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明細書 :シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法と、その方法で得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5150826号 (P5150826)
公開番号 特開2008-280465 (P2008-280465A)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
公開日 平成20年11月20日(2008.11.20)
発明の名称または考案の名称 シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法と、その方法で得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子
国際特許分類 C09C   1/04        (2006.01)
C01G   9/02        (2006.01)
C09C   3/06        (2006.01)
C09C   3/12        (2006.01)
FI C09C 1/04
C01G 9/02 A
C09C 3/06
C09C 3/12
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2007-127324 (P2007-127324)
出願日 平成19年5月11日(2007.5.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2006年12月1日 材料技術研究協会発行の「2006年度材料技術研究協会 討論会講演要旨集」に発表
審査請求日 平成22年4月20日(2010.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 昇
【氏名】イクバル アーメド シッディキ
【氏名】佐藤 正秀
【氏名】古澤 毅
個別代理人の代理人 【識別番号】100095739、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 俊夫
審査官 【審査官】仁科 努
参考文献・文献 特開平11-193354(JP,A)
特開2004-339396(JP,A)
特表2006-527779(JP,A)
特開平04-227667(JP,A)
特開2004-059421(JP,A)
特開2003-292818(JP,A)
特開2007-023127(JP,A)
調査した分野 C09C 1/04
C09C 3/06
C09C 3/12
特許請求の範囲 【請求項1】
10~70nmの平均二次微粒子径に解砕された酸化亜鉛のナノ粒子、テトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水とを混合し懸濁液を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた懸濁液を攪拌しつつ、該懸濁液にマイクロ波を照射してエタノールの気化温度を越えない範囲まで加熱すると共に、該加熱した温度を維持するよう前記酸化亜鉛微粒子が備える紫外線吸収機能が保持され且つ光触媒機能の抑制が可能となる2~3nmの厚さのシリカ薄膜が前記酸化亜鉛微粒子の表面に形成されるまで前記マイクロ波の照射を継続するマイクロ波照射工程と、
から成り、均一なシリカの膜が形成されることを特徴とするシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法。
【請求項2】
酸化亜鉛微粒子の二次粒子をエタノールに混合して10~70nmの平均二次微粒子径に解砕されたナノ粒子を得る粒子解砕工程と、該粒子解砕工程で得られたエタノールに混合された酸化亜鉛のナノ粒子、テトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水とを混合し懸濁液を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた懸濁液を攪拌しつつ、前記混合工程で得られた懸濁液を攪拌しつつ、該懸濁液にマイクロ波を照射してエタノールの気化温度を越えない範囲まで加熱すると共に、該加熱した温度を維持するよう前記酸化亜鉛微粒子が備える紫外線吸収機能が保持され且つ光触媒機能の抑制が可能となる2~3nmの厚さのシリカ薄膜が前記酸化亜鉛微粒子の表面に形成されるまで前記マイクロ波の照射を継続するマイクロ波照射工程と、
