TOP > 国内特許検索 > 視覚的力表示装置並びに視覚的力理科教材及び科学玩具 > 明細書

明細書 :視覚的力表示装置並びに視覚的力理科教材及び科学玩具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5311476号 (P5311476)
公開番号 特開2010-085387 (P2010-085387A)
登録日 平成25年7月12日(2013.7.12)
発行日 平成25年10月9日(2013.10.9)
公開日 平成22年4月15日(2010.4.15)
発明の名称または考案の名称 視覚的力表示装置並びに視覚的力理科教材及び科学玩具
国際特許分類 G01D   7/00        (2006.01)
G09B  23/08        (2006.01)
FI G01D 7/00 P
G09B 23/08
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2009-049896 (P2009-049896)
出願日 平成21年3月3日(2009.3.3)
優先権出願番号 2008229348
優先日 平成20年9月8日(2008.9.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年1月27日(2012.1.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 明彦
【氏名】渡辺 一博
個別代理人の代理人 【識別番号】100100077、【弁理士】、【氏名又は名称】大場 充
【識別番号】100136010、【弁理士】、【氏名又は名称】堀川 美夕紀
審査官 【審査官】松浦 久夫
参考文献・文献 特開2005-265800(JP,A)
特開2002-296294(JP,A)
特開2007-295175(JP,A)
特開2008-080955(JP,A)
実公平07-027490(JP,Y2)
特許第3806285(JP,B2)
実開平01-064020(JP,U)
調査した分野 G01D 7/00
G01P 15/18
G09B 23/08
A63H 33/22
特許請求の範囲 【請求項1】
x軸方向の加速度と、前記x軸方向と直交するz軸方向の加速度とを検出する加速度センサと、
前記加速度センサで検出された前記x軸方向の加速度情報ax及び前記z軸方向の加速度情報azにノイズ除去処理を施すフィルタと、
前記フィルタでノイズ除去処理された前記加速度情報axに基づいて表示情報dxを生成し、前記フィルタでノイズ除去処理された前記加速度情報azに基づいて表示情報dzを生成するコントローラと、
前記表示情報dxに基づいて前記x軸方向に作用する力の向きと大きさを表示するx軸表示器と、前記表示情報dzに基づいて前記z軸方向に作用する力の向きと大きさを表示するz軸表示器とを有する表示手段と、を備え、
前記フィルタは、
前記加速度情報azに適用するカットオフ周波数fzが、前記加速度情報axに適用するカットオフ周波数fxよりも小さく、
前記コントローラは、前記表示情報dzと大きさが同じで向きが逆の表示情報dz’を生成し、
前記z軸表示器は、前記表示情報dz及び前記表示情報dz’の両者を表示することを特徴とする視覚的力表示装置。
【請求項2】
鉛直を指すz軸方向の加速度と、前記z軸方向と直交するx軸およびy軸方向の加速度とを検出する3次元加速度センサと、
前記加速度センサで検出された前記x軸方向の加速度情報ax、前記y軸方向の加速度情報ay及び前記z軸方向の加速度情報azにノイズ除去処理を施すフィルタと、
前記フィルタでノイズ除去処理された前記加速度情報axに基づいて表示情報dxを生成し、前記フィルタでノイズ除去処理された前記加速度情報ayに基づいて表示情報dyを生成し、前記フィルタでノイズ除去処理された前記加速度情報azに基づいて表示情報dzを生成するコントローラと、
前記表示情報dxに基づいて前記x軸方向に作用する力の向きと大きさを表示するx軸表示器と、前記表示情報dyに基づいて前記y軸方向に作用する力の向きと大きさを表示するy軸表示器と、前記表示情報dzに基づいて前記z軸方向に作用する力の向きと大きさを表示するz軸表示器とを備え、
前記フィルタは、
前記加速度情報azに適用するカットオフ周波数fzが、前記加速度情報axおよびayに適用するカットオフ周波数fxおよびfyよりも小さく、
前記コントローラは、前記表示情報dzと大きさが同じで向きが逆の表示情報dz’を生成し、
前記z軸表示器は、前記表示情報dz及び前記表示情報dz’の両者を表示することを特徴とする視覚的力表示装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
