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明細書 :アレーアンテナのビーム形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3096733号 (P3096733)
公開番号 特開2000-082908 (P2000-082908A)
登録日 平成12年8月11日(2000.8.11)
発行日 平成12年10月10日(2000.10.10)
公開日 平成12年3月21日(2000.3.21)
発明の名称または考案の名称 アレーアンテナのビーム形成方法
国際特許分類 H01Q  3/26      
FI H01Q 3/26 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願平10-265786 (P1998-265786)
出願日 平成10年9月4日(1998.9.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1998年3月6日 社団法人電子情報通信学会発行の「1998年電子情報通信学会総合大会講演論文集通信1」に発表
審査請求日 平成10年9月4日(1998.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391027413
【氏名又は名称】郵政省通信総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】三浦 龍
【氏名】大堂 雅之
【氏名】小山 佳也
審査官 【審査官】赤穂 隆雄
参考文献・文献 特開 平9-199927(JP,A)
特開 平3-276903(JP,A)
特開 平9-246843(JP,A)
調査した分野 H01Q 3/26
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナに未知の方向から変調された希望通信信号が到来し、その希望通信信号がある時間毎に所定のビット数だけ受信側で既知の参照データ系列を伴っており、かつその受信タイミングは既知とし、
上記アレーアンテナからの受信信号を各アンテナ素子毎に共通の周波数及び共通ではあるが任意の固定位相を有する局部発振器によって同相および直交成分からなる複素ベースバンド信号に変換し、これを各アンテナ素子ごとに出力し、
受信と同じタイミングで既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号を受信側で発生させて、この複製信号を各アンテナ素子毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役に乗算し、その同相および直交成分をそれぞれ低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通して、これを複素重みとして各アンテナ素子ごとの受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算し、
その乗算結果をアンテナ素子数分だけ全て加算することにより、希望通信信号の到来方向に向けた合成出力信号をアレーアンテナの受信ビームとして形成するようにしたことを特徴とするアレーアンテナのビーム形成方法。

【請求項2】
受信側で用意した既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号と、各アンテナ素子毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役との乗算結果を低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通すことで得られる複素重みを、上記各アンテナ素子による受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算する際に、上記複素重みのエネルギーが予め定めた閾値以下であることを条件に、上記複素重みを強制的にゼロにすることにより、複数の非希望通信信号が希望通信信号とは異なる方向から同時に同じ周波数で到来する場合においても、上記非希望通信信号による干渉を抑圧できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のアレーアンテナのビーム形成方法。

【請求項3】
複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナに未知の方向から変調された希望通信信号が到来し、その希望通信信号がある時間毎に所定のビット数だけ受信側で既知の参照データ系列を伴っており、かつその受信タイミングは既知とし、
上記アレーアンテナからの受信信号を各アンテナ素子毎に共通の周波数及び共通ではあるが任意の固定位相を有する局部発振器によって同相および直交成分からなる複素ベースバンド信号に変換し、これら複数の複素ベースバンド信号を空間離散フーリエ変換により上記アレーアンテナからみて所定の複数の方向に指向した固定ビームによる受信複素ベースバンド信号に変換し、これを各固定ビーム毎に出力し、
受信と同じタイミングで既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号を受信側で発生させて、この複製信号を上記各固定ビーム毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役に乗算し、その同相および直交成分をそれぞれ低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通し、これを複素重みとして上記各固定ビームごとの受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算し、
その乗算結果を固定ビーム数分だけ全て加算することにより、希望通信信号の到来方向に向けた合成出力信号をアレーアンテナの受信ビームとして形成するようにしたことを特徴とするアレーアンテナのビーム形成方法。

【請求項4】
受信側で用意した既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号と、複数の方向に指向した各固定ビームによる受信複素ベースバンド信号毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役との乗算結果を低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通すことで得られる複素重みを、上記各固定ビームによる受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算する際に、上記複素重みのエネルギーが予め定めた閾値以下であることを条件に、上記複素重みを強制的にゼロにすることにより、複数の非希望通信信号が希望通信信号とは異なる方向から同時に同じ周波数で到来する場合においても、上記非希望通信信号による干渉を抑圧できるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のアレーアンテナのビーム形成方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、希望通信信号の到来方向に自動的に受信ビームを向けてこれを捕捉し、かつ追尾するとともに、非希望通信信号による干渉を軽減するアレーアンテナのビーム形成方法に関する。

