特徴とする。
【0021】
本発明の水素生成方法では、有機化合物から水素を効率良く発生させることが可能になる。この酸化物半導体は水素発生時においても活性を失う虞が無く、繰り返し使用することが可能である。
【0022】
本発明の水素生成方法は、前記有機化合物は、気相の有機化合物であり、前記酸化物半導体の温度は300℃以上かつ600℃以下であり、前記酸素ガスの濃度は、この酸素ガスと前記有機化合物の合計量に対して30体積%以上かつ70体積%以下であることを特徴とする。
この水素生成方法では、気相の有機化合物から水素を効率良く生成させることが可能になる。
【0023】
本発明の水素生成方法は、前記有機化合物は、液相の有機化合物であり、前記酸化物半導体の温度は250℃以上かつ600℃以下であり、前記酸素ガスの濃度は、この酸素ガスと前記有機化合物の合計量に対して50体積%以下であることを特徴とする。
この水素生成方法では、液相の有機化合物から水素を効率良く生成させることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水素生成装置によれば、内部に前記酸化物半導体を保持し、有機化合物を前記酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成する反応器と、この反応器に設けられ前記酸化物半導体を所定の温度に加熱する加熱手段と、前記反応器に前記有機化合物及び酸素ガスを供給する供給手段とを備えたので、簡単かつ安価な装置を用いて、有機化合物から水素を効率良く生成させることができる。
また、この酸化物半導体は、水素発生時においても活性を失う虞が無く、繰り返し使用することができる。
この酸化物半導体は、貴金属触媒に比べて安価であるので、水素の生成コストを低く抑えることができる。
【0025】
本発明の水素生成方法によれば、酸化物半導体を加熱し、この加熱した酸化物半導体に有機化合物及び酸素ガスを通過させて有機化合物を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成するので、有機化合物から水素を効率良く生成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の水素生成装置及び水素生成方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0027】
「第1の実施形態」
図1は、本発明の第1の実施形態の酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成装置を示す模式図であり、気相の有機化合物を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成する装置の例である。
図において、1は水素生成装置であり、反応器2と、反応器2の外周に巻回されたヒータ(加熱手段)3と、有機化合物供給管(有機化合物供給手段)4と、酸素ガス供給管(酸素ガス供給手段)5と、不活性ガス供給管6と、混合部7を有する配管8と、配管9と、制御装置(図示略)とにより構成されている。
【0028】
この有機化合物供給管4には、気相の有機化合物の供給量を調整するための調整弁(調整手段)11が、酸素ガス供給管5には、酸素ガスの供給量を調整するための調整弁(調整手段)12が、不活性ガス供給管6には、不活性ガスの供給量を調整するための調整弁(調整手段)13がそれぞれ設けられ、これらの調整弁11~13を制御装置により制御することで、気相の有機化合物の供給量、酸素ガスの供給量、不活性ガスの供給量それぞれの比を調整するようになっている。
混合部7は、気相の有機化合物、酸素ガス、必要に応じて不活性ガスを混合するもので、配管8の一部を拡径した拡径部等により構成されている。
【0029】
反応器2は、所謂流動床タイプのもので、ステンレス鋼や耐熱ガラス等からなる円筒状の容器21内に粉末状の酸化物半導体22を収納するとともに、この粉末状の酸化物半導体22を攪拌子23を用いて常時攪拌する構成であり、後述する混合ガスは容器21の底部から上方に向かって吹き上げる構造をとる。水素の生成には、混合ガスと粉末状の酸化物半導体22との接触頻度と接触時間が重要である。