重力のx軸方向の成分cxを、重力のz軸方向の成分azに基づいて定めることを特徴とする請求項1又は2に記載の視覚的力表示装置。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれかに記載の視覚的力表示装置からなる視覚的理科教材。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれかに記載の視覚的力表示装置からなる視覚的科学玩具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に作用している力の大きさと向きを視覚的に認識できる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学校教育の現場において、理科離れが叫ばれている。その理由の一つとして、理科で扱われる事柄の中には、視覚的に認識できないものがあることが掲げられる。一例として、力の概念がある。つまり、力は目に見えないために、大きさ、向きを視覚的に捉えることができず、中高生にとって難解なものの一つとなっている。したがって、教育現場において、物体に作用している力の大きさ及び向きを視覚化できる教材が求められている。
【0003】
直交する2軸(又は3軸)の加速度を加速度センサにより検出し、基準方向と重力加速度とのなす角度、つまり傾斜角を求める傾斜センサは種々提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第3114571号公報
【特許文献2】特開2008-96355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加速度センサを用いて傾斜角を求めることは、力の向きを認識することに対して示唆を与えるものであるが、力の大きさと向きの両者を視覚化した装置の提案がなされたとの報告は見出せない。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、力の大きさと向きの両者を視覚的に認識できる視覚的力表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、加速度センサを用いて目的とする視覚的力表示装置を得ることを前提に検討を行ったところ、いくつかの課題が抽出された。
<重力の表示>
課題の一つは、重力を表示させることである。
物体に作用する力の一つとして、重力がある。したがって、目的とする視覚的力表示装置は、物体、つまり視覚的力表示装置に重力が常に作用していることを表示する必要がある。
ここで、加速度センサは、原理的には加速度運動をした際の慣性力を測定している。例えば、x軸方向(水平方向)に加速度運動すると、加速度センサは逆方向の慣性力を受けこれを電圧信号として出力する。このことは、視覚的力表示装置に実際に作用した力の向きを表示するには、電圧出力の逆向きに表示すればよいことを示している。
【0007】
しかし、z軸方向には常に重力が働いているため、視覚的力表示装置が静止状態であっても、加速度センサは重力と逆方向の加速度を出力する。これは力として解釈すれば、視覚的力表示装置が置かれている面から受ける垂直抗力に対応する。一方、加速度センサが自由落下しているとき(又は投げ上げられているとき)は、慣性力と重力とが打ち消しz軸方向の加速度センサの出力は0(ゼロ)となる。すなわち、加速度センサの出力をそのまま表示したのでは、いかなる場合も視覚的力表示装置に作用する重力を表示することができない。これでは、学習教材として不備がある。
【0008】
重力を表示させることの課題に対して、本発明者等は、視覚的力表示装置に人為的に重力を表示させることにした。具体的には、垂直抗力に対応する加速度センサの出力と同じ大きさで逆向きの力を、視覚的力表示装置に作用する重力とみなして、視覚的力表示装置に表示させることとした。
【0009】
<斜面の運動への対応>
中学校の理科では斜面における台車の加速度運動を扱う。これに対応するため、視覚的力表示装置は、自己の傾きを検出する必要がある。しかし、傾きと横方向への加速度運動は等価であり区別できないため、傾きを求めるには何らかの制約条件を設定する必要がある。そこで本発明では、理科教材であることから、「z方向へは加速度運動しない」ということを前提として、加速度センサからのz軸方向の出力から傾きを求めることにした。具体的には、cosθ=az/gで傾きθを求めることにした。ただし、azは重力のz軸方向の成分、つまりz軸方向の加速度(情報)、gは重力加速度を表す。
さらに、本発明による視覚的力表示装置を傾ける方向は、y軸の周りに限定することにした。これによって、重力の斜面に沿った成分、すなわち重力のx軸方向の成分cxはcx=(g-az1/2から求めることができる。z軸方向の加速度azが重力加速度gより小さい場合には、z軸方向の重力とともにx軸方向の重力も上式に基づいて表示することとした。
【0010】
<ノイズ除去>
加速度センサは、本来1KHz程度までの帯域を持っているため、音も雑音として拾ってしまう。本発明による視覚的力表示装置では、加速度センサからの信号をLow-Passフィルタを通した後にアナログ-デジタル変換(AD変換)することでノイズ除去を実現した。ここで、z軸のカットオフ周波数をx、y軸のカットオフ周波数よりも小さくすることにより、z軸方向の加速度運動を検出しにくくし、上記の重力の表示、斜面の運動への対応を実現させた。本発明の具体的なLow-Passフィルタのカットオフ周波数は、試行錯誤の結果、x、y軸については10Hz、z軸については0.25Hzとした。
以上は加速度センサがアナログ情報を出力する場合であるが、デジタル加速度センサを用いた場合も同様に考えることができる。この場合には、Low-Passフィルタもコントローラ内部のデジタル信号処理によって実現される。
【0011】
