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明細書 :レポーター遺伝子を組み込んだベクター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4340736号 (P4340736)
公開番号 特開2005-198546 (P2005-198546A)
登録日 平成21年7月17日(2009.7.17)
発行日 平成21年10月7日(2009.10.7)
公開日 平成17年7月28日(2005.7.28)
発明の名称または考案の名称 レポーター遺伝子を組み込んだベクター
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/72        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/72
C12N 5/00 B
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2004-007549 (P2004-007549)
出願日 平成16年1月15日(2004.1.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年8月4日 日本薬学会 物理系薬学部会主催の「第16回バイオメディカル分析科学会」において文書をもって発表
審査請求日 平成18年1月31日(2006.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】藤林 靖久
【氏名】古川 高子
【氏名】高松 真二
【氏名】森 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100071973、【弁理士】、【氏名又は名称】谷 良隆
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 核医学,2003年,Vol.40, No.3,p.352
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1996年,Vol.93,p.10887-10890
調査した分野 C12N1/00—15/90
C12Q1/00-1/68
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
動物細胞で機能可能なプロモーター/エンハンサーの下流に接続される治療遺伝子に、マウスエストロゲン・レセプターの525番目のアミノ酸がGlyからArgへの1アミノ酸変異を持ち、天然のエストロゲンとの結合能を失っているがタモキシフェンとの選択的結合能を有するマウス変異型エストロゲンレセプターリガンド結合領域をコードする遺伝子(Mer遺伝子)をレポーター遺伝子として接続したベクター。

【請求項2】
動物細胞で機能可能なプロモーターが、CMVプロモーターである請求項1記載のベクター。
【請求項3】
動物細胞で機能可能なプロモーターが、GAL4-UASプロモーターである請求項1記載のベクター。
【請求項4】
治療遺伝子にエストロゲンレセプターリガンド結合領域をIRES(Internal Ribosomal Entry Site)配列で接続した請求項1記載のベクター。
【請求項5】
ベクターが、プラスミドまたはウィルスベクターである請求項1記載のベクター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子治療等における外来性遺伝子の生体内における発現を非侵襲的にモニタリングするためのレポーター遺伝子を組み込んだベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療のように外来遺伝子をヒトの生体内で発現させる場合において、また基礎研究において動物の生体内で外来遺伝子を発現する場合についても、目的遺伝子の発現を非侵襲的に体外から検出し、遺伝子発現の時間的、空間的変化をモニタリングすることは重要である。従来のルシフェラーゼ(luciferase)やGFP(Green Fluorescent Protein)などのレポータージーンを用いるシステムでは小動物や体表部での遺伝子発現のモニタリングは可能である(非特許文献1および2)が、中、大動物の体深部での遺伝子発現のモニタリングは検出感度、定量性が不十分となるため難しく、安全性、定量性に優れて、人体にも適用可能な遺伝子発現のモニタリングシステムの開発が望まれている。

【非特許文献1】Biochem. Pharmacol. 1999 Sep 1;58(5):749-57 Reporter gene technology:The future looks bright. Naylor LH.
