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明細書 :パエニバチルス属細菌由来のキチナーゼ及びそれをコードする遺伝子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4243266号 (P4243266)
公開番号 特開2007-061038 (P2007-061038A)
登録日 平成21年1月9日(2009.1.9)
発行日 平成21年3月25日(2009.3.25)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
発明の名称または考案の名称 パエニバチルス属細菌由来のキチナーゼ及びそれをコードする遺伝子
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
C12P  19/14        (2006.01)
C12N   9/42        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C07K  16/40        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/20 A
C12P 19/14 A
C12N 9/42
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C07K 16/40
請求項の数または発明の数 11
微生物の受託番号 FERM P-20620
全頁数 16
出願番号 特願2005-253370 (P2005-253370)
出願日 平成17年9月1日(2005.9.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年4月1日 日本キチン・キトサン学会発行の「キチン・キトサン研究 第11巻 第1号」に発表
特許法第30条第1項適用 2005年7月1日 日本キチン・キトサン学会発行の「キチン・キトサン研究 第11巻 第2号」に発表
審査請求日 平成18年2月10日(2006.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】木元 久
【氏名】藤井 豊
【氏名】草桶 秀夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
審査官 【審査官】太田 雄三
参考文献・文献 第55回 日本生物工学会大会講演要旨集,2003年 8月25日,p. 73,2B13-4
第55回 日本生物工学会大会講演要旨集,2003年 8月25日,p. 73,2B13-5
フロム,2005年 7月20日,Vol. 72,pp. 38-41
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12P 19/14
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下(a)または(b)のアミノ酸配列を有する、パエニバチルス・フクイネンシス由来のキチナーゼ。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列、または配列番号2で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列、または配列番号4で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
【請求項2】
請求項1に記載のキチナーゼを、多糖類又は多糖含有物に接触させることを含む、キチンオリゴ糖の製造方法。
【請求項3】
多糖含有物がカニ殻である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
カニ殻がズワイガニの殻である、請求項記載の方法。
【請求項5】
以下(a)または(b)のポリペプチド:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列、または配列番号2で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつキチン分解活性を有する、ポリペプチド;
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列、または配列番号4で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつキチン分解活性を有する、ポリペプチド。
【請求項6】
請求項記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項記載の発現ベクターを含む形質転換体。
【請求項9】
請求項記載のポリペプチドに対する抗体。
【請求項10】
請求項記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項11】
請求項5に記載のポリペプチドを有効成分として含む、キチン分解剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規パエニバチルス属細菌・その変異株、およびそれに由来する新規キチナーゼおよびその遺伝子、ならびにそれらの利用法などを提供する。
【背景技術】
【0002】
今でこそ越前ガニは冬限定の高価な味覚であるが、昔はおやつ代わりに食べられていた。そして食べ終わったカニ殻は、当然のように田畑で肥料として用いられてきた。このようにカニ殻が肥料として用いられてきた理由は、古くから福井県の農家では、カニ殻が植物の耐病性を高め、実りを多くすると考えられていたためである。しかしながら、カニ殻が植物の耐病性を高める理由は、よく分かっていなかった。
【0003】