以上の検討結果に基づく本発明の視覚的力表示装置(以下、単に力表示装置という)は、x軸方向の加速度と、x軸方向と直交するz軸方向の加速度とを検出する加速度センサと、加速度センサで検出されたx軸方向の加速度情報ax及びz軸方向の加速度情報azにノイズ除去処理を施すフィルタと、フィルタでノイズ除去処理された加速度情報axに基づいて表示情報dxを生成し、フィルタでノイズ除去処理された加速度情報azに基づいて表示情報dzを生成するコントローラと、表示情報dxに基づいてx軸方向に作用する力の向きと大きさを表示するx軸表示器と、表示情報dzに基づいてz軸方向に作用する力の向きと大きさを表示するz軸表示器とを有する表示手段と、を備え、フィルタは、加速度情報azに適用するカットオフ周波数fzを、加速度情報axに適用するカットオフ周波数fxよりも小さくし、コントローラは、表示情報dzと大きさが同じで向きが逆の表示情報dz’を生成し、z軸表示器は、表示情報dz及び表示情報dz’の両者を表示することを特徴とする。
【0012】
以上は、力表示をする最小限の要素として2次元の場合について示したが、本発明は3次元についても適用できることは言うまでもない。つまり本発明は、x、y及びz軸方向の加速度を検出する加速度センサと、加速度センサで検出された3軸の加速度情報ax、ay及びazにノイズ除去処理を施すフィルタと、フィルタでノイズ除去処理された加速度情報ax、ay及びazに基づいて表示情報dx、dy及びdzを生成するコントローラと、表示情報dx、dy及びdzのそれぞれに基づいてx、yおよびz軸方向に作用する力の向きと大きさをそれぞれ表示するx軸、y軸及びz軸表示器を備え、フィルタは、加速度情報azに適用するカットオフ周波数fzを、加速度情報axおよびayに適用するカットオフ周波数fx、fyよりも小さくし、コントローラは、表示情報dzと大きさが同じで向きが逆の表示情報dz’を生成し、z軸表示器は、表示情報dz及び表示情報dz’の両者を表示することを特徴とする。なお、fxとfyは等しいものとすることができる。
【0013】
た、本発明の力表示装置において、コントローラは、重力のx軸方向の成分cxを、z軸方向の加速度azに基づいて定めることで、斜面の運動に関する課題に対応する。
本発明の力表示装置において、コントローラは、y軸方向に関しては、y軸方向の加速度ayに基づいてそのまま表示する。
以上の本発明による力表示装置は、教育現場における理科教材に、さらには科学玩具に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の力表示装置は、物体に作用する力の大きさと向きを、視覚的に認識できるので、難解な力の概念を中高生に理解させる教材、あるいは科学玩具として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態における力表示装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態における力表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態の力表示装置におけるコントローラにおける処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態の力表示装置におけるコントローラにおける生データの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態の力表示装置における傾きの求め方を示す図である。
【図6】重力のx軸方向の成分cxに応じて点灯されるLEDの数を定めるテーブルの一例を示す。
【図7】(a)水平面に静止したときの力表示装置のLEDの点灯を示し、(b)は水平落下する力表示装置のLEDの点灯を示す図である。
【図8】(a)外力を受けて水平面上を直線加速度運動するときの力表示装置のLEDの点灯を示し、(b)外力を受けずに水平面上を等速直線運動する力表示装置のLEDの点灯を示す図である。
【図9】(a)傾斜面に静止する力表示装置のLEDの点灯を示し、(b)傾斜面を自由滑走する力表示装置のLEDの点灯を示す図である。
【図10】(a)軸Sの周りに自由に回転する円盤の端に力表示装置10を置いて回転させている状態を示し、(b)その際の力表示装置10のLEDの点灯状況を示す図である。
【図11】本実施の形態における力表示装置の構成を示すブロック図であり、デジタル出力する加速度センサを用いた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における力表示装置10の外観を示す斜視図、図2は力表示装置10の機能ブロック図である。
力表示装置10は、3軸加速度センサ20A(以下単に加速度センサ20A)、加速度センサ20Aで得られた直流の電圧信号からなる加速度情報を受けて、フィルタリング及び増幅するフィルタ・アンプ回路30と、フィルタ・アンプ回路30で処理された情報を受け、かつ処理して制御情報を生成するコントローラ40と、コントローラ40で生成された制御情報に基づいて発光ダイオードLEDが点灯される表示部50とから構成される。
なお、図2では、加速度センサ20Aはアナログ出力をすることを前提として描かれているが、デジタル出力を有する加速度センサ20Dを用いることができる。ただし、その場合には、図11に示すように、フィルタ・アンプ回路30は不要となり、フィルタ処理はコントローラ40内部でソフト的に実行されることになる。

