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明細書 :高分子アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5474387号 (P5474387)
公開番号 特開2010-226773 (P2010-226773A)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
公開日 平成22年10月7日(2010.10.7)
発明の名称または考案の名称 高分子アクチュエータ
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
FI H02N 11/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2009-067822 (P2009-067822)
出願日 平成21年3月19日(2009.3.19)
審査請求日 平成24年2月22日(2012.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】庄司 英一
個別代理人の代理人 【識別番号】100087169、【弁理士】、【氏名又は名称】平崎 彦治
審査官 【審査官】尾家 英樹
参考文献・文献 特開2008-148452(JP,A)
特開平10-041053(JP,A)
特開2007-329334(JP,A)
調査した分野 H02N 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子化合物から成る電解質膜と、該高分子電解質膜の両面に形成される電極を有し、該電極間に電圧を印加することで上記高分子電解質膜を屈曲変形させることが出来る高分子アクチュエータにおいて、上記電極とし縦・横方向に複数の空隙を形成して伸縮性を備えたシートメタルを使用し、金属製帯材の長手方向にスリット穴8aとスリット穴8bを交互に打抜き加工し、上記スリット穴8aとスリット穴8bは金属製帯材の幅方向に1/2ピッチ横ズレし、そして、各スリット穴8a、8b・・を交互に有す金属製帯材の両端を引っ張ることで、スリット穴8aとスリット穴8bの繋ぎ部位9が変形して伸びることでシートメタルとし、該シートメタルを加熱圧縮して上記高分子電解質膜の両面に接合して一対の電極としたことを特徴とする高分子アクチュエータ。
【請求項2】
上記高分子化合物は、イオン伝導性高分子化合物である請求項1に記載の高分子アクチュエータ。
【請求項3】
上記高分子化合物は、非イオン性高分子化合物である請求項1に記載の高分子アクチュエータ。
【請求項4】
上記高分子化合物は、イオン性液体を含有している請求項1、請求項2、又は請求項3記載の高分子アクチュエータ。
【請求項5】
上記高分子電解質膜の厚みは、10μm以上5mm以下である請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4記載の高分子アクチュエータ。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物からなるフィルム(膜)と、当該フィルムの両面にシートメタルを接合した高分子アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、メカトロニクス系の分野では、2本足歩行ロボット等の次世代の自立歩行型ロボットや、癒しのロボット玩具等が注目を集めている。これらの分野では従来の電磁モータをベースとした制御方法が利用されているが、動きがぎこちなく、生物のようなスムーズな動きには未だ程遠いのが現状である。例えば、家電製品や工業製品におけるノイズがなく巧みでなめらかな動きが要求される部分、真のヒューマノイドロボット、汎用ロボット等を具体化するためには、生物の筋肉のように、駆動時にノイズや音が出ないスムーズな動きをする次世代型のアクチュエータの具体化が必要である。