【非特許文献2】Annu. Rev. Biochem. 1998;67:509-44 The green fluorescent protein. Tsien RY.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PET(Positron Emission Tomography)やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)などの手法は、体内深部での遺伝子発現を検出しようとする場合、ルシフェラーゼやGFPに比べ大変有利である。特にPETは検出感度、定量性に優れ、生体内での遺伝子発現を検出するに望ましい手法である。
【0004】
生体内で用いるレポーターに望まれる性質としては、毒性がないこと、またその発現が細胞や個体に強い生理作用をあたえないこと、抗原性がないまたは非常に低いこと、内因性の発現が見られる場合はその発現部位が限定され、かつレポーターの発現を検出しようとする領域と重ならないこと、などがあげられる。さらに発現効率がよく、翻訳後の修飾やフォールディングに問題がおこりにくく、かつ遺伝子の取扱いが容易な分子量の小さな蛋白の方が好ましい。
【0005】
PETを用いてレポータージーンの発現を検出しようとするとき、そのトレーサー(検出用薬剤)に必要とされる性質としては、生体に悪影響をおよぼさないこと、全身またはレポータージーンの発現を検出したい部位に分布することなどが求められる。特に脳内での発現を検出したい場合には、トレーサーが脳血液関門を透過することが重要な要件となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような観点から本発明者らはレポータージーンとそれを検出するPETトレーサーの組み合わせとして、野生型または変異型エストロゲンレセプターのリガンド結合領域をレポーターとして、エストロゲンレセプターリガンド結合領域と親和性を持つF-18で標識したエストロゲンやエストロゲンアゴニストまたはアンタゴニストをトレーサーとして、生体内での目的遺伝子の発現を体外より非侵襲的にモニタリングするシステムを開発し、野生型または変異型エストロゲンレセプターのリガンド結合領域を治療遺伝子と同時に発現するベクターの作製に成功した。
【0007】
常発現型ベクターのプロモーター/エンハンサーとしてはヒトや動物の体内で効率良く治療遺伝子およびレポーター遺伝子を発現できるよう、哺乳類の広汎な細胞で高い活性を持つことが知られるプロモーター、例えば、アクチンプロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター、EF-1αプロモーター、ラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター、シミアンウィルス(SV40)の初期若しくは後期プロモーター、マウス乳頭腫ウィルス(MMTV)プロモーターなどの常発現系プロモーターを利用することができる。遺伝子治療や基礎研究において、量的、時間的に遺伝子の発現量をコントロールすることでより質の高い結果が期待される場合には、薬剤の投与によって遺伝子の発現量をコントロールすることができるGAL4-UAS、Tetオペレーター、エクジソン応答要素を含むプロモーター等の誘導型遺伝子発現プロモーターを用いることもできる。誘導型遺伝子発現プロモーター、プロモーターに結合して転写活性を上昇させる調節タンパク質、誘導を誘起する薬剤からなる遺伝子発現調節システムはすでに数種類が市販されており、容易に利用することができる。
【0008】
合成ノルステロイドのミフェプリストンを使用したシステム(インビトロゲン社)はミフェプリストンがすでに海外では臨床薬として用いられるなど人体への適用に実績があること、ミフェプリストンが脳内を含め広範囲の組織に分布すること、調節タンパク質の大部分が哺乳類のタンパクで構成され、抗原性が低いと期待されることなどから、本願の実施例においてもこのシステムをもちいたベクターを作製したが、他のシステムの利用も可能である。また、特定の組織でのみ治療遺伝子を発現させたい場合には、特定の組織でのみ活性を示す組織特異的プロモーターを使用することも可能である。
【0009】
