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明細書 :多孔質複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4450928号 (P4450928)
公開番号 特開2001-247970 (P2001-247970A)
登録日 平成22年2月5日(2010.2.5)
発行日 平成22年4月14日(2010.4.14)
公開日 平成13年9月14日(2001.9.14)
発明の名称または考案の名称 多孔質複合材料の製造方法
国際特許分類 C23C  16/44        (2006.01)
C04B  41/85        (2006.01)
FI C23C 16/44 B
C04B 41/85 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2000-060863 (P2000-060863)
出願日 平成12年3月6日(2000.3.6)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173522
【氏名又は名称】財団法人ファインセラミックスセンター
発明者または考案者 【氏名】武田 保敏
【氏名】柴田 典義
個別代理人の代理人 【識別番号】100064344、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 英彦
【識別番号】100106725、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 敏行
【識別番号】100105120、【弁理士】、【氏名又は名称】岩田 哲幸
【識別番号】100105728、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 敦子
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開平05-024956(JP,A)
特開平10-114586(JP,A)
調査した分野 C23C 16/00-16/56
C04B 41/85
特許請求の範囲 【請求項1】
多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する方法であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とが区画された状態で、前記気体原料を前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させる工程と前記気体原料を前記他方側から前記一方側へ強制的に通過させる工程とによって、前記空隙及び/又は孔部の内部に気体原料を供給する、方法。
【請求項2】
前記気体原料は2種以上であり、第1の気体原料を供給する工程と、第2の気体原料を供給する工程とを備え、これらの工程間には、第1の気体原料の供給側の区画から第1の気体原料を排出する工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する装置であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画されるキャビティを有し、前記気体原料が前記キャビティの前記一方側から前記他方側へ強制的に通過可能に形成されるとともに、前記他方側から前記一方側へ強制的に通過可能に形成される、装置。
【請求項4】
前記一方側と前記他方側とを連通する気体原料通路が、前記多孔質材料における通過抵抗が高まった際にのみ開口部によって前記気体原料を通過させるように開閉可能に形成される、請求項3に記載の装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、空隙及び/又は孔部を有する多孔質材料に関し、詳しくは、空隙及び/又は孔部内部がセラミックスで充てん及び/又は被覆されている多孔質材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆる無機質固体材料や金属等をマトリックスとして、空隙及び/又は孔部を有する多孔質材料の空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスを付与し、セラミックスで充てんあるいはセラミックスコーティングをすることが行われている。空隙等へのセラミックスの供給は、化学気相法(CVD法)を応用した化学気相浸透法(CVI法)が用いられている。CVI法は、セラミックスを生成する気体原料を空隙等に導入して、空隙等の内部において気体原料を熱等により反応させて空隙等の内表面にセラミックスを生成させ、析出させる方法である。このような原料ガスからのセラミックス生成反応が空隙等の内部で繰り返される結果、空隙等の内表面にセラミックス皮膜を形成したり、あるいは空隙等をセラミックスで充てんしたりすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