【0003】
かかるアクチュエータとして、各種高分子材料からなり、電気的刺激によって電気化学的な伸縮または屈曲変形を生じる高分子アクチュエータが提案されている。高分子アクチュエータは従来の電磁モータに比べて、1)スムーズな駆動が可能である、2)駆動時にノイズや音がでない、3)超小型・軽量化が可能である、4)機械的な故障が少ない、5)大気、水、有機媒体中といった広範な駆動環境下で作動するという優れた特徴を有している。
【0004】
高分子アクチュエータとしては、イオン伝導性高分子化合物、電子伝導性高分子化合物、非イオン性のゲルやエラストマー等を用いた多様な方式の高分子アクチュエータが提案されているが、その中の一つとして、図6に示すような、屈曲変形を生じる高分子アクチュエータが報告されている。この種の高分子アクチュエータは、高分子化合物からなるフィルム(イ)と、当該フィルム(イ)の両面に形成されている電極(ロ)、(ロ)とを含み、前記電極(ロ)、(ロ)間に電圧を印加することによって、同図の(b)のようにフィルム(イ)が屈曲変形する。この高分子アクチュエータは、イオン性高分子化合物(イオン伝導性高分子化合物)を用いるものが主流であるが、非イオン性高分子化合物を用いるものも報告されている。
【0005】
イオン性高分子化合物を用いる例としては、例えば、イオン交換樹脂膜の両面に金属電極を備えたメタル-コンポジットポリマー(IPMC:ionic polymeric-metal composites)が開示されている(例えば、非特許文献1等参照。)。この高分子アクチュエータの駆動メカニズムは、例えば、カチオン交換のためのアニオン性のイオン交換樹脂膜では以下のように説明できる。電圧の印加により、膜内で自由に移動できるカチオンがカソード側に移動し、このイオンに伴われて、イオン交換樹脂に含まれる水分子もカソード側に移動するため、カソード側の浸透圧が上昇し、膜が膨張する。これに対し、イオン交換樹脂に固定されているアニオンは、対極のアノード側に引き寄せられにくいため、アノード側のカチオンの濃度が下がり、浸透圧が低下して膜が収縮する。カソード側の膨張と、アノード側の収縮により、結果としてフイルム(イ)が屈曲変形する。
【0006】
また、非イオン性高分子化合物を用いる例としては、酢酸ナトリウム等のイオン性物質を加えた非イオン性高分子化合物からなる高分子膜に電圧を印加することにより、高分子膜を屈曲変形させる方法が開示されている。
例えば、特開2000-216448号に係る「高分子膜アクチュエ—タの制御方法」は、両面に電極を有する高分子膜を電圧印加によって屈曲変形させるアクチュエータであって、前記高分子膜にイオン性物質を添加することにより屈曲変形の大きさ又は/及び方向を制御するようにしている。
【0007】
ところで従来の高分子化合物からなるフィルムの両面に電極を備えた高分子アクチュエータでは、電極として、白金または金等の貴金属がメッキされて使用されており、その製造工程が煩雑化すると共に、製造コストが高くなってしまう。そこで、出願人は短時間で製造出来てコストの安い高分子アクチュエータを開発し、特許出願を行っている。
【0008】
特開2007-329334号に係る「高分子アクチュエータ及びその製造方法」は、高分子化合物からなるフィルムと、当該フィルムの両面に形成されている電極とを含み、前記電極間に電圧を印加することによって、前記フィルムを屈曲変形させる高分子アクチュエータであり、前記電極として、高分子バインダと、その中に分散されているカーボン粉末とを含んでなる電極を用いている。