ヒトやマウスのエストロゲンレセプターは哺乳類のタンパク質であり、ヒトにとっては抗原性が低く、生体内で用いるレポータージーンとして好ましい。また、リガンド結合領域のみを使用することにより、レセプターが本来持つ転写活性化因子としての機能は失われ、リガンドと結合しても下流遺伝子の転写活性化などの生理作用は示さない。また内在性のエストロゲンレセプターが高濃度に発現するのは子宮、乳腺など特定の組織に限られているため、内在性タンパクによりレポータージーンの検出が困難となる状況はごく限られた場合にのみである。
【0010】
マウスのエストロゲン・レセプターのリガンド結合領域内(525番目のアミノ酸)にGlyからArgへのアミノ酸変異を持つマウスの変異型エストロゲンレセプター(MER)はリガンド結合特異性が変化し、天然のエストロゲンとの結合能を失っているが、合成ステロイドであり、部分アゴニスト(partial agonist)として作用するタモキシフェン(tamoxifen)との結合能を持つ。このため、この変異型エストロゲンレセプター(Mer)は内在性のエストロゲンのレベルに影響されることなく、投与されたタモキシフェンを結合する。

【0011】
野生型のエストロゲンレセプターリガンド結合領域をレポータージーンとして利用する場合は、F-18標識エストラジオールやF-18標識タモキシフェンなどが、また変異型エストロゲンレセプターリガンド結合領域ではF-18標識タモキシフェンなどをトレーサーとして、PETを用いて体外から非侵襲的にレポータージーンの発現を検出することができる。F-18標識エストラジオールやF-18標識タモキシフェンをはじめとする放射性標識合成ステロイドは、ステロイドの高い脂溶性を反映して脳血液関門の透過性が高いため脳内へも十分に到達し、ほぼ全身に分布すると期待される。F-18標識エストラジオールやF-18標識タモキシフェンは乳癌の診断やタモキシフェンを用いる治療に対する乳癌の反応性を予測するなどの目的で、PETによる体内診断放射性医薬品としてすでにヒトに投与されている実績を持ち、安全性が確認されているうえ、体内動態などの情報も豊富に存在する。
【0012】
遺伝子治療などにおいて治療遺伝子の発現をレポータージーンを用いて検出する場合、治療遺伝子とレポータージーンを同時に発現することになる。この時、二つの遺伝子を融合蛋白(fusion protein)として発現させるか、独立して発現させるかの選択枝がある。融合蛋白として発現させた場合、二つの蛋白に由来する部分は一つの蛋白として全く同じ挙動を示すため、レポータージーンはより正確に治療遺伝子の発現の情報を伝えることができるが、両者の機能を十分に保持させるためには個々の遺伝子について個別に接続の条件を検討することが必要となる。IRESを用いて二つの遺伝子を同時に発現させようとする場合、両者は一つのmRNAに転写された後、二つの蛋白に翻訳される。この方法では両者の発現量はかならずしも同じとはいえないが、組織、細胞種によってほぼ一定の量比で発現する。この場合二つの蛋白は独立して存在するため、融合蛋白をつくる場合と違い、各タンパク質の活性への影響などを考慮する必要がなく、より汎用性の高い方法と考えられる。
【0013】
本研究のベクターは、各社より市販されている、CMVプロモーターや誘導発現型プロモーターなどの動物細胞で機能するプロモーターをもった動物細胞発現用プラスミドやウィルスベクターを基に作製することができる。また、このような市販のベクターのプロモーターを使用目的にあったプロモーターに置き換えることも可能である。治療遺伝子(目的遺伝子、モデル遺伝子)をコードする遺伝子配列、IRESや融合蛋白をつくるためのリンカーペプチド(linker peptide)をコードする配列、レポータージーンとして使用するエストロゲンレセプターリガンド結合領域をコードする遺伝子配列などは市販のプラスミドや他の研究者から供与を受けたプラスミド、市販のcDNAライブラリーなどを鋳型にしたPCR、細胞や組織から抽出したRNAを用いたRT-PCRなどによって、両端に制限酵素の認識配列を付加した形で増幅し、定法のライゲイションによりベクターに組み込むことができる。
作製したプラスミドやウィルスは、プラスミドのばあいは大腸菌を宿主として増幅して十分な量を生産し、また、ウィルスベクターの場合は宿主細胞をもちいて増幅して十分な量を生産したのち、精製して、培養細胞や動物に適用する。
【0014】