【0002】

【従来の技術】従来より、様々な方向から様々な周波数で送信されている通信信号の中から希望通信信号のみを選択的に受信できることが望まれており、非希望通信信号を抑制して希望通信信号を良好に受信するための技術が種々提案されている。

【0003】
第1の従来技術として、“MMSE合成によるアダプティブアレーと空間ダイバーシチの等価性 -素子間隔と加入者容量に関する考察-,電子情報通信学会(技術研究報告 RCS97-249, p73-p80, 1998-02)”に記載されているように、各アンテナ素子の受信信号に乗算する重みにある初期値を設定し、その時の受信側で用意した既知の参照データ系列とアレーアンテナの合成出力信号との差を誤差信号とし、これが最小となるようにこの誤差信号をフィードバックし、各アンテナ素子による各受信信号とその誤差信号から、各アンテナ素子による各受信信号に乗算する重みの変化分を計算し、その変化分だけ重みを繰り返し更新し、希望通信信号を捕捉追尾するビームを形成するとともに非希望通信信号による干渉を抑圧する方法がある。

【0004】
上述した第1の従来技術においては、アレーアンテナの合成出力信号と希望通信信号のもつ既知の参照データ系列との平均2乗誤差を最小にするように重み制御が行われるため、最終的には希望通信信号の到来方向にビームの山が向けられ、且つ非希望通信信号の到来方向にはビームの谷が向けられるようになることから、希望通信信号の受信に最適なビーム形成が実現でき、しかも演算は比較的簡単であるという特徴をもっている。

【0005】
また、第2の従来例として、“SMI法に基づくアダプティブアレーを用いた高速ディジタル陸上移動通信の多重波抑圧,電子情報通信学会(論文誌 B-II, Vol. J75-B-II, No. 11, p806-p814, 1992-11)”に記載されているように、各アンテナ素子の受信信号から求まる共分散行列を時間を追う毎に逐次更新しながら計算し、これと各アンテナ素子の受信信号、並びに受信側で用意した既知の参照データ系列とから、上記各アンテナ素子の受信信号に乗算する重みを求め、希望通信信号を捕捉追尾するビームを形成するとともに非希望通信信号による干渉を抑圧する方法がある。

【0006】
上述した第2の従来技術においては、フィードバック制御を全く行わずに、アレーアンテナの合成出力信号と希望通信信号のもつ既知の参照データ系列との平均2乗誤差を最小にするような重みを求めることができ、その結果、希望通信信号の到来方向にビームの山が向けられ、且つ非希望通信信号の到来方向にはビームの谷が向けられることとなり、希望通信信号の受信に最適なビーム形成が高速に実現できるという特徴をもっている。

【0007】
また、第3の従来例として、“DBFによる移動体衛星通信用セルフビームステアリングアレーアンテナの構成法,電子情報通信学会(論文誌 B-II, Vol. J79-B-II, No. 8, p448-458, 1996-08)”並びに“車載DBFセルフビームステアリングアレーアンテナによる衛星電波の追尾受信実験,電子情報通信学会(論文誌B-II, Vol. J80-B-II, No. 7, p547-p557, 1997-07)”に記載されているように、参照データ系列を用いずに、各アンテナ素子のうちある特定の、または最も受信電力の強いアンテナ素子による受信信号、あるいは所定の方向を向いた複数の固定ビームのうち最も受信電力の強いビームによる受信信号を参照データ系列の代わりに用いて、各アンテナ素子あるいは各固定ビームによる受信信号に乗算する重みを求め、希望通信信号を捕捉追尾するビームを形成する方法がある。

【0008】
上述した第3の従来技術においても、やはりフィードバック制御を全く行わずに希望通信信号の到来方向にビームの山を向けることができ、しかも通信信号の中に既知の参照データ系列をもつ必要がないという特徴をもっている。

