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明細書 :半導体レーザ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5152721号 (P5152721)
公開番号 特開2009-231578 (P2009-231578A)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
公開日 平成21年10月8日(2009.10.8)
発明の名称または考案の名称 半導体レーザ
国際特許分類 H01S   5/18        (2006.01)
FI H01S 5/18
請求項の数または発明の数 7
全頁数 19
出願番号 特願2008-075862 (P2008-075862)
出願日 平成20年3月24日(2008.3.24)
審査請求日 平成23年2月18日(2011.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】馬場 俊彦
【氏名】渡邊 秀輝
【氏名】横山 圭佑
個別代理人の代理人 【識別番号】100101915、【弁理士】、【氏名又は名称】塩野入 章夫
審査官 【審査官】日夏 貴史
参考文献・文献 特開2007-258262(JP,A)
特開2006-332595(JP,A)
特表2002-511952(JP,A)
特開2002-071981(JP,A)
特開2009-237547(JP,A)
特開2009-188153(JP,A)
特開2007-234724(JP,A)
特開2007-208127(JP,A)
特開2006-100776(JP,A)
特開2009-76900(JP,A)
特開2009-206448(JP,A)
特開2000-332351(JP,A)
国際公開第2005/086302(WO,A1)
特開2009-54795(JP,A)
横山圭佑 et al.,7p-R-5 チャープフォトニック結晶を用いたレーザの低コヒーレンス化,2007年秋季第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2007年 9月 4日,第3分冊,p.1066
調査した分野 H01S 5/00 - 5/50
特許請求の範囲 【請求項1】
活性層もしくは当該活性層の上方あるいは下方に形成した積層に形成された二次元フォトニック結晶を有する面発光半導体レーザにおいて、
前記二次元フォトニック結晶は、一様な周期構造を有する内面部と当該内面部の周囲を囲む4辺の端部とからなる矩形領域を有し、
前記矩形領域は、2組の互いに対向する2辺の端部において、内面部を挟んで対向する2辺の端部は互いに異なる構造を有し、互いに対向する2辺の端部は前記内面部に対して互いに非対称な構造であり、
前記非対称な構造は、フォトニック結晶の面内で共振する光の位相をずらし単峰性の出射ビームを形成することを特徴とする面発光半導体レーザ。
【請求項2】
前記二次元フォトニック結晶は、
媒質層と、当該媒質層と屈折率を異にし、前記媒質層内の面方向に配列される複数の媒質部とを備え、
前記構造を異にする端部は、前記媒質層の膜厚、前記媒質層の屈折率、前記媒質部の格子定数、前記媒質部の大きさの少なくとも何れか一つの構造パラメータが異なることを特徴とする請求項に記載の面発光半導体レーザ。
【請求項3】
前記媒質部は前記媒質層の膜厚方向に形成された孔から成り、
前記媒質部の格子定数は前記孔の配置間隔であり、前記媒質部の大きさは前記孔の径であることを特徴とする請求項に記載の面発光半導体レーザ。
【請求項4】
前記二次元フォトニック結晶は、
前記構造を異にする端部は、反射防止膜を備えることを特徴とする請求項1に記載の面発光半導体レーザ。
【請求項5】
前記二次元フォトニック結晶は、
媒質層と、当該媒質層と屈折率を異にし、前記媒質層内の面方向に配列される複数の媒質部とを備え、
前記構造を異にする端部は、前記媒質層の膜厚、前記媒質層の屈折率、前記媒質部の格子定数、前記媒質部の大きさの少なくとも何れか一つの構造パラメータが異なる端部、および反射防止膜を備える端部を備えことを特徴とする請求項1に記載の面発光半導体レーザ。
【請求項6】
前記反射防止膜は、二次元フォトニック結晶の端部の側面、二次元フォトニック結晶の端部の上下面の何れか一方の面、二次元フォトニック結晶の端部の上面および下面、二次元フォトニック結晶の端部の側面および上下面の何れか一方の面、二次元フォトニック結晶の端部の側面および上下面の内の何れか面に形成することを特徴とする請求項4又は5に記載の面発光半導体レーザ。
【請求項7】