ところで、キチンオリゴ糖は、甘味がある糖として知られており、また、動物実験や培養細胞実験により、多くの生理機能が認められている。このような生理機能としては、例えば、免疫賦活作用、エリシター活性(植物の生体防御機構の活性化)、コレステロール低下作用、血中リゾチーム誘導(ウサギ)、ビフィズス菌増殖促進(整腸機能)、ヒアルロン酸量増加(化粧品への利用)、植物種子発芽促進作用が挙げられる。さらには、キチンオリゴ糖は難消化性であるためダイエット甘味料としての応用が期待されており、また、リゾチームやキチナーゼの活性測定用基質としても有用であると考えられる。従って、上記の通り種々の有用な性質を示すキチンオリゴ糖の効率的な製造法の開発が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、キチンオリゴ糖の効率的な製造を可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記の通り現在でもカニ殻を肥料にしている畑を調べることにより、カニ殻の主成分であるキチンを分解する新種の細菌、パエニバチルス・フクイネンシス(Paenibacillus fukuinensis)を発見した。本発明者らはまた、この細菌が植物病原菌に対する抗菌活性を有することを見出した。パエニバチルス・フクイネンシスは、キチンの分解によりキンオリゴ糖を生成すること、および抗菌活性を有することから、越前ガニの殻が肥料や農薬になるという伝承を説明し得ると考えられる。併せて、本発明者らは、この細菌からの新規キチン分解酵素の単離・同定に成功し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記の通りである:
〔1〕以下(a)または(b)のアミノ酸配列を有する、パエニバチルス・フクイネンシス由来のキチナーゼ。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列、または配列番号2で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列、または配列番号4で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
〔2〕上記〔1〕に記載のキチナーゼを、多糖類又は多糖含有物に接触させることを含む、キチンオリゴ糖の製造方法。
〕多糖含有物がカニ殻である、上記〔〕記載の方法。
〕カニ殻がズワイガニの殻である、上記〔〕記載の方法。
〕以下(a)または(b)のポリペプチド:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列、または配列番号2で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつキチン分解活性を有する、ポリペプチド;
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列、または配列番号4で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつキチン分解活性を有する、ポリペプチド。
〕上記〔〕記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
〕上記〔〕記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
〕上記〔〕記載の発現ベクターを含む形質転換体。
〕上記〔〕記載のポリペプチドに対する抗体。
10〕上記〔〕記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
〔11〕上記〔5〕に記載のポリペプチドを有効成分として含む、キチン分解剤。

【発明の効果】
【0006】
本発明の細菌またはその変異株は、例えば、多糖または多糖含有物(例、越前ガニ等のズワイガニの殻)からのキチンオリゴ糖等のオリゴ糖の製造に、あるいは微生物農薬、抗菌剤、多糖の分解剤として有用である。本発明のキチナーゼは、例えば、多糖または多糖含有物からのキチンオリゴ糖の製造に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(1.細菌およびその用途)
本発明は、多糖のオリゴ糖への分解活性を有するパエニバチルス属細菌またはその変異株を提供する。
【0008】
本発明の細菌またはその変異株は、多糖として、例えば、キチン(N-アセチルグルコサミン)、キトサン(グルコサミン)、グルカン(例、ペプチドグルカンまたは非ペプチドグルカン)またはセルロース(ブドウ糖)を分解し得る。本発明の細菌またはその変異株はまた、キチン分解酵素(キチナーゼ)、キトサン分解酵素(キトサナーゼ)、セルロース分解酵素(グルカナーゼ、セルラーゼ)等の上記多糖の分解酵素を菌体外に分泌し得る。本発明の細菌またはその変異株はさらに、植物病原菌に対する抗菌活性を有し得る。本発明の細菌またはその変異株が抗菌活性を示し得る植物病原菌としては、細胞壁構成成分として上記多糖を含むものである限り特に限定されない。好ましくは、本発明の細菌は、受託番号FERM P-20620で表されるパエニバチルス属細菌またはその変異株である。
【0009】
受託番号FERM P-20620で表されるパエニバチルス属細菌は、茨城県つくば市東1-1-1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所に寄託されている(寄託日:平成17年8月17日)。
【0010】
本発明の変異株は、本発明の細菌に由来する菌株である限り特に限定されないが、例えば、本発明の細菌と同様の表現形質(実施例2.1.参照)、および/または分子系統(実施例2.2.参照)を示す菌株であり得る。本発明の変異株は、本発明の細菌を変異原性物質等の存在下で培養することにより、あるいは本発明の細菌の有用性を高め得る遺伝子(例、上記多糖以外の多糖の分解酵素をコードする遺伝子、あるいは本発明のキチナーゼ等の多糖分解酵素をコードする遺伝子)を導入することなどにより作製できる。
【0011】
本発明の細菌またはその変異体は、バチルス属菌全般の培養に用いられる自体公知の方法により培養できる。例えば、本発明の細菌またはその変異体は、Digest of casein 17.0g、Papaic digest of soybean meal 3.0g、Dextrose 2.5g、Sodium chloride 5.0gおよびDipotassium phosphate 2.5gを含有するTryptic Soy Broth (BECTON DICKINSON, カタログ番号211825)(pH7.2±0.2)中において、好気性条件下で30~42℃にて振とう培養できる。
【0012】
本発明の細菌またはその変異株は、植物病原菌に対する増殖阻害作用を示し、また、本発明の細菌またはその変異株により産生され得るキチンオリゴ糖は、種々の生理機能を示す。従って、本発明の細菌またはその変異株は、例えば、農薬、植物病原菌に対する抗菌剤、多糖の分解剤、土壌改良剤として有用であり得る。
