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明細書 :トランス体のエチレン誘導体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5044788号 (P5044788)
公開番号 特開2008-247817 (P2008-247817A)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発行日 平成24年10月10日(2012.10.10)
公開日 平成20年10月16日(2008.10.16)
発明の名称または考案の名称 トランス体のエチレン誘導体の製造方法
国際特許分類 C07C 315/04        (2006.01)
C07C 317/14        (2006.01)
FI C07C 315/04
C07C 317/14
請求項の数または発明の数 1
全頁数 17
出願番号 特願2007-091718 (P2007-091718)
出願日 平成19年3月30日(2007.3.30)
審査請求日 平成21年11月25日(2009.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】伊藤 直次
【氏名】佐藤 剛史
【氏名】伊藤 智志
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 英国特許第01141690(GB,B)
特開2005-082505(JP,A)
特開2006-137740(JP,A)
特開2000-065608(JP,A)
材料,1996年,Vol.45, No.3,pp.262-267
調査した分野 C07C
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表されるシス体のエチレン誘導体を、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で、無溶媒及び無触媒下で、50℃以上、300℃以下の温度で保持するシス-トランス異性化反応工程を有することを特徴とするトランス体のエチレン誘導体の製造方法。
【化1】
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(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、-SOで表わされるスルホニル基を表す。Rはフェニル基を表す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス体のエチレン誘導体の製造方法、このトランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されるエチレン誘導体、及びトランス体のエチレン誘導体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン誘導体のシス-トランス異性化反応は、基本的な有機合成反応として重要なものであり、エチレン誘導体の化合物によってはトランス体の価格がシス体の価格の数倍となることもあるため、高付加価値を生み出す反応でもある。
【0003】
こうしたエチレン誘導体のシス-トランス異性化反応、より具体的には、シス体のエチレン誘導体をトランス体のエチレン誘導体に異性化する反応は、光照射下にて数日~数週間のオーダーで行う方法、高価な触媒を用いて行う方法がある。また、触媒にハロゲン等を用いて行う方法もある。さらに、熱的にシス-トランス異性化反応を行う方法(非特許文献1)もある。非特許文献1では、469℃でシス-ブテン-2のシス-トランス異性化反応が行われている。

【非特許文献1】B.S.Rabinovitch and K.-W.Michel,“The thermal unimolecular cis-trans isomerization of cis-butene-2”J.Am.Chem.Soc.,81,5065-5071(1959)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の光照射下にて数日~数週間のオーダーで異性化する反応は、簡便性、高速性に課題がある。また、高価な触媒を用いて異性化する反応は、経済性に課題がある。そして、触媒にハロゲン等を用いて行う方法は、環境に対する負荷が大きいという課題がある。さらに、熱的にシス-トランス異性化反応を行う場合、非特許文献1で報告されているように高温条件が必要となり、工業的には用いづらいという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第2の目的は、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されたエチレン誘導体を提供することにある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第3の目的は、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の下、本発明者等が鋭意検討を行った結果、シス体のエチレン誘導体との反応が抑制された雰囲気下で所定の温度でシス体のエチレン誘導体を保持すると、この保持の際の温度が相対的に低いものであっても、溶媒や触媒を使用することなく高い転化率でトランス体のエチレン誘導体が生成されることを見出し本発明を完成させた。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法は、下記一般式(1)で表されるシス体のエチレン誘導体を、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で、50℃以上、300℃以下の温度で保持するシス-トランス異性化反応工程を有することを特徴とする。
【0010】
【化1】
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【0011】