前記反射防止膜は、フッ化マグネシウムを蒸着させた薄膜からなるARコートであることを特徴とする請求項4から6のいずれか一つに記載の面発光半導体レーザ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザに関し、特にフォトニック結晶を用いてコヒーレンスを低減したレーザ光を発生する半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクやレーザディスプレイでは、高出力で所望の出射ビームをもつ半導体レーザが求められている。このような半導体レーザとしてフォトニック結晶レーザが提案されている(非特許文献1,2)。このフォトニック結晶レーザでは、円孔を配列させた二次元的な回折格子によって面内全域で光結合を起こさせ、回折条件によってレーザ光を上方へ取り出している。
【0003】
フォトニック結晶の二次元格子での回折を利用するレーザは、格子構造として作製に容易さから円孔の配列が用いられている。
【0004】
この二次元格子の回折による光放射では、その構造や格子の対称性から、放射光は素子の真上に放射されず、真上からわずかに傾いた角度で放射されることが原理的に知られている。これは、面内で共振する光が横方向でわずかな位相ずれを起こし、斜めに傾いた光に対して放射成分が生じるためである。その結果、出射ビームはリング状あるいは双峰性を示すことになる。
【0005】
光ディスクやレーザディスプレイ等の応用分野では、高出力であると共に、出射ビームが単峰性であることが望まれる。そのため、ビーム形状がリング状あるいは双峰性を有する出射ビームは、応用上好ましくない。
【0006】
このような課題に対して、格子点の構造を調整することによって、格子の対称性を意図的に乱し、真上へ単峰性ビームを形成する提案がなされている(非特許文献4~7)。ここでは、周期配列させる格子の形状を、例えば三角形状としたり、微小孔を追加することによって、単峰性ビームを形成することが提案されている。
【0007】

【非特許文献1】Dai Ohnishi,Takayuki Okano,Masahiro Imada,Susumu Noda OPTICS EXPRES 19April2004/Vol.12, 1562-1568 Room temperature continuous wave operation of a surface-emitting two-dimensional photonic crystal diode laser
【非特許文献2】Hideki Matsubara, Susumu Yoshimoto, Hirohisa Saito, Yue Jianglin, Yoshinori Tanaka, Susumu Noda GaN Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser at Blue-Violet Wavelengths SCIENCE Vol319 25 JANUARY 2008
【非特許文献3】秋季応用物理学会講演会 チャープフォトニック結晶を用いたレーザの低コヒーレンス化 横山圭祐 渡邊秀輝 馬場俊彦 7p-R-5 (2007)
【非特許文献4】Eiji Miyai,Kyosuke Sakai,Takayuki Okano,Watanabe Kunishi,Dai Ohnishi,Susumu Noda NATURE Vol441 June 2006 Lasers producing tailored beams
【非特許文献5】秋季応用物理学会講演会 二次元フォトニック結晶面発光レーザの格子点形状と面垂直光閉じ込め効果 黒板剛孝 宮井英次 酒井恭輔 大西大 國師渡 柏木淳一 野田進27p-ZB-7
【非特許文献6】秋季応用物理学会講演会 ダブルホール格子点による二次元フォトニック結晶レーザのバンド構造の制御 大塚晃嗣 宮井英次 酒井恭輔 黒板剛孝 國師渡 大西大 野田進 27p-ZB-12
【非特許文献7】秋季応用物理学会講演会 2次元フォトニック結晶レーザの大面積安定動作に向けた格子点形状の設計 大塚晃嗣 宮井英次 酒井恭輔 黒板剛孝 國師渡 大西大 野田進 27p-ZB-10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二次元フォトニック結晶に周期配列させる格子形状を、三角形状としたり、円孔に微小孔を追加することによって、単峰性ビームを形成することが提案されているが、この三角形状の開口や微小孔を形成するには、10nmオーダの精度が必要であり高い歩留まりで作製することは困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は前記した従来の問題点を解決し、二次元フォトニック結晶を用いた半導体レーザにおいて、単純で造りやすい構造によって、出射ビームのビーム形状を単峰性ビームとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、二次元フォトニック結晶による半導体レーザにおいて、二次元フォトニック結晶を構成する格子を矩形領域に円孔を配列させて形成し、この格子形成において矩形領域の外周部分である端部の構成を異ならせることで、出射ビームのビーム形状を単峰性ビームとする。
