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明細書 :壁面間移動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4945759号 (P4945759)
公開番号 特開2008-221410 (P2008-221410A)
登録日 平成24年3月16日(2012.3.16)
発行日 平成24年6月6日(2012.6.6)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 壁面間移動装置
国際特許分類 B25J   5/00        (2006.01)
FI B25J 5/00 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2007-063663 (P2007-063663)
出願日 平成19年3月13日(2007.3.13)
審査請求日 平成21年11月25日(2009.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】斎藤 秀次郎
【氏名】佐藤 啓仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】青山 純
参考文献・文献 特開平04-304983(JP,A)
特開平07-267325(JP,A)
特開平08-117686(JP,A)
特開平06-122367(JP,A)
調査した分野 B25J 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
壁面と壁面の間を移動する壁面間移動装置であって、前記壁面の両面に対して同時に押し付けられる少なくとも一対の保持部を有する第一移動部と、該第一移動部に並設されるとともに前記壁面の両面に対して同時に押し付けられる少なくとも一対の保持部を有する第二移動部と、前記第一移動部及び前記第二移動部に回動可能かつ伸縮可能に連結されたガイド部と、前記第一移動部及び前記第二移動部の各々に配置されるとともに前記各保持部を壁面に対して接触又は離間させる開閉手段と、前記第一移動部及び第二移動部を近接又は離間可能に連結する伸縮手段と、前記第一移動部又は前記第二移動部の位置を前記壁面に沿って移動させるスライド手段と、を備えており、
前記開閉手段は、前記第一移動部及び前記第二移動部に配置された第1のサーボモータと、該サーボモータの回転軸と前記各保持部とを連結する第1のリンク機構とからなり、前記第1のサーボモータ及び前記第1のリンク機構を介して前記保持部を前記壁面に近接又は離間させ、
前記伸縮手段は、前記第二移動部に配置された第2のサーボモータと、該サーボモータの回転軸と前記第一移動部とを連結する第2のリンク機構とからなり、前記第2のサーボモータ及び前記第2のリンク機構を介して前記第一移動部を前記第二移動部に近接又は離間させ、
前記スライド手段は、前記第一移動部に配置された第3のサーボモータと、該サーボモータの回転軸と前記ガイド部とを連結する第3のリンク機構とからなり、
前記第3のリンク機構の前記第3のサーボモータの回転軸側の端部が、前記第3のサーボモータの回転軸と同じ高さにある場合は、前記第一移動部を前記第二移動部と垂直状態に維持し、
前記第3のリンク機構の前記第3のサーボモータの回転軸側の端部が、前記第3のサーボモータの回転軸より低い高さにある場合は、前記第一移動部を前記第二移動部に対して右側に移動させ、
前記第3のリンク機構の前記第3のサーボモータの回転軸側の端部が、前記第3のサーボモータの回転軸より高い高さにある場合は、前記第一移動部を前記第二移動部に対して左側に移動させ、
前記第一移動部を前記壁面に沿って前記第二移動部を中心に回動させることを特徴とする壁面間移動装置。
【請求項2】
前記保持部は、台板と、該台板に植え込まれた複数の弾性毛とからなる、請求項1に記載の壁面間移動装置。
【請求項3】
前記スライド手段は、前記第二移動部を前記第一移動部と垂直な状態に移動させる、請求項1又は2に記載の壁面間移動装置。
【請求項4】
前記第一移動部又は前記第二移動部の現在位置を把握する位置把握手段と、該位置把握手段の出力に基づいて前記開閉手段、前記伸縮手段又は前記スライド手段を制御する制御手段と、を備える、請求項1~のいずれかに記載の壁面間移動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面間を移動する壁面間移動装置に関し、さらに詳しくは、ビルとビルの間のような人間が通れない狭い空間内を自由に移動できる壁面間移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層ビル外壁の剥離の点検作業、球形ガスホルダの溶接線の検査作業、水力発電用ダム等の垂直に近い壁面での危険な作業等を自動化するためのロボットとして、非特許文献1には種々の壁面移動ロボットが開示されている。
