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明細書 :分光計測方法及び分光計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4403272号 (P4403272)
公開番号 特開2006-052948 (P2006-052948A)
登録日 平成21年11月13日(2009.11.13)
発行日 平成22年1月27日(2010.1.27)
公開日 平成18年2月23日(2006.2.23)
発明の名称または考案の名称 分光計測方法及び分光計測装置
国際特許分類 G01J   3/28        (2006.01)
G01N  21/35        (2006.01)
FI G01J 3/28
G01N 21/35 Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 11
出願番号 特願2004-232541 (P2004-232541)
出願日 平成16年8月9日(2004.8.9)
審査請求日 平成19年8月1日(2007.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】紀和 利彦
【氏名】塚田 啓二
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100080621、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 寿一郎
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 特開2003-121355(JP,A)
特開2003-270140(JP,A)
調査した分野 G01J3/00-3/52
G01N21/00-21/61
IEEE
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
テラヘルツ帯域のテラヘルツパルス光を測定試料に照射し、この測定試料からの応答信号を検出して前記測定試料の特性を測定する分光計測方法において、
前記測定試料における前記テラヘルツパルス光の照射面にレーザー光を照射して、前記照射面に対して垂直な軸方向における前記測定試料と分光光学系の相対位置或いは互いに直交する三軸方向における前記測定試料と前記分光光学系の相対位置を検出し、
前記相対位置に基づいて前記応答信号の時間軸を補正することを特徴とする分光計測方法。
【請求項2】
前記応答信号の時間分解測定を行う請求項1に記載の分光計測方法。
【請求項3】
テラヘルツ帯域のテラヘルツパルス光を測定試料に照射し、この測定試料からの応答信号を検出して前記測定試料の特性を測定する分光計測装置において、
前記測定試料に対して分光光学系を配置し、前記測定試料における前記テラヘルツパルス光の照射面にレーザー光を照射して、前記照射面に対して垂直な軸方向における前記分光光学系と前記測定試料の相対位置或いは互いに直交する三軸方向における前記分光光学系と前記測定試料の相対位置を検出する位置計測手段を備えることを特徴とする分光計測装置。
【請求項4】
前記応答信号の時間分解測定を行う請求項に記載の分光測定装置。
【請求項5】
前記位置計測手段は、レーザー光を用いたレーザー位置センサーである請求項3又は4に記載の分光計測装置。
【請求項6】
前記分光光学系には、前記パルス光の遅延手段が具備され、この遅延手段による前記パルス光の遅延量を前記相対位置に基づいて導出する請求項のいずれかに記載の分光計測装置。
【請求項7】
前記パルス光を放射するテラヘルツパルス光発生素子が設置される請求項のいずれかに記載の分光計測装置。
【請求項8】
前記分光光学系と前記位置測定手段を函体に収納し、この函体を移動自在にする可動手段が付設される請求項のいずれかに記載の分光計測装置。
【請求項9】
前記函体の外部にレーザーパルス光発生器が設置され、このレーザーパルス光発生器と前記函体が光ファイバーで接続される請求項に記載の分光計測装置。
【請求項10】
前記相対位置に基づいて前記測定試料のずれを補正する駆動手段が設置される請求項に記載の分光計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料により反射されたパルス光を検出して計測を行う時間分解反射測定方法およびテラヘルツ時間分解反射測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数が10GHzから10THz、あるいは、さらにその周波数領域を含む広い周波数領域(テラヘルツ帯域と呼ぶ)の成分を持つ電磁波は、総称してテラヘルツ光とよばれている。特に、パルス状のテラヘルツ光(テラヘルツパルス光と呼ぶ)を用いた時間領域での分光装置やイメージング装置が提案されている。
