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明細書 :脳の虚血監視モニタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3721408号 (P3721408)
公開番号 特開2005-296062 (P2005-296062A)
登録日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発行日 平成17年11月30日(2005.11.30)
公開日 平成17年10月27日(2005.10.27)
発明の名称または考案の名称 脳の虚血監視モニタ
国際特許分類 A61B 10/00      
FI A61B 10/00 E
請求項の数または発明の数 13
全頁数 18
出願番号 特願2004-112315 (P2004-112315)
出願日 平成16年4月6日(2004.4.6)
審査請求日 平成16年4月6日(2004.4.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】武田 吉正
【氏名】森田 潔
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100067828、【弁理士】、【氏名又は名称】小谷 悦司
【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100099955、【弁理士】、【氏名又は名称】樋口 次郎
審査官 【審査官】小田倉 直人
参考文献・文献 特表平10-508763(JP,A)
特表2004-504092(JP,A)
特表2001-509589(JP,A)
調査した分野 A61B 10/00
特許請求の範囲 【請求項1】
脳の外表面に向けて配置可能な先端部をそれぞれ有する一対の光ファイバと、
一方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して脳の外表面に対して紫外線を照射可能な照射部と、
他方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して、上記紫外線により脳細胞が励起されて発光した蛍光を受光可能な受光部と、
上記照射部による紫外線の照射・照射停止を制御するとともに、受光部により受光した蛍光の強度を算出可能な制御部と、
この制御部により算出された蛍光強度を表示可能な表示部とを備え
上記照射部は、光源と、この光源と光ファイバとの間に配置され、当該光源の光路を開放・遮断可能なシャッタとを備え、上記制御部は、シャッタの開放・遮断タイミングを制御するとともに、シャッタを開放する場合には少なくとも2秒以上開放し、この開放時間の間に累積された蛍光強度を算出することを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項2】
請求項1に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記各光ファイバは、塑性変形可能な帯状部材に対して、その幅方向に沿って並列に配置された状態で長手方向に沿って内蔵されており、この帯状部材は、頭骨に形成された開口部を通して当該頭骨の内面に沿って配索可能な配索部と、この配索部の厚み方向へ略直角に屈曲した屈曲先端部とを備えていることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、制御開始後の初回に算出された蛍光強度と、2回目以降に算出された蛍光強度とに基づいて蛍光強度の変化率を算出し、この変化率を上記表示部に表示させることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項4】
請求項3に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合に、脳に対する酸素供給量が不足している旨の判定をすることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項5】
請求項4に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合の時間を累積するように構成され、この累積時間が所定時間以上となった場合に、脳に対する酸素供給量が、脳に低酸素性障害が発生し得る程度に不足している旨の判定をすることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項6】
請求項5に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記蛍光強度変化率の所定値は20%であり、上記累積時間の所定時間は18分であることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6の何れかに記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記受光部は、脳から反射した紫外線の反射光と、紫外線に応じて発光した蛍光とを個別に受光可能に構成され、上記制御部は、連続して算出された2の反射光強度について、前回算出された反射光強度よりも今回算出された反射光強度が増加している場合には、今回算出された蛍光強度についての上記蛍光強度変化率が所定値以上であっても、その時間を累積しないように構成されていることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項8】
脳の外表面に向けて配置可能な先端部をそれぞれ有する一対の光ファイバと、
一方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して脳の外表面に対して紫外線を照射可能な照射部と、