【0003】
壁面移動ロボットは、重力に逆らって姿勢を保持しながら壁面を移動することを基本的仕様とし、姿勢を保持するためには、壁面にロボット本体を押し付けることが必要となる。その方法として、磁石による電磁力を利用した壁面への吸着や真空ポンプ等による負圧を利用した吸着等が使用されている。また、移動方法には、脚移動形、車輪走行形、クローラ形、脚移動と車輪走行の中間形等多くの方法が提案されている。
【0004】
ところで、現在、都市高層ビルが立ち並んでおり、ビルとビルの間の空間は人間が通れないほどに狭く取られている。このため、ビルの壁面間のスペースは無駄な空間となっており、この狭い空間内を自由に移動できる移動体があれば、この空間を有効活用することが可能となる。例えば、壁面間の隙間を倉庫代わりにして物品を置いたり、壁面間を伝わって移動して建物の階上や階下を行き来して荷物を運搬したりすることも可能である。また、このような壁面間は、道路の側溝、両壁に囲まれた通路やダクト等、至る所に存在している。
【0005】
かかる壁面間の隙間を有効活用するためには、狭い壁面間を移動する移動ロボット等の移動体が必要である。しかしながら、非特許文献1に記載されたように、現在、片壁面を使って移動する実用化されたロボットは存在するが、両壁面を使って移動する実用化された移動ロボットは見あたらない。
【0006】
両壁面を使って移動する実用化された移動ロボットが見あたらない理由は、移動体が壁面間を上下移動する場合、例えば、移動体が移動中壁面にしっかりと保持されて落ちないことや、壁面間で保持されながらどのように移動するか、どのようにして移動推力を得るか等の問題の検討が必要となるためであると考えられる。
【0007】
本願発明者らは、これらの問題を解決する新しい移動機構を既に提案している(特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1に記載された壁面間移動装置は、壁面に押し付けられる弾性毛が植え込まれた滑走子を有する一対の滑走子体と、弾性毛が壁面に接触する範囲で滑走子を振幅させる駆動手段と、駆動手段及び滑走子体を支持する移動体本体とを備えている。そして、実施形態の1つとして、前記駆動手段にエアシリンダを採用したものが開示されている。
【0008】
また、特許文献2に記載された壁面間移動装置は、壁面に押し付けられる複数の弾性毛が植え込まれた少なくとも一対の滑走子と、弾性毛が壁面に接触する範囲で滑走子を振幅させる駆動手段と、駆動手段を支持する移動体本体とを備え、前記駆動手段は、前記移動体本体に固定されたモータと、該モータの回転運動を前記壁面に略垂直な方向に変換して前記滑走子に伝達する加振機構とから構成されている。特許文献2に記載された発明では、特に、駆動手段にいわゆる電動モータを採用したことを特徴とする。

【非特許文献1】日本ロボット学会編 ロボット工学ハンドブック コロナ社出版(1990年) 378~379頁
【特許文献1】特願2006-092730
【特許文献2】特願2006-295016
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された壁面間移動装置では、壁面間を上昇又は下降することはできるが、横方向(例えば、壁面間の奥行方向)に移動することは困難であった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決したものであって、その目的は、壁面間で保持されながら落下せずに移動することができるだけでなく、上下左右の任意の方向に移動することができる壁面間移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、壁面と壁面の間を移動する壁面間移動装置であって、前記壁面の両面に対して同時に押し付けられる少なくとも一対の保持部を有する第一移動部と、該第一移動部に並設されるとともに前記壁面の両面に対して同時に押し付けられる少なくとも一対の保持部を有する第二移動部と、前記第一移動部及び前記第二移動部に回動可能かつ伸縮可能に連結されたガイド部と、前記第一移動部及び前記第二移動部の各々に配置されるとともに前記各保持部を壁面に対して接触又は離間させる開閉手段と、前記第一移動部及び第二移動部を近接又は離間可能に連結する伸縮手段と、前記第一移動部又は前記第二移動部の位置を前記壁面に沿って移動させるスライド手段と、を備えていることを特徴とする。ここで、前記保持部は、台板と、該台板に植え込まれた複数の弾性毛と、から構成してもよい。
【0012】
