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明細書 :架橋ポリマーのリサイクル方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4974924号 (P4974924)
公開番号 特開2009-191174 (P2009-191174A)
登録日 平成24年4月20日(2012.4.20)
発行日 平成24年7月11日(2012.7.11)
公開日 平成21年8月27日(2009.8.27)
発明の名称または考案の名称 架橋ポリマーのリサイクル方法
国際特許分類 C08J  11/16        (2006.01)
FI C08J 11/16 ZAB
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2008-033654 (P2008-033654)
出願日 平成20年2月14日(2008.2.14)
審査請求日 平成22年5月21日(2010.5.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】後藤 敏晴
【氏名】芦原 新吾
【氏名】葭田 真昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100068021、【弁理士】、【氏名又は名称】絹谷 信雄
審査官 【審査官】小久保 勝伊
参考文献・文献 特開2001-192493(JP,A)
特開2000-061423(JP,A)
特開2002-212334(JP,A)
特開2001-192495(JP,A)
特開2005-022245(JP,A)
特開2008-038006(JP,A)
特開2004-35835(JP,A)
家村 正三 他4名,超臨界二酸化炭素による架橋ポリエチレンの発泡化,電気学会研究会資料,社団法人電気学会,2002年 9月10日,Vol.EC-02, No.21-27,Page.19-23
調査した分野 B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
特許請求の範囲 【請求項1】
架橋ポリマーを窒素酸化物により架橋部を選択的に活性化したのち、液体または超臨界状態の二酸化炭素中で、過酸化水素を用いて架橋部を酸化分解して、熱可塑性ポリマーを得ることを特徴とする架橋ポリマーのリサイクル方法。
【請求項2】
前記窒素酸化物が、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素であり、圧力と温度をコントロールして窒素酸化物の反応性を制御することで、架橋部を選択的に活性化する請求項記載の架橋ポリマーのリサイクル方法。
【請求項3】
架橋ポリマーを反応容器内に収容した後、窒素酸化物と二酸化炭素を反応容器に加えて、反応容器内を二酸化炭素の超臨界圧以下に保持して架橋ポリマーに窒素酸化物を付加させ、しかる後、二酸化炭素を超臨界圧以上に保持して過酸化水素と架橋ポリマーを反応させてC-C結合分岐点を優先的に酸化してC-C結合を切断することを特徴とする架橋ポリマーのリサイクル方法。
【請求項4】
過酸化水素と架橋ポリマーを反応させる際、その過酸化水素の反応容器内の体積に対する濃度が、0.2g/L~6.0g/Lである請求項1~3のいずれかに記載の架橋ポリマーのリサイクル方法。
【請求項5】
窒素酸化物と二酸化炭素を反応容器に加えて、反応容器内を二酸化炭素の超臨界圧以下に保持して架橋ポリマーに窒素酸化物を付加させる工程の温度が100℃以下である請求項3~4のいずれかに記載の架橋ポリマーのリサイクル方法。
【請求項6】
架橋ポリマーが、パーオキサイド架橋、電子線架橋、シラン水架橋によって架橋した、3級炭素と4級炭素を含むポリオレフィンやエチレン共重合体である請求項1~5のいずれかに記載の架橋ポリマーのリサイクル方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性をもたないためにマテリアルリサイクルが難しく、大量に埋立て投棄されている架橋ポリマーを熱可塑化し、リサイクルを可能とする架橋ポリマーのリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続したC-C結合を持つポリマーは、ポリオレフィン系のポリマーに代表されるように電線・ケーブルの被覆材料、接続部材料、給湯パイプ材料、蓄熱材料をはじめとして、広く用いられている。このようなポリマーの成形加工性には、架橋構造を含むC-C結合の分岐の度合いが強く関与している。
