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明細書 :流体制御デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4806777号 (P4806777)
登録日 平成23年8月26日(2011.8.26)
発行日 平成23年11月2日(2011.11.2)
発明の名称または考案の名称 流体制御デバイス
国際特許分類 B81C  99/00        (2010.01)
G01N  35/08        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI B81C 99/00
G01N 35/08 A
B01J 19/00 321
G01N 37/00 101
請求項の数または発明の数 15
全頁数 18
出願番号 特願2007-525519 (P2007-525519)
出願日 平成18年7月19日(2006.7.19)
国際出願番号 PCT/JP2006/314707
国際公開番号 WO2007/011052
国際公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
優先権出願番号 2005209761
優先日 平成17年7月20日(2005.7.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年6月25日(2009.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】丸尾昭二
【氏名】井上宏之
個別代理人の代理人 【識別番号】100094835、【弁理士】、【氏名又は名称】島添 芳彦
審査官 【審査官】太田 良隆
参考文献・文献 特開2001-252897(JP,A)
特開平04-272481(JP,A)
特開2003-025295(JP,A)
S. Maruo et al,Force-Controllable, Optically Driven Micromachines Fabricated by Single-Step Two-Photon Microstereolithography,Journal of Microelectromechanical Systems,2003年10月,Vol. 12, No. 5,pp. 533-539
平塚洋二郎、外3名,光駆動マイクロマシン群の協調制御,Proceedings of the 2005 JSME Conference on Robotics and Mechatronics,2005年 6月
調査した分野 B81C99/00
B01J19/00
B29C67/00
F04C29/00
G01N37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
光駆動可能な可動部と、該可動部を回転可能に支持する固定部とを含む微小構造体を光重合性樹脂の光造形によって造形する微小構造体の製造方法において、
前記可動部及び前記固定部の相対位置に関し、可動部作動時の作動位置と、光造形時の造形位置とが予め設定され、
第1固定部及び第1可動部は、造形後に第1可動部が第1固定部の案内によって前記作動位置に移動可能であるように、前記造形位置において光造形法で造形され、
前記第1可動部と近接又は係合する第2可動部と、第2可動部を回転可能に支持する第2固定部とが、第1固定部及び第1可動部と実質的に同時に光造形法で造形されることを特徴とする微小構造体の製造方法。
【請求項2】
前記固定部は、マイクロチップ又はバイオチップの流路を構成する流路壁又は基板に固定され、前記可動部は、各固定部に回転可能に夫々支承され、少なくとも一つの前記可動部は、レーザー光の照射による遠隔操作によって回転し前記流路内の流体を輸送するために、近接する前記可動部と協働して流路の容積変化又は変形を生じさせるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法
【請求項3】
マイクロチップ又はバイオチップの流路に配置され、光駆動可能な可動部と、該可動部を回転可能に支承する固定部とを有し、前記可動部及び固定部は、光造形法によって前記流路内に造形した光重合性樹脂の光重合体からなり、複数の前記固定部が、前記流路を構成する流路壁又は基板に固定され、複数の前記可動部が、各固定部に回転可能に夫々支承され、少なくとも一つの前記可動部は、レーザー光の照射による遠隔操作によって回転し、前記流路内の流体を輸送するように、近接する前記可動部と協働して流路の容積変化又は変形を生じさせる流体制御デバイスを製造する流体制御デバイスの製造方法において、
前記可動部及び前記固定部の相対位置に関し、可動部回転時の作動位置と、光造形時の造形位置とが予め設定され、
前記固定部及び可動部は、造形後に前記可動部が前記固定部の案内で前記作動位置に移動可能であるように、前記造形位置において光造形法で造形されることを特徴とする流体制御デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記固定部は、前記流路壁又は基板から流路内に突出する円形断面の固定軸からなり、前記可動部は、前記固定軸が貫通可能な円形開口を備えた回転体からなり、該回転体は、前記固定軸の中心軸線を中心に回転可能に該固定軸に支承され、マイクロポンプのロータを構成することを特徴とする請求項3に記載の製造方法
【請求項5】
前記回転体は、ローブ形輪郭を有することを特徴とする請求項に記載の製造方法
【請求項6】
前記回転体の周囲の流路壁によって、該回転体を収容するマイクロポンプのポンプハウジングが形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法
【請求項7】
前記流路は、光重合性樹脂の光造形によって基板上に造形された光重合体からなることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項8】
前記回転体の最大直径は、100μm以下に設定されることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項9】
前記回転体と前記流路壁との間の間隔は、3μm以下に設定されることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項10】
前記回転体の相互間隔は、2μm以下に設定されることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項11】
前記可動部は、光トラッピングによって前記造形位置から前記作動位置に移動されることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項12】
第1固定部及び第1可動部は、造形後に第1可動部が第1固定部の案内によって前記作動位置に移動可能であるように、前記造形位置において光造形法で造形され、
前記第2可動部及び第2固定部は、第1固定部及び第1可動部と実質的に同時に前記作動位置において光造形法で造形されることを特徴とする請求項又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1可動部は、光トラッピングによって前記造形位置から前記作動位置に移動されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第2固定部及び第2可動部は、前記作動位置において造形されることを特徴とする請求項1又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1又は3に記載された製造方法に従って製造された流体制御デバイスの作動方法であって、
