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明細書 :物理的刺激応答非水系組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5066719号 (P5066719)
登録日 平成24年8月24日(2012.8.24)
発行日 平成24年11月7日(2012.11.7)
発明の名称または考案の名称 物理的刺激応答非水系組成物
国際特許分類 C08L 101/12        (2006.01)
C08K   5/3445      (2006.01)
FI C08L 101/12
C08K 5/3445
請求項の数または発明の数 6
全頁数 17
出願番号 特願2007-514564 (P2007-514564)
出願日 平成18年4月13日(2006.4.13)
国際出願番号 PCT/JP2006/307837
国際公開番号 WO2006/117997
国際公開日 平成18年11月9日(2006.11.9)
優先権出願番号 2005127735
優先日 平成17年4月26日(2005.4.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年4月10日(2009.4.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】渡邉 正義
【氏名】上木 岳士
【氏名】徳田 浩之
個別代理人の代理人 【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100102130、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 尚人
審査官 【審査官】大熊 幸治
参考文献・文献 特開2001-256828(JP,A)
特開2002-50414(JP,A)
特開平10-265674(JP,A)
特開平10-265673(JP,A)
特開2000-323190(JP,A)
Md. Abu Bin Hasan Susan, et al.,Ion Gels Prepared by in Situ Radical Polymerization of Vinyl Monomers in an Ionic Liquid and Their Characterization as Polymer Electrolytes,Journal of the American Chemical Society,2005年,127(13),4976-4983
調査した分野 C08L 101/12
C08K 5/3445
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
第1モノマーを重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第1モノマーを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子であって、
前記第1モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ラクトン、グリコール、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつアリール基、炭素数1以上の直鎖アルキル基、及び炭素数3以上の分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合し、
前記高分子体は前記第1モノマーを架橋重合したものであって、前記イオン液体を内部に取り込んだゲル状であり、かつゲル状の該高分子体が前記イオン液体中に分散してなり、物理刺激に応答して可逆的に体積変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子
【請求項2】
第1モノマーと第2モノマーとを共重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第1モノマーと第2モノマーとを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子であって、
前記第1モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつアリール基、炭素数1以上の直鎖アルキル基、及び炭素数3以上の分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、
前記第2モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ直鎖アルキル基、及び分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、
前記第2モノマーの直鎖アルキル基又は分枝アルキル基の炭素数は、前記第1モノマーの直鎖アルキル基又は分枝アルキル基の炭素数より小さく、
前記第1モノマー及び第2モノマーを架橋剤を用いずに共重合した線形高分子が示す相分離温度は、前記第1モノマーのみを架橋剤を用いずに重合した線形高分子が示す相分離温度より高く、