本発明の壁面間移動装置において、前記開閉手段は、前記第一移動部及び前記第二移動部に配置されたサーボモータと、該サーボモータの回転軸と前記各保持部とを連結するリンク機構と、からなり、前記サーボモータ及び前記リンク機構を介して前記保持部を前記壁面に近接又は離間させるように構成してもよい。
【0013】
本発明の壁面間移動装置において、前記伸縮手段は、前記第二移動部に配置されたサーボモータと、該サーボモータの回転軸と前記第一移動部とを連結するリンク機構と、からなり、前記サーボモータ及び前記リンク機構を介して前記第一移動部を前記第二移動部に近接又は離間させるように構成してもよい。
【0014】
本発明の壁面間移動装置において、前記スライド手段は、前記第一移動部に配置されたサーボモータと、該サーボモータの回転軸と前記ガイド部とを連結するリンク機構と、からなり、前記サーボモータ及び前記リンク機構を介して前記第一移動部を前記壁面に沿って前記第二移動部を中心に回動させるように構成してもよい。
【0015】
本発明の壁面間移動装置において、前記第一移動部又は前記第二移動部の現在位置を把握する位置把握手段と、該位置把握手段の出力に基づいて前記開閉手段、前記伸縮手段又は前記スライド手段を制御する制御手段と、を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明の壁面間移動装置によれば、伸縮手段に加えてスライド手段を搭載したことにより、横方向(例えば、壁面間の奥行方向)に移動することができ、上下左右の任意の方向(例えば、垂直方向移動、斜め方向移動、S字等の曲線移動、水平方向移動等)に移動することができる。また、開閉手段により、第一移動部及び第二移動部の保持部を任意に壁面に押し付けることができ、壁面間移動装置を落下させずに進行させることができる。また、位置把握手段を設けることにより、現在位置を把握して自走させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の壁面間移動装置について、図1~図8を参照しつつ具体的な実施形態を説明する。ここで、図1は、本発明の壁面間移動装置の一実施形態を示す側面図である。なお、図の右側の壁面は、説明の都合上、図を省略してある。また、図2は、図1におけるII矢視概略図である。なお、第一移動部及び第二移動部に搭載された開閉機構、伸縮機構及びスライド機構については、説明の都合上、図を省略してある。また、図3は伸縮手段の説明図であり、図4はスライド手段の説明図である。なお、図3及び4において、第一移動部1及び第二移動部2は簡略化して図示している。
【0018】
図1~図3に示すように、本発明の壁面間移動装置は、壁面の両面に対して同時に押し付けられる二対の保持部1a,1aを有する第一移動部1と、第一移動部1に並設されるとともに壁面の両面に対して同時に押し付けられる二対の保持部2a,2aを有する第二移動部2と、第一移動部1及び第二移動部2に回動可能かつ伸縮可能に連結された一対のガイド部3と、第一移動部1及び第二移動部2の各々に配置されるとともに各保持部1a,2aを壁面に対して接触又は離間させる開閉手段4,4と、第一移動部1及び第二移動部2を近接又は離間可能に連結する伸縮手段5と、第一移動部1又は第二移動部2の位置を壁面に沿って移動させるスライド手段6と、を備えている。
【0019】
前記第一移動部1は、進行方向の上流側に配置される。この第一移動部1は、例えば、ロ字形状の左右一対の枠体1b,1bと、枠体1b同士を連結する上下一対の支持体1c,1cとから構成される本体を有する。また、第一移動部1は、保持部1aを支持する左右一対の支持枠1dを有する。この各支持枠1dと本体(具体的には枠体1b)とは、4本のリンク1eにより連結されており、図1に示すように、本体の両側で平行リンク機構が形成されている。したがって、この平行リンク機構を後述する開閉手段4により動かすことによって、図1に示すように、保持部1aを開閉動作させることができる。
【0020】
前記保持部1aは、図1における左右両側の2つ保持部1a,1aを一対として勘定している。すなわち、一方の壁面に押し付けられる保持部1aと他方の壁面に押し付けられる保持部1aとから構成される少なくとも一対の保持部1a,1aがあれば、本発明の壁面間移動装置の保持部1aとして成立しうる。ここでは、図2に示すように、二対の保持部1aを使用している。
【0021】
また、本実施形態において、保持部1aは、図1に示すように、保持部1は複数の弾性毛1fを台板1gに植え付けた形状をしている。弾性毛1fには、例えば、ナイロン線を使用することができる。ここでは、全ての弾性毛1fを約80°の植え込み角度で植え付けている。この植え込み角度は、移動装置全体の重量、移動速度、保持部1aの大きさ、弾性毛1fの材質や長さ等の諸条件により設定されるものであり、80°に限定されるものではない。また、本実施形態で採用した弾性毛タイプの保持部1aに替えて、ゴム、バネ、スポンジ等の弾性体を保持部1aとして使用してもよいことは勿論である。
