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明細書 :摺動材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4257427号 (P4257427)
公開番号 特開2006-057642 (P2006-057642A)
登録日 平成21年2月13日(2009.2.13)
発行日 平成21年4月22日(2009.4.22)
公開日 平成18年3月2日(2006.3.2)
発明の名称または考案の名称 摺動材
国際特許分類 F16C  33/12        (2006.01)
F16C  33/14        (2006.01)
F16C  33/20        (2006.01)
FI F16C 33/12 Z
F16C 33/14 Z
F16C 33/20 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2004-236902 (P2004-236902)
出願日 平成16年8月17日(2004.8.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行者名 国立大学法人福井大学大学院工学研究科発行 刊行物名 2003年度学位論文要旨集(博士前期課程) 発行年月日 2004年2月19日
審査請求日 平成17年8月9日(2005.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】岩井 善郎
【氏名】本田 知己
【氏名】米沢 晋
【氏名】南 直喜
個別代理人の代理人 【識別番号】100111855、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 好昭
審査官 【審査官】谿花 正由輝
参考文献・文献 特開2004-143472(JP,A)
特開平05-214555(JP,A)
特開平11-001375(JP,A)
特開2004-165019(JP,A)
国際公開第2005/124171(WO,A1)
調査した分野 F16C 33/00 - 33/66
特許請求の範囲 【請求項1】
熱可塑性樹脂からなりほぼ同じ粒径を有する多数の粉粒体を互いに隙間なく接合して成形されている摺動材であって、少なくとも摺動面を含む領域に前記粉粒体群の接合部分に沿って金属がネットワーク状に担持されており、前記金属がネットワーク状に担持された領域には、前記金属の層厚を変化させて前記金属の含有率の異なる部分が形成されていることを特徴とする摺動材。
【請求項2】
前記金属がネットワーク状に担持された領域は、層状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の摺動材。
【請求項3】
前記金属がネットワーク状に担持された領域は、予めメッキ処理により前記金属の被膜が表面に形成された粉粒体を互いに接合して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動材。
【請求項4】
前記金属は、Ni、Cu、Sn、Cr、Zn、Co、Ti、Al、Ag、Ni-P、Ni-B、Ni-Cu-P、Ni-Co-P、Ni-Cu-Bの群の中から選択されるひとつの金属である請求項1から3のいずれかに記載の摺動材。
【請求項5】
前記粉粒体を構成する熱可塑性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSU)、AS樹脂、ポリスチレン(PS)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ポリフェニレンエーテル(PFE)、メチルペンテン樹脂、メタクリル酸樹脂の群の中から選択されるひとつ以上の樹脂である請求項1から4のいずれかに記載の摺動材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の摺動材を摺動面に形成したことを特徴とする軸受。
【請求項7】