他方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して、上記紫外線により脳細胞が励起されて発光した蛍光を受光可能な受光部と、
上記照射部による紫外線の照射・照射停止を制御するとともに、受光部により受光した蛍光の強度を算出可能な制御部と、
この制御部により算出された蛍光強度を表示可能な表示部とを備え、
上記制御部は、制御開始後の初回に算出された蛍光強度と、2回目以降に算出された蛍光強度とに基づいて蛍光強度の変化率を算出し、この変化率を上記表示部に表示させるとともに、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合に、脳に対する酸素供給量が不足している旨の判定をすることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項9】
請求項8に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記各光ファイバは、塑性変形可能な帯状部材に対して、その幅方向に沿って並列に配置された状態で長手方向に沿って内蔵されており、この帯状部材は、頭骨に形成された開口部を通して当該頭骨の内面に沿って配索可能な配索部と、この配索部の厚み方向へ略直角に屈曲した屈曲先端部とを備えていることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記照射部は、光源と、この光源と光ファイバとの間に配置され、当該光源の光路を開放・遮断可能なシャッタとを備え、上記制御部は、シャッタの開放・遮断タイミングを制御するとともに、シャッタを開放する場合には少なくとも2秒以上開放し、この開放時間の間に累積された蛍光強度を算出することを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10の何れかに記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合の時間を累積するように構成され、この累積時間が所定時間以上となった場合に、脳に対する酸素供給量が、脳に低酸素性障害が発生し得る程度に不足している旨の判定をすることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項12】
請求項11に記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記蛍光強度変化率の所定値は20%であり、上記累積時間の所定時間は18分であることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
【請求項13】
請求項8乃至請求項12の何れかに記載の脳の虚血監視モニタにおいて、上記受光部は、脳から反射した紫外線の反射光と、紫外線に応じて発光した蛍光とを個別に受光可能に構成され、上記制御部は、連続して算出された2の反射光強度について、前回算出された反射光強度よりも今回算出された反射光強度が増加している場合には、今回算出された蛍光強度についての上記蛍光強度変化率が所定値以上であっても、その時間を累積しないように構成されていることを特徴とする脳の虚血監視モニタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脳に対する酸素供給量の適否を判定するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、脳動脈瘤の治療として、図11に示すようなクリッピング手術が行われている。このクリッピング手術では、動脈瘤100の上流側で脳動脈102に対してクリップ101をかけることにより、脳動脈102の血流を一旦停止させ、この状態で、動脈瘤100の付け根部分にクリップ103をかけることにより、動脈瘤100に対する血液流入を防止して、当該動脈瘤100の破裂を防止するようにしている。
【0003】
そして、上記手順が完了すると、クリップ101を取り外して脳動脈102の血流を復帰させた後、クリップ103を脳内に留置した状態で患者の開頭部を閉塞することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記クリッピング手術では、短時間ではあるものの、脳動脈102の血流を一時停止することにしているので、この血流停止の間、脳に対する酸素の供給量が不足することになる。そして、この酸素供給量の不足は、脳細胞を死滅させる、いわゆる虚血性神経細胞障害の要因となることが知られている。
【0005】
そこで、上記虚血性神経細胞障害の発生を抑制すべく、脳に対する酸素供給量の適否を監視可能な装置が要望されていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、脳に対する酸素供給量の適否を監視可能な脳の虚血監視モニタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、脳の外表面に向けて配置可能な先端部をそれぞれ有する一対の光ファイバと、一方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して脳の外表面に対して紫外線を照射可能な照射部と、他方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して、上記紫外線により脳細胞が励起されて発光した蛍光を受光可能な受光部と、上記照射部による紫外線の照射・照射停止を制御するとともに、受光部により受光した蛍光の強度を算出可能な制御部と、この制御部により算出された蛍光強度を表示可能な表示部とを備え、上記照射部は、光源と、この光源と光ファイバとの間に配置され、当該光源の光路を開放・遮断可能なシャッタとを備え、上記制御部は、シャッタの開放・遮断タイミングを制御するとともに、シャッタを開放する場合には少なくとも2秒以上開放し、この開放時間の間に累積された蛍光強度を算出することを特徴とする脳の虚血監視モニタである。