【0011】
本発明の構成によれば、単に矩形領域の外周部分である端部にのみにおいて構成を異ならせることによって出射ビームのビーム形状を単峰性ビームとすることができ、また、格子配列は作成が容易な円孔によって形成することができ、従来の構成のように作製が困難である三角形状や微小孔等の高い精度を要する加工を不要とすることができる。
【0012】
本発明の半導体レーザは、活性層に形成された二次元フォトニック結晶を有する半導体レーザ、もしくは、活性層の上方あるいは下方に形成した積層に形成された二次元フォトニック結晶を有する半導体レーザに適用することができる。
【0013】
本発明は、矩形領域の外周部分である端部において構成を異ならせることによって、出射ビームのビーム形状を単峰性ビームとするものであり、この端部の構成は2つの態様により形成することができる。
【0014】
本発明の半導体レーザの第1の態様と第2の態様は共に、二次元フォトニック結晶は、概ね一様な周期構造を有する内面部と、この内面部の周囲を囲む4辺の端部とからなる矩形領域を有し、この矩形領域は2組の互いに対向する2辺の端部を有する構成である。
【0015】
第1の態様の半導体レーザは、2組の互いに対向する2辺の端部の内、各組について、対向する2辺の端部のいずれか一方の端部は、矩形領域の内面部の周期構造と異なる構造を有する。したがって、矩形領域が有する4辺の内の隣接する2辺の端部は、矩形領域の内面部の周期構造と異なる構造である。ここで、内面部の周期構造と異なる構造を有する端部は、同じ構造としてもよく、あるいは異なる構造としてもよい。
【0016】
第2の態様の半導体レーザは、2組の互いに対向する2辺の端部の内、各組について、対向する2辺の端部は互いに異なる構造を有する非対称な構造を有する。このとき、矩形領域の対向する2辺の端部は互いに異なる構造であればよく、矩形領域の4辺の端部は、全ての端部を異なる構造としても、あるいは隣接する2辺の端部が同じ構造としてもよい。
【0017】
また、第1の態様の半導体レーザにおいて、矩形領域の隣接する2辺の端部を矩形領域の内面部の周期構造と異ならせ、対向する他方の2辺の端部を矩形領域の内面部の周期構造と同じ構造のままとする構成は、対向する2辺の端部は互いに異なる構造を有する非対称な構造となるため、第2の態様の半導体レーザと見なすこともできる。
【0018】
本発明の第1の態様および第2の態様の半導体レーザにおいて、二次元フォトニック結晶は、媒質層と、この媒質層と屈折率を異にし、媒質層内の面方向に配列される複数の媒質部とを備えた構成とすることができる。
【0019】
構造を異にする端部は、媒質層の膜厚、媒質層の屈折率、媒質部の格子定数、媒質部の大きさ、媒質部の形状の少なくとも何れか一つの構造パラメータを異ならせることで形成することができる。
【0020】
また、媒質部は媒質層の膜厚方向に形成された孔によって形成することができ、媒質部の格子定数は孔の配置間隔であり、媒質部の大きさは孔の径であり、媒質部の形状は孔の形状である。この孔は任意の形状とすることができるが、三角形状や微小な円孔を追加するといった高い加工精度を要する形状とすることなく、加工が容易な円孔で形成した場合であっても出射ビームのビーム形状を単峰性ビームとすることができる。
【0021】
構造を異にする端部において構造パターンを異にする幅は任意に定めることができ、例えば、媒質部を円孔で構成する場合には、格子定数や大きさや形状を変える円孔列の幅を1列とする構成とする他に、複数列とする構成としてもよい。
【0022】
本発明の第1の態様および第2の態様の半導体レーザにおいて、二次元フォトニック結晶は、構造を異にする端部は、上記した媒質層あるいは媒質部の構造パラメータを異ならせる構成に他に、反射防止膜を備える構成としてもよい。
【0023】
この反射防止膜は、二次元フォトニック結晶の端部の側面、二次元フォトニック結晶の端部の上下面の何れか一方の面、二次元フォトニック結晶の端部の上面および下面、二次元フォトニック結晶の端部の側面および上下面の何れか一方の面、二次元フォトニック結晶の端部の側面および上下面の内の何れかの面に形成することができる。
【0024】
反射防止膜は、フッ化マグネシウムを蒸着させた薄膜からなるARコートを用いることができる。
【0025】