【特許文献1】特開2000-216448号に係る「高分子膜アクチュエ—タの制御方法」
【特許文献2】特開2007-329334号に係る「高分子アクチュエータ及びその製造方法」
【非特許文献1】M.Shahinpoor, Electrochimica Acta 48(2003)2343-2353
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように高分子アクチュエータは色々知られている。しかし、メッキ溶液に溶解する高分子電解質膜には電極の生成が困難であり、伸縮性に富む高分子電解質膜の表面に伸縮性に乏しい金属メッキ層がある構造では、膜が外部応力などの作用で大きく屈曲する場合に電極層が破壊したり、応力に対して電極層の導電性は低下することがある。又、メッキ層の厚みを増加させる為にメッキを繰返し行う必要があり、手間とコストが嵩むといった問題がある。又、電極として高分子バインダーとその中に分散するカーボン粉末を含んで構成する場合も、製作コストの低減には限りがある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、製造が極めて簡単でコストも安く、又高分子電解質膜の両面に形成される電極層が破壊することのない高分子アクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高分子アクチュエータは高分子化合物からなる電解質膜(電解質フイルム)とシートメタルで構成し、高分子電解質膜の両面にシートメタルを接合した構造と成っている。ここで、上記高分子化合物はイオン伝導性高分子化合物であっても、非イオン性高分子化合物であってもよい。
【0011】
そして、上記シートメタルは伸縮性を備え、その為に縦・横方向に空隙を形成している。すなわち、非常に薄くて網状のシートメタルを構成している。シートメタルは高分子電解質膜の両面に接合されるが、膜材と同じ高分子電解質の溶液をバインダーとして使用され、該高分子電解質膜面に高分子電解質溶液を塗布し、シートメタルを高分子電解質膜に載せて加熱圧縮することで接合される。
【0012】
ここで、シートメタルは伸縮性を備えるために空隙を縦・横方向に設けているが、電極として機能する為にその材質は電気伝導性の高いものが適しているが、具体的な構造並びにその製造方法に関しては限定しない。又、本発明の高分子アクチュエータでは、上記高分子化合物はイオン性液体を含有していることが好ましい。これは高分子アクチュエータがイオン性液体を含有していることにより、水分蒸発による高分子アクチュエータの機能の低下の問題を回避することができるため、大気中においても良好に使用することが可能となる。
【0013】
本発明に係る高分子アクチュエータでは、上記高分子電解質膜の厚みは10μm以上5mm以下であることが好ましい。上記電解質膜の厚みが、上記範囲内であることにより、成形時の形状安定性に優れるというさらなる効果を奏する。
【0014】
上記電極と成るシートメタルの厚みは限定しないが、1μm以上2mm以下であることが好ましい。上記電極の厚みを上記範囲内であることにより、十分な電気伝導性を有し、かつ、上記電解質膜と共に良好に屈曲変形する柔軟な電極として機能するというさらなる効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高分子アクチュエータは、電極としてシートメタルを使用し、高分子電解質膜の両面に接合することで簡単に製造することが出来る。すなわち、シートメタルは薄い金属板に縦・横方向に複数の穴を有して伸縮性を備え、そして所定のサイズに裁断したシートメタルを高分子電解質膜の両面に加熱圧縮して接合することで簡単に製造される。その結果、従来のメッキ層にて電極を形成する場合に比較して製造工数は大きく低下し、製造コストは安くなる。
【0016】
そして、電極と成るシートメタルはその厚さが薄いと共に複数の空隙を縦・横方向に設けている為に伸縮性に優れ、高分子電解質膜と共に大きく屈曲しても亀裂が生じたり、破損することはない。すなわち、屈曲に伴う伸縮に際しては、形成している空隙の大きさが変化することでメタル部分に応力が集中することはない。そして、金属質でバネ性を有すシートメタルを電極として高分子電解質膜の両面に接合することで、高分子アクチュエータの形状を何時までも維持することが出来る。すなわち、高分子アクチュエータの形状が何時までも崩れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る高分子アクチュエータの平面図と一部断面拡大図。
【図2】高分子アクチュエータの電極を構成するシートメタル。
【図3】シートメタルの製作する金属板。
【図4】シートメタルの空隙を示す拡大図。
【図5】時間に対する電圧と高分子アクチュエータの変位を表すグラフ。
【図6】従来の高分子アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る高分子アクチュエータを示す実施例であり、同図の(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面拡大図を示している。同図の1は高分子化合物から成るフイルムである高分子電解質膜、2はシートメタルで構成される電極を夫々表し、電極2a,2bは高分子電解質膜1の両面に接合した積層構造と成っている。
(1)電極
本発明にかかる高分子アクチュエータでは、上記電極2は薄いシートメタルで構成され、しかも伸縮自在な形態と成っている。そこで、該シートメタルには複数の空隙が設けられ、両先端を引っ張るならば空隙が拡大して延びることが出来る。そして、引っ張り力を除去するならば元に戻ることが出来るようにバネ性を備えることも出来る。

