TOP > 国内特許検索 > カプサイシン分解合成酵素及びその生産方法 > 明細書

明細書 :カプサイシン分解合成酵素及びその生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3951008号 (P3951008)
公開番号 特開2003-210164 (P2003-210164A)
登録日 平成19年5月11日(2007.5.11)
発行日 平成19年8月1日(2007.8.1)
公開日 平成15年7月29日(2003.7.29)
発明の名称または考案の名称 カプサイシン分解合成酵素及びその生産方法
国際特許分類 C12P  13/02        (2006.01)
C12N   9/14        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
C12R   1/465       (2006.01)
FI C12P 13/02
C12N 9/14
C12N 1/20 A
A23L 1/30 Z
C12N 1/20 A
C12R 1:465
C12N 9/14
C12R 1:465
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2002-008934 (P2002-008934)
出願日 平成14年1月17日(2002.1.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年8月4,5日滋賀県立県民交流センターにおいて開催された日本食品工学会第2回年次大会で発表
特許法第30条第1項適用 平成13年9月26-28日山梨大学において開催された社団法人日本生物工学会平成13年度日本生物工学会大会で発表
審査請求日 平成14年1月17日(2002.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】中西 一弘
【氏名】崎山 高明
【氏名】今村 維克
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】新留 豊
参考文献・文献 特開2000-245480(JP,A)
特開2000-236881(JP,A)
特開平06-133771(JP,A)
酵素工学研究会講演会講演要旨集,2001年,46th,p.33
日本生物工学会大会講演要旨集,2001年,2001,p.159
酵素工学研究会講演会講演要旨集,2000年,44th,p.42
日本食品工学会年次大会講演要旨集,2001年,2nd,p.108
American Type Culture Collection CATALOGUE OF BACTERIA AND PHAGES,1992年,18th,p.362
INSTITUTE FOR FERMENTATION, OSAKA (IFO) LIST OF CULTURES 1996 MICROORGANISMS,1996年,10tn,p.565
J. Biochem.,2000年,128,p.415-425
調査した分野 C12P 1/00-41/00
C12N 9/00-9/99
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
PubMed
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の理化学的性質を有するStreptomyces mobaraensis IFO 13819由来のカプサイシン分解合成酵素及びコバルトイオンの存在下、バニリルアミンと脂肪酸とを反応させることを特徴とするカプサイシン又はカプサイシン類縁体を合成する方法。
(1)作用及び基質特異性 カプサイシンの分解反応及び/又は合成反応を触媒し、かつ、分解反応の生成物及び合成反応の反応物が、バニリルアミン及び脂肪酸である。
(2)至適温度の範囲 55℃近傍である。
(3)至適pHの範囲 7~8である。
(4)分子量が約60kDaである。
【請求項2】
下記の理化学的性質を有するStreptomyces mobaraensis IFO 13819由来のカプサイシン分解合成酵素及びコバルトイオンの存在下、カプサイシン又はカプサイシン類縁体を加水分解する方法。
(1)作用及び基質特異性 カプサイシンの分解反応及び/又は合成反応を触媒し、かつ、分解反応の生成物及び合成反応の反応物が、バニリルアミン及び脂肪酸である。
(2)至適温度の範囲 55℃近傍である。
(3)至適pHの範囲 78である。