さらに、上記した構造パラメータを異ならせる構成と反射防止膜を備える構成とを組み合わせた構成としてもよい。
【0026】
また、二次元フォトニック結晶が備える概ね一様な周期構造を有する内面部は、構造パターンを同一とする一様な周期構造とする他、レーザモードを規定する構造パラメータを内面部の面内で漸次変化させるチャープ構造等の概ね一様な周期構造としてもよい。
【0027】
フォトニック結晶の面内において、異なる構造パラメータが設定された各部位からは、各構造パラメータに応じて定まる波長や位相をもつレーザ光が局所的に発生する。ここで、構造パラメータを漸次チャープ状になめらかに変化させることによって、発生するレーザ光の波長や位相は漸次チャープ状になめらかに変化する。
【0028】
これによって、フォトニック結晶から発生するレーザ光は、局所的にはそれぞれの構造パラメータに応じた波長や位相を有するものの、面全体としては所定の波長幅を有し、各位相にばらつきを有することになり、結果的にレーザ光の波長に所定の幅を持たせることで空間コヒーレンスを低減させ、位相にばらつきを持たせることによって時間コヒーレンスを低減させることができる。
【0029】
本発明の半導体レーザにおいて、二次元フォトニック結晶は、第1の態様のように、2組の互いに対向する2辺の端部の内、各組について、対向する2辺の端部のいずれか一方の端部を矩形領域の内面部の周期構造と異なる構造とすることによって、あるいは、第2の態様のように、2組の互いに対向する2辺の端部の内、各組について、対向する2辺の端部を互いに異なる構造を有する非対称な構造とすることによって、各格子点の構造を作製がし易い円形の孔を用いた構成において、面内で共振する光の位相をずらし、素子の真上に出射強度を集中させることができ、もしくは、素子の真上から一方向にわずかに傾いた光にのみ出射強度を集中させることができ、結果的に単峰性の狭出射ビームを得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、二次元フォトニック結晶を用いた半導体レーザにおいて、単純で造りやすい構造によって、出射ビームのビーム形状を単峰性ビームとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1は本発明の二次元フォトニック結晶からなるバンドエッジレーザの構成例を模式的に示した構成図であり、スラブ型の二次元フォトニック結晶からなる半導体レーザの一例を模式的に示している。
【0033】
図1(a)は活性層の上部の積層に二次元フォトニック結晶を形成した例を示し、図1(b)は活性層に二次元フォトニック結晶を形成した例を示している。
【0034】
図1(a)に示すバンドエッジレーザの半導体レーザ10において、14はクラッド層を構成する薄膜、12はクラッド層内に形成する孔である。フォトニック結晶は高屈折率の材料からなるクラッド層14と、低屈折率の材料からなる孔12とによって構成され、孔12はクラッド層14の面内にほぼ周期的に複数配列されている。孔12はクラッド層14の厚さ方向に形成され、この孔12内の空間を例えば空気の雰囲気とすることによって、クラッド層14部分の異なる屈折率としている。ここでは、孔12として円孔を示している。
【0035】
したがって、この二次元フォトニック結晶は、半導体のスラブ(薄膜)に二次元的な空孔配列が形成された構造であり、光は面内では二次元フォトニックバンドギャップによって制御され、スラブの屈折率を空気層との間で全反射しない範囲とすることで垂直方向に放出している。
【0036】
図1(a)に示す半導体レーザ10は、基板11上にアンダークラッド層13を積層し、さらにアンダークラッド層13の上部に孔12を含むクラッド層14を積層してなる。孔12はクラッド層14の薄膜内に垂直に例えば円柱状に設けられており、その上部は開口している。アンダークラッド層13は、クラッド層14よりも屈折率が低い材料から構成され、アンダークラッド層13の下に基板11が設けられている。アンダークラッド層13は活性層を含み、この活性層で励起されたレーザ光はクラッド層14と孔12とから形成される二次元フォトニック結晶の共振器で共振され、クラッド層14の上面から上方に向かって発光される。
【0037】
図1(b)に示す半導体レーザ20は、基板21上に孔22を含む活性層23を積層してなる。孔22は活性層23内に垂直に例えば円柱状に設けられており、その上部は開口している。活性層23で励起されたレーザ光は活性層23と孔22とから形成される二次元フォトニック結晶の共振器で共振され、活性層23の上面から上方に向かって発光される。
【0038】
二次元フォトニック結晶の側面構造は、従来のスラブ型二次元フォトニック結晶と同様の構成とすることができ、従来の微細加工により技術を用いてスラブ型二次元フォトニック結晶の形状自体を形成することができる。