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3~18の環状アルキル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルケニル基、炭素数3~18の環状アルケニル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキニル基、複素環基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基、炭素数3~18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアミノ基、ホルミル基、スルホン酸基、カルボキシル基、-CORで表わされるアシル基、-NRで表わされるアミノ基、-NHCORで表わされるアシルアミノ基、-NHCOORで表わされるカーバメート基、-COORで表わされるカルボン酸エステル基、-OCORで表わされるアシルオキシ基、-CONRで表わされるカルバモイル基、-SOで表わされるスルホニル基、-SONRで表わされるスルファモイル基、-SOで表わされるスルホン酸エステル基、-NHSOで表わされるスルホンアミド基、及び-SORで表わされるスルフィニル基、のいずれかを表す。R、Rは炭化水素基を表す。)
【0012】
この発明によれば、上記一般式(1)で表されるシス体のエチレン誘導体を、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で、50℃以上、300℃以下の温度で保持するシス-トランス異性化反応工程を有するので、シス体のエチレン誘導体が雰囲気と反応しにくい状態、及び相対的に低い反応温度の下でのシス-トランス異性化反応が可能となり、溶媒や触媒を用いなくてもシス体のエチレン誘導体をトランス体のエチレン誘導体に転化することができるので、その結果、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法を提供することができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明のエチレン誘導体は、上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、エチレン誘導体が上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されるので、シス体のエチレン誘導体が雰囲気と反応しにくい状態、及び相対的に低い反応温度の下でのシス-トランス異性化反応が可能となり、溶媒や触媒を用いなくてもシス体のエチレン誘導体をトランス体のエチレン誘導体に転化することができるので、その結果、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されたエチレン誘導体を提供することができる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置は、反応器と、該反応器に二酸化炭素を供給する供給装置と、前記反応器内部の温度と圧力とを制御して前記反応器内部を超臨界二酸化炭素雰囲気に制御する制御部を有する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、トランス体のエチレン誘導体の製造装置が、反応器と、該反応器に二酸化炭素を供給する供給装置と、前記反応器内部の温度と圧力とを制御して前記反応器内部を超臨界二酸化炭素雰囲気に制御する制御部を有する制御装置と、を有するので、簡便な装置構成で上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法が実施可能となるので、その結果、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造装置を提供することができる。
【0017】
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置の好ましい態様においては、前記反応器内に攪拌装置が設けられる。
【0018】
この発明によれば、反応器内に攪拌装置が設けられるので、シス-トランス異性化反応の際にシス体のエチレン誘導体が攪拌されるようになり反応効率を上げることができるので、その結果、より工業的に用いやすいトランス体のエチレン誘導体の製造装置となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法によれば、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法を提供することができる。より具体的には、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法は、触媒や溶媒を必要としないために環境調和型のクリーンな製造方法であり、また、反応時に触媒や溶媒等の他の成分を必要としないために得られるエチレン誘導体の純度を高くしやすくなる。さらに、反応後の生成物と触媒・溶媒との分離工程も省略できるので経済的にも有利なものとなる。本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法の応用範囲は広く、様々なシス-トランス異性化反応への適用が可能である。
【0020】
本発明のエチレン誘導体によれば、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されたエチレン誘導体を提供することができる。より具体的には、本発明のエチレン誘導体は、触媒や溶媒を必要としない上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法によって得られるので、環境調和型のクリーンな製造方法によって得られたものとなり、また、反応時に触媒や溶媒等の他の成分を必要としないために得られるエチレン誘導体の純度が高くなりやすい。さらに、反応後の生成物と触媒・溶媒との分離工程も省略できる製造方法によって得られるので経済的にも有利なものとなる。上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法の応用範囲は広いために、様々な種類のエチレン誘導体を得ることが可能となる。
【0021】
