TOP > 国内特許検索 > 遺伝子損傷マーカー > 明細書

明細書 :遺伝子損傷マーカー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3762979号 (P3762979)
公開番号 特開2003-096091 (P2003-096091A)
登録日 平成18年1月27日(2006.1.27)
発行日 平成18年4月5日(2006.4.5)
公開日 平成15年4月3日(2003.4.3)
発明の名称または考案の名称 遺伝子損傷マーカー
国際特許分類 G01N  33/15        (2006.01)
C07H  19/173       (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
FI G01N 33/15 Z
C07H 19/173
G01N 33/50 E
G01N 33/50 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 28
出願番号 特願2001-291793 (P2001-291793)
出願日 平成13年9月25日(2001.9.25)
審査請求日 平成13年9月25日(2001.9.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
発明者または考案者 【氏名】金沢 和樹
【氏名】榊原 啓之
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】渕野 留香
参考文献・文献 国際公開第01/069235(WO,A1)
調査した分野 G01N 33/15
C07H 19/173
G01N 33/50
C12Q 1/02
CA(STN)
CAOLD(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
化合物の抗酸化能を評価する方法であって、
1)2'-デオキシグアノシン(2'dG水溶液に標的化合物を添加する工程と、
2)活性酸素種を生成させるための処理をする工程、または酸化開始剤もしくは活性酸素種を前記混合液に添加する工程と、
3)前記混合液をインキュベートする工程と、
4)前記混合液中に生成した8-ヒドロペルオキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OOHdG)の量を測定する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
化合物の抗酸化能を評価する方法であって、
1)2'-デオキシグアノシン(2'dG水溶液に標的化合物を添加する工程と、
2)2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(AAPH)を前記混合液に添加する工程と、
3)前記混合液をインキュベートする工程と、
4)前記混合液中に生成した8-ヒドロペルオキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OOHdG)の量をHPLCによって測定する工程と、
を含む方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子塩基の一つである2’-デオキシグアノシンに分子状酸素ラジカルを作用させたときに定量的に生成する8-ヒドロペルオキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OOHdG)を、酸化マーカーとして使用することに関する。さらに、8-OOHdGの生成反応を利用して、水溶性物質及び脂溶性物質の抗酸化能を簡易に判定できる方法に関する。また、細胞に分子状酸素ラジカルを作用させた場合に生成する8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を酸化マーカーとして使用し、細胞内における化合物の抗酸化能を判定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌およびその他の酸化的損傷による疾患は、活性酸素種によって引き起こされる遺伝子の酸化的損傷が原因となって引き起こされると考えられている(1-3)。前記損傷は、主に8-ヒドロキシル類である8-オキソ-7,8-ジヒドロデオキシグアノシン(8-ヒドロキシー2’-デオキシグアノシン、8-OHdG)および/または8-ヒドロキシ-2’-デオキシアデノシンが塩基内に形成されることによって引き起こされる(4-7)。これまでに、いくつかの癌腫細胞において、8-OHdGが蓄積し、遺伝子に変異を生じることが観察されている(8-10)。ヒト骨格筋、呼吸上皮、白血球の8-OHdGのレベルは、それぞれ加齢、都市公害、および喫煙と関連していることが報告されている(11-13)。また、尿中の8-OHdGは、癌に伴うヒト酸化ストレスのマーカーとされている(14-17)。
【0003】
抗酸化物質は、活性酸素を除去することができるので、食物中の抗酸化成分によって上記疾患を予防することが可能であると推測される(18)。どの食物中の如何なる抗酸化成分が、活性酸素を除去して効果的に遺伝子損傷を予防することができるのかを明らかにするためには、さらなる理解が必要とされ、数多くの研究が行われてきた。
【0004】
従来、天然物、食品成分、医薬品などに含まれる抗酸化物質の抗酸化能を判定するための適切な方法は開発されていなかった。特に、抗酸化物質が遺伝子損傷を抑えることができるか否かを判定する手法は、その要望にも関わらず開発されていなかった。さらに、このような抗酸化物質は、遺伝子が損傷を受けるよりも早く抗酸化能を発揮してこそ意味があるため、このような能力をもった抗酸化物質が望まれていた。
【0005】