【0003】
これらの装置では、テラヘルツパルス光を半導体や誘電体等の各種被測定試料に照射して、被測定試料を透過させるかもしくは被測定試料で反射させた後、そのパルス光の電場強度の時間変化を検出し、フーリエ変換により各周波数の電場強度と位相情報を得る。その結果、例えばフーリエ分光装置では得られない若しくは得ることが難しかった各種被測定試料の物性データを非破壊で得ることが可能となっている。
【0004】
前記テラヘルツパルス光を用いて試料に関する情報を得るためには、これら試料からの時系列波形に加えて、参照用の時系列波形が必要となる。参照用波形としては、透過型の場合には試料を取り除いたときに検出される波形が用いられ、反射型の場合には反射率が100%とみなせる鏡を試料の代わりに配設して、そのときに検出される波形を用いる。そして、参照用波形もフーリエ変換し、各波長に対する電場の振幅強度と位相情報を得る。試料に対する波形の振幅強度と参照用波形の振幅強度の比から、試料の透過率もしくは反射率が求まり、試料に対する位相と参照用波形の位相から位相差を求めることができることが、「総説-テラヘルツ時間領域分光法-」阪井清美著、分光研究、社団法人日本分光学会、平成13年、第50巻、第6号、pp.261-273(非特許文献1)に記載されている。
【0005】
透過型の場合には試料位置は位相情報に影響しない。しかし、テラヘルツパルス光が試料を透過することでテラヘルツパルス光の振幅強度が500分の1以下に減衰する試料の測定は不可能もしくは難しい。例えば、高濃度にドープされた半導体試料や、生体の測定は困難である。
【0006】
反射型の場合には試料位置が位相に影響を与える。そのため、位相情報を利用するためには試料と参照用鏡とを同一位置に配設する必要があった。このときに要求される位置精度は、1THzにおいて数マイクロメートル程度であり、周波数が高くなるほどより高い位置精度が必要とされる。
【0007】
Measurement of optical properties of
highly doped silicon by terahertz time domain reflection」S.Nashima、外3名、アプライドフィジックスレターズ
(Applied Physics Letters)、(米国)、2001年12月10日、第79巻、第24号、pp.3923-3925(非特許文献2)には、位置精度を必要とせずに位相情報を含む反射型の測定を行う方法として、シリコン板を試料に密着させて設置する方法が記載されている。また、 特開2004-198250号公報(特許文献1)には、試料を平行平板に限定したテラヘルツパルス光を用いた測定方法が記載され、前記反射光の時系列波形に含まれる試料入射面での反射パルス光を参照信号とし、反射光の時系列波形から前記反射パルス光を除いた差分信号を試料信号とし測定を行う方法である。
【0008】
また、位置ずれの影響を受けにくい方法が国際公開番号WO00/079248(特許文献2)に記載されている。この方法は、可変光遅延器の可動反射部を所定の振動周波数で駆動することによって、振動変化させ、この結果得られる周期的に振動変化する検出信号を、分光処理部のスペクトラムアナライザで周波数分析することで、テラヘルツパルス光の振幅強度の情報を得ている

【特許文献1】特開2004-198250号公報
【特許文献2】国際公開番号WO00/079248
【非特許文献1】「総説-テラヘルツ時間領域分光法-」、阪井清美著、分光研究、社団法人日本分光学会、平成13年、第50巻、第6号、pp.261-273
【非特許文献2】「Measurement of optical properties of highly doped silicon byterahertz time domain reflection」S.Nashima、外3名、アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters)、(米国)、2001年12月10日、第79巻、第24号、pp.3923-3925
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献2に記載のシリコン板を密着させて設置する方法は、試料前面(テラヘルツパルス光入射側の面)に物理特性が既知であるシリコン板を密着させて設置し、そのときの反射スペクトルが計算結果と一致するように試料位置を補正する方法であるが、試料は密着面が平面であるものに限定されるのに加え、テラヘルツ分光測定の特徴のひとつである非接触測定という利点が損なわれてしまうという問題点があった。