【0008】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記各光ファイバは、塑性変形可能な帯状部材に対して、その幅方向に沿って並列に配置された状態で長手方向に沿って内蔵されており、この帯状部材は、頭骨に形成された開口部を通して当該頭骨の内面に沿って配索可能な配索部と、この配索部の厚み方向へ略直角に屈曲した屈曲先端部とを備えていることが好ましい。
【0009】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、制御開始後の初回に算出された蛍光強度と、2回目以降に算出された蛍光強度とに基づいて蛍光強度の変化率を算出し、この変化率を上記表示部に表示させることが好ましい。
【0010】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合に、脳に対する酸素供給量が不足している旨の判定をすることが好ましい。
【0011】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合の時間を累積するように構成され、この累積時間が所定時間以上となった場合に、脳に対する酸素供給量が、脳に低酸素障害が発生し得る程度に不足している旨の判定をすることが好ましい。
【0012】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記蛍光強度変化率の所定値は20%であり、上記累積時間の所定時間は18分であることが好ましい。
【0013】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記受光部は、脳から反射した紫外線の反射光と、紫外線に応じて発光した蛍光とを個別に受光可能に構成され、上記制御部は、連続して算出された2の反射光強度について、前回算出された反射光強度よりも今回算出された反射光強度が増加している場合には、今回算出された蛍光強度についての上記蛍光強度変化率が所定値以上であっても、その時間を累積しないように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の別の態様は、脳の外表面に向けて配置可能な先端部をそれぞれ有する一対の光ファイバと、一方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して脳の外表面に対して紫外線を照射可能な照射部と、他方の光ファイバの基端部に接続され、この光ファイバを介して、上記紫外線により脳細胞が励起されて発光した蛍光を受光可能な受光部と、上記照射部による紫外線の照射・照射停止を制御するとともに、受光部により受光した蛍光の強度を算出可能な制御部と、この制御部により算出された蛍光強度を表示可能な表示部とを備え、上記制御部は、制御開始後の初回に算出された蛍光強度と、2回目以降に算出された蛍光強度とに基づいて蛍光強度の変化率を算出し、この変化率を上記表示部に表示させるとともに、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合に、脳に対する酸素供給量が不足している旨の判定をすることを特徴とする脳の虚血監視モニタである。
【0015】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記各光ファイバは、塑性変形可能な帯状部材に対して、その幅方向に沿って並列に配置された状態で長手方向に沿って内蔵されており、この帯状部材は、頭骨に形成された開口部を通して当該頭骨の内面に沿って配索可能な配索部と、この配索部の厚み方向へ略直角に屈曲した屈曲先端部とを備えていることが好ましい。
【0016】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記照射部は、光源と、この光源と光ファイバとの間に配置され、当該光源の光路を開放・遮断可能なシャッタとを備え、上記制御部は、シャッタの開放・遮断タイミングを制御するとともに、シャッタを開放する場合には少なくとも2秒以上開放し、この開放時間の間に累積された蛍光強度を算出することが好ましい。
【0017】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記制御部は、上記蛍光強度変化率が所定値以上である場合の時間を累積するように構成され、この累積時間が所定時間以上となった場合に、脳に対する酸素供給量が、脳に低酸素性障害が発生し得る程度に不足している旨の判定をすることが好ましい。
【0018】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記蛍光強度変化率の所定値は20%であり、上記累積時間の所定時間は18分であることが好ましい。
【0019】
上記脳の虚血監視モニタにおいて、上記受光部は、脳から反射した紫外線の反射光と、紫外線に応じて発光した蛍光とを個別に受光可能に構成され、上記制御部は、連続して算出された2の反射光強度について、前回算出された反射光強度よりも今回算出された反射光強度が増加している場合には、今回算出された蛍光強度についての上記蛍光強度変化率が所定値以上であっても、その時間を累積しないように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、脳の外表面に対して照射した紫外線により脳細胞が励起されて発光した蛍光の強度を算出することにしている。ここで、「紫外線により脳細胞が励起する」のは、脳に対する酸素供給量が不足することに応じて、脳細胞のミトコンドリア内にNADH(nicotinamide adenine dinucleotide:(還元型)ニコチナマイド アデニン ジヌクレオチド)が増加し、このNADHが、紫外線により励起して青色蛍光を発光する特性を有しているためである。
