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明細書 :生体内遺伝子発現検出用組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4340735号 (P4340735)
公開番号 特開2005-198545 (P2005-198545A)
登録日 平成21年7月17日(2009.7.17)
発行日 平成21年10月7日(2009.10.7)
公開日 平成17年7月28日(2005.7.28)
発明の名称または考案の名称 生体内遺伝子発現検出用組成物
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/72        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/72
C12Q 1/02
C12N 5/00 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2004-007548 (P2004-007548)
出願日 平成16年1月15日(2004.1.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年8月4日 日本薬学会 物理系薬学部会主催の「第16回バイオメディカル分析科学会」において文書をもって発表
審査請求日 平成18年1月31日(2006.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】藤林 靖久
【氏名】古川 高子
【氏名】高松 真二
【氏名】森 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100071973、【弁理士】、【氏名又は名称】谷 良隆
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1996年,Vol.93,p.10887-10890
核医学,2003年,Vol.40, No.3,p.352
調査した分野 C12N1/00—15/90
C12Q1/00-1/68
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
天然エストロゲンとの結合能を有せず、マウス・エストロゲン・レセプターの525番目のGlyがArgへ1アミノ酸変異した変異型エストロゲン・レセプターをコードする遺伝子(Mer)をレポーター遺伝子として組み込んだプラスミドを有する形質転換細胞が発現して産生するMer蛋白と選択的に結合する合成ステロイド誘導体を含んでなる非侵襲的生体内遺伝子発現検出用組成物。
【請求項2】
レポーター遺伝子を組み込んだプラスミドを有する細胞がMer蛋白を常時発現する胚性幹細胞である請求項1記載の生体内遺伝子発現検出用組成物。
【請求項3】
レポーター遺伝子を組み込んだプラスミドを有する細胞がMer蛋白をミフェプリストンにより発現する胚性幹細胞である請求項1記載の生体内遺伝子発現検出用組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、L-アミノ酸変異等によりリガンド結合特異性が変化し、天然エストロゲンとの結合能を失った変異型エストロゲン・レセプター遺伝子をコードする遺伝子(Mer)をレポーター遺伝子として組み込んだプラスミドを含む形質転換細胞が発現して産生するMer蛋白と選択的に結合する合成ステロイド誘導体をMer蛋白の非侵襲的生体内レセプター遺伝子発現検出プローブとして利用することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、胚性幹細胞や組織幹細胞の発見とその培養細胞株の樹立、さらに特定細胞への分化誘導条件の相次ぐ開発に伴い、再生医療における胚性幹細胞を用いた細胞移植治療が現実のものとなりつつあり、遺伝子治療も実際の臨床治療の選択の一つとして確立されてきた。(非特許文献1、2および3)しかしながら、生体内へ移植した細胞の機能はもとより、その生死すら、多くの場合体外に取り出して調べる他に正確に把握する術を持たないのが現状である。そこで、細胞移植治療における機能性細胞もしくはES細胞等の生死判別や、遺伝子治療における治療遺伝子の発現モニタリングなどの方法として、インビボ遺伝子発現検出システムの開発が切望されていた。

【非特許文献1】Stem cells and regenerative medicine Hum. Cell (2002), 15, 190-198.
【非特許文献2】Monitoring of implanted stem cell migration in vivo: a highly resolved in vivo magnetic resonance imaging investigation of experimental stroke in rat. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2002), 99, 16267-16272.