【0009】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第1の従来技術には、重みの制御がフィードバック制御により行われているために、応答の高速性と安定性あるいは演算の複雑さとの両立が難しいという欠点があった。また、アレーアンテナのアンテナ素子数が多い場合や到来する非希望通信信号が多い場合には、制御対象となる重みの数が増え、応答の高速性と安定性が損なわれる可能性が高まるという問題点もあった。

【0010】
また、第2の従来技術では、アレーアンテナの各アンテナ素子による受信信号のサンプル値で構成される共分散行列の逆行列を逐次計算する必要があるため、複雑な演算に対する高い処理能力が要求され、その上、アンテナ素子数が増すと指数的にその複雑さが増すという問題点があった。

【0011】
しかも、第1の従来技術および第2の従来技術とも、主に、非希望信号の到来方向に深いビームの谷を向けることで、参照データ系列とアレーアンテナの受信信号との平均二乗誤差の最小化を実現しており、希望信号の到来方向には一応ビームの山を向けようとする傾向はあるが、必ずしもアンテナの素子数で決まる最大利得が向けられるとは限らないと言う問題点があった。これは、特に受信できる電力が弱く、ある値以上の利得がアンテナにないと通信回線自体が成立しない場合などでは問題となる。

【0012】
さらに、第1の従来技術および第2の従来技術ともに、受信で求められた重みを用いて受信とは異なる周波数の送信ビームを希望通信信号の到来方向に形成する場合、受信で求められる重みに対して周波数変換を施しても、非希望通信信号が壁などによる反射波である場合などでは、周波数の違いにより伝搬経路並びに到来方向が異なるケースもあり、非希望通信信号の送信源にアレーアンテナによる送信ビームの谷が向かずに山が向いてしまう可能性があるという問題点があった。

【0013】
また、第3の従来技術では、非希望通信信号が同時に到来する場合、その方向にも小さなビームの山が向いて干渉を受けることとなる。すなわち、この方式では、アレーアンテナで受信した信号が希望通信信号か非希望通信信号かを区別できないため、最も強い到来信号を希望通信信号と想定して、その方向にビームの山を向けるよう動作することとなり、非希望通信信号の電力が希望通信信号の電力より強い場合には、非希望通信信号を希望通信信号とみなしてしまい、そちらにビームの山を向けてしまうという問題点があった。

【0014】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するべく成されたもので、請求項1に係るアレーアンテナのビーム形成方法は、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナに未知の方向から変調された希望通信信号が到来し、その希望通信信号がある時間毎に所定のビット数だけ受信側で既知の参照データ系列を伴っており、かつその受信タイミングは既知とし、上記アレーアンテナからの受信信号を各アンテナ素子毎に共通の周波数及び共通ではあるが任意の固定位相を有する局部発振器によって同相および直交成分からなる複素ベースバンド信号に変換し、これを各アンテナ素子ごとに出力し、受信と同じタイミングで既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号を受信側で発生させて、この複製信号を各アンテナ素子毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役に乗算し、その同相および直交成分をそれぞれ低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通して、これを複素重みとして各アンテナ素子ごとの受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算し、その乗算結果をアンテナ素子数分だけ全て加算することにより、希望通信信号の到来方向に向けた合成出力信号をアレーアンテナの受信ビームとして形成するようにしたものである。

【0015】
また、請求項2に係るアレーアンテナのビーム形成方法は、請求項1において、受信側で用意した既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号と、各アンテナ素子毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役との乗算結果を低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通すことで得られる複素重みを、上記各アンテナ素子による受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算する際に、上記複素重みのエネルギーが予め定めた閾値以下であることを条件に、上記複素重みを強制的にゼロにすることにより、複数の非希望通信信号が希望通信信号とは異なる方向から同時に同じ周波数で到来する場合においても、上記非希望通信信号による干渉を抑圧できるようにしたものである。