【0021】
したがって、本発明では、酸素供給量が不足することに応じて増加する蛍光強度を表示することができるので、例えば、酸素供給量不足時のデータとして予め用意された基準蛍光強度と、表示された蛍光強度とを比較することによって、脳に対する酸素供給量の適否を医療従事者に判定させることができる。
【0022】
なお、上記表示部は、蛍光強度を数値として表示するものに限定されることはなく、例えばプロッタのようにグラフ表示するものも含まれる。
【0023】
さらに、本発明では、2秒以上に設定されたシャッタ開放時間内の蛍光の累積強度を算出するようにしているので、患者の一心拍(2秒未満)間に累積された蛍光の強度を算出することができ、より安定して蛍光強度を算出することができる。
【0024】
各光ファイバが帯状部材に内蔵された構成によれば、帯状部材の可塑性により各光ファイバの形態を比較的自由に変形させることができるとともに、配索部を頭骨に沿って配索した場合に、屈曲先端部により各光ファイバの先端部を脳の外表面に対して略垂直に向けることができる。
【0025】
すなわち、患者の心拍により生じる血流に応じて脳が収縮・弛緩すると、位置決めされた光ファイバの先端部と脳の外表面との間の距離が変動してしまい、この距離に応じて受光された蛍光強度が変動してしまうことになるが、上記のようにシャッタ開放時間を2秒以上とすることにより、脳の収縮・弛緩の双方の状態での蛍光強度を含むデータとして蛍光強度を算出することができるので、受光蛍光強度の瞬間的な増減を加味してしまうといった事態を抑制することができる。
【0026】
制御開始後の初回に算出された蛍光強度と2回目以降に算出された蛍光強度の変化率を表示するようにした構成によれば、脳動脈の血流停止の直近のタイミングにおいて初回の算出を実行させるようにすることにより、NADH量について一患者に対する相対的な増加率を表示することができるので、患者の体質等の個体差に起因する誤差の要因を省いた情報を医療従事者に提供することができる。
【0027】
このとき、上記蛍光強度変化率が所定値以上となった場合に、脳に対する酸素供給量が不足していると判定することにすれば、脳に対する酸素供給量の不足を装置自体で判定することができる。
【0028】
さらに、蛍光強度が所定値以上である場合の時間を累積し、この累積時間をパラメータとすれば、脳の低酸素性障害を未然に防止することができる。
【0029】
具体的に、変化率20%、累積時間18分を超えると、脳の低酸素性障害(虚血性神経細胞障害)の発生率が高くなることが知られているため、これらの値を利用して脳に対する酸素供給量の適否を判定することが好ましい。
【0030】
紫外線の反射光の強度が増加している場合に時間を累積しないようにした構成によれば、より精緻に脳に対する酸素供給量の不足を判定することができる。
【0031】
すなわち、脳動脈の血流を停止すると、脳に対する血流が停止する一方、脳から全身へ向かう血流(静脈血流)は阻害されないので、脳動脈の血流停止に伴い、直ちに脳血管内の血液が減少し、これに応じて、脳の血液中のヘモグロビンが減少することになる。
【0032】
そして、ヘモグロビンは、比較的幅広い吸収波長域を有しているので、脳内でその量が減少すると、吸収し得る紫外線量も減少する結果、照射された紫外線について、脳の外表面からの反射光が増大することになる。一方、脳内のヘモグロビン量が減少すると、NADHにより発光する蛍光についても、ヘモグロビンによる吸収量が減少するため、蛍光強度も増加することになる。
【0033】
そして、所定時間(約2分間)血流停止が持続すると、脳細胞は、低酸素状態となり、内部のNADH量が増加して、蛍光強度が急速に増加する。このとき、反射光強度は変化しない。
【0034】
したがって、脳動脈の血流停止から暫らくの間は、ヘモグロビン量の減少により、紫外線の反射光及び、蛍光の強度が増加することになる。換言すると、血流停止から暫らくの間は、NADH量の増加とは関係なく蛍光強度が増加することになり、さらに、NADH量が増加するのは、反射光強度が上記のように増加した状態で安定した後であることが知られているので、上記のように反射光強度が増加中である場合に時間を累積しないようにすれば、ヘモグロビン量減少に伴う蛍光強度の増加をNADH量の増加として判定してしまうといった事態を抑制することができる。
【0035】
また、本発明の別の態様に係る脳の虚血監視モニタによれば、脳の外表面に対して照射した紫外線により脳細胞が励起されて発光した蛍光の強度を算出することにしている。ここで、「紫外線により脳細胞が励起する」のは、脳に対する酸素供給量が不足することに応じて、脳細胞のミトコンドリア内にNADH(nicotinamide adenine dinucleotide:(還元型)ニコチナマイド アデニン ジヌクレオチド)が増加し、このNADHが、紫外線により励起して青色蛍光を発光する特性を有しているためである。
【0036】
したがって、本発明では、酸素供給量が不足することに応じて増加する蛍光強度を表示することができるので、例えば、酸素供給量不足時のデータとして予め用意された基準蛍光強度と、表示された蛍光強度とを比較することによって、脳に対する酸素供給量の適否を医療従事者に判定させることができる。
【0037】
なお、上記表示部は、蛍光強度を数値として表示するものに限定されることはなく、例えばプロッタのようにグラフ表示するものも含まれる。
【0038】
さらに、本発明では、制御開始後の初回に算出された蛍光強度と2回目以降に算出された蛍光強度の変化率を表示するようにしているので、脳動脈の血流停止の直近のタイミングにおいて初回の算出を実行させるようにすることにより、NADH量について一患者に対する相対的な増加率を表示することができ、患者の体質等の個体差に起因する誤差の要因を省いた情報を医療従事者に提供することができる。