【0022】
前記第二移動部2は、進行方向の下流側に配置される。かかる第二移動部2の構造は、上述した第一移動部1と基本的に同じであるため、詳細な説明を省略し、相違する点についてのみ簡単に説明する。図1に示すように、平行リンク機構は、上下対称に配置されており、第一移動部1及び第二移動部2の平行リンク機構は内側から外側に開き、外側から内側に閉じるように構成されている。すなわち、平行リンク機構は、第一移動部1の保持部1aを上に引き上げる方向に開き、第二移動部2の保持部2aを下に引き下げる向きに開くようにしてある。これは支持面をなるべく本体の重心位置に近づけて、制御時の重心の移動を少なくするためである。なお、保持部1a,2aの弾性毛の傾きは、第一移動部1及び第二移動部2が上昇しやすく降下しにくくなるように、下向きに傾斜するように配置されている。
【0023】
前記ガイド部3は、図3に示すように、第一移動部1にピン結合された内棒3aと、第二移動部にピン結合された外管3bと、から構成されている。したがって、第一移動部1、第二移動部2及びガイド部3は、平行リンク機構を構成し、図4に示すように、ガイド部3をスライド手段6によって回動させることにより、第一移動部1を第二移動部2に対して左右に移動させることができる。また、内棒3aは、外管3bの内部に嵌挿されており、伸縮自在に構成されている。したがって、図3に示すように、伸縮手段5によって第一移動部1を昇降させれば、それに追従して内棒3aを伸縮させることができる。なお、ガイド部3のピン結合部に小型モータを埋め込んだり、ガイド部3をアクチュエータで構成したりして、ガイド部3を直接的に回動又は伸縮させるようにしてもよい。
【0024】
前記開閉手段4は、第一移動部1及び第二移動部2に配置されたサーボモータ4aと、サーボモータ4aの回転軸に同軸に接続された回転板4bと、回転板4b及び保持部1aを支持する支持枠1dにピン結合されたリンク4cと、から構成されており、サーボモータ4aの回転運動を回転板4b及びリンク4cを介して支持枠1dの開閉方向の円弧運動に変換している。すなわち、回転板4b及びリンク4cがリンク機構を形成している。そして、このように支持枠1dを円弧運動させると、リンク1eの作用により、図1の右側半分の図に示したように、支持枠1dは開閉方向に平行移動し、保持部1aも同様に開閉方向に平行移動する。したがって、サーボモータ4aを駆動させることにより、保持部1aを壁面に近接させて押し付けたり、離間したりすることができる。
【0025】
また、本実施形態では、サーボモータ4aの回転角180°の円運動を、支持枠1dの回転角60°の円弧運動に変換できるようにしている。かかるサーボモータ4aの駆動により、図1の左側半分の図に示したように、保持部1aを壁面に押し付けることができ、第一移動部1を壁面間で固定することができる。なお、開閉手段4として、リンク1eを直接的に回転させる小型モータを採用したり、リンク1e及びサーボモータ4a等の代わりにアクチュエータの先端に保持部1aを接続したりするようにしてもよい。
【0026】
前記伸縮手段5は、図3に示したように、第二移動部2に配置されたサーボモータ5aと、サーボモータ5aの回転軸に同軸に接続された回転板5bと、回転板5b及び第一移動部1(具体的には支持体1c)にピン結合されたリンク5cと、から構成されており、サーボモータ5aの回転運動を回転板5b及びリンク5cを介して第一移動部1を近接又は離間させる伸縮運動に変換している。すなわち、回転板5b及びリンク5cがリンク機構を形成している。ここで、第一移動部1はガイド部3により第二移動部2と連結されているため、リンク機構は、いわゆるスライダ・クランク機構を形成している。なお、伸縮手段5として、第二移動部2にアクチュエータの本体を配置しアクチュエータの先端を第一移動部1に接続するようにしてもよいし、ガイド部3をアクチュエータで構成して直接的に伸縮させるようにしてもよい。
【0027】
前記スライド手段6は、図3及び図4に示したように、第一移動部1に配置されたサーボモータ6aと、サーボモータ6aの回転軸と同軸に接続された回転板6bと、回転板6b及びガイド部3の内棒3aに連結されたリンク6cと、から構成されており、サーボモータ6aの回転運動を回転板6b及びリンク6cを介して第一移動部1を壁面に沿って第二移動部2を中心に回動させる円弧運動に変換している。すなわち、回転板6b及びリンク6cがリンク機構を形成している。なお、リンク6cと内棒3aとを直接的に連結することが困難な場合には、図3及び図4に示したように、連結板6dを介して連結するようにしてもよい。また、リンク6cの両端は、L字形状又は円形状に折り曲げられており、それぞれ回転板6b及び連結板6dに穿孔された連結孔に挿入され、リンク6cの両端部が結合孔内で摺動することができるようになっている。本実施形態では、回転板6b側の端部をL字形状に折り曲げ、連結板6d側を円形状に折り曲げている。