【0017】
力表示装置10は、隣接する2つの面を、x-z表示面12、x-y表示面13とする直方体状のケース11を備えている。ケース11は、例えば透明なアクリル樹脂板を組み立てて構成される。

【0018】
<表示部50>
ケース11のx-z表示面12の内側にはx-z表示基板14が設けられ、また、x-y表示面13の内側にはx-y表示基板15が設けられている。x-z表示基板14、x-y表示基板15には、各々発光ダイオードLEDからなる複数の表示灯が十字状に並べられてx-z表示器16、x-y表示器17をなしている。この2つの表示器16、17により、表示部50が構成される。なお、x軸、y軸及びz軸は、図1に矢印で示す通りである。x-z表示器16及びx-y表示器17を構成する発光ダイオードLEDは、コントローラ40が生成する表示情報に基づいて必要な個数だけ点灯され、作用する力の向きと大きさを表示する。
x-z表示器16は、x方向に10個のLEDを、またz方向に10個のLEDを、直線上に並べて、十字を構成している。また、x-y表示器17もまた、x方向に10個のLEDを、またy方向に10個のLEDを、直線上に並べて、十字を構成している。x-z表示器16及びx-y表示器17において、十字の交差部(原点)を中心に、正(+)・負(-)が図示のように定められている。例えば、x-z表示器16において、z軸の負に対応するLEDが点灯すると、力表示装置10が重力を受けていることを示す。なお、力表示装置10は1つのLEDが点灯すれば、0.25g(g:重力加速度)が作用していることを示す。

【0019】
<加速度センサ20A>
力表示装置10は、ケース11内に加速度センサ20Aを設けている。加速度センサ20Aは、その3軸(x,y,z)の各々が、図1に示した力表示装置10のx軸、y軸、z軸に沿うようにケース11内に配置される。
加速度センサ20Aは、力表示装置10が加速度運動すると、加速度運動と逆向きの慣性力を受けて、x軸、y軸、z軸の各々の方向について、加速度を電圧信号として出力する。なお、運動方程式F=m×aより、加速度を表示することで、力の大きさと向きを認識できる。

【0020】
<フィルタ・アンプ回路30>
力表示装置10は、ケース11内にフィルタ・アンプ回路30を備えている。
フィルタ・アンプ回路30は、加速度センサ20Aから送られる電圧信号をフィルタリングして不必要なノイズを取り除く。ここで、フィルタ・アンプ回路30は、x軸フィルタ31、y軸フィルタ32、z軸フィルタ33と3つのフィルタ要素(ロー・パス・フィルタ)を備えている。加速度センサ20Aのx軸方向の電圧信号をx軸フィルタ31がフィルタリング処理し、同様に、加速度センサ20Aのy軸方向の電圧信号をy軸フィルタ32がフィルタリング処理し、加速度センサ20Aのz軸方向の電圧信号をz軸フィルタ33がフィルタリング処理する。