前記高分子体は前記第1モノマー及び第2モノマーを架橋重合したものであって、前記イオン液体を内部に取り込んだゲル状であり、かつゲル状の該高分子体が前記イオン液体中に分散してなり、物理刺激に応答して可逆的に体積変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子
【請求項3】
第1モノマーと第3モノマーとを共重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第1モノマーと第3モノマーとを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子であって、
前記第1モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつアリール基、炭素数1以上の直鎖アルキル基、及び炭素数3以上の分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、
前記第3モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ水素、水酸基、複素環アミンの群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合したものであるか、又はビニル基からなる骨格にアリール基が結合したものであり、
前記第1モノマー及び第3モノマーを架橋剤を用いずに共重合した線形高分子が示す相分離温度は、前記第1モノマーのみを架橋剤を用いずに重合した線形高分子が示す相分離温度より低く、
前記高分子体は前記第1モノマー及び第3モノマーを架橋重合したものであって、前記イオン液体を内部に取り込んだゲル状であり、かつゲル状の該高分子体が前記イオン液体中に分散してなり、物理刺激に応答して可逆的に体積変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子
【請求項4】
第2モノマーと第3モノマーとを共重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第2モノマーと第3モノマーとを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子であって、
前記第2モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ直鎖アルキル基、及び分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、
前記第3モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ水素、水酸基、複素環アミンの群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合したものであるか、又はビニル基からなる骨格にアリール基が結合したものであり、
前記高分子体は前記第2モノマー及び第3モノマーを架橋重合したものであって、前記イオン液体を内部に取り込んだゲル状であり、かつゲル状の該高分子体が前記イオン液体中に分散してなり、物理刺激に応答して可逆的に体積変化する物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子
【請求項5】
前記第1モノマーは、メタクリル酸ベンジル、オクタデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、ε-カプロラクトンの群から選ばれる1種以上である請求項項1ないし3のいずれかに記載の物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子
【請求項6】
前記イオン液体の極性パラメータE(30)が48.2~52.4である請求項1ないし5のいずれかに記載の物理刺激応答非水系組成物からなる体積可変素子
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的刺激に応答するゲル等の組成物に関し、特に、新規の物理刺激応答非水系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高分子体ハイドロゲルが周囲の物理化学的刺激(温度、イオン強度、pH、電場、光、磁場等)に応答して体積変化することが知られている。そして、このようなハイドロゲルの体積変化を利用したアクチュエータ(例えば、特許文献1参照)、薬剤放出を制御してDDS(薬物送達システム)に用いるためのゲル(例えば、特許文献2参照)、培養体(例えば、特許文献3参照)等が応用技術として報告されている。
これらのハイドロゲルは、物理刺激に応じて、高分子体の網目構造の間に溶媒である水が出入りし、可逆的なゲルの体積変化を伴うものである。
