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明細書 :電磁波出力測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4403274号 (P4403274)
公開番号 特開2006-300785 (P2006-300785A)
登録日 平成21年11月13日(2009.11.13)
発行日 平成22年1月27日(2010.1.27)
公開日 平成18年11月2日(2006.11.2)
発明の名称または考案の名称 電磁波出力測定装置
国際特許分類 G01R  29/08        (2006.01)
H01Q  13/22        (2006.01)
FI G01R 29/08 C
H01Q 13/22
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2005-124303 (P2005-124303)
出願日 平成17年4月21日(2005.4.21)
審査請求日 平成18年2月15日(2006.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】出原 敏孝
【氏名】小川 勇
【氏名】光藤 誠太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100111855、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 好昭
審査官 【審査官】吉田 久
参考文献・文献 特開平11-083919(JP,A)
特開平6-160454(JP,A)
特開2003-167017(JP,A)
特開2000-1373(JP,A)
特開平5-29814(JP,A)
特開平1-162164(JP,A)
調査した分野 G01R 29/08、29/10、31/00
H01Q 13/00~13/28
H01J 23/00~25/78
JSTPlus(JDreamII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
内周面全体に周方向に溝部が形成されるとともに管軸方向に沿って当該溝部に対応して穿設された複数の孔部からそれぞれ所定波長ずつ進行距離がずれた電磁波が漏出するコルゲート導波管と、各孔部から外部に漏出する電磁波が干渉して形成された平面波を前記コルゲート導波管の管軸方向に対する当該平面波の伝搬方向角度に基づいて設定された測定方向で測定する測定手段と、測定手段からの測定データに基づいて電磁波の出力値を算出する算出手段とを備えていることを特徴とする電磁波出力測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁波出力測定装置を備えた高出力マイクロ波加熱装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロトロン等の高出力マイクロ波を測定する電磁波出力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャイロトロン等のマイクロ波出力装置を用いて高周波加熱を行う場合、マイクロ波がどれだけ出力されているか把握する必要があり、そのための出力測定装置が提案されている。例えば、特許文献1では、ビーム状のマイクロ波をその伝播方向と異なる方向に集束させるミラーと、このミラーにより集束されたマイクロ波を小ホールを通して導入し熱化する金属又は誘電体より形成されたタンクと、このタンクを冷却するための冷却媒体が通過する冷却媒体通路と、この冷却媒体通路の入口・出口間の温度差からマイクロ波の出力を測定する手段とを備えたことを特徴とするマイクロ波出力測定装置が記載されている。特許文献2では、ビーム状のマイクロ波をその伝播方向と異なる方向に集束させるミラーと、集束されたマイクロ波を通す程度の直径の異なる複数の小孔を有するスライド板と、選定した小孔以外の小孔を覆うフレームと、スライド板の小ホールを通して導入されたマイクロ波を熱化する金属又は誘電体より形成されたタンクと、このタンクを真空断熱層を介して収納する外胴と、タンクを冷却するための冷却媒体が通過する冷却媒体通路と、この冷却媒体通路の入口・出口間の温度差と流量からマイクロ波の出力を測定する手段と、ミラーとスライド板間の距離を調節できる焦点距離調節機構とを備えたマイクロ波出力測定装置が記載されている。また、特許文献3では、マイクロ波を吸収する液体に水よりもマイクロ波の吸収力の弱い化合物を混合してマイクロ波の照射による熱量を測定するマイクロ波熱量計が記載されている。

