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明細書 :壁面間移動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4787965号 (P4787965)
公開番号 特開2008-110432 (P2008-110432A)
登録日 平成23年7月29日(2011.7.29)
発行日 平成23年10月5日(2011.10.5)
公開日 平成20年5月15日(2008.5.15)
発明の名称または考案の名称 壁面間移動装置
国際特許分類 B25J   5/00        (2006.01)
FI B25J 5/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2006-295016 (P2006-295016)
出願日 平成18年10月30日(2006.10.30)
審査請求日 平成21年7月15日(2009.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】斎藤 秀次郎
【氏名】佐藤 啓仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】青山 純
参考文献・文献 特開平05-319259(JP,A)
特開平08-117686(JP,A)
特開昭61-201154(JP,A)
特開昭62-113643(JP,A)
特開2007-253281(JP,A)
調査した分野 B25J 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
壁面と壁面の間を移動する壁面間移動装置であって、前記壁面に押し付けられる複数の弾性毛が植え込まれた少なくとも一対の滑走子と、前記弾性毛が前記壁面に接触する範囲で前記滑走子を振幅させる駆動手段と、該駆動手段を支持する移動体本体とを備え、前記駆動手段は、前記移動体本体に固定されたモータと、該モータの回転運動を前記壁面に略垂直な方向に変換して前記滑走子に伝達する加振機構とからなり
前記滑走子は、前記壁面に沿って前記移動体本体の左右に少なくとも一対ずつ配置され、前記モータは、左側の滑走子を加振させる第1モータと、右側の滑走子を同時に加振させる第2モータとからなる、ことを特徴とする壁面間移動装置。
【請求項2】
前記加振機構は、前記モータの回転運動を前記壁面と略平行な方向の往復直線運動に変換するクランク機構と、該クランク機構の往復直線運動を前記壁面と略垂直な方向の往復直線運動に変換するリンク機構とからなる、請求項1に記載の壁面間移動装置。
【請求項3】
前記第1モータ及び前記第2モータの回転数を制御して前記移動体本体を直進又は曲進させる制御装置を有する、請求項1又は請求項2に記載の壁面間移動装置。
【請求項4】
前記移動体本体の姿勢を計測するセンサを有し、該センサの出力に基づいて前記制御装置により前記第1モータ及び前記第2モータの回転数を制御する、請求項に記載の壁面間移動装置。
【請求項5】
前記センサは、ロータリ・エンコーダと、該ロータリ・エンコーダの軸に取り付けられた重りとからなる、請求項に記載の壁面間移動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面間を移動する壁面間移動装置に関し、さらに詳しくは、ビルとビルの間のような人間が通れない狭い空間内を自由に移動できる壁面間移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層ビル外壁の剥離の点検作業、球形ガスホルダの溶接線の検査作業、水力発電用ダム等の垂直に近い壁面での危険な作業等を自動化するためのロボットとして、非特許文献1には種々の壁面移動ロボットが開示されている。
【0003】
壁面移動ロボットは、重力に逆らって姿勢を保持しながら壁面を移動することを基本的仕様とし、姿勢を保持するためには、壁面にロボット本体を押し付けることが必要となる。その方法として、磁石による電磁力を利用した壁面への吸着や真空ポンプ等による負圧を利用した吸着等が使用されている。また、移動方法には、脚移動形、車輪走行形、クローラ形、脚移動と車輪走行の中間形等多くの方法が提案されている。