【0028】
また、図4に示したスライド手段6は、回転板6bに連結されたリンク6cの端部が、サーボモータ6aの回転軸と同じ高さにある場合には、第一移動部1と第二移動部2とが垂直状態(図4の実線の状態)を維持し、サーボモータ6aの回転軸よりも低い高さにある場合には、第二移動部2に対して第一移動部1が右側に傾斜した状態(図4の二点鎖線の状態)となり、サーボモータ6aの回転軸よりも高い高さにある場合には、第二移動部2に対して第一移動部1が左側に傾斜した状態(図示せず)となるように構成されている。このスライド手段6による最大傾斜角度はスライド手段6の構成によって種々変更することができるが、例えば、45°程度に設定することが好ましい。
【0029】
本実施形態の壁面間移動装置は、図4に示したように、第一移動部1(具合的には、上側の支持体1c)の上部に現在位置を把握する位置把握手段として光センサ7を設け、位置把握手段の出力に基づいて開閉手段4、伸縮手段5又はスライド手段6を制御する制御手段(図示せず)を第一移動部1又は第二移動部2に設けるようにしてもよい。光センサ7には、例えば、光ファイバ式反射型光電スイッチを使用することができ、制御手段には、例えば、パーソナルコンピュータを使用することができる。かかる光センサ7は、黒い物体ほど検出範囲が狭く、白い部大体ほど反射率が高く検出範囲が広いため、追従させたい線の左側又は上側を黒色とし、右側又は下側を白色として、光センサ7が黒色の所にいるときは白色の方へ、白色の所にいるときは黒色の方へ移動させることによって、光センサ7からの反射光電流の違いによる変化を検知して目標の白黒の境界線をまたぐようにジグザグに移動させ、移動方向を制御するようにするとよい。したがって、光センサ7を用いる場合には、予め白黒の追従ライン(図示せず)を壁面等に設置しておく必要がある。この追従ラインの構成を適宜変更することによって、壁面間移動装置に所定の動作をさせることができる。なお、位置把握手段としては、上述した光センサ7の他に、CCDカメラやGPSアンテナ等を使用することができ、制御手段側で目的地設定を行うことにより、同様の動作を行わせることができる。
【0030】
次に、本実施形態の壁面間移動装置の移動方法について説明する。最初に、壁面間移動装置を上昇(上方向に移動)させる場合について説明する。
【0031】
(1)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面に押し付けて第二移動部2を壁面間で固定する。
(2)伸縮手段5を作動させて第一移動部1を上昇(上方向に移動)させて、図3の二点鎖線の位置に移動させる。
(3)第一動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面に押し付けて第一移動部1を壁面間で固定する。
(4) 第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面から離間させて第二移動部2の固定を解除する。
(5)伸縮手段5を作動させて第二移動部2を上昇(上方向に移動)させる。
【0032】
かかる(1)~(5)の動作を繰り返すことにより、壁面間移動装置を任意に上昇(上方向に移動)させることができる。また、第一移動部1と第二移動部2の動作を入れ替えることにより、任意に降下(下方向に移動)させることもできる。
【0033】
続いて、壁面間移動装置をスライド(横方向に移動)させる場合について、図5を参照しつつ説明する。ここで、図5は、壁面間移動装置のスライド方法を示す説明図であり、(A)は基本的なスライド方法、(B)は断続的なスライド方法、(C)は連続的なスライド方法を示している。
【0034】
まず、基本的なスライド方法について、図5(A)を参照しつつ説明する。
【0035】
(1)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面に押し付けて第二移動部2を壁面間で固定する。
(2)スライド手段6を作動させて第一移動部1を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させる。図の「a」の動作である。
(3)第一動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面に押し付けて第一移動部1を壁面間で固定する。
(4) 第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面から離間させて第二移動部2の固定を解除する。