【0030】
酸化物半導体22としては、酸素雰囲気下の気相の有機化合物の部分酸化分解時においても安定なものであればよく、用いられる有機化合物の部分酸化分解温度に対応したギャップエネルギー(Eg)を有する酸化物半導体が適宜選択使用される。
【0031】
このような酸化物半導体22としては、例えば、次の化学式で示される物質等が挙げられる。
BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、CeO、ThO、UO、U、TiO、ZrO、V、Y、YS、Nb、Ta、MoO、WO、MnO、Fe、MgFe、NiFe、ZnFe、ZnCo、ZnO、CdO、Al、MgAl、ZnAl、Tl、In、SiO、SnO、PbO、UO、Cr、MgCr、FeCrO、CoCrO、ZnCr、WO、MnO、Mn、Mn、FeO、NiO、CoO、Co、PdO、CuO、CuO、AgO、CoAl、NiAl、TlO、GeO、PbO、TiO、Ti、VO、MoO、IrO、RuO、CdS、CdSe、CdTe。
【0032】
これらのなかでも、金属酸化物半導体が好ましく、特に、ギャップエネルギー(Eg)が3.2eVの二酸化チタン(TiO)や酸化亜鉛(ZnO)は活性が高く、無害であるため安全性に優れているので、好ましい。
二酸化チタン(TiO)は、アナターゼ型とルチル型の2種類の結晶形のものがあるが、いずれも使用できる。
【0033】
この酸化物半導体22は、通過する有機化合物が接触し易いこと、取り扱いの容易さ等を考慮すると、微粒子で表面積が大きいことが好ましく、この微粒子の直径は0.01~10μmが好ましく、0.5~5μmがより好ましい。
この酸化物半導体22は通過する有機化合物が十分に接触するために微粒子であることが望ましい。通常、顔料などに使用される0.05~数μm程度で十分である。また、0.05μmより更に微粒子であることは分解性能上は好ましいが取り扱いが難しくなる。また、粒子径が大きくなると比表面積が低下するため、酸化物半導体22の使用量を増やす必要性がある。
【0034】
また、ハニカム状、繊維状等の基体の表面に上記の酸化物半導体からなる膜を形成しても、微粒子の場合と同様の作用、効果を奏することができる。
また、直径2~5mm程度のアルミナ球の上に酸化物半導体を担持して酸化物半導体膜としたものも使用できる。このような場合には、当然のことながら攪拌機能は付与しない。
この酸化物半導体膜の膜厚は、機械的強度を保ちつつ、有機化合物を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解することができる膜厚であればよく、例えば、1~3μmである。
【0035】
次に、この水素生成装置1を用いて気相の有機化合物から水素を生成する方法について説明する。
この水素生成に用いられる気相の有機化合物としては、常温(25℃)で気体である有機化合物、例えば、メタン、エタン等の一般式C2n+2で表されるメタン系炭化水素(飽和炭化水素)、エチレン、プロピレン等の一般式C2nで表されるエチレン系炭化水素(不飽和炭化水素)、アセチレン、メチルアセチレン等の一般式C2n-2で表されるアセチレン系炭化水素(不飽和炭化水素)等の炭化水素が好適に用いられる。
【0036】
この水素生成装置1を用いて気相の有機化合物から水素を生成するには、予め、制御装置(図示略)を用いてヒータ3に通電して酸化物半導体22を、その熱励起により有機化合物が部分酸化分解する温度、例えば300℃以上かつ600℃以下、好ましくは350℃以上かつ550℃以下に加熱・保持しておき、有機化合物供給管4により供給される気相の有機化合物と、酸素ガス供給管5により供給される酸素ガスと、必要に応じて不活性ガス供給管6により供給される窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスとを、混合部7で混合して混合ガスとし、この混合ガスを、加熱された酸化物半導体22に供給する。
【0037】