【0003】
特に架橋ポリマーは、3次元網目構造を持つために熱により溶融しないので、廃材を成型加工して再利用することが困難である。そのために再利用が難しく、使用後の材料はほとんどが埋立てや焼却処分されているのが現状である。
【0004】
一方、最近では、世界的な地球環境保全の意識の高まり、資源の枯渇といった問題から架橋ポリマーについても、リサイクルを目的とした検討がされるようになった。その一つは、架橋ポリマーを微粉化し、燃焼効率の良い微粉燃料として回収し、燃料として再利用するものである。
【0005】
もう一つは、微粉化したものを高温に熱し、熱分解により油化し、燃料として回収する方法(特許文献1)である。
【0006】
また、微粉化したものを架橋されていない樹脂と混ぜて溶融できるようにして、押出成形することにより、製品を得る方法も検討されている。
【0007】
さらに、最近では、超臨界水や亜臨界水を用いて、架橋したポリマーを分解する方法も提案されている(特許文献2、3)。
【0008】
しかし、上記の方法でポリマーを熱分解した場合、分子量の低下が大きく、ほとんどが低分子量のワックスや油にまで分解反応が進んでしまい、架橋前の元のポリマーに戻すマテリアルリサイクルは難しい。
【0009】
一方、架橋を選択的に切断する方法としては、化学結合の結合エネルギーの差を利用して結合エネルギーの小さい硫黄結合のみを切断することで、硫黄架橋ポリマーを熱可塑化する方法や、超臨界アルコール中の化学反応を利用してシロキサン結合のみを切断してシラン架橋ポリマーを熱可塑化する方法などが挙げられる。
【0010】
しかし、これらの方法はいずれも架橋を形成する硫黄結合やシロキサン結合の部分とポリマーの主鎖を形成する部分の化学構造の違いを利用して架橋ポリマーを熱可塑化する方法であり、たとえばパーオキサイド架橋や電子線架橋といった手法で架橋された架橋ポリマーは、ほとんどのポリマーの主鎖に含まれている化学結合と同じC-C結合で架橋されている。
【0011】
そのため、架橋部分とポリマーの主鎖の化学結合が共通なために、上記の方法では架橋を優先的に切断して熱可塑化ポリマーとしてリサイクルすることは難しい。
【0012】

【特許文献1】特開平10-160149号公報
【特許文献2】特開平6-279762号公報
【特許文献3】特開平10-24274号公報
【特許文献4】特許第3855006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
また、本発明者は、特許文献4に示されるように、廃棄ポリマーなどを超臨界二酸化炭素中で、廃棄ポリマーを窒素酸化物による酸化分解反応で中分子化或いは小分子化する方法を提案した。
【0014】
この方法で架橋ポリマーを熱可塑化しようとすると、生成物は分子量の大幅な低下をきたすので、高分子材料としての用途が限られリサイクルは難しい。
【0015】
このように、架橋ポリマーにあっては、架橋部分とポリマーの主鎖の化学結合エネルギー差が少ないために、上記した方法では、架橋を優先的に切断して熱可塑化ポリマーとしてリサイクルすることは難しい。
【0016】
そこで、本発明者は、特願2006-213554(発明の名称;架橋ポリマーのリサイクル方法)で、架橋ポリマーを超臨界二酸化炭素中で、窒素酸化物による酸化分解反応で、C-C結合を切断してリサイクルする際に、100℃以下、10時間以上に保持して、架橋ポリマーのC-C結合分岐点を優先的に酸化してC-C結合を切断する方法あるいは、架橋ポリマーを反応容器内に収容した後、反応容器内の空気を二酸化炭素に置換し、その後、窒素酸化物と二酸化炭素を反応容器に加えて、反応容器内を二酸化炭素の超臨界圧以下に保持して架橋ポリマーに窒素酸化物を収着(付加)させ、しかる後、二酸化炭素を超臨界圧以上に保持して窒素酸化物と架橋ポリマーを反応させてC-C結合分岐点を優先的に酸化してC-C結合を切断する方法を提案した。
【0017】
