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明細書 :耐圧容器、試料分解装置、及び元素分析前処理法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3843324号 (P3843324)
公開番号 特開2005-233895 (P2005-233895A)
登録日 平成18年8月25日(2006.8.25)
発行日 平成18年11月8日(2006.11.8)
公開日 平成17年9月2日(2005.9.2)
発明の名称または考案の名称 耐圧容器、試料分解装置、及び元素分析前処理法
国際特許分類 G01N   1/28        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
FI G01N 1/28 X
G01N 31/00 S
G01N 31/00 T
G01N 31/00 Y
請求項の数または発明の数 16
全頁数 9
出願番号 特願2004-046500 (P2004-046500)
出願日 平成16年2月23日(2004.2.23)
審査請求日 平成16年2月23日(2004.2.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】牧嶋 昭夫
【氏名】中村 栄三
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 特開平06-194360(JP,A)
特開平10-325785(JP,A)
特開平05-034288(JP,A)
実開昭62-037743(JP,U)
特開2003-049946(JP,A)
特開平03-006453(JP,A)
特開2002-001089(JP,A)
特開2002-372518(JP,A)
特開平08-217460(JP,A)
調査した分野 G01N 1/28
G01N 31/00
特許請求の範囲 【請求項1】
石英製の容器と、
前記容器を密閉するための石英製の蓋と、
前記容器及び前記蓋間に介在する密閉用スペーサーと、
前記蓋に対して上方から圧力を負荷するための圧力負荷手段と、
前記蓋及び前記圧力負荷手段間に介在し、前記圧力負荷手段から前記蓋に対して前記圧力を均一に負荷するための圧力保持板と、
を具えることを特徴とする、耐圧容器。
【請求項2】
前記密閉用スペーサーは、テフロンシートからなることを特徴とする、請求項1に記載の耐圧容器。
【請求項3】
前記蓋及び前記圧力保持板間に介在する圧力保持スペーサーを具えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐圧容器。
【請求項4】
石英製の容器と、
前記容器を密閉するための石英製の蓋と、
前記容器及び前記蓋間に介在する密閉用スペーサーと、
前記蓋に対して上方から圧力を負荷するための圧力負荷手段と、
前記蓋及び前記圧力負荷手段間に介在し、前記圧力負荷手段から前記蓋に対して前記圧力を均一に負荷するための圧力保持板と、
前記容器内に配置された所定の試料を加熱するための加熱手段と、
を具えることを特徴とする、試料分解装置。
【請求項5】
前記密閉用スペーサーは、テフロンシートからなることを特徴とする、請求項に記載の試料分解装置。
【請求項6】
前記蓋及び前記圧力保持板間に介在する圧力保持スペーサーを具えることを特徴とする、請求項4又は5に記載の試料分解装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一に記載の試料分解装置を用いた、試料中に含まれる元素を分析するための前処理法であって、
前記試料を鉱酸中に配置する工程と、
前記試料を前記鉱酸中において加圧下、加熱処理を施すことによって、前記試料を分解し、前記元素を前記試料から完全に分離する工程と、
を具えることを特徴とする、元素分析前処理法。
【請求項8】
前記試料は、岩石又は鉱物であることを特徴とする、請求項に記載の元素分析前処理法。
【請求項9】
前記鉱酸は、硝酸と塩酸との混酸であることを特徴とする、請求項に記載の元素分析前処理法。
【請求項10】
前記試料は、有機物であることを特徴とする、請求項に記載の元素分析前処理法。
【請求項11】
前記鉱酸は、硝酸又は硝酸と塩酸との混酸であることを特徴とする、請求項10に記載の元素分析前処理法。
【請求項12】
前記元素は、白金属元素を含むことを特徴とする、請求項7~11のいずれか一に記載の元素分析前処理法。
【請求項13】
前記元素は、少なくともオスミウム(Os)を含むことを特徴とする、請求項12に記載の元素分析前処理法。
【請求項14】
前記元素は、レニウム(Re)及び金(Au)の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項7~11のいずれか一に記載の元素分析前処理法。
【請求項15】
前記試料の分解は、30気圧以上の圧力下において実施することを特徴とする、請求項7~14のいずれか一に記載の元素分析前処理法。