【非特許文献3】High-level sustained transgene expression in human embryonic stem cells using lentiviral vectors. Stem cells (2003), 21, 111-117.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、ルシフェラーゼをはじめとする酵素や、緑色蛍光蛋白(GFP)など光を発する蛋白などが広くイメージングのためのレポーターとして使われているが、その透過度の制約からインビボでの検出に関して汎用性のあるものは少ない。特にヒトや大動物での利用を想定した場合、体内深部での遺伝子発現を検出しようとすると、ルシフェラーゼや緑色蛍光蛋白では限界があり、PET(positron emission tomography)やSPECT (single photon emission computed tomography)などの放射性同位元素標識したトレーサーを検出する手法が有利となる。現行装置では解像度にまだ不満が残るものの、PETは検出感度、定量性に優れ、生体内での遺伝子発現を検出するのに望ましい。
生体内で用いるレポーターとしては、以下の条件を満たしていることが必要である。すなわち、毒性がないこと、その発現が細胞や個体に強い生理作用を与えないこと、抗原性が非常に低い若しくはないこと、内因性の発現がみられる場合その発現部位が限局され、かつレポーターの発現を検出しようとする領域と重ならないこと、さらに発現効率が良く、翻訳後の修飾やフォルディングに問題が起こりにくく、また遺伝子の取り扱いが容易な低分子量の蛋白であることなでである。
一方、PETを用いてレポーター遺伝子の発現を検出しようとする時、トレーサーには以下の性質を満たしていることが望まれる。すなわち、生体に悪影響を及ぼさないこと、全身またはレポーター遺伝子の発現を検出したい部位に適した分布をすること、特に脳内での発現検出が求められる場合はトレーサーが脳血管バリアーを通過できること等である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者らは、レポーター遺伝子とそれを検出するPETトレーサーの組み合わせとして、エストロゲン・レセプター・リガンド結合ドメインおよびその変異型、F-18 エストロゲンおよび変異型エストロゲン・レセプターと結合する合成ステロイド、F-18 フルオロタモキシフェンを用いることを考え出した。変異型エストロゲン・レセプター・リガンド結合ドメインは、GlyからArgへの1アミノ酸変異を持つことにより、天然のエストロゲンとの結合能を消失しているが、合成ステロイドであり部分的作用薬として作用するタモキシフェンとの結合能を持つとFeilらにより報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996), 93, 10887-10890 Ligand-activated site-specific reoombination in mice.)。このため、変異型エストロゲン・レセプターは内在性のエストロゲンのレベルに影響されることなく、投与されたタモキシフェンにのみ結合し、さらに、リガンド結合ドメインのみを使用することにより、レセプターが本来持つ転写因子としての機能は失われ、タモキシフェンと結合しても下流遺伝子の転写に対する影響などの生理作用は現れないと考えられる。このように内在性の因子により結合が阻害されず、かつリガンドの結合によっても生理機能を発現しないレポーターはこれまで例がなく、インビボのレポーターとして優れたものと言える。
【0005】
内因性のエストロゲン・レセプターの高濃度の発現は、子宮、乳腺など特定の組織に限られているため、想定される内在性蛋白によりレポーターの検出が困難になる状況はごく限られる。F-18標識タモキシフェンをはじめとする放射性標識合成ステロイドは、ステロイドの脂溶性を反映して細胞膜はもとより脳血管バリアーの透過性が高いため、脳内へも十分に到達し、ほぼ全身に分布させることができると期待される。タモキシフェンはヒトにおいても乳癌の治療に用いられているエストロゲンの拮抗薬/部分的作用薬であり、F-18標識タモキシフェンは、タモキシフェンを用いる治療に対する乳癌の反応性を予測するなどの目的ですでにヒトに投与されている実績を持ち、安全性が確認されているうえ体内動態などの情報も豊富に存在するという利点がある。表記レセプターを安定発現する凍結保存可能な動物細胞を作出することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)天然エストロゲンとの結合能を有せず、マウス・エストロゲン・レセプターの525番目のGlyがArgへ1アミノ酸変異した変異型エストロゲン・レセプターをコードする遺伝子(Mer)をレポーター遺伝子として組み込んだプラスミドを有する形質転換細胞が発現して産生するMer蛋白と選択的に結合する合成ステロイド誘導体を含んでなる非侵襲的生体内遺伝子発現検出用組成物、
