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明細書 :マルチレベル符号化変調を用いた再送方法、送信機および受信機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5135603号 (P5135603)
公開番号 特開2009-055207 (P2009-055207A)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
公開日 平成21年3月12日(2009.3.12)
発明の名称または考案の名称 マルチレベル符号化変調を用いた再送方法、送信機および受信機
国際特許分類 H04L   1/16        (2006.01)
H04L   1/00        (2006.01)
FI H04L 1/16
H04L 1/00 E
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2007-218632 (P2007-218632)
出願日 平成19年8月24日(2007.8.24)
審査請求日 平成22年8月24日(2010.8.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】落合 秀樹
【氏名】玉川 隆士
個別代理人の代理人 【識別番号】100077481、【弁理士】、【氏名又は名称】谷 義一
【識別番号】100088915、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 和夫
審査官 【審査官】谷岡 佳彦
参考文献・文献 特表2004-533777(JP,A)
国際公開第2006/075929(WO,A1)
特開2000-031944(JP,A)
Qinlglin Luo, et al.,PERFORMANCE OF BANDWIDTH EFFICIENT MULTILEVEL HARQ SCHEMES OVER WIRELESS CHANNELS,Personal, Indoor and Mobile Radio Communications, 2004. PIMRC 2004. 15th IEEE International Symposium on,2004年 9月,Vol.4 ,p.2596 - 2600
調査した分野 H04L 1/16
H04L 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
マルチレベル符号化変調を用いた再送方法であって、
マルチレベル符号化変調信号を送信することと、
前記信号を各レベルにおいて復号し、誤り検出をすることと、
誤りの検出されたレベルについて再送を要求することと、
前記誤りの検出されたレベルの符号語を、元の送信よりも信号点間の最小距離が大きい変調方式で再送することと、
前記誤りの検出されたレベルにおいて、元の信号と再送信号を組み合わせて復号することと
を含み、前記再送することは、前記誤りの検出されたレベルの符号語に加えて、上位レベルの符号語と組み合わせて再送することを特徴とする方法。
【請求項2】
マルチレベル符号化変調を用いた再送を実装する送信機であって、
各レベルのビットを符号化するエンコーダと、
各エンコーダからの符号語のビットの組み合わせを変調シンボルにマップする変調部と、
受信機から誤りの検出されたレベルの再送要求を受信する受信器と、
前記再送要求に応答して、前記誤りの検出されたレベルの符号語を、元の送信信号よりも信号点間の最小距離が大きい変調方式を用いて前記変調部より再送させる再送制御部と
を備え、前記再送制御部は、前記誤りの検出されたレベルの符号語に加えて、上位レベルの符号語と組み合わせて前記変調部より再送させることを特徴とする送信機。
【請求項3】
請求項に記載の送信機であって、
前記エンコーダは、LDPCエンコーダであることを特徴とする送信機。
【請求項4】
マルチレベル符号化変調を用いた再送を実装する受信機であって、
マルチレベル符号化変調信号を受信し、復調する復調部と、
前記復調した信号を各レベルにおいて復号し、誤りを検出するデコーダと、
誤りの検出されたレベルについて再送要求を送信する送信器と、
前記再送要求に応答して、元の送信よりも信号点間の最小距離が大きい変調方式を用いて再送された、前記誤りの検出されたレベルの符号語に加えて、上位レベルの符号語と組み合わせて変調された信号を前記復調部で復調し、対応するデコーダで元の信号と組み合わせて復号させる再送制御部と
を備えたことを特徴とする受信機。
【請求項5】
請求項に記載の受信機であって、
前記デコーダは、LDPCデコーダであることを特徴とする受信機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレベル符号化変調を用いた再送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
限られた周波数帯域で、信頼性に優れかつ高いデータ転送速度を達成するために、周波数利用効率に優れかつ高スループットを持つパケット通信が求められている。このような通信を実現するための手段の1つとして、通信路の状態に応じて変調方式と符号を変えるHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)技術が注目されている。HSDPAでは、誤り訂正符号と再送を組み合わせたHARQ(Hybrid Auto Repeat reQuest)と呼ばれるパケット再送技術が用いられている(非特許文献1)。
【0003】
また、周波数利用効率の高い通信を実現するには、符号化変調の適用が必須である。符号化変調方式には、トレリス符号化変調方式(TCM)(非特許文献2)やマルチレベル符号化変調方式(非特許文献3)、ビットインタリーブ符号化変調方式(BICM)(非特許文献4および5)の3つが知られている。
【0004】
特にマルチレベル符号化変調方式は、非特許文献3において今井・平川により提案された方式であり、簡易に高い周波数利用効率を実現する手法として近年注目されている。この方式は、例えばヨーロッパのディジタル放送や衛星放送の分野で採用が検討された。また、非特許文献6では、マルチレベル符号化変調方式の各レベルの符号化率を最適に設計すれば、通信路容量に接近できることが示されている。
【0005】

【非特許文献1】S. Lin and D. J. Costello, Error Control Coding. Prentice Hall, second ed., 2004.