【0016】
また、請求項3に係るアレーアンテナのビーム形成方法は、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナに未知の方向から変調された希望通信信号が到来し、その希望通信信号がある時間毎に所定のビット数だけ受信側で既知の参照データ系列を伴っており、かつその受信タイミングは既知とし、上記アレーアンテナからの受信信号を各アンテナ素子毎に共通の周波数及び共通ではあるが任意の固定位相を有する局部発振器によって同相および直交成分からなる複素ベースバンド信号に変換し、これら複数の複素ベースバンド信号を空間離散フーリエ変換により上記アレーアンテナからみて所定の複数の方向に指向した固定ビームによる受信複素ベースバンド信号に変換し、これを各固定ビーム毎に出力し、受信と同じタイミングで既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号を受信側で発生させて、この複製信号を上記各固定ビーム毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役に乗算し、その同相および直交成分をそれぞれ低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通し、これを複素重みとして上記各固定ビームごとの受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算し、その乗算結果を固定ビーム数分だけ全て加算することにより、希望通信信号の到来方向に向けた合成出力信号をアレーアンテナの受信ビームとして形成するようにしたものである。

【0017】
また、請求項4に係るアレーアンテナのビーム形成方法は、請求項3において、受信側で用意した既知の参照データ系列を複素ベースバンド信号に変換した複製信号と、複数の方向に指向した各固定ビームによる受信複素ベースバンド信号毎の受信複素ベースバンド信号の複素共役との乗算結果を低域通過フィルタもしくは帯域通過フィルタに通すことで得られる複素重みを、上記各固定ビームによる受信複素ベースバンド信号にそれぞれ乗算する際に、上記複素重みのエネルギーが予め定めた閾値以下であることを条件に、上記複素重みを強制的にゼロにすることにより、複数の非希望通信信号が希望通信信号とは異なる方向から同時に同じ周波数で到来する場合においても、上記非希望通信信号による干渉を抑圧できるようにしたものである。

【0018】

【発明の実施の形態】次に、添付図面に基づいて、本発明に係るアレーアンテナのビーム形成方法を具現化し得る受信機構の実施形態を添付図面に基づいて説明する。

【0019】
図1に示す第1実施形態は、アンテナ素子出力によりビーム形成を行う受信機構1の概略を示す機能ブロック図である。

【0020】
この受信機構1は、アレーアンテナ2(m素子のアンテナ21 ,22 ,…2mよりなる)と、各アンテナ素子21 ~2m からの受信信号を受ける前処理部31,32 ,…,3m と、各前処理部(FE)31 ~3m で前処理された信号に対して各アンテナ素子21 ~2m に応じた励振振幅分布を設定するレベル調整部41,42 ,…,4m と、各レベル調整部41 ~4m からの信号レベルが予め設定した閾値以上に該当する信号のみを選択的に通過させる電力選択部5と、該電力選択部5からの信号を受けるビーム形成装置6と、該ビーム形成装置6に既知の参照データ系列の複製信号を供給する参照データ系列発生器(SQG)7とからなる。

【0021】
本第1実施形態では、m素子のアレーアンテナ2に互いに異なる方向の異なる信号源から希望通信信号Si を含むn本の同一周波数の通信信号S1 ~Sn が同時に到来する場合、アンテナ素子出力信号に対してそのまま参照データ系列の複製を演算することにより、到来信号S1 ~Sn の中から非希望通信信号の干渉をできるだけ抑圧しつつ希望通信信号Si の到来方向だけにビームを向け、Si だけを分離受信してアレー合成出力として得るものである。なお各アンテナ素子21 ~2m の指向性は、全ての到来信号方向を含む広いビーム幅をもつ場合を想定する。

【0022】
以下、本実施形態の動作原理を説明する。

【0023】
各アンテナ素子に21 ~2m よる受信信号は、増幅器,周波数変換部,A/Dコンバータ,準同期検波部等からなる前処理部31 ~3m を通り、A/Dコンバータがもつサンプル周期でビーム形成装置6に入力される。ビーム形成装置6への各入力信号は、準同期検波部における局部発振信号の位相からみて同相成分と直交成分からなる複素ベースバンド信号であり、n番目のアンテナ素子からの入力信号を時間tの関数としてbn(t)(n=1,2,…,m)とおく。

【0024】
一方、希望受信信号Si に含まれる既知の参照データ系列の複製ri(t)を同じく複素ベースバンド信号として参照データ系列発生器7において受信と同じタイミングで発生し、ビーム形成装置6に入力する。

