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明細書 :開口パターン付き薄板の研磨方法及び磁気研磨装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4139906号 (P4139906)
公開番号 特開2007-253313 (P2007-253313A)
登録日 平成20年6月20日(2008.6.20)
発行日 平成20年8月27日(2008.8.27)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
発明の名称または考案の名称 開口パターン付き薄板の研磨方法及び磁気研磨装置
国際特許分類 B24B  37/00        (2006.01)
B24B  31/112       (2006.01)
FI B24B 37/00 D
B24B 31/112
請求項の数または発明の数 9
全頁数 15
出願番号 特願2006-084654 (P2006-084654)
出願日 平成18年3月27日(2006.3.27)
審査請求日 平成18年3月27日(2006.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】吉原 佐知雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】筑波 茂樹
参考文献・文献 特開平08-323613(JP,A)
特開昭63-260759(JP,A)
特開2001-079750(JP,A)
特開平11-090815(JP,A)
特開2005-193319(JP,A)
調査した分野 B24B 37/00
B24B 31/112
特許請求の範囲 【請求項1】
開口パターンが形成された被加工物である薄板を研磨する方法であって、
前記薄板を挟んで、1対の磁石を互いの磁極が対極となるように離間配置し、前記1対の磁石間に磁性研磨材を存在させ、
前記磁石及び/又は前記薄板の面内において、前記1対の磁石の回転数及び/もしくは振動数に差を設ける、並びに/又は、前記1対の磁石の被加工物薄板表面に対する間隔に差を設けることにより、前記薄板の表面及び開口パターン内部を研磨するとともに、前記開口パターンの開口部壁面に傾斜を形成することを特徴とする開口パターン付き薄板の研磨方法。
【請求項2】
前記磁性研磨材が、磁性研磨粒子であることを特徴とする請求項に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記1対の磁石のいずれかの表面には、研磨バフが配されており、前記磁性研磨は、この研磨バフを介在させた状態で、磁力により前記磁石に保持されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨方法。
【請求項4】
前記研磨バフが、磁性層を有する研磨バフであることを特徴とする請求項に記載の研磨方法。
【請求項5】
前記磁性研磨材が、樹脂粒子からなる核粒子の表面に無電解めっきにより磁性層を形成し、該磁性層の表面にダイアモンド粒子からなる研磨粒子を固着させた複合磁性砥粒であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨方法。
【請求項6】
前記磁性研磨材が、アルミナと鉄からなる複合磁性砥粒であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨方法。
【請求項7】
開口パターンが形成された被加工物である薄板を研磨する装置であって、
少なくとも当該薄板を保持するワーク保持手段、
当該ワーク保持手段に保持される被研磨薄板を挟む位置に対向して配置された上部スピンドル及び下部スピンドル、
当該上部スピンドル及び下部スピンドルにそれぞれ回転及び振動を付与する回転及び振動付与手段、並びに、
当該上部スピンドル先端及び下部スピンドル先端にそれぞれの磁極が対極となるように取り付けられ、それぞれスピンドルと一緒に回転及び振動する1対の磁石、を有し、
前記1対の磁石間に磁性研磨材を存在させ、
前記回転及び振動付与手段において、前記磁石及び/又は前記薄板の面内において、前記1対の磁石の回転数及び/もしくは振動数に差を設ける、並びに/又は、前記1対の磁石の被加工物薄板表面に対する間隔に差を設けることにより、前記薄板の表面及び開口パターン内部を研磨するとともに、前記開口パターンの開口部壁面に傾斜を形成することを特徴とする磁気研磨装置。
【請求項8】
ワーク保持手段に保持された被加工物に回転及び振動を付与する回転及び振動付与手段を、前記した当該上部スピンドル及び下部スピンドルに対する回転及び振動付与手段に代えて、あるいはこれと共に有することを特徴とする請求項に記載の磁気研磨装置。