空間光変調素子を用いて複数の焦点を複数の前記可動部に夫々形成するようにレーザー光を前記可動部に照射し、レーザー光の集光点の移動によって複数の前記可動部を同時に独立駆動することを特徴とする流体制御デバイスの作動方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御デバイスに関するものであり、より詳細には、マイクロチップ又はバイオチップ内の流路に配置される光重合性樹脂の流体制御デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光重合性樹脂原料にレーザー光を照射して三次元構造の光重合体を造形する光造形法が知られている。光重合性樹脂(photopolymerizable resin)は、光照射するとモノマー分子が重合し高分子化することによって液体から固体へ変化する材料であり、一般に光硬化性樹脂(photocurable resin)又はフォトポリマー(photopolymer)とも呼ばれる高分子材料である。光重合性樹脂の光造形法を用いた微小構造体の製造方法が、例えば、特開2001-158050号公報、特開平11-170377号公報、特開2000-202916号公報等に開示されている。光造形法においては、液状の光重合性樹脂原料にレーザー光が照射され、光重合体からなる三次元構造体が、液状の樹脂原料内に造形される。このような光造形法によれば、レーザー光の集光点及び2光子吸収を正確に制御することにより、比較的複雑な三次元構造を有する単一マイクロギア等の微小構造体を光重合性樹脂原料によって成形することができる。
【0003】
光重合性樹脂の光造形法によって成形した微小構造体を駆動する方法として、レーザー光を微小構造体の可動部に照射し、可動部を光トラッピングした状態でレーザー光の集光点を移動させて可動部を駆動する微小構造体の駆動方法が知られている(特開2003-25295号公報)。
【0004】
このような光駆動の原理を利用してサンプル液及び試薬液を混合する光圧ミキサを備えたマイクロチップが、特開2001-252897号公報に開示されている。光圧ミキサは、リソグラフィ技術によって成形され、サンプル液流路及び試薬液流路の合流部に配置される。レーザー光が光圧ミキサに照射され、光圧ミキサは、光圧によって回転し、合流部においてサンプル液及び試薬液の混合を促進する。
【0005】
また、特開2005-27495号公報には、中心軸及び羽根部材と、光駆動可能なビーズとから構成される複合構造のロータが開示されている。羽根部材は、中心軸から放射状に延び、ビーズは、羽根部材に取付けられる。ビーズは、光トラッピングにより流路の所定位置に位置決めされるとともに、光ビームの移動によって移動する。ロータは、ビーズの移動により回転し、マイクロポンプのロータとして機能する。
【0006】
更に、光駆動の原理を利用した流体輸送方法として、液体中に浮遊した微粒子をレーザー光で遠隔操作し、微粒子の運動を利用してマイクロチップ内の液体を流動させる方法が、近年において提案されている。
【0007】
近年、微小なマイクロチップ又はバイオチップ等を用いて化学合成分析プロセスを実行するマイクロ化学分析システムの研究・開発が注目されている。一般に、この種のマイクロチップ等においては、DNA又は蛋白質等を含む流体を電気泳動によって輸送し、或いは、図12に示す如く、マイクロチップ100及び外部機器101の制御下に流体供給系106の流体を分析装置105に給送している。外付けシリンジポンプ等の比較的大型の外部機器101は、流体管路102によってマイクロチップ100の流出口に接続され、外部機器101の吐出口は、流体管路103によって分析装置105に接続される。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2001-158050号公報
【特許文献2】特開平11-170377号公報
【特許文献3】特開2000-202916号公報
【特許文献4】特開2003-25295号公報
【特許文献5】特開2001-252897号公報
【特許文献6】特開2005-27495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような外部機器101を用いたマイクロ化学分析シテスムにおいては、流体管路102の接続部に液漏れ又は気泡混入等の問題が生じ易く、これは、分析の精度を低下させる要因となっている。しかも、外部機器101及び外部管路102、103の内部容積は、マイクロチップ100の内部流路の容積に比べてかなり大きく、このため、外部機器101及び流体管路102、103を含む流体回路は、比較的多量のサンプル及び試薬等を全体として保有しなければならない。この結果、サンプル及び試薬等の微量化に限界が生じ、分析プロセスに要するコストを所望の如く低減し難いといった問題が生じている。
【0010】
これに対し、上記特開2001-252897号公報に記載された光駆動可能な光圧ミキサや、特開2005-27495号公報に記載されたロータをマイクロチップ内の流路に配置してチップ内流体を制御する方法、或いは、レーザー光で遠隔操作可能な微粒子を液体中に浮遊させ、微粒子の運動によってチップ内流体を流動させる方法をチップ内流体の制御に応用し得るかもしれない。しかしながら、前述の光圧ミキサは、回転運動により流体の対流を誘起して流体を混合撹拌することを意図したものであるにすぎず、流路に対する回転体の相対位置を固定する位置固定手段を備えておらず、流体を制御下に輸送することはできない。前述した複合構造のロータも又、中心軸を流路内に固定した構造を備えず、その制御性に限界がある。また、上記微粒子は、レーザー光の遮断時に不確定な位置に浮遊してしまうので、このような微粒子を用いてチップ内流体を制御下に輸送することは、前述の光圧ミキサ又はロータと同様、極めて困難である。
【0011】
殊に、マイクロチップ又はバイオチップにおいては、nL/分(ナノリットル)以下の微少流量の流体を輸送する必要が生じる。しかも、マイクロチップ又はバイオチップに配設される回転体としては、最大直径100μm以下の回転体が想定される。このような微小スケールの回転体をリソグラフィ技術等によって成形した場合、かなりの隙間が回転体の周囲に形成されるので、微少流量の流体を正確に制御し難い。しかも、このような微少流量且つ微小スケールの流体制御デバイスでは、慣性力に比べて粘性力の影響が顕著に顕れるので、流体に作用する遠心力又は揚力に依存して流体を輸送することは困難である。
【0012】
従って、このような微少流量の流体を制御下に輸送する微小スケールの流体制御デバイスは、回転中心軸を固定していない上記光圧ミキサ又はロータや、流体中に浮遊した微粒子の運動を利用して流体を流動させる流体輸送手段によっては、得られない。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マイクロチップ又はバイオチップ内の流路に配置され、チップ内流体を制御下に輸送又は圧送することができる流体制御デバイス、その製造方法及びその作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明(請求項3)は、上記目的を達成すべく、マイクロチップ又はバイオチップの流路に配置され、光駆動可能な可動部と、該可動部を回転可能に支承する固定部とを有し、前記可動部及び固定部は、光造形法によって前記流路内に造形した光重合性樹脂の光重合体からなり、複数の前記固定部が、前記流路を構成する流路壁又は基板に固定され、複数の前記可動部が、各固定部に回転可能に夫々支承され、少なくとも一つの前記可動部は、レーザー光の照射による遠隔操作によって回転し、前記流路内の流体を輸送するように、近接する前記可動部と協働して流路の容積変化又は変形を生じさせる流体制御デバイスを製造する流体制御デバイスの製造方法において、