【0025】
ビーム形成装置6では、各アンテナ素子21 ~2m からの各入力信号bn(t)の複素共役bn*(t) と参照データ系列の複製ri(t)をそれぞれ乗算し、その結果を各々低域通過フィルタ(LPF)6a1 ~6am に通してアレー合成のための重みwn(t)を得る。なお、低域通過フィルタに代えて帯域通過フィルタを用いても良い。

【0026】
このWn(t)は、次式で表される。

【0027】

【数1】
JP0003096733B2_000002t.gif【0028】上式において、「 ̄」は、低域通過フィルタ6a1 ~6am による平均化を意味する。また、「 ̄」の中身は、|bn(t)|に比例した振幅成分と、bn(t)とri(t)の位相差を位相成分としてもち、データ変調に伴う位相変動成分はキャンセルされており、最大比合成を行うための重みとなっている。この演算は、実際の信号処理回路では次のような同相成分Iと直交成分Qの積和演算と低域通過フィルタリングのみで実現することができ、演算は極めてシンプルである。

【0029】

【数2】
JP0003096733B2_000003t.gif【0030】このwn(t)を各アンテナ素子21 ~2m からの入力bn(t)に乗算し、n=1,2,…,mで加算することにより、希望通信信号Si に対する利得を最大とするビームが形成され、他の非希望通信信号の到来方向に対する利得はそれより低くなる。この時、アレー合成出力信号は、次式となる。

【0031】

【数3】
JP0003096733B2_000004t.gif【0032】この第1実施形態に係る受信機構1では、各重み乗算部6b1 ~6bm の前に重み制御部6c1 ~6cm を備え、通信信号中の参照データ系列以外の部分については重みの更新を固定するため、参照データタイミングによって重みの更新あるいは停止を行う制御を各重みに対して行っている。また、低域通過フィルタ6a1 ~6am による処理遅延を補償し、入力信号bn(t)と重みwn(t)のタイミングを合わせるための遅延バッファ6d1 ~6dm を備えている。

【0033】
なお、本実施形態では、希望通信信号に対するビームのサイドローブレベルを低減するため、アンテナ素子数が多い場合には、各アンテナ素子21 ~2m ごとに適当な励振振幅分布を設定するためのレベル調整部41 ~4m を備えるものとして、非希望通信信号に対する利得を効果的に下げ、これによる干渉を軽減できるようにしてある。

【0034】
また、本実施形態のビーム形成装置6では、アンテナ素子21 ~2m の指向性が狭く、かつ各々のアンテナ素子21 ~2m が別々の方向を互いに重なりあいながら指向することで想定される全ての信号到来方向をカバーしている場合、すなわちセクタアンテナなどを想定して、相関選択部6eを備えるものとし、非希望通信信号による干渉を更に抑圧できるようにしてある。この相関選択部6eでは、上記の式1で得られた重みのエネルギー|wn(t)|2 を計算し、ある適当なしきい値以下となる場合のみ、重みを強制的にゼロに設定するのである。これにより、参照データ系列との相関が低い信号の到来方向を向いたアンテナ素子21 ~2m からの入力信号は合成されず、非希望通信信号からの干渉をより抑圧することができる。加えて、この相関選択部6eの機能により、希望通信信号に無関係な方向のビームは、早い時間で切り捨てられるため、全ての重みを選択する場合に比べ、希望通信信号の初期捕捉を早めることができる。

【0035】
なお、全ての方向から到来信号が来るとは限らないため、セクタアンテナの場合には、アンテナ素子出力にあるしきい値を設け、そのしきい値以上の信号のみを選択し、選択された信号のみで以降のビーム形成演算を行う構成とすることが望ましい場合に備え、本実施形態では、電力選択部5を設けたのである。これにより、不要な演算が省略でき、信号処理回路の規模並びに処理時間を節約することができる場合がある。

【0036】
図2に示す第2実施形態は、固定マルチビーム出力によるビーム形成を行う受信機構1′の概略を示す機能ブロック図である。

【0037】
この受信機構1′の機能で、上記第1実施形態で示した受信機構1と共通の機能には、同一符号を付して説明を省略する。しかして、この受信機構1′は、レベル調整部41 ~4m と電力選択部5との間にマルチビーム形成部(MBF)8を介在させたことに特徴がある。

