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明細書 :カラス忌避装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5135507号 (P5135507)
公開番号 特開2009-136214 (P2009-136214A)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
公開日 平成21年6月25日(2009.6.25)
発明の名称または考案の名称 カラス忌避装置
国際特許分類 A01M  29/16        (2011.01)
FI A01M 29/02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2007-315994 (P2007-315994)
出願日 平成19年12月6日(2007.12.6)
審査請求日 平成22年9月15日(2010.9.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】塚原 直樹
【氏名】杉田 昭栄
【氏名】青山 真人
個別代理人の代理人 【識別番号】100100077、【弁理士】、【氏名又は名称】大場 充
【識別番号】100136010、【弁理士】、【氏名又は名称】堀川 美夕紀
審査官 【審査官】松本 隆彦
参考文献・文献 特開2001-112405(JP,A)
特開平11-332450(JP,A)
中村 和雄、岡ノ谷 一夫,音声の利用による鳥害防除,日本音響学会誌,日本,社団法人日本音響学会,1992年 8月 1日,48巻8号,pp.577-585
中村 和雄,忌避音による鳥の追い払い,総合農業の新技術,日本,農林水産省農業研究センター,1995年 7月31日,平成6年度(8号),pp.80-84
天敵に対するオナガの音声の種類と機能,平成7年度研究成果情報(総合農業),日本,総合農業試験研究推進会議農林水産技術センター,1996年 8月30日,pp.153-154
鳥害防止装置の開発,平成11年度事業報告,日本,生物系特定産業技術研究推進機構農業機械化研究所,2000年 2月,pp.114-115
池内 温、萩原 洋晶、大政 義久、窪田 聖一、大西 論平,カンキツ園における鳥害防止に関する研究(第2報)機器や資材利用による鳥害防止効果,愛媛県立果樹試験場研究報告,日本,愛媛県立果樹試験場,2005年,pp.37-55
中道 義忠,ディストレスコールとその応用の研究,福井工業大学研究紀要,日本,福井工業大学,2000年 3月20日,第30号,pp.49-56
調査した分野 A01M 1/00-99/00
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の音声A~Eの内2種以上の音声データを記憶した音声記憶手段と、
前記音声データの中から、前記音声Aを最初に再生した後に、前記音声B~Eの1種又は2種以上を再生する音声再生手段と、
を有することを特徴とするカラス忌避装置。
音声A:周波数が1~2kHzの正弦波、方形波、三角波及びのこぎり波から選ばれる1種以上の純音または前記純音を少なくとも1種以上含む複合音から選択される人工音声。
音声B:カラスが逃避する際に発する音声。
音声C:カラスが警戒する際に発する音声。
音声D:カラスが争う際に発する音声。
音声E:カラスが威嚇する際に発する音声。
【請求項2】
前記音声再生手段において、前記音声Aを再生した後に、前記音声Bを再生することを特徴とする請求項1に記載のカラス忌避装置。
【請求項3】
前記音声再生手段において、前記音声Aを再生した後に、前記音声Cを再生し、その後前記音声Bを再生することを特徴とする請求項1に記載のカラス忌避装置。
【請求項4】
前記音声再生手段において、前記音声Aを再生した後に、前記音声Dを再生し、その後前記音声Bを再生することを特徴とする請求項1に記載のカラス忌避装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カラスを忌避させるカラス忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラスは、農作物への食害や糞害、景観を乱すなど、人との間に多くの問題を抱えている。これらの問題を解決するために、特定の場所にカラスを寄せ付けないようにするカラス対策がなされてきた。例えば、目玉のような標識を付けたり、スピーカから銃声のような威嚇音を流すなどの試みがなされている。しかしながら、これらのカラス対策は、一時的には効果があるものの、危険がないことをすぐにカラスに見破られてしまい、短期間で忌避効果が減衰、もしくは消滅してしまうという問題があった。