CVI法の実施にあたっては、まず、多孔質材料の空隙等内に当初からある初期ガスを排出する必要がある。しかしながら、残留ガスの排気は非常に困難であった。多孔質材料の表面積が大きく付着ガス量も多いため、排気しても、付着ガスを完全に離脱させることができないからである。
かかる孔内残留ガスのために、多孔質材料外部に比較して孔内圧力が高くなり、空隙等の深部まで気体原料が拡散あるいは浸透させることができなかった。この問題は、2種以上の気体原料を使用する場合にも、先に使用した気体原料が残留し、次に使用する気体原料を拡散等できないという点において共通していた。
【0004】
そこで、本発明は、多孔質材料の深部の空隙及び/又は孔部内にもセラミックスが付与されている、多孔質複合材料の製造方法を提供することを目的とする。また、多孔質材料の空隙及び/又は孔部内にもセラミックスを付与するための装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するための手段として、本発明では、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明は、多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する方法であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とが区画された状態で、前記気体原料を前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させて、前記空隙及び/又は孔部の内部に気体原料を供給する、方法を提供する。
この方法によると、気体原料が多孔質材料を強制的に通過することにより、気体原料が、多孔質材料の空隙及び/又は孔部に滞留されるのが抑制され、さらに初期から残留しているガスを孔内から排出することができる。このため、多孔質材料の深部の空隙及び/又は孔部の内部にもセラミックスが生成される。
【0006】
また、好ましくは、前記気体原料を、前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させる工程と、前記他方側から前記一方側へ強制的に通過させる工程とを備えるようにする。これによれば、多孔質材料の外表面及び空隙及び/又は孔部の内表面の全体においてより均一にセラミックスを生成させることができる。
【0007】
この製造方法において、好ましくは、前記気体原料は2種以上であり、第1の気体原料を供給する工程と、第2の気体原料を供給する工程とを備え、これらの工程間には、第1の気体原料の供給側の区画から第1の気体原料を排出する工程、を備えるようにする。このようにすると、前記上流側において、第1の気体原料が滞留するのを防止できる。このため、前記上流側で第1及び第2の気体原料が混合するのを防止できる。
【0008】
また、本発明は、多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する装置であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画されるキャビティを有し、前記気体原料を前記キャビティの前記一方側から前記他方側へ強制的に通過可能に形成される、装置を提供する。
【0009】
また、前記気体原料が、前記一方側から他方側へ強制通過可能に形成されるとともに、前記他方側から前記一方側へ強制通過可能に形成される、装置であることが好ましい。また、前記一方側と前記他方側とが連通される気体原料通路が、前記多孔質材料における通過抵抗が高まった際にのみ開口部によって前記気体原料を通過させるように開閉可能に形成されることが好ましい。さらに、前記キャビティを2以上備えることが好ましい。また、1個のキャビティが、2以上の多孔質材料のそれぞれを介して3以上に区画されるようにすることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の製造方法及び装置は、いわゆるCVI法を用いた多孔質複合材料の製造方法及びCVI法に用いる装置である。
本発明の製造方法は、多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部内にセラミックスが付与された複合材料を製造する方法であって、前記空隙及び/又は孔部の内部への気体原料の供給工程を、前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とが区画された状態で、前記気体原料を前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させることにより達成することを特徴とする。
本発明方法によって得られた多孔質複合材料は、その空隙及び/又は孔部内がセラミックスで被覆あるいは充てんされている。特に、その深部の空隙及び/又は孔部内においても、均一にセラミックスで被覆あるいは充てんされている。