(2)レポーター遺伝子を組み込んだプラスミドを有する細胞がMer蛋白を常時発現する胚性幹細胞である(1)記載の生体内遺伝子発現検出用組成物、
(3)胚性幹細胞がEB5-mer1細胞である(2)記載の生体内遺伝子発現検出用組成物、
(4)胚性幹細胞がEB5-mer2細胞である(2)記載の生体内遺伝子発現検出用組成物、
(5)レポーター遺伝子を組み込んだプラスミドを有する細胞がMer蛋白をミフェプリストンにより発現する胚性幹細胞である(1)記載の生体内遺伝子発現検出用組成物、
(6)Mer蛋白をミフェプリストンにより発現する胚性幹細胞がスイッチ・プロテインを安定して発現するEB5-スイッチ細胞である(5)記載の生体内遺伝子発現検出用組成物、
(7)Mer蛋白をミフェプリストンにより発現する胚性幹細胞がMer遺伝子を誘導型pGene/His-V5遺伝子に組み込んだプラスミドpGene/Merを安定的に組み込んだEB5-mif細胞である(1)記載の生体内遺伝子発現検出用組成物、
(8)PDECGF蛋白とMer蛋白をIRES(internal ribosomal entry site)で共発現するようにPDECGF遺伝子とMer遺伝子を組み込んだ血管新生遺伝子治療またはそれをモニタリングするために用いるpCI-PDECGF-Merプラスミド、
(9)PDECGF遺伝子とMer遺伝子をIRES(internal ribosomal entry site)で共発現するように組み込んだ血管新生遺伝子治療またはそれをモニタリングするためのpCI-Mer-PDECGFプラスミド、および
(10)誘導型pGene/His-V5遺伝子に標的遺伝子とMer遺伝子をIRESで共発現するように組み込んだ血管新生遺伝子治療またはそれをモニタリングするためのpGene-Mer-PDECGFプラスミド、
である。

【0007】
本発明細胞を調製するに際し、DNAを導入する宿主細胞として用いることのできる動物細胞としては、基礎検討の現状ではマウス胚性幹細胞(ES)細胞であるが、将来の臨床応用では、最近日本でもオリジナルの開発に成功したヒト胚性幹細胞(ES)細胞が考えられる。
【0008】
また、パーキンソン病の実験的細胞移植治療に用いられているように、ポリスルフォンなどでできている半透膜を利用したカプセル化細胞を用いる場合には、宿主の免疫系から隔離されるため、中に入れる細胞としては治療遺伝子の生産性に問題がなければ異種細胞でも構わない。医薬品などの生理活性蛋白発現宿主として広く用いられているチャイニーズ・ハムスター卵巣由来繊維芽細胞なども含まれる。もちろん特定の細胞に分化させての移植には、胚性幹細胞をはじめとする幹細胞に限られる。
【0009】
本発明では、現理化学研究所の丹羽仁史博士により樹立された、未分化能維持のためにOct-3/4遺伝子中にブラストサイジン遺伝子がノックインされたマウス胚性幹細胞であるEB5細胞株を用いた。本細胞株は、培養中に自発的に分化した胚性幹細胞ではOct-3/4遺伝子の発現が低下することを利用し、薬剤ブラストサイジン存在下で培養することにより、分化した細胞を選択除去できるように工夫された細胞株である。
【0010】
宿主細胞に導入されるエストロゲン・レセプター遺伝子としては、マウス・エストロゲン・レセプターα遺伝子(GenBank Accession No. M38651)、ヒト・エストロゲン・レセプターα遺伝子(GenBank Accession No. X03635)に由来するcDNA遺伝子および525番目(マウス)若しくは521番目(ヒト)のGlyからArgへの1アミノ酸変異を含む変異型があげられる。エストロゲン・レセプター遺伝子およびその変異型遺伝子は、哺乳動物細胞内で機能可能な発現ベクターに組み込んだ後、宿主細胞に導入する。動物細胞で機能可能なプロモーターとしては、アクチンプロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター、EF-1αプロモーター、ラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター、シミアンウィルス(SV40)の初期若しくは後期プロモーター、マウス乳頭腫ウィルス(MMTV)プロモーターなどが一般的に良く利用されている。