【非特許文献2】G. Ungerboeck, “Channel coding with multilevel/phase signals,” IEEE Trans. Inform. Theory, vol. IT-28, pp. 5567, Jan. 1982.
【非特許文献3】H. Imai and S. Hirakawa, “A new multilevel coding method using error correcting codes,” IEEE Trans. Inform. Theory, vol. 23, pp. 371377, May 1977.
【非特許文献4】E. Zehavi, “8-PSK trellis codes for a Rayleigh channel,” IEEE Trans. Commun., vol. 40, pp. 873884, May 1992.
【非特許文献5】G. Caire, G. Taricco, and E. Biglieri, “Bit-interleaved coded modulation,” IEEE Trans. Inform. Theory, vol. 44, pp. 927946, May 1998.
【非特許文献6】U. Wachsmann, R. F. Fischer, and J. B. Huber, “Multilevel codes: Theoretical concepts and practical design rules,” IEEE Trans. Inform. Theory, vol. 45, pp. 13611391, July 1999.
【非特許文献7】Q. Luo and P. Sweeney, “Performance of bandwidth efficient multilevel harq schemes over wireless channels,” in Proc. PIMRC '04, vol. 4, pp. 25962600, Sept. 2004.
【非特許文献8】Q. Luo and P.Sweeney, “Hybrid-ARQ protocols based on multilevel coded modulation,” Electron. Lett., vol. 39, pp. 10631065, July 2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際にパケット通信で誤りが発生した場合、再送技術は必須である。そこで、本発明は、マルチレベル符号化変調を用いた再送方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、マルチレベル符号化変調を用いた再送方法であって、マルチレベル符号化変調信号を送信することと、前記信号を各レベルにおいて復号し、誤り検出をすることと、誤りの検出されたレベルについて再送を要求することと、前記誤りの検出されたレベルの符号語を、元の送信よりも信号点間の最小距離が大きい変調方式で再送することと、前記誤りの検出されたレベルにおいて、元の信号と再送信号を組み合わせて復号することとを含み、前記再送することは、前記誤りの検出されたレベルの符号語に加えて、上位レベルの符号語と組み合わせて再送することを特徴とする。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、マルチレベル符号化変調を用いた再送を実装する送信
機であって、各レベルのビットを符号化するエンコーダと、各エンコーダからの符号語の
ビットの組み合わせを変調シンボルにマップする変調部と、受信機から誤りの検出された
レベルの再送要求を受信する受信器と、前記再送要求に応答して、前記誤りの検出された
レベルの符号語を、元の送信信号よりも信号点間の最小距離が大きい変調方式を用いて前
記変調部より再送させる再送制御部とを備え、前記再送制御部は、前記誤りの検出されたレベルの符号語に加えて、上位レベルの符号語と組み合わせて前記変調部より再送させるたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の送信機であって、前記エン
コーダは、LDPCエンコーダであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項に記載の発明は、マルチレベル符号化変調を用いた再送を実装する受信
機であって、マルチレベル符号化変調信号を受信し、復調する復調部と、前記復調した信