【非特許文献1】日本ロボット学会編「ロボット工学ハンドブック」コロナ社出版(1990年)378~379頁
【0004】
ところで、現在、都市高層ビルが立ち並んでおり、ビルとビルの間の空間は人間が通れないほどに狭く取られている。このため、ビルの壁面間のスペースは無駄な空間となっており、この狭い空間内を自由に移動できる移動体があれば、この空間を有効活用することが可能となる。例えば、壁面間の隙間を倉庫代わりにして物品を置いたり、壁面間を伝わって移動して建物の階上や階下を行き来して荷物を運搬したりすることも可能である。
【0005】
そのためには、壁面間を移動する移動ロボット等の移動体が必要である。しかしながら、非特許文献1に記載されたように、現在、片壁面を使って移動する実用化されたロボットは存在するが、両壁面を使って移動する実用化された移動ロボットは見あたらない。両壁面を使って移動する実用化された移動ロボットが見あたらない理由は、移動体が壁面間を上下移動する場合、例えば、移動体が移動中壁面にしっかりと保持されて落ちないことや、壁面間で保持されながらどのように移動するか、どのようにして移動推力を得るか等の問題の検討が必要となるためであると考えられる。
【0006】
本願発明者らは、これらの問題を解決する新しい移動機構を既に提案している(特許文献1参照)。かかる特許文献1に記載された壁面間移動装置は、壁面に押し付けられる弾性毛が植え込まれた滑走子を有する一対の滑走子体と、弾性毛が壁面に接触する範囲で滑走子を振幅させる駆動手段と、駆動手段及び滑走子体を支持する移動体本体とを備えたことを特徴としている。そして、実施形態の1つとして、前記駆動手段にエアシリンダを採用したものが開示されている。

【特許文献1】特願2006-092730
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された壁面間移動装置において、エアシリンダを採用した場合には、(1)移動体本体に搭載されたエアシリンダまで圧縮空気をエアチューブで送る必要があり、エアチューブ自体が空気圧に耐えうるため硬く作られていることから、エアチューブの重さが上昇中の移動体に逆向きの負荷となり上昇を困難にしてしまう、(2)エアシリンダは、繰返し周波数が7Hz以上になるとピストンロッドの動作が追従していけず、また、電磁弁のパルスと実際のピストンロッドの動きに時間的な遅延もあることから、エアチューブが長ければ長いほど遅延時間は大きくなってしまう等の問題があり、結果として、エネルギー効率が好ましくなく、移動速度に限界があり、移動速度の正確な制御も困難であった。
【0008】
本発明は上述した課題を解決したものであって、壁面間で保持されながら落下せずに移動することができるだけでなく、エネルギー効率に優れ、移動速度を速くすることができ、移動速度の制御を容易に行うことができる壁面間移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、壁面と壁面の間を移動する壁面間移動装置であって、前記壁面に押し付けられる複数の弾性毛が植え込まれた少なくとも一対の滑走子と、前記弾性毛が前記壁面に接触する範囲で前記滑走子を振幅させる駆動手段と、該駆動手段を支持する移動体本体とを備え、前記駆動手段は、前記移動体本体に固定されたモータと、該モータの回転運動を前記壁面に略垂直な方向に変換して前記滑走子に伝達する加振機構とからなる、ことを特徴とする壁面間移動装置を提供する。かかる構成によれば、モータ及び加振機構により滑走子を加振させて滑走子を壁面に押圧することによって移動体本体の推進力を得ることができる。
【0010】
前記加振機構は、前記モータの回転運動を前記壁面と略平行な方向の往復直線運動に変換するクランク機構と、該クランク機構の往復直線運動を前記壁面と略垂直な方向の往復直線運動に変換するリンク機構とから構成してもよい。
【0011】