【0011】
発現ベクターとしては、大腸菌中での複製起点および薬剤耐性マーカー遺伝子を有し、前出のプロモーターと、その下流にマルチクローニングサイト(MCS)を有する種々のプラスミド発現ベクターが多数市販されている。目的に合わせて構築しても構わないが、これらの利用が容易である。
【0012】
また、エストロゲン・レセプター遺伝子または、その変異型遺伝子を組み込む発現ベクターとしては、常発現系と誘導型発現系が考えられる。今回レセプター遺伝子として発現させる野生型および変異型エストロゲン・レセプター・リガンド結合ドメインは、毒性は持たないと考えられるので何れも選択可能であるが、不必要な蛋白を長期間、大量に発現させることは細胞にとって負担となる可能性がある。
【0013】
また、僅かながらでも毒性を持つもの、若しくは強い生理作用を有するものを発現する必要がある場合には常発現系は不適であり、その際には例えば、GAL-4-UAS、Tetオペレーター、エクジソン応答要素を含むプロモーター等の誘導型遺伝子発現プロモーターを導入するのがよい。誘導型のプロモーターを用いると、レポーター遺伝子の発現を時間的に、また発現レベルにおいてもコントロールできる可能性が生じ、必要時にのみレポーターを発現させ検出できるため、より用いるレポーター遺伝子の適用範囲を広げられると考えられる。
【0014】
前出のレポーター遺伝子を組み込んだ発現ベクターは、細胞移植治療などに用いる細胞に導入する場合、長期間にわたってその発現がモニターできなくてはならないので、当該遺伝子が宿主染色体に導入された安定形質転換細胞を取得することとなる。この際に、動物細胞で有効な細胞選択マーカー遺伝子として利用できるものは、動物細胞の増殖を抑制または阻害する薬剤に対して耐性を付与することができる遺伝子であり、ネオマイシン耐性付与遺伝子、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子、ブラストサイジン耐性付与遺伝子、ゼオシン耐性付与遺伝子、ピューロマイシン耐性付与遺伝子などが一般的である。
【0015】
本発明細胞を調製するには、レポーター遺伝子と細胞選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを宿主細胞に導入し、安定形質転換細胞を選抜する。例えば、胚性幹細胞などの宿主細胞を5x10の5乗-10の6乗細胞/60mm dishで播き、10%の牛胎児血清を含むGlasgow MEM培地を用いて、5%CO2および飽和湿度条件下、37度で数時間から一晩程度培養した細胞へ、上記発現ベクターを導入する。遺伝子導入法としては、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法などがあるが、リン酸カルシウム法、リポフェクション法では、各社から試薬が市販されているので適宜選択し、基本的には添付のマニュアルに従って行なえば良い。使用する試薬、 DNAの量比は、予備検討により最適条件を求めておく。
【0016】
プラスミドDNAの純度は、CsCl密度勾配遠心法で精製した程度、あるいはそれ以上高いものが望ましいとされるが、キアゲン社などの抽出・精製キットを用いて分離したものでものであれば大きな問題は生じないことが多い。また、宿主細胞に導入するプラスミドDNAの形態としては、一般的には発現に無関係な領域で切断して直鎖化して導入すると良いとされるが、不都合がなければ環状のままでも構わない。
【0017】
遺伝子導入した細胞は、通常の細胞培養液中で1~2日そのまま培養した後、トリプシン処理などによって剥がし、適当な希釈を行って播き直す。これ以降は、導入ベクターに組み込まれた薬剤耐性付与遺伝子に対応した薬剤存在下で培養を継続し、10日から2週間程度で形成された形質転換細胞に由来するコロニーを適宜分離する。得られたコロニーは、トリプシン処理により単個細胞状に分散させて播き直し、増殖させた後一部を凍結保存し、残りで導入レポーター遺伝子産物の発現量チェックを行なう。方法としては、mRNAの発現量のドットブロット法による検討か、産物蛋白のイムノブロット法による検討を行ない、親株に比べて有意に発現の上昇しているものを選択する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の天然エストロゲンとの結合能を有しない変異型エストロゲン・レセプターをコードする遺伝子(Mer)をレポーター遺伝子として組み込んだプラスミドを有する形質転換細胞が発現して産生するMer蛋白と選択的に結合する合成ステロイド誘導体を含んでなるMer蛋白により、非侵襲的に生体内遺伝子の発現検出が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に実施例および試験例をあげて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0020】