【請求項9】
ワーク保持手段に付設して、保持したワークのX、Y、Z方向の位置調整及びスピンドルに対する角度調整を行うワーク移動角度調整駆動手段及び
スピンドル保持手段に付設して、保持したスピンドルのX、Y、Z方向の位置調整及び被研磨薄板の研磨部分に対する角度調整を行うスピンドル移動角度調整駆動手段を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の磁気研磨装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、開口パターン付き薄板の研磨方法及び磁気研磨装置に関し、所定のパターンに基づいて部分的に除去加工して開口部を設けた薄板の表面及び開口部壁面を研磨する研磨方法及び磁気研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント配線板の回路パターンの所定位置に所定の厚み及びパターンではんだペーストを印刷するためや、その他のスクリーン印刷の技術分野において、スクリーン印刷用メタルマスクが用いられており、また、半導体等の製造においては、所定部分に金属を蒸着させるために蒸着マスク等が用いられている。
【0003】
これらのメタルマスクは、ステンレス鋼等からなる薄板母材にエッチング加工により、穴開け、溝切りその他の加工を行なうことにより得ることもできるが、その精密加工を行うことは手間がかかり、生産性がよくないため、レーザによる精密加工が行われるようになってきた。
【0004】
金属板に対するレーザ加工は、レーザビームの熱エネルギーにより所定の個所を溶融し、これにより切断、穴開け等の加工を行なうものであるが、その切断面は、十分平滑なものとは言えず、また、レーザ加工を行うと、熱溶融跡の加工部の表面、裏面及び断面にドロスと呼ばれる溶融酸化物が付着したり、金属の溶融物の飛散物が付着したり、加工部周辺の前記薄板母材の表面に酸化膜が形成される。このような溶融酸化物、飛散物及び酸化膜(以下、ドロス等という)をそのままにして製品にすると、例えばスクリーン印刷用メタルマスクではその上をはんだペースト等の印刷材料をスキージにより擦りつけるので、これが円滑に動作するのを妨げるのみならず、例えばプリント配線板の配線パターン上の所定のランドに所定パターンで印刷された印刷膜の厚み精度や寸法精度も悪くする。
【0005】
このため従来、レーザ加工等で所定のパターンの開口部を形成した後に、先ず薄板表面をバフ研磨等で機械的に研磨し、次に薄板表面と同時に開口部壁面を電解研磨によって研磨する二工程研磨法が実用化されている。なお、このように二工程の研磨を行うのは、機械的研磨のみでは薄板表面の研磨は良好であるが開口部の研磨は困難であり、一方、及び電解研磨は、実質的には母材の溶解を通してドロス等を除去するものであるから、前記ドロス等の剥離むらが生じ易く、その剥離しない部分は研磨されないという研磨むらが生じることになるため、寸法精度のよいパターンが得られないためである(例えば、特許文献1を参照)。

【特許文献1】特開2004-276435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法では、開口部を形成した後の研磨工程が、表面研磨のバフ研磨と開口部壁面研磨の電解研磨の二工程を必要とするため、所要時間が長くなるという問題がある。
【0007】
また、電解研磨で薬液を用いるために、廃液処理が必要となると共に、環境に対する負荷も生じる問題がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、開口部を形成した後の表面及び開口部壁面の研磨を、一工程で行うことができる開口パターン付き薄板の研磨方法及び磁気研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、メタルマスク等のような開口パターン付き薄板の研磨に、磁気研磨を応用することによって、薄板の表面部及び開口部内面を精度高くかつ制御性良く、一工程において研磨可能であることを見出し本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、上記課題を解決するための本発明の開口パターン付き薄板の研磨方法は、開口パターンが形成された被加工物である薄板を研磨する方法であって、前記薄板を挟んで、1対の磁石を互いの磁極が対極となるように離間配置し、前記1対の磁石間に磁性研磨材を存在させ、前記磁石及び/又は前記薄板の面内において、前記1対の磁石の回転数及び/もしくは振動数に差を設ける、並びに/又は、前記1対の磁石の被加工物薄板表面に対する間隔に差を設けることにより、前記薄板の表面及び開口パターン内部を研磨するとともに、前記開口パターンの開口部壁面に傾斜を形成することを特徴とする。