(4)分子量が約60kDaである。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な酵素、当該酵素を生産する能力を有する微生物、当該酵素の生産方法、及び当該酵素を利用した有用物質の合成方法に関し、特にカプサイシンの分解又は合成反応を触媒する酵素、当該酵素を生産する能力を有する微生物、当該酵素の生産方法、及び当該酵素を利用したカプサイシン類の合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カプサイシンは唐辛子(Capsicum annuum)の辛味主成分の一種であり、食欲増進や鎮痛作用などの有用な生理活性を有している。このようにカプサイシンは種々の生理活性を示し、機能性食品素材や医薬品原料の分野においても有用であることから、現在世界的な注目を集めている。
【0003】
このようなカプサイシン及びカプサイシン類縁体は、たとえば、有機合成化学的方法により合成することができる。
【0004】
また、酵素を利用した合成法として、バニリルアミンとトリグリセドにリパーゼを作用させてカプサイシン類の酵素的合成に成功した例も知られている。
【0005】
さらに、ラット肝アセトン粉末を用いてカプサイシン類を合成できることも知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記有機合成化学的方法によれば、使用する試薬類が食品加工用として認められていないため、食品素材の製造方法として利用することができないという欠点を有する。また、上述の酵素を利用した合成法や、ラット肝アセトン粉末を用いた方法においては、前者では20%以下、後者では2日間でも収率が8~28%であり、共に合成収率が低いという欠点を有する。その上、後者においては、本酵素標品は、ラット肝臓を原料とするため工業用途向けの大量生産が困難である。したがって、大量生産が容易で、なおかつ高収率で、安定したカプサイシン類を合成し得る方法が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、大量生産が容易で、なおかつ高収率で、安定したカプサイシン類を合成するのに有用な酵素、当該酵素の生産方法、当該酵素を生産する能力を有する微生物、当該酵素を用いたカプサイシン類の合成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者らは、カプサイシン類を特異的に加水分解及び合成する能力に優れた酵素を求めて種々の微生物について検討した結果、本発明の酵素及び当該酵素の生産方法を見出すに至った。
【0009】
本発明のカプサイシン分解合成酵素は、下記(1)~(3)の理化学的性質を有することを特徴とする。(1)作用及び基質特異性 カプサイシンの分解反応及び/又は合成反応を触媒する。(2)至適温度の範囲 55℃近傍である。(3)至適pHの範囲 7~8である。
【0010】
本発明のカプサイシン分解合成酵素の好ましい実施態様において、カプサイシン分解合成酵素が、Streptomyces属に属する微生物由来であることを特徴とする。
【0011】
本発明のカプサイシンの分解合成酵素の好ましい実施態様において、Streptomyces属に属する微生物が、Streptomyces mobaraensis IFO 13819又はStreptomyces luteoreticuli IFO 13422であることを特徴とする。
【0012】
本発明の微生物は、下記(1)~(3)の理化学的性質を有するカプサイシン分解合成酵素の生産能を有するStreptomyces属に属することを特徴とする。(1)作用及び基質特異性 カプサイシンの分解反応又は合成反応を触媒する。(2)至適温度の範囲 55℃近傍である。(3)至適pHの範囲 7~8である。
【0013】
本発明のカプサイシン分解合成酵素の生産方法は、Streptomyces属に属し、カプサイシン分解合成酵素を生産する能力を有する微生物を培養し、その培養液から前記カプサイシン分解合成酵素を採取することを特徴とする。
【0014】
本発明のカプサイシン分解合成酵素の生産方法の好ましい実施態様において、前記微生物が、Streptomyces mobaraensis IFO 13819又はStreptomyces luteoreticuli IFO 13422であることを特徴とする。
【0015】
本発明のカプサイシン又はカプサイシン類縁体を合成する方法は、請求項1項に記載の酵素の存在下、バニリルアミンと脂肪酸とを反応させることを特徴とする。
【0016】
本発明のカプサイシン又はカプサイシン類縁体を合成する方法の好ましい実施態様において、コバルトイオンの存在下で反応させることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のカプサイシン分解合成酵素は、カプサイシンのみならずカプサイシン類縁体の加水分解、及び合成反応を触媒する作用を有する酵素を広く意味するものである。カプサイシン分解合成酵素は、下記(1)~(3)の理化学的性質を有する。すなわち、(1)作用及び基質特異性 カプサイシンの分解反応又は合成反応を触媒する。(2)至適温度の範囲 55℃近傍である。(3)至適pHの範囲 7~8である。また、本発明の分解合成酵素の分子量は、およそ45kDa~60kDaの間にある。電気泳動によって単一のバンドが得られることから、単量体であると考えられる。
