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明細書 :壁面間移動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4787962号 (P4787962)
公開番号 特開2007-260882 (P2007-260882A)
登録日 平成23年7月29日(2011.7.29)
発行日 平成23年10月5日(2011.10.5)
公開日 平成19年10月11日(2007.10.11)
発明の名称または考案の名称 壁面間移動装置
国際特許分類 B25J   5/00        (2006.01)
FI B25J 5/00 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2006-092730 (P2006-092730)
出願日 平成18年3月30日(2006.3.30)
審査請求日 平成21年2月23日(2009.2.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】斎藤 秀次郎
【氏名】佐藤 啓仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】青山 純
参考文献・文献 特開平05-319259(JP,A)
特開平08-117686(JP,A)
特開昭61-201154(JP,A)
特開昭62-113643(JP,A)
特開2007-253281(JP,A)
特開平6-326369(JP,A)
調査した分野 B25J 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
壁面と壁面の間を移動する壁面間移動装置であって、前記壁面に押し付けられる弾性毛が植え込まれた滑走子を有する一対の滑走子体と、前記弾性毛が前記壁面に接触する範囲で前記滑走子を振幅させる駆動手段と、該駆動手段及び前記滑走子体を支持する移動体本体とを備え
前記滑走子は、植え込み角度が異なる少なくとも2種類の弾性毛を備えることを特徴とする壁面間移動装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記移動体本体に固定されたアクチュエータと、該アクチュエータの伸縮により生じた駆動力を前記壁面に略垂直な方向に変換するカム機構と、該カム機構により変換された駆動力を前記滑走子体に伝達するリンク機構とからなることを特徴とする請求項1に記載の壁面間移動装置。
【請求項3】
前記カム機構は、アクチュエータのロッド先端に設けられた一対のローラと、前記滑走子体に接続された一対の斜面板とからなり、該斜面板に前記ローラを接触させて前記アクチュエータの伸縮を壁面に略垂直な方向に変換することを特徴とする請求項に記載の壁面間移動装置。
【請求項4】
前記リンク機構は、前記滑走子体に回動可能に連結された平行リンクと、該平行リンクを回動可能かつ前記壁面と略平行な方向にスライド可能に支持する平行リンク支持体とからなり、該平行リンク支持体が前記移動体本体に固定されていることを特徴とする請求項に記載の壁面間移動装置。
【請求項5】
前記移動体本体を前記壁面と略平行に維持するとともに落下を防止するためのガイド手段を備えたことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の壁面間移動装置。
【請求項6】
前記ガイド手段は、前記壁面に押し付けられる一対のガイドローラと、該ガイドローラを前記壁面に押し付けるための付勢手段とからなることを特徴とする請求項に記載の壁面間移動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面間を移動する壁面間移動装置に関し、さらに詳しくは、ビルとビルの間のような人間が通れない狭い空間内を自由に移動できる壁面間移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層ビル外壁の剥離の点検作業、球形ガスホルダの溶接線の検査作業、水力発電用ダム等の垂直に近い壁面での危険な作業等を自動化するためのロボットとして、非特許文献1には種々の壁面移動ロボットが開示されている。
【0003】