ここで、酸化物半導体22の温度を300℃以上かつ600℃以下とした理由は、300℃未満では、気相の有機化合物を酸素雰囲気下で部分酸化分解して水素を生成する効率が低下し、一方、600℃を超えると、反応器2の筐体21を構成する耐火物の寿命が短くなり、この反応器2を繰り返し使用することが難しくなり、その結果、水素生成の製造コストが高くなってしまい実用的でないからである。
【0038】
気相の有機化合物が低級炭化水素の場合、炭化水素の供給量と酸素ガスの供給量との比を調整することにより、炭化水素から目的とする水素を生成させ得るように、部分酸化分解時に必要な酸素ガス供給量を調整する。これにより、水素を効率よく生成させることが可能になり、二酸化炭素や一酸化炭素を選択的に得ることが可能になる。
【0039】
この有機化合物の供給量と酸素ガスの供給量との比を調整する場合、酸素ガスの濃度が酸素ガスと有機化合物の合計量に対して30体積%以上かつ70体積%以下が好ましく、より好ましくは40体積%以上かつ60体積%以下、さらに好ましくは45体積%以上かつ55体積%以下となるように調整する。
このように、酸素ガスの濃度を酸素ガスと有機化合物の合計量に対して30体積%以上かつ70体積%以下とすることで、気相の有機化合物は、水素の生成量が所定の生成量以上となるように部分酸化分解されて所定の生成量以上の水素が生成し、気相の有機化合物がそのまま排出される虞はない。
【0040】
酸化物半導体22は、300℃以上かつ600℃以下に加熱されることで熱励起され、この酸化物半導体22中に大量に正孔が生成し、この大量の正孔が有機化合物から電子を奪い、有機化合物中にラジカルを生成する。このラジカルによる逐次的な開裂により有機化合物はフラグメント化された低分子となり、酸素ガスの供給量が制御された雰囲気下で部分的に酸化分解され、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水等からなる混合ガスを生成する。この混合ガスは配管9により取り出される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の水素生成装置1によれば、内部に粉末状の酸化物半導体22を収納する反応器2と、ヒータ3と、有機化合物供給管4と、酸素ガス供給管5と、不活性ガス供給管6とを備えたので、簡単かつ安価な装置構成で、低級炭化水素等の気相の有機化合物から水素を効率良く生成させることができる。
また、この酸化物半導体22は、水素発生時においても活性を失う虞が無く、繰り返し使用することができる。
この酸化物半導体22は、貴金属触媒に比べて安価であるので、水素の生成コストを低く抑えることができる。
【0042】
本実施形態の水素生成方法によれば、300℃以上かつ600℃以下に加熱された酸化物半導体22に、低級炭化水素等の気相の有機化合物、酸素ガス、必要に応じて不活性ガスを、酸素ガスの濃度が酸素ガスと有機化合物の合計量に対して30体積%以上かつ70体積%以下となるように調整した後に通過させ、この有機化合物を酸化物半導体22の熱励起により部分酸化分解し、水素を生成するので、低級炭化水素等の気相の有機化合物から水素を効率良く生成させることができる。
【0043】
「第2の実施形態」
図2は、本発明の第2の実施形態の酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成装置を示す模式図であり、液相の有機化合物を酸化物半導体の熱励起により部分酸化分解し水素を生成する装置の例である。
なお、図2において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
この水素生成装置31は、反応器2と、ヒータ3と、酸素ガス供給管5と、必要に応じて不活性ガス供給管6と、混合部7を有する配管8と、配管9と、有機化合物蒸気発生器(有機化合物蒸気供給手段)32と、制御装置(図示略)とにより構成されている。
【0044】
反応器2は、所謂流動床タイプのもので、ステンレス鋼や耐熱ガラス等からなる円筒状の容器21内に粉末状の酸化物半導体22を収納するとともに、この粉末状の酸化物半導体22を攪拌子23を用いて常時攪拌する構成であり、後述する有機化合物の蒸気を含むガスは容器21の底部から上方に向かって吹き上げる構造をとる。