作製したベクターが機能するかは、リポソームやポリマーを用いる培養細胞への一過性トランスフェクションの後、それぞれのタンパク質に対する抗体を用いたイムノ・ブロット法(Immunoblotting)のほか、個別のタンパク質に適した方法により、治療遺伝子(目的遺伝子)とエストロゲンレセプターリガンド結合領域が同時に発現し、また、後者の発現量が前者の発現量の変化に伴っているかを調べることで確認することができる。またエストロゲンレセプターリガンド結合領域を発現する培養細胞が、これを発現しない細胞に比べ、F-18で標識したリガンドをより多く取り込むかを調べることにより、レポータージーンの検出にふさわしいトレーサーを選択することができる。
【0015】
生体内への適用に際しては、例えばプラスミドの場合は、プラスミド単独で、またはリポソーム、ポリマーなど細胞への取り込みを促進するための試薬と混合して目的の組織に注射する、または静脈内注射するなどの方法を用いて投与する。ウィルスベクターの場合は、例えば直接目的組織に注射する、または血流を介して目的組織に到達するよう投与する。常発現系を用いたベクターの場合は投与後適当な時間の後、誘導型のベクターを用いた場合は発現誘導のための薬剤を投与して適当な時間をおいた後、エストロゲンレセプターリガンド結合領域の発現を検出するための放射能標識リガンドを静脈内より投与する。
【0016】
野生型のエストロゲンレセプターリガンド結合領域を発現するベクターの場合は例えば放射能標識リガンドとして18F-フルオロタモキシフェン(18F-fluoro tamoxifen)や18F-フルオロエストラジオール(18F-fluoroestradiol)を用いることができる。変異型のエストロゲンレセプターリガンド結合領域を発現するベクターの場合は例えば放射能標識リガンドとして18F-フルオロタモキシフェンを用いることができる。静脈内注射などの方法により放射能標識リガンド投与の後、適当な時間をおいてPETなどの装置を用いてエストロゲンレセプターリガンド結合領域の発現を検出し、画像化および定量するなどして、エストロゲンレセプターリガンド結合領域とともに発現している目的遺伝子の発現を推定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に用いるレポーター遺伝子は、毒性がなく、その発現が細胞や個体に強い生理作用を与えず、抗原性がないかまたは非常に低く、内因性の発現が見られる場合はその発現部位が限定され、かつレポーターの発現を検出しようとする領域と重ならず、さらに発現効率がよく、翻訳後の修飾やフォールディングに問題がおこり難く、かつ遺伝子の取扱いが容易な低分子量蛋白である。したがって、この遺伝子を組み込んだ本発明のベクターは、遺伝子治療のように外来遺伝子をヒトの生体内で発現させる場合において、また基礎研究において動物の生体内で外来遺伝子を発現する場合おいて、目的遺伝子の発現を非侵襲的に体外から容易に検出し、遺伝子発現の時間的、空間的変化をモニタリングするシステムに応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に実施例及び試験例をあげて、本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
GFPとMERをコードする遺伝子配列をIRESで結合してGAL4-UASを含むプロモーターの下流に接続したプラスミド
MERを含むcDNA配列を、pAN-Mer-Cre-Merを鋳型としてPCRにより5'端にSpe1、3'端にEcoR1の制限酵素認識部位を付加して増幅し、pGEM-T easy(プロメガ社)に導入してDNA配列に間違いのないことを確認した。このプラスミドをSpe1とEcoE1で消化して得られるフラグメントを、誘導型哺乳類発現用プラスミドpGene/V5-His(インビトロゲン社)のGAL4-UASを含むプロモーターの下流にあるマルチクローニングサイトに導入しpGene/Merを作製した。pIRES-hrGFP-1a(ストラタジーン社)を鋳型として、PCRにより、5'端にBamH1、3'端にMfe1の制限酵素認識部位を付加してIRESの遺伝子配列を増幅し、また、5'端にMfe1、3'端にSpe1の制限酵素認識部位を付加してGFPをコードする配列を増幅し、両者をpGEM-T easy(プロメガ社)に導入してDNA配列に間違いのないことを確認した。GFPをコードする配列を導入したpGEMをMfe1とSpe1で消化し、ここにIRESを導入したpGEMをMfe1とSpe1で消化して得られたフラグメントを挿入してプラスミドpGEM/GIを作製した。pGene/MerをBamH1とMfe1で消化し、ここにpGEM/GIをBamH1とMfe1で消化してえられたフラグメントを挿入して、GAL4-UASを含むプロモーターの下流にGFPをコードする遺伝子配列、IRES、MERをコードする遺伝子配列が順にならぶプラスミド、pGene/GIMを作製した。(図1a)