マウス変異型エストロゲン・レセプターの常発現系発現プラスミドの作成 (CMVプロモーター)
マウス変異型エストロゲン・レセプター・リガンド結合ドメインは、フライブルク大学のMichael Reth博士から供与された発現ベクターpANMerCreMerをテンプレートに、フォワードプライマー:5'-ACTAGTATGGGCCGAAATGAAATGGGTGCTT-3'、およびリバースプライマー:5'-GAATTCTCAGATCGTGTTGGGGAAGCCC-3'を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により目的の配列の増幅を行った。アガロースゲル電気泳動により、目的のサイズのバンドが増幅されていることを確認の後、ポリメラーゼ連鎖反応増幅断片は、pGEM-T Easy クローニングベクター(Promega)に組み込み、大腸菌DH5α株を形質転換、青白選択によりアンピシリン耐性を示したコロニーの中からインサートDNAを含むものを分離して、少量培養したものをMagExtractor-Plasmid-(東洋紡)を用いてプラスミドを分離精製し、その一部を用いてBigDye Terminator v3.0 Cycle Sequencing Ready Reaction Kit (ABI)によりシークエンス用サンプルを調製した。
【0021】
これをオートシークエンサー(ABI, model 310 genetic analyzer)を用いた塩基配列解析に供し、塩基配列の確認を行なった。その後、ベクターのMCS内のEcoRIサイトと、3'側PCRプライマーで付与したEcoRIサイトを使ってインサートDNAを制限酵素EcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動により目的のバンドをRECOCHIP (TaKaRa)を用いて回収した。CMVプロモーターおよびネオマイシン耐性付与遺伝子を含む発現プラスミドpcDNA3.1(-) (Invitrogen)は、制限酵素EcoRIで消化した後、切断末端をAlkaline Phosphatase, shrimp (ROCHE)で脱リン酸処理した。ベクターDNAと上記インサートDNAを適当なモル比で混合し、Quick Ligation Kit (NEB)を用いて反応させた。反応液の一部を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、上記と同様にアンピシリン耐性を示したコロニーを分離、プラスミドDNAを調製し、制限酵素消化の組み合わせによりインサートDNAのサイズおよびオリエンテーションを確認した。目的のものに合致しているプラスミドを選択し、pcDNA/Merと名付けた。
【実施例2】
【0022】
ヒト野生型estrogen receptorの常発現系発現プラスミドの作成 (CMV promoter)
ヒト野生型エストロゲン・レセプター・リガンド結合ドメインは、Genbank Accession No. X03635に公開されているエストロゲン・レセプターα遺伝子の塩基配列に基づき、フォワードプライマー:5'-ACTAGTATGGGCAGGGGTGAAGTGGGGT-3'、およびリバースプライマー:5'-GAATTCTCAGACTGTGGCAGGGAAA-3'を設計し、ヒト子宮cDNAQUICK-Clone(Clonetech)を鋳型にしてポリメラーゼ連鎖反応法により目的の配列の増幅を行った。
アガロースゲル電気泳動により、目的のサイズのバンドが増幅されていることを確認の後、ポリメラーゼ連鎖反応法増幅断片は、pGEM-T Easy クローニングベクター(Promega)に組み込み、大腸菌DH5α株を形質転換、青白選択によりアンピシリン耐性を示したコロニーの中からインサートDNAを含むものを分離して、少量培養したものをMagExtractor-Plasmid-(TOYOBO)を用いてプラスミドを分離精製し、その一部を用いてBigDye Terminator v3.0 Cycle Sequencing Ready Reaction Kit (ABI)によりシークエンス用サンプルを調製した。これを。オートシークエンサー(ABI, model 310 genetic analyzer)を用いた塩基配列解析に供し、塩基配列の確認を行なった。