本発明者らは、遺伝子が損傷されるよりも早くかつ容易に、抗酸化能を発揮できる抗酸化物質を同定しなければならないと考えた。しかし、これまでに確立された抗酸化物質の活性を評価するための様々な方法は、そのほとんどのが、使用した標的が適切ではなかったことなどの理由で、遺伝子の酸化的損傷に対する防御効果を評価するには不適切な方法であった。また、従来の方法の中には、非常に複雑であり、抗酸化能の判定とは無関係の因子を含む方法も多かった。
【0006】
上記のような方法において、8—ヒドロキシ誘導体を形成する活性酸素種としては、過酸化水素(20-23)、チオールラジカル(24)、および脂質ペルオキシド(25)が報告されている。しかし、これらはいずれも、酸化種を発生するために遷移金属、紫外線、またはガンマ線を必要とする。前記のような補因子が必要であると、アッセイ系が複雑となり、評価の際に間違いを生じてしまうおそれがあった。
【0007】
これに対し、酸素ラジカルは、通常細胞内に多量に存在しており(26)、特にミトコンドリアにおいて、電子伝達系の副反応として、酸素分子から直接そのラジカルであるスーパーオキシドアニオンを発生することが明らかとなっている(27,28)。このほか、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(AAPH)は、AAPH-ペルオキシラジカルを介して化学量論的な分子状酸素ラジカルを生成することが証明されていた(19)(図1)。
【0008】
また、1950年には、1,1—ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)を使用した抗酸化能を測定するための簡便法が開発されているが、この従来法は生体に存在しない物質を使用しているため、生体に適用することができなかった。ヒトなどの生物の遺伝子損傷に対する防御能を様々な成分、物質について直接判定する方法が望まれていた。また、簡便さは変わらないが、従来法よりも幅広い多くの成分を被検対象にする方法が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するために、本発明は、2’-デオキシグアノシン、およびその酸化物である8-ヒドロペルオキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OOHdG)を酸化マーカーとして使用して、化合物の抗酸化能を評価するための方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を酸化マーカーとして、細胞内における化合物の抗酸化能を評価する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、遺伝子塩基の一つである2’-デオキシグアノシンに分子状酸素ラジカルを作用させると、新規化合物である8-ヒドロペルオキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OOHdG)が生成すること、および細胞内DNAに分子状酸素ラジカルを作用させると、8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)が生成することを発見し、これらの知見に基づいて本発明の完成に到達したものである。
【0011】
さらに本発明者らは、上記2’-デオキシグアノシン、および細胞内DNAを標的として使用し、これに分子状酸素ラジカルを作用させることによって、それぞれ8-OOHdG、および8-OHdGが定量的に生成することに注目し、抗酸化能を評価するために有用、かつ簡便な判定方法を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、8-ヒドロペルオキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OOHdG)、特に酸化マーカーとして使用するための8-OOHdGを提供する。
【0013】
また、本発明は、化合物の抗酸化能を評価する方法であって、
1)2’-dG水溶液に標的化合物を添加する工程と、
2)活性酸素種を生成させるための処理をする工程、または酸化開始剤もしくは活性酸素種を前記混合液に添加する工程と、
3)前記混合液をインキュベートする工程と、
4)前記混合液中に生成した8-ヒドロペルオキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OOHdG)の量を測定する工程と、
を含む方法を提供する。
【0014】
さらに好ましくは、本発明は、化合物の抗酸化能を評価する方法であって、
1)2’-dG水溶液に標的化合物を添加する工程と、
2)2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(AAPH)を前記混合液に添加する工程と、
3)前記混合液をインキュベートする工程と、
4)前記混合液中に生成した8-ヒドロペルオキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OOHdG)の量をHPLCによって測定する工程と、
を含む方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、細胞内における化合物の抗酸化能を評価する方法であって、
1)細胞培養液に標的化合物を添加してインキュベートする工程と、
2)工程1の培養液を除去して洗浄する工程と、
3)活性酸素種を生成させるための処理をする工程、または酸化開始剤もしくは活性酸素種を前記培養液に添加する工程と、
4)工程3の培養液をインキュベートする工程と、
5)前記細胞内に生成した8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)の量を測定する工程と、