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置によれば、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造装置を提供することができる。より具体的には、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置は、触媒や溶媒を必要としないために環境調和型のクリーンな製造装置となり、また、反応時に触媒や溶媒等の他の成分を必要としないために得られるエチレン誘導体の純度を高くしやすくなる。さらに、反応後の生成物と触媒・溶媒との分離工程も省略できるので簡便で経済的にも有利なものとなる。本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置の応用範囲は広く、様々なシス-トランス異性化反応への適用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
(製造方法)
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法は、下記一般式(1)で表されるシス体のエチレン誘導体を、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で、50℃以上、300℃以下の温度で保持するシス-トランス異性化反応工程を有する。
【0024】
【化2】
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【0025】
(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3~18の環状アルキル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルケニル基、炭素数3~18の環状アルケニル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキニル基、複素環基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基、炭素数3~18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアミノ基、ホルミル基、スルホン酸基、カルボキシル基、-CORで表わされるアシル基、-NRで表わされるアミノ基、-NHCORで表わされるアシルアミノ基、-NHCOORで表わされるカーバメート基、-COORで表わされるカルボン酸エステル基、-OCORで表わされるアシルオキシ基、-CONRで表わされるカルバモイル基、-SOで表わされるスルホニル基、-SONRで表わされるスルファモイル基、-SOで表わされるスルホン酸エステル基、-NHSOで表わされるスルホンアミド基、及び-SORで表わされるスルフィニル基、のいずれかを表す。R、Rは炭化水素基を表す。)
【0026】
これにより、シス体のエチレン誘導体が雰囲気と反応しにくい状態、及び相対的に低い反応温度の下でのシス-トランス異性化反応が可能となり、溶媒や触媒を用いなくてもシス体のエチレン誘導体をトランス体のエチレン誘導体に転化することができるので、その結果、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法を提供することができる。
【0027】
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法は、より具体的には、触媒や溶媒を必要としないために環境調和型のクリーンな製造方法であり、また、反応時に触媒や溶媒等の他の成分を必要としないために得られるエチレン誘導体の純度を高くしやすくなる。さらに、反応後の生成物と触媒・溶媒との分離工程も省略できるので経済的にも有利なものとなる。
【0028】
(シス-トランス異性化反応工程)
シス-トランス異性化反応工程においては、下記一般式(1)で表されるシス体のエチレン誘導体は、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で、50℃以上、300℃以下の温度で保持される。
【0029】
【化3】
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【0030】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3~18の環状アルキル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルケニル基、炭素数3~18の環状アルケニル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキニル基、複素環基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基、炭素数3~18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアミノ基、ホルミル基、スルホン酸基、カルボキシル基、-CORで表わされるアシル基、-NRで表わされるアミノ基、-NHCORで表わされるアシルアミノ基、-NHCOORで表わされるカーバメート基、-COORで表わされるカルボン酸エステル基、-OCORで表わされるアシルオキシ基、-CONRで表わされるカルバモイル基、-SOで表わされるスルホニル基、-SONRで表わされるスルファモイル基、-SOで表わされるスルホン酸エステル基、-NHSOで表わされるスルホンアミド基、及び-SORで表わされるスルフィニル基、のいずれかを表す。そして、R、Rは炭化水素基を表す。一般式(1)に示す化合物を用いることにより、工業的に利用価値の高いエチレン誘導体のシス-トランス異性化反応を行うこととなり、その結果、より工業的に利用価値の高いトランス体のエチレン誘導体の製造方法となる。なお、シス体のエチレン誘導体の性状は、通常、個体である。
【0031】
また、R及びRに上記で示される置換基を用いることにより、シス体のエチレン誘導体の方がトランス体のエチレン誘導体よりも化学的に安定になり、シス体からトランス体への転化がしにくいシス体のエチレン誘導体となる場合がある。こうした場合においても、本発明においてはトランス体のエチレン誘導体を得やすくなるという利点が発揮されやすくなる。