【0003】
特許文献1には、高圧送電線路の鉄塔に鳥が飛来し短絡等の送電事故が発生するのを防止することを目的として、鳥類、猛獣等の鳴き声の合成音、カラスの警戒鳴き声など複数種の威嚇音の中からランダムに選択された威嚇音を発声させる鉄塔用鳥害防止装置について記載がある。しかしながら、カラスは鳥の中でも高度な知能を持つため、周囲の環境にそぐわない現実味にかける威嚇音には危険がないことを見破られてしまうため、カラスを忌避させる効果が一時的であるという問題があった。
【0004】

【特許文献1】特開平9-107865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に基づいてなされたもので、カラスを忌避させる忌避効果を維持することができるカラス忌避装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明者等は、カラスが仲間同士で鳴き声によって頻繁かつ複雑なコミュニケーションを行う習性に着目し、実際にカラスが逃避行動を行う状況を再現することにより、カラスが忌避行動を行うのではないかと考え、鋭意検討を行った。その結果、カラスが危険を察知してから逃避行動に至るまでの間に発するカラス自身の鳴き声を2種以上再生することにより、高い忌避効果が得られることを知見した。
【0007】
したがって、本発明は、下記の音声A~Eの内2種以上の音声データを記憶した音声記憶手段と、この音声データの中から、音声Aを最初に再生した後に、音声B~Eの1種又は2種以上を再生する音声再生手段と、を有することを特徴とするカラス忌避装置により前記目的を達成する。
音声A:周波数が1~2kHzの正弦波、方形波、三角波及びのこぎり波から選ばれる1種以上の純音または前記純音を少なくとも1種以上含む複合音から選択される人工音声。
音声B:カラスが逃避する際に発する音声。
音声C:カラスが警戒する際に発する音声。
音声D:カラスが争う際に発する音声。
音声E:カラスが威嚇する際に発する音声。
【0008】
本発明においては、カラスが逃避行動を行う状況に近い順番で音声A~Eを再生することが好ましい。したがって、本発明の音声再生手段において、音声Aを再生した後に音声Bを再生する、音声Aを再生した後に音声Cを再生しその後音声Bを再生する、音声Aを再生した後に音声Dを再生しその後音声Bを再生することが好ましい。
【0009】
また、本発明においては、カラスが逃避行動を行う状況をよりリアルに再現するために、音声再生手段において、音声A~Eから選ばれた2種以上の音声に加えて、音声A~E以外の音声を組み合わせて再生してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカラス忌避装置によれば、カラスを忌避させる忌避効果を維持することができる。そのため、カラスの侵入を防ぎたい場所の付近で、本発明のカラス忌避装置を用いて音声を再生することで、カラスに忌避を促し、特定の場所への侵入を防ぐことができる。また、カラスの捕獲や、カラスへの身体的ダメージを与えることなく、カラスの行動を制御することが可能であり、動物愛護の観点からも有用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるカラス忌避装置を説明するためのブロック図である。
図1に示すとおり、本発明のカラス忌避装置は、音声データを記憶可能な媒体からなる音声記憶手段S1と、音声データを読み出す制御手段及び読み出された音声データを音声として出力するスピーカを備えた音声再生手段S2とからなる。音声記憶手段S1と音声再生手段S2は、例えば、コンパクトディスクとコンパクトディスク再生装置のように、音声記憶手段S1を音声再生手段S2から取り出しが可能な装置として構成できるし、半導体メモリ、ハードディスクドライブを組み込んだパーソナルコンピュータとして構成することもできる。
【0012】
本発明のカラス忌避装置は、音声の選択に特徴を有する。