を含む方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記方法であって、遺伝子損傷防御物質を検索するための方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
<酸化マーカーとしての新規化合物8-OOHdG>
本発明は、遺伝子塩基の一つである2’-デオキシグアノシンに、分子状酸素ラジカルを作用させることによって8-OOHdGが得られるという以下の知見に基づいている。
【0019】
AAPH(25mM)と2’-dG(0.5mM)を水中で混合して、37℃において大気圧下で攪拌しながらインキュベートした。前記混合液のpHは7.0であり、インキュベートの間に変化しなかった。10μlをとり、UV(254nm)(HITATCH L-7100およびL-7420)並びに電気化学的(+600mV)(IRICAΣ875;京都、日本)検出器を装備した逆相HPLCシステムで解析した。HPLCの条件は以下のようである:カラム、Capcell pak C18 UG120(5μmメッシュおよび直径4.6×250mm)(資生堂株式会社、東京、日本)、35℃で維持;移動相、0.1mMエチレンジアミンテトラアセテート・二ナトリウム塩を含む6.5%メタノールおよび93.5% 20mMリン酸カリウムバッファー(pH4.5)の混合溶液;流速、1.0ml/min。
【0020】
APPHと2’-dGを反応させた結果、HPLCで検出可能な四つの生成物が得られた。保持時間が3.3分の第一のピークは、AAPHを単独でインキュベートした場合と同じプロフィールであったので、AAPHに由来するものであり、第三のピークはその分解生成物であった。保持時間が10.1分の第四のピークは、2’-dGの保持時間と一致した。5.5分の小さなピークは、試薬に含まれているグアニンであると同定された。従って4.3分の第二のピークが、AAPHを2’-dGが反応した生成物であった。
【0021】
この反応生成物を同定するために、種々の解析を行った。その解析方法を、下記の実施例において詳述し、結果を表1および2に示した。解析の結果、前記反応生成物は、新規化合物である8-OOHdGであることが明らかとなった。すなわち、分子状酸素ラジカルの存在下において、2’-デオキシグアノシンが存在すると、8-OOHdGが生成されることが示差される。
【0022】
【表1】
JP0003762979B2_000002t.gif【0023】
【表2】
JP0003762979B2_000003t.gif【0024】
従って、本発明の一つの態様として、8-OOHdG、特に酸化マーカーとして使用するための8-OOHdGが提供される。
【0025】
本明細書において、「酸化マーカー」とは、測定系に酸化物質が存在しない場合には検出することができないが、酸化物質が存在する場合にのみ検出される物質を意味する。
【0026】
たとえば、酸化物質の存在を測定するために、前記マーカーを使用することができる。すなわち、酸化物質が存在するか否かを測定したい溶液中に、2’-dGを含む溶液を添加して、適切にインキュベーションした後、反応溶液中に生成された8-OOHdGを測定すればよい。この溶液中に酸化物質が存在すれば、8-OOHdGが検出されることとなる。
【0027】
前記インキュベーションについては、後述の抗酸化能を評価する方法の第三工程において説明し、8-OOHdGの検出については、第四工程において説明する。また、本発明の8-OOHdGは、後述の抗酸化能を評価する方法の第二工程で説明する「活性酸素種」を検出するための酸化マーカーとして使用することもできる。上記の測定において使用される種々の条件は、当該技術分野の当業者であれば、適切に選択することが可能である。
【0028】
<化合物の抗酸化能を評価する方法>
さらに、本発明の他の態様として、化合物の抗酸化能を評価する方法が提供される。
【0029】
前記方法を実施するには、まず、第一の工程において、2’-dGを含む溶液中に、抗酸化能を評価すべき標的化合物を含む試料を添加する。この時、いずれの標的化合物も添加していない試料をコントロールとすればよい。
【0030】
本明細書において「標的化合物」は、任意の化合物であってよい。前記化合物は、一種類のみでもよく、または数種類の混合物でもよい。さらに、前記化合物は無機化合物、有機化合物、または両方を組み合せた混合物であってもよい。本発明の方法で抗酸化能を評価する際に、化合物を組み合せて使用した場合、一種類のみで評価した場合と比較することにより、その相乗作用、および相加作用を評価することも可能となる。
【0031】
前記2’-dG水溶液に標的化合物を添加する場合、前記化合物をそのまま添加するか、または任意の溶媒に溶解してから添加してもよい。2’-dG水溶液に添加する化合物を溶解させる溶媒は、任意の溶媒でよいが、好ましくはジメチルスルホオキシド(DMSO)である。
【0032】
次に、第二の工程において、活性酸素種を生成させるための処理をする、または活性酸素種もしくは酸化開始剤を前記混合液に添加する。
【0033】
ここで、「活性酸素種」とは、酸素ラジカル(たとえば、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシラジカル、一酸化窒素、およびその他の分子状酸素ラジカルを含む)、過酸化水素、一重項酸素、オゾンなどの反応性の強い酸素の分子種をいう。さらに、上記方法において使用される活性酸素種は、8—ヒドロキシ誘導体に由来する過酸化水素(20-23)、チオールラジカル(24)、および脂質ペルオキシド(25)などもあげられるがこれに限定されない。これらの活性酸素種を生成させるための処理は、薬剤(遷移金属など)、紫外線、または放射線(ガンマ線)を使用した方法など、当業者に周知の方法を使用すればよい。