【0039】
二次元フォトニック結晶は、一般的には、屈折率が光の波長オーダで一定の周期性を有する構成からなる材料において、フォトニックバンドギャップと呼ばれるフォトンが存在しない領域を有していることで知られている。
【0040】
本発明の半導体レーザが備えるフォトニック結晶は、レーザモードを規定する構造パラメータを有する。この構造パラメータは、フォトニック結晶のレーザモードを規定するパラメータであって、孔径rの他に、例えば、隣接する孔間の間隔a、スラブ(クラッド層)の厚さd、スラブ(クラッド層)の屈折率n、孔の形状等とすることができる。本発明は、これらの構造パラメータを面内において均一とする他に、漸次変化させる構成としてチャープ構造とすることもできる。
【0041】
二次元フォトニック結晶の面内で、構造パラメータを漸次変える構成では、フォトニック結晶の面内の各部位は、その部位に設定された構造パラメータに応じた波長λのレーザ光を局所的に発光し、全体として波長幅が広がり、コヒーレンスが低減したレーザ光が放出される。
【0042】
図1(a)、図1(b)において、二次元フォトニック結晶の面構造は、2組の対向する2辺の端部を有する矩形領域30を有し、この矩形領域は内面部31とその四方を囲む4辺の端部32a~32dを備える。内面部31は、二次元フォトニック結晶の上記したように、孔からなる格子構成が概ね一様な周期構造で形成される。
【0043】
一方、本発明の矩形領域30が備える端部32a~32dは、2組の互いに対向する2辺の端部32において、対向する2辺の端部のいずれか一方の端部の構造が内面部31の周期構造と異なる構造を有する構成、あるいは、2組の互いに対向する2辺の端部において、対向する2辺の端部は互いに異なる構造を有する非対称な構造を有する構成である。
【0044】
図1において、端部32a~32dの内で対向する2辺の端部は、端部32aと端部32cからなる組と、端部32bと端部32dからなる組の2組を形成している。
【0045】
本発明の一態様では、対向する2辺の端部32aと端部32cのいずれか一方の端部の構造を内面部31の周期構造と異なる構造とし、また、対向する2辺の端部32bと端部32dのいずれか一方の端部の構造を内面部31の周期構造と異なる構造とする。
【0046】
また、本発明の第1の態様では、対向する2辺の端部32aと端部32cを互いに異なる構造とし、また、第2の態様では、対向する2辺の端部32bと端部32dを互いに異なる構造として、対向する2辺の端部では互いに非対称な構造とする。
【0047】
端部における構造パラメータは、例えば、前記した孔径r、隣接する孔間の間隔a、スラブ(クラッド層)の厚さd、スラブ(クラッド層)の屈折率n、孔の形状等とし、第1の態様では、端部32の構造パラメータと内面部31の構造パラメータとを異ならせ、第2の態様では、対向する2辺の両端部の構造パラメータを互いに異ならせる。
【0048】
また、端部の構造パラメータを異ならせる他、端部に反射防止膜を設けることによって端部の構造を内面部あるいは対向する辺の端部と異ならせることができる。
【0049】
本発明の半導体レーザは、二次元フォトニック結晶において、2組の互いに対向する2辺の端部の内、各組について、対向する2辺の端部のいずれか一方の端部を矩形領域の内面部の周期構造と異なる構造とすることによって、あるいは、2組の互いに対向する2辺の端部の内、各組について、対向する2辺の端部を互いに異なる構造を有する非対称な構造とすることによって面内で共振する光の位相をずらす。この位相をずらすことで、素子の真上に出射強度を集中させたり、素子の真上から一方向にわずかに傾いた光にのみ出射強度を集中させ、これによって、単峰性の狭出射ビームを形成する。
【0050】
フォトニック結晶の基板は、レーザウェハや多重量子井戸(MQW)ウェハを用いることができ、例えば、InPの基板上に、InPのバッファ層とGaInAsPの活性層を含むクラッド層を積層し、さらにInPのクラッド層を積層することによって半導体レーザを構成することができる。
【0051】
この半導体レーザの作製は、例えば、InPの基板上にMOCVDを用いて結晶成長させることによって行うことができる。フォトニック結晶は、この基板上にエッチングマスクとしてSiNxを成膜し、電子線リソグラフを用いて形成したフォトニック結晶の円孔パターンを転写した後に、ICP-RIEを用いて半導体のエッチングを行う。この後、塩酸による選択ウエットエッチングによってスラブ下のInP基板を部分的に除去することによって空気クラッドを形成する。
【0052】
上記した構造パラメータあるいは反射防止膜による端部構造は、種々の組み合わせとすることができる。これらの組み合わせ例については、図3~図6を用いて説明する。