【0013】
本発明はまた、本発明の細菌またはその変異株を多糖または多糖含有物に接触させることを含む、オリゴ糖の製造方法を提供する。
【0014】
多糖または多糖含有物は、本発明のパエニバチルス属細菌により分解可能な多糖、またはそれを含む材料である限り特に限定されないが、このような多糖または多糖含有物としては、例えば、キチン、キトサン(キチンの脱アセチル化産物)およびセルロースからなる群より選ばれる1以上の多糖またはそれを含む材料が挙げられる。より詳細には、多糖含有物としては、例えば、甲殻類の殻、キノコ(例、マンネンタケ、マイタケ、ヒメマツタケ(アガリクスともいう);例えば、Bull. Agr. Shizuoka Univ., No.38, p29-35 (1988) 参照)、昆虫(例、ハエ、バッタ)、イカ由来成分(イカの中心にみられる硬い骨のような透き通った白い組織)、カビ(例、コウジカビ (Aspergillus)、ユミケカビ (Absidia))の細胞壁成分が挙げられる。甲殻類としては、例えば、カニ、エビが挙げられる。カニとしては、例えば、ズワイガニ(例、越前ガニ、松葉ガニ)、タラバガニが挙げられる。
【0015】
越前ガニ等のカニの殻には、キチンが豊富に含まれる。キチンが酵素により分解されて生じるキチンオリゴ糖は、動物の免疫力を向上させるだけでなく、植物に対しても病原菌などの外敵から身を守るための成体防御機構を活性化することが知られている。また、越前ガニ等のズワイガニの殻には、キチンの他に、豊富なカルシウムやアスタキサンチンが含まれている。アスタキサンチンは天然の赤い色素であり、カニを茹でると赤くなるのはこの色素のためである。アスタキサンチンの抗酸化作用はβ-カロチンの約10倍、ビタミンEの約500倍であり、健康食品として非常に価値が高い。本発明の細菌は、福井県において越前ガニの殻を肥料としている畑より単離されたものであり、このようなカニ殻の分解能に優れていると考えられる。従って、本発明の製造方法では、特に健康食品用のキチンオリゴ糖の製造を目的とする場合、キチンの他に上記の通り種々の有用な成分を含み得るカニ殻、特に越前ガニ等のズワイガニの殻を多糖含有物として用いることが好ましい。
【0016】
本発明の細菌またはその変異株の多糖含有物への接触は、自体公知の方法により行われ得る。例えば、本発明の細菌またはその変異株の多糖含有物への接触は、畑等の土壌または発酵槽等の培地中で行われ得る。本発明の細菌は福井県においてカニ殻を肥料としている畑より単離されたものであり、特に条件が設定されずとも自然環境中でカニ殻を始めとする多糖含有物を分解し得ると考えられることから、上述した任意の接触様式によって多糖含有物中に含まれる多糖を分解できる。
【0017】
本発明の製造方法は、例えば、上記の通り種々の有用性を有するキチンオリゴ糖、またはキトサンオリゴ糖(実施例参照)の製造、ならびに該キチンオリゴ糖および/またはキトサンオリゴ糖を含む農薬や健康食品(カルシウム、アスタキサンチンをさらに含んでいてもよい)などの開発に有用である。
【0018】
(2.新規キチナーゼおよびその関連発明)
本発明は、本発明の細菌に由来する新規キチナーゼ(即ち、キチナーゼAおよびキチナーゼB)あるいはその部分ペプチドを提供する。本発明のキチナーゼは、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいは配列番号2または4で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列(以下、必要に応じて、「配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列」と省略する)と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドであり得る。本発明のキチナーゼあるいはその部分ペプチドは、例えば、キチンオリゴ糖の製造、本発明の抗体の作製などに有用であり得る。
【0019】
配列番号2で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列における38番目~最後のアミノ酸残基に対応するアミノ酸配列であり得、また、配列番号4で表されるアミノ酸配列において分泌シグナル配列が除去されたアミノ酸配列は、配列番号4で表されるアミノ酸配列における32番目~最後のアミノ酸残基に対応するアミノ酸配列であり得る。
【0020】
一実施形態では、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列は、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と所定のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列であり得る。アミノ酸配列同一性の程度は、例えば約70%、好ましくは約80%、より好ましくは約90%、さらにより好ましくは約95%、最も好ましくは約97%、約98%または約99%以上であり得る。アミノ酸配列同一性は自体公知の方法により決定できる。例えば、アミノ酸配列同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。また、別の局面では、同一性(%)は、当該分野で公知の任意のアルゴリズム、例えば、Needlemanら(1970) (J. Mol. Biol. 48: 444-453)、Myers及びMiller (CABIOS, 1988, 4: 11-17)のアルゴリズム等を使用して決定することができる。Needlemanらのアルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれており、同一性(%)は、例えば、BLOSUM 62 matrix又はPAM250 matrix、並びにgap weight: 16、14、12、10、8、6若しくは4、及びlength weight: 1、2、3、4、5若しくは6のいずれかを使用することによって決定することができる。また、Myers及びMillerのアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラムに組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、例えば、PAM120 weight residue table、gap length penalty 12、gap penalty 4を用いることができる。