【0038】
この第2実施形態では、m素子のアレーアンテナ21 ~2m に互いに異なる方向の異なる信号源から希望通信信号Si を含むn本の同一周波数の通信信号S1~Sn が同時に到来する場合、アンテナ素子出力信号に空間軸上で離散フーリエ変換を施すことにより、一旦、所定の複数の方向を指向した固定のマルチビームを形成し、その出力に対して参照データ系列を演算することにより、到来信号S1 ~Sn の中から非希望通信信号の干渉をできるだけ抑圧しつつ希望通信信号Si の到来方向だけにビームを向け、Si だけを分離受信してアレー合成出力として得る構成となっている。各アンテナ素子21 ~2m の指向性は、全ての到来信号方向を含む広いビーム幅をもつ場合を想定する。

【0039】
以下、本第2実施形態の動作原理を説明する。

【0040】
受信機構1′においても、上記第1実施形態と同様、各アンテナ素子21 ~2m による受信信号は、増幅器,周波数変換器,A/Dコンバータ,準同期検波部等からなる前処理部31 ~3m を通り、A/Dコンバータがもつサンプル周期でビーム形成装置6に入力される。これらの入力信号は、準同期検波部における局部発振信号の位相からみて同相成分と直交成分からなる複素ベースパンド信号であり、k番目のアンテナ素子からの入力信号を時間tの関数としてxk(t) (k=1,2,…,m)とおく。このとき、空間軸上の離散フーリエ変換は、次式で表される。

【0041】

【数4】
JP0003096733B2_000005t.gif【0042】なお、上記式4において、ωはフーリエ変換の回転子であり、下式を満たす。

【0043】

【数5】
JP0003096733B2_000006t.gif【0044】上記式4は、m素子のアンテナから互いに直交するm通りの方向を指向する固定のマルチビームを形成し、その出力がbn(t)であることを示しており、図2の中のマルチビーム形成部8でその処理を行う。マルチビーム形成部8からの出力信号のうち、到来信号方向の固定ビーム出力は、各アンテナ素子21 ~2m による受信信号の信号対雑音電力比(SNR)が低い場合でも、アレーアンテナの利得に近い分だけSNRが高まるため、以降の重み計算の精度を高めることができる。

【0045】
次に、系列の複製ri(t)を用いて上記式1(或いは式2)及び式3による演算を行うことで、希望通信信号Si に対する利得を最大とし、他の非希望通信信号の到来方向に対する利得はそれより低くなるようなビームが形成され、Si のみを分離受信したアレー合成出力信号が得られる。

【0046】
なお、本第2実施形態では、各アンテナ素子21 ~2m のもつビーム幅は広くてもマルチビーム形成部8で形成されるビームの幅は狭いため、アンテナ素子にセクタアンテナを用いた第1実施形態と同様に、相関選択部6eを備えることとしてもよく、その場合、非希望通信信号による干渉をさらに抑圧し、また希望通信信号の初期捕捉を早めることができる。

【0047】
また、本第2実施形態でも、アンテナ素子がセクタアンテナである第1実施形態の場合と同様、全ての方向から到来信号が来るとは限らないため、マルチビーム形成部8の出力にあるしきい値を設け、電力選択部5によりそのしきい値以上となった出力のみを選択的にビーム形成装置6へ入力するものとし、選択された信号のみで以降のビーム形成演算を行う構成としてある。これにより、不要な演算が省略でき、信号処理回路規模並びに処理時間を節約することが可能となる場合がある。

【0048】
さらに、本第2実施形態でも、第1の実施形態でアンテナ素子に広い指向性のアンテナを用いた場合と同様、希望通信信号に対するビームのサイドローブを低下させるため、アンテナ素子数が多い場合には、各アンテナ素子21 ~2m ごとにレベル調整部41 ~4m を備え、適当な励振振幅分布を与える構成としてあり、このレベル調整部41 ~4m と上記相関選択部6eを組み合わせることにより、非希望波到来方向の利得を自由に制御して、これによる干渉を確実に抑圧することができる。