から成り、均一なシリカの膜が形成されることを特徴とするシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法において、混合工程で使用される酸化亜鉛ナノ粒子、テトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水の配合量が、酸化亜鉛ナノ粒子が2.5gに対して、テトラエトキシシランが0.75~2.0g、エタノールが20~120ml、水が15~90ml、アンモニア水溶液が10~60mlの範囲にあることを特徴とするシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法において、酸化亜鉛ナノ粒子を含む懸濁液へのマイクロ波照射時間が、エタノールの気化温度を越えない高温に到達するまでの時間を1分以内とし且つその後にその温度を維持する時間を1~3分に設定したことを特徴とするシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法で得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子であって、酸化亜鉛の平均二次微粒子径が10~70nmで、且つその酸化亜鉛ナノ粒子の表面に均一に形成されたシリカの皮膜層の厚さが2~3nmであり、紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とを同時に可能としたことを特徴とするシリカ被覆酸化亜鉛微粒子。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛微粒子の表面に光触媒機能を抑制する皮膜を形成するためのシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法と、その方法で得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は光触媒としての機能を有する物質であり、照射された紫外線を吸収する機能があり、その酸化亜鉛の粒子は白色であり、粒子径がナノ(nm)クラスとなる微細な粒子(ナノ粒子)は光透過性(透明性)を示す素材であることから、化粧品においては、皮膚に有害な紫外線を遮蔽(UVカットと呼ばれている)する材料(サンスクリーン材と呼ばれる)として使用することが研究されている。
しかしながら、酸化亜鉛の粒子が化粧品などに含まれる有機成分と接触すると、その酸化亜鉛の粒子が紫外線を受けてその有機物を分解し、化粧品を変色させるという、色を重要視する化粧品にとって好ましくないことが起こる。
即ち、肌に付着している化粧品に含まれた酸化亜鉛の粒子は、太陽光線の紫外線を受けると光触媒としての機能が惹起され、その酸化亜鉛粒子の表面に接触している有機物を分解し、有色物質に化学変化させ、結果として化粧材の変色を起こさせるのである。
例えば、化粧した当初には紫色であった目の周囲に塗られた酸化亜鉛を含むアイシャドウが、直射日光にあたって数時間で、本人が全く予期しない黄色に変色してしまい、顔の化粧が台なしになることがある。
【0003】
そこで、酸化亜鉛のこのような有機物を分解して変色させる悪作用を抑制させるために、酸化亜鉛の表面を他の物質でコーティングする方法が研究されてきたが、その酸化亜鉛の粒子をコーティングするための方法としては従来ゾルゲル法がある。
しかしゾルゲル法によって酸化亜鉛粒子をコーティングする場合には、数時間あるいはそれ以上に時間を充分かけて皮膜を形成させるしかないため、その間にコーティング材の大きさなど不均一な粒子が多く発生してしまい、そのような不均一なコーティング材によって酸化亜鉛粒子の表面をコーティングしても薄く且つ均一な層に形成させることは非常に困難であった。
【0004】
またゾルゲル法では、酸化亜鉛の粒子の表面全部を確実に被覆しようとすると、コーティング材が有機物の場合では被覆層を数十nmほど厚くしなければならず、そのように厚くすれば酸化亜鉛の粒子の表面が覆われて酸化亜鉛が周囲の他の物質に接触するのを遮断させて有機物の分解変色を抑制する効果を得ることが可能とはなるが、その代わりその厚い被覆層に遮蔽されて酸化亜鉛の表面まで紫外線が到達しにくくなって紫外線を吸収する機能が阻害されてしまうというマイナス面が現れる。
【0005】
そこでそれとは逆に、紫外線の吸収効果を高めようとコーティング材の被覆層を薄くすると、コーティング層が不均一となっているため酸化亜鉛の粒子の一部が露出してしまい、この部分が酸化亜鉛が有機物に直接接触して有機物を変色させてしまうので、化粧品として重要な色彩安定性(変色防止性能)を得ることができなくなってしまうという問題が生じる。
これに関連して、下記特許文献1及び特許文献2には、紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とが可能なシリカの薄膜を表面に被覆された酸化亜鉛微粒子に関した技術の提案がなされている。
一方、皮膜の製造方法としては、下記特許文献3には二酸化珪素などのコア材に酸化チタンなどの金属酸化物をコーティングする製造過程で、懸濁液に温度調節して30分程度の短時間にマイクロ波を照射すると金属酸化物を均一な厚さにコーティングできるとの記載がみられる。

【特許文献1】特開2003-292818号公報
【特許文献2】特開2007-16111号公報
【特許文献3】特表2006-527779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2で提案されている製造方法は、いずれも酸化亜鉛粒子とシリカ成分との懸濁液を加熱して皮膜を形成する「ゾルゲル法」による製造方法であり、この方法では上述の如く酸化亜鉛粒子の表面にシリカの皮膜が形成されるまでに数時間あるいはそれ以上の長い時間を要し、その長い時間においてはコーティング材の不均一な粒子が発生する機会が増大し、発生した不均一な粒子とともにシリカが酸化亜鉛粒子の表面に付着されてしまうことによって薄く均一なシリカの層を酸化亜鉛粒子の表面に形成することが非常に困難であった。