しかしながら、上記したハイドロゲルの場合、溶媒である水が経時により蒸発するため、開放系でゲルを長期間使用することができず、実用性の点で問題があった。そこで、本発明者らは、高分子としてポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAと称する)を用い、非水系溶媒として、不燃性、不揮発性を有する溶媒として注目されているイオン液体を用いた非水系ゲルを提案した(非特許文献1参照)。
【0003】

【特許文献1】特開2004-188523号公報
【特許文献2】特開平11-189626号公報
【特許文献3】特開2005-60570号公報
【非特許文献1】上木岳士、渡辺正義、「イオン液体中におけるPNIPAの溶解挙動及び感温性イオンゲルの創製」、第16回高分子ゲル研究討論会講演要旨集、社団法人高分子学会、2005年1月12日、93頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したPNIPAの場合、物理刺激に対する応答性が緩慢であるという懸念がある。
従って、本発明の目的は、溶媒が揮発せずに開放系で実用可能な新規の物理刺激応答非水系ゲルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、非水系溶媒として、不燃性、不揮発性を有する溶媒として注目されているイオン液体(イオン性液体)を用いることで上記課題を解決するに至った。イオン液体は、イオンのみから構成され、液体でありながら蒸気圧がなく(不揮発性)、耐熱性が高く、液体温度範囲が広いという特徴がある。
すなわち本発明の物理刺激応答非水系組成物は、第1モノマーを重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第1モノマーを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物であって、前記第1モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ラクトン、グリコール、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつアリール基、炭素数1以上の直鎖アルキル基、及び炭素数3以上の分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合している。
【0006】
又、本発明の物理刺激応答非水系組成物は、第1モノマーと第2モノマーとを共重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第1モノマーと第2モノマーとを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物であって、前記第1モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつアリール基、炭素数1以上の直鎖アルキル基、及び炭素数3以上の分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、前記第2モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ直鎖アルキル基、及び分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、前記第2モノマーの直鎖アルキル基又は分枝アルキル基の炭素数は、前記第1モノマーの直鎖アルキル基又は分枝アルキル基の炭素数より小さく、前記第1モノマー及び第2モノマーを架橋剤を用いずに共重合した線形高分子が示す相分離温度は、前記第1モノマーのみを架橋剤を用いずに重合した線形高分子が示す相分離温度より高い。
【0007】
又、本発明の物理刺激応答非水系組成物は、第1モノマーと第3モノマーとを共重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第1モノマーと第3モノマーとを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物であって、前記第1モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつアリール基、炭素数1以上の直鎖アルキル基、及び炭素数3以上の分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、前記第3モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ水素、水酸基、複素環アミンの群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合したものであるか、又はビニル基からなる骨格にアリール基が結合したものであり、前記第1モノマー及び第3モノマーを架橋剤を用いずに共重合した線形高分子が示す相分離温度は、前記第1モノマーのみを架橋剤を用いずに重合した線形高分子が示す相分離温度より低い。
【0008】