【請求項16】
前記試料の分解は、230℃以上の温度に加熱して行うことを特徴とする、請求項7~15のいずれか一に記載の元素分析前処理法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧容器、試料分解装置、及び元素分析前処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料の前処理、特に岩石・鉱物試料の白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))やレニウム(Re)や金(Au)の定量分析のための試料分解方法には、試料をアルカリ金属の水酸化物や過酸化物と混合して600℃以上の温度で融解して分解するアルカリ融解法(非特許文献1)や、試料をニッケルや鉛、イオウ及び融剤を混合し、1000℃以上で溶融して、白金族元素を硫化ニッケルや硫化鉛のボタンにして回収するファイアーアッセイ法(非特許文献2)などがある。
【0003】
また、試料を王水や硫酸とともにガラスチューブに入れてチューブを封じ、外部から200℃以上の温度に加熱して高温高圧下で分解するカリアスチューブ法(非特許文献3)や、試料をフッ化水素酸とエタノール、またはフッ化水素酸と臭化水素酸とともにテフロン(デュボン社登録商標)製の密閉容器に入れ、外部から145℃以上の温度に加熱して高温高圧下で分解するテフロン(登録商標)ボム法(非特許文献4)なども提案されている。
【0004】
さらに、試料を鉱酸とともにガラスやテフロン(登録商標)製の密閉容器に入れて、マイクロ波を用いて試料容器内部から200℃以上に加熱するマイクロ波分解法(非特許文献5)や、試料と鉱酸をガラス製の密閉容器に入れて、さらにこれを圧力容器に入れ、50気圧以上の圧力を密閉容器外部にかけて密閉し、200℃以上に加熱して分解する高圧灰化法(非特許文献6)などが用いられている。
【0005】
このなかで、融剤を用いるアルカリ融解法やファイアーアッセイ法は、融剤を蒸留などの方法で精製することが不可能なことから、ブランクや塩濃度が高くなることが問題である。
【0006】
一方、カリアスチューブ法、テフロン(登録商標)ボム法、マイクロ波分解法、及び高圧灰化法は、蒸留可能な塩酸や硝酸といった鉱酸だけを使用するため、ブランクを低減できるという特徴を持っている。
【0007】
白金族元素のなかで、Osは、酸化剤とともに開放条件下で加熱すると揮発性のOsO(沸点130℃)を生じて蒸発揮散する。テフロン(登録商標)容器はいわゆるプラスチック容器であって取り扱いが簡単であるが、多孔質であるために、OsOが生成すると、その容器を構成する内壁に吸着、さらには透過してしまい、テフロン(登録商標)密閉容器を用いたにもかかわらず、Osの損失が50%にも達してしまう(非特許文献1)。そのため、還元剤としてエタノールや臭化水素酸を加えてOsの酸化を抑制してテフロン(登録商標)ボム法を用いることが行われている。しかし、OsやIrを多く含むイリドスミンのような耐酸性の高い鉱物が試料に含まれる場合、200℃以上に加熱しても分解できない(非特許文献7)。
【0008】
また、マイクロ波分解法は、密閉容器をさらにマイクロ波を透過する非金属製の耐圧容器に入れる必要があるため、長時間加熱すると試料の熱が非金属製容器に伝わって破壊するという欠点がある。そのため、長時間加熱(1時間以上)は不可能であり、試料を完全に分解できない場合がある。さらに、温度や圧力をモニターして耐圧容器が破壊しないように制御する必要もあり、装置は高額である。
【0009】
高圧灰化法は、試料分解に有効であるが、内部の密閉容器に外部から高い圧力がかかるため取り扱いに注意を要すること、また、万が一内部容器が破壊した場合、鉱酸が金属製耐圧容器内部を激しく腐食して耐圧容器の寿命が著しく短くなること、さらに装置がマイクロ波分解装置以上に高額であるなどの欠点がある。
【0010】
このなかで、カリアスチューブ法は、長時間の密閉高温高圧分解が容易にできること、設備がオーブンと金属筒とガラス容器だけで安価であるという理由で、世界的に普及している。しかし、チューブの爆発を防止するために最高温度は230℃程度に抑えざるを得ず、試料が完全に分解できないことが指摘されている。(非特許文献7)

【非特許文献1】Enzweiler, J., Potts, P.J., Jarvis, K.E.(1995)Determination of platinum, Palladium, ruthenium and iridium in geological samples by isotope dilution inductively coupled plasma mass spectrometry using a sodium peroxide fusion and tellurium coprecipitation. Analyst 120, 1391-1396.