【0012】
本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法において、前記磁性研磨材としては、磁性研磨粒子を用いることができる。
【0013】
本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法において、前記1対の磁石のいずれかの表面には、研磨バフが配されており、前記磁性研磨は、この研磨バフを介在させた状態で、磁力により前記磁石に保持される。さらに、この研磨バフは、磁性層を有する研磨バフであってもよい。

【0014】
本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法において、前記磁性研磨材が、樹脂粒子からなる核粒子の表面に無電解めっきにより磁性層を形成し、該磁性層の表面にダイアモンド粒子からなる研磨粒子を固着させた複合磁性砥粒であるように構成する。

【0015】
本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法において、前記磁性研磨材が、アルミナと鉄からなる複合磁性砥粒であるように構成する。

【0016】
上記課題を解決するための本発明の磁気研磨装置は、開口パターンが形成された被加工物である薄板を研磨する装置であって、少なくとも当該薄板を保持するワーク保持手段、当該ワーク保持手段に保持される被研磨薄板を挟む位置に対向して配置された上部スピンドル及び下部スピンドル、当該上部スピンドル及び下部スピンドルにそれぞれ回転及び振動を付与する回転及び振動付与手段、並びに、当該上部スピンドル先端及び下部スピンドル先端にそれぞれの磁極が対極となるように取り付けられ、それぞれスピンドルと一緒に回転及び振動する1対の磁石、を有し、
前記1対の磁石間に磁性研磨材を存在させ、
前記回転及び振動付与手段において、前記磁石及び/又は前記薄板の面内において、前記1対の磁石の回転数及び/もしくは振動数に差を設ける、並びに/又は、前記1対の磁石の被加工物薄板表面に対する間隔に差を設けることにより、前記薄板の表面及び開口パターン内部を研磨するとともに、前記開口パターンの開口部壁面に傾斜を形成することを特徴とする。

【0017】
本発明に係る磁気研磨装置においては、ワーク保持手段に保持された被加工物に回転及び振動を付与する回転及び振動付与手段を、前記した当該上部スピンドル及び下部スピンドルに対する回転及び振動付与手段に代えて、あるいはこれと共に有することことが可能である。

【0018】
本発明に係る磁気研磨装置においては、ワーク保持手段に付設して、保持したワークのX、Y、Z方向の位置調整及びスピンドルに対する角度調整を行うワーク移動角度調整駆動手段及びスピンドル保持手段に付設して、保持したスピンドルのX、Y、Z方向の位置調整及び被研磨薄板の研磨部分に対する角度調整を行うスピンドル移動角度調整駆動手段を有することが望ましい。

【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーザ等によって開口された開口部を有するメタルマスク等の開口パターン付き薄板の研磨において、薄板の表面部及び開口部内面を精度高くかつ制御性良く、一工程において研磨可能である。このため、メタルマスク等の研磨工程が短縮できコストダウンが期待できると共に、研磨廃液の処理が不要となるので環境に優しい工程となる。また、本発明は、電解研磨と異なり、研磨対象物の一部分のみを選択的に研磨を行うことも可能であり、マスクパターン等の部分的欠陥の補修等にも利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の開口パターン付き薄板の研磨方法及び磁気研磨装置について、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法の一実施形態における構成を模式的に示す図面である。
【0022】
本発明の研磨方法は、開口パターンが形成された被加工物である薄板を研磨する方法であって、前記薄板の表面及び開口パターン内部を磁気研磨により研磨することを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係る磁気研磨方法において研磨対象となる被加工物1としては、薄板上に微細な開口パターンが形成されたものであれば、特に限定されるわけでないが、例えば、厚さ0.1~1mm程度のステンレス鋼、銅等の金属板に、レーザ加工法、エッチング法等によって所定のパターン、位置において開口パターン、特に、その径ないし幅が数mm以下、特に1mm以下程度の開口パターンが設けられたものが含まれる。具体的には、例えば、形成されたプリント配線板の回路パターンの所定位置に所定の厚み及びパターンではんだペーストを印刷するためや、その他のスクリーン印刷の技術分野において用いられる、スクリーン印刷用メタルマスクや、半導体等の製造において所定部分に金属を蒸着させるために蒸着マスク等が対象とされる。