(5)スライド手段6を作動させて第二移動部2を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させて第一移動部1と垂直な位置に移動させる。図の「b」の動作である。
【0036】
かかる(1)~(5)の動作を繰り返すことにより、壁面間移動装置を任意にスライド(横方向に移動)させることができる。また、スライド手段6の作動方向を反対方向にすることにより、図の左方向にスライド(横方向に移動)させることもできる。なお、この基本的なスライド方法だけでは、図5(A)に示したように、壁面間移動装置の上下方向の位置が下方に下がってしまうため、併せて伸縮手段5を作動させて上下方向位置を調整する必要がある。
【0037】
次に、上述したスライド方法と上昇方法とを組み合わせて壁面間移動装置を上下方向位置(高さ)を維持したまま断続的にスライド(横方向に移動)させる方法について、図5(B)を参照しつつ説明する。
【0038】
(1)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面に押し付けて第二移動部2を壁面間で固定する。
(2)スライド手段6を作動させて第一移動部1を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させる。図の「a」の動作である。
(3)第一動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面に押し付けて第一移動部1を壁面間で固定する。
(4) 第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面から離間させて第二移動部2の固定を解除する。
(5)スライド手段6を作動させて第二移動部2を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させて第一移動部1と垂直な位置に移動させる。図の「b」の動作である。
(6)前記(1)~(5)をもう1回繰り返して、第一移動部1及び第二移動部2をスライドさせる。図の「c」及び「d」の動作である。
(7)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面に押し付けて第二移動部2を壁面間で固定する。
(8)伸縮手段5を作動させて第一移動部1を上昇(上方向に移動)させる。図の「e」の動作である。
(9)第一動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面に押し付けて第一移動部1を壁面間で固定する。
(10)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面から離間させて第二移動部2の固定を解除する。
(11)伸縮手段5を作動させて第二移動部2を上昇(上方向に移動)させる。図の「f」の動作である。
(12)前記(1)~(11)の動作を繰り返し、図の「g」→「h」→「i」→「j」→「k」→「l」の順に動作させて壁面間移動装置を移動させる。
【0039】
この断続的なスライド方法では、基本的なスライド方法を2回行った後、上昇方法を1回行うことを1つの組み合わせとして、壁面間移動装置を高さを維持させたままスライドさせている。この基本的なスライド方法と上昇方法の組み合わせは、伸縮手段5及びガイド部3の構成によって任意に組み合わせることができるものであり、例えば、基本的なスライド方法1回に対して上昇方法1回、基本的なスライド方法3回に対して上昇方法1回等のように適宜変更することができる。
【0040】
続いて、上述したスライド方法を応用して壁面間移動装置を上下方向位置(高さ)を維持したまま連続的にスライド(横方向に移動)させる方法について、図5(C)を参照しつつ説明する。
【0041】
(1)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面に押し付けて第二移動部2を壁面間で固定する。
(2)スライド手段6を作動させて第一移動部1を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させる。図の「a」の動作である。
(3)第一動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面に押し付けて第一移動部1を壁面間で固定する。
(4) 第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面から離間させて第二移動部2の固定を解除する。