この粉末状の酸化物半導体22の替わりに、ハニカム状、繊維状等の基体の表面に上記の酸化物半導体からなる膜を形成したもの、直径2~5mm程度のアルミナ球の上に酸化物半導体を担持して酸化物半導体膜としたもの等も使用できる。
【0045】
有機化合物蒸気発生器32は、ステンレス鋼や耐熱ガラス等からなる有底筒状の筐体33の内部に所定量の液相の有機化合物を貯留し、この有機化合物に配管8を介して酸素ガス、必要に応じて不活性ガスを供給してバブリングを行い、この有機化合物の蒸気を含むガスを配管34を介して反応器2に供給する構成である。
【0046】
次に、この水素生成装置31を用いて液相の有機化合物から水素を生成する方法について説明する。
この水素生成に用いられる液相の有機化合物としては、常温(25℃)で液体である有機化合物、例えば、ペンタン、ヘキサン等の一般式C2n+2で表されるメタン系炭化水素(飽和炭化水素)、ヘキセン、ヘプテン等の一般式C2nで表されるエチレン系炭化水素(不飽和炭化水素)、ヘキシン、ヘプチン等の一般式C2n-2で表されるアセチレン系炭化水素(不飽和炭化水素)、メタノール、エタノール等の一価アルコール、エチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン等の三価アルコール、ジエチルエーテル、エチレンオキシド等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン、ギ酸、酢酸、シュウ酸等のカルボン酸等の炭化水素が好適に用いられる。
【0047】
この水素生成装置31を用いて液相の有機化合物から水素を生成するには、予め、制御装置(図示略)を用いてヒータ3に通電して酸化物半導体22を、その熱励起により有機化合物が部分酸化分解する温度、例えば250℃以上かつ600℃以下、好ましくは300℃以上かつ450℃以下に加熱・保持しておく。
一方、 有機化合物蒸気発生器32に所定量の液相の有機化合物を投入し、この液相の有機化合物に、酸素ガス供給管5、必要に応じて不活性ガス供給管6から供給される酸素ガスや不活性ガスを混合部7にて混合して混合ガスとし、この混合ガスを液相の有機化合物に供給してバブリングを行い、この有機化合物の蒸気を含むガスを配管34を介して反応器2に供給する。
【0048】
液相の有機化合物が上記の炭化水素の場合、炭化水素の供給量と酸素ガスの供給量との比を調整することにより、炭化水素から目的とする水素を生成させ得るように、部分酸化分解時に必要な酸素ガス供給量を調整する。これにより、水素を効率よく生成させることが可能になり、二酸化炭素や一酸化炭素を選択的に得ることが可能になる。
【0049】
この有機化合物の供給量と酸素ガスの供給量との比を調整する場合、酸素ガスの濃度が酸素ガスと有機化合物の合計量に対して50体積%以下が好ましく、より好ましくは5体積%以上かつ20体積%以下、さらに好ましくは5体積%以上かつ15体積%以下となるように調整する。
このように、酸素ガスの濃度を酸素ガスと有機化合物の合計量に対して50体積%以下とすることで、液相の有機化合物は、水素の生成量が所定の生成量以上となるように部分酸化分解されて所定の生成量以上の水素が生成し、液相の有機化合物が蒸気の状態でそのまま排出される虞はない。
【0050】
酸化物半導体22は、250℃以上かつ600℃以下に加熱されることで熱励起され、この酸化物半導体22中に大量に正孔が生成し、この大量の正孔が有機化合物から電子を奪い、有機化合物中にラジカルを生成する。このラジカルによる逐次的な開裂により有機化合物はフラグメント化された低分子となり、酸素ガスの供給量が制御された雰囲気下で部分的に酸化分解され、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水等からなる混合ガスを生成する。この混合ガスは配管9により取り出される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の水素生成装置31によれば、内部に粉末状の酸化物半導体22が収納された反応器2と、ヒータ3と、酸素ガス供給管5と、不活性ガス供給管6と、混合部7を有する配管8と、配管9と、有機化合物蒸気発生器32とを備えたので、簡単かつ安価な装置構成で、中級炭化水素等の液相の有機化合物から水素を効率良く生成させることができる。