【0010】
特許文献1に記載された方法では、上述のように、試料は平行平板に限定され、テラヘルツパルス光が試料を透過することでテラヘルツパルス光の振幅強度が500分の1以下に減衰する試料の測定は不可能もしくは難しいという問題点があった。
【0011】
更に、これらの従来の方法は、時系列波形の測定中(通常、数分から数十分)、試料が静止していることが必要であり、特に、試料のテラヘルツパルス入射面に垂直な方向に試料の位置がずれないことが前提となっており、この位置のずれの許容誤差は1THzで1マイクロメートル以下である必要があるという問題点があった。
【0012】
特許文献2に記載される方法は、上述のように前記可動反射部を所定の振動周波数で駆動することによって振動変化させ、前記検出信号を分光処理部のスペクトラムアナライザで周波数分析し、テラヘルツパルス光の振幅強度の情報を得ている。しかしながら、この装置により得られる情報は振幅強度の情報だけであり、位相に関する情報を得ることが出来ないという問題があった。
【0013】
以上のように、従来の方法又は装置では、測定試料の形状および物性および設置方法を限定せずに、測定試料によって反射したテラヘルツパルス光の振幅強度情報と位相情報を含む測定を行うことが出来ないという課題があった。
【0014】
従って、本発明は、測定試料の形状および物性および設置方法を限定せずに、測定試料によって反射したテラヘルツパルスの振幅強度情報と位相情報を含む測定を行う方法および装置の提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、本発明の第1の形態は、テラヘルツ帯域のテラヘルツパルス光を測定試料に照射し、この測定試料からの応答信号を検出して前記測定試料の特性を測定する分光計測方法において、前記測定試料における前記テラヘルツパルス光の照射面にレーザー光を照射して、前記照射面に対して垂直な軸方向における前記測定試料と分光光学系の相対位置或いは互いに直交する三軸方向における前記測定試料と前記分光光学系の相対位置を検出し、前記相対位置に基づいて前記応答信号の時間軸を補正する分光計測方法である。
【0017】
本発明の第の形態は、前記応答信号の時間分解測定を行う分光計測方法である。
【0019】
本発明の第の形態は、テラヘルツ帯域のテラヘルツパルス光を測定試料に照射し、この測定試料からの応答信号を検出して前記測定試料の特性を測定する分光計測装置において、前記測定試料に対して分光光学系を配置し、前記測定試料における前記テラヘルツパルス光の照射面にレーザー光を照射して、前記照射面に対して垂直な軸方向における前記分光光学系と前記測定試料の相対位置或いは互いに直交する三軸方向における前記分光光学系と前記測定試料の相対位置を検出する位置計測手段を備える分光計測装置である。
【0021】
本発明の第の形態は、前記応答信号の時間分解測定を行う分光測定装置である。
【0022】
本発明の第5の形態は、前記位置計測手段が、レーザー光を用いたレーザー位置センサーである分光計測装置。
【0023】
本発明の第の形態は、前記分光光学系に、前記パルス光の遅延手段が具備され、この
遅延手段による前記パルス光の遅延量を前記相対位置に基づいて導出する分光計測装置で
ある。
【0024】
本発明の第7の形態は、前記パルス光を放射するテラヘルツパルス光発生素子が設置さ
れる分光計測装置である。
【0025】
本発明の第の形態は、前記分光光学系と前記位置測定手段を函体に収納し、この函
体を移動自在にする可動手段が付設される分光計測装置である。
【0026】
本発明の第の形態は、前記函体の外部にレーザーパルス光発生器が設置され、この
レーザーパルス光発生器と前記函体が光ファイバーで接続される分光計測装置である。
【0027】
本発明の第1の形態は、前記相対位置に基づいて前記測定試料のずれを補正する駆動
手段が設置される分光計測装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の形態によれば、前記測定試料と分光光学系の相対位置を検出し、この相対位置に基づいて前記応答信号の時間軸を補正するから、測定データの時間軸を一致させることができる。従って、前記パルス光が測定試料に入射した時刻を基準にトリガーによる応答信号の取り込み等が行われる。従って、前記パルス光の繰返しと同期させることにより高効率に誤差やノイズの少ない応答信号を検出することができる。