号を各レベルにおいて復号し、誤りを検出するデコーダと、誤りの検出されたレベルにつ
いて再送要求を送信する送信器と、前記再送要求に応答して、元の送信よりも信号点間の
最小距離が大きい変調方式を用いて再送された信号を前記復調部で復調し、対応するデコ
ーダで元の信号と組み合わせて復号させる再送制御部とを備え、前記誤りの検出されたレベルの符号語に加えて、上位レベルの符号語と組み合わせて変調されたたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の受信機であって、前記デコーダは、
LDPCデコーダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マルチレベル符号化変調/多段復号(MLC/MSD:Multi-Level Coding/Multi-Stage Decoding)方式に高効率な再送方式を組み合わせ、これにより信頼性に優れ、高いスループット特性を達成することができる。MLC/MSDシステムとHARQを組み合わせ、誤りのあるレベルのみを再送する手法は、非特許文献7および8で提案されている。この文献では、誤り訂正に畳み込み符号、誤り検出にCRC(Cyclic redundancy check)を用いており、誤りがあるレベルのみを再送することによって全体のスループットを向上させている。
【0015】
本発明では、再送する際に低いコンスタレーションを用いることにより、再送時の信頼性を改善し、高いスループットを実現している。例を挙げると、もし元の送信が64-QAMを用いていたとするならば、再送時にはQPSKや16-QAMを用いるといった具合である。これによる最大の利点は、すでに受信した符号語と再送された符号語を対数尤度比LLR(Log Likelihood Ratio)の和として容易に組み合わることができるため、効率よく高い信頼性が得られることにある。また、誤りのあるレベルだけでなく、その上位レベルも同時に送信することによりさらに再送時の信頼性を改善することができる。
【0016】
また、各レベルで誤りがあるかないかを検出するために、各符号に誤り検出の能力を付与しなければならない。一般的には、いくつかのパリティビットを付加するCRC符号が用いられる。その代替案として、本発明では誤り訂正の要素符号に低密度パリティ検査符号(LDPC:Low-Density Parity-Check)を用いることができる。LDPC符号は、シャノン限界に接近することのできる符号の1つであり、またそれ自体がブロック符号であり、そのパリティチェック行列から誤り検出ができるという特徴を持つ。また、符号化率を柔軟に選択できるため、MLCの設計に適しているという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明の概要)
本発明では、マルチレベル符号化変調/多段復号(MLC/MSD)方式に高効率な再送方式を組み合わせ、これにより高いスループット特性を達成することができる。
【0018】
マルチレベル符号化変調(MLC)では、m本の2元情報をそれぞれ別々の符号化率を有する符号で符号化し、2mの多値シンボルを用いて送信する。ここで、多値シンボルにおけるm本の通信路はそれぞれ最小距離が異なるが、ここでは最小距離の小さいものを低いレベル、最小距離の大きいものを高いレベルの通信路と呼ぶことにする。MLCでは一般に、低いレベルの2元通信路には符号化率の低い(従って誤り訂正能力が高い)符号を、高いレベルの2元通信路には符号化率の高い(従って誤り訂正能力が低い)符号を割り当てる。以下では、レベル数をm=3とし、多値変調として一次元の8-ASK(Amplitude Shift Keying)を用いた場合について説明するが、本発明は、これに限られないことに留意されたい。例えば、IおよびQ成分のそれぞれに対して8-ASKを適用すれば、二次元の64-QAMを用いたマルチレベル符号化変調を構成することができる。
【0019】
図1は、マルチレベル符号化変調の一例を示す図である。この例では、図に示すように、8-ASKコンスタレーション上の各信号点にナチュラルマッピングを用いて3ビットを割り当てている。この場合、低レベルの最下位ビットは隣り合う信号点ごとにビットが変化するので最小距離が最も小さく、誤りが生じやすい。一方、高レベルの最上位ビットは4つの信号点ごとにビットが変化するので最小距離が最も大きく、誤りが生じにくい。そこで、低レベルのエンコーダ0については符号化率を低くして誤り訂正能力を高くし、高レベルのエンコーダ2については符号化率を高くして誤り訂正能力を低くする。これにより、データの信頼性を確保しつつ、効率の良い伝送が可能となる。