【0032】
一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3~18の環状アルキル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルケニル基、炭素数3~18の環状アルケニル基、炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキニル基、複素環基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基、炭素数3~18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアミノ基、ホルミル基、スルホン酸基、カルボキシル基、-CORで表わされるアシル基、-NRで表わされるアミノ基、-NHCORで表わされるアシルアミノ基、-NHCOORで表わされるカーバメート基、-COORで表わされるカルボン酸エステル基、-OCORで表わされるアシルオキシ基、-CONRで表わされるカルバモイル基、-SOで表わされるスルホニル基、-SONRで表わされるスルファモイル基、-SOで表わされるスルホン酸エステル基、-NHSOで表わされるスルホンアミド基、及び-SORで表わされるスルフィニル基、のいずれかを表す。そして、R、Rは炭化水素基を表す。なお、上記基のうち、アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、環状アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、及びアルキルチオ基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0033】
炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、及びn-へプチル基等を挙げることができる。炭素数3~18の環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びアダマンチル基等を挙げることができる。炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、及びヘキセニル基等を挙げることができる。炭素数3~18の環状アルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等を挙げることができる。炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキニル基としては、例えば、プロピニル基、及びヘキシニル基等を挙げることができる。複素環基としては、例えば、2-チエニル基、2-ピリジル基、4-ピペリジル基、及びモルホリノ基等を挙げることができる。炭素数6~18のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びメシチル基等を挙げることができる。炭素数7~20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、及びフェネチル基等を挙げることができる。炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基等を挙げることができる。炭素数3~18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基としては、例えば、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、及びペンテニルオキシ基等を挙げることができる。炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、及びtert-ブチルチオ基等を挙げることができる。
【0034】
及びRに複素環基を用いる場合、こうした複素環基としては、4-ピペリジル基、モルホリノ基、2-モルホリニル基、ピペラジル基等の飽和複素環であっても、2-フリル基、2-ピリジル基、2-チアゾリル基、2-キノリル基等の芳香族複素環であってもよい。これらは複数のヘテロ原子を含んでいても、更に置換基を有していてもよく、また、その結合位置も特に制限されない。複素環として好ましい構造のものは、5~6員環の飽和複素環、5~6員環の単環及びその2縮合環の芳香族複素環である。
【0035】
及びRに、上記の直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、環状アルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、及び直鎖又は分岐のアルキルチオ基を用いる場合に、上記したように、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。また、R及びRに、直鎖又は分岐のアルケニル基、環状アルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、及び直鎖又は分岐のアルキルチオ基を用いる場合に、これら基がアルキル鎖を有するときはこのアルキル鎖の水素がさらに置換基で置換されていてもよい。こうした置換基としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0036】
すなわち、こうした置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、メトキシブトキシ基等の炭素数2~12のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、エトキシエトキシメトキシ基等の炭素数3~15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6~12のアリール基(これらは任意の置換基で更に置換されていてもよい。);フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6~12のアリールオキシ基;アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の炭素数2~12のアルケニルオキシ基等を挙げることができる。