【実施例2】
【0020】
ヒトチミジンホスホリラーゼ(thymidine phosphorylase)(TP)とMERをコードする遺伝子配列をIRESで結合してCMVプロモーターの下流に接続したプラスミド
ヒトTPをコードするcDNAの開始コドンからストップコドンまでを含む領域を、福井医科大学外科学Dr.Riより譲り受けたプラスミド(pCIhTP)を鋳型に、PCRにより5'端EcoR1,3'端にMlu1の制限酵素認識部位をつけて増幅、pGEM-T easy(プロメガ社)に導入してDNA配列に間違いのないことを確認した後、EcoR1で消化し、得られたフラグメントをほ乳類発現用プラスミドpCI(プロメガ社)のCMVプロモーターの下流にあるマルチクローニングサイトに挿入した。実施例1で作製したpGene/GIMを鋳型として、PCRにより、5'端にMlu1の制限酵素認識部位が付加されるようIRESとMERをコードする配列を含むフラグメントを増幅し、pGEM-T easy(プロメガ社)に導入してDNA配列に間違いのないことを確認した後、Mlu1とNot1で消化してIRESとMERをコードする配列を含むフラグメントを得た。このフラグメントを、上記のTPを導入したプラスミドをMlu1とNot1で消化した位置に挿入し、TPをコードする配列の下流に導入し、CMVプロモーターの下流に、TPをコードする配列、IRES、MERをコードする配列がこの順にならぶプラスミド、pTIMを作製した。(図1b)
【実施例3】
【0021】
TPとヒト野生型エストロゲンレセプターリガンド結合領域(hERL)をコードする遺伝子配列をIRESで結合してCMVプロモーターの下流に接続したプラスミド ニューヨーク大学医学部(New York University Medical School)のDr. Taneseより譲り受けたプラスミド(pcDNA/hER)を鋳型に、ヒト野生型エストロゲンレセプターをコードするcDNAのリガンド結合領域をコードする部分をPCRにより5'端にMlu1の制限酵素認識部位とスタートコドンをつけて増幅して、pGEM-T easy(プロメガ社)に導入し、DNA配列に間違いのないことを確認した後Mlu1とNot1で消化した。実施例2で作製したpTIMをMlu1とNot1で消化し、これと上記で得られた野生型エストロゲンレセプターのリガンド結合領域をコードする部分を含むフラグメントのライゲーションにより、CMVプロモーターの下流に、TPをコードする配列、IRES、hERLをコードする配列がこの順にならぶプラスミド、pTIERを作製した。(図1c)。
〔試験例1〕
【0022】
発現調節タンパク質(Switch protein)を発現するGS3T3細胞(インビトロゲン社より購入)を60mmのプレートに播き、10%のFCSを含むDMEMで培養した。およそ40% コンフルエントになった時点で、FuGene6 (Rosche社)を用いて2μgのpGene/GIMを一過性にトランスフェクトし、8時間後、培養液に最終濃度10nMになるようミフェプリストンを添加したものと、添加しないものにわけ、一夜培養した。コントロールとしてインサートをもたないpGene/5V-HisAも同様にトランスフェクトし、ミフェプリストンで処理した。GFPの発現を蛍光顕微鏡下で観察した後、細胞を集め、可溶化した上清を抗マウスER抗体(MC-20, サンタクルズ社)、およびECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(アマシャムバイオサイエンス社)を用いるイムノ・ブロット法に供した。pGene/GIMをトランスフェクトし、ミフェプリストンを添加した群でのみGFPとMERの発現が観察され、ミフェプリストンを添加しなかった群およびpGene/5V-HisAをトランスフェクトした群ではGFPとMERの発現は観察されず、ミフェプリストンによるコントロール下GFPとMERが同時発現することが確かめられた。(図2)