前記可動部及び前記固定部の相対位置に関し、可動部回転時の作動位置と、光造形時の造形位置とが予め設定され、
前記固定部及び可動部は、造形後に前記可動部が前記固定部の案内で前記作動位置に移動可能であるように、前記造形位置において光造形法で造形されることを特徴とする流体制御デバイスの製造方法を提供する。
【0015】
本発明の上記構成によれば、可動部及び固定部の相対位置として、可動部回転時の相対位置(作動位置)と、造形時の相対位置(造形位置)とが予め設定される。可動部及び固定部は、造形位置において造形され、可動部は、造形後に作動位置に移動する。光駆動時の光トラッピングによって可動部を捕捉し、これにより、可動部を造形位置から作動位置に移動させるとともに、可動部を作動位置に保持することができる。他の手段として、可動部と固定部とのクリアランスや、可動部の周りに形成されるクリアランスを適切に設定することにより、回転運動又は流体圧の作用で可動部を自動的に作動位置に移動するようにしても良い。
【0017】
本発明の製造方法で製造された流体制御デバイスによれば、固定部は、チップ内流路の所定位置に可動部を支承し、可動部は、レーザー光の照射による遠隔操作によって回転する。回転する可動部は、近接する可動部と協働して流路の容積変化又は流路の変形を生じさせ、流路内の流体は、流路の容積変化又は変形によって流動する。複数の可動部は、各々の固定部に支承され、所定位置において回転するので、流路の容積変化又は変形を制御することができる。このような流体制御デバイスを備えたマイクロチップ又はバイオチップは、流体制御デバイスの作動により、流体供給系の流体をチップ内流路に吸引し、後続の分析装置に流体を給送する。従って、本発明の流体制御デバイスによれば、外付けシリンジポンプ等の外部機器に依存せずにチップ内流路の流体を制御下に輸送又は圧送することができる。
【0018】
近接し又は係合する一対の微小構造体を光造形法で同時に造形する場合、光重合性樹脂の特性により、近接部又は係合部が互いに結合する傾向がある。しかしながら、本発明の上記構成によれば、十分なクリアランスを確保した造形位置において可動部を造形し、造形時に生じ得る近接部分又は係合部分の結合を回避するとともに、使用時に可動部を作動位置に移動し、可動部を互いに近接状態又は係合状態に配置することができる。
【0019】
本発明は更に、上記構成の流体制御デバイスの作動方法であって、
単一のレーザー光を複数の前記可動部に選択的に照射して光トラッピングし、レーザー光の集光点の移動によって前記可動部を回転させるとともに、各可動部を光トラッピングする時間を制御し、複数の前記可動部を回転させることを特徴とする流体制御デバイスの作動方法を提供する。
【0020】
本発明は又、上記構成の流体制御デバイスの作動方法であって、
空間光変調素子を用いて複数の焦点を複数の前記可動部に夫々形成するようにレーザー光を前記可動部に照射し、レーザー光の集光点の移動によって複数の前記可動部を同時に独立駆動することを特徴とする流体制御デバイスの作動方法を提供する。
【0021】
本発明の上記作動方法によれば、レーザー光を用いて複数の可動部を能動的且つ高精度に光駆動することができる。
【0022】
即ち、本発明(請求項1)は、光駆動可能な可動部と、該可動部を回転可能に支持する固定部とを含む微小構造体を光重合性樹脂の光造形によって造形する微小構造体の製造方法において、
前記可動部及び前記固定部の相対位置に関し、可動部作動時の作動位置と、光造形時の造形位置とが予め設定され、
第1固定部及び第1可動部は、造形後に第1可動部が第1固定部の案内によって前記作動位置に移動可能であるように、前記造形位置において光造形法で造形され、
前記第1可動部と近接又は係合する第2可動部と、第2可動部を回転可能に支持する第2固定部とが、第1固定部及び第1可動部と実質的に同時に光造形法で造形されることを特徴とする微小構造体の製造方法を更に提供する。
【0023】
即ち、本発明は、光駆動可能な可動部と、該可動部を回転可能に支持する固定部とを含む微小構造体を光重合性樹脂の光造形によって造形する微小構造体の製造方法において、
前記可動部及び前記固定部の相対位置に関し、可動部作動時の作動位置と、光造形時の造形位置とが予め設定され、
第1固定部及び第1可動部は、造形後に第1可動部が第1固定部の案内によって前記作動位置に移動可能であるように、前記造形位置において光造形法で造形され、
前記第1可動部と近接又は係合する第2可動部と、第2可動部を回転可能に支持する第2固定部とが、第1固定部及び第1可動部と実質的に同時に光造形法で造形されることを特徴とする微小構造体の製造方法を更に提供する。
【0024】
本発明の好適な実施形態において、上記流体制御デバイスは、チップ内流路に配置され、チップ内流路の流体を輸送又は圧送するマイクロポンプを構成する。好ましくは、上記固定部は、流路壁又は基板から流路内に突出する円形断面の固定軸からなり、上記可動部は、固定軸が貫通可能な円形開口を備えた回転体からなる。回転体は、固定軸の中心軸線を中心に回転可能に固定軸に支持され、マイクロポンプのロータとして機能する。回転体は、ローブ形ロータ、ギア形ロータ等の任意の形態に造形することができる。更に好ましくは、一対の回転体がマイクロポンプのロータとして近接配置され、回転体の周囲の流路壁は、回転体を収容するマイクロポンプのポンプハウジングを構成する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、回転体の最大直径は、100μm以下に設定され、回転体と流路壁との間の間隔は、3μm以下に設定され、回転体の相互間隔は、2μm以下に設定される。
【0026】
好ましくは、上記流路壁及びポンプハウジングも又、光重合性樹脂の光造形によって基板上に造形される。所望により、流路に配置されるマイクロバルブ、マイクロセパレータ、マイクロピンセット等の流体制御デバイスも又、光重合性樹脂の光造形によって基板上に造形される。
【0027】
更に好ましくは、第2固定部及び第2可動部は、作動位置において造形される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、2光子吸収方式の光造形法によってガラス基板上に微小構造体を成形する原理を説明するための斜視図である。
【図2】図2は、一般的な光造形法によって基板上に成形した回転体及び固定軸を比較例として示す斜視図及び縦断面図である。
【図3】図3は、本発明に従って基板上に成形したギア型ポンプの回転体及び固定軸を示す斜視図及び縦断面図である。
【図4】図4は、本発明に従ってガラス基板上に成形したローブ型ポンプの固定軸及び回転体を示す斜視図及び縦断面図である。
【図5】図5は、基板上に光造形法によって造形した固定軸、回転体、流路壁及びポンプハウジングを示す斜視図及び縦断面図である。
【図6】図6は、マイクロポンプを駆動する駆動システムの構成を概略的に示すシステム構成図である。
【図7】図7は、駆動システムのレーザー光を使用したマイクロポンプの駆動方法を示す斜視図である。
【図8】図8は、マイクロポンプの作動態様を示すマイクロポンプの横断面図である。
【図9】図9は、マイクロポンプおける回転数及び流体流速の関係を示す線図である。
【図10】図10は、回転体とポンプハウジングとの間の間隙の寸法と、流体流速との関係を示す線図である。
【図11】図11は、マイクロポンプを組み込んだマイクロチップの構成を示す平面図及び縦断面図である。
【図12】図12は、従来のマイクロチップを備えたマイクロ化学分析シテスムの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。