【0053】
図2は、本発明のフォトニック結晶の配列例を示している。図2は構造パラメータの一つである円孔の径rを端部において異ならせる例を示し、図2(a),(b)は円孔を正方格子状に配置した例を示し、図2(c)、(d)は円孔を正方格子状に配置した例を示している。また、図2(b),(d)は、円孔の孔径が一方の面方向に漸増あるいは漸減させたチャープ構成の例を示している。ここでは、面内の右方向に向かって孔径rが漸減する例を示している。
【0054】
図2の正方格子配列および三角格子配列において、二次元フォトニック結晶の実空間における孔の周期(孔の間隔a)と、孔の径2rを模式的に示している。フォトニック結晶の孔の周期は図中の間隔(ピッチ)aで表すことができ、孔の径は半径rで表すことができる。なお、隣接する孔間の間隔aは格子定数(=λ/n)に相当する。ここで、λは波長であり、nはスラブ(クラッド層)の屈折率である。
【0055】
図2(a)の正方格子配列では、矩形領域30は面内部31とその周囲で互いに対向する2組の端部32aと端部32c、および端部32bと端部32dを有している。ここで、矩形領域30の面内部31の円孔の孔径を一様に2rとし、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を2Rとする。これによって、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を、面内部31の円孔の孔径2r、あるいは対向する端部32bおよび端部32bの円孔の孔径2rと異ならせる。
【0056】
図2(b)の正方格子配列においても、矩形領域30は面内部31とその周囲で互いに対向する2組の端部32aと端部32c、および端部32bと端部32dを有している。ここで、矩形領域30は面内部31の円孔の孔径を2r1から2r2まで漸減させ、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を2Rとする。これによって、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を、面内部31の円孔の孔径2r1~2r2、あるいは対向する端部32bの円孔の孔径2r2又は端部32bの円孔の孔径2r1~2r2と異ならせる。
【0057】
図2(c)の三角格子配列は、図2(a)の正方格子配列と同様に、矩形領域30は面内部31とその周囲で互いに対向する2組の端部32aと端部32c、および端部32bと端部32dを有し、矩形領域30の面内部31の円孔の孔径を一様に2rとして三角格子状に配置する。また、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を2Rとする。これによって、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を、面内部31の円孔の孔径2r、あるいは対向する端部32bおよび端部32bの円孔の孔径2rと異ならせる。
【0058】
図2(d)の三角格子配列においても、図2(b)の三角格子配列と同様に、矩形領域30は面内部31とその周囲で互いに対向する2組の端部32aと端部32c、および端部32bと端部32dを有し、矩形領域30は面内部31の円孔の孔径を2r1から2r2まで漸減させ、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を2Rとする。これによって、端部32aおよび端部32dの円孔の孔径を、面内部31の円孔の孔径2r1~2r2、あるいは対向する端部32bの円孔の孔径2r2又は端部32bの円孔の孔径2r1~2r2と異ならせる。
【0059】
図2では、端部において、円孔の孔径の構造パラメータを変える例を示しているが、上記した媒質層の膜厚、媒質層の屈折率、媒質部の格子定数、媒質部の形状の構造パラメータを異ならせることができる。また、隣接する端部の構造パラメータは、同一の構造パラメータについて、面内部や対向端との間で数値を異ならせる構成とする他、異なる構造パラメータについて、面内部や対向端との間で数値を異ならせる構成としてもよい。
【0060】
また、媒質層の膜厚、媒質層の屈折率、媒質部の格子定数、媒質部の形状の構造パラメータに代えて反射防止膜を端部に設ける構成としてもよい。反射防止膜は、二次元フォトニック結晶の端部の側面、二次元フォトニック結晶の端部の上下面の何れか一方の面、二次元フォトニック結晶の端部の上面および下面、二次元フォトニック結晶の端部の側面および上下面の何れか一方の面、二次元フォトニック結晶の端部の側面および上下面の内の何れか面に形成することができる。
【0061】