摺動部材又は被摺動部材のいずれか一方の摺動面に形成された請求項1又は2に記載の摺動材と、前記摺動部材及び前記被摺動部材を前記摺動材を介して電気的に接続状態として前記摺動部材及び前記被摺動部材の間の電気抵抗を検知する検知手段とを備えたことを特徴とする摩耗検知装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受、ピストンリング等の摺動用部品に用いられる摺動材に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した摺動用部品では、従来より低摩擦性、耐摩耗性、熱的安定性等の観点から高分子材料が用いられている。例えば、特許文献1では、フッ素樹脂の粉末と銅あるいは銅合金の金属粉を混合して圧縮成形した後焼結して作成した軸受材が記載されている。また、特許文献2では、裏金の表面に、Cu合金粉末を焼結して多孔質の合金層を形成し、合金層に樹脂層を被覆含浸した複層樹脂摺動材が記載されている。また、特許文献3では、フッ素樹脂粉体の表面に、親水基を有する含フッ素化合物の被覆層を介して金属を付着させた金属付着フッ素樹脂粉体が記載されており、その用途として摺動材等の機械材料に用いることができる点が記載されている。

【特許文献1】特開平6-322210号公報
【特許文献2】特開2001-140893号公報
【特許文献3】特開平5-98452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した先行特許文献では、フッ素樹脂を用いることで低摩擦性、耐摩耗性を向上させるとともに銅等の金属を用いることで導電性、耐摩耗性を向上させるようにしているが、物性の異なる両者を摺動面全体に均一に分布させて安定した特性を付与させることは難しい。
【0004】
一方、本発明者である米沢は、特開2004-143472号公報に記載されているように、表面に金属を担持させた熱可塑性樹脂からなる多数の粉粒体同士を圧接して一体接合した金属樹脂複合体を開発している。
【0005】
そこで、本発明は、こうした金属樹脂複合体を用いることで金属及び樹脂がバランスよく分布して安定した特性を有する摺動材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る摺動材は、熱可塑性樹脂からなりほぼ同じ粒径を有する多数の粉粒体を互いに隙間なく接合して成形されている摺動材であって、少なくとも摺動面を含む領域に前記粉粒体群の接合部分に沿って金属がネットワーク状に担持されており、前記金属がネットワーク状に担持された領域には、前記金属の層厚を変化させて前記金属の含有率の異なる部分が形成されていることを特徴とする。さらに、前記金属がネットワーク状に担持された領域は、層状に形成されていることを特徴とする。さらに、前記金属がネットワーク状に担持された領域は、予めメッキ処理により前記金属の被膜が表面に形成された粉粒体を互いに接合して形成されていることを特徴とする。さらに、前記金属は、Ni、Cu、Sn、Cr、Zn、Co、Ti、Al、Ag、Ni-P、Ni-B、Ni-Cu-P、Ni-Co-P、Ni-Cu-Bの群の中から選択されるひとつの金属である。さらに、前記粉粒体を構成する熱可塑性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSU)、AS樹脂、ポリスチレン(PS)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ポリフェニレンエーテル(PFE)、メチルペンテン樹脂、メタクリル酸樹脂の群の中から選択されるひとつ以上の樹脂である。
【0007】
本発明に係る軸受は、上記の摺動材を摺動面に形成したことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る摩耗検知装置は、摺動部材又は被摺動部材のいずれか一方の摺動面に形成された上記の摺動材と、前記摺動部材及び前記被摺動部材を前記摺動材を介して電気的に接続状態として前記摺動部材及び前記被摺動部材の間の電気抵抗を検知する検知手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る摺動材は、ほぼ同じ粒径を有する多数の粉粒体を用いてその接合部分に沿って金属がネットワーク状に担持されているので、熱可塑性樹脂及び金属がバランスよく分布させた摺動材とすることができる。すなわち、摺動面においては、粉粒体である熱可塑性樹脂を囲むように金属が網目状に分布しており、粉粒体の粒径がほぼ揃っていることで、金属がその粒径に対応したほぼ同じ大きさの細かい網目を形成することになる。したがって、摺動面では表面が摩耗しても常時熱可塑性樹脂と金属とが同じような分布状態で露出することになり、熱可塑性樹脂の低摩擦性並びに金属の耐摩耗性及び導電性がバランスよく安定して発揮されるようになる。そして、粉粒体の粒径及び金属の層厚を変化させることでこうした摺動面の特性を簡単にかつきめ細かく調整することが可能となる。また、多数の粉粒体を隙間なく互いに接合しているので、従来の樹脂製摺動材と同等の強度を有している。