しかし、このようにして得られたリサイクルポリマーは得られた時点で黄色く変色している問題があり、かつ高温まで加熱すると、さらに濃い色に変色するとともに発泡およびゲル化する問題があった。
【0018】
より複雑で高い要求特性を満たす成形物を得るためには、C-C結合の分岐点を選択的に切断して、従来は加工が難しかったポリマーの加工性を向上させる必要がある。
【0019】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、従来リサイクルが難しく大量に埋立てまたは焼却処分されている架橋ポリマーを熱可塑化してリサイクルを可能とするもので、しかも、C-C結合の分岐点を優先的に分解することにより、架橋部分を優先的に切断して、架橋前のポリマーの高分子量成分が無くならないように維持しながら、架橋ポリマーを熱可塑化してマテリアルリサイクルを可能とするものである。
【0020】
すなわち、本発明の目的は、架橋ポリマーを熱可塑化してリサイクルを可能とするもので、しかも熱可塑化しても発泡や変色のない架橋ポリマーのリサイクル方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、架橋ポリマーを窒素酸化物により架橋部を選択的に活性化したのち、液体または超臨界状態の二酸化炭素中で、過酸化水素を用いて架橋部を酸化分解して、熱可塑性ポリマーを得ることを特徴とする架橋ポリマーのリサイクル方法である。
【0023】
請求項の発明は、前記窒素酸化物が、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素であり、圧力と温度をコントロールして窒素酸化物の反応性を制御することで、架橋部を選択的に活性化する請求項記載の架橋ポリマーのリサイクル方法である。
【0024】
請求項の発明は、架橋ポリマーを反応容器内に収容した後、窒素酸化物と二酸化炭素を反応容器に加えて、反応容器内を二酸化炭素の超臨界圧以下に保持して架橋ポリマーに窒素酸化物を付加させ、しかる後、二酸化炭素を超臨界圧以上に保持して過酸化水素と架橋ポリマーを反応させてC-C結合分岐点を優先的に酸化してC-C結合を切断することを特徴とする架橋ポリマーのリサイクル方法である。
【0025】
請求項の発明は、過酸化水素と架橋ポリマーを反応させる際、その過酸化水素の反応容器内の体積に対する濃度が、0.2g/L~6.0g/Lである請求項1~3のいずれかに記載の架橋ポリマーのリサイクル方法である。
【0026】
請求項の発明は、窒素酸化物と二酸化炭素を反応容器に加えて、反応容器内を二酸化炭素の超臨界圧以下に保持して架橋ポリマーに窒素酸化物を付加させる工程の温度が100℃以下である請求項3~4のいずれかに記載の架橋ポリマーのリサイクル方法である。
【0027】
請求項6の発明は、架橋ポリマーが、パーオキサイド架橋、電子線架橋、シラン水架橋によって架橋した、3級炭素と4級炭素を含むポリオレフィンやエチレン共重合体である請求項1~5のいずれかに記載の架橋ポリマーのリサイクル方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、ポリマーの架橋部分を優先的に分解してリサイクルを可能とするもので、架橋結合を形成している炭素結合が分岐した部分を優先的に分解する。架橋が優先的に分解でき、架橋前のポリマーのもつ高分子量成分が完全になくならない状態に保ち、かつ成形加工条件において変色、発泡、ゲル化しないので、得られた再生樹脂はポリマーとしてマテリアルリサイクルが可能であり、その工業的価値は著しく高いという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
【0030】
本発明は、架橋ポリマーを反応容器内に収容し、二酸化炭素を超臨界圧以上に保持して、過酸化水素と架橋ポリマーを反応させてC-C結合分岐点を優先的に酸化してC-C結合を切断することによって高温でも変色や発泡、ゲル化が起きないリサイクルポリマーを提供することが可能になり、架橋ポリマーを熱可塑化してマテリアルリサイクルを実現する架橋ポリマーのリサイクル方法を提供するものである。
【0031】
我々は、NO2を酸化剤として用いる先願発明において、発泡や架橋、変色の原因がポリマーに化学的に結合した窒素酸化物が原因であることを見出した。
【0032】