【0024】
本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法を実施するには、例えば、図1に示すように、被加工物1である前記薄板を挟んで、1対の磁石2,2を互いの磁極が対極となるように離間配置し、この磁石間に磁性研磨材3を存在させ、前記磁石及び/又は前記薄板を、そのほぼ面内において、回転及び/又は振動させることにより研磨を行うことにより行ない得る。
【0025】
なお、図1に示す実施形態においては、磁性研磨材3として、磁性砥石及び研磨液を用いた例を示しているが、磁性研磨材3としては特段このような磁性研磨粒子に限定されるものではなく、その他、磁性バフ等を組み合わせて用いることも可能である。このように磁性研磨材3の形態としては、被加工物1の表面部及び開口パターン内部等の研磨しようとする部位及びその程度等に応じて、適当なものが適宜選択され得る。

【0026】
なお、被加工物1の開口パターン内部及び表面部を効率的に研磨しようとする場合には、図2に示すように、磁性研磨材3としての磁性研磨粒子に加えて、研磨バフ4を併用することが好ましい。
【0027】
この場合、被加工物1の両面側に位置するように、双方の磁石表面に面して1対のバフ4,4を配置することが望ましいが、これらバフ4,4は、接着剤等を用いて双方の磁石2の表面に貼付するか、バフ4を磁石1と磁性研磨粒子3の間に挟んで磁性研磨粒子3が磁石1に吸引される力によって固定するか、あるいは、前記したように、バフ自体を磁性バフとする、すなわち、例えば、バフの素材を無電解めっき等で磁性体を被覆することにより磁石とバフ自身の間の磁気吸引力により固定することができる。更に、バフに無電解めっきする場合には、当該めっき層が砥粒を含むようにして、別途付着させた磁性砥粒とバフに含まれる砥粒の両者で研磨を行うことも可能である。
【0028】
なお、このように研磨バフ4を併用した場合、磁石1に対し磁性研磨粒子3が直接付着してしまうことを防止することができ、処理装置のメンテナンス性等の面でも有利となる。
【0029】
また、研磨バフないし磁性バフを用いる場合、必ずしも被加工物1の両面側に、バフを配する必要はなく、被加工物1の片面側のみに配置することも可能である。さらに、両面側にバフを配置した場合においても、被加工物1に対する双方のバフの距離を変える、具体的には、一方のバフは被加工物に接触させるが、他方のバフは被加工物に接触させない、といった態様とすることも可能である。これは、例えば、金属薄板にレーザ加工にて開口パターンを形成した場合、一般に、レーザ照射側の面はドロスの付着が多くなる等の理由から、反対側の面よりも、表面粗度が悪くなる傾向があり、このような被加工物のそれぞれの面側に対して、その粗度に応じた研磨を行うことができるといった利点をもたらすことができる。
【0030】
本発明において用いられる磁性研磨材3としては、電解鉄のような鉄材(例えば複合磁性砥粒であるKMX(商品名):アルミナ+鉄、粒子径約80μm)、ニッケルないしNi-P合金やNi-B合金等のニッケル合金材からなるものの他、磁性粒子と砥粒、例えば、JIS表示でA、WA、GC、SA、MA、C、MD、CBNといったものを含む、Al、SiC、ZrO、BC及びダイアモンド、立方晶窒化ホウ素、MgO、CeO又はヒュームドシリカなどの砥粒を結合させたもの、砥粒表面に磁性金属皮膜、例えば、ニッケル又はニッケル合金めっき皮膜を形成してなる複合磁性砥粒、あるいは適当な基材表面に磁性金属皮膜を形成し、この金属皮膜と共に砥粒を配合しておく、あるいはこの金属皮膜に砥粒を固着させることにより、表面部に砥粒を有してなる複合磁性砥粒、高温高圧で不活性ガス中で鉄と焼結させた酸化アルミニウム、不活性ガス雰囲気中でのアルミニウムと酸化鉄とのテルミット反応の生成物等各種のものを用いることができる。また、必要に応じて、非磁性の砥粒を含有する研磨液ないし研磨スラリー等を、磁性研磨材3と併用することも可能である。
【0031】
特に限定されるわけではないが、本発明において好ましく用いることのできる磁性研磨粒子の一例としては、例えば、図3に模式的に示すように、樹脂粒子等の核粒子の表面に無電解めっきにより磁性層を形成し、この無電解めっき層表面に、ダイアモンド粒子等の研磨粒子を固着させたもの(以下、「複合磁性砥粒」と称する。)を例示することができる。図4(a)、(b)はこのような複合磁性砥粒の外観を示す顕微鏡写真である。