また、本発明の装置は、当該気体原料供給工程を達成可能に、前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画されるキャビティを有し、前記気体原料を前記キャビティの前記一方側から前記他方側へ強制的に通過可能に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明における多孔質材料とは、空隙及び/又は孔部を多数備える材料であれば良く、特にその材料を限定しない。CVD法、特に熱CVD法、すなわち、熱化学反応によりセラミックスを付与することから、当該方法あるいは熱化学反応を許容できる程度の耐熱性を備える材料であることが好ましい。例えば、セラミックスを始めとする無機質固体材料や金属等をマトリックスとする多孔材料を挙げることができる。
空隙及び孔部の形態は問わない。連続状、あるいは外部と連通する状態である空隙及び/又は孔部を備えることが好ましい。
【0012】
気体原料は、形成しようとするセラミックスを構成する元素からなる化合物のガスである。特に、熱化学反応によりセラミックスが生成されるような気体原料を選択するのが好ましい。セラミックスは、酸化物、窒化物、炭化物等、各種形態のセラミックスを包含する。さらに、多孔質材料表面においてこれらの生成物から化学反応によりセラミックスが生成される。セラミックスは、いわゆる、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等のいずれによって形成されてもよいが、好ましくは、熱CVDである。よって、好ましくは、熱化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を使用するのが好ましい。
セラミックスは、2種以上の気体原料から生成されることが多い。このような気体原料の組み合わせと生成するセラミックスにとしては、各種公知の組み合わせを、本発明に適用できる。例えば、以下に示すものを例示できる。
(気体原料)→セラミックスの例
(SiH2Cl2+C22)→SiC
(SiCl4+CH4)→SiC
なお、1種のセラミックスを生成するような気体原料のみを使用してもよいし、2種以上のセラミックスを生成するように気体原料を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
(第1の実施形態)
本実施形態においては、本発明の製造方法及び製造装置の一例について図1及び図2に基づいて説明する。
図1には、本実施形態で使用する製造装置2の概略構成が示されている。また、図2には、本実施形態における気体原料の供給工程が示されている。
【0014】
本発明の製造装置は、基本的には、多孔質材料4を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画されるキャビティ10,14とを備えた加熱可能なキャビティ(炉)2として形成されている。キャビティ10には、炉2内に気体原料A及び気体原料Bをそれぞれ供給可能に配管18、20、22が接続されている。これらの配管18,20,22には、それぞれバルブが備えられている。すなわち、配管18,20は、それぞれ気体原料A、Bの供給源に接続されており、配管18,20は、炉2に接続される配管22に接続されている。
また、キャビティ14には、炉2内の気体を排気(吸引)可能に配管24が接続されている。この結果、炉2は、気体原料A、Bをキャビティ10からキャビティ14へ強制的に通過可能に形成されている。
【0015】
この炉2においては、多孔質材料4は、キャビティ10、14を区画する内壁(隔壁)の少なくとも一部を構成している。多孔質材料4以外の部位は、適当な部材でキャビティ10、14が区画され、両キャビティ10、14が遮断された状態となっている。特に、この炉2では、隔壁12が多孔質材料4を支持するとともに、キャビティ10、14も遮断するようになっている。
炉2は、外部から全体が加熱可能に形成されていてもよいが、炉2内部の多孔質材料4のみを加熱可能に形成されていることが好ましい。また、炉2は、複数個形成してもよい。その場合、気体原料の通過方向に対して、直列的に配することもできるし、並列に配することもできる。
【0016】
次に、この炉2に、多孔質材料4の空隙及び/又は孔部内にセラミックスを生成させる方法について、図2に例示される気体原料供給工程に基づいて説明する。
まず、炉2内の所定位置に、多孔質材料4を配置して、多孔質材料4を介して、その一方側と他方側と区画された状態とする。次いで、炉2内が所定の温度になるように加熱される。
第1の工程は、所定温度が維持される状態で、配管24により、炉2内の空気を排出(吸引)する。第2の工程は、吸引を維持しながら気体原料Aを一定期間配管18、22を介してキャビティ10に供給する。
【0017】
この結果、気体原料Aは、多孔質材料4の一方側から他方側へと、すなわち、キャビティ10からキャビティ14へと強制的に通過される。これにより、気体原料Aが、多孔質材料4の空隙及び/又は孔部内をキャビティ10側からキャビティ14側へと、当該空隙等の内部で滞留することなく通過することができる。このため、加熱された多孔質材料4の表層側(キャビティ10側)のみならず、深部側(キャビティ14側)の空隙及び/又は孔部の内部に気体原料Aが均一に供給される。この結果、空隙等の内表面において均一に気体原料Aの生成物が生じる。