そこで、本発明では、超臨界反応に窒素酸化物を使わない方法で、ポリマーを酸化させることにより、生成物が高温で発泡しないものを製造することができる。
【0033】
すなわち、本発明は、架橋ポリマーを液体または超臨界状態の二酸化炭素中で、過酸化水素を用いて架橋部を酸化分解して、熱可塑性ポリマーを得るようにした架橋ポリマーのリサイクル方法である。
【0034】
本発明は、架橋ポリマーを反応容器に入れ、窒素酸化物を加え、架橋ポリマーに窒素酸化物を付加する工程と、付加した架橋ポリマーを超臨界二酸化炭素中で過酸化水素と反応させC-C結合を切断する反応を分けて行うようにしてもよい。
【0035】
すなわち、架橋ポリマーを反応容器に入れ、その反応容器内に、窒素酸化物と二酸化炭素を加えて、反応容器内を二酸化炭素の超臨界圧以下に保持して架橋ポリマーに窒素酸化物を付加させ、しかる後、反応容器から余剰の窒素酸化物を除去した後、反応容器内に二酸化炭素と過酸化水素を入れ、二酸化炭素を超臨界に保持して過酸化水素と架橋ポリマーを反応させてC-C結合分岐点(特に橋かけ構造を持つ場合にはその部分)を優先的に酸化してC-C結合を切断するようにしてもよい。
【0036】
窒素酸化物とは、二酸化窒素、四酸化二窒素、一酸化窒素、一酸化二窒素、三酸化二窒素などがあげられ、それらは単独で使用してもよいし、あるいは組み合わせて使用してもよく、さらに酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化硫黄などと組み合わせて使用してもよく、中でも好ましいのは二酸化窒素あるいは四酸化二窒素である。
【0037】
過酸化水素による酸化分解反応では、Ru、Rh、Pd、Pt、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの金属触媒や、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、N-ヒドロキシフタルイミドなどのラジカル開始剤、あるいは、蟻酸、酢酸などの有機酸などを添加して反応してもよい。
【0038】
この時の反応温度は、熱分解温度或いは解重合温度以下に保持するのが良い。また、上記熱分解温度或いは解重合温度以下とは、360℃以下である。また、より好ましくは、反応温度が100℃以上で、反応時間が3時間以下である。
【0039】
本発明の架橋ポリマーは、連続したC-C結合を持つポリマーであり、C-C結合分岐点が、パーオキサイド架橋、電子線架橋、シラン水架橋によって架橋結合した化学構造をもつポリオレフィンやエチレン共重合体である。
【0040】
連続したC-C結合を持つポリマーとは、ポリエチレンを代表とするポリマーで、C-C結合の分岐点とは、例えばポリエチレンの側鎖と主鎖の分岐点や、架橋結合の部分をいう。
【0041】
一般にC-C結合の一方の炭素の置換度(すなわち1級、2級、3級炭素)の違いのみによって、2級あるいは3級の炭素との結合から優先的に開裂させることは困難である。
【0042】
しかし、本発明では、始めに炭酸ガス中にNOラジカルを分散させることによって、2級あるいは3級の炭素との結合から優先的に反応させることができる。
【0043】
これは、2級あるいは3級の炭素ラジカルが1級の炭素ラジカルよりも安定であることを利用していると考えられる。
【0044】
このような反応は、特にパーオキサイド架橋や電子線架橋によって架橋され、架橋構造にC-C結合を持つ架橋ポリマーを熱可塑化するために利用可能であると考えられる。
【0045】
すなわち、化1に示したように架橋を形成する部分の構造は、2級の炭素のポリマー分子鎖(主鎖)に4級の炭素を持つ。3級の炭素ラジカルは、1級の炭素ラジカルよりも安定なため、架橋部分のC-C結合が開裂してラジカルが生成すると考えられる。
【0046】
【化1】
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【0047】
したがって、架橋構造がもつC-C結合の分岐点が優先的に反応することで酸化物が付加していると予想され、この結果、付加した炭素は活性化されて酸化されやすくなり、架橋構造が優先的に切断されるのでポリマー主鎖の分解、すなわち劣化を最小限に抑えて再生ポリマーとして架橋ポリマーをリサイクルすることが可能になる。
【0048】