【0039】
そして、本発明では、上記蛍光強度変化率が所定値以上となった場合に、脳に対する酸素供給量が不足していると判定するようにしているので、脳に対する酸素供給量の不足を装置自体で判定することができる。
【0040】
各光ファイバが帯状部材に内蔵された構成によれば、帯状部材の可塑性により各光ファイバの形態を比較的自由に変形させることができるとともに、配索部を頭骨に沿って配索した場合に、屈曲先端部により各光ファイバの先端部を脳の外表面に対して略垂直に向けることができる。
【0041】
2秒以上に設定されたシャッタ開放時間内の蛍光の累積強度を算出するようにした構成によれば、患者の一心拍(2秒未満)間に累積された蛍光の強度を算出することができるので、より安定して蛍光強度を算出することができる。
【0042】
すなわち、患者の心拍により生じる血流に応じて脳が収縮・弛緩すると、位置決めされた光ファイバの先端部と脳の外表面との間の距離が変動してしまい、この距離に応じて受光された蛍光強度が変動してしまうことになるが、上記のようにシャッタ開放時間を2秒以上とすることにより、脳の収縮・弛緩の双方の状態での蛍光強度を含むデータとして蛍光強度を算出することができるので、受光蛍光強度の瞬間的な増減を加味してしまうといった事態を抑制することができる。
【0043】
さらに、蛍光強度が所定値以上である場合の時間を累積し、この累積時間をパラメータとすれば、脳の低酸素性障害を未然に防止することができる。
【0044】
具体的に、変化率20%、累積時間18分を超えると、脳の低酸素性障害(虚血性神経細胞障害)の発生率が高くなることが知られているため、これらの値を利用して脳に対する酸素供給量の適否を判定することが好ましい。
【0045】
紫外線の反射光の強度が増加している場合に時間を累積しないようにした構成によれば、より精緻に脳に対する酸素供給量の不足を判定することができる。
【0046】
すなわち、脳動脈の血流を停止すると、脳に対する血流が停止する一方、脳から全身へ向かう血流(静脈血流)は阻害されないので、脳動脈の血流停止に伴い、直ちに脳血管内の血液が減少し、これに応じて、脳の血液中のヘモグロビンが減少することになる。
【0047】
そして、ヘモグロビンは、比較的幅広い吸収波長域を有しているので、脳内でその量が減少すると、吸収し得る紫外線量も減少する結果、照射された紫外線について、脳の外表面からの反射光が増大することになる。一方、脳内のヘモグロビン量が減少すると、NADHにより発光する蛍光についても、ヘモグロビンによる吸収量が減少するため、蛍光強度も増加することになる。
【0048】
そして、所定時間(約2分間)血流停止が持続すると、脳細胞は、低酸素状態となり、内部のNADH量が増加して、蛍光強度が急速に増加する。このとき、反射光強度は変化しない。
【0049】
したがって、脳動脈の血流停止から暫らくの間は、ヘモグロビン量の減少により、紫外線の反射光及び、蛍光の強度が増加することになる。換言すると、血流停止から暫らくの間は、NADH量の増加とは関係なく蛍光強度が増加することになり、さらに、NADH量が増加するのは、反射光強度が上記のように増加した状態で安定した後であることが知られているので、上記のように反射光強度が増加中である場合に時間を累積しないようにすれば、ヘモグロビン量減少に伴う蛍光強度の増加をNADH量の増加として判定してしまうといった事態を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0051】
図1は、本発明の実施形態に係る脳の虚血監視モニタ1を、脳動脈瘤のクリッピング手術時に使用した状態で示す全体概略図であり、図2の(a)は、図1のII-II線断面図、(b)は、図1のケーブル帯2を拡大して示す平面図である。
【0052】
各図を参照して、虚血監視モニタ1は、上記クリッピング手術のために開頭された状態にある患者Jの頭骨J1内に挿入可能な先端部を有するケーブル帯2と、このケーブル帯2の基端部に接続された監視装置本体3とを備えている。
【0053】
ケーブル帯2は、アルミニウム等の塑性変形可能な材質に対してフッ素樹脂等からなる被膜が形成され、全体として帯状に形成された部材である。このケーブル帯2は、頭骨J1に形成された開頭部J2を通して当該頭骨J1の内面に沿って配索可能な配索部4と、この配索部4の厚み方向へ略直角に屈曲した屈曲先端部5とを備えている。
【0054】
上記ケーブル帯2には、その幅方向に沿って並列に配置された一対の光ファイバ6、7が長手方向に沿って内蔵されている。これら光ファイバ6、7の先端部は、それぞれ屈曲先端部5に沿って屈曲して、当該屈曲先端部5の端面に形成された開口5aを介してケーブル帯2の外部に開放されている。そのため、上記配索部4を頭骨J1の内面に沿って配索した場合に、各光ファイバ6、7の先端部を、頭骨J1に対して略直交する方向、すなわち、図2の(a)に示すように、脳J3の外周面に対して略垂直に配置することが可能となる。
【0055】
上記光ファイバ6は、その基端部に照射装置8が接続され、この照射装置8により照射された紫外線を先端部まで案内するようになっている。一方、光ファイバ7は、その基端部に受光装置9が接続され、先端部から取り込まれた光を受光装置9まで案内するようになっている。
【0056】
そして、各光ファイバ6、7は、図2の(a)に示すように、上記ケーブル帯2を頭骨J1と脳J3との間に挿入した状態で、光ファイバ6を介して脳J3の外表面に対して紫外線を照射した場合に、当該紫外線により脳細胞が励起されて発光した蛍光及び、脳J3の外表面から反射した反射光を、光ファイバ7を介して受光装置9へ案内し得るように、ケーブル帯2に対して位置決めされている。
【0057】
図3及び図4は、図2に示す照射装置8及び受光装置9の構成を概略的に示すブロック図である。
【0058】