【0010】
表面に予めメッキ処理により金属被膜で被覆した粉粒体を用いることで、ネットワーク状に担持された金属が途切れずにほぼ同じ層厚で形成されるようになり、安定した導電性を付与することができる。また、金属被膜の膜厚を予め調整すれば、ネットワーク状に担持された金属の層厚を容易にかつ精度よく調整することができる。
【0011】
なお、本発明に係る摺動材は、軸受等の摺動部材あるいは被摺動部材の摺動面を含む部分に用いられ、例えば、摺動面のみに形成する場合や部材自体として用いる場合が挙げられる。
【0012】
また、摺動材の内部領域に金属がネットワーク状に担持されることで構造内部に安定した導電性を付与することができるとともに、ネットワーク状に担持された金属の層厚を変化させて金属の含有率が異なる部分を形成することで電気抵抗が異なる領域を精度よく設定することができる。そして、電気抵抗の異なる領域が摺動面の摩耗により露出することで、その変化を検知すれば摩耗の検知を容易にかつ精度よく行うことができる。摩耗の検知は、本発明に係る摺動材を摺動部材又は被摺動部材のいずれか一方の摺動面に形成しておき、摺動部材及び被摺動部材を摺動材を介して電気的に接続状態として摺動部材及び被摺動部材の間の電気抵抗を検知するようにすれば、簡単な構成で摩耗の検知を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る摺動材に関する実施形態の断面図をSEM-EDXにより分析した結果を示す写真である。図1において、白くネットワーク状に拡がっている部分が金属に対応しており、ネットワーク状の金属に囲まれた黒い部分が熱可塑性樹脂に対応している。図2に図1の模式断面図を示す。図2では、金属部分1がネットワーク状に形成されており、金属部分1に囲まれるように熱可塑性樹脂部分2が形成されている。金属部分1の所々には孔が形成されており、これらの孔において熱可塑性樹脂部分2が互いに接合した接合部分3となっている。図2に示す摺動材は、金属被膜が表面に形成された多数の粉粒体を隙間なく互いに接合させて成形される。図3にその模式断面図を示す。粒状に形成された熱可塑性樹脂からなる粉粒体Aの表面を所定の層厚の金属被膜Bにより被覆している。そして、図2の点線で示すように、金属被膜Bにより被覆された多数の粉粒体Aを所定の型内に充填して圧接すると、金属被膜Bが圧力により所々で割れて互いに絡み合い接続されてネットワーク状の金属部分1が形成されるようになり、金属被膜Bの割れた部分では粉粒体Aが加熱により互いに融着して隙間なく接合して熱可塑性樹脂部分2となって一体成形されるようになる。したがって、金属被膜1は互いに接続して全体として導電性が付与されると共に、熱可塑性樹脂部分2は互いに融着して強固に一体化するようになる。
【0015】
粉粒体Aは、粒径が0.1μm~1000μmのものが用いられ、その構成する熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSU)、AS樹脂、ポリスチレン(PS)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ポリフェニレンエーテル(PFE)、メチルペンテン樹脂、メタクリル酸樹脂が挙げられ、これらの群の中から選択されるひとつ以上の樹脂を用いればよい。
【0016】
金属被膜Bは、0.001μm~100μmの任意の厚さに形成することが可能で、その構成するとしては、Ni、Cu、Sn、Cr、Zn、Co、Ti、Al、Ag、Ni-P合金、Ni-B合金、Ni-Cu-P合金、Ni-Co-P合金、Ni-Cu-B合金が挙げられ、これらの群の中から選択されるひとつの金属を用いればよい。選択する金属は、摺動材に付与する特性に応じて選択すればよい。例えば、導電性を重視する場合には銅(Cu)を用いるとよいが、強度を重視する場合にはニッケル(Ni)を用いるとよい。粉粒体Aの表面に金属被膜Bを形成する方法としては、無電解メッキ処理を行って形成することができる。
【0017】
表面に金属被膜Bが形成された多数の粉粒体Aを一体成形する方法としては、平板プレス、冷間等方圧加圧(CIP)、熱間等方圧加圧(HIP)、ロールプレス、常温プレス、ホットプレス等の成形方法を用い、適宜加熱温度や加圧力を制御して成形すればよい。