【0021】
別の実施形態では、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列は、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列において1以上のアミノ酸が置換、付加、欠失および/または挿入されたアミノ酸配列であり得る。置換、付加、欠失および/または挿入されるアミノ酸の数は、1以上であれば特に限定されないが、例えば1~約100個、好ましくは1~約50個、より好ましくは1~約30個、さらにより好ましくは1~約20個、最も好ましくは1~約10個、1~約5個あるいは1または2個であり得る。
【0022】
本発明のキチナーゼは、キチン分解活性を有し得る。本発明のキチナーゼが配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドである場合、キチン分解活性の程度は、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドと定量的に同等であり得るが、許容し得る範囲(例えば約0.1~約5倍、好ましくは約0.5~約2倍)で異なっていてもよい。
【0023】
本発明のキチナーゼはまた、その特徴的なドメインとしてファミリー18キチナーゼドメイン、キチン吸着ドメイン、フィブロネクチンタイプ3ドメインを有し得る。従って、本発明のキチナーゼが配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドである場合、これらのドメインおよび/またはその機能を保持することが好ましい。
【0024】
ファミリー18キチナーゼドメインは、ファミリー18の糖質加水分解酵素が有するキチナーゼ活性に必要なアミノ酸領域である。糖質加水分解酵素は、活性ドメインのアミノ酸配列の類似性に基づき、いくつかのファミリーに分類されている(Henrissat, B, and Bairoch, A.(1966) Biochem J. 316, 695-696、2004年現在で91ファミリーに分類)。これまでに数多くのキチナーゼが報告されているが、これらはいずれもファミリー18と19の種類のファミリーに分類されている。ファミリー18キチナーゼドメインは、配列番号2で表されるアミノ酸配列において45番目~367番目のアミノ酸残基に対応し得、また、配列番号4で表されるアミノ酸配列において38番目~349番目のアミノ酸残基に対応し得る。
【0025】
キチン吸着ドメインは、キチナーゼとその基質キチンとのより強い相互作用を可能とする領域であり、酵素活性には必須ではないが、酵素の比活性を高めることが知られている。キチン吸着ドメインは、配列番号2で表されるアミノ酸配列において564番目~606番目のアミノ酸残基に対応し得、また、配列番号4で表されるアミノ酸配列において564番目~605番目のアミノ酸残基、および662番目~757番目のアミノ酸残基に対応し得る。
【0026】
糖質分解酵素におけるフィブロネクチンタイプ3ドメインの機能については未だよくわかっていない。しかし、これまでに報告されているキチナーゼでは、フィブロネクチンタイプ3ドメインは、いずれもキチナーゼドメインとキチン吸着ドメインの間に存在しており、これまでは両ドメインのリンカーとして機能しているのではないかと考えられている。ところが、本発明の細菌が産生するキチナーゼAのフィブロネクチンタイプ3ドメインは、キチナーゼドメインとキチン吸着ドメインの間ではなく、C末端領域に存在していることから、本酵素は大変興味深い。フィブロネクチンタイプ3ドメインは、配列番号2で表されるアミノ酸配列において711番目~793番目のアミノ酸残基に対応し得、また、配列番号4で表されるアミノ酸配列において378番目~461番目のアミノ酸残基、および471番目~554番目のアミノ酸残基に対応し得る。
【0027】
本発明のキチナーゼのうち、配列番号2で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、低温域で高い活性を示し、至適温度は約30℃であり得る。本ポリペプチドはまた、pH安定性の非常に高い酵素であり、pH3~9で約80%以上(例、約80~90%)の相対活性を有し得る。本ペプチドはさらに、低温で安定であるが高温でも急激には失活しない比較的熱安定性の高い酵素であり、20~30℃の低温で安定であり、40~80℃の範囲では徐々に相対活性が低下し得る。例えば、40℃から80℃における相対活性減少率は約1%(相対活性)/1℃であり、また、60~80℃でも約35~50%の相対活性を有し得る。
【0028】
一方、配列番号4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、高温域(約50-60℃)で高い活性を示し、至適温度は約60℃であり得る。本ポリペプチドはまた、中性付近で活性を示す酵素であり、至適pHは7付近であり、pH6~8の範囲では90%以上の相対活性を有し得る。本ペプチドはさらに、20~50℃までの熱処理で相対活性を90%以上保持しており安定であり得る。
【0029】
本発明のキチナーゼを用いたキチンオリゴ糖の製造は、公知のキチナーゼによるキチンオリゴ糖の製造と同様の自体公知の方法により行われ得る(例えば、相羽誠一, 高分子加工, 46, 328 (1997);Usui T et al., Biochim Biophys Acta, 923, 302 (1987) 参照)。また、キチナーゼの活性測定法に準じてキチンオリゴ糖を製造することも勿論可能である。キチナーゼの活性測定法としては、例えば、基質溶液(コロイダルキチンまたはグリコールキチンのフェリシアン化カリウム溶液(フェリシアン化カリウム0.5 gを0.5 M炭酸ナトリウム1リットルに溶かす))を用いて、コロイダルキチンまたはグリコールキチンの分解によって生成する還元糖を用いて定量し、キチナーゼ活性を測定する方法が挙げられる(例えば、キチン、キトサン実験マニュアル、キチン、キトサン研究会編、技報堂出版、p112-113、1991参照)。より詳細には、後述の実施例を参照のこと。
【0030】