【0030】
図1は、2光子吸収方式の光造形法によってガラス基板上に微小構造体を成形する原理を説明するための斜視図である。

【0031】
図1には、ガラス基板2上の光重合性樹脂原料1に照射されるレーザー光Lのビームが示されている。レーザー光Lは、光重合性樹脂原料1の内部に集光スポットSを形成する。集光スポットSの位置制御によって液状樹脂原料(原料1)の内部に三次元微小構造の重合体が造形される。

【0032】
図1に示す光造形法では、近赤外(又は赤色)フェムト秒パルスレーザー光Lの光源を有する2光子マイクロ光造形装置(図示せず)が使用される。図1(A)に示すように、光源の近赤外(又は赤色)レーザー光Lが、短焦点レンズ(図示せず)を介してガラス基板2上の光重合性樹脂原料1に照射される。ガラス基板2及び原料1は、レーザー光Lに対して透過性を有し、レーザー光Lは、原料1の内部で集光し、集光スポットSを形成する。集光スポットSには、近赤外線を紫外線に変化させる2光子吸収現象が誘起し、焦点位置近傍(焦点スポットS)の原料1のみが重合する。レーザーシステムは、図1(B)~図1(D)に示すように、集光スポットSを原料1内で走査し、所望の輪郭の光重合体3を造形する。原料1及びガラス基板2は、未重合の原料1を除去した後にエタノール等の溶剤で洗浄され、かくして、所望の輪郭の光重合体3がガラス基板2上に成形される。このような光造形法による加工分解能は、一般に約0.1~10μm程度である。