図3を参照して、照射装置8は、紫外線を照射可能な光源10と、この光源10の光路を開放・遮断可能なシャッタ11と、このシャッタ11を通過した紫外線の中から所望の波長の光を抽出するフィルタ12とを備え、このフィルタ12を通過した光を上記光ファイバ6の基端部へ案内するようになっている。
【0059】
光源10は、出力200W程度のキセノンランプや水銀ランプ等と、このランプから照射された紫外線を反射する反射鏡とを備えた周知のものである。この光源10による紫外線の照射強度は、上記光ファイバ6の先端部から照射される紫外線の照射強度が0.3mW/cmとなるように設定されている。
【0060】
シャッタ11は、上記光源10とフィルタ12との間に配置され、後述する制御部20によりその開放・遮断タイミングが制御されるようになっている。フィルタ12は、光源10から照射された紫外線の中から360nmの波長を有する光を通過させるようになっている。
【0061】
図4を参照して、受光装置9は、上記光ファイバ7に取り込まれた光を可視光線と紫外線との2系統に分岐させるダイクロックミラー13と、分岐された紫外線の中から360nmの波長を有する光を抽出するフィルタ14と、可視光線の中から450nmの波長を有する光を抽出するフィルタ15と、これら両フィルタ13、14により抽出された光をそれぞれ撮像する撮像部(例えば、CCD、冷却CCD、CMOSセンサ等)16、17とを備え、これら撮像部16、17により撮像された撮像データを後述する制御部20へそれぞれ入力するようになっている。
【0062】
再び図1を参照して、監視装置本体3は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなるディスプレイ(表示部)18と、スタートキー19aやテンキー19b等を有する入力部19と、これらディスプレイ18及び入力部19に接続された制御部20とを備えている。
【0063】
図5は、図1の虚血検査装置1に内蔵された制御部20の構成を概略的に示すブロック図である。
【0064】
図5を参照して、制御部20は、各種演算処理を実行するCPU、初期設定等を記憶するROM、及び入力された設定情報等を上書き可能に記憶するRAMを基本構成として備えた周知のものである。
【0065】
この制御部20は、上記入力部19によって入力された情報に基づいて照射装置8の駆動を制御する照射装置制御部21と、上記各撮像部16、17から入力された撮像データから受光した光の強度を算出する強度算出部22と、この強度算出部22により算出された光の強度に基づいて脳に対する酸素供給量の適否を判定する判定部23と、この判定部23により酸素供給量が不足していると判定された状態にある時間を累積する超過時間累積部24と、上記判定部23による判定結果及び超過時間累積部24による累積時間をディスプレイ18に表示させる出力部25として主に機能するようになっている。
【0066】
照射装置制御部21は、上記スタートキー19aの押下に応じてシャッタ11を開放して光源10による紫外線を光ファイバ6側へ照射するようになっている。具体的に、照射装置制御部21は、上記テンキー19bの数値入力に応じてシャッタ11の開放時間及び閉鎖時間を設定可能な照射時間設定部26を備えている。
【0067】
照射時間設定部26は、図6に示すように、テンキー19bにより入力されたシャッタ11の開放時間t1及び閉鎖時間t2を記憶して、これら両時間t1、t2に対応してシャッタ11を開閉するようになっている。なお、詳しくは後述するが、照射時間設定部26は、開放時間t1が2秒以下に設定されることを禁止するようになっている。
【0068】
強度算出部22は、本実施形態において、上記開放時間t1内に蓄積された撮像データ内の光の強度(電荷)を算出するようになっている。
【0069】
判定部23は、脳動脈の血流停止時の蛍光強度K(図7参照)に対する今回算出された蛍光強度K1の割合(K1/K×100)が120%以上であるか否かを判定し、120%である場合に超過時間累積部24に対して時間累積を指示する一方、この超過時間累積部24による累積時間が18分を超えているか否かを判定し、超えている場合に、脳に対する酸素供給量が脳の低酸素性障害を発生し得る程度に不足していると判定するようになっている。
【0070】
ところで、反射光強度Hは、図7に示すように、脳動脈の血流停止から暫らくの間に、若干増加して強度Haとなる。これは、脳動脈の血流停止からヘモグロビン量が減少するためであり、ヘモグロビン量が減少すると、脳細胞からの蛍光強度も増加することになる。
【0071】
すなわち、血流停止から暫らくの間に算出される蛍光強度の中には、ヘモグロビン量の減少に起因する蛍光強度の増加量が含まれているため、上記判定部23は、反射光強度が増加中である場合には、上記超過時間累積部24による時間の累積を停止する一方、反射光強度が増加した状態(反射光強度Ha)で安定している場合には、蛍光強度の増加量に応じて上記超過累積部24により時間を累積し得るようになっている。
【0072】
一方、蛍光強度Kは、上記ヘモグロビン量の減少に応じて増加して強度Kaとなり、ヘモグロビン量が安定した後(脳動脈の血流停止から約2分が経過した後)に、さらに増加して強度Kbとなる一方、脳動脈の血流を復帰させると、これに応じて再び強度Ka、若しくはKa以下に減少することになる。そして、上記判定部23は、算出された蛍光強度が一旦強度Kbに上昇した後、強度Ka以下に減少したか否かを判定して、減少した場合には、脳動脈の血流が復帰したとみなして、反射光強度及び蛍光の計測を終了するようになっている。
【0073】
また、脳動脈の血流を復帰させると、ヘモグロビン量及び反射光強度も、血流停止前と略同一の状態へ復帰する(ヘモグロビン量が増加し、反射光強度が減少する)ことになる。
【0074】
以下、図8を参照して、上記制御部20が実行する処理について説明する。
【0075】
図8は、図5の制御部20が実行する処理を示すフローチャートである。