【0032】
複合磁性砥粒の核粒子となる樹脂粒子としては、各種の樹脂からなるものを用いることができるが、特に耐熱性を有する硬質プラスチック粒子は、被加工物の表面加工の際に発生する熱に対して耐熱性を有するので好ましく用いられる。こうした樹脂粒子は、磁性砥粒の大部分の体積を占めてその中核をなしているので、磁性砥粒全体の重さを軽くすることができる。磁性砥粒の軽量化は、より精密な表面加工を行うのに有利であると共に、表面加工の際の磁性砥粒の動きを容易にするので複雑な形状を有する被加工物を容易に加工することができるという利点がある。樹脂粒子の材質の選定にあたっては、樹脂粒子の比重を考慮することがより好ましい。例えば、磁性砥粒が液状媒体と共に磁性砥液を構成する場合には、その液状媒体の比重との関係で樹脂粒子の比重が考慮される。具体的には、液状媒体よりも比重の小さい材質からなる樹脂粒子を用いることにより、最終的に得られた磁性砥粒を磁性砥液に浮かせた状態で用いることができる。また、液状媒体と同程度の比重の材質からなる樹脂粒子を用いることにより、最終的に得られた磁性砥粒を磁性砥液に浮遊した状態で用いることができる。また、液状媒体よりも比重の大きい材質からなる樹脂粒子を用いることにより、最終的に得られた磁性砥粒を磁性砥液に沈めた状態で用いることができる。このように、樹脂粒子上に形成される磁性層の重さを考慮しつつ、樹脂粒子の材質を比重を考慮して選定することにより、最終的に得られた磁性砥粒の磁性砥液中での状態を上記のように制御することができる。磁性砥液中での磁性砥粒の状態制御は、例えば磁気研磨法等の精密加工において、特にナノメートルレベルの精密加工及びその精度調整に有効である。
【0033】
樹脂粒子の粒径についても、被加工物である開口パターン付き薄板の材質やその開口パターンの大きさ、形状等に応じて適宜選定されるため、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂粒子の平均粒径が100μm以下であることが好ましい。このときの平均粒径の下限は特に限定されず、例えば市販のプラスチック粒子の中から入手可能な範囲のものであればよいが、例えば平均粒径が2μm以上のものを用いることができる。一例として、平均粒径6μmから30μmの範囲で入手可能な硬質プラスチック微粒子(ジビニルベンゼンを主成分とした架橋共重合体樹脂からなる微粒子。積水化学工業製のLCD用スペーサ用途品)が挙げられる。
【0034】
複合磁性砥粒の磁性層は、研磨粒子を含有した態様で樹脂粒子上に形成される。磁性層の形成材料としては、少なくとも磁場により運動可能な磁気特性を有するものであればよく、例えば鉄系の金属又は合金からなる強磁性材料であることが好ましい。磁性層の形成方法は特に限定されないが、無電解めっきで形成する場合には、Ni-B系の無電解めっき皮膜や、Ni-P系の無電解めっき皮膜であることが好ましい。これらのうち、Ni-B系の無電解めっき皮膜は、Ni-P系の無電解めっき皮膜に比べて磁性が強いので好ましく選ばれる。
【0035】
磁性層の厚さは、磁性砥粒に要求される磁気特性を確保できる厚さであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、上述した100μm以下の樹脂粒子上に1~5μm程度の厚さで形成される。また、複合磁性砥粒を磁性砥液の構成材料として用いる場合には、磁性砥液を構成する液状媒体の比重を考慮して、磁性層の厚さを調整する。
【0036】
複合磁性砥粒の研磨粒子としては、研磨粒子として利用可能な各種の無機粒子や化合物(酸化物、炭化物、窒化物等)粒子を用いることができ、例えばダイアモンド粒子、アルミナ(酸化アルミニウム)粒子及び炭化ケイ素粒子等を挙げることができる。ダイアモンド粒子は、極めて硬く砥粒として望ましい特性を有すると共に、微小なものが得られるので入手が容易であるという利点があり、好ましく用いられる。また、このダイアモンド粒子は、その表面が疎水性を示すので、例えば本発明の磁性砥粒が水媒体に浮かぶ場合に、磁性砥粒が水をはじいて水媒体の表面から突出した態様で被加工物を加工できるという特質がある。
【0037】
研磨粒子の粒径についても、被被加工物である開口パターン付き薄板の材質やその開口パターンの大きさ、形状等に応じて適宜選定されるため、特に限定されるものではないが、例えば、平均粒径が100nm以下であることが好ましい。このときの平均粒径の下限は特に限定されず、例えば市販の研磨粒子の中から入手可能な範囲のものであればよいが、例えば平均粒径が10nm以上のものを用いることができる。磁性層中の研磨粒子の含有量についても、被被加工物である開口パターン付き薄板の材質やその開口パターンの大きさ、形状等に応じて適宜選定される。研磨粒子の含有量を多くすることにより、研磨性能を向上させて研磨効率を向上させることができる。一方、研磨粒子の含有量をあまり多くしないことにより、研磨効率を抑えて徐々に研磨を進行させ、精密な加工を行うこともできる。特に限定されるものではないが、例えば、研磨粒子(ダイアモンド粒子)を磁性層中に1~10重量%程度の範囲内で含有させることができる。