【実施例1】
【0018】
まず、粉粒体の表面に金属被膜を形成するために、粉粒体としてPTFE粒子(粒径約500μm)を用い、その表面に無電解メッキ処理により銅被膜を形成した。次に、銅被膜を形成したPTFE粒子を一体成形して図1に示すような摺動材を備えた複合材料を作成した。その具体的な工程を以下に示す。
(1)前処理;PTFE粒子の表面を界面活性剤により親水化処理する。そして、センシタイジング液及びアクチベーション液に親水化処理したPTFE粒子を浸漬してその表面に触媒を付与する。
(2)メッキ処理;以下のメッキ液の浴組成及び条件で無電解銅メッキ処理を行った。
<メッキ液>
硫酸銅 7g/リットル
ホルマリン 適宜
酒石酸ナトリウムカリウム 20g/リットル
PTFE粒子 15g/リットル
水酸化ナトリウム(pH調整用) 適宜
<条件>
pH 9.2
浴温 60℃
還元剤であるホルマリンを滴下しながら撹拌すると(撹拌時間10分当りホルマリン1ミリリットル)、銅メッキ処理が行われる。後述するように、滴下するホルマリンの量を調整することでPTFE粒子に付着する銅の量を調整することができる。
(3)乾燥・予備成形処理;銅メッキ処理したPTFE粒子を酸化防止のため真空中で乾燥させた。次に、直径10mmの円筒状の型内に銅被膜が形成されたPTFE粒子0.5gを充填し、圧力1MPaで加圧成形した。
(4)一体成形処理;予備成形したものを電気炉を用いてアルゴン雰囲気中で約360℃に加熱して一体成形した。
【0019】
ホルマリンの滴下量を変化させてPTFE粒子に付着する銅の量がどのように変化するか実験した結果を図4に示す。図4では、縦軸に銅の含有率(重量%)をとり、横軸に滴下したホルマリンの量(ミリリットル)をとっている。銅の含有率は、銅メッキ処理したPTFE粒子を所定の重量分だけ硝酸により銅を溶解した後再度重量を測定して重量減少分を求め、最初の重量と重量減少分との比率により算出した。図4からホルマリンの滴下量が増加すると銅の含有率が増加しており、ホルマリンの滴下量によりPTFE粒子に付着する銅の量が定量的に調整できることがわかる。したがって、PTFE粒子の表面に形成される銅被膜の層厚はホルマリンの滴下量によって容易に調整できる。
【0020】
図5は、銅の含有率を変化させて複合材料を成形した場合の断面をSEM-EDXにより分析した結果を示す写真である。図1において、白い線状部分が銅に対応しており、黒い部分がPTFE粒子に対応している。図5(a)は、銅の含有率が3.03重量%、図5(b)は、銅の含有率が6.97重量%、図5(c)は、銅の含有率が12.45重量%の場合をそれぞれ示している。図5から、銅の含有率が小さい場合には銅被膜の膜厚が薄く、銅の含有率が大きくなるに従い膜厚が厚くなって、PTFE粒子の接合部分に沿って銅がネットワーク状に形成されていることがわかる。
【0021】
図6は、銅の含有率と複合材料の電気抵抗との関係を示すグラフである。図6では、縦軸に電気抵抗をとり、横軸に銅の含有率をとっている。電気抵抗の測定には、LCR測定器(日置電機株式会社製LCR 3522)を用いて定電圧モード2.0Vで測定した。複合材料に対して両面から銅板を荷重20Nの一定圧力で挟圧し、測定周波数1Hzで10分間測定した。これを3回繰り返してその平均値を電気抵抗値とした。図6の測定結果をみると、銅の含有率が高くなるに従い電気抵抗値が低下することがわかる。したがって、メッキ処理する銅の量を異ならせた複数種類のPTFE粒子を複数層の型内に積層して一体成形することで、銅の含有率の異なる層状の領域が形成することが可能となり、層状に電気抵抗値が異なった領域を容易に設定することができる。また、層状以外にも複数種類のPTFE粒子を型内に様々な形で充填することで電気抵抗値の異なる領域を様々な形に設定することが可能となる。
【0022】
次に、作成した複合材料について摩擦特性及び摩耗特性を測定する試験について説明する。試験には、荷重変動型往復摩耗試験機(新東科学社製HHS2000)を使用した。図7は、摩耗試験を行う部分の拡大側面図を示している。スライドテーブル4の上面にはステンレス(SUS304)からなる円板状のプレート試験片5(直径40mm、厚さ4.6mm)が載置固定されており、スライドテーブル4の上方に設置した支持体6の下面には銅板7を介して円筒状のピン試験片8(直径約9.5mm、厚さ約2.5mm)が固定されている。プレート試験片5と銅板7には、電気抵抗測定器9(三和計器株式会社製PCLink10)の接続端子が取り付けてある。