壁面移動ロボットは、重力に逆らって姿勢を保持しながら壁面を移動することを基本的仕様とし、姿勢を保持するためには、壁面にロボット本体を押し付けることが必要となる。その方法として、磁石による電磁力を利用した壁面への吸着や真空ポンプ等による負圧を利用した吸着等が使用されている。また、移動方法には、脚移動形、車輪走行形、クローラ形、脚移動と車輪走行の中間形等多くの方法が提案されている。
【0004】
ところで、現在、都市高層ビルが立ち並んでおり、ビルとビルの間の空間は人間が通れないほどに狭く取られている。このため、ビルの壁面間のスペースは無駄な空間となっており、この狭い空間内を自由に移動できる移動体があれば、この空間を有効活用することが可能となる。例えば、壁面間の隙間を倉庫代わりにして物品を置いたり、壁面間を伝わって移動して建物の階上や階下を行き来して荷物を運搬したりすることも可能である。
【0005】
そのためには、壁面間を移動する移動ロボット等の移動体が必要である。しかしながら、非特許文献1に記載されたように、現在、片壁面を使って移動する実用化されたロボットは存在するが、両壁面を使って移動する実用化された移動ロボットは見あたらない。

【非特許文献1】日本ロボット学会編、「ロボット工学ハンドブック」、コロナ社出版(1990年)、378~379頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
両壁面を使って移動する実用化された移動ロボットが見あたらない理由は、移動体が壁面間を上下移動する場合、例えば、移動体が移動中壁面にしっかりと保持されて落ちないことや、壁面間で保持されながらどのように移動するか、どのようにして移動推力を得るか等の問題の検討が必要となるためであると考えられる。したがって、これらの問題を解決する新しい移動機構が必要と考えられる。
【0007】
本発明は上述した課題を解決し、壁面間で保持されながら落下せずに移動することができる壁面間移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の壁面間移動装置は全く新しい構造をしており、今までにない新しい移動機構の移動体である。すなわち、壁面と壁面の間を移動する壁面間移動装置であって、前記壁面に押し付けられる弾性毛が植え込まれた滑走子を有する一対の滑走子体と、前記弾性毛が前記壁面に接触する範囲で前記滑走子を振幅させる駆動手段と、該駆動手段及び前記滑走子体を支持する移動体本体とを備えたことを特徴とする。かかる構成によれば、駆動手段により滑走子体を加振させて滑走子を壁面に押圧することによって移動体本体の推進力を得ることができる。
【0009】
また、前記滑走子は、植え込み角度が異なる少なくとも2種類の弾性毛を備えていることが好ましく、前記駆動手段は、前記移動体本体に固定されたアクチュエータと、該アクチュエータの伸縮により生じた駆動力を前記壁面に略垂直な方向に変換するカム機構と、該カム機構により変換された駆動力を前記滑走子体に伝達するリンク機構とからなることが好ましい。
【0010】
前記カム機構は、例えば、アクチュエータのロッド先端に設けられた一対のローラと、前記滑走子体に接続された一対の斜面板とから構成され、前記リンク機構は、例えば、前記滑走子体に回動可能に連結された平行リンクと、該平行リンクを回動可能かつ前記壁面と略平行な方向にスライド可能に支持する平行リンク支持体とからなり、該平行リンク支持体が前記移動体本体に固着されている。
【0011】
さらに、前記移動体本体を前記壁面と略平行に維持するとともに落下を防止するためのガイド手段を設けてもよい。このガイド手段は、例えば、前記壁面に押し付けられる一対のガイドローラと、該ガイドローラを前記壁面に押し付けるための付勢手段とから構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁面間移動装置は、壁面に押し付けられる複数の弾性毛が植え込まれた滑走子と、弾性毛が壁面に接触する範囲で滑走子を振幅させる駆動手段と、駆動手段を支持する移動体本体とを備えていることから、弾性毛の弾性力と摩擦係数との関係により滑走子を利用して移動体本体を壁面間に沿って落下させずに進行させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の壁面間移動装置について、図1~6を参照しつつ具体的な実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の壁面間移動装置の一実施形態を示す側面図である。本図に示すように、本発明の壁面間移動装置は、滑走子11が固定された滑走子体1と、滑走子体1を振幅させる駆動手段2と、滑走子体1及び駆動手段2を支持する移動体本体3と、移動体本体3を壁面と略平行に維持するとともに落下を防止するためのガイド手段4を備えている。