また、テラヘルツ帯域のテラヘルツパルス光を用いて測定試料の特性を測定するから、テラヘルツ光のフォトンエネルギー領域における光学応答を測定することができる。本発明に係るテラヘルツパルス光は、電気光学結晶、半導体、量子井戸又は高温超伝導薄膜に超短パルスレーザーを照射して発生させることができる。
また、レーザー光を前記測定試料に照射して前記相対位置の測定を行うから、高精度の位置測定を行うことができる。本発明に係る位置計測手段は、測定精度を1マイクロメートル以下に設定することができ、高精度の分光計測を提供することができる。
【0030】
本発明の第の形態によれば、前記応答信号の時間分解測定により、前記応答信号の高精度な振幅及び位相情報を同時に測定することができる。本発明に係る分光計測装置は、上述のように位置測定装置が設置されており、時間分解測定中に前記分光光学系と測定試料の相対位置を計測しながら、前記応答信号から時系列を検出するタイミングを調節することができる。上記の相対位置のずれた場合、測定試料から検出器までの光路長がずれるから、前記応答信号の伝播時間が変化する。本発明は、この伝播時間の変化に基づいて前記応答信号を検出するタイミングを調整することができるから、時間軸のずれがない時間分解測定を実現することができる。位置計測装置の測定精度としては300マイクロメートル以下である必要があり、10マイクロメートル以下であることが望ましい。更に、1マイクロメートル以下とすることで、最適な計測をすることが可能となる。
【0032】
本発明の第の形態によれば、前記測定試料に対して分光光学系を配置し、この分光光学系と前記測定試料の相対位置を検出する位置計測手段が備えているから、測定データの時間軸を一致させることができる。従って、前記パルス光が測定試料に入射した時刻を基準にトリガーによる応答信号の取り込み等が行われる。従って、前記パルス光の繰返しと同期させることにより高効率に誤差やノイズの少ない応答信号を検出することができる。
また、前記パルス光が、テラヘルツ帯域のテラヘルツパルス光であるから、テラヘルツ光のフォトンエネルギー領域における光学応答を測定することができる。前記テラヘルツパルス光を放出するテラヘルツ発生器としては、電気光学結晶、半導体、量子井戸又は高温超伝導薄膜などを用いることができる。前記テラヘルツ発生器は、超短パルスレーザーを照射することによりテラヘルツパルス光を放射することが可能であり、前記超短パルスレーザー光としては、数fs~サブpsのパルスレーザー光によりテラヘルツパルス光を発生させることができる。
【0034】
本発明の第の形態によれば、前記応答信号の時間分解測定により、前記応答信号の高精度な振幅及び位相情報を同時に測定することができる。本発明に係る分光計測装置は、上述のように位置計測装置が設置されており、時間分解測定中に前記分光光学系と測定試料の相対位置を計測しながら、前記応答信号から時系列を検出するタイミングを調節することができる。上記の相対位置のずれた場合、測定試料から検出器までの光路長がずれるから、前記応答信号の伝播時間が変化する。本発明は、この伝播時間の変化に基づいて前記応答信号を検出するタイミングを調整することができるから、時間軸のずれがない時間分解測定を実現することができる。パルス光の時系列波形を検出している間に、前記測定試料と分光光学系に設定された位置計測装置との距離のずれを計測する。検出した距離dの情報を元に離散信号列を補正することが出来る。更に、測定試料の形状および物性および設置方法を限定せずに、測定試料によって反射したテラヘルツパルスの振幅強度情報と位相情報などを測定することができる。
【0035】
本発明の第5の形態によれば、前記位置計測手段が、レーザー光を用いたレーザー位置センサーであるから、高精度な位置測定を行うことができる。前記レーザー光の検出器としては、光電子増倍管又はCCDカメラなどを用いることができる。
【0036】
本発明の第の形態によれば、前記分光光学系に遅延手段が具備されるから、簡易に前記パルス光の光路長を調節して、検出器の時間軸を補正することができる。更に、前記パルス光の遅延量を前記相対位置に基づいて導出するから、前記時間軸の補正を正確に行うことができる。
【0037】
本発明の第7の形態によれば、前記パルス光を放射するテラヘルツ発生器として、テラ
ヘルツパルス光発生素子が設置されるから、高効率に安定して前記テラヘルツパルス光を
放射することができる。
【0038】
本発明の第の形態によれば、前記分光光学系と前記位置計測手段を函体に収納し、この函体を移動自在にする可動手段が付設されるから、試料面内の位置ずれを補正することにより、高精度に前記応答信号の測定を行うことができる。更に、前記可動手段としては、前記函体にX軸、Y軸、Z軸の3軸可動ステージを取り付け、その設置例は、概観斜視図を用いてあらわすと図5のようになる。