【0007】
そこで本発明は、酸化亜鉛に備わる光触媒としての機能と紫外線吸収機能とをバランスよく調整し、紫外線吸収機能を失うことなく且つ光触媒としての機能を極力抑制させることが可能となるように、酸化亜鉛微粒子の表面を被覆するシリカを均一な薄膜をマイクロ波の照射により極めて短時間で確実に形成することが可能となる方法と、その短時間で皮膜を形成させて行う方法により、紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とを同時に可能としたシリカの均一な薄膜が表面に形成されたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現させるために、本発明の請求項1のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法にあっては、10~70nmの平均二次微粒子径に解砕された酸化亜鉛のナノ粒子、テトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水とを混合し懸濁液を得る混合工程と、前記混合工程で得られた懸濁液を攪拌しつつ、該懸濁液にマイクロ波を照射してエタノールの気化温度を越えない範囲まで加熱すると共に、該加熱した温度を維持するよう前記酸化亜鉛微粒子が備える紫外線吸収機能が保持され且つ光触媒機能の抑制が可能となる2~3nmの厚さのシリカ薄膜が前記酸化亜鉛微粒子の表面に形成されるまで前記マイクロ波の照射を継続するマイクロ波照射工程と、から成り、均一なシリカの膜が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法にあっては、酸化亜鉛微粒子の二次粒子をエタノールに混合して10~70nmの平均二次微粒子径に解砕されたナノ粒子を得る粒子解砕工程と、該粒子解砕工程で得られたエタノールに混合された酸化亜鉛のナノ粒子、テトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水とを混合し懸濁液を得る混合工程と、前記混合工程で得られた懸濁液を攪拌しつつ、該懸濁液にマイクロ波を照射してエタノールの気化温度を越えない範囲まで加熱すると共に、該加熱した温度を維持するよう前記酸化亜鉛微粒子が備える紫外線吸収機能が保持され且つ光触媒機能の抑制が可能となる2~3nmの厚さのシリカ薄膜が前記酸化亜鉛微粒子の表面に形成されるまで前記マイクロ波の照射を継続するマイクロ波照射工程と、から成り、均一なシリカの膜が形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明にあっては、上記請求項1又は2に記載のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法において、混合工程で使用される酸化亜鉛ナノ粒子、テトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水の最適な配合量が、酸化亜鉛ナノ粒子が2.5gに対して、テトラエトキシシランが0.75~2.0g、エタノールが20~120ml、水が15~90ml、アンモニア水溶液が10~60mlの範囲にあることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明にあっては、上記請求項3に記載のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法において、酸化亜鉛ナノ粒子を含む懸濁液へのマイクロ波照射時間が、エタノールの気化温度を越えない高温に到達するまでの時間を1分以内とし且つその後にその温度を維持する時間を1~3分に設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、上記請求項1から4のうちいずれか1項に記載のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法で得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子であって、酸化亜鉛の平均二次微粒子径が10~70nmで、且つその酸化亜鉛ナノ粒子の表面に均一に形成されたシリカの皮膜層の厚さが2~3nmであり、紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とを同時に可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成であり、この構成によって以下の効果を奏せられる。
即ち、本発明のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子は、マイクロ波を照射によって、酸化亜鉛の二次粒子である酸化亜鉛微粒子の径が10~70nmとうい微細なナノ粒子であり、その酸化亜鉛微粒子の表面には、図4の電子顕微鏡写真に示されるように、シリカの皮膜層が2~3nmで均一に形成される。そして、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子は、そのように薄く均一な層となっているシリカによって紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とが同時に可能となる。