【0020】
ここで、エンコーダの符号語x(0),x(1),x(2)の符号長が等しければ、すべてのビットを過不足なく、8-ASKの8つの信号点に割り当てることができる。そこで、各エンコーダの符号化率を考慮して、エンコーダに入力するビット数を調整する。具体的には、図1に示すように、各エンコーダの符号語x(0),x(1),x(2)の符号長が等しくなるように、情報ビット列qを3つのブロックq(0),q(1),q(2)に分ける。最終的に、マルチレベル符号化変調された信号は、伝送路を介して受信機に送信される。
【0021】
受信側では、マルチレベル符号化変調された受信信号を復調し、多段復号(MSD)により復号する。MSDでは、低いレベルで誤り訂正された符号語を高いレベルの符号語の復号に利用することにより復号性能を向上させることができる。
【0022】
図2に、マルチレベル符号化変調された信号を復調し、多段復号する受信機の構成を示す。受信信号X’は、ビットごとに各レベルに分離され、それぞれのデコーダにフィードされる。デコーダ0は、レベル0で受信した符号語x’(0)の復号を行う。符号語x’(0)が復号されると、8-ASKコンスタレーション上の3つのビットのうち、最下位ビットが確定する。そのため、この復号結果を用いて次のレベルの復号を行えば復号の信頼性を向上させることができる。具体的には、最下位ビットが確定すると、次のレベルで取り得る8-ASKの信号点は4つに削減される。したがって、デコーダ1は、残りの4つの信号点について、レベル1で受信した符号語x’(1)の復号を行えばよい。これにより、8つの信号点すべてについて受信符号語の復号を行う場合よりも信頼性が向上する。
【0023】
同様に、符号語x’(0)およびx’(1)が復号されると、8-ASKコンスタレーション上の3つのビットのうち、最下位ビットおよび2番目のビットが確定する。これらのビットが確定すると、次のレベルで取り得る8-ASKの信号点は2つに削減される。したがって、デコーダ2は、残りの2つの信号点について、レベル2で受信した符号語x’(2)の復号を行う。
【0024】
しかしながら、MSDでは、低いレベルでの復号の結果を高いレベルの復号に利用するため、低いレベルで復号誤りが生じると、高いレベルで正しく復号することができない。そこで本発明では、レベルごとに復号後の誤りを検出し、あるレベルで誤りが検出されれば、そのレベルのみ、またはそのレベルと上位のレベルの組み合わせを、8-ASKよりも信号点間の最小距離が大きい変調で再送する。これにより、信頼性に優れ、高いスループットを達成することができる。
【0025】
(本発明のシステム構成)
以下では、一次元のM-ASK変調の場合のシステム構成について説明するが、本発明はこれに限られない。実際のシステムには、例えば二次元のM2-QAM変調を採用することができる。マルチレベル符号化変調(MLC)において、M-ASKのコンスタレーションは、m=log2Mの2元通信路で構成され、復号側では、ASKシンボルはmレベルの2元通信路に分解される。この場合の送信機および受信機のシステム構成について以下に説明する。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態による送信機の構成例を示している。送信機300は、情報ビット列qをmブロックに区分するパーティショニング部302と、各ブロックのビット列を符号化するm個のエンコーダ0,1,...,m-1と、各エンコーダからの符号化ビットをM-ASKコンスタレーション上にマップする変調部304と、受信機からの再送指示を受信するARQ受信機308と、再送時の制御を行うARQ制御部306とを備える。
【0027】
パーティショニング部302は、情報ビット列qをmブロックの2進数のビット列q(l)に分ける。ここで、q(l)(l=0,1,...,m-1)は、l番目の2元通信路で送信されるビットを指すものとする。lレベルにおいて、エンコーダlは、情報ビットq(l)を符号化率Rl、符号長nlの符号で符号化し、符号語x(l)を出力する。ここで、各エンコーダの符号長を等しくすれば、符号長のビット数に等しいASK送信シンボル数nですべての符号語を伝送することができる。つまり、n0=n1=・・・=nm-1=nとする。このとき、全体の符号化率Rは、次式で表される。
(1) R=R0+R1+・・・+Rm-1
【0028】