また、前記滑走子を前記壁面に沿って前記移動体本体の左右に少なくとも一対ずつ配置し、前記モータを、左側の滑走子を加振させる第1モータと、右側の滑走子を同時に加振させる第2モータとから構成するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の壁面間移動装置は、前記各モータの回転数を制御して前記移動体本体を直進又は曲進させる制御装置を有することが好ましい。かかる構成により、移動体本体の移動方向をコントロールすることができる。
【0013】
さらに、前記移動体本体の姿勢を計測するセンサを設け、該センサの出力に基づいて前記制御装置により前記各モータの回転数を制御するようにしてもよいし、前記センサを、ロータリ・エンコーダと、該ロータリ・エンコーダの軸に取り付けられた重りとから構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明の壁面間移動装置によれば、弾性毛の弾性力と摩擦係数との関係により滑走子を利用して移動体本体を壁面間に沿って落下させずに進行させることができる。また、滑走子の加振手段としてモータを採用したことにより、軽量な電線でエネルギーを供給することができ移動体本体の上昇の妨げにならない、応答遅延の問題が生じないので移動速度を速くすることができる、モータの回転数を制御するだけで移動速度や移動方向を制御することができる等の優れた効果を有し、エネルギー効率にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の壁面間移動装置について、図1~図5を参照しつつ具体的な実施形態を説明する。ここで、図1は本発明の壁面間移動装置の一実施形態を示す側面図であり、図2は図1におけるII矢視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明の壁面間移動装置は、壁面に押し付けられる複数の弾性毛1aが植え込まれた四対の滑走子1と、弾性毛1aが壁面に接触する範囲で滑走子1を振幅させる駆動手段2と、駆動手段2を支持する移動体本体3とを備え、駆動手段2は、移動体本体3に固定されたモータ4と、モータ4の回転運動を壁面に略垂直な方向に変換して滑走子1に伝達する加振機構5と、から構成されている。また、本実施形態では、各モータ4の回転数を制御して移動体本体3を直進又は曲進させる制御装置(図示せず)と、移動体本体3の姿勢を計測するセンサ6とが移動体本体3に設けられており、センサ6の出力に基づいて各モータ4の回転数を制御するようにしている。
【0017】
前記滑走子1は、図2における左右横並びの2つ滑走子1,1を一対として勘定している。すなわち、一方の壁面に押し付けられる滑走子1と他方の壁面に押し付けられる滑走子1とから構成される少なくとも一対の滑走子1,1があれば、本発明の壁面間移動装置の滑走子1として成立しうる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態では四対の滑走子1を使用しているが、一方の壁面を押し付ける4つの滑走子1(図1に図示されている4つの滑走子1)を1つに纏めた一対の滑走子を採用してもよい。また、一方の壁面を押し付ける上部の2つの滑走子1(図1に図示されている4つの滑走子1のうち上側の2つの滑走子1)を1つに纏め、同様に下部の2つの滑走子を1つに纏めた二対の滑走子を採用してもよい。
【0019】
ここで、図3は、滑走子1の拡大図であり、(A)は第1実施形態、(B)は第2実施形態を示している。移動体本体3を壁面と壁面との間で保持するためには保持する物が必要であり、壁面にしっかりと保持する治具として本発明では滑走子1を採用している。
【0020】
図3(A)に示すように、滑走子1は複数の弾性毛1aを台板1bに植え付けた形状をしている。弾性毛1aには、例えば、ナイロン線を使用することができる。図3(A)に示す第1実施形態では、全ての弾性毛1aを約80°の植え込み角度で植え付けている。この植え込み角度は、移動装置全体の重量、移動速度、滑走子1の大きさ、弾性毛1aの材質や長さ等の諸条件により設定されるものであり、80°に限定されるものではない。
【0021】
また、図3(B)に示す第2実施形態では、植え込み角度が異なる少なくとも2種類の弾性毛31,32を台板33に植え付けている。ここでは、弾性毛31の植え込み角度を70°、弾性毛32の植え込み角度を50°としているが、かかる植え込み角度に限定されるものではなく、例えば、80°と50°の組み合わせにしてもよいし、それ以外の組み合わせにしてもよいし、2種類以上の組み合わせにしてもよい。