【0018】
第3の工程は、気体原料A供給の停止後、一定期間配管24からの吸引のみを実施して、炉2内に滞留する気体原料Aを除去する。そして、第4の工程で、吸引状態を維持して別種の気体原料Bを配管20,22を介してキャビティ10に供給し、多孔質材料4を強制的に通過させる。
すなわち、2種以上の気体原料を供給する場合、図2に示すように、一種の気体原料の供給停止後、好ましくは一定間隔をおいて、キャビティ14側からの吸引のみを実施させ、その後、他の気体原料を供給するようにする。すなわち、各気体原料は、先に使用した気体原料の排気工程を経て、非連続的に供給するようにすることが好ましい。これにより、多孔質材料4や炉2内に滞留する前工程での気体原料が除去され、多孔質材料4以外の炉2内において気体原料が混合されて、望ましくない反応が生じるのを防止できる。また、供給しようとする次の気体原料の多孔質材料4への速やかな浸透が可能となる。
【0019】
本形態によると、常時、配管24から炉2を吸引しているために、気体原料が炉2内に滞留することがない。したがって、気体原料を連続して強制通過させることもできる。また、2種以上の気体原料を、各気体原料を切り換えながら、実質的に連続的に供給することもできる。
【0020】
このようにして、多孔質材料4の空隙及び/又は孔部の内部全体において均一にセラミックスの皮膜が形成され、セラミックスが複合化された多孔質材料4を得ることができる。
このような多孔質材料4は、材料4の内表面の全体が均一にセラミックスで充てん、あるいはコーティングされているために、内表面全体に均一に所望の特性を付与することができる。また、このような複合材料は、特に、分離材料(膜)に使用するのが好ましい。
【0021】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例である。本形態の装置は、第1の実施形態の炉2に、さらに、配管26と配管28を備え、併せてそれぞれの配管26,28にバルブを備えている点において相違するのみである。配管26は、気体原料A,Bを供給可能な配管22から分岐状とされて、キャビティ14に接続されている。すなわち、バルブの切り替え操作により、配管26を介して、気体原料A、Bを、キャビティ14側からキャビティ10側へと、第1の実施形態とは異なる方向(反対方向)で気体原料A、Bを供給することができる。
また、同時に、配管28は、配管22から分岐状に、排気用の配管24に接続されており、バルブの切り替え操作により、キャビティ10側から炉2内を吸引できるようになっている。すなわち、第1の実施形態は、キャビティ14側からしか炉2内を排気できなかったが、本装置では、キャビティ10側からも炉2内を排気できるようになっている。
【0022】
このような装置を用いることにより、気体原料の通過方向を必要に応じて、多孔質材料4の一方側から他方側への方向と、他方側から一方側への方向とを切り換えすることができる。
常時、一の方向で気体原料を通過させ続けると、多孔質材料4において、気体原料の供給側の空隙及び/又は孔部にセラミックスが生成され、当該側の空隙及び/又は孔部が徐々に小さくなる傾向がある。このため、多孔質材料4の気体原料の排出側に、気体原料が到達しにくくなり、排出側において、セラミックスが生成し難くなる傾向があった。しかしながら、本形態の装置によれば、気体原料の通過方向を適宜切り換えできるため、多孔質材料4内の空隙及び/又は孔部に、気体原料の通過方向に係わらず、均一にセラミックスを生成させることができる。
また、多孔質材料4における気体原料の通過抵抗の上昇を回避して、良好な気体原料の通過状態及び多孔質材料4の内表面へ接触状態を得ることができる。
【0023】
このような装置によれば、例えば、気体原料Aと気体原料Bをそれぞれ異なる方向から多孔質材料4に対して供給することができる。また、気体原料A,Bを、同じ側から順次供給し、次いで、これと反対側から気体原料A、Bを順次供給するようにすることもできる。
さらに、後述するように、本装置によれば、キャビティ10側から炉2内を排気できるため、キャビティ10側から気体原料を供給した後に、当該キャビティ10から滞留する気体原料を排出することができる。同様に、気体原料をキャビティ14から供給した後に、当該キャビティ14から、そこに滞留する気体原料を排出することができる。
【0024】
(第3の実施形態)
本実施形態では、図4に示す装置を用いる。この装置は、図1に示す第1の実施形態の装置の変形例であり、炉2に、さらに配管30を備えている点においてのみ異なる。配管30は、炉2をキャビティ10側から排気(吸引)可能に接続されている。本形態では、配管22を介して排気用の配管24に接続されている。
このような配管30を備えることにより、必要に応じて、第1の実施形態の装置と異なり、気体原料の供給方向の下流側(キャビティ14)からのみならず、供給側(上流側、キャビティ10)からも炉2内を吸引排気することができる。