【非特許文献2】Plessen, H.-G., Erzinger, J.(1998)Determination of the platinum-group elements and gold in twenty rock reference materials by inductively coupled plasma-mass spectrometry(ICP-MS)after pre-concentration by nickel sulfide fire assay. Geostands. Newslett. 22, 187-194.
【非特許文献3】Shirey, S.B., Walker, R.J.(1995)Carius tube digestion for low-blank rhenium-osmium analysis. Anal. Chem. 67, 2136-2141.
【非特許文献4】Birck, J.L., Roy Barman, M. and Capmas F.(1997)Re-Os isotopic measurements at the femtomole levels in natural samples. Geostand. Newslett., 20, 19-27.
【非特許文献5】Totland, M.M., Jarvis, I., Jarvis, K.E.(1995)Microwave digestion and alkali fusion procedures for the determination of the plalinum-group elements and gold in geological materials. Chem. Geol., 124, 21-36.
【非特許文献6】Meisel, T., Moser, J., Fellner. N., Wegscheider, W., Schoenberg, R.(2001)Analyst, 126, 322-328.
【非特許文献7】Meisel, T., Reisberg, L., Moser, J., Carignan, J., Melcher, F., Brugmann, G.(2003)Re-Os systematics of UB-N, a serpentinized peridotite reference material. Chem. Geol., 201, 161-179.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、元素、特にOsを含む白金族元素・Reまたは金の定量分析のための、岩石・鉱物などの試料の前処理として、試料を鉱酸(たとえば王水・硝酸・塩酸)で、安価かつ安全に300℃程度までの高温高圧分解を行うことを可能とする容器とそれを用いる試料分解方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明は、
石英製の容器と、
前記容器を密閉するための石英製の蓋と、
前記容器及び前記蓋間に介在する密閉用スペーサーと、
前記蓋に対して上方から圧力を負荷するための圧力負荷手段と、
前記蓋及び前記圧力負荷手段間に介在し、前記圧力負荷手段から前記蓋に対して前記圧力を均一に負荷するための圧力保持板と、
を具えることを特徴とする、耐圧容器に関する。
【0013】
また、本発明は、
石英製の容器と、
前記容器を密閉するための石英製の蓋と、
前記容器及び前記蓋間に介在する密閉用スペーサーと、
前記蓋に対して上方から圧力を負荷するための圧力負荷手段と、
前記蓋及び前記圧力負荷手段間に介在し、前記圧力負荷手段から前記蓋に対して前記圧力を均一に負荷するための圧力保持板と、
前記容器内に配置された所定の試料を加熱するための加熱手段と、
を具えることを特徴とする、試料分解装置に関する。
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、上述のような構成の耐圧容器を想到し、この耐圧容器を構成する前記石英製の容器中に分解すべき試料及び鉱酸を入れ、前記石英製の蓋で前記密閉用スペーサーを介して前記容器を密閉し、前記容器内を所定の加熱手段で加熱することによって、前記試料を分解し、目的とする元素を前記試料から完全に分離できることを見出した。
【0015】
すなわち、密閉された前記容器内を加熱すると、その加熱温度に応じて前記容器の内部圧力は増大するようになるが、前記容器の肉厚や前記蓋の肉厚、及び前記圧力負荷手段による負荷圧力の大きさを適宜に制御することによって、前記容器内の内部圧力の増大によっても、前記容器の密閉性の破壊を防止することができる。例えば、前記容器内を300℃程度まで加熱し、前記容器の内部圧力が100気圧程度まで増大した場合においても、上述したパラメータの制御によって、前記容器の密閉性の破壊を防止することができる。
【0016】