【0018】
このような本発明のカプサイシン分解合成酵素は、好ましくは、Streptomyces属に属する微生物由来のものである。より好ましくは、本酵素は、Streptomyces属に属する微生物のうち、Streptomyces mobaraensis IFO 13819又はStreptomyces luteoreticuli IFO 13422由来である。
【0019】
また、本発明のカプサイシン分解合成酵素は、好ましくは、コバルトイオンの存在下で、酵素活性が促進する。このような酵素活性の高い酵素を利用すれば、後述するようなカプサイシン又はカプサイシン類縁体の高効率な合成に有益である。
【0020】
本発明のカプサイシン又はカプサイシン類縁体を合成する方法は、上述の本発明の分解合成酵素を用いる。具体的には、当該分解合成酵素の存在下、バニリルアミンと脂肪酸とを反応させる。反応式を以下に示す。
【0021】
【化1】
JP0003951008B2_000002t.gifなお、上記式において、一例としてバニリルアミンを用いたが、脂肪酸と反応させて目的とするカプサイシン類縁体を得るのに、バニリルアミンに類似する種々の類似アミン化合物を用いることができる。同様に、脂肪酸としては、特に限定されず、目的とするカプサイシン類縁体に応じて、種々の脂肪酸を用いることができる。例えば、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等を挙げることができる。
【0022】
パルミチン酸より高い炭素数の脂肪酸を用いる場合には、溶媒の種類によっては、溶媒に溶解しないことも生じるので、適宜溶媒を選択して反応させることができる。また、この場合、酸素濃度を高めたり、コバルトイオンを添加して反応を促進させることも可能である。
【0023】
本発明の微生物は、下記(1)~(3)の理化学的性質を有するカプサイシン分解合成酵素の生産能を有するStreptomyces属に属する。(1)作用及び基質特異性 カプサイシンの分解反応又は合成反応を触媒する。(2)至適温度の範囲 55℃近傍である。(3)至適pHの範囲 7~8である。
【0024】
Streptomyces 属に属する微生物の菌学的性質としては、真正法線菌に属し、菌糸状の状態で生育するグラム陽性(グラム染色性が陽性)の偏性好気性菌であることが挙げられる。
【0025】
本発明のカプサイシン分解合成酵素の生産性が高いという観点から、微生物としては、Streptomyces mobaraensis IFO 13819又はStreptomyces luteoreticuli IFO 13422であることが好ましい。
【0026】
Streptomyces mobaraensis IFO 13819又はStreptomyces luteoreticuli IFO 13422は、大阪の財団法人発酵研究所(IFO)より入手可能であり、IFO 13819、 IFO 13422は、IFOの寄託番号を示す。
【0027】
なお、IFO13819は、他の微生物保存期間にも同一菌株が寄託されており、理化学研究所微生物系統保存施設(JCM)ではJCM4168、米国のAmerican Type Culture Collection(ATCC)ではATCC29032、同じく米国National Center for Agricultural Utilization Research(NRRL)ではNRRL B-3729である。また、IFO 13422は、同一菌株がATCCではStreptomyces mobaraensis ATCC 27446である。
【0028】
本発明のカプサイシン分解合成酵素の生産方法は、Streptomyces属に属し、カプサイシン分解合成酵素を生産する能力を有する微生物を、通常の方法で培養し、その培養液から前記カプサイシン分解合成酵素を採取すればよい。また、上記微生物の自然的又は人工的変異株の培養物から、本発明の分解合成酵素を採取してもよい。培養の形態としては、液体培養、固体培養等を挙げることができ、いずれも適用可能である。工業的に有利に培養するために、振盪培養、通気攪拌培養等を行なっても良い。
【0029】