【0038】
このような研磨粒子を複合磁性砥粒に保持させる方法としては、無電解めっき法によって研磨粒子を磁性層中に含有させる方法を好ましく挙げることができる。
【0039】
例えば、成膜後に磁気特性を有するイオン種を含む無電解めっき液中に研磨粒子を入れて攪拌し、無電解分散めっき液を調製する。次いで、所定の温度等に設定された無電解分散めっき液中に、触媒活性化処理された樹脂粒子を添加して攪拌することにより、その樹脂粒子上に、研磨粒子を含有した磁性層を形成することができる。なお、触媒活性化処理とは、プラスチック等の樹脂製品上に無電解めっきを施す際の通常より周知の前処理方法のことであり、この無電解めっきにおいては、こうした前処理方法を採用している。
【0040】
次に、磁性研磨材3を被加工物1に対して保持するために用いられる、1対の磁石2,2としては、磁極が対極となるように配され得るものである限り特に限定されるものではなく、例えば、フェライト磁石、アルニコ系合金磁石、希土類磁石等の各種の永久磁石、あるいは電磁石を用いることが可能である。このうち、特に、高い保磁力を有する希土類磁石が望ましい。希土類磁石としては、例えば、Nd-Fe-B系のようなネオジウム系磁石、サマリウム-コバルト系磁石などのいずれも用いることが可能である。
【0041】
本発明に係る磁気研磨方法において用いられる研磨装置においては、このような一対の磁石2,2は、図1に示すように、例えば、ワーク保持手段(図示せず)により保持された、開口パターンが形成された被加工物1である当該薄板を挟む位置に対向して配置された上部スピンドル6a及び下部スピンドル6bのそれぞれの先端部に、それぞれの磁極が対局となるように取り付けられる。
【0042】
なお、この上部スピンドル6a及び下部スピンドル6bには、それぞれ回転及び/又は振動を付与する適当な回転及び/又は振動付与手段が設けられており、これらの回転及び/又は振動付与手段を駆動させることによって、上部スピンドル6a及び下部スピンドル6bを介して、磁石2,2が回転及び/又は振動し、この磁石2,2間に働く磁界によって、磁性研磨材3が被加工物1対して相対的に運動し、研磨処理がなされることになる。
【0043】
本発明に係る研磨装置においては、上述したような上部スピンドル6a及び下部スピンドル6bに対する回転及び/又は振動付与手段に代えて、あるいはこの回転及び/又は振動付与手段と共に、前記ワーク保持手段(図示せず)に対する回転及び/又は振動付与手段を設けることも可能である。これによってワーク保持手段に保持された被加工物1に回転及び/又は振動を与え、被加工物1を磁性研磨材3に対して相対的に運動させる。
【0044】
なお、上部スピンドル6a及び下部スピンドル6b側の回転及び/又は振動と、ワーク保持手段側の回転及び/又は振動を併用する場合には、このような両者の回転及び/又は振動の制御を行うことで、研磨に必要な磁石2,2と被加工物1の相対運動を一方の回転及び/又は振動運動にのみ依存しなくてよくなり、従って各回転ないし振動体の高速回転ないし振動に伴う軸ぶれや望ましくない振動等の弊害を軽減できる。
【0045】
また、必要に応じて、上部スピンドル6a及び下部スピンドル6bの支持機構には、スピンドル上部スピンドル6a及び下部スピンドル6bのX、Y、Z方向の位置調整及び被加工物1の研磨部分に対する角度調整を行うスピンドル移動角度調整駆動手段を、また、前記ワーク保持手段(図示せず)側には、保持したワークのX、Y、Z方向の位置調整及びスピンドルに対する角度調整を行うワーク移動角度調整駆動手段を設けることができ、これらによって、被加工物1の形状等に応じて、所定位置を所定強さで研磨することが可能となる。
【0046】
本発明に関する磁気研磨方法においては、上記したような磁気研磨装置において、先ずワーク保持手段により被加工物1である開口パターンを形成した薄板を保持し、上部及び下部の磁石2,2にそれぞれ磁性研磨材3を磁気吸引力により適量付着させ、ワーク移動角度調整駆動手段及び/又はスピンドル移動角度調整駆動手段によってスピンドル先端の磁石が薄板の研磨所期位置に来るように位置調節を行い、その後、上部スピンドル及び下部スピンドルの回転及び/又は振動駆動手段によりそれぞれスピンドルを回転させ、磁石2,2に付着した磁性研磨材3と被加工物1を相対運動させ、磁性研磨材3により被加工物1表面を研磨すると共に、開口パターン内部にも侵入する磁性研磨材3により開口パターン壁面も同時に研磨する。