又、本発明の物理刺激応答非水系組成物は、第2モノマーと第3モノマーとを共重合してなる高分子体とイオン液体とを含み、前記第2モノマーと第3モノマーとを架橋剤を用いずに重合した線形高分子を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する物理刺激応答非水系組成物であって、前記第2モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ直鎖アルキル基、及び分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合していて、前記第3モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ水素、水酸基、複素環アミンの群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合したものであるか、又はビニル基からなる骨格にアリール基が結合したものである。
【0009】
前記第1モノマーは、メタクリル酸ベンジル、オクタデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、ε-カプロラクトンの群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記イオン液体の極性パラメータE(30)が48.2~52.4であることが好ましい。
前記高分子体は前記第1ないし第3モノマーを架橋重合してなり、前記物理刺激応答非水系組成物はゲル状であり、かつ物理刺激に応答して可逆的に体積変化することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶媒が揮発せずに開放系で実用可能な新規の物理刺激応答非水系組成物(ゲルを含む)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明に係る物理刺激応答非水系組成物は、以下の高分子体とイオン液体とを含む。又、本発明に係る組成物は、ゲル状のものと溶液のものとに分けられる。ゲル状のものは以下のモノマーを架橋重合した場合に得られ、溶液状のものはモノマーを架橋せずに重合した場合に得られる。
【0012】
1.ゲル状組成物
本発明に係る組成物がゲル状の場合について説明する。
<高分子体>
高分子体はモノマーを架橋重合してなり、架橋重合によって得られる網目構造の間に、溶媒であるイオン液体が出入りし、可逆的なゲルの体積変化を伴う。
モノマーと架橋剤の配合比率としては、例えば、モノマーの濃度を700mmol(ミリモル)/L以上とし、架橋剤をそれに対して数%程度とすることができる。
モノマーの重合を行うため、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば光開始剤を用いることができ、反応系に光照射することで重合を進行させることができる。なお、ゲル状の場合、高分子体の重合度は、通常無限大と定義される。
【0013】
上記高分子体は、重合するモノマーの種類に応じて以下の4つの種類がある。
(1)高分子体1
高分子体1は、アクリル酸、メタクリル酸、ラクトン、グリコール、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつアリール基、炭素数1以上の直鎖アルキル基、及び炭素数3以上の分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合しているモノマー(以下、「第1モノマー、又はモノマーC」という)を重合してなる。
第1モノマーは、モノマー中の主鎖(骨格)と側鎖(骨格に結合している部分)のイオン液体への親和性がそれぞれ異なるため、得られた高分子がイオン液体中で相転移を起こして物理的刺激に応答できるようになっている。
上記直鎖アルキル基は炭素数10以上であることが好ましく、上記分枝アルキル基は炭素数10以上であることが好ましい。
【0014】
第1モノマーとしてメタクリル酸ベンジル、オクタデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、ε-カプロラクトンの群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。特に、第1モノマーとして、化学式
【化1】
JP0005066719B2_000002t.gif
で表されるメタクリル酸ベンジルを用いることが最も好ましい。
メタクリル酸ベンジルを用いると、得られたゲルの透明性、屈折率が高くなり、光学材料として好ましい。
【0015】
(2)高分子体2
高分子体2は、上記第1モノマーと第2モノマー(又はモノマーBという)とを共重合してなる。
第2モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ直鎖アルキル基、及び分枝アルキル基の群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合しているものである。
第2モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルシロキサン、ビニルピロリドンが挙げられる。
高分子体2において、第2モノマーの直鎖アルキル基又は分枝アルキル基の炭素数は、前記第1モノマーの直鎖アルキル基又は分枝アルキル基の炭素数より小さい。例えば、第1モノマーの直鎖アルキル基の炭素数が5の場合、第2モノマーの直鎖アルキル基又は分枝アルキル基の炭素数を4以下とする。