また、本発明は、例えばビニルシランを用いてポリマーにアルコキシシランをグラフトし、その後水分の存在下でシラノール基の縮合反応によって架橋するような場合にもC-C結合の分岐点が生成するので、本発明が有効利用できると考えられる。
【0049】
さらに、シラン水架橋のポリマーは、C-C結合よりC-Si結合の方が結合エネルギーが小さいことから、本発明の反応条件で選択的にC-Si結合を切断できると考えられる。
【0050】
このような理由から、例えばビニルシランで架橋したものとパーオキサイド架橋がお互いに混ざった場合にも架橋を優先的に切ることが可能である。
【0051】
二酸化窒素(NO2)は、四酸化二窒素(N24)と化学平衡状態にある物質で、圧力や温度によって平衡をコントロールできるので、これらを用いることによって反応がコントロールしやすくなる。
【0052】
二酸化炭素は、臨界圧力7.38MPa、臨界温度31.1℃と、臨界点が低く、超臨界流体としては扱いやすく、液体よりも浸透性や拡散性が高いことからプラスチック(ポリマー)の細孔に溶解した過酸化水素を効率よく運ぶので、選択的な分解反応を行う場合に有効である。
【0053】
したがって、過酸化水素水が超臨界二酸化炭素に溶解する反応条件で反応することがより望ましく、過酸化水素水が過剰になり、超臨界二酸化炭素に溶解しきれないで、過酸化水素水の液体と架橋ポリエチレンが接触して反応すると、浸透性が劣り反応効率が低下する。すなわち、超臨界二酸化炭素への溶解度を考慮して過酸化水素の反応容器内の体積に対する濃度は、0.2g/L~6.0g/Lとなるように加えるとよい。
【0054】
マテリアルリサイクルするためには、窒素酸化物の付加温度は100℃以下、より好ましくは60℃以下にすることが好ましく、これにより3級あるいは4級炭素へ優先的にNO2ラジカルが付加してその炭素結合が切断されやすくなると考えられる。
【0055】
また、NO2ラジカルを付加した架橋ポリマーを一旦取り出して余剰の窒素酸化物を除去した後、過酸化水素を加えた超臨界二酸化炭素中で加熱することでC-C結合の分岐点を切断する。
【0056】
また、過酸化水素との反応温度がC-C結合の熱分解温度以上になると、ランダムにポリマーが分解されるので、分子量の低下が著しく、架橋結合以外の部分の分解が起こる。そのため、ポリマーの機械強度、伸び等が著しく低下するので、再生材をポリマーとして再利用することが困難となるため、反応温度は、100℃以上、360℃以下、好ましくは180℃以下が好ましい。
【0057】
架橋結合の切断を効率良く行うため、架橋ポリマーを粉砕したペレットやパウダー状で供給させることも可能である。
【0058】
過酸化水素による分解を促進させるため、過酸化水素に対して2種以上の過酸化物や窒素酸化物を混合したり、あるいは二酸化炭素以外の他の不活性ガスを混合してもよい。
【0059】
ここで、連続したC-C結合を持ったポリマーとは、例えばポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンや、塩素化ポリエチレン、あるいはエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-オクテンゴムなどエチレン共重合体が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例と比較例を説明する。
【0061】
実施例1:
ゲル分率85%のパーオキサイド架橋ポリエチレン(ベース;低密度ポリエチレン)を1mmのシート形状に成型し、これを粉砕して2~3mmのペレット状にした。このペレット0.5gを、50mlのオートクレーブに充填したのちに、オートクレーブ内の空気を二酸化炭素で置換し、その後、30%濃度の過酸化水素水(1.1g)と炭酸ガスを加えて表1に示す反応温度(160℃)、圧力(10MPa)、時間(3時間)でパーオキサイド架橋ポリエチレンと反応させた。
【0062】
実施例2~6:
ゲル分率85%のパーオキサイド架橋ポリエチレン(実施例6はゲル分率65%のシラン架橋ポリエチレン)を1mmのシート形状に成型し、これを粉砕して2~3mmのペレット状にした。このペレット0.5gを、50mlのオートクレーブに充填したのちに、オートクレーブ内の空気を二酸化炭素で置換し、その後、NO2(1.1g)と炭酸ガスを加えて60℃、1時間、3MPaでNO2をパーオキサイド架橋ポリエチレンに付加させた。その後、減圧して過剰のNO2を取り出してから30%濃度の過酸化水素水(0.1~0.5g)を加えて炭酸ガス中で表1に示す温度(120℃、110℃)、圧力(10MPa)、時間(3時間、実施例6は1時間)条件で再び加熱加圧し、過酸化水素と反応させた。