【0025】
このような装置を用いることにより、例えば、図5に示す気体原料供給工程が可能となる。
これらの工程においては、図2に示す工程と同様、配管24により、キャビティ14側から常時吸引した状態が維持される(図5の最下段、排気(下流側)参照)。
第1の工程では、上流側、すなわち、キャビティ10側も併せて吸引される(図5の下から2段目、排気(上流側)参照)。上流側の吸引停止後、第2の工程で、気体原料Aがキャビティ10に供給される(図5の最上段、気体原料A供給参照)。気体原料Aの供給を停止し、第3の工程で、キャビティ14側からのみの排気状態となる。この工程により、炉2内の特に、キャビティ14側に滞留する気体原料Aが吸引除去される。第4の工程では、再び、キャビティ10側を吸引排気する。これにより、特に、キャビティ10側に滞留する気体原料Aをさらに除去できる。気体原料供給側のキャビティからの吸引は、特に、セラミックスの生成により、多孔質材料4の空隙及び/又は孔部が小さくなってきた際に有効である。気体原料が供給側キャビティに滞留しやすくなっているからである。
このようにして、次に気体原料Bを供給する前に、供給側キャビティから気体原料Aを除去することにより、気体原料Bの通過状態及び多孔質材料4の内表面との接触状態を向上させることができる。また、残留する気体原料Aとの混合を回避できる。
【0026】
(第4の実施形態)
本実施形態で使用する装置を図6に示す。この装置は、特に、上記した実施形態と異なる炉52を備えている。この炉52は、多孔質材料4を介して多孔質材料4の一方側と他方側とに区画されるキャビティを有しているが、区画されるキャビティ60,64が二重構造になっている。キャビティ60には、外部と連通可能に配管72が接続されており、キャビティ64にも外部と連通可能に配管が接続されている。
キャビティ60は、炉52内に多孔質材料4と、隔壁76と、配管72が形成される壁面とを含んで、略箱状に形成されている。すなわち、キャビティ60は、キャビティ64の内側に存在するような形態となっている。
【0027】
当該形態の炉52によれば、炉52全体を加熱することなく、多孔質材料4のみを効果的に加熱することができる。すなわち、キャビティ60のみを加熱するか、あるいは、キャビティ60内から多孔質材料4のみを加熱するようにする。例えば、マイクロ波加熱、レーザー加熱などすることにより多孔質材料4を局所的に加熱することができる。これにより、炉52の内壁全体が加熱されないため、炉52内の内壁部に対するセラミックス生成をできるだけ回避して効果的に多孔質材料4の内表面にセラミックスを付与できる。また、多孔質材料4の所望の領域にのみ、セラミックスを付与するようにすることができる。
なお、本形態においては、上記した実施形態における気体原料の供給方向の切り替え、排気の切り替えの他、後述する隔壁への気体原料通路の形成をそれぞれ、あるいは2種以上を組み合わせて適用することもできる。
【0028】
(第5の実施形態)
図7には、第5の実施形態に用いる装置が記載されている。この装置の炉82は、多孔質材料4を介して区画されるキャビティ90,94を備えており、さらに、それぞれのキャビティ90,94には、気体原料を供給あるいは吸引可能な配管92,98が備えられている。この炉82における隔壁104は、多孔質材料4とともに炉82内を区画するように形成されている。
本形態では、区画されるキャビティ90、94間を、気体原料が通過可能な通路110を備えている。通路110は、どのような形態であってもよい。キャビティ90,94を連通可能に接続する配管であってもよいし、図7に示すように、隔壁104の少なくとも一部に設けられた開口部であってもよい。気体原料通路は、常時、開放状態であってもよいし、必要に応じて開閉可能に形成されていてもよい。
【0029】
このような装置を用いることにより、例えば、次の効果が得られる。多孔質材料4の空隙及び/又は孔部中でのセラミックス生成が進行して、空隙及び/又は孔部が小さくなってきた場合、多孔質材料4の通過抵抗が上昇する。この結果、気体原料が供給側キャビティに滞留し易くなる。しかしながら、気体原料通路110があれば、通過抵抗が上昇しても、多孔質材料4以外の部位での気体原料の通路が存在するために、気体原料の滞留を防止することができる。特に、気体原料通路110を開閉可能に形成して、多孔質材料4における通過抵抗が高まった際にのみ開口部110によって気体原料を通過させるようにすることが好ましい。
また、本形態においては、上記した実施形態における気体原料の供給方向の切り替え、排気方向の切り替えを、それぞれ、あるいはこれらを組み合わせて適用することができる。
【0030】
(第6の実施形態)
この実施形態の装置が図8に示されている。この装置の炉112は、2個の多孔質材料4をそれぞれ介して直列的に区画される3つのキャビティ120,122,124を備えており、さらに、それぞれのキャビティ120、124には、気体原料を供給あるいは排気可能な配管132,138が備えられている。炉112には、多孔質材料4とともにキャビティ120,122,124を区画する2枚の隔壁140,142も備えている。