【0016】
ここで、第1モノマー及び第2モノマーを架橋剤を用いずに共重合した線形高分子が示す相分離温度は、前記第1モノマーのみを架橋剤を用いずに重合した線形高分子が示す相分離温度より高い。第2モノマーとして第1モノマーより相分離温度温度が高いものを用いることで、これらを共重合した線形高分子の相分離温度を高くすることができ、本発明の物理刺激応答非水系組成物の用途に応じて相分離温度を調整できる。
好ましい第1モノマーとしてメタクリル酸ベンジルが挙げられ、第二モノマーとしてはメタクリル酸メチル(MMA)などの短鎖メタクリル酸エステル類が挙げられるが、溶媒に高い親和性を持つポリマーの構成成分であれば特に限定されない。
【0017】
(3)高分子体3
高分子体3は、上記第1モノマーと第3モノマー(又はモノマーAという)とを共重合してなる。
第3モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ラクトン、グリコール、ビニル基、及びシロキサンの群から選ばれる1種以上を骨格に有し、かつ水素、水酸基、複素環アミンの群から選ばれる1種以上が前記骨格に結合したものであるか、又はビニル基からなる骨格にアリール基が結合したものである。
第3モノマーとしては、例えば、ビニルアルコール、テトラフルオロエチレン、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、4-ビニルピリジン、スチレンが挙げられる。
【0018】
ここで、第1モノマー及び第3モノマーを架橋剤を用いずに共重合した線形高分子が示す相分離温度は、前記第1モノマーのみを架橋剤を用いずに重合した線形高分子が示す相分離温度より低い。第3モノマーとして第1モノマーより相分離温度が低いものを用いることで、これらを共重合した線形高分子の相分離温度を低くすることができ、本発明の物理刺激応答非水系組成物の用途に応じて相分離温度を調整できる。
好ましい第1モノマーとしてメタクリル酸ベンジルが挙げられ、第三モノマーとしてはスチレン(St)などのアリール基を有するモノマーが挙げられる。第三モノマーとしては溶媒に低い親和性を持つポリマーの構成成分であれば特に限定されない。
【0019】
(4)高分子体4
高分子体4は、上記第2モノマーと第3モノマーとを共重合してなる。
この場合、温度に係わらず溶媒(イオン液体)に相溶するポリマーを構成する(イオン液体への親和性の高い)第2モノマーと、温度に係わらず溶媒(イオン液体)と相分離するポリマーを構成する(イオン液体への親和性の低い)第3モノマーとを共重合することにより、高分子中にイオン液体への親和性が異なる部分が生じ、これにより、高分子体1と同様、得られた高分子がイオン液体中で相転移を起こして物理的刺激に応答できるようになっている。
第3モノマー(モノマーA)はイオン液体と完全に相分離し、第2モノマー(モノマーB)はイオン液体と完全に相溶するため、これらのモノマーを共重合化することで、ゲルとしての適度の特性が得られる。
【0020】
なお、本発明において、例えば高分子体1は、第1モノマーに規定される範囲のものであれば、複数のモノマーを重合したものも含む。他の高分子体も同様である。
【0021】
<線形高分子>
本発明においては、上記モノマーを架橋剤を用いずに重合した線形高分子(モノマーの組合せは、上記高分子体1~4にそれぞれ対応)を前記イオン液体へ溶解した場合に、物理刺激に応じて当該線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する特性を有する。
つまり、線形高分子がイオン液体と相分離した場合、上記高分子体のイオン液体への親和性が低下し、上記高分子体の網目構造からイオン液体が外部に排出されてゲルが収縮する。一方、線形高分子がイオン液体に溶解した場合、上記高分子体のイオン液体への親和性が向上し、上記高分子体の網目構造にイオン液体が取り込まれてゲルが膨潤する。従って、線形高分子が相分離状態と溶解状態とに可逆的に変化する場合、得られたゲルのイオン液体に対する親和性が物理刺激に応じて変化し、ゲルが可逆的に体積変化する。
線形高分子が相分離状態にあるか、溶解状態にあるかは、線形高分子をイオン液体へ溶解した液の光透過率を測定して判定することができ、線形高分子が相分離状態にあると液が白濁し、線形高分子が溶解状態にあると液が透明になる。
【0022】
<物理刺激>
本発明のゲルに与える物理刺激としては、温度、光、電磁波等が挙げられる。例えば、物理刺激を温度とした場合、温度上昇とともにゲルが収縮する場合と、ゲルが膨潤する場合とがある。上記したメタクリル酸ベンジルをモノマーに用いる場合、温度上昇とともにゲルが収縮する。又、上記したオクタデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、ε-カプロラクトンの群から選ばれる1種以上を用いる場合、温度上昇とともにゲルが膨潤する。
【0023】
<イオン液体>