【0047】
また、開口パターン壁面の研磨は、例えば、上部スピンドルと下部スピンドルの回転及び/又は振動速度の差を付けて被加工物1の上面側と下面側における磁性研磨材3の相対運動に差を設けることにより、開口パターン壁面の上面側付近と下面側付近において研磨速度に差をつけ、当該壁面に傾斜を形成することができる。同様に、上部磁石に対する被加工物上面の間隔と下部磁石に対する被加工物の下面の間隔に差を設けることによっても、当該壁面に傾斜を形成することができる。
【0048】
以上、本発明の磁気研磨方法につき、簡単に説明してきたが、使用される装置の細部構成、例えば、上部スピンドル及び下部スピンドルに取り付けられる磁石の数及びその磁極の配列形態(S、N極の配列の他、永久磁石の配設と電磁石の通電制御との併用)、磁石の磁場の変動制御形態(磁石が設置されたスピンドルの回転数制御による周波数変動により磁場を変動制御したり、電磁石が設置された場合は、回転数制御に優先させて電磁石のランダムな電流制御により励磁力を変動させて磁場をランダムに変動制御してもよい。)、上部スピンドル及び下部スピンドル、ならびにワーク保持手段に対する回転ないし振動駆動形態(駆動源は電動のみならず油圧、空気圧でもよいし、磁気研磨材挙動をより活発にするためパルスモータによる非等速回転や回転方向制御がなされてもよい)、磁性研磨材の形状、数等については適宜変更可能である。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0050】
(実施例1)
図1に概略示すような構成を有する装置を用い、図2に示すように、磁性研磨材3としての磁性研磨粒子に加えて、研磨バフ4を併用して、半田ペースト用マスク(ステンレス鋼、厚さ0.1mm)サンプルの研磨を行った。なお、このサンプルにおける開口パターンは図5に示すようなものであり、各開口パターンにおけるレーザ開口後の状態を図6に示す。
【0051】
使用した研磨バフ4は、琢磨布 #101(230mmφ、厚さ2mm)であり、また、磁性研磨粒子としては、図3に模式的に示したような、樹脂粒子表面に無電解Ni-Coめっき層を有し、このめっき層表面に、ダイアモンド粒子固着させた複合磁性砥粒(平均粒径80μm)0.3gを使用した。
【0052】
まず、丸形の開口パターンに対し、上部磁石の回転速度を1200rpm、下部磁石の回転速度を1800rpm、振動速度を0.8Hzとし、研磨時間と回数を変えて、研磨を行った。研磨後における開口部の状態を図7に示す。図7に示すように、いずれの場合においても開口部の良好な研磨が行えたが、時間が長くなるほど、また同じ処理時間では同じ複合磁性砥粒を用いて連続して行うよりも、所定時間ごとに複合磁性砥粒を変えて複数回繰り返す方が良好な研磨が行えた。
【0053】
次に、長方形の開口パターンに対し、上部磁石の回転速度を1200rpm、下部磁石の回転速度を1500rpm、振動速度を0.8Hz、振幅を2cmとし、研磨時間と回数を変えて、研磨を行った。研磨後における開口部の状態を各方向から観察した結果を図8~10に示す。図8~10に示すように、長方形の開口パターンの場合も丸形のものと同様に、いずれの場合においても開口部の良好な研磨が行えたが、時間が長くなるほど、また同じ処理時間では同じ複合磁性砥粒を用いて連続して行うよりも、所定時間ごとに複合磁性砥粒を変えて複数回繰り返す方が良好な研磨が行えた。
【0054】
さらに、同様にして正方形の開口パターンについても研磨を行い、研磨後における開口部の状態を各方向から観察した結果を図11に示す。
【0055】
(実施例2)
次に、磁性研磨材の有無による研磨状態の違いを調べるため、上記実施例1におけると同様の装置構成において、研磨バフと複合磁性砥粒(KMX:アルミナ+鉄、粒子径約80μm)とを併用した場合と、研磨バフのみを用いた場合とで研磨を行った。
【0056】
丸形の開口パターンに対し、振動速度を1.0Hzとし、研磨時間を10分とした。研磨後における開口部の状態を図12に示す。図12に示すように、ステンレスのような硬い材料に対しては、研磨バフと複合磁性砥粒とを併用した場合の方が良好な研磨が行えた。
【0057】
さらに、上述の研磨バフに無電解Ni-Coめっきを施し、磁性バフとしたものを用意し、複合磁性砥粒単独、磁性バフ単独及び複合磁性砥粒と磁性バフの併用した場合についてのサンプル表面の研磨状態の違いを調べた。なお、振動速度を0.27Hz、振幅20mmとし、研磨時間を10分とした。得られた結果を図13に示す。図13に示されるように、いずれも表面の良好な研磨が行えたが、双方を併用した場合が最も良好な研磨が行えた。