したがって、前記試料を前記鉱酸中において、極めて高い温度及び圧力下に配置することができ、その結果、前記試料を分解して、前記試料中に含まれる元素をほぼ完全に分離することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の耐圧容器の一例を示す構成図である。図1に示す耐圧容器10は、所定の試料を入れる石英製の容器11と、この容器11を密閉するための石英製の蓋12と、容器11及び蓋12間に介在する密閉用スペーサー13とを具えている。さらに、蓋12に対して上方より圧力保持板17及び圧力保持スペーサー18を介して圧力を負荷するための金属製のボルト14が金属製の支持板15によって保持されているとともに、支持板15は支持フレーム16によって支持されている。また、容器11、蓋12及び密閉用スペーサー13は所定の金属製フレーム19内に配置されるとともに、金属製の下フレーム20上に載置されている。
【0019】
なお、図1に示す耐圧容器10においては、ボルト14、支持板15及び支持フレーム16によって圧力負荷手段が構成されている。ボルト14による圧力負荷は、ボルト14を下方へ向けて支持板15内にねじ込むようにして行う。
【0020】
また、本例では、支持フレーム16を中心として、その両側にそれぞれ容器10及び前記圧力負荷手段などが対をなすように配置されているが、このような配置はあくまで一例であって、少なくとも一つの容器10及び圧力負荷手段などが設けられていれば良い。
【0021】
容器11及び蓋12は、好ましくは合成石英などの石英から構成することが好ましい。耐圧容器10を以下に詳述する元素分析前処理に用いる場合に、所定の試料を分解するための鉱酸を容器11内に入れることになるが、この際、容器11及び蓋12を石英から構成することによって、容器11及び蓋12の前記鉱酸に対する耐性が増大する。
【0022】
また、密閉用スペーサー13は、容器11の、蓋12による密閉性を確保するために設けられているものである。密閉用スペーサー13を構成する材料は特に限定されるものではないが、好ましくはテフロン(登録商標)PFAやPTFEなどのテフロン(登録商標)シートから構成する。これによって、以下に示す元素分析前処理などによって、容器11内の内部圧力が増大した場合などにおいても、その密閉性をより良く保持することができる。
【0023】
圧力支持板17及び圧力保持スペーサー18は、ボルト14から蓋12に対して均一に圧力を負荷するために設けられているものである。圧力保持スペーサー18は、本発明の耐圧容器10に対しては必須の構成要素ではないが、圧力保持スペーサー18を蓋12及び圧力支持板17間に介在させることによって、ボルト14からの蓋12に対する圧力負荷をより均一に行うことができるようになる。圧力保持スペーサー18は、例えばグラファイトやテフロン(登録商標)などから構成することができる。
【0024】
本発明の試料分解装置は、図1に示すような耐圧容器10に加えて、この耐圧容器10内の試料を加熱するための加熱手段を具える。この加熱手段は特に限定されるものではなく、市販の乾燥用オーブンなどを用いることができる。この場合、前記耐圧容器の全体を前記オーブン中に配置することによって、前記試料を加熱する。
【0025】
次に、前記試料分解装置を用いた本発明の元素分析前処理法について説明する。最初に、図1に示す耐圧容器10の、容器11内に分析に供する元素を含んだ試料を入れるとともに、鉱酸を入れ、前記試料を前記鉱酸中に浸漬させる。前記試料が岩石又は鉱物である場合は、前記鉱酸として、硝酸及び塩酸の混酸、例えば王水(例えば、容積比で濃硝酸:濃塩酸=1:3)又は逆王水(例えば、容積比で濃硝酸:濃塩酸=3:1)などを使用することが好ましい。これによって、前記試料の分解をより完全に行うことができ、目的とする元素の分離をより完全に行うことができる。前記試料が樹脂などの有機物である場合は、同様の理由から、前記鉱酸として硝酸、あるいは前述した王水などの硝酸及び塩酸の混酸などを用いることができる。
【0026】
次いで、耐圧容器10をオーブンなどの加熱手段に組み込み、容器11内の前記試料を所定温度まで加熱する。容器11はボルト14による圧力負荷によって蓋12で密閉されているので、前記加熱処理によって容器11の内部圧力が増大する。その結果、前記試料は、容器11内において高温高圧状態下で前記鉱酸中に浸漬されるようになるので、前記試料は分解され、前記試料から目的とする元素を分離することができるようになる。
【0027】
この際、容器11の肉厚、蓋12の肉厚、及びボルト14による負荷圧力などを適宜設定することによって、前記加熱処理による容器11内の内部圧力の増大に耐え得るようにする。
【0028】
なお、上述した試料の分解は、例えば230℃以上の温度で行うことが好ましい。また、30気圧以上の圧力下において行うことが好ましい。これによって、前記試料の分解に伴う元素の分離を簡易かつ効率的に行うことができるようになる。なお、前記圧力は、通常、上述した容器11内に前記試料を入れて密閉し、前記230℃以上に加熱することによって必然的に達成されるものである。
【0029】
また、図1に示す耐圧容器10を用いた場合は、前述したように、容器11の肉厚、蓋12の肉厚、及びボルト14による負荷圧力などを適宜設定することによって、上述した圧力下での試料の分解による元素の分離を行った場合においても、容器11の密閉性を十分に保持することができる。
【0030】