【0021】
フィルタ・アンプ回路30は、z軸フィルタ33のカットオフ周波数を、x軸フィルタ31及びy軸フィルタ32よりも小さく設定している。具体的には、x軸フィルタ31及びy軸フィルタ32のカットオフ周波数は10Hz、z軸フィルタ33のカットオフ周波数は0.25Hzと設定されている。このようにz軸方向のカットオフ周波数を小さく(周期を大きく)することでz方向の振動の影響を極力抑えている。これは、本装置がz軸方向には加速度運動をしないことを前提として作られており、z軸方向の出力が振動によって変化すると、後述するz軸方向の垂直抗力に基づいて重力を特定する処理、重力のx軸方向の成分を特定する処理を円滑に実行できないためである。
フィルタ・アンプ回路30において、所定のフィルタリング処理が施された後に、加速度信号は増幅されてから、コントローラ40に向けて出力される。
なお、フィルタ・アンプ回路30は、加速度センサ20Aがアナログ出力を有するものである場合のみ必要となる。デジタル出力を有する加速度センサ20Dの場合は、省略したフィルタ・アンプ回路30に代わって、フィルタリング処理はコントローラ40内部でソフト的に実行されることになる。

【0022】
<コントローラ40>
コントローラ40は、フィルタ・アンプ回路30でフィルタリングされたx軸、y軸及びz軸に関するアナログの加速度情報信号をアナログ-デジタル変換(AD変換)し、デジタル信号とした後所定の演算処理を行う。
コントローラ40は、例えばPIC(Peripheral Interface Controller:周辺機器接続制御用IC)により構成することができる。PICは、演算処理部、メモリ、入出力部等が一つのICに組込まれたワンチップ・マイクロコンピュータであり、ソフトウェアで制御される。

【0023】
図3、図4は、コントローラ40におけるAD変換及び演算処理の手順を示す。
コントローラ40は、図3に示すように、フィルタ・アンプ回路30から受けたx軸、y軸及びz軸に関する加速度情報信号(生データ)を処理して、表示部50の発光ダイオードLEDを点灯、表示させる(図3 S101,S103,S105)。生データの処理は、図4に示すように、コントローラ40がアナログ電圧信号(生データ)を取得すると、AD変換を行って表示情報を生成し(図4 S201、S203)、表示する発光ダイオードLEDを決定し(図4 S205)次いでLEDを点灯させる(図4 S207)。前述したように、1つのLEDが0.25gに相当するので、表示情報dが、0.125g<d≦0.375gの場合にはLEDを1つ点灯させ、同様に0.375g<d≦0.625gの場合には2つ、0.625g<d≦0.875gの場合には3つというように点灯させればよい。dが0.125gより小さい場合はLEDは1つも点灯しない。

【0024】
コントローラ40は、x軸、y軸及びz軸の生データをAD変換して発光ダイオードLEDを点灯させる処理の他に、力表示装置10に作用するz軸方向の重力を表示部50に表示させるための処理を行う(図3 S107)。前述したように、加速度センサ20Aの出力をそのまま表示したのでは、力表示装置10に作用する重力を表示することができない。そこで、コントローラ40は、AD変換されたz軸方向の生データ、つまり垂直抗力と同じ大きさで逆向きの力を示す表示情報を生成し、これをz軸方向に作用する重力として、発光ダイオードLEDを点灯させる。

【0025】
また、コントローラ40は、x軸、y軸及びz軸に関する生データをAD変換して表示情報を生成させる処理の他に、力表示装置10に作用するx軸方向の重力を表示部50に表示させるための処理を行う(図3 S109)。
前述したように、力表示装置10は、自己の傾きを検出する必要があるが、傾きと横方向への加速度運動は等価であるため、傾きを求めるには何らかの条件を設定する必要がある。そこで、コントローラ40は、力表示装置10が、z軸方向には加速度運動しないという前提の下、z軸方向の生データから傾きを求めることにした。すなわち、図5に示すように、力表示装置10がx軸の正(+)側を下向きに傾斜した面(傾き=θ)に載っているとする。このとき、g及びaz(z軸方向の生データ)は既知であるから、傾きθは、式(1)により求めることができる。
cosθ=az/g …(1)

【0026】
よって、重力のx軸方向の成分cxは、式(2)により求めることができる。
cx=(g-az1/2 …(2)
ただし、式(2)において、cxの符号(正負)はx軸方向の加速度計の出力信号(加速度情報)axによって判断する。そして、z軸方向の加速度azが重力加速度gより小さい場合には、z軸方向の重力とともにx軸方向の重力も上式を使って表示する。

【0027】
コントローラ40がPICから構成されている場合、PICでは式(2)中の平方根の演算を行うことができない。また、表示器16(17)の分解能が4ビットである。したがって、コントローラ40は、式(2)に対応するテーブルをメモリ中に保持し、z軸方向の加速度azが求められたなら、このテーブルを参照して、点灯すべきx軸方向のLEDの数を決定することができる。このテーブルは、例えば、図6に示すように、z軸方向の加速度azと点灯すべきLEDの数が対応付けられている。