【0014】
このシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法においては、酸化亜鉛のナノ粒子に対してテトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水が適量混合された懸濁液に、攪拌しつつマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程によって必要量のマイクロ波を極めて短時間だけ照射して、急速に溶媒であるエタノールの気化温度(78.3°C)を越えない温度に加熱し、そのままその温度を保って照射し続ける。
このマイクロ波の照射時間は極めて短時間であるのでテトラエトキシシランから大きさや形状の不均一なシリカ粒子の発生するための時間が殆どなく、このため極めて均一な微細シリカ粒子が酸化亜鉛微粒子の表面全体に化学的に結合を起こして、酸化亜鉛微粒子の表面全体に均一な厚さの層が形成される。
この形成中、温度がエタノールの気化温度を越えない温度に制御されるので、揮発体に着火して爆発されることがなく、安全に製造することができる。
【0015】
なお、ナノクラスに解砕されていない大きな粒子の酸化亜鉛微粒子を用いる場合には、エタノールに混合して酸化亜鉛を小さく解砕する解砕工程によって、化粧品などに適した光透過性(透明性)を示す素材、即ち、粒子径がナノ(nm)クラスとなる微細な粒子にまで解砕された酸化亜鉛微粒子が得られる。
また、前記混合工程で使用される各種有るシリカの原料の中で特にテトラエトキシシランを用いることによって、短時間で均一なシリカの皮膜層が2~3nmに形成され、紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とを同時に可能となるシリカ被覆酸化亜鉛微粒子が得られる。
【0016】
その、混合工程で混合される物質の混合量の割合は、酸化亜鉛のナノ粒子に対して、テトラエトキシシラン、エタノール、アンモニア水溶液及び水を最適に配合量すれば、その配合された懸濁液に照射する時間が数分という短時間で行い、表面により均一なシリカの薄膜が形成されたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子を得ることが可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
単独の物質として酸化亜鉛微粒子自体は、紫外線吸収作用と光触媒としての両機能を有しており、このような酸化亜鉛微粒子を例えば化粧品に使用した場合、酸化亜鉛の紫外線吸収作用は太陽光線に含まれた紫外線が人体の細胞を破壊するのを防止(UVカット)することができるので有益であり、逆に、光触媒としての機能は太陽光線の紫外線を受けて化粧品に含まれている有機物を化学変化させて変色を起こさせるので有害となる。
そのような有益な機能を確保すると同時に有害となる機能を抑えるためには、酸化亜鉛微粒子の表面をシリカの層で被覆して酸化亜鉛微粒子の上記機能を調節しなければならない。
この調節においては、酸化亜鉛微粒子に備わる紫外線吸収機能は充分確保しつつ変色させる触媒としての機能はできるだけ抑えることが可能となるように酸化亜鉛微粒子の表面にシリカ(二酸化珪素)層が形成される必要である。
本発明では、そのような機能を持つように、酸化亜鉛微粒子の表面にシリカの皮膜層を形成するシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の製造方法と、その方法で製造されたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子に関するものであるが、まずシリカ被覆酸化亜鉛微粒子について先に説明する。
【0018】
本発明のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子は、図4の電子顕微鏡写真で示す如く、中の酸化亜鉛微粒子の径は10~70nmの範囲で極めて微細なナノ粒子であり、その酸化亜鉛ナノ粒子の表面には均一な2~3nmの層を成すシリカの極めて薄い皮膜が均一に形成されている。
本発明では、このようなシリカの層で酸化亜鉛微粒子の表面を被覆して中の酸化亜鉛微粒子の紫外線吸収機能は充分確保する一方で、同時に、変色させる触媒としての機能はできるだけ抑えるようとするものであるが、そのためには、酸化亜鉛微粒子の表面にシリカを2~3nmの層厚で均一に形成しなければならない。
【0019】
このような酸化亜鉛微粒子の表面にシリカ(二酸化珪素)の被覆を形成させるため、本発明の製造方法においては、マイクロ波照射装置と混合液を入れる容器及び攪拌機が使用される。
用いるマイクロ波照射装置は電子レンジタイプの装置などが可能である。
【0020】
そして、本発明では、次の(A)から(F)の各材料を、配合量を適量に用いることが必要である。
(A)解砕された酸化亜鉛ナノ粒子 : 2.5g
(B)テトラエトキシシラン : 0.25~2.0g
(C)エタノール : 85ml
(D)アンモニア水溶液 : 45ml
(E)水 : 30ml
【0021】
酸化亜鉛の微粒子については、解砕された酸化亜鉛のナノクラスの大きさの微細な粒子(一次粒子に近い粒子)を使用するが、解砕されていない大きい酸化亜鉛微粒子(二次粒子)を使用する場合には、溶媒のエタノールに混合して粉砕機で解砕し、一次粒子に近い粒子、即ち径が10~70nmの範囲のナノ粒子にしてから使用する。