【0049】
図3に示す第3実施形態は、複数の到来信号への同時捕捉追尾による空間分割多元接続方式で固定マルチビーム出力によるビーム形成を行う受信機構1″の概略を示す機能ブロック図である。

【0050】
この受信機構1″の機能で、上記第1,第2実施形態で示した受信機構1,1′と共通の機能には、同一符号を付して説明を省略する。しかして、この受信機構1″は、電力選択部5の後段にn′個の分配器(DIV)91 ~9n'と、チャネル変換部10と、第1ビーム形成装置61 ~第n′ビーム形成装置6n'よりなるn′個のビーム形成装置を設けたことに特徴がある。

【0051】
すなわち、この第3実施形態では、第1,第2実施形態におけるビーム形成装置6を複数(n′個)備え、互いに異なる方向に位置する異なる通信相手局から同一周波数で送信される複数の通信信号に同時に複数のビームを向け、それぞれ分離受信して別々のアレー合成出力として得る構成となっている。

【0052】
本受信機構1″においては、希望通信信号をS1 とする第1ビーム形成装置61 、希望通信信号をS2 とする第2ビーム形成装置62 、…希望通信信号をSn'とする第n′ビーム形成装置6n'というように、n′個のビーム形成装置を備え、各アンテナ素子21 ~2m で受信された信号が、分配器91 ~9n'で各ビーム形成装置にそれぞれ分配される。各ビーム形成装置61 ~6n'においては、それぞれ別々の参照データ系列の複製を生成し、それぞれ別々の希望通信信号を捕捉する。ただし、分配器91 ~9n'はディジタル信号で行うため、分配による電力の減少はない。

【0053】
また、アレーアンテナ2の同一ビーム幅内に相当する近接した方向から到来する複数の通信信号に対しては、ビームによる空間分離ができないため、周波数分割多元接続を併用している場合、別途制御チャネルを使うなどの手段により各ビーム形成装置61 ~6n'に別チャネルを割り当て、対応したチャネル変換部10によりチャネル変換を行って、周波数で分離された別々のビームをそれぞれの近接到来信号方向に形成する。

【0054】
従って、本第3実施形態によれば、受信側が備えるビーム形成装置6の数(n′個)だけ、異なる方向から同一周波数で到来する通信信号を互いに分離しながら受信することができる。また、近接した方向から到来する複数の通信信号に対しては、利用可能なチャネルの数だけ互いに分離しながら受信することができる。このため、単にチャネルだけで通信信号を分離受信する場合に比べ、空間分離を行っていることにより、通信容量を大幅に増大することができ、また常にアレーアンテナ2の受信ビームの山が通信相手局方向に向けられるため、相手局の送信電力を節約することができる。さらに、本実施形態における受信機構1″は、フィードバックループを含まず、簡単な演算処理だけで実現できるため、回路規模が節約できるとともに、高速かつ安定な動作が期待でき、多くのアンテナ素子を備えるアレーアンテナや高速な伝送速度をもつ固定あるいは移動通信システムに適している。

【0055】
なお、上記したチャネルは、周波数のほか、時分割多元接続におけるタイムスロット、符号分割多元接続における拡散符号などに置き換えることもできる。

【0056】
以下に、第3実施形態の動作を計算機シミュレーション結果を参照して説明する。シミュレーションは、半波長間隔で16個のアンテナ素子を直線上に並べた直線アレーにより、3つの異なる方向から同一周波数,同一レベル,同一変調方式の通信信号が到来する場合を想定した。変調方式は4相位相シフトキーイング(QPSK)、参照データ系列は10シンボルの疑似ランダム雑音(PN)符号、A/Dコンバータによるサンプリングは1シンボル16サンプルとした。また、基本特性の明確化のため、受信信号の信号電力対雑音電力比(CNR)はアンテナ1素子当たり30dBとした。各アンテナ素子は無指向性とし、マルチビーム形成部(MBF)を備えるものとした。