【0015】
図1に示すように、滑走子体1は、複数の滑走子11と、滑走子11を支持する滑走子支持枠12とからなる。ここでは、滑走子支持枠12の両端付近に2つの滑走子11,11をそれぞれ螺子で固定している。もちろん、滑走子支持枠12の全面に大きな1つの滑走子を設けるようにしてもよいし、3つ以上の滑走子を滑走子支持枠12に設けるようにしてもよいし、螺子の代わりに接着剤や両面テープで固着するようにしてもよい。
【0016】
図2は滑走子11の拡大図である。本図に示すように、滑走子11は、植え込み角度が異なる少なくとも2種類の弾性毛21,22が台板23に植え込まれている。ここでは、弾性毛21を70°、弾性毛22を50°の植え込み角度でそれぞれ台板23に植え込んでいる。そして、この弾性毛21,22を壁面に所定の振幅で押し付けることによって本壁面間移動装置の推進力を得る(詳細は後述する)。もちろん、植え込み角度は図示したものに限定されず、例えば、80°と50°の組み合わせにしてもよいし、それ以外の組み合わせにしてもよいし、2種類以上の組み合わせにしてもよい。
【0017】
図3は、図1に示した壁面間移動装置のIII-III断面図である。ただし、図を分かり易くするために、駆動手段2の一部(後述するリンク機構)及びガイド手段4については図を省略してある。
【0018】
本図に示すように、一対の滑走子体1,1が、移動体本体3の左右にそれぞれ配置され、各滑走子体1の内側には斜面板31が螺子によって固定されている。斜面板31は移動装置の進行方向に対して上側が広く、下側が狭くなるようになっている。
【0019】
また、移動体本体3にはアクチュエータ支持フレーム32が接続されており、該アクチュエータ支持フレーム32にアクチュエータ33が鉛直に固定され、そのロッド34が進行方向に伸縮可能となっている。アクチュエータ33には、移動体本体3の自重を軽量化するためにエアシリンダを用いるとよい。ロッド34の先端にはローラ支持フレーム35が接続されており、該ローラ支持フレーム35に一対のローラ36,36が回転可能に支持されている。そして、例えば、アクチュエータ33を図の矢印方向に伸長させると、各ローラ36が各斜面板31を押圧しながら転動し、アクチュエータ33の駆動力は壁面と略垂直な方向(略水平方向)に変換され各滑走子体1が外側にスライドし、壁面に押し付けられる。すなわち、ローラ36と斜面板31とによりカム機構が構成されている。なお、斜面板31及びアクチュエータ33の配置は、図示したものに限定されず、90°回転させた状態(アクチュエータ33が図3の紙面に対して垂直な方向となる状態)に配置してもよい。
【0020】
また、図1に示すように、アクチュエータ33のロッド34の伸縮を補助するためのスライドガイド37を設けてもよい。該スライドガイド37は、アクチュエータ支持フレーム32に沿って配置され、一端がローラ支持フレーム35に固定されている(図1では斜面板31に隠れている)。また、スライドガイド37の胴部にはアクチュエータ33の伸縮範囲と同等又はそれ以上の長さを有する長孔が形成されており、該長孔をアクチュエータ支持フレーム32に固定されたピン38に係止している。ピン38には、スライドガイド37が外れないようにボルト・ナットが嵌められている。したがって、スライドガイド37はロッド34の伸縮とともにアクチュエータ支持フレーム32に沿ってスライドすることとなる。さらに、このスライドガイド37には、アクチュエータ33の休止時の戻りを速くするためのバネ39が取り付けられている。このバネ39は、スライドガイド37に一端が固定されるとともに他端がピン38に固定されている。したがって、ロッド34の伸長に伴ってスライドガイド37がスライドすると、バネ39は伸びることとなり、縮もうとする力が発生する。この力をロッド34の戻りに利用している。
【0021】