【0033】
以下の比較例及び実施例において、本発明者は、光重合性樹脂原料1として、エポキシ系光重合性樹脂(D-MEC LTD.製"SCR-701")を用いて微小構造体を造形した。しかしながら、ウレタンアクリレート系光重合性樹等の他の光重合性樹を使用しても良い。

【0034】
図2には、光造形法によって基板2上に成形した回転体12及び固定軸11が比較例として示されている。

【0035】
回転体12及び固定軸11は、前述の光造形法に従ってガラス基板2上に成形した光重合体からなる。固定軸11は、拡大ヘッド部11aを有する円柱形態に造形され、固定軸11の下端部は、基板2に一体化する。回転体12は、マイクロポンプ用のギア形ロータとして造形され、各回転体12の直径は、100μm以下に設定される。固定軸11は、回転体12の中心円形開口15を遊嵌状態に貫通し、回転体12は、固定軸11の垂直中心軸線13を中心に回転可能に固定軸11に支承される。回転体12及び固定軸11は、対をなして基板2上に配置される。左右の回転体12の外周部に夫々形成された歯形部14は、互いに噛合し、逆方向に回転するように同レベルに造形される。図2に示す比較例では、各部の寸法は、以下の通り設定される。

【0036】
t(回転体12の厚さ):3μm
P(回転体12の間の間隔):0.7μm(局部的には0.2 ~0.3μm)
C(開口15と固定軸11の間の間隔):0.6μm

【0037】
しかしながら、同一面内で回転体12を造形した場合、左右の回転体12の境界部分に造形された歯形部14は、結合部16として図2(A)に示すように互いに結合してしまう。これは、硬化時に周辺の樹脂を引込みながら収縮するという光重合性樹脂特有の性質に主に起因するものと考えられる。このため、現実には、同一面内において近接する2体の回転体12を光造形法によって同時に造形することは、極めて困難である。

【0038】
即ち、複数の回転体12の協働作用によって吸引側及び吐出側の容積変化を生じさせて微少流量の流体を制御下に輸送する流体制御デバイスを製造するには、回転体12の間の間隔Pを微小寸法に制限しなければならないにもかかわらず、光重合性樹脂特有の性質、固定軸11に遊動可能に支承された回転体12(可動部品)の僅かな変位、更には、間隔Pの微小な寸法値等のために、回転体12同士が結合し又は癒着する。このため、単一の軸に支承した単一のマイクロギアを製造することは既に試みられてきたが、固定軸11に支承され且つ互いに近接した複数の回転体12や、常時係合する複数の回転体12を光造形法によって成形することは、造形精度や部材同士の結合・癒着等の問題から困難である。

【0039】
他方、このような回転体及び軸をそれぞれ別々に成形して流路内に組み立てることも考慮し得るが、直径が100μm以下の回転体と、これを支承する軸部材とを組付け又は組立てることは、静電気の影響等を考慮すると、極めて困難であり、現実には、不可能に近いと考えられる。

【0040】
これに対し、単一の軸に支承した単一の回転体を光造形し、この回転体の回転運動によって遠心力又は揚力を流体に作用せしめ、これにより、微少流量の流体を輸送することも考慮し得る。しかし、このような構成を採用した場合、回転体の構造が複雑化するので、直径が100μm以下のマイクロポンプの回転体を造形することは、極めて困難である。しかも、このようなマイクロスケールでは、慣性力が粘性力に比べて非常に小さく、このため、遠心力又は揚力に依存した構造のマイクロポンプでは、微少流量の流体を制御下に輸送し難い。

【0041】
このような事情より、固定軸に支承した回転体を回転させて微少流体を制御下に輸送するマイクロポンプを製造しようとする試みは、過去になされなかった。しかしながら、本発明者は、微少流量の流体における慣性力及び粘性力を考慮した結果、複数の回転体12の協働作用によって吸引側及び吐出側の容積変化又は流路変形を生じさせるギアポンプ式、ローブポンプ式等の容積型ポンプの構造が微少流量の流体を制御下に輸送する上で有効であるとの結論に達し、以下の製造方法を採用することで製造上の問題を克服して本発明の流体制御デバイスを創作したものである。

【0042】
図3には、本発明の製造方法に従って基板2上に成形した固定軸11及び回転体12が示されている。固定軸11及び回転体12の相対位置に関し、造形時の造形位置が図3(A)及び図3(C)に示され、可動部回転時の作動位置が図3(B)及び図3(D)に示されている。

【0043】
図3(A)及び図3(C)に示すように、固定軸11は、図2に示す固定軸11よりも若干長い全長を有し、回転体12は、異なるレベルにおいて固定軸11廻りに造形される。左右の回転体12の歯形部14は、高さ方向に距離h(面外クリアランス)を隔てた相対位置(光造形時の位置(造形位置))において造形される。このように異なる面内で2体の回転体12を造形した場合、固定軸11の全長が長く、従って、高さ方向の面外クリアランスhが形成されるが、左右の回転体12の結合は、確実に回避することができる。このような2体の回転体12を液中で使用する場合、回転体12同士の面内クリアランス(P)や、固定軸11及び回転体12の面内クリアランス(C)を適切に設定することにより、回転体12は、同一面内の相対位置(回転時の位置(作動位置))に自ら整列し、安定した回転状態を液中で維持することが確認された。また、後述する光トラッピングによって回転体12を捕捉して回転させる場合、回転体12に回転力を与えるとともに、回転体12を光トラッピングによって捕捉し、所望の相対位置(回転時の作動位置)に位置決めすることができる。即ち、使用時の光トラッピング操作によって左右の回転体12を同一面内に配列することも可能である。図3に示す実施例では、各部の寸法は、以下の通り設定された。