【0028】
さて、以上の力表示装置10を用いて実際に力を視覚化して表示させる例を、以下の順で説明する。なお、ここでは主にx-z表示器16について説明するが、(VII)として説明するようにx-y表示器17についても同様に点灯、表示させることができるのは言うまでもない。
(I)水平面に静止…図7(a)
(II)自由落下(又は投げ上げ)…図7(b)
(III)水平面を直線加速度運動(外力あり)…図8(a)
(IV)水平面を等速直線運動(外力なし)…図8(b)
(V)傾斜面に静止…図9(a)
(VI)傾斜面を自由滑走…静止解除…図9(b)
(VII)回転運動…図10

【0029】
(I)水平面に静止
力表示装置10を水平面に静置すると(図7(a))、力表示装置10には、重力及び水平面からの垂直抗力が作用する。重力はz軸方向の下向きに作用し、垂直抗力はz軸方向の上向きに作用する。しかし前述したように、重力を力表示装置10の加速度センサ20Aで測定できない。そこで、力表示装置10は、前述したように、加速度センサ20Aで測定された水平面からの垂直抗力と大きさが同じで向きが反対の力を重力とみなす。
力表示装置10を水平面に静置すると、重力と垂直抗力とは釣り合い、x-z表示器16は、z軸方向の正(+)側の4つのLEDが、また、z軸方向の負(-)側の4つのLEDが点灯される。
正(+)側の4つのLEDが垂直抗力を表し、負(-)側の4つのLEDが重力を表しており、これを見た者は、物体(力表示装置10)に、重力と垂直抗力が作用していることを視覚的に認識できる。

【0030】
(II)自由落下(又は投げ上げ)
x+軸を下向きにして力表示装置10を自由落下させると、水平面に静置していた時に作用していた垂直抗力は作用しない。しかし、力表示装置10には、重力は作用する。したがって、図7(b)に示すように、x-z表示器16のx軸方向の正(+)側の4つのLEDのみが点灯される。
下向き(+側)の4つのLEDは重力を表しており、これを見た者は、自由落下時には、物体(力表示装置10)に重力のみが作用していることを視覚的に認識できる。
なお、力表示装置10を投げ上げた場合も、同様に、x-z表示器16のx軸方向の正(+)側の4つのLEDのみが点灯される。
留意すべき点は、自由落下あるいは投げ上げの実験は、必ずx軸方向の正(+)側を下向きにして行わなければならないということである。前述したように、力表示装置10はz軸方向には加速度運動をしないという前提でプログラムされているからである。
上記の説明では自由落下の方向をx軸正(+)方向としたが、x軸負(-)方向でも同様の表示がなされる。ただし、y軸方向には自由落下させてはならない。なぜならば、力表示器10は、傾ける場合にはy軸の周りの回転のみを許しているからである。

【0031】
(III)水平面を直線加速度運動(外力あり)
力表示装置10が、例えば手で押されながら水平面上を直線加速度運動する場合、力表示装置10には、x軸方向の図中左向きの外力Fが作用する。したがって、図8(a)に示すように、x-z表示器16のx軸方向の正(+)側の例えば3つのLEDが点灯される。この場合、点灯されている3つのLEDは、外力Fに対応する加速度の大きさがg(重力加速度)の3/4程度であることを示している。
また、力表示装置10が、外力Fを受けながら水平面上を加速度運動する場合、力表示装置10には、重力及び水平面からの垂直抗力が作用する。したがって、x-z表示器16は、z軸方向の正(+)側の4つのLEDが、また、z軸方向の負(-)側の4つのLEDが点灯される。
以上の通りであり、x-z表示器16のx軸方向の正(+)側の3つのLEDが外力Fを表し、正(+)側の4つのLEDが垂直抗力を表し、負(-)側の4つのLEDが重力を表しており、これを見た者は、物体(力表示装置10)に、右向き水平方向の外力F、重力及び垂直抗力が力表示装置10に作用していることを視覚的に認識できる。