〔試験例2〕
【0023】
サルの腎臓に由来するCos7細胞(ATCCより購入)を60mmのプレートに播き、10%のFCSを含むDMEMで培養した。およそ40%confluentになった時点で、FuGene6 (Rosche社)を用いて0.5-3.0μgのpTIMを一過性にトランスフェクトし、24時間培養した後、細胞を集めた。可溶化した細胞の上清を抗ヒトTP抗体(オンコジーン社)と抗マウスER抗体(MC-20、サンタクルズ社)、およびECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(アマシャムバイオサイエンス社)を用いるイムノ・ブロット法に供した。pTIMの一過性トランスフェクトによりTPとMERが同時に発現し、両者の発現量が平行して増減することが確かめられた。(図3)
〔試験例3〕
【0024】
試験例2と同様の方法でpTIERを一過性にトランスフェクトしたCos7細胞とトランスフェクトしていないコントロールのCos7細胞について、トランスフェクトの24時間後、200倍の4-ヒドロキシタモキシフェン(4-hydroxytamoxifene)の存在・非存在下で培養液に0.5μCiの3H-4-ヒドロキシタモキシフェンを加えて1時間培養した後、新しい培地に交換し1時間培養した。培地の交換をさらに2回繰り返した後、PBSで1回洗浄し、0.2NのNaOH 1mlを加えて細胞を溶解し、細胞内に取り込まれた3H-4-ヒドロキシタモキシフェンの放射能を液体シンチレイションカウンター(LSC-5100、Aloka社)により測定した。200倍の4-ヒドロキシタモキシフェンの存在・非存在下での取り込みの差を3H-4-ヒドロキシタモキシフェン の特異的な取り込みとして計算したところ、hERLをトランスフェクトしていないコントロールのCos7細胞に比べトランスフェクトした細胞では数倍高い3H-4-ヒドロキシタモキシフェンの細胞内への特異的な取り込みが観察された(図4)。
【0025】
また、このとき、pTIERを一過性にトランスフェクトしたCos7細胞ではヒトTPとhERLが発現していることが抗ヒトTP抗体(オンコジーン社)と抗ヒトER抗体(HC-20, サンタクルズ社)、およびECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(アマシャムバイオサイエンス社)を用いるイムノ・ブロット法により確認された。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により、遺伝子治療のように外来遺伝子をヒトの生体内で発現させる場合において、また基礎研究において動物の生体内で外来遺伝子を発現する場合についても、目的遺伝子の発現を非侵襲的に体外から検出し、遺伝子発現の時間的、空間的変化をモニタリングすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1a】GAL4-UASを含むプロモーターの下流にGFPをコードする遺伝子配列、IRES、MERをコードする遺伝子配列が順に並ぶプラスミド、pGene/GIMの模式図。
【図1b】CMVプロモーターの下流に、TPをコードする配列、IRES、MERをコードする配列がこの順に並ぶプラスミド、pTIMの模式図。
【図1c】CMVプロモーターの下流に、TPをコードする配列、IRES、hERLをコードする配列がこの順に並ぶプラスミド、pTIERの模式図。
【図2】ミフェプリストンによるコントロール下、pGene/GIMで一過性トランスフェクトによりGS2T3細胞でGFPとMERが同時に発現していることを示す蛍光顕微鏡写真、イムノブロッティング法による電気泳導図。
【図3】pTIMの一過性トランスフェクトによりTPとMERが同時に発現し、両者の発現量が平行して増減することを示したイムノブロッティング法電気泳導図。
【図4】液体シンチレイションカウンター(LSC-5100、Aloka社)による、hERLをトランスフェクトしていないコントロールのCos7細胞とトランスフェクトした細胞における3H-4-ヒドロキシタモキシフェンの細胞内への取り込み量放射能の比較図。
図面
【図1a】
0
【図1b】
1
【図1c】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5