【0019】
図2は電極2となるシートメタル3を示す具体例である。該シートメタル3は複数の細い線材4a,4a・・・と複数の細い線材4b,4b・・・が互いにクロスして網目を形成している。互いに平行した各線材4a,4a・・・と各線材4b,4b・・・はクロス部5,5・・・にて互いに接続して、ひし形の空隙6,6・・・を縦方向と横方向に設けている。

【0020】
このように構成されたシートメタル3は、外力Pが作用するならば伸びることが出来、この場合、各クロス部5,5・・・が弾性変形して空隙6が拡大するが、比較的小さい力Pにて大きく伸びることが出来、力Pを除去するならば復元力が働くことで縮んで元の形状に戻る。従って、高分子アクチュエータの屈曲動に伴う曲げ変形には十分対応可能である。

【0021】
ところで、この網目状のシートメタル3は、一定厚さの平坦な金属板に細長いスリット穴8,8・・・を打抜き加工し、この金属板を両方向へ引き伸ばすことで図2に示す網目状のシートメタル3を製作することが出来る。図3は細長いスリット穴を加工した金属板7を示している。一定幅の金属製帯材を順次プレス打抜き加工して、スリット穴8,8・・を設けることが出来る。

【0022】
3本のスリット穴8a,8a・・がプレス打抜き加工されたところで金属製帯材はピッチaだけ送られる。そしてスリット穴8b,8b・・が打抜き加工される。スリット穴8aとスリット穴8bは金属製帯材の幅方向に1/2ピッチ横ズレし、ピッチaごとにスリット穴8a,8a・・とスリット穴8b,8b・・が交互に打抜き加工される。すなわち、金属製帯材を間欠的に送りながら順次加工し、一定長さにて切断して図3に示す金属板7が製作される。

【0023】
そして、各スリット穴8a、8b・・を交互に有す金属板7の両端を引っ張るならば、スリット穴8aとスリット穴8bの繋ぎ部位9が変形して伸び、シートメタル3となる。ところで、本発明は該シートメタル3の製作方法を限定するものではなく、金属製帯材にひし形の空隙6,6・・・を直接打抜き加工することもある。この場合、打抜き加工にて作られる線材4a,4a・・・、4b,4b・・・は非常に細いことから、精密打抜き(ファインブランキング加工)することが出来る。

【0024】
図4はシートメタル3に形成される空隙6の拡大図を示している。空隙6は厚さTで幅Wの細い4本の線材4a,4a,4b,4bが互いにクロスして形成され、該クロス部5,5・・が平坦でなく捩れ変形している。そして、形成されるひし形の空隙6は横軸がLW、縦軸がSWの寸法と成っている。

【0025】
ところで、このシートメタル3は高分子電解質膜1の両面に接合されて一対の電極2a,2bとなる。ここで、電極2a,2bが上記高分子電解質膜1の両面に形成されているとは、膜の両面に上記電極2a,2bが接合して固定されていればよい。そこで、高分子電解質膜1と同じ高分子電解質の溶液をバインダーとして用い、これを高分子電解質膜1の両面に薄く塗布し、上記シートメタルから成る電極2aを重ね合わせて加熱プレスを行う。同じく、反対面にもシートメタルで構成される電極2bを重ね合わせて加熱プレスすることで本発明の高分子アクチュエータが出来上がる。

【0026】
上記電極2a,2bの厚みは、高分子アクチュエータの屈曲変形を阻害しない限り特に限定されるものではないが、それぞれ、1μm以上2mm以下であることが好ましい。電極の厚みが1μm未満であれば、高分子アクチュエータの電極として電気伝導性の点で問題となる場合があるので好ましくない。また、電極の厚みが2mmより大きくなれば、高分子電解質膜1の屈曲変形に伴って曲がり難くなる場合があるため好ましくない。

【0027】
該シートメタル3を電極2として用いることで、導電性に優れている。電極2a,2bの電気抵抗値は1000Ω・cm以下であることが好ましく、100Ω・cm以下であることがより好ましいが、例えば、銅板を材料として使用することで電気抵抗は十分クリアする。そして、限りなく繰返しの屈曲運動に耐えることが出来る。勿論、本発明では電極2a,2bとなる具体的な金属を限定するものではなく、銅以外にも金、白金、鉄、ニッケル、チタン、ステンレス、アルミニウムなど導電性があれば使用可能である。
(2)高分子電解質膜
本発明に係る高分子アクチュエータにおいて高分子電解質膜1は高分子化合物からなるフィルムであり、この高分子電解質膜1の両面に形成されている電極2a,2b間に電圧を印加することによって高分子電解質膜1が屈曲変形することが出来る。そこで、上記高分子化合物は、イオン伝導性高分子化合物であってもよいし、非イオン性高分子化合物であってもよい。なお、イオン伝導性高分子化合物とは、電場下で電荷が移動して電流が流れるときに、電荷の担い手がイオンである高分子化合物をいい、イオン性高分子化合物と同義である。