【0022】
そして、上記各材料を使用して製造される、酸化亜鉛微粒子の表面へのシリカ被覆を形成するための工程は、次の如くである。
その工程は、図1に示すように、解砕された酸化亜鉛のナノ粒子と、テトラエトキシシラン(TEOS)と、エタノールと、アンモニア水溶液と、水とを混合する混合工程と、その工程で得られた混合液に、エタノールの気化温度を越えない温度まで急速に電磁加熱をして、エタノールの気化温度を越えない温度に制御しつつ酸化亜鉛の紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とが同時に可能となる薄膜が得られる時間だけ攪拌しつつマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程とからなる。
この工程により、酸化亜鉛微粒子の表面に均一なシリカの薄膜の形成が可能となる。
【0023】
そして、そのような均一なシリカの薄膜の形成にとっての上記各材料の使用量は、酸化亜鉛ナノ粒子が2.5gに対して、テトラエトキシシランが2.0g、エタノールが85ml、水が45ml、アンモニア水溶液が30mlとするのが理想であるが、好ましい配合量として、酸化亜鉛ナノ粒子が2.5gに対して、テトラエトキシシランが0.75~2.0g、エタノールが20~120ml、水が15ml~90ml、アンモニア水溶液が10~60mlの範囲にあれば良い。
用いるエタノールは、酸化亜鉛微粒子とテトラエトキシシランを均一に懸濁させるための溶媒として使用される。
また、酸化亜鉛微粒子とテトラエトキシシランの混合比によってpHは多少変わるので、上記アンモニア水溶液によりpHを適度に調節する。
【0024】
また、マイクロ波照射工程におけるマイクロ波の照射時間は、マイクロ波照射装置の性能でも異なるが、上記配合量の場合では、周波数2.45GHz、出力500Wのマイクロ波(電磁波)照射装置を使用すると、3分程度のきわめて短時間で、10~70nmの酸化亜鉛微粒子の表面に、紫外線吸収作用の保持と光触媒機能の抑制とが同時に可能なシリカの2~3nmという薄さで均一な皮膜層を形成させることが可能となる。
これは、上記特許文献1及び2に記載のゾルゲル法では数時間あるいはそれ以上の時間を要して製造されるのに比較すると、極端に短い時間となり、このことが、不均一な粒子が発生する時間的余裕を与えずに均一な皮膜層の形成が可能となる重要な要素となっている。
【0025】
(実験例1)
下記のように、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子を製造するための実験を行った。
酸化亜鉛はMZ-500(テイカ社の商品名)を使用した。
被覆するシリカの前駆体にはテトラエトキシシランを用いた。
そしてまず、酸化亜鉛(MZ-500)の粒子をナノクラスに微細な粒子にするため、ミルポットに、溶媒のエタノールに混ぜて分散した前記酸化亜鉛を2.5gと、0.5mm径のジルコニアボール73.2gを入れ、ボールミル(フレッチュ社製のPulverisette—7)で370rpm、10分間稼動させて前記酸化亜鉛を解砕して懸濁液を得た。
この懸濁液を丸底フラシコに移した。
【0026】
さらに同様の繰り返しで5本の丸底フラシコに同じような懸濁液を用意した。
一方、前記酸化亜鉛2.5gに対して10%、30%、50%、80%となる0.25gから2.0gまで4種類の量のテトラエトキシシラン(TEOS)を用意した。
そして、各丸底フラシコの懸濁液内に4種類の量となるテトラエトキシシランをそれぞれ入れるとともに、それらに、85mlのエタノールと、30mlのアンモニア水溶液と、45mlの水と入れた。
【0027】
そして、それらの混合した懸濁液は、マイクロ波照射装置の中に入れ、攪拌しつつパルスモードでマイクロ波を照射した。これに用いたマイクロ波照射装置は、四国計測株式会社製の「SMW064」で、2.45GHz、最大パワー500Wである。
また、マイクロ波の照射は、熱電対により、懸濁液の温度をエタノールの気化温度78.3°Cを越えない安全な温度である70°Cに制御して行った。
このマイクロ波照射は2分間だけ行った。
【0028】
そして、そのマイクロ波照射後の懸濁液を遠心分離機によって酸化亜鉛の微粒子を分離採取し、さらに残存しているテトラエトキシシランはエタノールで洗浄して、シリカ被覆された酸化亜鉛微粒子のみを分離した。さらに、この酸化亜鉛微粒子を真空乾燥機により110°Cの温度で2時間乾燥した。
こうして、表面に均一なシリカの薄膜が形成された酸化亜鉛微粒子の粉体が得られた。
【0029】
このシリカ被覆酸化亜鉛微粒子について、メチレンブルーの光分解を測定することで、光触媒活性についての評価を行った。
この評価においては、上記未コーティング及び4種類のシリカコーティングした粉体サンプルで行った。
それらの粉体サンプル0.3gを、1.0×10-4Mのメチレンブルー水溶液に投入し、全ての実験で、吸着/脱落平衡を確実にするために30分間暗所にて攪拌した。
そしてその後5本のブラックライト(15W)で紫外線を照射した。
【0030】