反射防止膜は、フッ化マグネシウムを蒸着させた薄膜からなるARコートであり、例えば、光の1/4波長の膜厚を生成することで形成することができる。この反射防止膜を用いることによって、薄膜での反射光と薄膜と透過して反射することで1/2波長ずれを生じさせて逆位相とし、面内で共振する光の位相をずらして、出射強度を集中させて良好な単峰性を取得する。
【0062】
上記した構造パラメータあるいは反射防止膜による端部構造は、種々の組み合わせとすることができる。以下、図3~図6を用いて、これらの組み合わせ例について説明する。
【0063】
図3(a),(b)に示す例は、矩形領域30が有する4つの辺の端部32a~32dの内、端部32aと端部32dのみについて二次元フォトニック結晶の構造パラメータを異ならせる構成である。
【0064】
図3(a)に示す例では、端部32aと端部32dの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、これによって、面内部31の構造パラメータおよび対向する辺の端部32cあるいは端部32bと異ならせている。
【0065】
また、図3(b)に示す例では、端部32aの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、端部32dの部分の構造パラメータを格子構造Bとし、これによって、面内部31の構造パラメータおよび対向する辺の端部32cあるいは端部32bと異なる構造パラメータとしている。
【0066】
図4(a)に示す例は、矩形領域30が有する4つの辺の端部32a~32dの内、対向する2辺の端部32aと端部32dについて二次元フォトニック結晶の構造パラメータを互いに異ならせ、対向する2辺の端部32bと端部32cについては、端部32dについてのみ二次元フォトニック結晶の構造パラメータを面内部31の構造パラメータと異ならせる構成である。
【0067】
図4(a)において、端部32aの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、対向する端部32cの部分の構造パラメータを格子構造Bとし、これによって、対向する辺の端部の構造パラメータを互いに異ならせる。また、端部32dの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、対向する端部32bの部分の構造パラメータは面内部31の構造パラメータのままとする。これによって、端部の構造パラメータを面内部31の構造パラメータと異ならせている。
【0068】
なお、図4(a)の例では、端部32dの構造パラメータを格子構造Aとしているが、格子構造Bあるいはその他の格子構造としてもよい。
【0069】
図4(b)に示す例は、矩形領域30が有する4つの辺の端部32a~32dの内、対向する2辺の端部32aと端部32dについて二次元フォトニック結晶の構造パラメータを互いに異ならせ、対向する2辺の端部32bと端部32cについて二次元フォトニック結晶の構造パラメータを互いに異ならせる構成である。
【0070】
図4(b)において、端部32aの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、対向する端部32bの部分の構造パラメータを格子構造Bとし、また、端部32bの部分の構造パラメータを格子構造Bとし、対向する端部32dの部分の構造パラメータを格子構造Aとする。これによって、対向する辺の端部の構造パラメータを互いに異ならせる。
【0071】
なお、図4(b)の例において、互いに対向する2辺の端部間では、何れの端部の構造パラメータを格子構造Aとするか格子構造Bとするかは任意とすることができる。また、対向する端部の構造パラメータが異なれば、設定する格子構造は任意とすることができる。
【0072】
図5(a),(b)に示す例は、矩形領域30が有する4つの辺の端部32a~32dの内、端部32aと端部32dのみについて二次元フォトニック結晶の端部に反射防止膜を設ける構成である。
【0073】
図5(a)の例は、二次元フォトニック結晶の端部の側面に反射防止膜を設ける構成であり、図5(b)の例は、二次元フォトニック結晶の端部の上面(下面)に反射防止膜を設ける構成である。
【0074】
図5(a)に示す例では、端部32aと端部32dの部分の側面部分に反射防止膜Cを設ける構成とし、これによって、面内部31の構造パラメータおよび対向する辺の端部32cあるいは端部32bの構造パラメータと異ならせている。
【0075】
また、図5(b)に示す例では、端部32aと端部32dの部分の上面部分あるいは下面部分に反射防止膜Cを設ける構成とし、これによって、面内部31の構造パラメータおよび対向する辺の端部32cあるいは端部32bの構造パラメータと異ならせている。