【0039】
本発明の第の形態によれば、前記函体の外部にレーザーパルス光発生器が設置され、このレーザーパルス光発生器と前記函体が光ファイバーで接続されるから、レーザーパルス発生器から出力されるレーザーの出力方向に無関係に函体の位置を任意に移動させることができる。
【0040】
本発明の第10の形態によれば、前記相対位置に基づいて前記測定試料のずれを補正する駆動手段が設置されるから、前記測定試料表面の所望の位置にパルス光を照射することができる。更に、前記駆動手段によって測定試料を二次元方向に移動させることにより、その応答信号から前記測定試料のイメージングを行うことができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係るテラヘルツ帯域パルス光を用いた分光計測装置の概略図である。本実施の形態によるテラヘルツ光を用いた分光計測装置では、レーザーパルス発生器1とハーフミラー2とテラヘルツ発生器12とテラヘルツ検出器6と遅延装置3と4個の非軸放物面鏡7、8、10、11からなる反射型分光装置とレーザー位置センサー14から構成されている。
【0042】
図1において、パルスレーザー1から出力されたレーザーパルスL1は、ハーフミラー2によって、2つのレーザーパルスL2とL3に分岐される。分けられた一方のレーザーパルスL3は、テラヘルツ発生器12へ照射される。この結果発生するテラヘルツ光L5は、非軸放物面鏡10、11により測定試料9へ集光される。測定対象で反射したテラヘルツ光L4は、非軸放物面鏡7、8によりテラヘルツ検出器6へ集光される。レーザーパルスの方向を変更するために使用した鏡は、本実施の形態では、鏡4、鏡5、鏡13の3個であるが、各構成部品の配置を変更する場合は、更に鏡の数を増やしても良い。
【0043】
テラヘルツ発生器12としては、レーザーパルスを照射することで、テラヘルツパルス光を発生させることが可能なテラヘルツパルス発生素子を用いることができる。
【0044】
図1において、ハーフミラー2で分けられたレーザーパルスL2は、遅延装置3を通過し、テラヘルツ検出器6へと集光される。遅延装置3によりレーザーパルスL2がテラヘルツ検出器6へ到達する時間を変化させながら、テラヘルツ検出器6に入射したテラヘルツ光L4の振幅強度を検出することでテラヘルツパルス光の時系列波形を再生することが可能となる。
【0045】
図2は、本発明に係るテラヘルツ発生器6として化合物半導体15を用いた分光計測装置の概略図である。図1では、低温成長ガリウム砒素光伝導スイッチを用いたが、インジウム砒素例などの化合物半導体15を用いることができる。この場合、図2に示すように、前記レーザーパルスL3が前記化合物半導体15に入射する面と前記テラヘルツ光L5が放射される面が同一面に設定される。即ち、前記レーザーパルスL3を化合物半導体15の表面へ照射することにより、前記テラヘルツパルス光を発生させる。このとき、レーザーパルスL3の化合物半導体15に対する入射角φは、90度及び0度以外でなくてはならない。
【0046】
図3は、本発明に係るテラヘルツ光検出器6に入射するテラヘルツパルス光L4と離散信号列の関係図である。前記テラヘルツ光検出器6に入射するテラヘルツパルス光L4が図3(a)に示すようなものであった場合、レーザーパルス光L2がテラヘルツ検出器6へ到達するまでの時間を、遅延装置3を用いて変更し、遅延時間の異なる複数のパルス光L3をテラヘルツ光検出器6に入射させる。その結果、図3(b)に示すような離散信号列I(τ1)、I(τ2)、I(τ3)、...、(τn)が得られる。τ1、τ2、τ3、...、τnは、遅延時間を表す。
【0047】
テラヘルツパルス光L4の時系列波形を検出している間に、測定試料9と分光計測装置に設定された位置計測装置14との距離のずれdを計測する。ただし、dは測定試料9のテラヘルツパルス光照射面に対して垂直な方向とする。位置計測装置の測定精度としては300マイクロメートル以下である必要があり、10マイクロメートル以下であることが望ましい。さらに、1マイクロメートル以下とすることで、最適な計測をすることが可能となる。
【0048】
検出したずれdの情報を元に遅延装置3の遅延量補正することで、離散信号列I(τ1)、I(τ2)、I(τ3)、...、(τn)を補正することが出来る。例えば、テラヘルツパルス光L4の入射角をθとし、光の速さをcとすると、補正する遅延時間tは、t=d/(cosθ×c)となる。
【0049】