本装置によれば、気体原料の供給により、複数個の多孔質材料4を一挙に処理することができる。
なお、本実施形態では、直列状にキャビティを配列したが、並列状にキャビティを配列して、複数個の多孔質材料4を一括処理するようにすることもできる。
また、気体原料の供給側の切り替え、排気側の切り替え、隔壁における開口部の形成を、それぞれ、あるいは2種以上組み合わせて本実施形態においても適用することができる。
【0031】
以上説明したことから、本発明は、以下の形態を採ることもできる。
(1)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に、化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する方法であって、
前記気体原料は2種以上であり、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とが区画された状態で、第1の気体原料を前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させて、前記空隙及び/又は孔部の内部に第1の気体原料を供給する工程と、
第1の気体原料を排出する工程と、
第2の気体原料を、前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させて、前記空隙及び/又は孔部の内部に第2の気体原料を供給する工程、
とを備える、方法。
(2)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に、化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する方法であって、
前記気体原料は2種以上であり、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とが区画された状態で、少なくとも1種の気体原料を、前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させる工程と、当該1種の気体原料を、前記他方側から前記一方側へ強制的に通過させる工程とを備える、方法。
【0032】
(3)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に、化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する方法であって、
前記気体原料は2種以上であり、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とが区画された状態で、少なくとも1種の気体原料を、前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させる工程と、他の気体原料を、前記他方側から前記一方側へ強制的に通過させる工程とを備える、方法。
(4)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に、化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する方法であって、
前記気体原料は2種以上であり、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とが区画された状態で、少なくとも1種の気体原料を、前記一方側から前記他方側へ強制的に通過させる工程と、
当該1種の気体原料をその供給側から排出する工程と、
他の気体原料を、前記他方側から前記一方側へ強制的に通過させる工程と、
当該他の気体原料をその供給側から排出する工程、
とを備える、方法。
【0033】
(5)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する装置であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画され、前記気体原料を前記キャビティの前記一方側から前記他方側へ強制的に通過可能に形成される、キャビティを、前記気体原料の通過方向に対して直列又は並列に複数個備える、装置。
(6)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する装置であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画され、前記気体原料が前記一方側から前記他方側へ強制的に通過可能に形成されるキャビティであって、2以上の多孔質材料を介して、3以上に区画されるキャビティを備える、装置。
(7)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する装置であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画され、前記気体原料が前記一方側から前記他方側へ強制的に通過可能に形成されるキャビティであって、前記一方側の区画は、前記他方側の区画に実質的に包囲されている、装置。