本発明の部分ペプチドは、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドの部分ペプチドであり得る。本発明の部分ペプチドは、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列から選ばれる少なくとも約8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、さらにより好ましくは少なくとも15個、最も好ましくは20個以上の連続したアミノ酸からなるペプチドであり得る。詳細には、本発明の部分ペプチドとしては、例えば、本発明のキチナーゼに特徴的なドメイン自体、あるいは該ドメインを含むポリペプチドが挙げられる。
【0031】
本発明はまた、本発明のキチナーゼをコードするポリヌクレオチドあるいはその部分ヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいは配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列において分泌シグナル配列をコードするヌクレオチド配列が除去されたヌクレオチド配列(以下、必要に応じて、「配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列」と省略する)と同一または実質的に同一のヌクレオチド配列であり得る。本発明のポリヌクレオチドあるいはその部分ヌクレオチドは、例えば、本発明のキチナーゼまたはその部分ペプチドの作製に有用であり得る。
【0032】
一実施形態では、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいは配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列において分泌シグナル配列をコードするヌクレオチド配列が除去されたヌクレオチド配列と70%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であり得る。ヌクレオチド配列同一性の程度は、例えば約70%、好ましくは約80%、より好ましくは約90%、さらにより好ましくは約95%、最も好ましくは約97%、約98%または約99%以上であり得る。ヌクレオチド配列同一性は自体公知の方法により決定できる。例えば、ヌクレオチド配列同一性(%)は、上述したアミノ酸配列同一性(%)と同様の方法により決定できる。
【0033】
別の実施形態では、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列は、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列において1以上のヌクレオチドが置換、付加、欠失および/または挿入されたヌクレオチド配列であり得る。置換、付加、欠失および/または挿入されるヌクレオチドの数は、1以上であれば特に限定されないが、例えば1~約300個、好ましくは1~約150個、より好ましくは1~約100個、さらにより好ましくは1~約50個、最も好ましくは1~約30個、1~約20個、1~約10個または1~約5個であり得る。
【0034】
さらに別の実施形態では、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列は、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列の相補配列に対してハイストリンジェント条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであり得る。ハイストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションの条件は、既報の条件を参考に設定することができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 6.3.1-6.3.6, 1999)。例えば、ハイストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションの条件としては、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1%SDS/50~65℃での一回以上の洗浄が挙げられる。
【0035】
本発明のポリヌクレオチドは、キチン分解活性を有するポリペプチドをコードし得る。本発明のポリヌクレオチドが配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである場合、当該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのキチン分解活性の程度は、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドと定量的に同等であり得るが、許容し得る範囲(例えば約0.1~約5倍、好ましくは約0.5~約2倍)で異なっていてもよい。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドはまた、その特徴的なドメインであるファミリー18キチナーゼドメイン、キチン吸着ドメイン、フィブロネクチンタイプ3ドメインを有するポリペプチドをコードし得る。従って、本発明のポリヌクレオチドが配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである場合、これらのドメインおよび/またはその機能を保持するポリペプチドをコードすることが好ましい。
【0037】
本発明の部分ヌクレオチドは、本発明の部分ペプチドをコードするヌクレオチドであり得る。詳細には、本発明の部分ヌクレオチドは、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列と同一または実質的に同一のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの部分ヌクレオチドであり得る。本発明の部分ヌクレオチドとしては、例えば、本発明のキチナーゼに特徴的なドメインをコードするヌクレオチドが挙げられる。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、自体公知の方法により作製できる。例えば、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、本発明の細菌またはその変異株から総RNAを抽出し、mRNAからcDNAを調製した後、適切なプライマーを用いてPCRを行うことによりクローニングできる。また、配列番号1または3で表されるヌクレオチド配列、あるいはその分泌シグナル除去ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、上記の通りクローニングしたポリヌクレオチドに変異を導入することにより作製できる。変異導入法としては、例えば、合成オリゴヌクレオチド指定突然変異導入法(gapped duplex)法、ランダムに点突然変異を導入する方法(例えば、亜硝酸若しくは亜硫酸での処理)、カセット変異法、リンカースキャニング法、ミスマッチプライマー法などの方法が挙げられる。