前述の補正過程において、試料面内の位置のずれは補正されていないが、その位置のずれは垂直方向の距離のずれd程度であり、テラヘルツパルス光の照射面の半径よりずれdが小さい場合あるいは、試料の情報が場所に依存しない場合は問題がない。
【0050】
前記テラヘルツパルス光L5の測定試料9への照射面の半径Wはテラヘルツパルス光の周波数fの特性によって決定され、半径Wと周波数fとの間には公知である関係式2×W={(4×c)/(f×π)}×(F/D)が成り立つ。但し、πは円周率を表し、焦点F及び直径Dは、夫々、照射に用いた非放物面鏡の焦点及び直径を表している。周波数fを1THzとし、焦点Fを10cmとし、直径Dを2.5cmとすると、照射面の半径は1.6mmとなり、同様にして、100GHzであれば、1.6cmとなる。
【0051】
図4は、本発明に係る分光光学系及び位置計測手段14が函体17に収納された分光計測装置の概略図である。前記ずれdが照射面の半径以上である測定試料、又は僅かな試料面内のずれで物性データが大きく変化する測定試料を測定する場合は、図4に示すように、前記レーザーパルス発生器1以外の構成部材を函体17内に収納し、このレーザーパルス発生器と函体17を光ファイバー16を用いて接続することが望ましい。
【0052】
図5は、本発明に係る分光光学系及び位置計測手段14が函体17に収納された分光計測装置の斜視概略図である。この配置により前記レーザーパルス発生器1から出力されるレーザーの出力方向に無関係に前記函体17の位置を任意に移動させることが出来る。更に、この函体17にX軸、Y軸、Z軸の3軸可動ステージ18を取り付け、試料面内の位置ずれを補正することで、精度のよい測定が可能となる。
【0053】
図6は、試料平面内の位置ずれを検出する位置センサー14a、14bを有する分光計測装置の概略図である。図に示すように試料平面内の位置ずれを検出する位置センサー14a、14bを函体17内に配置し、検出した信号を用いてX軸、Y軸、Z軸の3軸可動ステージ18の補正量を決定することで、予測が不可能あるいは困難である試料平面内のずれについて補正することが出来る。この方法は、活動しているマウスや人間の皮膚の測定に有効である。
【0054】
前記試料平面内の位置ずれを検出する前記位置センサー14a、14bの検出精度は1mmから5mm程度でもかまわない。その場合、前記位置センサー14a、14bは、レーザーを用いたセンサーに限定されず、CCDカメラなどで測定対象を観測し、位置のずれを画像より導出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る分光計測装置は、測定試料の形状および物性及び設置方法を限定することなく、テラヘルツパルス光の応答信号から振幅強度情報と位相情報を提供することができる。従って、気体、液体、固体又はこれらの混合状態など種々の状態にある測定試料から振幅強度情報と位相情報を得ることができ、生体分子、大気中の有害物質など種々の試料を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るテラヘルツ帯域パルス光を用いた分光計測装置の概略図である。
【図2】本発明に係るテラヘルツ発生器として化合物半導体を用いた分光計測装置の概略図である。
【図3】本発明に係るテラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光L4と離散信号列の関係図である。
【図4】本発明に係る分光光学系及び位置計測手段が函体に収納された分光計測装置の概略図である。
【図5】本発明に係る分光光学系及び位置計測手段が函体に収納された分光計測装置の斜視概略図である。
【図6】試料平面内の位置ずれを検出する位置センサーを有する分光計測装置の概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 レーザーパルス発生器
2 ハーフミラー
3 遅延装置
4 平面鏡
5 平面鏡
6 テラヘルツ光検出器
7 非軸放物面鏡
8 非軸放物面鏡
9 測定試料
10 非軸放物面鏡
11 非軸放物面鏡
12 テラヘルツ光発生器
13 平面鏡
14 レーザー位置センサー
14a レーザー位置センサー
14b レーザー位置センサー
15 化合物半導体
16 光ファイバ
17 収納ケース
18 3軸可動ステージ
L1 レーザーパルス
L2 レーザーパルス
L3 レーザーパルス
L4 テラヘルツパルス光
L5 テラヘルツパルス光
L6 位置検出用レーザー光
L6a 位置検出用レーザー光
L6b 位置検出用レーザー光


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5