【0044】
t(回転体12の厚さ):3μm
P(回転体12の間の間隔):0.7μm
C(開口15と固定軸11の間の間隔):0.6μm
H(固定軸11の軸部の長さ):12μm
h(固定軸11及び回転体12の面外クリアランス):2μm

【0045】
かくして、使用において、回転体12は、図3(B)及び3(D)に示す如く整列し、近接する一対の歯形部14は、互いに噛み合う状態で回転し、固定軸11及び回転体12は、流体を回転方向に付勢するギア型ポンプを構成する。なお、回転体12の厚さtは、1~5μmの間の任意寸法に設定しても良い。所望により、回転体12の厚さtを5μm~50μmの範囲の寸法に設定することも可能である。また、各回転体12の直径は、100μm以下に設定される。

【0046】
変形例として、片側の固定軸11に関しては、軸部の長さは、図2に示す固定軸11の軸部と同等の長さに短縮しても良い。軸部の長さを短縮した片側の固定軸11に関し、拡大ヘッド部11aの位置が図3に破線で示されている。

【0047】
図4は、上記製造方法に従ってガラス基板2上に造形したローブ型ポンプの固定軸11及び回転体12を示す斜視図及び縦断面図である。

【0048】
回転体12及び固定軸11は、光造形法に従ってガラス基板2上に成形した光重合体からなり、固定軸11の下端部は、基板2に一体化する。各固定軸11の軸部11bが遊嵌状態に回転体12の円形開口15を垂直に貫通する。各回転体12は、ツインローブ形態のロータとして造形される。図4(A)及び図4(C)には、回転体12の造形位置が示されている。図4(A)及び図4(C)に示すように、回転体12は、互いに平行に配向した状態(造形位置)で造形される。円形開口15は、対をなすローブの中間に配置され、回転体12の重心位置に形成される。回転体12の最大直径Dは、100μm以下に設定される。従って、造形時に生じ得る左右の回転体12の結合の問題は、確実に回避することができる。

【0049】
図4(B)及び図4(D)には、回転体12の作動位置が示されている。造形後に回転体12を光トラッピングによって固定軸11廻りに回転させることにより、回転体12の外周面は接近し、回転体12の外周面は、ローブ形ロータのカム状面を構成する。流体中に配置された左右の回転体12は、各固定軸11を中心に回転する。各部寸法P、C、tは、図3に示す実施例と実質的に同じ寸法に設定される。

【0050】
図5は、光造形法によって基板2上に造形した固定軸11、回転体12、流路壁21及びポンプハウジング22を示す斜視図及び縦断面図である。

【0051】
基板2上には、前述の如く、光重合性樹脂の固定軸11及び回転体12が光造形法によって造形される。基板2上には更に、光重合性樹脂の流路壁21及びポンプハウジング22が、固定軸11及び回転体12と同時に光造形法で造形される。流路壁21は、流体搬送用の流路23を形成する。ポンプハウジング22は、固定軸11及び回転体12を収容し、流体吸引領域24及び流体吐出領域25を形成する。固定軸11、回転体12及びポンプハウジング22によって流路23の途中にマイクロポンプ10が形成される。所望により、ポンプハウジング22は、その頂壁面22aが回転体12に近接するように造形され、固定軸11の拡大ヘッド部11aは、ポンプハウジング22の頂壁部分に埋設される。好ましくは、回転体12とポンプハウジング22の内壁面22bとの間の間隙X、回転体12と頂壁面22aとの間の間隙Zは、いずれも3μm以下に設定される。

【0052】
図6は、マイクロポンプ10を駆動する駆動システムの構成を概略的を示すシステム構成図である。

【0053】
駆動システム50は、図1に示す光造形法において使用される2光子マイクロ光造形装置と実質的に同一の構成を有し、光源51、NDフィルター52、シャッター53、ビームエキスパンダー54、ガルバノミラー55、対物レンズ56、コンピュータ57、CCDカメラ58及びステージ(図示せず)を備える。光源51は、チタンサファイアレーザー装置からなり、近赤外パルスレーザー光(波長:750nm、パルス幅:200fs:繰返し周波数:76MHz)を発光する。レーザー光Lは、NDフィルター52及びシャッター53を通過し、ビームエキスパンダー54よってビーム幅を拡張された後、ガルバノミラー55及び対物レンズ56によって回転体12内に集光する。シャッター53及びガルバノミラー55は、コンピュータ57によって制御され、レーザー光Lの集光位置(集光スポットS)を任意の位置に移動させることができる。

【0054】
図7は、駆動システム50のレーザー光Lを使用したマイクロポンプ10の駆動方法を示す斜視図であり、図8は、マイクロポンプ10の作動態様を示すマイクロポンプ10の横断面図である。

【0055】
駆動システム50(図6)のレーザー光Lが図7に示されている。駆動システム50は、コンピュータ57の記憶部に格納された制御プログラムの制御下にシャッター53及びガルバノミラー55を作動し、回転体12の一部をレーザー光Lのビームによって光トラッピングし、回転体12を捕捉する。駆動システム50は、シャッター53及びガルバノミラー55を制御し、集光スポットSを移動させる。レーザー光Lによって光トラッピングされた回転体12は、レーザー光の移動に従って固定軸11廻りに回転する。好ましくは、レーザー光Lのビームは、回転体12の回転方向前方の面又は縁部近傍に集光スポットSを形成するように照射され、回転体12は、レーザー光Lによって引っ張られる。