図4は、図1に示した壁面間移動装置をIVの方向から見た図である。ただし、図を分かり易くするために、装置の一部(斜面板31等)については図を省略してある。
【0022】
本図に示すように、駆動手段2は、上述したカム機構により変換された駆動力を滑走子体1,1に伝達するリンク機構を備えている。該リンク機構は、滑走子体1に回動可能に連結されたリンク41a,41bから構成される平行リンク41と、平行リンク41を回動可能かつ壁面42と略平行な方向(略鉛直方向)にスライド可能に支持する平行リンク支持フレーム43とからなり、平行リンク支持フレーム43は移動体本体3に固定されている。平行リンク支持フレーム43には、所定の箇所に2つの長孔43a,43bが形成されており、長孔43aにはリンク41a,41aを連結するピンが挿通され、反対側から長孔43aの短径よりも大きい留め金具(例えば、ボルト・ナット等)により長孔43a内をスライドできるように留められている。同様に、長孔43bにもリンク41b,41bを連結するピンが回動かつスライド可能に留められている。また、リンク41b,41bには、一対の平行リンク41,41の同期をとるための補助リンク44が連結されている。補助リンク44は、一端が各リンク41b,41bに回動可能に連結されるリンク44a,44bからなり、各他端は同じ支点を有するように平行リンク支持フレーム43に回動可能に連結されている。
【0023】
また、図1及び図4に示すように、ガイド手段4は、壁面42に押し付けられる一対のガイドローラ45,45と、各ガイドローラ45を支持する一対のガイドローラアーム46,46と、ガイドローラ45に押付力を発生させるためのバネ47と、バネ47の縮む力をガイドローラ45が壁面に押し付けられる方向に変換してガイドローラアーム46に伝達するリンク機構48と、バネ47及びリンク機構48を支持するガイド支持フレーム49とから構成されている。
【0024】
ガイドローラアーム46は、一端に各ガイドローラ45が回転可能に接続され、他端はリンク機構48のピン48aに接続されており、ピン48aの回動によってガイドローラ45が揺動するようになっている。
【0025】
リンク機構48は、ガイド支持フレーム49に回動可能かつ水平に支持された一対のピン48a,48aと、各ピン48aの中間に一端が固定された一対の揺動アーム48b,48bとから構成され、揺動アーム48b,48bの他端は互いにピン結合されており、各ピン48aを支点に揺動可能になっている。なお、一方の揺動アーム48bのピン結合部には長孔が形成されており、この長孔によって各揺動アーム48bの揺動による周方向のずれを吸収している。
【0026】
また、揺動アーム48bどうしのピン結合部のピンにはバネ47の一端が接続されており、バネ47の他端はガイド支持フレーム49に固定されている。ガイド支持フレーム49は移動体本体3に固定されているため、バネ47の縮む力によって揺動アーム48bどうしのピン結合部が上方に引き上げられ、揺動アーム48bを介してピン48aが回動し、ガイドローラアーム46が外側に揺動し、ガイドローラ45が壁面に押し付けられる。
【0027】
次に、上述した壁面間移動装置の動作について説明する。最初に滑走子の作用について図5を参照して説明する。図5は、滑走子の動作原理の説明図であり、(a)は前進、(b)は後進の状態を示している。
【0028】
まず、直方体51の相対する平行な二面に、面に対してα度、β度なる2種類の角度を有する弾性毛をそれぞれN本ずつ合計2N本植え込んだ物体を考え、これを今後、振動滑走子と呼ぶことにする。そして、この物体の全質量をM、全負荷をWとした時、(α,β)という2本で1組の弾性毛を考え、この1組の弾性毛当たりの質量及び負荷をそれぞれm,wで表すと、m=M/N、w=W/Nという基本となる振動滑走子モデルが想定される。これを座標を定めて示したのが、図5である。本図において、直方体51(滑走子本体)はx軸方向にのみ動くように滑らかに拘束されており、長さl,lなる弾性毛がα,βなる角度で本体に植え込んである。これらの弾性毛をα毛,β毛と呼ぶことにする。今、α毛,β毛の先端を板面によってuだけyの位置まで圧したとすると、板面と弾性毛の間の摩擦係数の大きさ如何によっては、図5(a)の点線で示すように、α毛の先端がxbの位置にとどまり、本体が点線の位置まで前進することとなる。
【0029】