(5)スライド手段6を作動させて第二移動部2を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させて第一移動部1と垂直な位置を通り越した位置に移動させる。図の「b」の動作である。
(6)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面に押し付けて第二移動部2を壁面間で固定する。
(7)第一移動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面から離間させて第一移動部1の固定を解除する。
(8)スライド手段6を作動させて第一移動部1を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させて第一移動部2と垂直な位置を通り越した位置に移動させる。図の「c」の動作である。
(9)第一動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面に押し付けて第一移動部1を壁面間で固定する。
(10)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面から離間させて第二移動部2の固定を解除する。
(11)スライド手段6を作動させて第二移動部2を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させて第一移動部1と垂直な位置を通り越した位置に移動させる。図の「d」の動作である。
(12)第二移動部2の開閉手段4を作動させて支持部2aを壁面に押し付けて第二移動部2を壁面間で固定する。
(13)第一移動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面から離間させて第一移動部1の固定を解除する。
(14)スライド手段6を作動させて第一移動部1を壁面に沿ってスライド(図の右方向に移動)させて第二移動部2と垂直な位置に移動させる。図の「e」の動作である。
(15)第一動部1の開閉手段4を作動させて支持部1aを壁面に押し付けて第一移動部1を壁面間で固定する。
【0042】
この連続的なスライド方法では、スライド方法1回分のスライド幅が大きい点、上昇方法を組み合わせることなくスライド(横方向移動)させることができる点で、断続的なスライド方法と異なる。したがって、この連続的なスライド方法の場合、断続的なスライド方法で壁面間移動装置を同じ位置に移動させる場合と比較して、動作工程を少なくすることができ、効率的なスライド(横方向移動)を実現することができる。また、連続的なスライド方法と断続的なスライド方法を適宜組み合わせることによって、所望の位置に壁面間移動装置をスライドさせることができる。
【0043】
なお、上述した移動方法は単なる一例であり、第一移動部1をスライド手段6によりスライドさせつつ伸縮手段5により上昇させて横方向移動と昇降移動を同時に行うようにしてもよいし、第一移動部1をスライド手段6により基本的なスライド方法でスライドさせた後、伸縮手段5により大きく上昇させて横方向移動しつつ上昇させるようにしてもよい等、種々の移動方法を行うことができる。
【実施例1】
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の内容の理解を容易とするために示した本発明の具体的な例示の一部に過ぎず、本発明は何らこれらに限定されるものではない。ここで、図6は本発明の壁面間移動装置を示す写真であり、(A)は全体外観、(B)は保持部の拡大写真である。また、図7は図6の壁面間移動装置に採用した制御システム構成図であり、図8は図6の壁面間移動装置の移動軌跡を示す図であり、(A)は垂直上昇移動、(B)は斜め上昇移動、(C)は曲線移動、(D)は水平移動を示している。
【0045】
(装置概要)
図6(A)に示した壁面間移動装置は、保持部1aを閉じた状態で、全長300mm、幅150mm、保持部1aを除く奥行80mm、自重60gである。また、搭載したサーボモータの最大トルクは9kgmであった。なお、センサには上述した実施形態と同様の光センサを用いた。
【0046】
(保持部)
図6(B)に示した保持部1aの弾性毛1fには直径約1.25mmのナイロン線を使用した。ナイロン線のヤング率は530kg/mmで、台板1gから弾性毛1fの先端までの高さは平均16.5mmとしたが、高さについては数mm程度のばらつきがある。また、弾性毛1fの傾斜角度は80°とし、5mm間隔で24本植え付けた。台板1fはメタクリル樹脂材質で、大きさは長さ50mm、幅20mm、厚さ3mmであり、底部を平らにするために厚さ0.5mmの塩化ビニル樹脂板を台板1bと同じ大きさに切って貼り付けた。
【0047】
(壁面)
図示しないが、後述する実験に使用した壁面は、長さ1820mm、幅910mm、厚さ15mmのラワン合板を使用した。実験では壁面間隔を125mmに固定して行った。