【0058】
(実施例3)
研磨における振動方向による影響性を調べた。上記実施例1と同様の装置構成において、研磨バフと複合磁性砥粒(KMX:アルミナ+鉄、粒子径約80μm)を用い、長方形の開口パターンに対し、振動速度を1.0Hzとし、振幅1cm、研磨時間を10分として研磨を行った。なお、実験は、長方形の開口パターンの長軸方向に平行に振動を加えた場合と、短軸方向に平行に振動を加えた場合の双方について行った。研磨前後における開口部の状態を観察した結果を図14に示す。
【0059】
図14に示すように、いずれの場合でも良好な研磨が行われていたが、短軸方向に平行に振動を加えた場合の方がその断面がより良好に研磨されていた。
【0060】
(実施例4)
研磨における振動と回転との影響について調べた。四角、丸、三角の各開口パターンに対し、ゆっくりとした振動とはやい回転を与えながら研磨を行った場合(回転数1900rpm、振動数0.3Hz)と、はやい振動とゆっくりとした回転を与えながら研磨を行った場合(回転数700rpm、振動数1Hz)との双方につき、その研磨の状態を調べた。その結果、早い回転数を加えたものの方が良好な研磨が行えたようであり、この実験においては、振動よりも回転の方が研磨に対する寄与力が高いとの結果が得られた。しかしながら、我々が別途行った実験によれば、回転のみを加えるより、回転と振動とを併用した方が良好な研磨が行えた。なお、図15は、ゆっくりとした振動とはやい回転を与えながら研磨を行った場合の各開口パターンの研磨状態を示す写真である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法の一実施形態における構成を模式的に示す図面である。
【図2】本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法の別の実施形態における要部構成を模式的に示す図面である。
【図3】本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法において用いられる磁性研磨材の一例の構造を模式的に示す図面である。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ本発明に係る開口パターン付き薄板の研磨方法において用いられる磁性研磨材の一例を示す顕微鏡写真である。
【図5】実施例において用いた、被加工物の開口パターンを説明する図面である。
【図6】実施例に用いたサンプルの研磨前における丸形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図7】実施例において行った研磨後におけるサンプルの丸形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図8】実施例において行った研磨前後における長方形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図9】実施例において別の条件にて行った研磨前後における長方形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図10】実施例においてさらに別の条件にて行った研磨前後における長方形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図11】実施例において行った研磨後における正方形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図12】別の実施例において、研磨材を変えて行った研磨前後における丸形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図13】別の実施例において、研磨材を変えて行った研磨前後におけるサンプル表面の状態を示す断面顕微鏡写真である。
【図14】さらに別の実施例において、研磨の際に加える振動方向を変えて行った研磨後における長方形開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【図15】さらに別の実施例において、研磨の際に加える回転及び振動を好ましいものとした場合における、研磨後における各種形状の開口部の状態を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0062】
1 被加工物
2 磁石
3 磁性研磨材
4 バフ
6a 上部スピンドル
6b 下部スピンドル

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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