【特許文献1】特開平1-162164号公報
【特許文献2】特許第2670351号公報
【特許文献3】特開昭62-250370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した先行文献では、マイクロ波が伝搬する導波管に付設して測定装置が設けられており、ミラーにより測定装置にマイクロ波のメインビームを導入して測定が行われている。したがって、測定のための試験出力時に測定が行われ、本稼動のマイクロ波出力時にリアルタイムで出力測定を行っていないため、本稼動中のマイクロ波出力が測定できない。仮に本稼動中に出力測定を行うと、メインビームへの影響は避けられず稼動を中断せざるを得なくなる。
【0004】
そこで、本発明は、導波管内を伝搬する電磁波のメインビームに影響を及ぼすことなく本稼動中にリアルタイムで電磁波出力を測定することができる電磁波出力測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電磁波出力測定装置は、内周面全体に周方向に溝部が形成されるとともに管軸方向に沿って当該溝部に対応して穿設された複数の孔部からそれぞれ所定波長ずつ進行距離がずれた電磁波が漏出するコルゲート導波管と、各孔部から外部に漏出する電磁波が干渉して形成された平面波を前記コルゲート導波管の管軸方向に対する当該平面波の伝搬方向角度に基づいて設定された測定方向で測定する測定手段と、測定手段からの測定データに基づいて電磁波の出力値を算出する算出手段とを備えていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る高出力マイクロ波加熱装置は、上記の電磁波出力測定装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記の構成を備えることで、導波管に穿設された複数の孔部から外部に漏出した電磁波を用いて電磁波の出力測定を行うようにしているので、導波管内を伝搬するメインビームに対して影響を及ぼすことなく測定を行うことが可能となる。また、各孔部から漏出する電磁波を所定波長ずつずらすことで、漏出した電磁波の干渉により平面波が形成されるようになり、形成された平面波を測定することで漏出した電磁波の出力を正確に測定することが可能となる。そして、測定される平面波の出力と電磁波の出力との相関関係を予め実験等により求め、その相関関係に基づいて算出式や対応テーブル等を作成しておけば、稼動中に測定手段により測定した結果に基づいてリアルタイムで電磁波の出力値を算出することができるようになる。
【0008】
そして、内周面に周方向に沿って複数の溝部が形成されたコルゲート導波管を導波管として用いる場合には、孔部を溝部に対応して穿設すれば、各孔部からそれぞれ所定波長ずつずれた電磁波が漏出するようになり、外部漏出した電磁波によりノイズの少ない平面波を容易に形成することができる。
【0009】
また、測定手段の測定方向を、導波管の管軸方向に対する平面波の伝搬方向角度に基づいて設定すれば、平面波の測定を正確に行うことが可能となり、測定手段の設定を簡単に行うことができる。
【0010】
また、孔部の深さを導波管内を伝搬する電磁波の波長以下に設定し、また、孔部の開口形状において導波管の管軸方向の長さを電磁波の波長以下に設定しておくことで、導波管内を伝搬するメインビームに及ぼす影響を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る実施形態を備えた高出力マイクロ波加熱装置に関する正面図である。高出力マイクロ波加熱装置は、高周波のマイクロ波出力装置としてジャイロトロン1、出力されたマイクロ波を所望の方向に伝搬させるコルゲート導波管2及び内部に被加熱物が設置されたアプリケータ3を備えている。そして、コルゲート導波管2に隣接して電磁波出力測定装置4が配置されている。
【0013】
ジャイロトロン1は、下方に配置した電子銃10から電子ビームを上方に向かって発射し超伝導磁石11を備える電磁波発振部に打ち込むことで高周波で高出力の電磁波を発生させることができる。発生した電磁波は、電磁波を反射するミラー等を備えた方向変換部12によりコルゲート導波管2内に入射するよう誘導される。
【0014】