その後、ベクターのMCS内のEcoRIサイトと、3'側PCRプライマーで付与したEcoRIサイトを使ってインサートDNAを制限酵素EcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動により目的のバンドをRECOCHIP (TaKaRa)を用いて回収した。CMVプロモーターおよびネオマイシン耐性付与遺伝子を含む発現プラスミドpcDNA3.1(-) (Invitrogen)は、制限酵素EcoRIで消化した後、切断末端をAlkaline Phosphatase, shrimp (ROCHE)で脱リン酸処理した。ベクターDNAと上記インサートDNAを適当なモル比で混合し、Quick Ligation Kit (NEB)を用いて反応させた。反応液の一部を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、上記と同様にアンピシリン耐性を示したコロニーを分離、プラスミドDNAを調製し、制限酵素消化の組み合わせによりインサートDNAのサイズおよびオリエンテーションを確認した。目的のものに合致しているプラスミドを選択し、pcDNA/hERLと名付けた。
【実施例3】
【0023】
マウス変異型エストロゲン・レセプターの誘導発現系発現プラスミドの作成
マウス変異型エストロゲン・レセプター・リガンド結合ドメインは、実施例1で作成したpGEM-T Easyベクターから、5'側PCRプライマーで付与したSpeIサイトと、3'側PCRプライマーで付与したEcoRIサイトを使ってインサートDNAを制限酵素SpeIとEcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動により目的のバンドをRECOCHIP (TaKaRa)を用いて回収した。GAL4 UAS/E1bプロモーターおよびゼオシン耐性付与遺伝子を含む発現プラスミドpGene/V5-His A (Invitrogen)は、制限酵素SpeIとEcoRIで消化した後、上記インサートDNAを適当なモル比で混合し、Quick Ligation Kit (NEB)を用いて反応させた。反応液の一部を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、上記と同様にアンピシリン耐性を示したコロニーを分離、プラスミドDNAを調製し、制限酵素消化によりインサートDNAのサイズを確認した。目的のものに合致しているプラスミドを選択し、pGene/Merと名付けた。
【実施例4】
【0024】
ヒト野生型エストロゲン・レセプターの誘導発現系発現プラスミドの作成
ヒト野生型エストロゲン・レセプター・リガンド結合ドメインは、実施例2で作成したpGEM-T Easyベクターから、5'側PCRプライマーで付与したSpeIサイトと、3'側PCRプライマーで付与したEcoRIサイトを使ってインサートDNAを制限酵素SpeIとEcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動により目的のバンドをRECOCHIP (TaKaRa)を用いて回収した。GAL4 UAS/E1bプロモーターおよびゼオシン耐性付与遺伝子を含む発現プラスミドpGene/V5-His A (Invitrogen)は、制限酵素SpeIとEcoRIで消化した後、上記インサートDNAを適当なモル比で混合し、Quick Ligation Kit (NEB)を用いて反応させた。反応液の一部を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、上記と同様にアンピシリン耐性を示したコロニーを分離、プラスミドDNAを調製し、制限酵素消化によりインサートDNAのサイズを確認した。目的のものに合致しているプラスミドを選択し、pGene/hERLと名付けた。
【実施例5】
【0025】
本発明細胞の作成
(1)マウスMer蛋白を常時発現する胚性幹細胞(EB5-Mer1)、β-アクチンプロモーターを用いる常発現系