【0022】
かかる滑走子1は、後述する駆動手段2に連結された台座11に、螺子、接着剤、両面テープ等により固定される。図1及び図2に示す実施形態では、台座11も滑走子1と同じ数だけ用意したが、滑走子1の形状に合わせて適宜変更できることは言うまでもない。例えば、一方の壁面側に1枚の大きな台座を用意したり、図1の上部又は下部において左右方向に長い台座を用意したりして、その台座に複数の滑走子1を固定するようにしてもよい。また、滑走子1の弾性毛1aを台座11に直接植え付けるようにしてもよい。なお、滑走子1の動作原理については、本願発明者らによる特許文献1(特願2006-092730)に記載されているので、ここでは説明を省略する。
【0023】
駆動手段2の一部を構成するモータ4は、いわゆる電動モータであり、図示しない電線により電気エネルギーが供給され駆動軸を回転するようになっている。電源は、移動体本体3から離間した外部に配置してもよいし、移動体本体3に搭載した電池であってもよい。また、モータ4は、直流モータでも交流モータでもよい。
【0024】
かかるモータ4は、具体的には図1に示すように、左側の上部一対及び下部一対の滑走子1を同時に加振させる第1モータ4aと、右側の上部一対及び下部一対の滑走子1を同時に加振させる第2モータ4bとから構成される。第1モータ4a及び第2モータ4bは、移動体本体3の略中央部に駆動軸が略水平方向となるように並列に配置されており、その軸端は互いに外方を向くように配置されている。なお、各駆動軸の先端には所定の歯車と連結可能なギヤが設けられている。
【0025】
駆動手段2の一部を構成する加振機構5は、モータ4(第1モータ4a及び第2モータ4b)の回転運動を壁面と略平行な方向の往復直線運動に変換するクランク機構12と、クランク機構12の往復直線運動を壁面と略垂直な方向の往復直線運動に変換するリンク機構13とから構成されている。
【0026】
ここで、図4は、駆動手段2の模式図である。図4に示すように、クランク機構12は、クランク41及びスライダ42を有するスライダクランク機構であり、クランク41の一端はモータ4により回転される回転台43に回動可能に連結されている。また、クランク41の他端はスライダ42の略中間部に回動可能に連結されている。スライダ42は、移動体本体3のフレームに形成された長孔44に摺動可能に連結されている。回転台43は、モータ4のギヤと噛合する歯車部を有し、回転軸は移動体本体3のフレームに支持されている。
【0027】
リンク機構13は、滑走子1及びスライダ42に連結される一対の平行リンク45,45と、滑走子1及び移動体本体3に連結される支持リンク46とを有する。具体的には、平行リンク45,45の一端は、滑走子1の台座11の両端部にそれぞれ回動可能に連結されており、他端は、平行リンク45,45が平行となるようにスライダ42の両端にそれぞれ回動可能に連結されている。また、支持リンク46の一端は、滑走子1の台座11の一端部に回動可能に連結されており、他端は、移動体本体3のフレームに回動可能に連結されている。かかるリンク機構13は、図4において、左右対称となるように配置されており、支持リンク46の移動体本体3との連結部及び平行リンク45,45のスライダ42との連結部は左右のリンク機構13で共有する連結部となっている。なお、リンク機構12は、図1に示すように、台座11の両側に連結されている。
【0028】
上述した駆動手段2によれば、モータ4の駆動により回転台43が回転し、回転台43に連結されたクランク41の一端が回転する。クランク41の他端は長孔44に沿って摺動し、スライダ42は長孔44に沿って往復直線運動を行う。さらに、平行リンク45,45の一端がスライダ42と共に往復直線運動を行い、支持リンク46は移動体本体3との連結部を中心に回動する。その結果、滑走子1の台座11が移動体本体3と平行を保持しつつ壁面に略垂直な方向に振幅することとなる。
【0029】