【0023】
ピン試験片8として、銅メッキ処理していないPTFE粒子により一体成形したPTFE材料と上述したように銅メッキ処理したPTFE粒子により一体成形した複合材料の2種類の材料を用いた。また、複合材料としては、銅の含有率が3.03重量%、6.97重量%、12.45重量%の3つの異なったものを準備した。
【0024】
試験は、大気中(相対湿度44±3%)及び水中に摩耗試験部分を置いた場合についてそれぞれ行った。スライドテーブル2が水平方向に一定速度で(20mm/s)往復摺動することで、プレート試験片5の上面にピン試験片8の下面を20mmのストロークで摺動させて試験を行い、ピン試験片8には、試験中垂直荷重9Nが加えられる。
【0025】
試験結果を図8及び図9に示す。図8は、横軸に往復回数をとり、縦軸に摩耗量(左側の縦軸)及び摩擦係数(右側の縦軸)をとり、PTFE材料及び複合材料の試験結果をプロットしている。また、図9は、横軸に往復回数をとり、縦軸に測定した電気抵抗値をとり、複合材料の試験結果をプロットしている。
【0026】
図8をみると、大気中の試験結果(図8(a))では、摩擦係数は、PTFE材料では0.1付近で変化しているが、複後材料では0.2付近で変化しており、摩耗量は、往復回数が増えるに従い増加しているが、12.45重量%の複合材料が比較的摩耗量が少なくなっている。一方、水中の試験結果(図8(b))では、摩擦係数は、PTFE材料及び複合材料とも0.1から0,2付近で変化しており、PTFE材料の方が変動が大きいのがわかる。摩耗量は、いずれの場合も直線的に増加している。
【0027】
大気中の試験に使用した相手プレート試験片(SUS304)の摩耗面を光学顕微鏡により観察すると、PTFE材料が摺動した摩耗面にはPTFEの移着膜がみられ、複合材料が摺動した摩耗面にはPTFE及び銅の移着膜がみられた。このことから、PTFE材料の場合は、移着膜が摩耗面に形成されるため、摩擦係数が小さくなり、摩耗の進行が抑制されていると考えられる。複合材料の場合も移着膜が形成されるが、銅が存在することによりアブレシブ作用が働き、PTFE材料のような摩擦係数を低下させる効果が逆に抑えられていると考えられる。
【0028】
水中の試験で使用した相手プレート試験片(SUS304)の摩耗面を光学顕微鏡により観察すると、大気中試験のような移着膜は存在していない。これは、水中のためプレート試験片の表面に水膜が形成されて移着膜の形成を妨げるためと考えられる。したがって、いずれの場合も同じように摩耗量が増加していくが、PTFE材料では銅が存在していないため摩擦係数が変動しやすくなっている。
【0029】
図9をみると、大気中の試験結果ではPTFEの移着膜の影響で電気的な導通が行われていないが、水中の試験結果ではPTFEの移着膜が形成されないため導通状態となり、銅の含有率が大きいほど電気抵抗値の低下が大きくなることがわかる。
【0030】
以上の試験結果から、本発明に係る摺動材である複合材料は、樹脂のみからなるPTFE材料に比べて、大気中及び水中のいずれにおいても安定した耐摩耗特性を有することがわかる。また、水中では、摺動部材及び被摺動部材との間の摺動面に配設した場合において安定した電気的な導通性を備えていることがわかる。
【0031】
したがって、本発明に係る摺動材を摺動部材又は被摺動部材の摺動面に用いることで安定した耐摩耗性及び導電性を発揮することが可能となる。例えば、図10に示すように、軸11を軸支する軸受10の摺動面に層状の摺動材12を形成しておけば、安定した耐摩耗性を備え、良好な導電性による帯電防止がなされた軸受とすることができる。また、水中で用いられる軸受では、本発明の摺動材は安定した電気的導通性を備えているため、軸と軸受との間を安定して電気的に導通させた状態とすることができる。例えば、図11に示すように、軸11及び軸受10が共に導電性材料から構成され、摺動材12も電気的に導通しているため、軸11及び軸受10は電気的に接続された状態となる。そして、摺動材12を金属の含有率が異なった2層構造12a及び12bとしておけば、摩耗により構造12bがなくなると、軸11と軸受10との間の電気抵抗が変化するようになる。そこで、軸11と軸受10との間の電気抵抗を測定器13により常時監視することで、電気抵抗の変化により簡単に摩耗検知を行うことができる。この場合、摺動材12を軸受10の摺動面に形成するだけでよく、非常に簡単な構成で摩耗検知を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0032】