【0028】
上記高分子化合物が例えばイオン伝導性高分子化合物である場合には、高分子アクチュエータの駆動メカニズムは、例えば、イオン伝導性高分子化合物がポリマーにアニオン性官能基が導入されたポリアニオンである場合を例に挙げて説明すると以下のように考えられる。電圧の印加により、フィルム内で自由に移動できるカチオンがカソード側に移動し、このカチオンに伴われて、フィルム内に含まれる水分子もカソード側に移動するため、カソード側の浸透圧が上昇し、膜が膨張する。これに対し、イオン伝導性高分子化合物に固定されているアニオンは、対極のアノード側に引き寄せられにくいため、アノード側のカチオンの濃度が下がり、浸透圧が低下して膜が収縮する。カソード側の膨張と、アノード側の収縮により、結果としてフィルムが屈曲変形する。なお、上記高分子化合物が、後述するイオン性液体を含有している場合は、移動種がイオン性液体を構成するイオンとなる。この場合、浸透圧の効果については不明であるが、高分子化合物からなる電解質膜は屈曲変形する。

【0029】
また、非イオン性高分子化合物を用いる場合は、そのメカニズムは不明であるが、酢酸ナトリウム等のイオン性物質を加えた非イオン性高分子化合物からなる高分子膜に電圧を印加することにより、高分子膜を屈曲変形させる方法が知られている。また、非イオン性高分子化合物が、後述するイオン性液体を含有している場合は、電圧を印加すると、イオン性液体を構成するアニオンはプラス極に、カチオンはマイナス極に引き寄せられる。イオン性液体を構成するアニオンとカチオンとはイオンの大きさが異なるので、イオンのサイズの違いからフィルムの極率に差が生じ、フィルムが屈曲変形すると考えられる。

【0030】
上記イオン伝導性高分子化合物としては、ポリカチオンを用いてもよいし、ポリアニオンを用いてもよい。ポリアニオンの例としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等の基本骨格を持った公知のポリマーにアニオン性官能基として、スルホン酸基(-SOH)、カルボキシル基(-COOH)、リン酸基等を導入したもの;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基などのアニオン性官能基を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー等を挙げることができる。中でも、上記ポリアニオンとしては、パーフルオロスルホン酸/PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)共重合体をより好適に用いることができる。ここで、パーフルオロスルホン酸/PTFE共重合体としては、市販されているものでもよく、例えば、フレミオンTM(旭硝子)、ナフィオンTM(デュポン社製)等を好適に用いることができる。

【0031】
また、ポリカチオンの例としても、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等の公知のポリマーにカチオン性官能基として、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したものを挙げることができる。

【0032】
上記イオン伝導性高分子化合物は、作動時、すなわち、電圧を印加して屈曲変形させる時点で、含水状態である必要がある。これにより、上記イオン伝導性高分子化合物からなる電解質膜1に電圧を印加したときに、移動するイオンに伴われて水分子が移動し、電解質膜1を屈曲変形させることが可能となる。なお、上記イオン伝導性高分子化合物に水を含ませる方法としては、例えば、上記イオン伝導性高分子化合物を水、好ましくはイオン交換水に含浸させればよい。また、同様に、後述するイオン性液体を用いる場合は、上記イオン伝導性高分子化合物は、作動時に、水に加えて、あるいは、水に代えてイオン性液体を含んでいる必要がある。