本発明者等が、カラスの生態について観察を行ったところ、カラスが危険を察知して逃避行動に至るまでの間には、複数種の鳴き声があることがわかった。図2に、カラスが逃避行動に至るまでの主な鳴き声5種類のソナグラムを示す。なお、ソナグラムとは、周知のように、横軸に時間、縦軸に周波数(音の高さ)、色の濃淡で音の強さを表し音声を視覚化したものである。図2に示すように、カラスは危険を察知した場合(2-1)に示す警戒の鳴き声を、敵を威嚇する場合には(2-2)に示す威嚇の鳴き声を、危険な場から逃避する場合には(2-3)に示す逃避の鳴き声を、カラス同士で争う場合には(2-4)に示す争いの鳴き声を、タカなどの猛禽と争う場合には(2-5)に示す争いの鳴き声を発する。これら、(2-1)~(2-5)に示す音声は、いずれも1000~2000Hzの成分が強い。カラスにとっての危険度は警戒、威嚇、逃避、仲間同士の争い、猛禽との争いの順に高まり、危険度が高くなればなるほど鳴き声が濁ってくる傾向がある。例えば、実際にカラスがタカなどから逃避行動を行う場合には、タカを発見したことを仲間にしらせる警戒の鳴き声(2-1)を発し、その後、タカを威嚇する場合には威嚇の鳴き声(2-2)、タカと争う場合には争いの鳴き声(2-5)を発し、最終的に逃避する場合には逃避の鳴き声(2-3)を発する。
【0013】
本発明は、このような警戒、争い、逃避、威嚇などの音声、さらにはカラスの注意を引き付ける人工音声の中から2種以上を組み合わせて再生することにより、優れた忌避効果を維持することができる。音声を2種以上とする理由は、1種の音声だけでは、忌避効果が一時的なものになってしまうからである。例えば、警戒の鳴き声のみをカラスに聞かせた場合、1回目はその場から飛び立って上空を旋回して10分ほど様子を窺う逃避行動がみられるが、2回目には2、3分ほどで元の場所に戻ってきてしまい、3、4回目と回を重ねると逃避行動を行わなくなる。これは、カラスに危険がないことを察知されてしまうため忌避効果が短期間しか得られないと考えられる。しかしながら、本発明のように、カラスが逃避行動に至るまでの複数種類のカラス自身の鳴き声を提示することにより、カラスにとっては危険が現実的なものであるように感じられ、優れた忌避効果を維持できると考えられる。
【0014】
次に、音声A~Eについて説明する。
音声Aは、周波数が1~2kHzの正弦波、方形波、三角波及びのこぎり波から選ばれる1種以上の純音またはそのような純音を少なくとも1種以上含む複合音から選択される人工音声である。これは、図2にも示すようにカラスの鳴き声が周波数1~2kHzの範囲に強く現れることに着目して、カラスの注意を引き付けやすくするために、後述する警戒音声の特徴を強調するよう本発明者らが作成した人工音声である。複合音は、1~2kHzの周波数成分が強い純音を含むよう他の音と合成して作成する。例えば、カラスの鳴き声に含まれる0.1~15kHzの任意の周波数成分の正弦波および方形波、三角波、のこぎり波の波形でできた純音に、1~2kHzの周波数成分が強い純音を合成して作成することができる。
【0015】
図3に、人工音声の一例として純音の音声波形とソナグラムを示す。図3において、(3-1)は1kHzの正弦波、(3-2)は1.5kHzの正弦波、(3-3)は2kHzの正弦波である。(3-2)の1.5kHzの正弦波の音声波形を方形波、三角波、のこぎり波に変えたものが、(3-4)、(3-5)、(3-6)である。図4に、人工音声の他の例として複合音のソナグラムを示す。図4は、1.5kHz、3kHz、6kHz方形波を合成してできた複合音である。
人工音声を再生する場合は、時間は0.1~1.0秒の範囲とすることが好ましく、これを1回再生するだけでもカラスの注意を引き付けることができるが、0.1~1.0秒の再生音声を2~20回再生してもよい。音声を再生する間隔は、等間隔とすることで、カラスが警戒の鳴き声を発する状況に似せることができる。このときの間隔は、0.1~1.0秒の範囲が好ましい。人工音声を再生する場合の一例として、図5に、0.3秒の1.5kHzの方形波からなる純音を0.3秒間隔で3回再生した音声のソナグラムを示す。
【0016】
音声Bは、カラスが逃避する際に発する鳴き声である。
図6に、カラスが逃避する際の鳴き声の一例をソナグラムで示す。図6において、6種類の異なる矢印は、異なる個体(6羽のカラス)の鳴き声を表すが、いずれも0.5~2kHzの周波数成分が最も強い。また、倍音構造(ソナグラムに縦に等間隔で並ぶ縞)がみられる。カラスが逃避する際に発する鳴き声であることを印象付けるために、音声Bとしては、個体数が3以上(3羽以上のカラス)の鳴き声を含み、この鳴き声の再生時間は、1~300秒であることが好ましい。1秒以上再生しないと、カラスが逃避することを印象付けるのに不十分であり、また、300秒を越えると、状況の現実味がなくなるからである。なお、逃避する際の鳴き声に含まれるノイズは一部で、澄んだ鳴き声に聞こえることもある。
【0017】
音声Cは、カラスが警戒する際に発する鳴き声である。
図7に、カラスが警戒する際の鳴き声の一例のソナグラムを示す。図7は、1羽のカラスにより発せられる音声であるが、0.5~2kHzの周波数成分が最も強く、倍音構造が見られ、0.2秒の鳴き声が0.5秒間隔で3回繰り返されている。