【0056】
光トラッピングは、光の放射圧を利用して物体をレーザー光Lの焦点(集光スポットS)で捕捉する技術である。これは、光が物体に入射して屈折する際に光の運動量変化が生じ、これに反作用する力が光の放射圧として物体に働く原理を利用したものである。放射圧の合力は、レーザー光Lの集点に向かう方向に物体に作用するので、物体をレーザー光Lの集点に捕捉することができる。光トラッピングされる物体は、流体の屈折率よりも高い屈折率を有する透明又は半透明の物体(光が透過する物体)であり、物体の材質とは直接に関連しない。このため、上記光重合性樹脂として、硬化後に透明又は半透明の回転体12を形成する材質のものが使用される。なお、結晶等の方向性によって屈折率が相違する異方性媒質の場合、光の運動量変化が生じて、意図せぬ回転が生じることがあるので、等方性媒質の硬化体を形成する光重合性樹脂が、本発明において好適に使用される。なお、このような光トラッピングの原理自体は、既に知られているので、光トラッピングに関する更なる詳細な説明は、省略する。

【0057】
図3に示すように、造形時の回転体12が高さ方向のクリアランスh(面外クリアランス)を互いに隔て、或いは、図4に示すように平行に配置された場合であっても、駆動システム50は、光トラッピングによって回転体12を所望のレベル又は角度位置に移動させ、左右の回転体12を作動位置に拘束することができる。

【0058】
ガルバノミラー55を制御し、一方の回転体12を光トラッピングした状態で集光スポットSを固定軸11廻りに移動させると、回転体12は、固定軸11を中心に回転する。一方の回転体12が回転すると、他方の回転体12も又、回転体12の間の流体圧の変化と関連して受動的に回転する。従って、両回転体12は連動し、逆方向に回転する。

【0059】
所望により、左右の回転体12を選択的又は交互に光トラッピングし、両回転体12を能動的に回転させても良い。これは、ガルバノミラー55の経時的制御によって実行される。例えば、各回転体12を光トラッピングする時間を時間分割し、左右の回転体12を交互に光トラッピングすることによって、両回転体12に回転力を与えることができる。図7には、一方の回転体12を光トラッピングするレーザー光Lが実線で示され、他方の回転体12を光トラッピングするレーザー光Lが破線で示されている。

【0060】
変形例として、2本のレーザー光Lを同時にマイクロポンプ10に照射するように駆動システム50を構成し、2本のレーザー光Lによって各回転体12を同時に光トラッピングし、両回転体12を同時に光駆動しても良い。

【0061】
他の手段として、空間光変調素子を用いて焦点面に多点の焦点(マルチスポット)を形成する技術を利用し、複数の焦点によって複数の回転体12を同時に独立駆動することも可能である。このような光駆動方式を採用した場合、単一レーザー光Lの高速走査に比べて、集光スポットSの走査速度は遅くなる可能性もあるが、複数の回転体12を同時に光トラッピングできるので、ブラウン運動の影響を抑制して駆動精度を向上することができる。

【0062】
図8には、マイクロポンプ10の作動形態が示されている。

【0063】
マイクロポンプ10は、流路23の途中に介装される。回転体12の回転によって流路23の上流側流路部分23a及び下流側流路部分23bの容積変化又は変形が生じる。上流側流路部分23aは、流体Fを流体吸引領域24に吸引し、下流側流路部分23bは、流体Fを流体吐出領域25から吐出する。回転体12は、継続的に回転し、流側流路部分23aから流側流路部分23bに向かう流体Fの連続流が、流路23に形成される。

【0064】
図9は、マイクロポンプ10の回転数と、流体Fの流速との関係を示す線図である。

【0065】
本発明者は、図5に示すマイクロポンプ10を使用し、回転体12の回転数と、流体Fの流速との関係を計測した。流速は、流体Fに浮遊したトレーサー微粒子の移動速度を測定することよって計測された。計測結果が図9に示されている。マイクロポンプ10によって輸送される流体Fの流速は、図9に示す如く、回転数の変化に対して線形変化する。この結果、マイクロポンプ10によってピコリットル(pL/分、10-15L/分)のオーダーの超微少流を制御できることが判明した。

【0066】
前述した如く、このような超微少流においては、流体の慣性力に比べて流体の粘性が流体の挙動に大きく影響する。このため、本発明者は、図5に示す構造のマイクロポンプ10を使用し、間隙Xの寸法を変化させ、流体Fの流速の変化を計測した。

【0067】
図10は、図5(B)及び図8に示す間隙Xの寸法値と、流体Fの流速との関係を示す線図である。

【0068】
図10に示すように、間隙Xを3μm以下に設定した場合、流体Fの流速は概ね安定しているが、間隙Xが3μmを超えると、流体Fの流速は比較的急激に低下した。従って、回転体10とポンプハウジング22との間の間隙X、Zの寸法は、3μm以下に制限することが望ましい。