変調部304は、エンコーダ0~m-1の符号語x(0),x(1),...,x(m-1)のビットを組み合わせ、M-ASKコンスタレーション上にマップする。MLCの2元ラベリングにおいて、ビットインタリーブ符号化変調(BICM)等で用いられるGrayマッピングの代わりに、上述したナチュラルマッピングを用いて、信号点間の最小距離を適切に設定することができる。ASK変調された信号は、送信機から無線などの伝送路を介して受信機に送られる。
【0029】
伝送路のSNR(Signal to Noise Ratio)が十分に高く雑音の影響が無視できる場合、符号が理想的なものであれば再送の必要はない。しかし、実システムにおいては、雑音その他の影響により誤りが発生する。そのため、再送制御(ARQ)が必要となる。誤り訂正可能な符号化と再送制御を組み合わせたものをハイブリッドARQ(HARQ)という。HARQでは、受信側で訂正できず誤りがあるパケットを検出すると、送信側に通知し、送信側から誤りが検出されたパケットを再送する。このHARQには、一般に、タイプIとタイプIIがあり、タイプIでは、誤りが検出されたパケットを再送し、タイプIIでは、各パケットのパリティビットを再送する。一般に、再送パケットには誤った情報ビットだけでなく、正しく受信された情報ビットも含まれるため、誤った情報ビットの数が少なければ、非効率的である。
【0030】
本発明では、パケットを複数のレベルに分割して伝送するマルチレベル符号化変調を用いて、再送時にすべてのレベルを再送するのではなく、誤りが検出されたレベルをより低いコンスタレーションで再送する。これにより、不必要な再送を抑え、より信頼性の高い再送が可能になる。具体的には、ARQ受信機308が、受信側からの再送指示を受け付ける。この再送指示に従って、ARQ制御部306が、誤りが検出されたレベルの符号語を2-ASK(BPSK)変調で送信するように変調部304を制御する。あるいは、ARQ制御部306が、誤りが検出されたレベルの符号語だけでなく、その上位レベルの符号語を送信するのに適した変調で送信するように変調部304を制御する。例えば、m-2のレベルに誤りが検出された場合は、m-2のレベルの符号語x(m-2)と、その上位レベルであるm-1のレベルの符号語x(m-1)を4-ASK変調で送信する。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態による受信機の構成例を示している。受信機400は、受信信号X’を復調する復調部402と、各レベルの復調ビットを復号するm個のデコーダ0,1,...,m-1と、各デコーダからの復号ビット列の誤りを検出し、情報ビット列q’を出力する誤り検出部404と、誤りが検出された場合に送信側に再送指示を送信するARQ送信機408と、再送時の制御を行うARQ制御部406とを備える。
【0032】
復調部402は、マルチレベル符号化変調された受信信号X’をM-ASKに従って復調する。復調ビットは、それぞれのレベルのデコーダ0,1,...,m-1に分配される。各デコーダ0,1,...,m-1では、エンコーダ0,1,...,m-1に対応する復号を行う。例えば、各エンコーダの符号化には、シャノン限界に近い特性を有するLDPC(Low Density Parity Check)符号を用いることができる。LDPC符号は、誤り訂正だけでなく、誤り検出も可能なので、その結果を再送制御に利用することができる。ターボ符号を用いる場合は、再送制御のための誤り検出としてCRC(Cyclic Redundancy Check)ビットを付加する必要がある。
【0033】
デコーダlは、レベルlでの復調ビットの復号を行う。LDPC符号の場合、デコーダlは、元の送信による受信語x’0(l)の対数尤度比(LLR)を計算する。これをL(x’0(l))と表す。このLLRを用いてSum product復号を行う。そして、誤り検出部404において、パリティチェックの結果、復号が正しく行えなかったと判明したとき、その情報をARQ送信機408から送信機300に通知し、符号語x(l)を再送してもらう。このように、誤りの検出されたレベルの符号語のみを再送するARQを、本明細書ではモード1と称する。
【0034】
再送時には、送信機300のARQ制御部306で適した変調方式が選択されるので、受信機400においても、ARQ制御部406が復調部402を制御して対応する復調方式を選択する。例えば、1つのレベルで誤りが検出されたときは、2-ASKの変調方式が選択され、2つのレベルで誤りが検出されたときは、4-ASKの変調方式を選択する。そして、デコーダlは、再送された受信語x’1(l)からLLRを計算し、次式のように前回のLLRと組み合わせる。