コルゲート導波管2は、円筒形の直管状で内周面において周方向に溝部が形成されている。溝部は、入射する電磁波の波長の約1/4の深さで断面矩形状に形成されており、隣接する溝部との間の間隔についても入射する電磁波の波長の約1/4に設定されている。溝部は、螺旋状に形成したり、複数の溝部を周方向に沿って平行に形成してもよい。こうした溝部を形成したコルゲート導波管2を用いることで、入射した電磁波を低損失の直線偏光モードで励振させて伝搬させることができる。コルゲート導波管2は、所定単位長さの導波管を結合して構成してもよい。
【0015】
コルゲート導波管2の一部には、下部に複数の孔部が形成されて電磁波出力測定装置4に向けて電磁波が漏出するようになっている。図2は、電磁波が漏出する部分に関する管軸方向C-Cに沿って切断した場合の拡大断面図である。コルゲート導波管2の内周面には溝部20が複数等間隔で形成されており、一部の溝部20には、電磁波が漏出する孔部21がそれぞれ穿設されており、各孔部21は、管軸方向C-Cに沿って配列されている。図3は、図2におけるA-A断面図を示している。図3に示すように孔部21が設けられた領域は、平面状に切断されて厚さが薄く形成されており、孔部21の深さTがコルゲート導波管2内を伝搬する電磁波の波長以下となるように設定されている。また、孔部21の開口形状は、図4に示すように、例えば、円形(図4(a))又は矩形(図4(b))といった形状にすることができる。ただし、管軸方向C-Cの長さがコルゲート導波管2内を伝搬する電磁波の波長以下となるように設定する。円形の場合には、図4(a)に示す径rが波長以下となるように設定すればよい、また、矩形の場合には図4(b)に示す長さLを波長以下となるように設定すればよい。このように、孔部21の深さ及び開口形状を設定することで、コルゲート導波管2内を伝搬するメインビームに影響を与えることなく電磁波を外部に漏出することができる。
【0016】
なお、孔部21の開口形状の面積を大きくしたり、孔部21の数を多くすることで漏出する電磁波の出力を大きくすることが可能であるが、導波管内を伝搬する電磁波のメインビームに影響を与えないように調整することが必要である。例えば、導波管内を伝搬する電磁波のメインビームの出力が大きい場合には影響はないが、出力が小さい場合には影響が生じやすくなるので、メインビームの出力に応じて調整することが望ましい。
【0017】
図5は、コルゲート導波管2に穿設された孔部21からから漏出する電磁波が干渉して平面波が形成されることを説明する図である。
【0018】
所定の方向に伝搬している電磁波の波長をλとした場合、時間が1周期経過すると1波長分の距離λだけ進む。したがって、ある時刻において、電磁波の進行方向に1波長分の距離だけ離れた位置では位相が2πずれていることになる。このことは、自由空間及びコルゲート導波管2内において伝搬する電磁波でも成立する。
【0019】
ある位置から電磁波の進行方向に距離dだけ進んだ位置では、位相φは
φ=2πd/λ
だけずれている。ここで、波数κを
κ=2π/λ
とすると、位相φは、波数κと距離dとの積で与えられる。
【0020】
コルゲート導波管2内では、電磁波は管軸方向C-Cに対して斜め方向に伝搬していると考えることができるので、電磁波の進行方向を向き波数κの大きさを持つ波数ベクトルΚを考えた場合、波数ベクトルΚは、管軸方向に平行な波数ベクトルΚHと管軸方向に垂直なベクトルΚVの和として表せる。
Κ=ΚH+ΚV
また、波数ベクトルΚの大きさκは、波数ベクトルΚH及びΚVの大きさをκH及びκVとすると、
κ=(κH2+κV21/2
となる。
ここで、波数ベクトルΚの大きさκは、周波数をf、光速をcとすると
κ=2π/λ=2πf/c
となる。また、波数ベクトルΚVの大きさκVは、コルゲート導波管2の溝部の底面から管軸までの距離をaとすると(図2参照)、
κV=ρ/a
となる。ここで、ρは定数(値は2.405)である。
【0021】
図5において、電磁波の進行方向の最も上流側の孔部21から放射された電磁波が自由空間を距離ds伝搬する間に管軸方向に距離dwだけ伝搬したとする。その場合、点線で示された位置では位相が等しくなって平面波が形成される。距離dsだけ伝搬する場合の位相の遅れはκdsで、管軸方向に距離dwだけ伝搬する場合の位相の遅れはκHwとなるので、平面波が形成される条件は、
κds=κHw
となる。したがって、孔部21から放射される平面波の管軸方向C-Cに対する放射角度θは、
【数1】
JP0004403274B2_000002t.gif
として導かれる。ここで、ω=2πfである。
【0022】
図6は、放射角度θとコルゲート導波管2内を伝搬する電磁波の周波数fとの関係をグラフ化したものである。この例では、a=31.75mmとしている。したがって、このグラフに基づいて孔部21から漏出する電磁波による平面波の放射角度が求められるので、その放射角度に合せて測定すれば、正確な出力測定を行うことができる。