【0039】
また、本発明のポリペプチドについても自体公知の方法により作製できる。例えば、上記のように作製した本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込み、得られた組換えベクターを適切な宿主細胞に導入して形質転換体を得た後、形質転換体を培養し、本発明のポリペプチドを産生させ、次いで回収すればよい。本発明はまた、このような組換えベクター、及び当該ベクターが導入された形質転換体をも提供する。
【0040】
発現ベクターとしては、任意の宿主細胞中で本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を発現し、これらポリペプチドを産生できるものであれば特に制限されない。例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができる。
【0041】
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現ベクターは少なくともプロモーター-オペレーター領域、開始コドン、本発明のポリペプチドをコードするDNA、終止コドン、ターミネーター領域および複製可能単位から構成され得る。
【0042】
細菌中で本発明のポリペプチドを発現させるためのプロモーター-オペレーター領域は、プロモーター、オペレーター及びShine-Dalgarno(SD) 配列(例えば、AAGGなど)を含むものである。例えば宿主が大腸菌の場合、好適にはTrpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、tacプロモーターなどを含むものが例示される。ターミネーター領域、複製可能単位については、自体公知のものを用いることができる。
【0043】
本発明の形質転換体は、上述の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。
【0044】
形質転換体の作製に用いられる宿主細胞としては、前記の発現ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に限定されず、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞あるいは人工的に樹立された組換細胞など種々の細胞(例えば、大腸菌、バチルス属菌、放線菌等の細菌、酵母などの真核生物細胞)が例示される。
【0045】
本発明のポリペプチドは、上記の如く調製される発現ベクターを含む形質転換体を栄養培地で培養することによって製造することができる。
【0046】
栄養培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素(例えば、無機塩(例えば塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類)を含んでいてもよい。
【0047】
形質転換体の培養は自体公知の方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpHおよび培養時間は、本発明のポリペプチドが大量に生産されるように適宜選択される。例えば、宿主が細菌である場合、上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5~8である培地である。宿主が大腸菌の場合、好ましい培地としてLB培地、M9培地等が例示される。かかる場合、培養は、例えば、通気、撹拌しながら、約30~40℃にて約5~30時間行うことができる。宿主がバチルス属菌の場合、例えば、通気、撹拌をしながら、約30~40℃にて約15~100時間行うことができる。
【0048】
本発明のポリペプチドは、上述のような形質転換体を培養し、該形質転換体から回収、好ましくは単離、精製することができる。
【0049】
単離、精製方法としては、例えば塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動など分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーやヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
【0050】
また、タグ(例えば、ヒスチジンタグ、Flagタグ)などを付加したポリペプチドを形質転換体に産生させ、当該タグに親和性を有する物質(例えば、Ni2+レジン、タグに特異的な抗体)を用いることにより、より簡便に、本発明のポリペプチドを単離、精製することもできる。
【0051】
さらに、本発明のポリペプチドは、無細胞系にて合成可能である。無細胞系による本発明のポリペプチドの合成では、例えば、大腸菌、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽からの抽出液などを使用できる。また、本発明のポリペプチドは、固相合成法、液相合成法等の自体公知の有機化学的方法によって作製できる。
【0052】
本発明の抗体の作製に用いられる抗原としては、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはそれらの部分ペプチドを用いることができる。部分ペプチドとしては、免疫原性を有する限り特に限定されないが、例えば、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列、あるいはその分泌シグナル除去アミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列、あるいは上述のドメインをコードするアミノ酸配列から選ばれる少なくとも約8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、さらにより好ましくは少なくとも15個、最も好ましくは20個以上の連続したアミノ酸からなるペプチドであり得る。