未分化能維持のためにOct-3/4遺伝子内にブラストサイ遺伝子がノックインされたマウス胚性幹細胞(EB5)に、フライブルク大のMichael Reth博士から供与頂いた、β-アクチンプロモーターで発現制御される発現ベクターpANMerCreMerを導入し、安定発現する本発明細胞を作成した。EB5細胞は、Glasgow MEM (GIBCO)に、10% Knockout Serum Replacement (GIBCO)、1% FBS (HyClone)、1x MEM Non-Essential Amino Acids (GIBCO)、 1 mM Sodium Pyruvate (GIBCO)、0.1 mM 2-Mercaptoethanol (GIBCO)、1000 U/ml LIF (CHEMICON)、20μg/ml Blasticidin S Hydrochloride (科研製薬)を含む培地を用いて、37度にて5% CO2存在下で60 mmシャーレ(FALCON)を用いて培養した。シャーレ一枚あたりおよそ5 x 10の5乗の細胞を播き込み、翌日Effecten Transfection Reagent (QIAGEN)を用いたリポフェクション法で、発現プラスミドpANMerCreMer 1μgを導入した。条件は製品添付のマニュアルに従った。則ちEnhancer 8μl、Effectene 25μl/シャーレとして、処理後2日目に当該細胞をトリプシン処理により剥がし、希釈の後、終濃度150μg/mlのG418を添加した培地中で10日から2週間培養して薬剤耐性のコロニーを分離した。途中、選択薬剤入りの培地は2日ごとに新しい培地に交換した。クローニングシリンダーを用いて分離したコロニーは、35 mmシャーレ、60 mmシャーレと順を追って増殖させた。細胞が安定したところで一部を保存し、残りを用いてRNA抽出試薬ISOGEN (ニッポンジーン)によりtotal RNAを分離精製し、ドットブロット法によりクローニングした個々の細胞について、Mer 遺伝子産物の発現量の検討を行ない、顕著な発現上昇の認められるものを選択した。
【0026】
(2)マウスMer蛋白を常時発現するES細胞(EB5-Mer2)、CMVプロモーターを用いる常発現系
マウスES細胞(EB5)に、実施例1で作成された発現プラスミドpcDNA/Merを導入し、安定発現する本発明細胞を作成した。すなわち、導入する発現ベクターをCMVプロモーターで発現制御されるpcDNA/Merに替えて使用し、他は前記(1)と同様に操作した。得られた個々の形質転換細胞について、前記(1)と同様にドットブロット法によりMer 遺伝子産物の発現量の検討を行ない、顕著な発現上昇の認められるものを選択した。
【0027】
(3)ヒト野生型ER蛋白を常時発現する胚性幹細胞(EB5-hER1)、CMVプロモーターを用いる常発現系
マウス胚性幹細胞(EB5)に、実施例2で作成された発現プラスミドpcDNA/hERLを導入し、安定発現する本発明細胞を作成した。すなわち、導入する発現ベクターをCMVプロモーターで発現制御されるpcDNA/hERLに替えて使用し、他は前記(1)と同様に操作した。得られた個々の形質転換細胞について、前記(1)と同様にドットブロット法によりhER 遺伝子産物の発現量の検討を行ない、顕著な発現上昇の認められるものを選択した。
【0028】
(4)マウスMer蛋白をミフェプリストンにより誘導発現する胚性幹細胞(GSEB/Mer)、GAL4 UAS/E1bプロモーターを用いる誘導発現系
スイッチ・タンパク(発現調節のための人工融合蛋白)を安定に発現する胚性幹細胞(GSEB)
マウス胚性幹細胞(EB5)に、スイッチ・タンパク(発現調節のための人工融合蛋白)を発現する発現プラスミドpSwitch(Invitrogen)を導入し、安定発現する細胞を作成した。すなわち、導入する発現ベクターをGAL4 UASプロモーターで発現制御されるpSwitchに替えて使用し、他は前記(1)と同様に操作した。得られた個々の形質転換細胞については、実施例3で作成したpGene/Merを導入し、一過性発現させた細胞をそれぞれ準備し、細胞溶解試薬CelLytic-M(SIGMA)を用いて蛋白を抽出、SDS-PAGEの後、イムノブロット法によりスイッチ・タンパクの発現量の検討を行ない、顕著な発現上昇の認められるものを選択した。
誘導型pGene/V5-His AにMer遺伝子を組み込んだプラスミドであるpGene/Merを安定に発現する胚性幹細胞(GSEB/Mer)
【0029】
前記(4)
で作成したスイッチ・タンパクを安定に発現するマウス胚性幹細胞株GSEBに、実施例3で作成した発現プラスミドpGene/Merを導入し、安定発現する本発明細胞を作成した。すなわち、導入する発現ベクターをGAL4 UAS/E1bプロモーターで発現制御されるpGene/Merに替えて使用し、他は前記(1)と同様に操作した。得られた個々の形質転換細胞については、10-9乗Mのミフェプリストンで一晩処理した細胞を調製し、前記と同様に細胞溶解試薬CelLytic-M(SIGMA)を用いて蛋白を抽出、SDS-PAGEの後、イムノブロット法によりMer蛋白の発現量の検討を行ない、顕著な発現上昇の認められるものを選択した。