イオン液体(イオン性液体)は、イオンのみから構成され、液体でありながら蒸気圧がなく(不揮発性)、耐熱性が高く、不燃性、不揮発性を有する。本発明において、イオン液体の融点は好ましくは100℃以下、より好ましくは室温以下とする。
【0024】
イオン液体の極性パラメータE(30)が48.2~52.4であることが好ましい。イオン液体はイオン伝導体であるため誘電損失が大きく、誘電率を見積もることが困難である。そこで、ソルバトクロミズムを利用した溶媒の極性パラメータE(30)をイオン液体の指標とすることが好ましい。
ここで、E(30)が48.2未満であるイオン液体や、E(30)が52.4を超えるイオン液体は入手し難いので、上記範囲とした。
【0025】
(30)は、化学式
【化2】
JP0005066719B2_000003t.gif
に示すベタイン系の色素を溶媒(イオン液体)に溶解させ、極大吸収波長λmaxを測定し、式1
(30)=28591/λmax (1)
から計算することができる。E(30)と、その溶媒のルイス酸性を定量化した値(アクセプターナンバー)との間に非常によい相関が見られるので、E(30)はイオン液体のルイス酸性を表すと考えられる。
【0026】
イオン液体としては、特に制限されないが、例えばカチオンとしてアンモニウム構造、イミダゾリウム構造、ピリジニウム構造、ピロリジニウム構造、スルフォニウム構造、ホスフォニウム構造等を用いることができ、アニオンとしてスルフォンイミド構造、ホスフェート構造(ヘキサフルオロホスフェート等)、ボレート構造(テトラフルオロボレート)、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ硫酸、酢酸、ハロゲン系アニオン(Cl,Br,I)、クロロアルミナート、チオシアネート等を用いることができる。具体的には、
化学式
【化3】
JP0005066719B2_000004t.gif
で表される1-エチル-3-メチルイミダゾリウムをカチオンとし、ビス(トリフルオロメタンスルフォン)イミド((CF3SO22N-)をアニオンとしたもの(EMITFSI、融点-18℃、E(30)=52.2)、及び/又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムをカチオンとし、塩素イオンをアニオンとしたもの(融点87℃)を好適に用いることができる。
なお、E(30)の値から、EMITFSIのルイス酸性は非水系極性溶媒であるDMSOやDMFよりも高く、アルコール類と同程度であると考えられる。
【0027】
本発明のゲルは、温度等の物理刺激によって可逆的に体積変化を生じさせることができるので、例えば光学材料、表示素子、各種センサー、アクチュエータ、DDS等に用いることができる。
【0028】
<ゲルの製造>
本発明のゲルは、例えば、イオン液体中に上記モノマーを分散させた状態で、モノマーを架橋重合することにより、イオン液体を内部に取り込んだ高分子体を得ることができる。
特に、イオン液体の粘性率が水より数10倍高い場合(例えば、EMITFSIを用いた場合)、ゲル網目の共同拡散係数が低下し、平衡到達時間が大幅に遅延する問題がある。そのため、微粒子ゲルを用いることが好ましい。
【0029】
微粒子ゲルは、例えば、直径10μm程度の球状の細孔を有するマクロポーラスポリスチレンを鋳型とし、モノマー、イオン液体、架橋剤、及び必要に応じて重合開始剤を含有する溶液に上記鋳型を浸漬し、細孔内でモノマーを重合させることで製造することができる。その後、トルエンに鋳型を浸漬して鋳型を溶解し、球状の微粒子ゲルを得る。微粒子ゲルをエタノール及び純水で洗浄後、凍結乾燥し、イオン液体に微粒子ゲルを浸漬して減圧加熱することにより、ゲルを製造することができる。
【0030】
上記した方法を用いてもよいが、懸濁重合によってゲルを製造することが好ましい。この方法は、強攪拌した水相に、モノマー、イオン液体、架橋剤、及び必要に応じて重合開始剤を含有する分散相を滴下し、高分子体の架橋重合を進行させ、微粒子ゲルを製造する。イオン液体を含むゲルは水より比重が大きいため、反応終了後の液からゲルを回収するのが容易である。通常、微粒子ゲルの粒径は数μm~数100μm程度である。微粒子ゲルは、表面積が大きく、物理刺激に対する応答が速いという利点がある。又、懸濁重合の場合、上記したマイクロポーラスポリスチレンによる鋳型が不要であり、生産性、コストの点でも好ましい。
【0031】
重合開始剤としては、例えば光開始剤を用いることができ、上記分散相を滴下後、反応系に光照射することで重合を進行させることができる。
得られた微粒子ゲルをイオン液体中に分散させ、減圧下で静置して高分子体の再膨潤と乾燥を行い、最終形態とすることができる。
【0032】
2.溶液状組成物
次に、本発明に係る組成物が溶液の場合について説明する。溶液状組成物の場合、モノマーを架橋剤を用いずに重合すること以外は、上記したゲル状組成物の場合とまったく同様である。溶液状組成物に用いるモノマー、重合開始剤、イオン液体としては、上記ゲル状組成物に用いるものを例示できる。溶液状組成物の製造方法も、上記したゲルの製造において架橋剤を配合しないこと以外は、上記したゲル状組成物の場合とまったく同様である。