【0037】
更に、他の置換基として、例えば、2-チエニル基、2-ピリジル基、4-ピペリジル基、モルホリノ基等の複素環基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;アミノ基;N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等の炭素数1~10のアルキルアミノ基;メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n-プロピルスルホニルアミノ基等の炭素数1~6のアルキルスルホニルアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル等の炭素数2~7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2~7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2~7のアルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることもできる。
【0038】
さらに、一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;ニトロソ基;シアノ基;イソシアノ基;シアナト基;イソシアナト基;チオシアナト基;イソチオシアナト基;メルカプト基;ヒドロキシ基;ヒドロキシアミノ基;ホルミル基;スルホン酸基;カルボキシル基;-CORで表わされるアシル基;-NRで表わされるアミノ基;-NHCORで表わされるアシルアミノ基;-NHCOORで表わされるカーバメート基;-COORで表わされるカルボン酸エステル基;-OCORで表わされるアシルオキシ基;-CONRで表わされるカルバモイル基;-SOで表わされるスルホニル基;-SONRで表わされるスルファモイル基;-SOで表わされるスルホン酸エステル基;-NHSOで表わされるスルホンアミド基;-SORで表わされるスルフィニル基のいずれかとすることもできる。
【0039】
ここで、R、Rは炭化水素基を表す。こうした炭化水素基としては、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基;環状アルキル基;直鎖又は分岐のアルケニル基;環状アルケニル基;アラルキル基;アリール基等を挙げることができる。中でも、R、Rとして、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘプチル基等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3~18の環状アルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3~18の環状アルケニル基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~20のアラルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6~18のアリール基等を用いることが好ましい。なお、これらの基のアリール基部分は、前述のR、Rと同様の置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0040】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、シス-1,2-ジ(フェニルスルホニル)エチレンを挙げることができる。
【0041】
なお、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法においては、シス-トランス異性化反応に用いる原料が100%シス体のエチレン誘導体であることは希であり、実際には、製造方法に供される原料となるエチレン誘導体は、シス体とトランス体との混合物が用いられる。この場合、トランス体のエチレン誘導体を効率的に得るという観点から、原料に含まれるトランス体は、20%以下であることが好ましい。原料中のトランス体とシス体との比率の確認は、従来公知の分析方法を用いて行うことができ、例えば、核磁気共鳴分光法(HNMR)で分析する方法を挙げることができる。
【0042】
シス体のエチレン誘導体は、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で保持される。不活性雰囲気としては、例えば、ヘリウム雰囲気、アルゴン雰囲気、及び窒素雰囲気等を挙げることができる。こうした雰囲気のうち、アルゴン雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気が好ましく、超臨界二酸化炭素雰囲気がより好ましい。アルゴン雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気を用いることにより、シス体のエチレン誘導体が雰囲気とより反応しにくい状態を作り出すことができ、その結果、シス体のエチレン誘導体からトランス体のエチレン誘導体への転化をより促進しやすくなる。ここで、超臨界二酸化炭素とは、二酸化炭素を、その臨界温度(31℃)・臨界圧力(7.4MPa)以上とし、気体・液体の双方の性質を併せ持った状態とされたものをいうが、臨界温度以上においては圧縮しても二酸化炭素が凝縮しないため、臨界温度以上であれば圧力に関係なく超臨界二酸化炭素という場合もある。本発明においては、超臨界流体中、より具体的には超臨界二酸化炭素中でも反応が進行するため、超臨界流体が有する反応制御性や分離特性等の優れた特性を享受することができる。
【0043】
雰囲気の圧力については、通常0.1MPa以上、50MPa以下とする。アルゴンを用いる場合には、好ましくは0.1MPa以上、また、好ましくは1MPa以下とする。上記圧力範囲であれば、アルゴンの操作が容易となる。一方、超臨界二酸化炭素を用いる場合には、好ましくは0.1MPa以上、また、好ましくは10MPa以下とする。上記圧力範囲とすることにより、超臨界領域の圧力も含まれるとともに相対的に低い圧力でも温度を上昇させて超臨界二酸化炭素とすることができる。