【0030】
(5)ヒト野生型ER蛋白をミフェプリストンにより誘導発現する胚性幹細胞(GSEB/hER)、GAL4 UAS/E1bプロモーターを用いる誘導発現系
前記(4)
で作成したスイッチ・タンパクを安定に発現するマウス胚性幹細胞株GSEBに、実施例4で作成した発現プラスミドpGene/hERLを導入し、安定発現する本発明細胞を作成した。すなわち、導入する発現ベクターをGAL4 UAS/E1bプロモーターで発現制御されるpGene/hERLに替えて使用し、他は前記(1)と同様に操作した。得られた個々の形質転換細胞については、10-9乗Mのミフェプリストンで一晩処理した細胞を調製し、前記(4)と同様に細胞溶解試薬CelLytic-M(SIGMA)を用いて蛋白を抽出、SDS-PAGEの後、イムノブロット法によりhERL蛋白の発現量の検討を行ない、顕著な発現上昇の認められるものを選択した。
[試験例1]
【0031】
本発明細胞を用いたリガンド取り込み実験
実施例5(4)に記載のように作成された本発明細胞を、10の6乗個/60 mmシャーレになるように播き、およそ24時間後、すべての選択薬剤を除いた培地に替えて10-9乗Mのミフェプリストンの有無で一晩処理した細胞を準備した。この細胞に3H標識の4-ヒドロキシ-タモキシフェン 0.5 μCi (72 Ci/mmol)と、200倍量の非標識4-ヒドロキシ-タモキシフェンを存在下および非存在下で1時間反応させた。その後培地をPBS(-)に交換し、1時間CO2インキュベータ中で静置というリンスの操作を3回行なった。細胞をトリプシン処理で剥がして細胞計測の後、遠心して細胞を集め、0.2N 水酸化ナトリウム溶液200μlで細胞を溶解し、液体シンチレーターACS II Scintillation Cocktail (Amersham)10 mlで乳化した後、液体シンチレーションカウンターLSC-5100(Aloka)で細胞への取り込みを計測した。結果から明らかなように、Mer発現細胞株では有意な取り込みの上昇を確認した。(図1)
[試験例2]
【0032】
本発明細胞を用いた体内動態実験
実施例5(3)および(4)に記載のように作成された本発明細胞を、親株のGSEBは10の7乗個、Mer蛋白を誘導発現するGSEB/Mer細胞は4x10の6乗個を、6-7週齢の雄のBALB/C ヌードマウス(No.1~3)の背部皮下に移植し、3-4週間後およそ1 cm程度にテラトーマが増大したところで体内動態実験に供した。3H標識の4-ヒドロキシ-タモキシフェン、1 μCi/0.5 ml (50% エタノール)をマウス尾静脈から投与し、3時間後にエーテル麻酔下で心採血、直ちに頸椎脱臼で屠殺し、腫瘍2種、脳、肝臓、脾臓、腎臓、肺、筋肉を分離した。血液は遠心により血漿を採取した。それぞれの臓器はおよそ0.1g程度の大きさに切断したものを、SOLUENE-350 (Packard) 2 ml を加えてさらに細切し、60度のオーブン中で振盪して溶解した。室温まで冷却の後、過酸化水素水適当量を加えて更に60度で15~30分処理したサンプルに、HIONIC-FLUOR (Packard) 10 mlを加えて懸濁し、液体シンチレーションカウンターLSC-5100(Aloka)で組織への取り込みを計測した。結果を表1に示した。本実験でも、Mer発現細胞株ではコントロールに比べてリガンドの有意な取り込み上昇が確認できた。
(表1)腫瘍を有するヌードマウスへの静注後3時間におけるH-4-ヒドロキシタモキシフェンの生体組織分布
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【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、L-アミノ酸変異等によりリガンド結合特異性が変化し、天然エストロゲンとの結合能を失った変異型エストロゲン・レセプター遺伝子をコードする遺伝子(Mer)をレポーター遺伝子として組み込んだプラスミドを含む形質転換細胞が発現して産生するMer蛋白と選択的に結合する合成ステロイド誘導体をMer蛋白の非侵襲的生体内レセプター遺伝子発現検出プローブとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】液体シンチレーションカウンターLSC-500(Aloka)による3H標識の4-ヒドロキシタモキシフェンの細胞への取り込み
【符号の説明】
【0035】
A:対照
B:タモキシフェン処理
図面
【図1】
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