【0023】
アプリケータ3は、コルゲート導波管2と結合した真空チャンバ内に被加熱物を配置し、コルゲート導波管2内を伝搬した電磁波を真空チャンバ内に導入して被加熱物に吸収させて加熱するようになっている。図7は、具体的な構成例に関する概略断面図を示している。真空チャンバ30は、円筒形の胴部に図示せぬ真空ポンプと接続する排気口部31及びコルゲート導波管2と結合する結合部32が設けられており、胴部の一方の開口端部にチャンバ蓋32が取り付けられている。チャンバ蓋32には、真空チャンバ30内に設置した被加熱物Tの加熱状態を確認するための覗き窓33が設けられている。真空チャンバ30内には、コルゲート導波管2から導入した電磁波を乱反射させる反射板35が配置されており、また、胴部の他方の端部には拡散羽根36が配設されている。拡散羽根36は、真空チャンバ30の外面に取り付けられたモータ37により回転駆動されるようになっている。
【0024】
真空チャンバ30内に導入された電磁波は、図7中点線で示すように反射板35で乱反射されて真空チャンバ30内をランダムな方向に伝搬し、さらに回転する拡散羽根36によって散乱させられてチャンバ内の空間に一様に分布するようになる。そのため、被加熱物全体に電磁波が満遍なく吸収されて均一な加熱状態を得ることができるようになる。
【0025】
電磁波出力測定装置4は、コルゲート導波管2から外部に漏出する電磁波を検知して出力信号に変換するアンテナ部40と、アンテナ部40から送信された出力信号に基づいてコルゲート導波管2内を伝搬する電磁波の出力値を算出する算出部41を備えている。
【0026】
アンテナ部40は、角錐状のホーンアンテナを備えており、その開口面は、コルゲート導波管2から外部に漏出する電磁波が干渉して形成される平面波の波面と一致するように設定されている。アンテナ部の測定方向を設定する場合には、上述したように平面波の放射角度に基づいてその測定方向を調整すればよい。このようにホーンアンテナを設定することで、入射する電磁波の方向を平面波の方向に制限することができ平面波の出力を正確に測定することができる。
【0027】
測定を行う場合、まず試験的に小さい出力でジャイロトロン1から電磁波を出力し電磁波出力測定装置4において測定を行う。そして、測定された出力値とジャイロトロン1の出力値の比率を算出する。この場合、比率が1%を超えると、コルゲート導波管2から漏出する電磁波がメインビームに対して影響を与える可能性があることから、1%以下となるように、孔部21の個数や開口形状を調整することが望ましい。
【0028】
試験出力で算出された比率を算出部41に記憶しておき、ジャイロトロン1の本稼動時にアンテナ部40で測定された出力信号及び比率によりコルゲート導波管2内を伝搬する電磁波の出力を求める。求められた出力値は、ジャイロトロン1にフィードバックされて電子銃10の出力を必要に応じて制御することでより安定した出力制御を行うことができる。そして、ジャイロトロン1の本稼動中にメインビームに影響を与えることなくリアルタイムで正確に測定できるので、アプリケータ内において安定した加熱処理を継続して行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る電磁波出力測定装置は、上述した高出力マイクロ波加熱装置以外にも、核融合プラズマ加熱装置、プラズマ計測装置等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る実施形態を備えた高出力マイクロ波加熱装置に関する正面図である。
【図2】コルゲート導波管の電磁波が漏出する部分に関する管軸方向に沿って切断した場合の拡大断面図である。
【図3】図2におけるA-A断面図である。
【図4】コルゲート導波管に穿設した孔部の開口形状を示す模式図である。
【図5】コルゲート導波管2に穿設された孔部21からから漏出する電磁波が干渉して平面波が形成されることを説明する図である。
【図6】放射角度θとコルゲート導波管内を伝搬する電磁波の周波数fとの関係を示すグラフである。
【図7】アプリケータに関する概略断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ジャイロトロン
2 コルゲート導波管
3 アプリケータ
4 電磁波出力測定装置
20 溝部
21 孔部
40 アンテナ部
41 算出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6