音声Cとしては、倍音構造かつ時間が0.1~0.5秒間続く一つの鳴き声が3回以上等間隔で繰り返される音声を用いることが好ましい。間隔は0.1~1秒であることが好ましい。間隔が0.1秒未満ではカラスが警戒することを印象付けるのに不十分であり、また、間隔が1秒を超えると一続きの同じ音声であるとカラスが認識しにくいからである。なお、音声に含まれるノイズは一部で、澄んだ鳴き声に聞こえる場合もある。
ここで、音声Bと音声Cは一つの鳴き声だけの比較では、両者の区別がつきにくいが、音声Bは、音声Cよりも多くのカラスが同時に発しているのに対し、音声Cは、1~3羽くらいの少数で発しているので、区別がつく。
【0018】
音声Dは、カラスが争う際に発する鳴き声であって、カラス同士が争う際に発する鳴き声であっても、猛禽等の敵と争う際に発する鳴き声であってもよい。
図8に、カラスが猛禽と争う際の鳴き声の一例のソナグラムを示す。図8は、1羽のカラスにより発せられる音声であるが、0.5~2kHzの周波数成分が最も強いが、倍音構造ではない。また、一つ一つの鳴き声の時間も0.2~0.5秒の範囲でばらつきがあり、鳴き声の間隔も0.4秒、1.5秒とばらつきがある。
音声Dとしては、一つの0.2~1.0秒間続く一つの鳴き声を間隔0.1~30秒程度の適当な間隔で1回以上、好ましくは2回以上再生する。間隔が0.1秒未満ではカラスが争っていることを印象付けるのに不十分であり、また、間隔が30秒を超えると無音状態が長くなり、現実味がなくなるからである。音声Dには、音声にノイズが混じってもよく、濁った鳴き声に聞こえる場合もある。
【0019】
音声Eは、カラスが威嚇する際に発する鳴き声である。図2の(2-2)に示すような威嚇鳴き声を音声A~Dの前後および音声A~Dの間に再生することにより、より複雑な音声パターンが形成でき、忌避効果を維持する上で有用である。
音声Eは、図9に示すように、0.5~2kHzの周波数成分が最も強く、倍音構造が見られ、ノイズが多く含まれる。0.5秒の鳴き声が0.2秒間隔で5回繰り返されている。
音声Eとしては、倍音構造かつ時間が0.1~1.0秒間続く一つの鳴き声が3回以上等間隔で繰り返される音声を用いることが好ましい。間隔は0.1~1秒であることが好ましい。間隔が0.1秒未満ではカラスが警戒することを印象付けるのに不十分であり、また、間隔が1秒を超えると一続きの同じ音声であるとカラスが認識しにくいからである。なお、音声に含まれるノイズは一部で、澄んだ鳴き声に聞こえる場合もある。
ここで、音声B、C、Eは倍音構造があるのに対し、音声Dにはない。音声DとEはノイズが含まれ、濁って聞こえる。また、音声Dは等間隔の繰り返しがある鳴き声であるが、音声Eは等間隔の繰り返しがない。
【0020】
本発明のカラス忌避装置において、音声を再生する場合、カラスにとって現実に危険がせまっていると感じられるように再生することが望ましい。例えば、下記のパターン1、2に示すように、最初に人工音声を流してカラスの注意を引き付けた後、カラスが逃避する際の音声を流すことが好ましい。また、パターン3に示すように、最初に人工音声を流してカラスの注意を引き付け、猛禽との争い声を流し、最後にカラスが逃避する際の音声を流すことも好ましい。
パターン1:音声A(人工音声)→ 音声B(逃避鳴き声)
パターン:音声A(人工音声)→ 音声C(警戒鳴き声)→ 音声B(逃避鳴き声)
パターン:音声A(人工音声)→ 音声D(猛禽との争い鳴き声)→ 音声B(逃避鳴き声)
一つのパターンを任意の時間、例えば1~120分程度、繰り返し再生してもよいし、複数のパターンを組み合わせて再生してもよい。また、パターンの組み合わせは、ランダムでもよい。
一番目、二番目、三番目、それぞれの音声を再生する間隔を適宜調整することは、忌避効果を維持するためには好ましい。
【0021】
本発明のカラス忌避装置においては、音声A~Eを2種以上再生させればよいが、音声と音声との前後や間、または一部重なるタイミングで猛禽など他の動物の音声や、人の音声や爆音などの音声、あらゆる純音や複合音などの人工音声を再生することを許容する。このような音声は効果音として、音声A~Eが現実のものであるとカラスに錯覚を起こさせる役割を果たす。
【実施例1】
【0022】
ハシブトカラス15羽を使用して本発明のカラス忌避装置の忌避効果を調べた。各個体は、縦幅240cm、横幅70cm、高さ80cmの檻に単独で飼育した。ハシブトカラスに対して提示した音声は、警戒音声の特徴(声の長さと周波数)をもった図5に示す人工音声(以下、「人工音声」と記す)、カラスが猛禽と争う際に発した図8に示す鳴き声(以下、「争い鳴き声」と記す)、ねぐらから100羽ほどのカラスが一斉に逃避する際に発した図6に示す鳴き声(以下、「逃避時鳴き声」と記す)の3種類である。これらを下記に示す比較例1~4、本発明例1のような5つのパターンで提示し、ハシブトカラスの行動を観察した。なお、比較例1は、音声による効果を調べるため、いずれの音声も再生しなかった(以下、「音声無し」と記す)。