【0053】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の免疫学的手法により作製することができる。この抗体は、完全な抗体分子だけでなく、本発明のポリペプチドに対する抗原結合部位(CDR)を有する限りいかなるフラグメントであってもよく、例えば、Fab、F(ab')2、ScFv、minibody等が挙げられる。
【0054】
例えば、ポリクローナル抗体は、上記抗原(必要に応じて、ウシ血清アルブミン、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)等のキャリア蛋白質に架橋した複合体とすることもできる)を、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2~3週間おきに2~4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3~10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
【0055】
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法により作成することができる。例えば、マウスに上記抗原を市販のアジュバントと共に2~4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS-1, P3X63Ag8など)を細胞融合して該因子に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG法でも電圧パルス法であってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得することができる。
【0056】
本明細書中で挙げられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0057】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例等に何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0058】
実施例1:新規パエニバチルス属細菌の単離
一次スクリーニングでは、カニ殻を定期的に撒いている畑から土壌をサンプリングし、コロイダルキトサンを唯一の炭素源とする培地で集積培養を行うことにより、キトサン分解菌を濃縮した。
次いで、二次スクリーニングでは、コロイダルキトサンを含むことにより白濁した栄養寒天培地上に、一次スクリーニングで濃縮した培養液を塗沫することによりコロニーを形成させ、コロイダルキトサンの分解によりコロニー周辺に出現する透明なハローを指標にキトサン分解菌を純粋培養した。このようにして得られたキトサン分解菌は、コロイダルキチンプレート上でも同様にハローを形成した。
【0059】
実施例2:新規パエニバチルス属細菌の解析
2.1.表現形質の解析
実施例1により得られた細菌の表現形質の解析を行った。結果を以下に示す。
・細胞形態:
桿菌:(大きさ:0.5-0.6× 1.2-1.5 μm)
運動性:+(周鞭毛)
グラム染色:+
内生胞子:+
胞子の形:楕円
胞子の位置:末端
胞子嚢の膨らみ:膨らむ
・生理的性質:
カタラーゼ:+
デンプンの加水分解:+
グルコースからの酸の生成:+
・酸素に対する態度:通性嫌気性
・生育温度: 30-42℃で良好な生育
・至適pH :7.2(+:陽性)
【0060】
2.2.16S rDNAの塩基配列に基づく分子系統解析
本菌株の1000bp以上の16S rDNAの塩基配列を決定し、DNAデータベース(DDBJ)にアクセスして、FASTAプログラムを用いて、16S rDNA の塩基配列の相同性検索を行った結果、本菌株の16S rDNAは既知のPaenibacillus属細菌と90%以上の相同性を示したが、本属のいずれの既知種とも95%以下の相同性であった。また、DNAデータベースより入手したPaenibacillus属および好気性有胞子細菌の塩基配列を多重整列後、NJ法により分子系統解析を行った結果、本菌株の分子系統樹の位置はPaenibacillus属細菌で構成されるクラスター内にあったが、いずれの既知種とも異なる系統枝に位置していた。
【0061】
2.3.分類・同定の結果
本菌株の表現形質(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology, Vol. 2, Williams & Wilkins, Baltimore(1984)およびBergey's Manual of Determinative Bacteriology (9th ed.) , J. G. Holt, N. R. Krieg, P. H. A. Sneath, J. T. Staley, S. T. Williams(ed), Williams & Wilkins, Baltimore(1994)を参考)および系統分類学的解析から同定を行った結果、本菌株はPaenibacillus属の新種の細菌であると結論した。
本発明者らは、この新種の細菌をパエニバチルス・フクイネンシス(Paenibacillus fukuinensis)と命名した。
【0062】
2.4.多糖分解能および植物病原菌の増殖阻害
本発明の細菌の多糖分解能を測定した。その結果、本発明の細菌は、キチン(N-アセチルグルコサミン)、キトサン(グルコサミン)、セルロース(ブドウ糖)の分解能を有していた。また、本発明の細菌は、このような多糖の分解能を有するタンパク質が菌体外に分泌していた。
【0063】
2.5.植物病原菌の増殖阻害
次いで、本発明の細菌による植物病原菌の増殖阻害実験を行った。イチゴに植物病原菌(フザリウム)を感染させた後、本発明の細菌の培養液または培地(コントロール)をイチゴに噴霧した。その結果、本発明の細菌の培養液が噴霧されたイチゴは、室温で数日間放置してもフザリウムの増殖は殆ど認められなかったが、コントロールのイチゴではフザリウムが繁殖し、果汁が漏れ出していた。菌類の中には、キチン、キトサン、セルロースを細胞壁成分としている種類が存在することが知られている。本発明の細菌はこのような細胞壁成分を分解し得るため、植物病原菌(フザリウム)の増殖を阻害したと考えられる。