【0044】
また、雰囲気の純度は、特に制限はない。例えば、雰囲気をアルゴンとする場合には、純度は通常99.9%以上とする。また、雰囲気を二酸化炭素とする場合には、純度は通常99.995%以上とする。純度が高い方が好ましいが、工業的に不純物を完全に排除することは容易ではないので、通常は上記範囲となる。なお、「不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気」とはいっても、工業的には上記のように不純物を一定量含むものとなる場合が通常なので、雰囲気の一部はシス体のエチレン誘導体と反応を起こし得る。こうした反応は、本発明の要旨の範囲内において許容される。
【0045】
シス体のエチレン誘導体は、50℃以上、300℃以下の温度で保持される。この温度が反応温度となるが、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法は、従来と比較して、反応温度を大幅に低下させることが可能となる利点がある。反応温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下とする。また、反応温度は、好ましくは80℃以上とする。これにより、さらに低温でのシス-トランス異性化反応となり、その結果、より工業的に採用しやすいトランス体のエチレン誘導体の製造方法となる。
【0046】
シス体のエチレン誘導体が、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で50℃以上、300℃以下の温度で保持される時間(反応時間)は、通常1分以上、好ましくは30分以上、また、通常300分以下、好ましくは120分以下とする。上記の範囲とすることにより、トランス体のエチレン誘導体への転化を確実に行いやすくなる。
【0047】
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法は、シス体のエチレン誘導体を、不活性雰囲気又は超臨界二酸化炭素雰囲気下で50℃以上、300℃以下の温度で保持することによって、シス-トランス異性化反応が起きるので、反応の際に溶媒や触媒の添加が不要となる利点がある。これにより、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さい製造方法となる。したがって、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法においては、基本的には、シス-トランス異性化反応に際して、エチレン誘導体以外の添加剤等の成分を存在させる必要はない。但し、本発明の要旨の範囲内であれば、シス-トランス異性化反応に際して必要な成分を適量含有させてもよい。
【0048】
(その他の工程)
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法においては、シス-トランス異性化反応工程に先だって、シス体のエチレン誘導体を準備する等必要な前工程を適宜行うことができる。
【0049】
また、上記で説明したように、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法は、反応の際に溶媒や触媒の添加が不要となる利点がある。これにより、反応後の生成物と触媒・溶媒の分離工程が省略できるようになる。このため、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造方法においては、シス-トランス異性化反応工程の後の後工程が不要となる利点がある。但し、必要に応じ、シス-トランス異性化反応工程の後に所定の後工程を行ってもよい。こうした後工程としては、例えば、トランス体のエチレン誘導体の含有量を100%に近づけるために、生成物中に残留するシス体のエチレン誘導体を取り除く工程を挙げることができる。
【0050】
(エチレン誘導体)
本発明のエチレン誘導体は、上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されたものである。これにより、シス体のエチレン誘導体が雰囲気と反応しにくい状態、及び相対的に低い反応温度の下でのシス-トランス異性化反応が可能となり、溶媒や触媒を用いなくてもシス体のエチレン誘導体をトランス体のエチレン誘導体に転化することができるので、その結果、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造方法によって製造されたエチレン誘導体を提供することができる。なお、本発明において単に「エチレン誘導体」という場合には、特に断りのない限り、シス体とトランス体との混合物となっているエチレン誘導体を指すものとする。
【0051】
より具体的には、本発明のエチレン誘導体は、触媒や溶媒を必要としない上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法によって得られるので、環境調和型のクリーンな製造方法によって得られたものとなり、また、反応時に触媒や溶媒等の他の成分を必要としないために得られるエチレン誘導体の純度が高くなりやすい。さらに、反応後の生成物と触媒・溶媒との分離工程も省略できる製造方法によって得られるので経済的にも有利なものとなる。上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法の応用範囲は広いために、様々な種類のエチレン誘導体を得ることが可能となる。
【0052】
また、上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法を用いるので、シス体のエチレン誘導体からトランス体のエチレン誘導体への転化率が高くなり、トランス体のエチレン誘導体の含有量の高いエチレン誘導体を得ることができる。具体的には、本発明のエチレン誘導体におけるトランス体のエチレン誘導体の含有量は、通常90%以上、好ましくは95%以上となる。トランス体のエチレン誘導体の含有量を上記範囲とすれば、工業的に利用価値及び付加価値の高いエチレン誘導体となる。なお、生成されるエチレン誘導体の性状は、通常、固体である。