【0034】
また、「酸化開始剤」は、前記活性酸素種を生成することができる試薬を意味し、本発明において使用される酸化開始剤は、当該技術分野において通常使用されるものを使用すればよい。好ましくは、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(AAPH)である。
【0035】
次に、第三の工程として、前記混合液をインキュベーションする。
【0036】
前記インキュベーションは、第二の工程によって生成した活性酸素種(好ましくは分子状酸素ラジカル)が、2’-dGと反応して十分な量の8-OOHdGを生成することができる時間、および温度で行えばよい。「十分な量の」とは、次の第四の工程において8-OOHdGを検出することができる量である。前記インキュベーションの時間、および温度は、好ましくは1時間、および37℃である。
【0037】
最後に第四の工程として、前記混合液中に生成した8-OOHdGの量を測定する。前記測定の方法は、8-OOHdGを定量することができる方法であれば特に限定されず、たとえば、本明細書の実施例に記載のように、UV(254nm)(HITATCH L-7100およびL-7420)並びに電気化学的(+600mV)(IRICAΣ875;京都、日本)検出器を装備した逆相HPLCシステムで解析すればよい。このとき、HPLCの条件は以下のものを使用すればよい:10μlのサンプル、カラム、Capcell pak C18 UG120(5μmメッシュおよび直径4.6×250mm)(資生堂株式会社、東京、日本)、35℃で維持;移動相、0.1mMエチレンジアミンテトラアセテート・二ナトリウム塩を含む6.5%メタノールおよび93.5% 20mMリン酸カリウムバッファー(pH4.5)の混合溶液;流速、1.0ml/min。
【0038】
前記方法の一つの態様として、化合物のDMSO溶液5μlを6種の異なった濃度で、0.5mM 2’-dGおよび20mM AAPHの混合液に添加して、次に37℃において1時間インキュベート後、10μlのサンプルをHPLCシステムをUV254nmで使用して測定し、8-OOHdGが形成された量を定量することができるが、これに限定されない(図2)。
【0039】
上記方法において、コントロールとしての標的化合物を添加していないサンプルと比較することによって、標的化合物の抗酸化能を評価することが可能となる。 8-OOHdG形成の抑制を指標として、容易にかつ正確に抗酸化物質の能力を評価することができる。特に、2’-dGは遺伝子塩基の一つであるため、2’-dGを遺伝子損傷防御物質の検索を行うために使用することができる。
【0040】
本発明のもう一つの態様として、さらに、細胞内において化合物の抗酸化能を評価することもできる。
【0041】
細胞内の場合、生成した酸化産物8-OOHdGは、酸素が一つ少ない8-OHdGに還元されている。
【0042】
前記方法を実施するには、まず、第一の工程において、細胞培養液中に抗酸化能を評価すべき標的化合物を含む試料を添加する。「細胞培養液」とは、細胞が培養されている溶液であり、本方法に使用する細胞はいかなる細胞であってもかまわない。好ましくは、Hep G2細胞である。前記細胞は、サブコンフルエントな状態に培養されたものが好ましく、細胞数を一定にしておく必要がある。
【0043】
標的化合物を添加する前に、前記培養液を除去して、細胞をHBSSなどの緩衝液で洗浄してもよい。洗浄後、前記緩衝液などを細胞に添加して、該培養液に標的化合物を添加することができる。
【0044】
標的化合物を添加する際に、いずれの標的化合物も添加していない試料をコントロールとすればよい。
【0045】
前記化合物を添加した後、前記培養液を適切な時間インキュベートする。適切な時間とは、標的化合物が細胞内に十分取り込まれる時間であり、たとえば37℃において15分間培養すればよい。
【0046】
次に、第二の工程において、工程一の培養液を除去して、細胞を洗浄する。前記細胞が接着細胞であれば、培養ディッシュに接着させたまま洗浄すればよい。又、前記細胞が浮遊細胞であれば、遠心で細胞を回収するなどして洗浄すればよい。
【0047】
次に、第三の工程において、前記洗浄した細胞に対し、活性酸素種を生成させるための処理をする、または活性酸素種もしくは酸化開始剤を前記細胞培養液に添加する。前記活性酸素種を生成させる処理、および酸化開始剤は、上述のインビトロにおける方法と同じものを使用することができる。この時コントロールとしては、活性酸素種を生成させる処理をしていない培養液、および酸化開始剤を含まない培養液で培養すればよい。たとえば、25mMのAAPHを含むHBSS緩衝液おいて、およびコントロールとしてHBSS緩衝液において細胞を培養すればよい。
【0048】
次に、第四の工程において、前記混合液をインキュベートする。前記インキュベーションは、上述のインビトロにおける方法と同様に、第二の工程によって生成した活性酸素種(好ましくは分子状酸素ラジカル)が、DNAと反応して十分な量の8-OHdGを生成することができる時間、および温度で行えばよい。この場合「十分な量の」とは、次の第四の工程において8-OHdGを検出することができる量である。前記インキュベーションの温度、および時間は、好ましくは37℃、および6時間以上である。
【0049】
最後に第四の工程として、前記混合液中に生成した8-OHdGの量を測定する。前記測定の方法は、上述のインビトロにおける方法と同様に行い、8-OHdGが形成された量を定量すればよい。
【0050】
本方法を使用することにより、生体内における抗酸化能を判定することが可能となる。従来の手法では、インビトロにおける有効性しか判定することができなかったが、本方法では、その被検物質が細胞内に入り込んで抗酸化能を発揮することができるか否かを測定しているので、生体内において有効であるか否かを判定することができる。