【0023】
比較例1:音声無し
比較例2:人工音声
比較例3:争い鳴き声
比較例4:逃避時鳴き声
本発明例1:人工音声→争い鳴き声→逃避時鳴き声(組合せ)
【0024】
実験に用いたケージ1を簡略に図10に示す。図10に示すように、容積が約5mのケージ1の中に、中央には止まり木2を、止まり木2の片側に餌箱3を、もう一方の側に水箱4を置いた。ハシブトカラスは、ケージ1内で自由に行動ができる。
実験前12時間は、ハシブトカラスを絶食させた。音声の提示とともに給餌し、行動を無人条件下で1時間ビデオにより録画した。提示は、一つの音声につき、3羽の別個体を用い、一度使用した個体は用いなかった。
【0025】
録画したハシブトカラスの行動を解析するため、餌箱3の前、止まり木2、水箱4の前の3地点にハシブトカラスが止まった時間と、回数を調べた。3地点に止まった時間が長く、回数が少ないほど、カラスが落ち着いている様子を表す。また、反対に3地点に止まった時間が短く、回数が多い場合は、カラスが落ち着かない様子、すなわち忌避の効果があることを表す。
餌箱3の前、止まり木2、水箱4の前の3地点における3羽のハシブトカラスの平均滞在時間を図11に示した。また、餌箱3の前、止まり木2、水箱4の前の3地点に3羽のハシブトカラスが移動した平均回数を図12に示した。なお、図11の音声無しの平均滞在時間は、餌箱3の前が214秒、止まり木2が1539秒、水箱4の前が48秒と長かったため、20秒を超える棒グラフの記載を省略した。
【0026】
録画したビデオ映像を解析した結果、音声無しの比較例1は平均滞在時間(図11)が長く、平均回数(図12)が少ないこと、また、人工音声、争い鳴き声、逃避時鳴き声を単独で提示した比較例2~4は、比較例1に比し平均滞在時間(図11)が短く、平均回数(図12)が増加すること、さらに、本発明例1は最も平均滞在時間(図11)が短く、最も平均回数(図12)が多いことがわかった。
これは、音声無しの比較例1に比べて、人工音声、争い鳴き声、逃避時鳴き声を単独で提示した比較例2~4の場合は、ハシブトカラスが頻繁に動き、餌箱3や水箱4にいる時間も短く、落ち着きのないような様子を表す。また、比較例1~4に比べ、本発明例1は最も均滞在時間(図11)が短く、最も平均回数(図12)が多いことから、忌避効果に優れ、かつ忌避効果が維持されていることが確認できた。
さらに、ビデオ映像からは、本発明例では、音が再生されるのと同時に餌箱3からハシブトカラスが飛び立つ姿とも観察され、音声の提示が何らかの心理的ストレスを引き起こしていると考えられる。さらに、単独の音声を提示した比較例2~4に比べ、音声を組み合わせた本発明例1では、より短い間隔で頻繁に動いていたことから、音声を組み合わせて提示することで、単独で提示するよりも高い忌避効果が維持できることが確認できた。
【0027】
なお、上記実施の形態では、音声によってカラスを忌避させるカラス忌避装置について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。また、音声以外の視覚刺激、味覚刺激、嗅覚刺激などと組み合わせて用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態におけるカラス忌避装置を説明するためのブロック図である。
【図2】カラスの鳴き声のソナグラムを示す図である。
【図3】人工音声の一例として純音の音声波形とソナグラムを示す。
【図4】人工音声の他の例として複合音の音声波形とソナグラムを示す。
【図5】0.3秒の1.5kHzの方形波からなる純音を0.3秒間隔で三回再生した音声のソナグラムを示す。
【図6】カラスが逃避する際の鳴き声のソナグラムを示す。
【図7】カラスが警戒する際の鳴き声のソナグラムを示す。
【図8】カラスが猛禽と争う際の鳴き声のソナグラムを示す。
【図9】カラスが威嚇する際の鳴き声のソナグラムを示す。
【図10】実験に用いたケージの簡略図である。
【図11】餌箱の前、止まり木、水箱の前の3地点におけるカラスの平均滞在時間である。
【図12】餌箱の前、止まり木、水箱の前の3地点にカラスが移動した平均回数である。
【符号の説明】
【0029】
S1…音声記憶手段、S2…音声再生手段、1…ケージ、2…止まり木、3…餌箱、4…水箱
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11