【0076】
図6(a)~(c)に示す例は、矩形領域30が有する4つの辺の端部32a~32dにおいて、二次元フォトニック結晶の構造パラメータを異ならせる構成と二次元フォトニック結晶の端部に反射防止膜を設ける構成とを組み合わせる構成である。
【0077】
図6(a)に示す例では、端部32aの部分の側面部分に反射防止膜Cを設け、端部32dの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、これによって、面内部31の構造パラメータおよび対向する辺の端部32cあるいは端部32bと異ならせている。
【0078】
図6(b)に示す例では、端部32aの部分の側面部分と端部32dの部分の側面部分に反射防止膜Cを設け、端部32aと対向する端部32cの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、これによって、面内部31の構造パラメータおよび、端部32dと対向する端部32bの構造パラメータと異ならせている。
【0079】
図6(c)に示す例では、端部32aの部分の側面部分と隣接する端部32dの部分の側面部分に反射防止膜Cを設け、端部32bと隣接する端部32cの部分の構造パラメータを格子構造Aとし、これによって、面内部31の構造パラメータおよび、互いに対向する端部の構造パラメータと異ならせている。
【0080】
図6では、端部の側面に反射防止膜を設ける構成を示しているが、端部の上面あるいは下面に反射防止膜を設ける構成としてもよい。
【0081】
上記した図3~図6に示した構成例を表1に示す。
【0082】
【表1】
JP0005152721B2_000002t.gif

【0083】
本発明の半導体レーザの構成は、これらの構成例に限られるものではなく、本発明の、矩形領域において、2組の互いに対向する2辺の端部において、対向する2辺の端部のいずれか一方の端部の構造を内面部の周期構造と異なる構造とする構成、あるいは、矩形領域において、2組の互いに対向する2辺の端部において、対向する2辺の端部は互いに異なる構造を有する非対称な構造とする構成という技術思想に基づく構成であれば任意の組み合わせに適用することができる。
【0084】
図7は、前記した図3に示した、端部32aの円孔の孔径と端部32dの円孔の孔径を異ならせた構成の一実施例である。
【0085】
図8は本発明による非対称構造による半導体レーザの光ビームのパターン(図8(a))と、光強度分布(図8(b))を示している。なお、図8(b)に示す光強度パターンは図8(a)中の縦線に沿った範囲の光強度を示している。
【0086】
図8(b)に示す光強度の2つのピークを比較すると、最大のピーク強度と次に大きなピーク強度とは5dBの強度差があり、得られる光ビームはほぼ単峰性であると云うことができる。
【0087】
一方、図9は従来の対称構造による半導体レーザの光ビームのパターンを示している。このパターンは双峰性を示している。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の半導体レーザは、光ディスクの光源やレーザディスプレイの光源に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の二次元フォトニック結晶からなる半導体レーザを模式的に示した構成図である。
【図2】本発明の二次元フォトニック結晶の配列例を示す図である。
【図3】本発明の二次元フォトニック結晶の構成例を説明するための図である。
【図4】本発明の二次元フォトニック結晶の構成例を説明するための図である。
【図5】本発明の二次元フォトニック結晶の構成例を説明するための図である。
【図6】本発明の二次元フォトニック結晶の構成例を説明するための図である。
【図7】本発明の二次元フォトニック結晶の実施例を説明するための図である。
【図8】本発明の半導体レーザの光ビームのパターンおよび光強度分布を示す図である。
【図9】従来の対称構造による半導体レーザの光ビームのパターンを示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10 半導体レーザ
11 基板
12 孔
13 アンダークラッド層
14 クラッド層
20 半導体レーザ
21 基板
22 孔
23 活性層
30 矩形領域
31 内面部
31 面内部
32 端部
32a 端部
32b 端部
32c 端部
32d 端部
A 格子構造
B 格子構造
C 反射防止膜
a 間隔
r 径
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図1】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8