紫外線照射後、所定時間毎に反応混合物からサンプルが採取され、10000rpm、15分の遠心分離の後に、664nmでメチレンブルーの吸光度が紫外可視分光光度計(日本分光製、V-560)で測定され、残存しているメチレンブルーの濃度が決定された。
メチレンブルーの分解性は以下の式で計算された。
分解性(%)=(C0-C)/C0×100%
=(A0-A)/A0×100%
この式中のC0は初期濃度、Cは濃度、A0は初期吸光度、Aは吸光度である。
【0031】
作られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子は高分解能透過電子顕微鏡(日立製作所製のH-7650)で撮影した。
X線光電子分光分析は、ESCA-5600(Pysical Electronic社製)を用いMgKα X線源200W、電子脱出角度45度で行った。
粒子の紫外線遮蔽能は均一分散された粉体を用いて作成された薄膜の透明度を、紫外可視分光光度計(日本分光製、V-560)を用いて評価した。
【0032】
得られた試料は、コーティング条件、X線光電子分光法で得られた表面シリコン濃度(原子%)を用い、その結果を下記表1に示す通りであった。
【0033】
【表1】
JP0005150826B2_000002t.gif

【0034】
この表1では、コーティングされた粒子の見かけの表面シリコン濃度はテトラエトキシシラン(TEOS)の投入量と密接に関係しており、テトラエトキシシラン(TEOS)/酸化亜鉛(ZnO)の重量比の増加とともにシリコン濃度が増加していることが確認される。
【0035】
この表1中でMZ80wt%におけるシリカコーティングされた酸化亜鉛微粒子の高分解能透過電子顕微鏡写真を図3に示す。
この写真にあるように、中心の酸化亜鉛の微粒子は球形である。そしてその周りに約3nmの厚さで均一に連続するコーティング層が形成されていることが明瞭に判る。
【0036】
また、図4は、未コーティング(a)および異なった4種類のシリカ量(b)、(c)、(d)、(e)でコーティグされた5種類の酸化亜鉛微粒子のメチレンブルー(MB)の紫外線照射時間に対する分解率を示す。
この図4のグラフ図によれば、(a)の線で表される未コーティングの酸化亜鉛微粒子では高い触媒活性を示し、メチレンブルー(MB)の濃度は紫外線照射時間とともに速やかに減少している。そして、90分の紫外線照射によりメチレンブルーの色は殆ど消失し、96%のメチレンブルーが分解された。
しかし、シリカ量の異なる(b)、(c)、(d)及び(e)の線で示された5種類のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子のメチレンブルー(MB)の紫外線照射時間に対する分解率はシリカ量が多いほど低くなっている。
この、TEOS/ZnOの初期重量比が0.1であるとき、見かけの表面シリコン濃度は5.0であり、シリカコーティングの膜厚は薄く不完全であり、この場合の試料は高い光触媒活性が示されている。
【0037】
これに対して、テトラエトキシシランが酸化亜鉛2.5gに対してシリカ量が30%から80%の3種類(c)、(d)、(e)の場合では充分効果を確認することができる。
この場合、TEOS/ZnOの初期重量比が0.8にすると、見かけの表面シリコン濃度は22.7になり、シリカコーティングの膜厚は3nmとなり、光触媒活性は顕著に減少しているのがわかる。
この光触媒活性の結果から、シリカコーティング層が酸化亜鉛微粒子の表面に形成されて酸化亜鉛微粒子の光触媒活性を抑制していることが確認できた。
【0038】
また、図5は、未コーティングおよび酸化亜鉛に対してTEOSが10%と80%の条件でシリカがコーティングされた酸化亜鉛微粒子の測定された紫外可視透過スペクトルである。
TEOSが10%の条件でシリカコーティングを行った酸化亜鉛微粒子の試料の透過スペクトルは、未コーティングの酸化亜鉛微粒子と同様な傾向を示している。
これに対して、TEOSが80%の条件でシリコン原子濃度は6.0%のシリカコーティングを行った酸化亜鉛微粒子では、紫外領域での吸収は未コーティングの酸化亜鉛微粒子のそれと極めて近い吸光度を保持している。本発明では、このように表面がシリカの層で遮蔽されて中の酸化亜鉛の紫外線吸収機能が抑制されたことが確認できた。
なお、より高い表面シリコン濃度を持つ試料の吸光度は若干減少していが、これは酸化亜鉛微粒子の量の低下によるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明で製造されたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子は、化粧品など材料のほか、塗料の顔料などに利用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の製造工程図である。
【図2】別の製造工程図である。
【図3】本発明のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子の高分解能透過電子顕微鏡写真である。
【図4】メチレンブルーの紫外線照射時間に対する分解率を示すグラフ図である。
【図5】異なるシリコン原子濃度を示すグラフ図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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