【0052】
本実施形態の水素生成方法によれば、250℃以上かつ600℃以下に加熱された酸化物半導体22に、酸素ガスの濃度が酸素ガスと有機化合物の合計量に対して1体積%以上かつ50体積%以下となるように調整し、酸素ガス及び不活性ガスを含む混合ガスを液相の有機化合物にバブリングして得られた有機化合物の蒸気を含むガスを通過させ、この有機化合物を酸化物半導体22の熱励起により部分酸化分解し、水素を生成するので、中級炭化水素等の液相の有機化合物から水素を効率良く生成させることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0054】
「実施例1」
流動床タイプの反応器2を用い、酸化物半導体22としてアナターゼ型酸化チタン微粒子ST-01(石原産業(株)社製)を用い、この酸化チタン微粒子を350℃~500℃の範囲で加熱・保持し、この酸化チタン微粒子に、有機化合物供給管4によりメタンガスを、酸素ガス供給管5により酸素ガスを、それぞれ供給し、メタンガスを部分酸化分解した。この時の酸素濃度を1体積%~90体積%の範囲で変化させた。
【0055】
図3は、酸化チタン微粒子の温度をパラメータとしたときの水素ガスの生成量の酸素濃度依存性を示す図である。
この図によれば、酸化チタンの温度が400℃までは、メタンはほとんど分解されずにそのまま残り、水素の生成はほとんどみられない。この酸化チタンの温度を450℃、500℃とあげていくと、メタンの分解が始まり、一酸化炭素と二酸化炭素と同時に、大量の水素が生成するようになる。このとき、酸素濃度が30体積%以上かつ70体積%以下、好ましくは40体積%以上かつ60体積%以下、さらに好ましくは45体積%以上かつ55体積%以下の条件で、各温度での水素生成が最大となる。なお、酸素濃度を50体積%以上に上げていった場合に水素の生成量が減少してしまうのは、メタンの完全分解の条件に近づくためである。
【0056】
「実施例2」
流動床タイプの反応器2を用い、酸化物半導体22としてアナターゼ型酸化チタン微粒子ST-01(石原産業(株)社製)を用い、この酸化チタン微粒子を250℃~450℃の範囲で加熱・保持し、この酸化チタン微粒子に、有機化合物蒸気発生器32にてメタノールを空気でバブリングして得られたメタノール蒸気を導入し、メタノール蒸気を部分酸化分解した。この時の酸素濃度を0体積%~90体積%の範囲で変化させた。
【0057】
図4は、酸素濃度をパラメータとしたときの全ガス量に対する水素ガスの生成量の温度依存性を示す図である。
この図によれば、酸素が0%では、450℃まで水素生成は続くが、酸素濃度を上げていくと、酸素が5%~10%では400℃、酸素が15%、20%、30%では350℃というように、水素生成がより低温で起こり、水素の生成温度は酸素濃度に依存することが明らかとなった。
また、水素の発生に最適な条件は、400℃では、酸素濃度が5~10%の範囲であり、この範囲でメタノールはメタン、ジメチルエーテルを経て、水、二酸化炭素、一酸化炭素と同時に最も効率よく水素を生成することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態の酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の酸化物半導体の熱励起を利用した水素生成装置を示す模式図である。
【図3】酸化チタン微粒子の温度をパラメータとしたときの水素ガスの生成量の酸素濃度依存性を示す図である。
【図4】酸素濃度をパラメータとしたときの全ガス量に対する水素ガスの生成量の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 水素生成装置
2 反応器
3 ヒータ
4 有機化合物供給管
5 酸素ガス供給管
6 不活性ガス供給管
7 混合部
8、9 配管
11~13 調整弁
21 筐体
22 酸化物半導体
23 攪拌子
31 水素生成装置
32 有機化合物蒸気発生器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3