(2) L(x’(l))=L(x’0(l))+L(x’1(l)
このL(x’(l))を用いて、x(l)を復号する。
【0035】
ここで、注目すべき点は、符号語、すなわちパケットの長さnがすべてのレベルおよび再送において同一であるため、符号の結合は単純にLLRの和であり、計算が容易であることである。このプロセスは、デコーダlで誤りなく情報が得られるまで繰り返される。再送必要回数をNrとすると、デコーダがこの反復(イタレーション)から抜け出すときのLLRは次式のように表される。
【0036】
【数1】
JP0005135603B2_000002t.gif

【0037】
このARQモード1は、誤りの検出されたレベルに対して再送により信頼性を向上させることができるが、再送時に、誤りが検出されたレベルと、もう1つ上のレベルを4-ASKの変調を用いて送信することもできる。本明細書では、このARQをモード2と称する。
【0038】
ARQモード2では、デコーダlでtl回目に再送された受信語のペア{x’tl(l),x’tl(l+1)からは、L(x’tl(l))とL(x’tl(l+1))が導き出される。このモードでは、誤りが検出されたレベルだけでなく、1つ上のレベルも再送しているため、上のレベルで復号を行う際に、信頼性が向上し、再送回数を減らすことができる。しかし、4-ASKは、2-ASKと比べて、送信シンボルの信号点間の最小距離が小さいため、このモードは、SNRが高い領域では効果があるが、SNRが低い領域、つまり最小距離が復号性能において支配的となってくる領域では必ずしも効率的であるとはいえない。
【0039】
さらに上記の考え方を一般化して、ARQモードmを定義することができる。すなわち、誤りが検出されたレベルlと、その上のすべてのレベルを2m-l-ASKの変調で再送するモードである。モードの選択は、変調基準、使用する符号、伝送路のSNRなどのパラメータにより左右される。
【0040】
(シミュレーション結果)
本発明の一実施形態によるハイブリッドARQの性能をシミュレーションにより検証した。このシミュレーションでは、変調方式を8-ASKとし、比較対象として、ビットインタリーブ符号化変調(BICM)を用いた。表1にこのシミュレーションの諸元を示す。
【0041】
【表1】
JP0005135603B2_000003t.gif

【0042】
各パケットのシンボル数をnとして、MLC/MSDは長さnでm個の符号語を送信しているが、BICMは符号長をこれよりも長く取ることができる。特に、2m-ASKで符号語がn×mのとき、BICMは符号長がMLC/MSDのm倍になる。このため、非特許文献6に記載の通信路容量の法則(以下、「キャパシティルール」と呼ぶ)を適用して最適設計したMLC/MSDよりも、時としてBICMの方がよりよい性能を示すこともありうる。
【0043】
伝送レートRが与えられたときの各符号化率Rlは、キャパシティルールを適用し、最適化を行っている。ただし、高いレベルにおいて、このルールから得られる符号化率が1であった場合は、本発明を適用する上で再送時の復号を考慮して、若干符号化率を下げている。
【0044】
本シミュレーションでは、変調に8-ASKを用い、1シンボル当りm=3ビットを送信している。その際、各レベルの符号化率は、キャパシティルールにより設計し、R0=0.5,R1=0.98,R2=0.98としており、全体の伝送レートは、R=2.46となっている。同様に、BICMのパラメータも同じ伝送レートになるように設定している。
【0045】
本シミュレーションでは、2つの再送スキームを評価した。図5は、すべてのレベルでARQモード1を適用している。これを本明細書では、スキーム1と称する。これに対して、図6は、最も低いレベル0にARQモード2を適用し、他のレベル1および2にARQモード1を適用している。これを本明細書では、スキーム2と称する。
【0046】
図7に、ビット誤り率(BER)の特性を示す。この図から、再送なしの場合はMLC/MSDとBICMはほぼ同じBER特性を示していることがわかる。実際には、BICMの方が若干特性がよい。これはBICMの方が符号長が長く、またMLC/MSDの符号化率の設定が再送を考慮して、非特許文献6のキャパシティルールに対し若干符号化率を下げているためであると考えられる。
【0047】