【0069】
図11は、マイクロポンプ10を組み込んだマイクロチップの構成を示す平面図及びI-I線断面図である。

【0070】
図11には、サイズが異なる複数のマイクロポンプ10を備えたマイクロチップ4が示されている。マイクロチップ4は、被覆層5をガラス基板2上に被覆した微小な平板構造を有する。被覆層5は、所定位置に所定形態の流路23を形成する。被覆層5及びマイクロポンプ10は、光造形法によって基板2上に造形される。マイクロセパレータ6、マイクロピンセット7及びマイクロバルブ8が、流路23の所定位置に配置される。これらの流体制御デバイスも又、被覆層5及びマイクロポンプ10とともに、光造形法によって流路23内に造形される。

【0071】
流路23の流入端23aは、流体管路70の下流端に接続され、流路23の流出端23b、23c、23d、23eは、流体管路71、72、73、74の上流端に夫々接続される。流体管路71、72、73、74の下流端は、分析装置75に接続される。マイクロセパレータ6は、支軸6aを中心に回動する可動弁体6bを備える。マイクロピンセット7は、左右一対の支軸7a及び可動把持部7bから構成され、左右の可動把持部7bは、支軸7aを中心に回動する。マイクロバルブ8は、支軸8aを中心に回動する可動弁体8bを備える。流路23、マイクロセパレータ6、マイクロピンセット7、マイクロバルブ8及びマイクロポンプ10は、分析装置75に給送すべき流体を制御する流体回路を構成する。

【0072】
各マイクロポンプ10は、駆動システム50のレーザー光によって光駆動され、回転体12の回転により、流路23の流体を付勢する。マイクロセパレータ6及びマイクロバルブ8は、駆動システム50のレーザー光によって光駆動され、流路23の流体の流れを制御する。マイクロピンセット7は、駆動システム50のレーザー光によって光駆動され、流路23内の浮遊物質等を可動把持部7bによって把持する。

【0073】
このように構成されたマイクロチップ4によれば、マイクロポンプ10の回転体12をレーザー光Lによって回転させることにより、流体管路70から流体管路71、72、73、74に向かう連続流が、流路23に形成される。マイクロチップ4は、外付けシリンジポンプ等の外部機器に依存することなく、流体管路70の流体を分析装置75に給送する。従って、外部機器(外付けシリンジポンプ等)とマイクロチップ4との接続工程を省略し、外部機器接続に伴う液漏れや、気泡混入等の問題を回避することができる。

【0074】
このようなマイクロチップ4を使用した化学合成分析プロセスにおいては、試料又は試薬等を微量化し、分析プロセスに要するコストを低減するとともに、外部機器接続の手間をなくし、作業の効率化を図ることができる。

【0075】
また、上記構成のマイクロチップ4は、レーザー光Lによって各流体制御デバイスを遠隔駆動することができることから、ピエゾデバイスや静電アクチュエータ等の高価且つ精密な機器の使用や、これに伴う配線等を要しない。従って、このようなマイクロチップ4の構成は、実用的に有利である。

【0076】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。

【0077】
例えば、マイクロポンプの形態として、ローブ・ポンプ及びギア・ポンプを上記実施例において例示したが、ねじポンプ、ベーンポンプ等の他の形式のポンプを本発明に従ってマイクロチップに造形しても良い。

【0078】
また、上記実施例では、マイクロチップ上の流体制御デバイス、流路及びポンプハウジング等の全構成要素を光重合性樹脂の光造形法によって成形しているが、射出成形法で成形した樹脂成形体の流路や、ガラスチップに形成した流路等の如く、他の素材で流路及びポンプハウジングを形成しても良い。この場合、光重合性樹脂原料が流路内に注入され、回転体及び固定軸等の構成要素が流路内に光造形される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の流体制御デバイスは、マイクロ化学分析システムのマイクロチップ又はバイオチップの流路に配置され、チップ内流体を制御下に輸送又は圧送するのに使用される。流体制御デバイスは、近接し又は係合する複数の回転体をマイクロチップ等の流路に形成し、流体の流れを制御する。
【0080】
本発明に従ってマイクロチップ等の流路にマイクロポンプを形成することができる。マイクロポンプは、流体を付勢し、後続の分析機器等に向かう流体の連続流を形成する。このようなマイクロポンプを備えたマイクロチップ等の使用により、外部機器とマイクロチップ又はバイオチップとの間の煩雑且つ非効率的な接続を省略し、液漏れや気泡混入等の問題を解消するとともに、試料等の微量化及び分析プロセスのコスト削減を図ることができる。
【0081】
また、本発明によれば、駆動システムを装備した顕微鏡にマイクロチップを配置し、駆動システムのレーザー光によってマイクロチップ内の流体制御デバイスを光駆動することにより、流体の輸送及び流体回路の制御を行うことが可能となる。これは、例えば、観察用顕微鏡の画像を観察しながら自動分析を行う形態のマイクロ化学分析方法を可能にする。従って、本発明は、マイクロチップ又はバイオチップの使用環境及び応用性をかなり向上させるであろう。
【0082】
本発明は又、近接又は係合する複数のマイクロギア等の如く、動力伝達手段として機能するデバイスを光造形法で造形する微小構造体の製造方法に応用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 光重合性樹脂原料
2 ガラス基板
3 光重合体
4 マイクロチップ
6 マイクロセパレータ
7 マイクロピンセット
8 マイクロバルブ
10 マイクロポンプ
11 固定軸
12 回転体
21 流路壁
22 ポンプハウジング
23 流路
50 駆動システム
L レーザー光
S 集光スポット
h 距離(面外クリアランス)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11