【0064】
実施例3:新規キチナーゼの単離
パエニバチルス・フクイネンシスをコロイダルキチンを含む栄養液体培地中で培養した。培養終了後、遠心分離により菌体と残っているコロイダルキトサンを除去し、培養上清中の酵素を硫酸アンモニウムの添加により沈殿濃縮した。得られた粗酵素をカラムクロマトグラフィーにより分離し、キチナーゼ活性を有する画分を分取した。結果を以下の表1に示す。
【0065】
【表1】
JP0004243266B2_000002t.gif

【0066】
実施例4:新規キチナーゼの解析
精製したキチナーゼ画分をSDS-PAGEにより確認したところ、70 kDaダルトン付近に2本、40 kDaに1本、合計3本のメジャーバンドを検出した(図1-左)。さらに、活性染色法(ザイモグラム)により各バンドのキチナーゼ活性を調べたところ、70 kDaダルトン付近に存在する2本のバンドに明確なキチナーゼ活性を検出した(図1-右)。
3本のバンドをプロテインシーケンサにより、そのN末端領域のアミノ酸配列を解析した。その結果、70 kDaダルトン付近に存在する2本のバンドは共にキチナーゼに類似したアミノ酸配列であり、40 kDaのバンドは推定のキチン吸着ドメインであることが予想された(図1-右)。
得られたN末端領域のアミノ酸配列からPCR用の合成プライマーを設計し、70 kDaダルトン付近に存在する2本のバンドに相当するキチナーゼ遺伝子をフクイネンシスからクローニングした。これらの遺伝子をヒスタグ融合タンパク発現用のベクターであるpQE30(キアゲン社)にサブクローニングし、大腸菌に形質転換した。大腸菌で発現させたフクイネンシス由来の2種類のキチナーゼ(Chitinase A(ChiA) およびChitinase B(ChiB))は、常法に従ってニッケルキレートカラムで精製し、以下の通りその酵素学的性質を調べた。
(1)至適温度の決定
基本アッセイ条件は、以下の通りである。
酵素量:精製酵素として約0.2unitsを用いた。なお、酵素量の測定は、反応時間を1分と11分行った以外は以下の測定法に従い、1分あたりの生成量から酵素量(units数)を求めた。
酵素反応液:1 mlの0.5%グリコールキチン、2mlのクエン酸緩衝液、1 mlの酵素液(0.2 Units):を混合し、計4 mlの溶液を調製した。
測定法:0.5%グルコールキチン1ml、0.2M-NaHPO4-0.1Mクエン酸緩衝液(pH 4.0)2 mlおよび酵素液を含む反応液4mlを、振とうしながら37℃で20分間反応させた。3分間沸騰させて反応を停止後、遠心分離した。試験管に上澄液1.5 mlをとり、上記のフェリシアン化カリウム溶液2 mlを加え、15分間沸騰させた。冷却後、420 nmの吸光度を測定し、N-アセチルグルコサミンを標準として生成還元糖を定量した。酵素単位は、毎分1μmolのN-アセチルグルコサミンに相当する還元等を生成する酵素量を1単位とした。
なお、本アッセイでは、至適温度の決定のため、上記基本アッセイ条件に記載した37℃ではなく20~80℃の所定の反応温度にて上記アッセイを行った。
結果を図3に示す。ChiAの至適温度は30℃であり、20-80℃の範囲で50%以上の相対活性を示した。一方、ChiBの至適温度は60℃であり、30-60℃の範囲で50%以上の相対活性を示し、反応温度が60℃を超えると相対活性は約40%にまで急激に減少した。これらの結果から、ChiAは低温域(30℃付近)で活性が高く、逆にChiBは高温域(50-60℃付近)で高い活性を示す酵素であることが明らかとなった。
(2)至適pHの決定
上記(1)に記載される基本アッセイ条件に従ってアッセイを行った。
なお、本アッセイでは、至適pHの決定のため、酵素を所定のpHに1時間放置後、上記アッセイを行った。
結果を図4に示す。ChiAはpH3-9の広い範囲で80%以上の相対活性を示した。このように広いpH範囲で高い活性を示すキチナーゼは極めて珍しいと考えられる。一方、ChiBの至適pHは7付近であり、pH6-8の範囲では90%以上の相対活性を示した。これらの結果から、ChiAはpH安定性の非常に高い酵素であり、ChiBは中性付近で活性を示す酵素であることが明らかとなった。なお、ChiAは、これまでのキチナーゼとは異なり非常に広いpH範囲にて活性を保持し得ることから、特定のpH範囲でのみ活性を示す種々の酵素と組合せて使用することが可能になるため極めて有用である。
(3)熱安定性
上記(1)に記載される基本アッセイ条件に従ってアッセイを行った。
なお、本アッセイでは、熱安定性の決定のため、酵素を20~80℃の所定の温度に1時間放置した後、上記アッセイを行った。
結果を図5に示す。ChiAは20-30℃の低温で安定であり、40-80℃の範囲では除去に相対活性が低下した。一方、ChiBは20-50℃までの熱処理で相対活性を90%以上保持しており安定であったが、60℃以上で急激に失活した。これらの結果から、ChiAは低温で安定であるが高温でも急激には失活しない比較的熱安定性の高い酵素であり、ChiBは60℃以上で急激に失活する熱安定性の低い酵素であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の細菌またはその変異株は、例えば、多糖または多糖含有物(例、越前ガニ等のズワイガニの殻)からのキチンオリゴ糖等のオリゴ糖の製造を可能とする。本発明の細菌またはその変異株はまた、微生物農薬、抗菌剤、多糖の分解剤として使用できる。本発明のキチナーゼは、例えば、多糖または多糖含有物からのキチンオリゴ糖の製造を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】フクイネンシスの培養上清から精製したキチナーゼ画分のSDS-PAGEと活性染色を示す図である。
【図2】キチナーゼA(ChiA)およびキチナーゼB(ChiB)のドメインを示す図である。
【図3】キチナーゼA(ChiA)およびキチナーゼB(ChiB)の活性と温度との関係を示す図である。
【図4】キチナーゼA(ChiA)およびキチナーゼB(ChiB)の活性とpHとの関係を示す図である。
【図5】キチナーゼA(ChiA)およびキチナーゼB(ChiB)の活性と熱安定性との関係を示す図である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図1】
4