次に1回の再送を許容すると、BER特性に大きな違いが現れる。スキーム1では、BICMよりも特性が悪いが、スキーム2ではBICMよりも特性の改善が大きい。これは、後述するキャパシティの観点から説明できる。具体的には、まず、図11のSNRが約7dBから13dBの領域に注目する。スキーム2ではすべてのレベルにARQモード1を適用しており、1回の再送を許容することによって、レベル0のキャパシティ曲線が2-ASKの曲線へと移動する。これによって、レベル0において符号化率がキャパシティ値を下回り誤りが減少する。しかし、1つ上のレベル1の符号化率はレベル1のキャパシティ値を上回っている。よって、レベル1では誤りを訂正することができず、全体として誤りがあるということになる。
【0048】
一方、スキーム2ではレベル0の再送にARQモード2を適用している。1回の再送によって、レベル0のキャパシティ曲線はレベル0の4-ASK、レベル1のキャパシティ曲線はレベル1の4-ASKの曲線へ移動する。これによって、レベル0、レベル1共にそれぞれの符号化率がキャパシティ値を下回る。その結果、このSNRの領域において、全体として誤りが減少したということになる。
【0049】
図8は、復号誤り率(DER)の特性を示している。これもBER特性と同様の結果を示している。次に、誤りなく情報を復号できるまでに必要な平均再送回数を評価した。
【0050】
図9は、平均必要再送回数Nrの特性を示している。この図から、SNRが低い領域ではスキーム1でNrが最も低く、最もよい結果を示していることが分かる。しかし、Nrは5よりも大きく、実際のアプリケーションを考えると実用的でないように考えられる。反対に、SNRが中程度の領域では、スキーム2の方がよい。この領域ではNrは3よりも小さい。以上より、SNRが低い領域ではスキーム1の方がよいが、SNRが高い領域ではスキーム2の方が効率的であることが分かる。したがって、SNRによって、モードあるはスキームを適切に切り換えることにより、本発明によるHARQの方がBICMを用いたものよりも性能がよくなるといえる。
【0051】
最後に、スループット特性を評価した。送信において、スループットは以下のように定義される。
(4) スループット=(1-DER)R [bit/dimension]
このシミュレーションでは、誤りなく全体の情報が受信されるまで再送を繰り返しているので、スループットを以下のように再定義する。
(5) スループット=R/(1+Nr) [bit/dimension]
【0052】
図10に、このスループットによる特性を示す。この図より、SNRが低い領域ではスキーム1が最も優れていることが分かる。しかし、0.2[bit/dimension]程度ととても低いものである。SNRが高くなってきた領域では、スキーム2が最も良い。また、SNRが13.5dB近辺でスループットが急激に上昇している原因は、後述のキャパシティの解析から説明できる。図11を見ると、SNRが約13dBを超えると、符号化率がキャパシティ値を下回っている。つまり、誤りがなくなり、再送の必要がなくなったと考えられる。これが図10でSNRが約13.5dBを超えると急激にスループットが上昇している原因である。また、SNRが約8dBから13dBまでは一定のスループット値をとっている。これは、スキーム1においては再送2回、スキーム2においては再送1回でそれぞれ符号化率がキャパシティ値を下回っているため、それ以上の再送をこのSNRで必要としないためである。このように、SNRによって再送スキームまたはモードを適切に切り換えることにより、本発明によるHARQの方がBICMを用いたものよりも性能がよくなることが分かる。
【0053】
(キャパシティの解析)
本発明による再送法を、通信路容量(キャパシティ)の観点から理論解析すると次のようになる。キャパシティと符号化率との関係を、まず次のように言い換える。あるSNRにおいてキャパシティの値よりも符号化率が下回っていれば、(シャノン限界にどれだけ接近できるかという符号自体の性能にもよるが)そのSNRで誤りなく通信を行える。本発明による再送法では、各レベルの符号化率は常に一定であり、再送時に変えているのはコンスタレーションである。このとき、コンスタレーションを下げているので、キャパシティで考えると、キャパシティの曲線が左に移動したと見なせる。
【0054】
例を挙げると、元の送信が8-ASKのコンスタレーションを用いており、あるSNRにおいて符号化率がキャパシティの値を超えてしまい、訂正できない誤りが生じたとする。ここで再送時に2-ASKで再送すると、キャパシティは8-ASKのキャパシティ曲線から2-ASKの曲線へずれたと見なせる。つまり、あるSNRにおいてキャパシティの値は上昇し、(元の送信時には符号化率の方がキャパシティの値を超えていたが)符号化率が下回ることになる。これによって誤りなく通信が行える。また復号の際に、再送前のLLRを加算しているため、キャパシティさえ満たせばほぼ誤りを訂正できると考えられる。