前記移動体本体3は、上述した駆動手段2を支持する枠体から構成されている。具体的には、図1及び図2に示すように、左側の駆動手段を支持する左フレーム3aと、右側の駆動手段を支持する右フレーム3bと、左フレーム3aと右フレーム3bを平行に連結する上部フレーム3c及び下部フレーム3dと、モータ4を支持するモータ支持フレーム3eとから構成されている。
【0030】
左フレーム3a及び右フレーム3bは、それぞれ2本のフレームにより構成されており、それぞれのフレームに上述した長孔44が形成されるとともに、支持リンク46が回動可能に連結されており、駆動手段2のクランク機構12及びリンク機構13が連結されている。また、モータ支持フレーム3eは、ここでは直方体の外形を形成する6本のフレームにより構成されているが、モータ4を水平に支持できればよく、図示した構成に限定されるものではない。また、各フレームは、螺子で連結されているが、溶接や接着剤により連結するようにしてもよい。
【0031】
前記センサ6は、例えば、図1及び図2に示すように、ロータリ・エンコーダ14と、ロータリ・エンコーダ14の軸に取り付けられた重り15とから構成される。移動体本体3の傾きにかかわらず、重り15は常に鉛直方向に垂れるため、その位置をロータリ・エンコーダ14で計測することにより移動体本体3の傾斜角度を計測することができる。なお、センサ6は、移動体本体3の傾斜角度を計測できるものであればよく、液体を用いたもの、レーザや赤外線を用いたもの等、種々のものを採用することができる。
【0032】
ここで、図5は、壁面間移動装置の姿勢制御方法の概念説明図である。図5に示すように、移動体本体3を設定角度Aの方向に移動させる場合を想定する。まず、移動体本体3の設定角度Aに設定し、位置αから進行方向に移動体本体3を移動させる。位置βにおいて、実測角度がBだったとすると、修正すべき角度は実測角度Bから設定角度Aを差し引いた修正角度Cである。そして、制御装置(図示せず)によりモータ4の回転数を変化させて滑走子1を加振させることによって修正角度Cが0となるように移動体本体3の姿勢を制御する。かかる制御を用いることによって、移動体本体3を任意に直進又は曲進させることができる。
【0033】
例えば、移動体本体3の角度が設定角度の±1°の範囲以内であれば、両方のモータ4(第1モータ4a及び第2モータ4b)に同じ回転数を与え、それを超える角度のときは、傾いているほうのモータ4を回転させて、もう片方のモータ4を停止して、その場で移動体の方向を修正して移動するようにすればよい。
【0034】
上述した本発明の壁面間移動装置によれば、滑走子1の駆動手段としてモータ4を採用したことにより、軽量な電線でエネルギーを供給することができ、移動体本体3の上昇を妨げることなく、滑走子1を利用して移動体本体3を壁面間に沿って落下させずに進行させることができる。また、応答遅延の問題が生じないので移動速度を速くすることができ、モータの回転数を制御するだけで移動速度や移動方向を制御することもでき、エネルギー効率にも優れている。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の内容の理解を容易とするために示した本発明の具体的な例示の一部に過ぎず、本発明は何らこれらに限定されるものではない。ここで、図6は本発明の壁面間移動装置を試験的に作成した壁面間に設置した状態を示す写真であり、図7は図6の壁面間移動装置に採用した滑走子1の拡大図であり、図8は図6の壁面間移動装置に採用した制御システム構成図である。
【0036】
(滑走子)
図7に示した滑走子1の弾性毛1aには直径約1.25mmのナイロン線を使用した。ナイロン線のヤング率は530kg/mmで、台板1bから弾性毛1aの先端までの高さは平均16.5mmとしたが、高さについては数mm程度のばらつきがある。また、弾性毛1aの傾斜角度は80°とし、5mm間隔で24本植え付けた。台板1bはメタクリル樹脂材質で、大きさは長さ50mm、幅20mm、厚さ3mmであり、底部を平らにするために厚さ0.5mmの塩化ビニル樹脂板を台板1bと同じ大きさに切って貼り付けた。
【0037】
(移動体本体)
図6に示した移動体本体3は、全長385mm、幅220mm、自重943gであり、前後(図1の幅方向)の滑走子1の中心位置間の距離は212mm、左右(図2の幅方向)の滑走子1の中心位置間の距離は158mmであった。使用したモータ4は、直流ギャードモータで、定格電圧24V、回転数137rpm、トルク2.1kgcm、重さ155gである。