【0076】
まず、医療従事者は、図略の電源スイッチをONにする。電源スイッチがONにされると、制御部20は、光源10に対して電力を供給して(ステップS1)、光源10の初期設定を実行する(光源10の種類にもよるが、この初期設定には15分程度要する)。
【0077】
次いで、医療従事者は、脳動脈の血流停止処置を施す前(血流停止の直近タイミング)に図1に示すように虚血監視モニタ1をセットする。
【0078】
そして、制御部20は、テンキー19bによるシャッタの開放時間t1及び閉鎖時間t2が入力されたか否かを判定する(ステップS2)。
【0079】
両時間t1、t2が入力されていないと判定すると(ステップS2でNO)、繰り返しステップS2を実行する一方、両時間t1、t2が入力されたと判定すると(ステップS2でYES)、入力された開放時間t1が2秒以上であるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、2秒未満であると判定すると(ステップS3でNO)、ディスプレイ18にエラーである旨を表示して(ステップS4)、繰り返しステップS3を実行する。
【0080】
一方、ステップS3で2秒以上であると判定すると(ステップS3でYES)、スタートキー19aが押下されたか否かを判定する(ステップS5)。ここで、スタートキー19aが押下されていないと判定すると(ステップS5でNO)、繰り返しステップS5を実行する一方、スタートキー19aが押下されたと判定すると(ステップS5でYES)、これから実行する受光の回数が2回目以降であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0081】
なお、医療従事者は、スタートキー19aを押下した後に、脳動脈の血流停止の処置(脳動脈にクリップをかける等)を施すことになる。
【0082】
そして、上記ステップS6で受光回数が1回目であると判定すると(ステップS6でNO)、受光処理Uを実行する。
【0083】
図9は、図8の受光処理を示すフローチャートである。
【0084】
図9を参照して、受光処理Uを開始すると、まず、シャッタ11を開放し(ステップU1)、照射された紫外線により脳細胞が励起され発光した蛍光、及び脳J3からの紫外線の反射光を個別に受光する(ステップU2)。
【0085】
次いで、シャッタ11の閉鎖時間t2の開始時期が到来したか否か(開放時間t1が満了したか否か)を判定し(ステップU3)、ここで、未だ開放時間t1中であると判定すると(ステップU3でNO)、繰り返しステップU2を実行する。
【0086】
一方、閉鎖時間t2の開始時期が到来したと判定すると(ステップU3でYES)、シャッタ11を閉鎖して(ステップU4)、当該処理が図8のメインルーチンへリターンする。
【0087】
図8を再び参照して、次いで、受光した蛍光及び反射光の強度K、H(図7参照)を算出し(ステップS7)、各強度K、Hを記憶して(ステップS8)、開放時間t1の開始時期が到来したか否か(閉鎖時間t2が満了したか否か)を判定する(ステップS10)。
【0088】
ここで、未だ閉鎖時間t2中であると判定すると(ステップS10でNO)、繰り返しステップS10を実行する一方、開放時間t1の開始時期が到来したと判定すると(ステップS10でYES)、上記ステップS6を実行する。
【0089】
一方、上記ステップS6で受光回数が2回目以降であると判定すると(ステップS6でYES)、上記受光処理Uを実行して、この受光処理Uで受光された蛍光及び反射光の強度K1、H1を算出し(ステップS9)、次いで、判定処理Vを実行する。なお、K1、H1とは、初回(血流停止の直近タイミング)に算出された強度K、Hと区別するために付した符号であり、2回目以降に受光された蛍光及び反射光の強度は、全てK1、H1であることを意味している。
【0090】
図10は、図8の判定処理Vを示すフローチャートである。
【0091】
図10を参照して、判定処理Vを実行すると、まず、連続して算出された2の反射光の強度について、今回と前回に算出された反射光の強度同士を比較して(今回の受光が2回目であれば強度Hと、H1とを比較することになる)、前回算出された強度よりも今回算出された強度が増加しているか否かを判定する(ステップV1)。
【0092】
ここで、反射光の強度が増加していると判定すると(ステップV1でNO)、後述するステップV4が以前に実行されている場合(超過時間が累積中である場合)には、その累積を停止して(ステップV2)、図8のメインルーチンへリターンする。
【0093】
一方、反射光の強度が増加していないと判定すると(ステップV1でYES)、初回の蛍光の強度Kに対する今回の強度K1の増加率を算出し、これが120%以上であるか否かを判定する(ステップV3)。ここで、120%以上であると判定すると(ステップV3でYES)、時間の累積を開始する(ステップV4)一方、120%未満であると判定すると、以前に上記ステップV4が実行されている場合には、その累積を停止する(ステップV5)。
【0094】
なお、上記ステップV5の実行時においては、反射光強度が増加中でなく(ステップV1でYES)、かつ蛍光強度の増加率が20%未満である(ステップV3でNO)状態、すなわち、算出された蛍光強度K1が、図7のKaに相当する値になっていることになる。そこで、上記ステップV5では、上記の処理とともに今回算出された蛍光強度K1をKaとして記憶するようになっている。ここで、強度Kaを記憶するのに際し、今回の強度K1と前回の強度K1とを比較して、これら強度K1同士が略同一である場合(図7のように蛍光強度が略フラットになっている場合)に、この強度K1をKaとして記憶するのがより好ましい。
【0095】
上記ステップV4又はステップV5を実行すると、次いで、現在の累積時間及び蛍光強度の増加率をディスプレイ18に表示し(ステップV6:図1参照)、累積時間が18分未満であるか否かを判定する(ステップV7)。