【0063】
実施例7:
実施例2におけるパーオキサイド架橋ポリエチレンに変わって電子線架橋ポリエチレンを用いた。
【0064】
実施例8:
実施例2における30%濃度の過酸化水素水の量を1.1gまで増加させて反応させた。
【0065】
実施例9:
実施例2における30%濃度の過酸化水素水の量を0.03gまで減少させて反応させた。
【0066】
比較例1、2:
実施例2における反応工程で過酸化水素水を用いるに代わりに、酸化剤としてNO2(0.5g)を用い、比較例1は反応温度を120℃、比較例2は140℃で実験を行った。
【0067】
反応後に反応容器を冷却し、ポリマーを回収して分子量分布、架橋度の指標となるゲル分率を測定した。
【0068】
これらの測定条件は、次の通りである。
【0069】
分子量分布は、o-ジクロロベンゼンを溶媒として、高温GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定した。その結果、回収した生成物の数平均分子量が低下しても300,000以上の高分子量成分が残っているものを○、高分子量成分が残らなかったものを×とした。
【0070】
ゲル分率は、JIS C3005に準拠し、反応後の試料を110℃のキシレンに24時間浸漬し、残ったサンプルを真空乾燥し、初期重量との比から求めた。
【0071】
成形性は得られたポリマーを200℃に加熱してその際のポリマーの変化を観察した。
【0072】
変色については白色のポリマーが黄色く変色した物を×、変色しなかった物を○とした。
【0073】
また、発泡については肉眼で気泡が確認できたものを×、確認できなかった物を○とした。
【0074】
また、ゲル化についてはピンセットで力を加えて塑性変形しないものを×、するものを○とした。
【0075】
実施例1~9と比較例1~3の実験条件、および結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
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【0077】
実施例1~9においては、ゲル分率が40%以下で、かつ発泡、変色、ゲル化が起こらなかった。
【0078】
実施例1と実施例2~6を比較すると、NOをパーオキサイド架橋ポリエチレンに付加させた場合(実施例2~6)には、過酸化水素の添加量が少なく、また反応温度が低くても(110、120℃)、ゲル分率を低くすることができる。
【0079】
しかし、実施例8は、実施例2、3より過剰に過酸化水素水を入れたものであるが、架橋の分解が実施例2、3よりもすすみにくく、また過酸化水素量を実施例2、3よりも大幅に減少させた実施例9の場合も反応が十分に進まず生成物のゲル分率が高かった。よって過酸化水素水の量が0.03g(過酸化水素の反応容器内の体積に対する濃度が0.18g/L)及び1.1g(過酸化水素の反応容器内の体積に対する濃度が6.6g/L)の場合、反応が進みにくいことが分かる。よって、過酸化水素の反応容器内の体積に対する濃度は、0.2g/L~6.0g/Lの範囲が好ましい。
【0080】
比較例1、2では酸化剤として二酸化窒素を用いた。その結果、反応温度120℃では架橋が切断されないのでゲル分率が高く、一方140℃で反応させた場合はゲル分率は0%まで下がって架橋が切断できるものの、生成物を成形条件に加熱すると発泡、変色、ゲル化の問題が生じて自由に加工条件が設定できない問題が生じた。
【0081】
以上、本発明は、従来リサイクルが難しく大量に埋立てまたは焼却処分されている架橋ポリマーの架橋部分を優先的分解してリサイクルを可能とするもので、架橋結合を形成している炭素結合が分岐した部分を優先的に分解する。架橋が優先的に分解できるので架橋前のポリマーのもつ高分子量成分が完全になくならない状態に保ち、かつ高温に加熱しても変色、発泡、ゲル化が起きないので、得られた再生樹脂はポリマーとしてマテリアルリサイクルが可能であり、その工業的価値は著しく高い。