【0051】
【発明の効果】
我々は、上述の方法を使用して、新規物質8-OOHdG、8-OHdGの形成を抑制する活性を有する化合物を検索したが、DPPHなどを使用する方法と比較して、この方法が、抗酸化能を評価するために有用であることが明らかとなった。さらに、以下の実施例に示したように、この系は抗酸化物質の相乗作用を調査するためにも有効であった。ここに提供した方法は、DPPH法よりも簡便で、容易な方法であり、かつ正確に食物中の抗酸化物質を評価することを可能とした。また、2’-dGは遺伝子塩基の一つであるので、本発明の方法は遺伝子損傷防御物質の検索を行うために有用である。特に、細胞における抗酸化能を調べる方法では、実際にDNAの損傷を検出しており、本発明の方法を使用して同定された化合物は、生体内においても有効となる。
【0052】
癌、動脈硬化症、高血圧症、骨関節炎、急性膵炎、老人性白内障、パーキンソン病、新生糖尿病、老人性痴呆症、肝硬変、アミロイドーシスなどの原因とされている酸化物質を抑制するための治療薬の開発において、本発明の方法が抗酸化物質の同定に利用され、かつ同定された物質は、抗酸化剤として応用されることが期待される。また、抗酸化能や生活習慣病予防をうたった食品を開発するにあたり、本発明の方法によって同定された抗酸化物質を食品として使用することができる。
【0053】
【実施例】
<材料および方法>
化合物:
AAPH、2’-dG、8-OHdGおよび、アスコルビン酸は、和光純薬株式会社(東京、日本)より購入した。1,1—ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)は、ナカライテスク(京都、日本)より購入した。ケルセチンは、Extrasynthese(Genay, France)より、没食子酸エピガロカテキンは、栗田工業(東京、日本)から購入し、およびその他の抗酸化物質は、商業的に入手可能な特級の製品を使用した。これらの製品には、不純物がないことを、使用前にHPLCを使用してテストした。水は、二回滅菌して、およびその他の全ての試薬は、利用できる中で最もグレードの高いものを使用した。
【0054】
2’-dGとAAPHとの反応生成物のHPLC解析:
AAPH(25mM)と2’-dG(0.5mM)を水中で混合して、37℃において大気圧下で攪拌しながらインキュベートした。前記混合液のpHは7.0であり、インキュベートの際にpHに変化はなかった。10μlをとり、UV(254nm)(HITATCH L-7100およびL-7420)並びに電気化学的(+600mV)(IRICAΣ875;京都、日本)検出器を装備した逆相HPLCシステムで解析した。HPLCは以下のような条件で実施した:カラム、Capcell pak C18 UG120(5μmメッシュおよび直径4.6×250mm)(資生堂株式会社、東京、日本)、35℃で維持;移動相、0.1mMエチレンジアミンテトラアセテート・二ナトリウム塩を含む6.5%メタノールおよび93.5% 20mMリン酸カリウムバッファー(pH4.5)の混合溶液;流速、1.0ml/min。
【0055】
生成物の精製:
反応生成物を得るために、250mMのAAPHおよび2.5mMの2’-dGを、6時間インキュベートした。この混合液(10ml)を、イオン交換カラム(Dowex 1×4、50-100メッシュ、OH-形態、直径14×100mm)に通した。前記酸物を50mlの0.1N NaOH、および50mlの水で洗浄した後、0.1N HClで溶出した。溶出液を1N NaOHで中和して、蒸発装置で5mlほどに濃縮した。Cosmosil Packed Column(preparative colomn,直径10×250mm)(ナカライテスク、京都、日本)を用いたHPLCにかけて、水で溶出した。254nmの吸収を示す画分を回収して、遠心濃縮器(VC-96N, Taitec Co)で乾燥した。乾燥した生成物のHPLCでは、上記HPLC解析における生成物のピークの一つと一致する単一のピークが得られた、
化学構造の解明:
乾燥生成物の化学構造は、核磁気共鳴(NMR)スペクトロメトリー(DPX-250,Bruker Analytik GmbH)を使用して解明した。プロトンのスペクトルは、D2Oおよび3-トリメチルシリルプロピオナート-2,2,3,3,D4中において、250 MHzに、13Cは62.5MHzで記録した。マススペクトルは、大気圧下において化学イオン化法により30eVでイオン化して、HPLC-マススペクトロメーター(LC/MS M-1200H,HITACHI)を用いて測定した。赤外線スペクトルは、FT-IR (FTIR-8600PC,Shimadzu)を使用して、KBr粉末中で拡散反射法によって測定した。
【0056】
2’-dGおよびAAPHを使用したインビトロにおける抗酸化物質アッセイ:
化合物のジメチルスルホオキシド(DMSO)溶液5μlを6種の異なった濃度で、0.5mM 2’-dGおよび20mM AAPHの混合液に添加した。37℃において、1時間インキュベートした後、8-OHdGが形成された量を測定した。測定は、10μlの混合液をサンプルとし、UV254nmでHPLCシステムを使用して行った。前記化合物が、濃度応答曲線を作成した場合、濃度に対して8-OOHdG形成の抑制をプロットすることにより、IC50を見積もった。前記IC50は、8-OOHdG形成を50%抑制するために必要な抗酸化物質の量である。アッセイは、それぞれ独立して3回行った。
【0057】
DPPHを用いたアッセイ:
前記アッセイの正確度を、DPPHラジカルを使用した簡便で広範に利用できる方法と比較した(29)。それぞれ異なった量の抗酸化物のエタノール溶液を、 250nmol DPPHを含む50%エタノールの50mM酢酸バッファー(pH5.5)溶液に添加した。シグナルは、517nmでモニターした。5分以内におけるDPPHラジカルの減少量を、それぞれの抗酸化物の濃度に対してプロットした。IC50値は、溶液内の50%のDPPHラジカル(125nmol)を5分以内に除去するために必要な抗酸化物の濃度として見積もった。
【0058】
Hep G2細胞およびAAPHを使用した抗酸化物質アッセイ:
培養ディッシュにHep-G2細胞をまき、サブコンフルエントまで培養した。培地を除去した後、HBSS緩衝液で細胞を2回洗浄した。HBSS緩衝液に試験物質(ケルセチン)を10μMとなるように添加して、37℃のインキュベーター内において15分間プレインキュベーションした。次に、前記培養液を除去して、細胞を二回洗浄した後、25mMAAPHを含むHBSS緩衝液、またはHBSS緩衝液を添加して、37℃のインキュベーター内において~12時間培養した。前記培養液を除去して、細胞を二回洗浄した後、細胞を回収した。回収した細胞から、通常の方法を使用してDNAを抽出した。抽出したDNA中の8-OHdGをインビトロの実験と同様に測定した。測定は、10μlの混合液をサンプルとし、UV254nm、並びに電気化学的検出器(+600mV)でHPLCシステムを使用して行った。
【0059】
<結果>
APPHと2’-dGの反応:
図3には、APPHと2’-dGの反応生成物のHPLCの図を示す。(A)は、25mMのAAPHと0.5mMの2’-dGを37℃において1時間インキュベートしたときのプロフィールを示す。インキュベーション混合液(10μl)を254nmでモニターし、逆相HPLCで解析した。(B)は、インキュベーション時間依存的な生成物(白丸)の形成、および2’-dG(黒丸)の減少を示す。
【0060】
AAPHと2’-dGの反応混合液を1時間インキュベートして、254nmでモニターした。異なった波長に、および8-OHdGに感受性であることが知られている電気化学的検出を使用したその他のモニター方法(30)によっても、さらにピークが得られることはなかった。従って、APPHと2’-dGの反応では、HPLCで検出可能な四つの生成物が得られることがわかった。保持時間が3.3分の第一のピークは、AAPH単独でインキュベートした場合と同じプロフィールであったので、AAPH起源であることが示差された。また、第三のピークはその分解生成物である。保持時間が10.1分の第四のピークは、2’-dGの保持時間と一致した。保持時間が5.5分の小さなピークは、試薬に含まれているグアニンであると同定された。従って、保持時間4.3分の第二のピークが、AAPHと2’-dGの反応生成物であることが明らかとなった。図3Bは、2’-dGの消費の時間依存性を示している。標準的な2’-dGおよび8-OHdGにあわせて、精製物の特徴を表1に要約した。前記生成物は、m/zに親イオンピークを与えたことから、2’-dGに32mass unit(O2)が付加されたことが示差される。UVスペクトルでは、2’-dGと同様のプリン骨格を示された。IR解析によるバンドは、γ(O-O)およびδ(OOH)に帰属された。過酸化物価の化学的測定により、生成物1モルあたり一つの過酸化物基が付加していることが示された。前記値は、2’-dGおよび8-OHdGにおいては陰性であった。
【0061】
NMR解析(表2)において、前記生成物は、H-8または8-OHdGのシグナルを与えなかった。その他のシグナルは、H-1’~H-5’に由来するリボースのプロトンに帰属された(33)。このシグナルは、2’-dGのものと比較して、わずかに高い磁気領域にシフトしており、H-1’は8-OHdGよりもシフトが大きかった。前記シフトは、8位における置換の特徴である(34,35)。炭素のスペクトルにおいては、基の2’-dGと比較して、C-8が低い磁気領域にシフトしており、C-4およびC-5は、8-OHdGと同様により高い領域にシフトした(36)。C-8のシフトは、8-OHdGのものより大きかった。従って、前記プロトンおよび炭素のスペクトルは、8位がOH以外の基で置換されていることを示す。massおよびIRスペクトルおよび化学的測定に基づいて、前記置換は過酸化物であることが示された。
【0062】
残りの問題は、前記置換が過酸化水素、または4,8、または5,8などのエンドペルオキシドによるものであるか否かということである。我々は、前記生成物を、37℃の0.17N HCl中においてインキュベートして、図3のようにHPLCで解析した(図4)。15分間のインキュベーションにより、かなりの量の8-OHグアニン、および少量の8-OHdGが生成され、同時に、Merck Kieselgel 60 F254(Darmstadt, Germany)を用いた薄層クロマトグラフィーにおいて、メタノール:酢酸エチル(5:2)で展開して、ジフェニルアミン:アニリン:リン酸の試薬で染色して、2’-デオキシリボースを検出した。電気化学的検出は+600mVで解析した。表2に示したように、8-OHsの形成は、元の物質が8-OOHdGに由来することを示している。
【0063】
図5は種々の条件下における8-OOHdGの定量的形成を示した図である。図5Aは、表1の分子吸光係数λ254(ε)=15,300を使用して得られた8-OOHdGの補正曲線である。検出限界は、3pmolであった。図5Bは、様々な温度かにおいて8-OOHdGの形成を示した図である。0.5mM 2’-dGと20mM AAPHの混合液を、25(白四角)、30℃(黒丸)、35℃(白三角)、37℃(白丸)、40℃(菱形)、および50℃(逆三角)でインキュベートした(図5B)。図5Cは、様々な濃度のAAPHにおける8-OOHdGの形成を示した図である。1(黒四角)、10(三角)、25(白丸)、50(菱形)、75(黒丸)、および100mM(白四角)の濃度のAAPHと0.5mM 2’-dGを37℃でインキュベートした(図5C)。形成された8-OOHdGの量を、図1のようにHPLCで測定した。8-OOHdGの形成速度は、インキュベーション時間(図5B)、およびAAPH濃度(図5C)に依存しており、全ての曲線は、ほとんどインキュベーション時間に比例していた。これらの結果は、本システムを抗酸化物アッセイに利用できることが示される。