【0096】
ここで、累積時間が18分以上であると判定すると(ステップV7でNO)、ディスプレイ18に累積時間が規定値をオーバーしている旨を表示し(ステップV8)、当該処理を終了する。
【0097】
なお、上記判定処理Vでは、累積時間が規定値をオーバーしている旨を表示した(ステップV8)後に、処理を終了するようにしているが、これに限定されることはなく、例えば、ステップV8の後に、図8のメインルーチンのステップS10へリターンするようにしてもよい。
【0098】
一方、累積時間が18分未満であると判定すると(ステップV7でYES)、当該処理を開始してから(スタートキー19aが押下されてから)、現時点までの間に時間累積の実績があるか、すなわち、図7のKbに相当する強度まで蛍光強度K1が増加したことがあるか否かを判定する(ステップV9)。
【0099】
ここで、時間累積の実績がないと判定すると(ステップV9でNO)、図8のメインルーチンのステップS10を実行する一方、時間累積の実績があると判定すると(ステップV9でYES)、今回算出された強度K1が上記ステップV5で記憶したKa(図7参照)以下であるか否かを判定する(ステップV10)。
【0100】
K1がKa以上であると判定すると(ステップV10でNO)、図8のメインルーチンのステップS10を実行する一方、K1がKa以下であると判定すると(ステップV10YES)、脳動脈の血流が復帰したものとみなして、当該処理を終了する。
【0101】
以上説明したように、虚血監視モニタ1によれば、酸素供給量が不足することに応じて増加する蛍光強度を表示することができるので、例えば、酸素供給量不足時のデータとして予め用意された基準蛍光強度と、表示された蛍光強度とを比較することによって、脳に対する酸素供給量の適否を医療従事者に判定させることができる。
【0102】
各光ファイバ6、7がケーブル帯2に内蔵された構成によれば、ケーブル帯2の可塑性により各光ファイバ6、7の形態を比較的自由に変形させることができるとともに、配索部4を頭骨J1に沿って配索した場合に、屈曲先端部5により各光ファイバ6、7を脳J3の外表面側に向けることができる。
【0103】
2秒以上に設定されたシャッタ11の開放時間t1内の蛍光の累積強度を算出するようにした構成によれば、患者の一心拍間に累積された蛍光の強度を算出することができるので、より安定して蛍光強度を算出することができる。
【0104】
制御部20の制御開始後の初回に算出された蛍光強度と2回目以降に算出された蛍光強度の変化率をディスプレイ18に表示するようにした構成によれば、NADH量について一患者に対する相対的な増加率を表示することができるので、患者の体質等の個体差に起因する誤差の要因を省いた情報を医療従事者に提供することができる。
【0105】
また、上記虚血監視モニタ1では、上記蛍光強度変化率が20%以上となった状態の累積時間が18分以上となった場合に、脳に対する酸素供給量が脳の低酸素性障害を発生し得る程度に不足していると判定することができる。なお、これら変化率20%、累積時間18分は、これらに限定されることはなく、脳に対する酸素供給量が不足しない範囲、すなわち、上記各設定値よりも小さな値に調整することができる。
【0106】
紫外線の反射光の強度が増加している場合に時間を累積しないようにした構成によれば、より精緻に脳に対する酸素供給量の不足を判定することができる。
【0107】
なお、上記実施形態のステップV1(図10参照)では、今回算出された反射光強度が前回算出されたものよりも増加している場合に、時間の累積を停止するようにしているが、これに限定されることはなく、例えば、反射光強度が所定の割合(例えば、5%)以上で増加している場合に、時間の累積を停止するようにすることもできる。
【0108】
また、上記実施形態では、ディスプレイ18に蛍光強度の増加率及び累積時間を表示させるようにしているが、これに限定されることはなく、例えば、図7に示すように、上記各パラメータをグラフ表示させることもでき、さらに、表示部は、LCD等のディスプレイ18に限定されることはなく、上記グラフを印刷可能なプロッタ等により構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態に係る脳の虚血監視モニタの全体構成を示す概略図である。
【図2】(a)は、図1のII-II線断面図、(b)は、図1のケーブル帯を拡大して示す平面図である。
【図3】図2に示す照射装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】図2に示す受光装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】図1の虚血検査装置に内蔵された制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】制御部によるシャッタの開閉制御を示すタイミングチャートである。
【図7】ヘモグロビン量、反射光強度及び、蛍光強度の増減を示すグラフである。
【図8】図5の制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】図8の受光処理を示すフローチャートである。
【図10】図8の判定処理を示すフローチャートである。
【図11】クリッピング手術の手順を示すための概略図である。
【符号の説明】
【0110】
1 虚血監視装置
2 ケーブル帯
4 配索部
5 屈曲先端部
6、7 光ファイバ
8 照射装置
9 受光装置
10 光源
11 シャッタ
18 ディスプレイ
20 制御部
21 照射装置制御部
22 強度算出部
23 判定部
24 超過時間累積部
25 出力部
26 照射時間設定部
J1 頭骨
J2 開口部
J3 脳
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10