なお、溶液状組成物における高分子体は、上記線形高分子と同一物である。
【0033】
上記溶液状組成物に物理刺激を与えると、線形高分子が相分離状態と溶解状態との間で可逆的に変化する。線形高分子が相分離状態にあると液が白濁し、線形高分子が溶解状態にあると液が透明になる。物理刺激としては、温度、光、電磁波等が挙げられる。例えば、物理刺激を温度とした場合、温度上昇とともに溶液が白濁する場合と、溶液が透明になる場合とがある。
【0034】
本発明の溶液状組成物は、温度等の物理刺激によって可逆的に液の透過率を変化させることができるので、例えば光学材料、表示素子、各種センサー、アクチュエータ、DDS等に用いることができる。
例えば、上記溶液状組成物を透明な二枚の基板間に封入し、熱を帯びたペンで、基板上に刺激を与えると、加熱部分の溶液状組成物の透過率が周囲と変化し、文字が表示されるリライタブルペーパーを製造することができる。上記溶液状組成物は、水系組成物と異なり不揮発性であるので、二枚の基板間のシーリングが簡易的でも溶媒が揮発せず、性能劣化しないという利点がある。
【0035】
上記したゲル及び溶液状組成物を、所定の固体表面に固定化し、上記物理刺激に応答する基板を製造することもできる。固定化の方法としては、例えば、ガラス表面上の水酸基をシランカップリング剤(例えば、クロロジメチルビニルシラン)によりビニル基に変換し、このガラス基板上でイオン液体に溶解させたモノマーをラジカル重合する事によって化学的にゲルを表面に固定することができる。
【0036】
以下に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、%は質量%を示す。
【実施例1】
【0037】
1.メタクリル酸ベンジル系ゲル及びメタクリル酸ベンジル系線形高分子
<イオン液体(EMITFSI)の調製>
Cl-メチルイミダゾールと臭化エチルとの4級化反応を生じさせ、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-Br(EMIBr)を得た。得られたEMIBrをLiTFSI(Li-トリフルオロメタンスルフォン)イミド(Li(CF3SO22N)とアニオン交換反応させ、EMITFSIを調製した。
【0038】
<ゲルの製造>
モノマー(メタクリル酸ベンジル)0.23g、イオン液体(EMITFSI)1.25mL、架橋剤(ジメタクリル酸-エチレングリコール)11~22mg、光開始剤(ジエトキシアセトフェノン)11mgを混合して分散相とした。
イオン交換水50mLに、分散安定剤(ノニオン系界面活性剤、花王社製の商品名エマルゲン)0.5gを分散させ、水相とした。
窒素雰囲気下、反応容器に入れた水相をマグネチックスターラで強攪拌しながら、分散相を滴下し、反応系に光を20分間照射してモノマーを重合させた。
反応終了後、反応系を濾過し、濾過物を純粋で洗浄して微粒子ゲルを得た。得られた微粒子ゲルをEMITFSI中に分散させ、60℃で減圧下、24時間静置して高分子体の再膨潤と乾燥を行い、最終形態のゲルを得た。
【0039】
<線形高分子の製造>
エタノール溶媒中に、モノマー(メタクリル酸ベンジル)2mol/L、重合開始剤(AlBN)1mol%を溶解し、窒素バブルを20分行った後、熱重合を24時間行った。架橋剤は用いなかった。反応溶液を透析して線形高分子を精製した。
メタクリル酸ベンジルは以下の方法で重合した。まず、ベンゼン溶媒中にモノマー(メタクリル酸ベンジル、あるいはメタクリル酸ベンジルと、その共重合モノマー)の合計2mol/L、重合開始剤(2,2-ジエトキシアセトフェノン)1mol%を溶解し、窒素バブリングを20分行った後、光重合を30分行った。架橋剤は用いなかった。反応物に対し、ベンゼンを良溶媒、ヘキサンを貧溶媒とする再沈殿を行い、線形高分子を精製した。
【0040】
<評価>
(1)線形高分子の溶解特性
上記した線形高分子をEMITFSI中に3%溶解させ、溶液の透過率を測定した。透過率の測定は、照射、及び透過光の検出に光ファイバーを用い、500nmの波長光の透過率を分光光度計により測定した。
得られた結果を図1に示す。約105℃以下の温度では、溶液は透明(光透過率の値がほぼ100%)であったが、約105℃以下を超えた近傍で溶液が白濁(光透過率の値がほぼ0%)した。これより、高温側で、線形高分子が相分離状態に変化することがわかった。なお、光透過率の変化率が最大となる温度を相溶・相分離温度(図1の例では約105℃)とした。
(2)ゲルの体積変化
上記したゲルをEMITFSI中に1mol/L含む溶液(微粒子ゲルが1wt%程度イオン液体中に分散したもの)を調製し、温度を変化させた時のゲルの膨潤度を求めた。膨潤度は、100℃におけるゲル状物質の体積Dを基準とした。ゲルの膨潤度は、450℃まで温度調節可能な顕微鏡用のホットステージ上に上記ゲル状物質を置き、各温度における微粒子ゲルの直径を倒立型顕微鏡にて測定した。
得られた結果を図2に示す。約80℃以下の温度ではゲルが膨潤し、約80℃でゲルが急激に収縮した。なお、高分子体の架橋密度を4%とした場合、約80℃近傍で、ゲルの体積は約2.5倍の変化を示した。なお、図2の架橋密度は、総モノマー濃度に対して、重合時に仕込んだ架橋剤物質のモル%を表す。