上述したような、図1に示す耐圧容器10を含む試料分解装置を用いた、前記元素分析の前処理法は、例えば、白金属元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))の分析に対して好ましく用いることができ、特にOsの分析に対して用いることができる。白金族元素は、特に耐酸性の強い金属鉱物などに濃縮して含まれており、前記金属鉱物からの分離が完全でないと、正確な分析を行うことができないからである。また、Osの場合は、容器11において漏洩が存在すると、前記王水などと反応して揮発性のOsOを生成し、容器11外へ漏洩してしまうからである。
【0031】
また、同様の理由から、前記元素分析の前処理法は、レニウム(Re)及び金(Au)の分析などに対しても好ましく用いることができる。
【実施例】
【0032】
次に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0033】
(実施例1)
外形40φ、内径20φ、高さ55mm、及び底厚10mmで、内容積14mLの石英製の容器11を具える耐圧容器10を準備した。容器11内に、白金族元素の標準岩石粉末であるUMT-1(カナダ国、CANMET提供、超苦鉄質岩組成を持つ)1gを入れるとともに、8M臭化水素酸1mLを入れ、さらに家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫で冷却した王水(濃塩酸3mL、濃硝酸1mL)を加え、石英製の蓋12で密閉した。また、蓋12に対してボルト14から圧力15kNの圧力を負荷した。
【0034】
次いで、容器11を含む耐圧容器10の全体をオーブン中に配置し、容器11内を280℃で3時間加熱した。なお、本加熱処理中、容器11内の内部圧力は約120気圧まで増大した。
【0035】
加熱処理終了後、容器11内を冷却して、容器11内の状態を観察した。その結果、容器11内部は乾固することなく、目視において加熱前と同程度の量の溶液が残留していることが確認された。また、臭化水素酸の分解による臭素が前記溶液中に液滴となって存在していることが確認された。さらに、出発物質であった岩石粉末は分解してなくなり、代わりに再結晶してきた白色のシリカが溶液内に沈殿していた。このことは岩石粉末が280℃という高温で密閉分解できることを意味している。
【0036】
(実施例2)
Re,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,Auを10ng含む0.1mLの標準溶液(8MHBrに溶解してある)を5mLの水に溶解し、イオン交換樹脂、TEVA・spec(米国、Eichrom社製、アクリル樹脂とアミンを主体にしている)0.1mLとともに90℃に加熱する。このとき、Re,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,Auは95%以上の回収率で、全て前記イオン交換樹脂に吸着される。
【0037】
次いで、前記イオン交換樹脂を実施例1と同様の耐圧容器10の容器11中に配置し、さらに家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫で冷却した王水(濃塩酸3mL、濃硝酸1mL)を加え、石英製の蓋12に15kNなる圧力を負荷して容器11を密閉した。次いで、容器11を含む耐圧容器10の全体をオーブン中に配置し、容器11内を240℃で2時間加熱した。なお、本加熱処理中、容器11内の内部圧力は30気圧まで増大した。
【0038】
加熱処理終了後、容器11内を冷却して、容器11内の状態を観察した。その結果、容器11内部は乾固することなく、目視において加熱前と同程度の量の溶液が残留していることが確認された。また、イオン交換樹脂は王水で分解されて残留していないことが確認された。さらに、容器11を開けた際に二酸化炭素と推定されるガスの抜ける音がした。
【0039】
(評価)
実施例1及び2で得た溶液を希釈・定容し、これらの溶液中に含まれる元素濃度をICP質量分析装置(ThermoElectron社製、ELEMENT)で定量分析した。その結果、Re,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,Auの回収率は104-101%であり、分析誤差の範囲内で完全な回収率を示した。したがって、容器11内部からは王水などが漏洩せず、Osも揮発性のOsOとなって揮散しなかったことが分かる。すなわち、本発明の耐圧容器、及び前記耐圧容器を含む試料分解装置、並びに前記試料分解装置を用いた元素分析前処理法は、岩石試料や有機物などの分解による前記元素の分離に対して極めて適していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の耐圧容器の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0041】
10 耐圧容器
11 石英製の容器
12 石英製の蓋
13 密閉用スペーサー
14 ボルト
15 支持板
16 支持フレーム
17 圧力支持板
18 圧力保持スペーサー
19 金属製フレーム
20 金属製の下フレーム
図面
【図1】
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