【0057】
図4は、3つのビーム形成装置(第1~第3ビーム形成装置61 ~63 )を用いて、3つの到来信号に対してそれぞれビーム形成を行った場合の3つのビームパターンを示している。ただし、励振振幅分布は一様分布とし、MBF出力の電力選択及び相関選択は行わないものとした。本図から、それぞれの到来信号方向に、別々のビームの山が自動的に向けられるとともに、非希望通信信号の到来方向の利得は低くなり、3つの到来信号が分離受信されていることがわかる。ただし、非希望通信信号の方向にも-11dB~-16dB程度の小さなビームの山がそれぞれできており、非希望通信信号の干渉をわずかに受けていることがわかる。

【0058】
図5は、チェビシェフ指向性パターンと呼ばれる低サイドローブパターンが得られるようにレベル調整部において励振振幅分布を設定するとともに、MBF出力の相関選択を行った場合の3つのビームパターンを示している。それぞれ、希望通信信号方向のビームはほとんど変わらずに非希望通信信号方向の利得が-30dB以下に大きく減少し、これによる干渉が抑圧されていることがわかる。

【0059】
図6は、レベル調整部41 ~4m における励振振幅分布設定をサイドローブレベル設定値によって変えた場合の、3波到来時にS1 到来方向に向けられたビームパターンを示している。S1 方向の利得をほとんど変化させずに、非希望通信信号であるS2 及びS3 方向の利得を効果的に低減できることがわかる。

【0060】

【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係るアレーアンテナのビーム形成方法においては、以下のような効果を奏し得る。

【0061】
(1) 同一周波数で同一変調方式の通信信号が複数同時にアレーアンテナに到来する場合においても、希望通信信号と非希望通信信号の到来方向が識別不可能なほどに接近していなければ、希望通信信号の到来方向にのみビームの山を自動的に向けるとともにこれを追尾し、同時に非希望通信信号の到来方向の利得を自動的に低減させ、非希望通信信号による干渉を軽減しつつ希望通信信号を空間的に分離受信することが可能となる。

【0062】
(2) 複数の異なる通信信号が異なる方向から同一周波数で到来する場合、これらの到来方向に別々のビームを形成し、これらを互いに空間的に分離してそれぞれ受信することができ、到来信号の空間分離を行っているため、チャネル分離のみを行うシステムに比べて、大幅な通信容量の増大を図ることができる。

【0063】
(3) ビーム形成のための演算は、フィードバックループを含まず、簡単な演算処理のみで実現できるため、動作は高速かつ安定であり、演算処理回路の規模も節約可能となり、多くのアンテナ素子を有するアレーアンテナや高速伝送システムのためのビーム形成方法に好適である。

【0064】
また、上記請求項1の従属項である請求項2に係るアレーアンテナのビーム形成方法においては、更に以下の効果を奏し得る。

【0065】
(4) 各アンテナ素子がセクタアンテナである場合には、アンテナ素子出力の相関選択を行うことにより、非希望通信信号到来方向の利得をさらに抑圧することができ、かつ不要な出力が早い段階で切り捨てられるため、初期捕捉を早めることができる。

【0066】
(5) 各アンテナ素子が広い指向性をもつ場合であっても、マルチビーム形成部出力の相関選択を行うことにより、非希望通信信号到来方向の利得を大きく抑圧することができ、かつ不要な出力が早い段階で切り捨てられるため、初期捕捉を早めることができる。

【0067】
(6) マルチビーム形成部を備える場合には、マルチビーム形成部出力の相関選択とレベル調整部による励振振幅分布設定の組合せにより、非希望通信信号到来方向の利得をより一層抑圧することができ、かつこれを自由に制御することができる。

【0068】
さらに、請求項3に係るアレーアンテナのビーム形成方法においては、上記請求項1により奏し得る(1)~(3)の効果に加えて、アンテナ素子による受信信号の信号対雑音電力比(SNR)が低い場合でも、マルチビーム形成部の出力信号のうち到来信号方向の固定ビーム出力は、アレーアンテナの利得に近い分だけSNRが高まるため、以降の重み計算の精度を高めることができるという効果もある。

【0069】
また、請求項3の従属請求項である請求項4にアレーアンテナのビーム形成方法においては、更に、上記(4)~(6)の効果を奏する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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