培地の栄養原としては、特に限定されることはなく、微生物の培養に通常用いられる炭素原、窒素源等を挙げることができる。炭素源としては、酵母エキス、グリセリン、グルコースなどを、または窒素源としては、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー等の有機窒素化合物を挙げることができる。その他、無機塩類、例えば、食塩、リン酸塩類、硫酸塩類、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの金属塩類を適宜培地に加えても良い。培養温度、培養時間等の培養条件について、使用する微生物の発育に適し、かつ本発明の分解合成酵素の生産が最高になるような条件を適宜選択する。例えば、培地のpHは、中性、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは7.0近傍である。また、放線菌の生育温度は一般的には28~37℃である。これらの菌体の好ましい培養温度としては28~32℃の範囲である。特に、IFOでは、以下に述べるStreptomyces mobaraensis IFO 13819及びStreptomyces luteoreticuli IFO 13422の2つの菌株の培養温度として28℃を推奨している。
【0030】
このようにして得られた培養物から本発明の分解合成酵素を得るには、代謝産物を採取するのに通常用いられる方法を適宜利用することができる。例えば、当該分解合成酵素と不純物との溶解度の差を利用する方法、親和力を利用する方法、分子量の差を利用する方法等を、単独又は組み合わせて、あるいは反復して使用することができる。例えば、本発明の分解合成酵素は、微生物の体外に分泌されるので、微生物の培養を行ない、培溶液から濾過、あるいは遠心分離によって微生物を取り除いた培養上清を得、この培養上清から硫酸アンモニウムを用いた塩析、各種のイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等を組み合わせて本発明の分解合成酵素を精製すればよい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0032】
実施例1
<カプサイシン分解合成酵素の精製>
まず、カプサイシン分解合成酵素が菌体内と菌体外のどちらに多く含まれているかを調べた。菌体を超音波破砕して得た溶液と、培養上清について活性測定したところ、菌体外の比活性は培養日数と共に増加するが、菌体内の活性は培養6日間で殆ど見られなくなった。よって、本菌株の産生するカプサイシン分解合成酵素は効率よく菌体外に分泌されていると考えられる。
【0033】
ついで、カプサイシン加水分解酵素活性の高いもの選別する目的で、種々のStreptomyces sp.についてスクリーニングを行った。スクリーニング方法は以下の通りである。
【0034】
培地は4%beef extract、2%polyPepton等を用いて精製し、初期pH7.0、振盪速度120strokes/min、温度30℃で7日間培養を行った。活性については、0.13mMカプサイシンを基質として、37℃でインキュベート後にHPLC測定を行った。なお、酵素活性1Uは、1μmolのカプサイシンを37℃、1時間で加水分解するのに必要な酵素量として定義した。その結果、S,mobaraensis IFO 13819の活性が1.2(U/mL)、S.luteoreticuli IFO 13422の活性が1.0(U/mL)と相対的に高い活性を示した。ただし、S.luteoreticuliはATCCによる分類ではS.mobaraensisに分類されている。
【0035】
これらの知見から、菌株としてS.mobaraensis IFO 13819を用いて、培養を行った。可溶性澱粉2.0%、ポリペプトン2.0%、肉エキス4.0%、酵母エキス0.2%、リン酸水素カリウム0.2%、硫酸マグネシウム0.1%からなるpH7の液体培地にStreptomyces mobaraensis IFO 13819の胞子懸濁液を接種し、30℃で7日間培養した。
【0036】
その後、酵素を培養上清に終濃度50%になるように硫酸アンモニウムを加え、硫安沈澱を行った。得られた沈澱をバッファーに溶解後、CM Sephadex C-50で分画し、さらに二回ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0037】
CM-Sephadex C-50カラムクロマトグラフィーの溶出曲線を図3に示す。タンパク質濃度は、OD280で、カプサイシン(CAP)加水分解活性は加水分解率で表した。活性分画は、NaCl濃度400mM付近で溶出した。この活性分画をヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーで分画して活性分画を得た(図4(a))が、不純なタンパク質の混在が認められたため、この活性分画を再度ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーで分画した。その結果、図4(b)に示すように、リン酸濃度350mM付近で精製酵素を得た。
【0038】