【0053】
(製造装置)
本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置は、反応器と、該反応器に二酸化炭素を供給する供給装置と、前記反応器内部の温度と圧力とを制御して前記反応器内部を超臨界二酸化炭素雰囲気に制御する制御部を有する制御装置と、を有する。これにより、簡便な装置構成で上記のトランス体のエチレン誘導体の製造方法が実施可能となるので、その結果、簡便、高速、経済性が高く、環境に対する負荷も小さく、さらに工業的に採用しやすい、トランス体のエチレン誘導体の製造装置を提供することができる。より具体的には、トランス体のエチレン誘導体の製造装置は、触媒や溶媒を必要としないために環境調和型のクリーンな製造装置となり、また、反応時に触媒や溶媒等の他の成分を必要としないために得られるエチレン誘導体の純度を高くしやすくなる。さらに、反応後の生成物と触媒・溶媒との分離工程も省略できるので簡便で経済的にも有利なものとなる。こうしたトランス体のエチレン誘導体の製造装置の応用範囲は広く、様々なシス-トランス異性化反応への適用が可能である。以下、こうした製造装置の一例について説明する。
【0054】
図1は、本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置の一例を示す模式的な概念図である。トランス体のエチレン誘導体の製造装置20は、反応器1と、反応器1にアルゴン又は二酸化炭素を供給する供給装置2と、反応器1内部の温度と圧力とを制御する制御装置3と、を有する。
【0055】
反応器1は、シス体を多く含有する原料のエチレン誘導体30を封入し、上記で説明したシス-トランス異性化反応工程を行うために用いられるものである。このため、反応器1は、反応の際の温度や圧力に耐え得るような材料で形成される。こうした材料としては、例えば、ステンレス、ガラスを挙げることができる。強度の点からはステンレスを用いることが好ましいが、0.1MPa程度の圧力であればガラスを用いてもよい。こうしたガラスの反応器としては、通常のフラスコ等の一般的なガラス器具を挙げることができる。このように、反応器1としては、従来公知のものを適宜用いることができ、製造するトランス体のエチレン誘導体の量に応じて反応器1の大きさも適宜調整すればよい。
【0056】
供給装置2は、反応器1にアルゴン又は二酸化炭素を供給するものである。本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置における供給装置は、反応器に少なくとも二酸化炭素を供給するように構成されるが、供給装置2は、二酸化炭素に加えアルゴンも選択的に供給できるように構成されている。
【0057】
供給装置2は、アルゴンボンベ7及びアルゴンボンベ7から反応器1に接続される供給ライン9aと、二酸化炭素ボンベ8及び二酸化炭素ボンベ8から反応器1に接続される供給ライン9b,9cと、供給ライン9b,9cの間に配置されるポンプ10と、反応器1へのアルゴン又は二酸化炭素の供給の開始・停止をするためのバルブ12a,12b,12cと、から構成されている。ポンプ10は、液体の二酸化炭素を反応器1に送り込むために用いられるものである。すなわち、二酸化炭素を高圧にするためには、図1中には図示していないが、二酸化炭素ボンベ8から流出する二酸化炭素を冷却装置により冷却して液化する。そして、この液体状の二酸化炭素をポンプ10で反応器1に送り込むのである。アルゴンボンベ7、二酸化炭素ボンベ8、供給ライン9a,9b,9c、ポンプ10、及びバルブ12a,12b,12cは、従来公知のものを適宜用いればよい。
【0058】
制御装置3は、反応器1内部の温度と圧力とを制御するためのものである。制御装置3は、温度計4と、圧力計5と、オーブン6と、圧力調整ライン13と、圧力調整バルブ14a,14bと、図1には図示していない制御部と、から構成されている。制御部は、温度計4及び圧力計5のデータをモニターしながら、オーブン6のon/off、バルブ12a、12b、12cの開閉、及び圧力調整バルブ14a,14bの開閉を制御し、少なくとも反応器1内部を超臨界二酸化炭素雰囲気に制御する機能を有するものである。
【0059】
制御装置3の動作を説明する。温度計4で温度が測定され、圧力計5で圧力が測定され、測定されたこれらの温度データと圧力データとが制御部に入力され、制御部は、入力された温度データ及び圧力データと温度データの設定値(反応温度)及び圧力データの設定値(反応圧力)との差を検知し、必要に応じて、オーブン6のon/off、バルブ12a、12b、12cの開閉、及び圧力調整バルブ14a,14bの開閉を行い、シス-トランス異性化反応工程における温度と圧力とを制御する。ここで、温度データの設定値(反応温度)及び圧力データの設定値(反応圧力)を超臨界二酸化炭素雰囲気となる温度及び圧力に設定しておけば、反応器1内部を超臨界二酸化炭素雰囲気に制御することができる。
【0060】
制御装置3に用いられる、温度計4、圧力計5、オーブン6、圧力調整ライン13、圧力調整バルブ14a,14b、及び制御部は、従来公知のものを適宜用いればよい。
【0061】
トランス体のエチレン誘導体の製造装置20は、さらに攪拌装置を備える。攪拌装置は、シス-トランス異性化反応工程において原料のエチレン誘導体30を攪拌して、シス体のエチレン誘導体からトランス体のエチレン誘導体への転化を促進するために用いられるものである。攪拌装置を用いることにより、シス-トランス異性化反応の際にシス体のエチレン誘導体が攪拌されるようになり反応効率を上げることができるので、その結果、より工業的に用いやすいトランス体のエチレン誘導体の製造装置20となる。
【0062】
攪拌装置は、攪拌子11から構成され、トランス体のエチレン誘導体の製造装置20は、さらに攪拌子11を回転させるための回転部15を有する。トランス体のエチレン誘導体の製造装置20においては、攪拌子11はテフロン(登録商標)攪拌子が用いられ、回転部15はマグネットスターラーが用いられている。攪拌子11及び回転部15は、従来公知のものを適宜用いればよい。なお、回転装置としては、攪拌翼を用いるタイプのものを使用してもよい。
【0063】