【0033】
また、上記イオン伝導性高分子化合物が、ポリアニオンである場合は、アニオン性官能基のカウンターカチオンを、Li、Na、K、アルキルアンモニウムイオン等に交換したものを用いることがより好ましい。また、上記イオン伝導性高分子化合物が、ポリカチオンである場合は、カチオン性官能基のカウンターアニオンを、F、Cl、Br、芳香族または脂肪族のスルホン酸類、芳香族または脂肪族のカルボン酸類、芳香族または脂肪族のリン酸類等に交換したものを用いることがより好ましい。これにより、高分子アクチュエータの屈曲度、屈曲速度を向上させることができるため好ましい。なお、上記イオン伝導性高分子化合物のカウンターイオンを交換する方法としては、例えば、上記イオン伝導性高分子化合物を、交換するイオンを含む塩の溶液中に含浸させればよい。ここで、溶液は、水溶液でもよいし、有機溶媒でもよいし、これらの混合溶媒でもよい。

【0034】
また、上記非イオン性高分子化合物としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの含フッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;熱可塑性のポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。

【0035】
上記非イオン性高分子化合物は、イオン性物質を含んでいる必要がある。これにより、上記非イオン性高分子化合物からなる電解質膜1に電圧を印加したときに、電解質膜1を屈曲変形させることが可能となる。なお、上記非イオン性高分子化合物にイオン性物質を含ませる方法としては、例えば、上記非イオン性高分子化合物をイオン性物質の溶液に含浸させればよい。ここで、溶液は、水溶液でもよいし、有機溶媒でもよいし、これらの混合溶媒でもよい。

【0036】
上記イオン性物質としては、例えば、フッ化リチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を挙げることができる。

【0037】
また、上記高分子化合物は、イオン性液体を含有しているものであってもよい。ここで、イオン性液体とは、アニオンとカチオンとからなり、常温で液体の有機化合物塩をいう。かかるイオン性液体は、有機化合物および無機化合物を溶解し、不揮発性で、高温でも安定である。それゆえ、水を含む従来の金属電極を有する高分子アクチュエータを大気中で使用する場合に電極表面から水の蒸発が起こり次第に屈曲変形が失われるという問題を解決し、大気中での高分子アクチュエータの安定性を向上させることができる。

【0038】
上記イオン性液体としては、特に限定されるものではなく、イオン性液体として従来公知のものを好適に用いることができる。かかるイオン性液体としては、例えば、CFSO、BF、PF、Cl、Br、I、NO、(CFSO、(CFSO、(CH)OSO、AlCl、ClO、RCOO、RSO、NHCHRCOO、SO2-等をカウンターアニオンに持つ、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン等を好適に用いることができる。

【0039】
上記イミダゾリウムカチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオン等を用いることができる。より具体的には、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウムイオン、1,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-へキシル-3メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-エチルイミダゾリウムイオン等を挙げることができる。

【0040】
また、上記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、N-メチルピリジニウムイオン、N-エチルピリジニウムイオン、N-プロピルピリジニウムイオン、N-ブチルピリジニウムイオン、1-エチル-2-メチルピリジニウムイオン、1-ブチル-2メチルピリジニウムイオン等を挙げることができる。

【0041】
また、上記テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルへキシルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム等を挙げることができる。

【0042】
上記イオン性液体としては、例えば、上記アニオンと上記カチオンとの任意の組み合わせを挙げることができる。また、上記イオン性液体は、2以上のイオン性液体を組み合わせて用いてもよい。

【0043】
上記イオン性液体としては、より具体的には例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルフォネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・クロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ブロマイド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・アイオダイド等を挙げることができる。