次に、板面を元の位置に戻す際、やはり摩擦係数如何によっては、図5(b)に示すように今度はβ毛がその先端を静止させ、α毛が滑りながら前進し、本体が点線の位置まで後退するが、その大きさが図5(a)の前進量より少ないために全体としてある距離だけ滑走することとなる。このようにα毛,β毛を板面によって一定の振幅で加振することにより直方体51(滑走子本体)を滑走させることができる。
【0030】
上述した原理を利用したものが本発明の壁面間移動装置である。したがって、上述したアクチュエータ33を弾性毛21,22が壁面に接触する範囲において振幅させる必要がある。ここで図6は、アクチュエータ33にエアシリンダを用いた場合の空気圧供給システムを示す図である。始めにエアコンプレッサで圧縮空気を発生させる。発生した圧縮空気は、エアコンビネーション内にあるエアフィルタを通して空気をろ過し、レギュレータで圧力を調節し、ルブリケータで給油する。そして、電磁バルブの電磁力を使って空気の流れの開閉を行う。電磁バルブは通電時には圧縮空気がエアシリンダへと送られ、エアシリンダのロッドが圧力を受けて前に進み、上述したカム機構及びリンク機構を介して滑走子体1の滑走子11が壁面を加圧する。また、電磁バルブが遮断されると、エアシリンダ内の空気はエクゾーストフィルタに送られて、油の回収と消音がなされて外に排出される。この空気圧供給システムでは、エアシリンダの繰返し周波数が0.8Hz~25Hzの範囲で駆動し、また、電磁バルブに送られるパルスのデューティ比は0.5~0.1の範囲で調整できるようになっている。
【0031】
かかる空気圧供給システムによってエアシリンダを所定の範囲で振幅させることができ、滑走子11を壁面に沿って滑走させることができ、移動体本体3を壁面間で移動させることができる。
【0032】
なお、上述した実施形態においては、滑走子11の弾性毛21,22が異なる角度で植え込まれている場合について説明したが、例えば、ガイド手段4が移動体本体3の自重を支えることができる場合や別の手段によって移動体本体3の落下を防止することができる場合には、弾性毛21,22を同じ角度で植え込むようにしてもよく、この場合、弾性毛21,22の弾性力と壁面との摩擦力との関係を考慮して、壁面42に押し付けられた弾性毛21,22が元の状態に戻る範囲において駆動手段3により加振させればよい。
【実施例1】
【0033】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の内容の理解を容易とするために示した本発明の具体的な例示の一部に過ぎず、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0034】
図7は、本発明の壁面間移動装置の全体を示す写真である。本図に示すように、壁面間移動装置は、上述した滑走子、駆動手段、移動体本体及びガイド手段を備えている。本試作品の大きさは、全長(高さ):245mm、幅:182mm、奥行き:70mmであり、自重は367gである。
【0035】
図8は、図7に示した壁面間移動装置の滑走子を示す写真である。本図に示す滑走子では、弾性毛に直径約0.6mmのナイロン線を使用し、植え込み角度は70°と50°の2種類とした。台板から弾性毛の先端までの高さは平均11.4mmであるが、±0.3mm程度のばらつきがある。また、70°と50°の弾性毛は各々24本(合計48本)で、2.5mm間隔に交互に植え付けてある。台板はメタクリル樹脂材質で、大きさは、長さ:50mm、幅:20mm、厚さ:3mmであり、さらに底部を平らにするために厚さ0.2mmのスチロール樹脂板を台板と同じ大きさに切って貼り付けた。
【0036】
図9は、図7に示した壁面間移動装置を使用して実際に壁面間を走行させたときの写真である。壁面には、長さ:900mm、幅:450mm、厚さ:15mmのラワン合板を用いた。壁面は壁面幅が5mmから140mmまで調節が可能であり、実験では98mmに固定して使用した。また、壁面の摩擦係数を大きくするために、耐水用ペーパーヤスリの紙を貼り付けて、その紙の中を移動して実験を行った。
【0037】
図10は、図7に示した壁面間移動装置を使用して移動速度を測定した結果を示すグラフである。縦軸は移動速度(mm/s)、横軸はエアシリンダの繰り返し周波数(Hz)を表す。
【0038】