実施例1と同様の方法により銅メッキ処理したPTFE粒子を用意し、成形する際に型内に銅メッキされていないPTFE粒子を1層目に投入し、次いで銅メッキ処理されたPTFE粒子を2層目として投入し、実施例1と同様に予備成形及び一体成形処理して複合材料を作成した。複合材料は、1層目の厚さが約0.5mmで、2層目の銅の含有率は7.52重量%であった。
【0033】
次に、作成された複合材料を用いて摩耗試験を行った。摩耗試験は、1層目の表面を摩耗させていき、それに伴う電気抵抗の変化を測定した。図12は、試験装置に関する概略図を示している。円板状に形成された複合材料20は、1層目20a及び2層目20bからなっており、アクリル樹脂からなる支持台21内に1層目20aの表面が露出するように埋設されている。そして、1層目20aの外表面には、ステンレスからなるリング22の外周面が接触した状態となっている。リング22の中心には金属製回転シャフト23の先端が固定されており、回転シャフト23が回転すると、リング22の外周面が1層目20aの外表面を摺動するようになっている。支持台21を荷重20Nによりリング22に圧接し、リング22を回転速度11m/sで回転させ、その際電気抵抗測定器24の接続端子を2層目20b及び回転シャフト23に接続し、電気抵抗を測定した。
【0034】
図13にその試験結果を示す。図13では、横軸に試験時間をとり、左側の縦軸に電気抵抗をとり、右側の縦軸に摩耗深さをとっている。図13の試験結果をみると、電気抵抗が急激に低下した時点での摩耗深さは約0.5mmであり、極めて高い検知精度であることがわかる。
【0035】
以上のことから、本発明にかかる摺動材に金属の含有率が異なる部分を形成して軸受等の部材に用いれば、電気抵抗の変化により検知精度の極めて高い摩耗検知装置として活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
このように、本発明に係る摺動材は、それ自体に機能を付与することができ、優れた機能材料として広範な分野の摺動材料として用いることができる。特に、水中での耐摩耗性や電気的な導通性が安定していることから、ポンプ等の水を扱う機械の軸受に好適である。例えば、高い信頼性が求められる大型プラント等の竪型ポンプの水中軸受に適用すれば、その信頼性を向上することができる。特に、水中軸受の摩耗状態を精度よく確実に検知できることから、水中軸受の交換時期を適確に予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る実施形態に関する断面を撮影した写真である。
【図2】図1の模式断面図である。
【図3】粉粒体の模式断面図である。
【図4】滴下したホルマリンの量と銅の含有率との関係を示すグラフである。
【図5(a)】銅の含有率を変化させた場合の複合材料に関する断面を撮影した写真である。
【図5(b)】銅の含有率を変化させた場合の複合材料に関する断面を撮影した写真である。
【図5(c)】銅の含有率を変化させた場合の複合材料に関する断面を撮影した写真である。
【図6】銅の含有率と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図7】摩耗試験を行う部分の拡大側面図である。
【図8】往復回数と摩耗量、摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図9】往復回数と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】本発明に係る摺動材を用いた軸受に関する断面図である。
【図11】本発明に係る摺動材を用いた別の軸受に関する断面図である。
【図12】摩耗試験を行う別の試験装置の概略図である。
【図13】試験時間と電気抵抗、摩耗深さとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1 ネットワーク状の金属部分
2 熱可塑性樹脂部分
3 接合部分
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図12】
9
【図13】
10
【図1】
11
【図5(a)】
12
【図5(b)】
13
【図5(c)】
14