【0044】
また、上記イオン性液体は重合性のものであってもよい。かかる重合性のイオン性液体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アリルアルキルイミダゾリウム塩を好適に用いることができる。より具体的には例えば、1-アリル-3-エチルイミダゾリム・トリフルオロメタンスルフォネート、1-アリル-3-エチルイミダゾリム・テトラフルオロボレート、1-アリル-3-エチルイミダゾリム・ヘキサフルオロホスフェート、1-アリル-3-エチルイミダゾリム・クロライド、1-アリル-3-エチルイミダゾリム・ブロマイド、1-アリル-3-エチルイミダゾリム・アイオダイド、1-アリル-3-ブチルイミダゾリム・トリフルオロメタンスルフォネート、1-アリル-3-ブチルイミダゾリム・テトラフルオロボレート、1-アリル-3-ブチルイミダゾリム・ヘキサフルオロホスフェート、1-アリル-3-ブチルイミダゾリム・クロライド、1-アリル-3-ブチルイミダゾリム・ブロマイド、1-アリル-3-ブチルイミダゾリムイミダゾリム・アイオダイド、1,3-ジアリルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルフォネート、1,3-ジアリルイミダゾリウム・テトラフルオロボレート、1,3-ジアリルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスフェート、1,3-ジアリルイミダゾリウム・クロライド、1,3-ジアリルイミダゾリウム・ブロマイド、1,3-ジアリルイミダゾリウム・アイオダイド等を挙げることができる。

【0045】
上記高分子化合物が、イオン伝導性高分子化合物である場合は、上述したように、作動時に、含水状態である必要があるが、大気中での高分子アクチュエータの安定性の観点から、上記イオン伝導性高分子化合物は、作動時に水に加えて、あるいは、水に代えてイオン性液体を含んでいることが好ましい。また、上記高分子化合物が、非イオン性高分子化合物である場合は、上述したように、上記イオン性物質を含んでいる必要があるが、イオン性物質に加えて、あるいは、上記イオン性物質に代えてイオン性液体を含んでいることが好ましい。

【0046】
なお、上記イオン性液体を含む上記高分子化合物は、例えば、上記イオン性液体に含浸させるか、または、イオン性液体の溶液に上記高分子化合物からなるフィルムを含浸させた後、溶媒を除去することにより得ることができる。ここで、溶液は、水溶液でもよいし、有機溶媒でもよいし、これらの混合溶媒でもよい。

【0047】
また、上記高分子電解質膜1の厚みは、例えば、10μm以上、5mm以下であることが好ましく、100μm以上、5mm以下であることがより好ましく、100μm以上、2mm以下であることがさらに好ましい。上記高分子電解質膜1の厚みが、10μm以上であると成形性や寸法安定性の点で好ましい。また、上記フィルムの厚みが5mm以下であると、加工性や可撓性の点で好ましい。

【0048】
そして、上記高分子電解質膜1の形状としては、例えば、前記図1に示すように矩形平板状を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、円形、三角形、楕円形、棒状等の平板状であってもよいし、膜状であってもよいし、円筒状、螺旋状、コイル状等であってもよい。

【0049】
また、本発明にかかる高分子アクチュエータは、さらに、前記電極2a,2b間に電圧を印加する電源装置と、当該電圧を制御する制御装置とを備えて構成することもあり、制御装置により各電極2a,2bに印加する+と-の電圧を交互に変えることで、高分子アクチュエータの屈曲方向を変化させることが出来る。

【0050】
本発明の高分子アクチュエータは、上記電極2a,2b間に0.1~10V程度の低い電圧を印加すると、屈曲変形する。屈曲変形の方向、変位量、変位速度等は、上記高分子化合物からなるフィルムの種類、電極の組成、移動するイオン種等により変動する。また、通常、電位の極性(+と-)を反転させると電解質膜1は反対方向に屈曲変形する。

【0051】
図5は電極2a,2bに印加する電圧と高分子アクチュエータの変位を、時間との関係で示したグラフである。同グラフから明らかなように、電極2a,2bに印加する電圧は急激に立ち上がるが、これに対して高分子アクチュエータは波形を成して滑らかに立ち上がり、又電圧が低下するならば高分子アクチュエータは滑らかに降下する。ここで、高分子アクチュエータの変位とは屈曲に伴う先端の移動距離を表している。
【符号の説明】
【0052】
1 高分子電解質膜
2 電極
3 シートメタル
4 線材
5 クロス部
6 空隙
7 金属板
8 スリット穴
9 繋ぐ部位
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5