【0038】
(壁面)
壁面は長さ900mm、幅450mm、厚さ15mmのラワン合板を使用した。実験では壁面間隔を128mmに固定して行った。
【0039】
(上昇速度測定試験)
移動装置の上昇速度は、壁面の上下2点に光源を設け、その光源を移動体本体3が遮る通過時間を測定することによって求めた。具体的には、移動体本体3の先端に遮光板を取り付け、移動体本体3が各光源の光を遮ると、フォトトランジスタを使用した受光回路に信号が入り、さらに波形整形回路からスタートパルスとストップパルスが出力され、ユニバーサルカウンタに入力して時間間隔を測定した。2点間の距離は50mmとし、実験を5回以上行ったときの平均速度は10.9mm/sであった。
【0040】
(牽引荷重測定試験)
移動装置の牽引荷重を荷重検出器を使って測定した。測定方法は移動体本体3の後部にワイヤをつなぎ、その先に荷重検出器を接続した。そして、荷重検出器の検出出力を電源ユニットに入力して電圧出力し、さらにDCアンプに入力して信号を増幅して電磁オシログラフで記録した。移動体の最大の牽引荷重は約2.8kgであった。
【0041】
(制御方法)
図8に示した制御システムを用いて、移動体本体3の上部に取り付けてあるロータリ・エンコーダ14の軸に取り付けた重り15により、移動体本体3の角度を検出し、検出角度をエンコーダ入力回路に入力する。さらにPI01に送られ、CPU(Central Processing Unit)にデータが入力される。CPUでデータの処理が行われ、その結果をCTC(Counter Timer Circuit)に出力する。CTCではモータ4の入力周波数を変えて出力されるが、CTCで単安定マルチバイブレータにより出力パルス幅を広げられ、モータ駆動回路に送られて、モータ4が回転し移動体本体3が移動する。このとき、タイマ回路から4Hzのパルスを出力しCTCに入力する。CTCはここで1Hzのパルスに変換し、割込線を介してCPUに対して割り込みをかける。CTCから割り込みのかかったCPUは、再びエンコーダからのデータをPI01を通して受け取り、CPUで演算してモータ駆動回路に送られる。移動体本体3の上昇をストップさせたいときは、ストップ回路よりストップパルスを出力し、PI02を通してモータ駆動回路にパルスを送り、モータ4が停止するようになっている。本システムにおいて割り込みは、多数の検出データの入力と制御データの出力を扱うことが多く、動作速度の高速性が要求される。そのためハードウエアにより優先度を設け、本システムでは、PI01、PI02、CTCの順に割り込み優先度を設けた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の壁面間移動装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1におけるII矢視図である。
【図3】滑走子1の拡大図であり、(A)は第1実施形態、(B)は第2実施形態を示している。
【図4】駆動手段2の模式図である。
【図5】壁面間移動装置の姿勢制御方法の概念説明図である。
【図6】本発明の壁面間移動装置を試験的に作成した壁面間に設置した状態を示す写真である。
【図7】図6の壁面間移動装置に採用した滑走子1の拡大図である。
【図8】図6の壁面間移動装置に採用した制御システム構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 滑走子
1a,31,32 弾性毛
1b,33 台板
2 駆動手段
3 移動体本体
3a 左フレーム
3b 右フレーム
3c 上部フレーム
3d 下部フレーム
3e モータ支持フレーム
4 モータ
4a 第1モータ
4b 第2モータ
5 加振機構
6 センサ
11 台座
12 クランク機構
13 リンク機構
14 ロータリ・エンコーダ
15 重り
41 クランク
42 スライダ
43 回転台
44 長孔
45 平行リンク
46 支持リンク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7