【0048】
(制御方法)
図7に示したように、壁面間移動装置は、コンピュータに入力されたプログラムにしたがって、センサからの入力信号を取り込み、サーボモータの回転方向と回転時間を制御する。サーボモータは1個につき、右回転用と左回転用の2つの発振回路が必要であり、さらに、サーボモータには垂直上昇のための中立点用発振回路が必要である。また、サーボモータ用の発振回路はすべてタイマIC555を使用したディーティサイクル可変型方形波発振回路を用いており、発振周波数は300Hzである。
【0049】
(縦方向移動制御方法)
縦方向移動の制御方法は、始めに初期設定として、I/Oボードの8255を初期化して、コンピュータからの信号の入出力が行える状態にする。次に、下部を広げて壁面間移動装置を壁面間に固定する。センサからの入力信号により、壁面間移動装置の現在位置が黒白どちらにいるのか判断し、移動する方向を決めて、壁面間移動装置の上部を押し上げながら、上昇サイクルを行う。そして、またセンサからの情報を待つ、これを繰り返しながら壁面間移動装置を上昇させる。本制御は、黒白の検出ライン見つけるまでは、横移動するようになっており、離れた点から出発しても自分で目標のラインまで移動して追従動作を行うことができる。上昇は1サイクル30mm移動し、そのための所要時間は12秒であった。
【0050】
(横方向移動制御方法)
縦方向移動動作と同じくI/Oボードの8255を初期化して、壁面間移動装置を静止させる。次に、センサからの入力信号により、壁面間移動装置の現在位置が黒の部分にいるときには、壁面間移動装置は降下するサブルーチンの動作を行い、白であれば壁面間移動装置は上昇する動作のサブルーチンを行うようにする。そして、センサで位置情報の検出を行い、検出信号をコンピュータのS値に入力する。ここで、S=0のときは、上部を下げ、S=1のときは、上部を上げながら横移動サイクルを行った後で、上部を閉じて検出の待機をする。この動作の繰り返しを行いながら横方向に移動する。プログラム上は、センサによる位置検出を得るために検出ラインまで上り、下りてから横移動動作を始めるようにしてあるが、4回サイクル分横方向移動すると、壁面間移動装置の自重の重さのため、下方に約1サイクル分下がってしまったので、1度上に上昇させる動作を行ってから、ずれないように横移動させた。
【0051】
(移動実験)
移動実験では、白い紙の上に黒い紙を重ね、その境目を目標の移動ラインとし、このラインに沿って移動する実験を行った。また、黒紙上では軌跡がわかりにくいので、センサの左側50mmの位置にクリップでペンを取り付けて、壁面間移動装置の移動軌跡を描くようにセットした。描かれた軌跡は右へ50mm移動させることにより、センサの軌跡とほぼ等しいことになる。かかる状況において、図8に示すように、(A)垂直上昇移動、(B)斜め上昇移動、(C)曲線移動、(D)水平移動の実験を行った。図8(B)に示す斜め上昇移動では、約30°の角度で上昇させた。また、図8(C)に示す曲線移動では、曲率半径R200mmでカーブさせ、編曲点における接線方向の角度が約40°となるようにS字状に移動させた。これらの図が示すように、本発明の壁面間移動装置では、壁面間を、垂直方向及び水平方向に自由に移動することができ、直進することもできるし、曲進することもできることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の壁面間移動装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1におけるII矢視概略図である。
【図3】伸縮手段の説明図である。
【図4】スライド手段の説明図である。
【図5】壁面間移動装置のスライド方法を示す説明図であり、(A)は基本的な移動方法、(B)は断続的な移動方法、(C)は連続的な移動方法を示している。
【図6】本発明の壁面間移動装置を示す写真であり、(A)は全体外観、(B)は保持部の拡大写真である。
【図7】図6の壁面間移動装置に採用した制御システム構成図である。
【図8】図6の壁面間移動装置の移動軌跡を示す図であり、(A)は垂直上昇移動、(B)は斜め上昇移動、(C)は曲線移動、(D)は水平移動を示している。
【符号の説明】
【0053】
1 第一移動部
1a 保持部
1b 枠体
1c 支持体
1d 支持枠
1e リンク
1f 弾性毛
1g 台板
2 第二移動部
2a 保持部
3 ガイド部
3a 内棒
3b 外管
4 開閉手段
4a,5a,6a サーボモータ
4b,5b,6b 回転板
4c,5c,6c リンク
5 伸縮手段
6 スライド手段
7 光センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7