【0032】
(IV)水平面を等速直線運動(外力なし)
力表示装置10が、水平面上を等速直線運動する場合には、図8(b)に示すように、力表示装置10には、重力及び水平面からの垂直抗力のみが作用する。
したがって、x-z示器16は、z軸方向の正(+)側の4つのLEDが、また、z軸方向の負(-)側の4つのLEDが点灯される。正(+)側の4つのLEDが垂直抗力を表し、負(-)側の4つのLEDが重力を表しており、これを見た者は、物体(力表示装置10)に、重力及び垂直抗力が力表示装置10に作用していることを視覚的に認識できる。

【0033】
(V)傾斜面に静置
図5に示したように、力表示装置10が傾斜面に支持体60によって保持され静置されている場合には、力表示装置10には、x軸とz軸方向それぞれに、重力成分と傾斜面や支持体60から受ける垂直抗力が作用する。ただし、ここでは,傾斜面と力表示装置10の間には摩擦は働かないものとする。この場合、x軸及びz軸それぞれにおいて力はつりあっているはずである。傾斜角をθとすると、図5に示したように、重力のx軸方向の成分cxは、式(2)により、cx=(g-az1/2である。力表示装置10は、支持体60から傾斜面と水平方向に抗力Dを受ける。この抗力Dは、重力のx軸方向の成分cxと、大きさが等しく、向きが逆である。

【0034】
したがって、x-z表示器16は、z軸方向の正(+)側の例えば3つのLEDと、z軸方向の負(-)側の例えば3つのLEDが点灯される。また、x-z表示器16は、x軸方向の正(+)側の2つのLEDと、x軸方向の負(-)側の2つのLEDが点灯される。これを見た者は、物体(力表示装置10)に、重力及び垂直抗力がx軸方向及びz軸方向に作用していること、また、x軸方向およびz軸方向それぞれにおいて力はつりあっていることを視覚的に認識できる。

【0035】
(VI)傾斜面を自由滑走
力表示装置10が摩擦のない傾斜面を自由滑走する場合には、力表示装置10には、重力及び傾斜面からの垂直抗力が作用する。傾斜角をθとすると、図5に示したように、重力のx軸方向の成分cxは、式(2)により、cx=(g-az1/2である。傾斜面から受ける垂直抗力は、重力のz軸方向の成分、つまりz軸方向の加速度情報azと大きさが同じで向きが逆である。
力表示装置10は、傾斜面を自由滑走するから、受ける力は、重力のx軸方向の成分cxと、重力のz軸方向の成分azと、傾斜面から受ける垂直抗力の3つである。

【0036】
したがって、x-z表示器16は、z軸方向の正(+)側の3つのLEDと、z軸方向の負(-)側の3つのLEDが点灯される。また、x-z表示器16は、x軸方向の正(+)側の2つのLEDが点灯される。これを見た者は、物体(力表示装置10)に、重力及び垂直抗力がx軸方向及びz軸方向に作用していること、また、力表示装置10が重力のx軸方向の成分cxによって加速されることを視覚的に認識できる。

【0037】
(VII)回転運動
力表示器10を図10(a)のように、軸Sの周りに自由に回転できる円盤70の端に置き、円盤70を回転させると、力表示装置10には向心力が働き図10(b)のようにLEDが点灯する。一般に、回転する物体には遠心力が働くと考えられており、実際回転座標系では遠心力が働く。ところが,図10(a)のようにおかれた力表示装置10が円盤と共に円運動をするためには向心力が必要なのである。この関係を生徒が理解することは通常極めて困難である。本発明を用いることで、回転物体には確かに向心力が働いていることを明確に示すことができる。

【0038】
以上の力表示装置10は、力の大きさ、向きを視覚的に表示するので、教育現場に用いると、学生が力の概念を理解するのに役立つ。また、力表示装置10を静置させあるいは、動かすことで、LEDの点灯状態が変わるので、力表示装置10は、学童、幼児の興味を引く玩具となる。
以上、本発明を力表示装置10に基づいて説明したが、本発明がこの実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、力表示装置10は、LEDを十字状に並べているが、マトリックス状に配置してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…力表示装置、
11…ケース、
12…x-z表示面、13…x-y表示面、
14…x-z表示基板、15…x-y表示基板、
16…x-z表示器、17…x-y表示器
20A,20D…3軸加速度センサ
30…フィルタ・アンプ回路、
31…x軸フィルタ、32…y軸フィルタ、33…z軸フィルタ
40…コントローラ
50…表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10