移動速度測定実験方法は、壁面に2点の位置を決め、移動装置が光を発行しながら上昇移動し、その2点間を通過したらフォトトランジスタを使用して受光回路で電気信号に変換して、ユニバーサルカウンタに入力して時間を測定した。そして、2点の距離を通過時間で割って移動速度を求めた。このとき、エアシリンダの周期を0~8kg/cmまで変化させ、空気圧力を変化させたときの移動体の移動速度変化を求めた。また、滑走子の初期荷重を87.5gとした。
【0039】
図10のグラフを見ると、周波数が5Hz未満では移動速度は周波数にほぼ比例して上昇しており、5Hz以上になると、比例関係から飽和した速度となってくる。これはエアシリンダの繰返し周波数が大きくなると、振幅の差がなくなってくるためではないかと考えられる。また、同じ滑走子では空気圧力の大きい方が移動速度が大きい結果となった。これは同じ周波数であれば、より加振力の大きい方が壁面を加圧する力も大きく、移動推力も大きくなって移動速度を大きくなったのではないかと考えられる。しかし、空気圧力が5kg/cmの値においては、弾性毛の植え込み角度が(70°,50°)の組み合わせの方が(80°,50°)の組み合わせのものよりも振幅が大きいため、移動速度も同様に大きい値となった。
【0040】
図11は、図7に示した壁面間移動装置を使用して牽引荷重を測定した結果を示すグラフである。縦軸は牽引荷重値(g)、横軸は空気圧力(kg/cm)を示す。
【0041】
牽引荷重の測定実験方法は、ピエゾ型荷重検出器を用い、移動装置を壁面間に上下逆にして、移動装置の後部にばね定数の大きなバネをワイヤを介して荷重検出器と接続し、移動装置が移動したときの引っ張り荷重を荷重検出器に与えて測定した。荷重検出器で得られた荷重出力信号を電源ユニットを通してDCアンプに信号を入力し増幅して電磁オシログラフに入力する。そして、電磁オシログラフで荷重値を記録する。また、荷重検出器出力値から移動装置の自重を引いた値を牽引荷重とした。なお、このときエアシリンダの繰返し周波数を1Hzとし、壁面に与える初期圧を87.5gとした。
【0042】
図11のグラフを見ると、空気圧力と牽引荷重値には比例関係があり、空気圧力を大きくすると牽引荷重の値も大きくなる。また、同じ空気圧力を与えた場合、弾性毛の植え込み角度が(70°,50°)の組み合わせの方が(80°,50°)の組み合わせのものよりも牽引荷重の値が大きい結果となった。これは(70°,50°)の組み合わせの方が、エアシリンダの振幅値が大きく、その分シリンダのロッドの戻りも大きくなり牽引荷重も大きくなったのではないかと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の壁面間移動装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】滑走子の拡大図である。
【図3】図1に示した壁面間移動装置のIII-III断面図である。
【図4】図1に示した壁面間移動装置をIVの方向から見た図である。
【図5】滑走子の動作原理の説明図であり、(a)は前進、(b)は後進の状態を示している。
【図6】アクチュエータにエアシリンダを用いた場合の空気圧供給システムを示す図である。
【図7】本発明の壁面間移動装置の全体を示す写真である。
【図8】図7に示した壁面間移動装置の滑走子を示す写真である。
【図9】図7に示した壁面間移動装置を使用して実際に壁面間を走行させたときの写真である。
【図10】図7に示した壁面間移動装置を使用して移動速度を測定した結果を示すグラフである。
【図11】図7に示した壁面間移動装置を使用して牽引荷重を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 滑走子体
2 駆動手段
3 移動体本体
4 ガイド手段
11 滑走子
12 滑走子支持枠
21 弾性毛
22 弾性毛
31 斜面板
32 アクチュエータ支持フレーム
33 アクチュエータ
34 ロッド
35 ローラ支持フレーム
36 ローラ
37 スライドガイド
38 ピン
39 バネ
41 平行リンク
42 壁面
43 平行リンク支持フレーム
44 補助リンク
45 ガイドローラ
46 ガイドローラアーム
47 バネ
48 リンク機構
49 ガイド支持フレーム
51 直方体(滑走子本体)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10