【0055】
図11に、元の送信に8-ASKのコンスタレーションを用いた上記のシミュレーションにおけるキャパシティを示す。この図において、平行に引かれた実線はシミュレーションにおいて用いた符号化率0.5,0.98を示すものである。上記の例をこの図で説明する。8-ASKでレベル0のキャパシティは、レベル0の8-ASKに示されており(非特許文献6)、レベル0の符号化率は0.5であるとする。SNRが約13.5dB以下では、符号化率0.5はキャパシティの値を上回っており、誤りなく通信ができるとはいえない。ここでモード1の2-ASKを用いて再送したとすると、レベル0の8-ASKのキャパシティ曲線は2-ASKの曲線へとずれる。すると、符号化率0.5は約-3dBまではキャパシティ曲線を下回ることになり、1回の再送でレベル0は誤りなく通信ができるといえる。
【0056】
次に、再送の際にモード2でレベル0とレベル1を4-ASKのコンスタレーションを用いて再送した場合を考える。このときレベル1の符号化率は0.98である。4-ASKでレベル0のキャパシティは、レベル0の4-ASKで示され、レベル1のキャパシティは、レベル1の4-ASKで示されている(非特許文献6)。先ほどの場合と同じく、SNRが約13.5dB以下では符号化率がレベル0および1ともにそれぞれの8-ASKのキャパシティ値を上回っている。ここで4-ASKで再送したとすると、レベル0および1のキャパシティ曲線がそれぞれ8-ASKのものから4-ASKのものへとずれる。すると、レベル0においてはSNRが約6dBまでは、レベル1においては約6.9dBまでは符号化率がキャパシティを下回るようになる。つまり、デコーダ0においてモード2で再送を行えば、レベル0においては約7.5dB、レベル1においては約6.6dBの利得が得られたことになる。
【0057】
このようにキャパシティの観点から、あるSNRにおいて符号化率がキャパシティを下回るように再送のモードを選んでやればよい。ただ、注意しなくてはいけない点は、どれか1つのレベルが誤ってしまうと全体として誤りがあることになるので、すべてのレベルの符号化率がキャパシティを下回るように設定しなければならないことである。
【0058】
以上、本発明について、具体的にいくつかの実施形態について説明したが、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。ここに例示した実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなくその構成と詳細を変更することができる。さらに、説明のための構成要素および手順は、本発明の趣旨から逸脱することなく変更、補足、またはその順序を変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】マルチレベル符号化変調の一例を示す図である。
【図2】多段復号の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による送信機の構成例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による受信機の構成例を示す図である。
【図5】本発明に従ってすべてのレベルでARQモード1を適用したスキーム1の構成例を示す図である。
【図6】本発明に従って最も低いレベル0にARQモード2を適用し、他のレベル1および2にARQモード1を適用したスキーム2の構成例を示す図である。
【図7】シミュレーションによるビット誤り率(BER)の特性を示す図である。
【図8】シミュレーションによる復号誤り率(DER)の特性を示す図である。
【図9】シミュレーションによる平均必要再送回数Nrの特性を示す図である。
【図10】シミュレーションによるスループットの特性を示す図である。
【図11】シミュレーションにおけるキャパシティについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
300 送信機
302 パーティショニング部
304 変調部
306 ARQ制御部
308 ARQ受信機
400 受信機
402 復調部
404 誤り検出部
406 ARQ制御部
408 ARQ送信機
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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