【0064】
8-OOHdG形成系を使用した抗酸化能の評価:
我々は、本発明の系を使用して81個の化合物について、抗酸化能を評価した。前記化合物を5μlのDMSOに溶解して、0.5mM 2’-dG、および20mM AAPHの混合液に添加した。化合物の非存在下における8-OOHdGの形成に対する抑制の割合を、テスト化合物の抗酸化能として評価した。溶媒として使用したDMSOは、8-OOHdG形成になんの影響も与えなかった。
【0065】
我々は、単純なフェノール類、フラボノイド類、アントラキノン類、その他の植物成分、食物添加物、および生体成分を表3に要約した。これらのほとんどは、我々の食物中に存在している。それら全てのほとんどが、IC50値を与えたことは、それらが濃度依存的な抗酸化性を有することを意味している。単純なフェノール類の中で、プロトカテク酸、カテコール、カフェイン酸、およびクロロゲン酸が最も低い値を示し、オルト-ジヒドロキシル生成物も、強力な抗酸化物質であると認識された(37)。食物中の強力な抗酸化物質として認識されているフラボノイドは、IC50値が低かった。それらの能力は、そのヒドロキシルメンバーとほとんど同じであったが、一方、フラボン、フラバノン、およびカルコンは、効果がなく、1-ヒドロキシルフラボノールは、ポリヒドロキシフラボノイドよりも弱かった。アンスラキノンの中では、オルト-ジヒドロキシル類がかなり低いIC50値を示したが、その他は高い値を有したか、または効果がなかった。生体成分であるグルタチオン、およびアスコルビン酸は、より高いIC50値を示し、かつニューロトランスミッターであるドーパミン、およびホルモン類は、かなり低い値を示した。β-カテニン,またはα-トコフェロールは、IC50値を与えなかった。
【0066】
【表3】
JP0003762979B2_000004t.gif【0067】
【表4】
JP0003762979B2_000005t.gif【0068】
【表5】
JP0003762979B2_000006t.gif【0069】
【表6】
JP0003762979B2_000007t.gif【0070】
【表7】
JP0003762979B2_000008t.gif【0071】
【表8】
JP0003762979B2_000009t.gif【0072】
これらの結果は、DPPH法によって得られた結果と同様であることが明らかとなったが、DPPH法は、ラジカルを除去するため、またはいくつかの単純なフェノール類、およびフラボノイド類のIC50値を測定するためには効果的ではなかった。たとえば、アピゲニンは、抗酸化物質であると考えられていたが、効果がないと評価された(38,39)。DPPH法は、α-トコフェロールの活性を検出するためのみに有効であった。
【0073】
本研究においてテストされた単純フェノール類およびフラボノイド類のほとんどは、脂溶性である。DPPH法と比較して、提供された8-OOHdG法は、α-トコフェロールを除く、脂溶性化学物質の活性を測定することが可能であった。DPPH法は、生物学的に重要な抗酸化物質の一つであるグルタチオンの活性を検出することができなかったが、本方法は、カテキン類、トロロクス、グルタチオン、およびアスコルビン酸などの水溶性抗酸化物質の能力を評価するためにも有用である。
【0074】
8-OOHdG形成に基づいた抗酸化物の相乗作用の測定:
アスコルビン酸、ケルセチン、およびEGCGは、ヒトにおいて主要な食物性抗酸化物質である。これらの食物性抗酸化物質は、野菜類、および茶類に由来している。次に、我々は、アスコルビン酸、ケルセチン、およびEGCGを、それぞれ50、1.5、および5.0μMの濃度で使用して、その相乗作用をテストした(図6)。これらの濃度は、生理学的レベルに非常に近い濃度である(40-44)。図6は、アスコルビン酸(50μM)、ケルセチン(1.5μM)、および/またはEGCG(5.0μM)を、0.5mM 2’-dGと25mM AAPHのインキュベーション混合液に添加して、図1のようにHPLCで8-OOHdG形成(白丸)を測定した図である。同時に、抗酸化剤の消費量を見積もった。移動相は、アスコルビン酸(白三角)の場合、0.1mMエチレンジアミンテトラアセテート二ナトリウム塩、および5mMテトラ-normal—ブチルアンモニウムリン酸を含む100mMリン酸ナトリウムバッファー(pH2.5)(流速、0.7ml/min)、ケルセチン(黒丸)の場合、0.1mMエチレンジアミンテトラアセテート二ナトリウム塩を含む50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH3.3)中に55%メタノール(流速1.0ml/min)、並びにEGCG(白四角)の場合、0.1mMエチレンジアミンテトラアセテート二ナトリウム塩を含む50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH2.5)中に14%アセトニトリル(流速1.0ml/min)を使用した。アスコルビン酸およびケルセチンは、電気化学的検出器を+600mVで、EGCGは+700mVで使用して測定した。8-OOHdG形成は、2’-dG単独とインキュベーションすることによって開始されるが、前記抗酸化物質の添加により、8-OOHdG形成が明らかに遅れた。培養開始から60、7.5、および22.5分後にアスコルビン酸、ケルセチン、およびEGCGがそれぞれ完全に消費されて、8-OOHdG形成が開始された(図6B-D)。二種の抗酸化物質が存在する場合、それぞれの抗酸化剤が単独のときに引き起こされる遅れを合計した時間だけ、8-OOHdG形成が遅れた(図6E-G)。次に、三種の抗酸化物質を同時に添加した場合、8-OOHdG形成が90分まで遅れた(図6H)。これらの結果は、2’-dGに対する酸化的損傷は、全ての抗酸化物質が消費されたあとでのみに生じることが示され、アスコルビン酸、ケルセチン、およびEGCGは、遺伝的損傷に対して相加的な効果を示すことが明らかとなった。