このようにして、遠心除菌して当該酵素を含む上清を得た。ついで、得られた上清についての活性を調べた。その結果、上清0.6L中の当該酵素の総活性は345U、比活性は0.061 U/mgであった。ここで、酵素活性1Uは、37℃、1時間で1μmolのカプサイシンを加水分解する酵素量であった。この上清に50%飽和となるように硫酸アンモニウムを添加して沈澱画分を得た後、陽イオン交換クロマトグラフィー及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(2回)を行なうことにより、比活性は197.0 U/mgとなり(表1)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動的に単一(分子量約60kDa)に精製された酵素が得られた(図1)。
【0039】
【表1】
JP0003951008B2_000003t.gifなお、この比活性はこれまでに報告されているカプサイシン分解活性を有する諸酵素に比べると非常に高い値であった。
【0040】
<カプサイシン分解合成酵素の特性>
次に、精製酵素の反応特性について検討した。種々の試薬に対する安定性について調べた結果、精製された当該酵素のカプサイシン加水分解活性はコバルトイオンにより増加した(表2)。また、セリンプロテアーゼの阻害剤として知られるPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)の添加により活性が阻害されることが示された。
【0041】
【表2】
JP0003951008B2_000004t.gifまた、カプサイシン分解合成酵素の至適pHは8付近であった(図2)。コバルトイオンを添加した場合と無添加の場合について、各温度で一時間インキュベートした後の残存活性を調べた。その結果を図3に示す。耐熱性に関しては、およそ50℃まで安定であった(図3)。50℃以上では、コバルトイオン添加時の方が、残存活性が高いことが示された。このことから、コバルトイオンは本酵素の活性促進に加え、安定性にも寄与している可能性が示唆される。また、活性の温度依存性について検討したところ、55℃で最も高い反応性を示した(図5)。
【0042】
実施例2
次に、本発明のカプサイシン分解合成酵素を用いて、カプサイシン類縁体の合成を試みた。
【0043】
当該酵素のカプサイシン類縁体合成能力を示す例は、以下のとおりである。水/n-へキサン二相系(ヘキサン相容積/水相容積=19)で、全反応液量20ml、水相(0.5mM CoCl2含有100mMトリス-塩酸緩衝液)の初期pH7.3、10mMバニリルアミン塩(終濃度)とラウリン酸100mM(終濃度)の条件下で、30Uの酵素を用いて攪拌しながら、8日間反応を行なった。反応温度は、37℃であった。
【0044】
比較例として、アミノアシラーゼを用いた。へキサン相のHPLC分析を行ってカプサイシン誘導体を定量した。表3に両酵素を用いた場合の種々の脂肪酸を基質とした反応の結果を示す。
【0045】
【表3】
JP0003951008B2_000005t.gif【0046】
その結果、収率約28%でカプサイシン合成が確認できた(図6)。また、バニリルアミンと各種飽和脂肪酸とを基質とする合成反応活性に関しては、ラウリン酸(C12)の場合が最も高く、比較的炭素鎖の長い脂肪酸(パルミチン酸:C16)にも作用することが特徴である。
【0047】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明したが、本発明は上記内容に限定されることを意図するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいてあらゆる変更が可能であることは、当業者にとって明白であろう。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、大量生産が容易で、なおかつ高収率で、安定したカプサイシン類を合成するのに有用な酵素、及び当該酵素を用いたカプサイシン類の生産方法を提供し得るという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である精製酵素のSDS-PAGEの結果を示す図である。
【図2】 酵素活性のpH依存性を示す図である。
【図3】 本発明の一実施例である精製酵素の熱安定性を示す図である。
【図4】 ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーの結果を示す図である。(a)が1回目、(b)が2回目を示す。
【図5】 本発明の一実施例である精製酵素の酵素活性に対する温度依存性を示す図である。
【図6】 カプサイシン誘導体合成反応の経過を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5