次に、トランス体のエチレン誘導体の製造装置20を用いたシス-トランス異性化反応工程の具体的な操作について説明する。まず、原料のエチレン誘導体30を反応器1に封入する。その後、用いる雰囲気がアルゴンである場合にはバルブ12aを開けて反応容器1内をアルゴンで置換する。ここで、用いる雰囲気が臨界二酸化炭素である場合には、バルブ12b,12cを開けて二酸化炭素ボンベ8から二酸化炭素を流出させ、これを冷却して液化したものをポンプ10により反応器1内に送り込む。ここで、ポンプ10で送り出した液体状の二酸化炭素は、供給ライン9cや反応器1内で再び暖められて気体状となり、これにより反応器1内が圧縮された二酸化炭素で置換される。次いで、オーブン6及び攪拌装置を作動させて、原料のエチレン誘導体30を攪拌しながら反応器1を反応温度まで昇温する。そして、反応器1内の温度を温度計4で、反応器1内の圧力を圧力計5でモニターしながら、反応器1を反応温度において所定の時間(反応時間)保持する。所望の反応時間が経過した後、オーブン6及び攪拌装置を停止し、反応器1を冷却する。ここで、反応器1を冷水浴に浸すことにより冷却時間を短縮するような操作を行ってもよい。そして、反応器1を冷却した後、反応器内のガスを例えば背圧バルブから放出し、反応した生成物を反応器1より取り出せばよい。以上を経てシス-トランス異性化反応工程が完了する。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
以下に示す化合物1(シス-1,2-ジ(フェニルスルホニル)エチレン)と化合物2(トランス-1,2-ジ(フェニルスルホニル)エチレン)との固体状の混合物を準備した。この混合物を核磁気共鳴分光法(HNMR)で分析し、{トランス体量(mol)/(シス体量(mol)+トランス体量(mol))}×100により計算される転化率(%)を算出した。その結果、この混合物中の化合物1(シス体)と化合物2(トランス体)との比率は、化合物1(シス体):化合物2(トランス体)=84(%):16(%)であった。なお、核磁気共鳴分光法は、BRUKER社製のVNMR500を用い、測定条件は、CDCl中とした。
【0066】
【化4】
JP0005044788B2_000005t.gif

【0067】
【化5】
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【0068】
(シス-トランス異性化反応工程)
次に、上記の混合物0.05gを内容積50mlのステンレス製の反応器に導入し、反応器内部をアルゴンで置換した。アルゴンの導入量は、反応器内部の圧力が大気圧(0.1MPa)となるように調整した。反応器を所定の反応温度まで昇温するとともに、攪拌子を回転させて反応させた。60分後、反応器を冷水浴に浸すことにより反応を停止させ、背圧バルブからガスを放出した後、反応器を開けて生成物を回収した。生成物も固体状であった。薄層クロマトグラフィー(TLC)による分析で、生成物が化合物1(シス体)及び化合物2(トランス体)の混合物であることがわかった。ここで薄層クロマトグラフィー分析装置としては、メルク社製のSilica gel60 F254,TLC Aluminium Sheetsを用い、CHClを展開溶媒とし測定した。
【0069】
その後、生成物のシス-トランス比を、核磁気共鳴分光法(HNMR)で分析し、転化率(%)を再度算出した。NMR分析の測定装置や測定条件は、上記で説明したものと同様とした。
【0070】
上記の実験を、反応温度を変化させて複数回行い、各反応温度における転化率(%)を求めた。その結果を、表-1及び図2に示す。図2は、反応温度と転化率との関係を示すグラフである。図中、横軸の“Temperature[℃]”は、反応温度を、縦軸の“Conversion[%]”は転化率を表す。
【0071】
【表1】
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【0072】
表-1及び同図の結果から、アルゴンの気相中では、温度80℃までは転化率がほぼ一定で、ほとんど反応が進行しなかったが、温度90℃から転化率が増大した。そして、温度100℃にて転化率は90%以上となった。
【0073】
[実施例2]
シス-トランス異性化反応工程において、反応器内部を二酸化炭素で置換したこと、二酸化炭素の導入量を反応器内部の圧力が20MPaとなるように調整して超臨界二酸化炭素中での反応としたこと、以外は実施例1と同様にして、反応温度と転化率の関係を調べた。結果を表-2及び図2に示す。同図中の「sc-CO」は、超臨界二酸化炭素の雰囲気下での反応であることを示す。表-2及び同図に示されるように、実施例1(アルゴンの場合)と同様の結果となった。
【0074】
【表2】
JP0005044788B2_000008t.gif

【0075】
[実施例3]
シス-トランス異性化反応工程において、反応器をガラス容器としたこと、反応温度を120℃のみとしたこと、以外は実施例1と同様にして転化率を測定したところ、91%となった。この結果から、実施例1、2でのシス-トランス異性化反応がステンレスの触媒作用によるものではないことがわかった。
【0076】
[比較例1]
シス-トランス異性化反応工程において、反応器内部を空気(大気)で置換したこと、反応温度を120℃のみとしたこと、以外は実施例1と同様にしてシス-トランス異性化反応を試みたところ、生成物の色が実施例1~3の場合と異なり、酸化反応の進行が示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のトランス体のエチレン誘導体の製造装置の一例を示す模式的な概念図である。
【図2】反応温度と転化率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 反応器
2 供給装置
3 制御装置
4 温度計
5 圧力計
6 オーブン
7 アルゴンボンベ
8 二酸化炭素ボンベ
9(9a,9b,9c) 供給ライン
10 ポンプ
11 攪拌子
12(12a,12b,12c) バルブ
13 圧力調整ライン
14(14a,14b) 圧力調整バルブ
15 回転部
20 トランス体のエチレン誘導体の製造装置
30 原料のエチレン誘導体
図面
【図1】
0
【図2】
1