【0075】
8-OHdG形成系を使用した抗酸化能の評価:
図7は、細胞内における化合物(ケルセチン)の抗酸化能を測定した図である。ケルセチン(10μM)の添加(白丸)によって、8-OHdG形成が阻害されることが示される。この結果から、ケルセチンは細胞内に入り込んで、DNAの酸化を阻止することが明らかとなった。また、このアッセイ系を使用して、細胞内における化合物の抗酸化能を測定可能となることが明らかになった。
【0076】
<考察>
AAPHによって発生される酸素分子ラジカルは、2’-dGから新規化合物である8-OOH誘導体を形成することが、本研究によって明らかとなった(表2)。Simandanらは、O2通気条件下おいて4時間、2’-dGにAAPHを処理した。彼らは、1%が8-OHdGを形成したが、8—OOHdGは形成されなかったと報告している。しかし、彼らが使用したのは、我々の研究とは異なった測定方法であり、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド処理した後にGC/MSを使用して測定していた。
【0077】
8-OOHdG形成は、インキュベート時間に比例的に依存していた(図3および5)。従って、我々の食物中に存在する様々な化学物質の抗酸化能を測定するために有用であった。本アッセイ系は、1時間培養したあとに15分のHPLCを実施するだけの単純、かつ容易なアッセイであり、DPPH法と同じくらい簡便である。前記DPPH法は、広く使用されてきたが、この方法は、人工的なDPPHラジカルを使用しているので、遺伝的損傷を阻害する抗酸化物質の活性を評価することが難しかった。ここに提供された方法は、通常の細胞に存在する(特に、ミトコンドリアにおいては、電子伝達系の副反応として、酸素分子からそのラジカルであるスーパーオキシドアニオンが、直接生成される(27,28))と考えられている、酸素分子ラジカルを使用している。また、本方法は、2’-dGを標的として使用して、どの抗酸化物質が、2’-dGが酸化的損傷を受ける前にラジカルを除去することができるのか、直接評価することが可能である。さらに、本方法は、DPPH法によって測定できなかった抗酸化物質の活性を評価するために使用することができる。このような抗酸化物質には、いくつかの単純フェノール、フラボノイドアピゲニン、フラボノール、クリソエリオール、ナリンゲニン、ダイゼイン、アンスラキノンエモジン、およびグルタチオンがある(表3)。従って、我々は、8-OOHdG法は、DPPH法よりも有用な方法であると考えている。
【0078】
さらに、食物性抗酸化物質が相加的活性を示すことが、本方法によって明らかとなった(図6)。アスコルビン酸は、ヒト血漿中における生理的レベルがおよそ50μMであり(40)、細胞内では数mMである(41)。また血漿中において、ケルセチンは1.5μMであり(42,43)、EGCGは4.4μMである(44)。表3のように、8-OOHdG形成を抑制するためのIC50値は、それぞれ33、3.8、および5.8μMであった。これらの値は、ケルセチンおよびEGCG単独では、遺伝的損傷を阻害するには不十分であることを示差している。アスコルビン酸と一緒に存在した場合は、それらによって、遺伝的損傷の開始が著しく遅れた。これらのことから、野菜類、および茶類から抗酸化物質を日々接種して、アスコルビン酸の活性化を促進することが重要であるといった例が示される。
【0079】
従って、ここに提供された、8-OOHdG形成に基づいた方法は、食物中の抗酸化物質の効果を評価するために非常に有用であり、癌などの遺伝子の酸化的損傷が原因となっている変性疾患を防止する能力を評価するためにも有用である。さらに、細胞内において8-OHdG形成に基づいた方法は、生体内における化合物の抗酸化能を評価するために有用であり、化合物が細胞内に入り込めるか否かの条件を含めて抗酸化能を評価することができる。
【0080】
【参照文献】
JP0003762979B2_000010t.gifJP0003762979B2_000011t.gifJP0003762979B2_000012t.gifJP0003762979B2_000013t.gifJP0003762979B2_000014t.gifJP0003762979B2_000015t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】遺伝子の酸化機構を示した図。
【図2】 8-OHdG形成系を使用した抗酸化能の評価方法を示した図。
【図3】 APPHと2’-dGの反応生成物のHPLC、および2’-dGの消費の時間依存性を示した図。
【図4】生成物をHPLCで解析した図。
【図5】種々の条件下における8-OOHdGの定量的形成を示した図。
【図6】抗酸化物質の相乗作用を8-OOHdGの定量的形成によって測定した結果を示した図。
【図7】 8-OHdG形成系を使用して細胞におけるケルセチンの抗酸化能を測定した図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6