(8)多孔質材料の空隙及び/又は孔部に化学反応によりセラミックスを生成する気体原料を供給して、当該空隙及び/又は孔部の内部にセラミックスが付与された多孔質複合材料を製造する装置であって、
前記多孔質材料を介して多孔質材料の一方側と他方側とに区画されるキャビティを有し、前記気体原料が前記キャビティの前記一方側から前記他方側へ強制的に通過可能に形成され、
前記一方側から前記キャビティを排気可能に形成される、装置。
(9)前記気体原料が、前記一方側から前記他方側へ強制通過可能に形成されるとともに、前記他方側から前記一方側へ強制通過可能に形成される、前記(5)~(8)のいずれかに記載の装置。
(10)前記一方側と前記他方側とを連通する気体原料通路を備える、前記(5)~(9)のいずれかに記載の装置。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例として具体例を挙げて説明する。
本実施例では、多孔質材料として、外側が細粒、内側が粗粒の二層からなる多孔質α-アルミナの円筒管であって、その表面にγ-アルミナを修飾した円筒管を用いた。
この円筒管を、外部から加熱可能に形成され、それぞれがバルブの切り替えにより、気体原料を供給及び排出可能に形成された2つの開口を備える炉(石英ガラス製、外径40 mm、内径40mm、長さ470mm)内に設置した。
多孔質材料の設置は、円筒管の一端を緻密質のアルミナキャップでシールするとともに、その他端を、前記開口のうち一方の開口全体が、円筒管によって包囲されるようにして設置した。これにより、炉内は、円筒管を介して一方側(円筒管内部)と他方側(円筒管外部)とが区画された状態となり、炉内に供給された気体原料は、必ず多孔質材料を通過する構造とされた。すなわち、円筒管内の開口から気体原料を供給するときは、円筒管内部から外部へと気体原料が通過し、他方の開口から気体原料を供給するときは、円筒管外部から内部へと気体原料が通過するようになっている。
【0035】
炉内の多孔質材料を、炉外部のヒーター(長さ400mm)で800~900℃に加熱し、一定に保った。
気体原料は、水素希釈した濃度10%のジクロルシランガス(SiH2Cl2)と、水素希釈した濃度10%のアセチレンガス(C2H2)とを用いた。二種類の気体原料はコンピューター制御されたバルブを切り替えることにより、交互に反応炉内へ供給した。それぞれのガスは流量計を介して1サイクルあたりジクロルシランガスは2.0 cm3、アセチレンガスは2.2 cm3を炉内に供給した。気体原料の供給パターンは図3と同様とした。すなわち、各気体原料は、パルス状に供給され、即座にロータリーポンプで排気されるので、二種類の気体原料が反応炉内で混合することはなかった。また、サイクル数を制御することにより、膜厚の制御が可能であった。
【0036】
製膜工程を順を追って説明する。本工程では、円筒管内部の開口から、気体原料を供給し、他方の開口から、常時吸引することとした。すなわち、円筒管の内部から外部へと気体原料が通過する構成とした。
SiH2Cl2ガスを、円筒管の内部の開口から炉に供給した。SiH2Cl2ガスの供給停止後、炉内がロータリーポンプで吸引されて、滞留する気体原料が炉の外へと即座に排気された。次にC2H2ガスを供給し、次いで、炉内がロータリーポンプで吸引され、滞留する気体原料が排気された。これを1サイクルとし、合計100サイクルを実施した。
100サイクル実施後の多孔質材料の空隙の内表面を観察したところ、約0.1μmの膜厚のSiC膜が形成されていた。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、多孔質材料の深部の空隙及び/又は孔部内にもセラミックスが付与されている、多孔質複合材料の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に用いる装置の概略構成を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の気体原料供給工程を示した図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に用いる装置の概略構成を示した図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に用いる装置の概略構成を示した図である。
【図5】第3の実施形態における気体原料供給工程を示した図である。
【図6】第4の実施形態に用いる装置の概略構成を示した図である。
【図7】第5の実施形態に用いる装置の概略構成を示した図である。
【図8】第6の実施形態に用いる装置の概略構成を示した図である。
【符号の説明】
2,52,82,112 炉
4 多孔質材料
10,14,60,64,90,94,120,122,124 キャビティ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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