【実施例2】
【0041】
2.メタクリル酸ベンジル-他のモノマーからなる線形高分子
<線形高分子の製造>
(1)メタクリル酸ベンジル-スチレン系線形高分子
ベンゼン溶媒中に、メタクリル酸ベンジル3.49g(総モノマー濃度に対して99mol%)と、スチレン0.021g(総モノマー濃度に対して1mol%)を添加し、これらの総モノマー濃度が2mol/Lになるようにした。窒素バブルを20分行った後、重合開始剤(2,2-ジエトキシアセトフェノン)をモノマーに対して1mol%溶解し、光重合を30分行った。架橋剤は用いなかった。ベンゼンを良溶媒、ヘキサンを貧溶媒とする再沈殿を行い、線形高分子(St1%)を精製した。
又、メタクリル酸ベンジルの配合量を3.35g(総モノマー濃度に対して95mol%)に変え、スチレンの配合量を0.104g(総モノマー濃度に対して5mol%)に変え、同様に線形高分子(St5%)を精製した。
(2)メタクリル酸ベンジル-MMA系線形高分子
スチレンの代わりにMMA(メタクリル酸メチル)を用いたこと以外は上記メタクリル酸ベンジル-スチレン系線形高分子の場合と同様にして、線形高分子(MMA5%及び10%)を精製した。
MMA5%の高分子は、メタクリル酸ベンジル3.35g(総モノマー濃度に対して95mol%)と、メタクリル酸メチル0.1g(総モノマー濃度に対して5mol%)を配合した。MMA10%の高分子は、メタクリル酸ベンジル3.23g(総モノマー濃度に対して90mol%)と、メタクリル酸メチル0.2g(総モノマー濃度に対して10mol%)を配合した。
【0042】
<線形高分子の溶解特性>
上記した線形高分子の溶解特性を実施例1とまったく同様にして測定した。得られた結果を図3に示す。第2モノマーとしてスチレンを用いた場合をSt、メタクリル酸メチルを用いた場合をMMAで表す。図3の5本の線のうち、真ん中の線は図1の高分子(第2モノマーを含まない)に対応する。Stを配合した高分子の場合、線形高分子の相溶・相分離温度が、実施例1の場合に比べて低下した。一方、MMAを配合した高分子の場合、線形高分子の相溶・相分離温度が、実施例1の場合に比べて上昇した。
なお、線形高分子の相溶・相分離温度と、そのモノマーを架橋重合したゲルが収縮(膨潤)する温度は対応関係にあるため、St又はMMAとの共重合によって、ゲルの体積変化温度が調整可能と考えられる。なお、図3の「St 1%」は、「スチレン1mol%」を意味する。
【実施例3】
【0043】
各種モノマーからなる線形高分子の溶解特性
<線形高分子の製造>
表1に示すモノマーが架橋剤を用いずに重合された線形高分子としては、市販されている線形高分子を用いた。
【0044】
<評価>
上記した線形高分子をEMITFSI中に5%溶解させ、実施例1とまったく同様にして、溶液の光透過率を測定した。温度にかかわらず光透過率の値がほぼ100%の場合、線形高分子がイオン液体に完全に相溶したとみなした。温度にかかわらず光透過率の値がほぼ0%の場合、線形高分子がイオン液体と完全に相分離したとみなした。
又、所定の温度T以下で光透過率の値がほぼ0%となり、この温度Tより高温側で光透過率の値がほぼ100%の場合、線形高分子が温度T以下ではイオン液体と相分離し、温度T以上でイオン液体に相溶したとみなした。
【0045】
得られた結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
JP0005066719B2_000005t.gif

【0047】
表1から明らかなように、モノマーAの場合、イオン液体と完全に相分離し、モノマーBの場合、イオン液体と完全に相溶した。又、モノマーCの場合、線形高分子がある温度以下ではイオン液体と相分離し、その温度以上でイオン液体に相溶した。
【実施例4】
【0048】
第2モノマー(メタクリル酸メチル(MMA))と第3モノマー(スチレン(St))からなる線形高分子
ベンゼン溶媒中に、StとMMAの総モノマー濃度が2 mol/Lになるように適当量溶解させた。StとMMAの共重合組成比は仕込みモノマー量を変化させることで変えた。このモノマー溶液に重合開始剤(アゾイソブチロニトリル)を、総モノマー濃度に対して1mol%になるように溶解させ、窒素バブルを20分間行なった後、60℃で12時間重合させた。架橋剤は用いなかった。重合後、トルエンを良溶媒、ヘキサンを貧溶媒とする再沈殿を三回行うことによって精製を行なった。
【0049】
上記した線形高分子の溶解特性を実施例1とまったく同様にして測定した。得られた結果を図4に示す。完全相分離するスチレンの割合が多くなると(図の白丸)、線形高分子の相分離温度も低くなった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】線形高分子の温度-溶解特性を示す図である。
【図2】ゲルの体積変化の温度依存性を示す図である。
【図3】共重合高分子体からなるゲルの体積変化の温度依存性を示す図である。
【図4】線形高分子の温度-溶解特性を示す別の図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3